ボストンのおすすめグルメ・レストラン

2年間過ごしたボストン。僕が気に入っていたレストランをいくつか挙げてみます。ボストンを訪れた時の参考までに。

シーフード – Island Creek Oysters

ボストンに来たからにはシーフード、というのであればIsland Creekがオススメ。牡蠣は新鮮だし、クラムチャウダー、ロブスターロールとボストン名物を美味しく食べることができる。お店の雰囲気も良い。難点はいつも混んでいて、予約なしでは夜はかなり待つ可能性があること。Open Tableまたは電話で予約をしてから行った方が良い。17:30のスロットなどは結構直前でも空いている。

Atlantic Fish Companyも美味しいが、こちらも要予約。Island CreekやAtlantic Fish Companyよりも利便性が良いのはLegal Seafoodで、ハーバード・スクエアを含めボストン市内・周辺に何店舗かあるので、ここに行くのも良い。Neptune Oysterも美味しいが事前予約ができず、よほど早く行かないと順番待ちとなって結構待つので、時間がない人にはあまりオススメしない。

アメリカン- Grill 23 (Steakhouse)

せっかくアメリカにいるのだからたっぷりのステーキを食べたい、となったらGrill 23。Tボーンステーキなどが美味しい。Capital Grilleと並んで日本人の中では評価が高いステーキハウス。前菜、肉、お酒にチップを入れて一人当たり$100は覚悟しておいた方が良い。

中華 – Mala Restaurant (Huoguo)

アメリカで中華?、と思うかもしれないが、Mala Restaurantの汁なし火鍋は本当に美味しい。何か入っているのではないかと思うほど中毒性が高く、アジア系の人がハマって、夜18:30を過ぎると平日でも人が並んでいる。4人で行って、キュウリ、羊肉の串焼き、汁なし火鍋、麻婆豆腐、米またはチャーハン、を食べるのが鉄板だ。これだけ食べても一人当たり$30程度と安いのが魅力。人が並んでいる場合は近くのJo Jo Taipeiも美味しいのでそちらに移動するのもあり。Malaは店が狭いので大人数でいく場合にはSichuan Gourmetが広くて数十人でも入るので便利だ。

Harvardの学生はDumpling Houseが近くて良いので、徒歩でいく場合はこちらも便利だ。ただ夜は混んでいて並ぶことも多いので早めに行くか予約した方が良い。

韓国料理 – Koreana (Barbecue)

ボストン周辺で美味しいKoreanといえばSeoul Soulontanだが、Koreanaも肉がうまい。カルビを2人前以上頼むと目の前の鉄板で焼いてくれる。店が広いので、20人以上などの集まりをする際にも便利。

日本料理 – Ittoku (Izakaya)

わざわざボストンまで旅行に来て日本食を食べたくはならないかもしれないが、住んでいると行きたくなるのが日本食レストラン。Ittokuはまさしく居酒屋で刺身からお好み焼き、焼き鳥、寿司まで一通り揃っている。価格も日本食の中ではリーズナブル。Gyukakuもボストンに2店舗ほどあり、こちらは日本よりもお肉の味が美味しい印象。デザートのLady Mというケーキが特に美味しくて女性陣に人気。Sugidamaも居酒屋でこちらはそばが食べられるのでそばが食べたい時には良い。Itadakiも日本食・日本酒を提供しているのでBack Bayに宿泊しているのであれば近くて良い。

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参考になれば!

MBA卒業後の進路の選び方

MBA在学中には様々な選択肢が目の前にあり、機会も多い分、卒業後の進路については誰もが悩む点です。今回は進路を選ぶのに役立つフレームワークを、僕の事例を元に紹介します。

僕の卒業後の進路ですが、米系医療機器の会社に就職して、米国に残ることにしました。卒業後にどうするかは、下記のような手順を踏んで考え、意思決定をしました。

Step 1: 価値判断の軸を決める

まず卒業後の進路を考えるにあたり、僕は「目的」(Purpose)、「人間関係」(Relationships)、「金銭」(Finance)の三つの軸で考えました。

「目的」は僕がどのように世界に貢献したいかです。20代の終わりに改めて自分の人生を振り返って気付いたのは、やはり僕は病気を抱えた人やその家族・友人が治療法が見つからずに苦しんでいるのが許せないし、そのことに対して考えたり動いている時に充実感を感じるということです。

だから、世界中の人が自分の病気の治療法を見つけられるような世界にしたいと思いますし、「その目標に繋がる仕事」というのを第一の項目として入れました。

第二に、僕はテクノロジーの力を信じており、テクノロジーを通じてその目標を達成したいと考えているため、「テクノロジーに関わる仕事」という項目も加えました。

第三に、僕は自分でコントロールしたいタイプなので、「事業責任者として動ける」という項目を加えました。

最後に、僕は多様なバックグラウンドを持つ人と働いている時に特に楽しさを感じるため、米国、ロンドン、シンガポールなど「英語圏でかつ世界中から人が集まっている場所で働けること」を第四項目に加えました。

「目的」としては以上の「病気の人を治療する・もしくは治療法を見つけやすくできるか」、「テクノロジー × ヘルスケアか」、「事業責任者か」、「場所」の4つを評価項目としました。

次に「人間関係」ですが、これも大事な要素だと考えました。まず、働く場所は自分の価値観と合うようなカルチャーにしたい、もしくはそんなカルチャーで働きたいので、「企業カルチャー」を第一の項目として入れました。

次に、「一緒に働く人が尊敬できるか、一緒に働いていて楽しいか」を二つ目の項目にし、三つ目としては、「僕の家族が幸せか」、を入れました。

最後に、生活をする上で必要となる「金銭」も評価軸に入れました。僕の場合、「目的」で4つ、「人間関係」で3つ、「金銭」で1つ、の計8つが評価の軸となった。

Step 2: 価値判断に重み付けをする

次にしたことは、それぞれの項目に「重み」をつけることです。僕の場合、計8つの項目に、合計で100%となるように重みをつけました。具体的には「目的」の4つで40%、「人間関係」の3つで40%、「金銭」で20%の重みをつけました。

重み付けの仕方は人により大きく異なると思います。

Step 3: 選択肢を評価する

卒業後の選択肢のそれぞれについて、それぞれの項目に「1(満たしていない)」から「3(満たしている)」まで数字を入れて、点数を洗い出しました。

すると、合計点数が出てきます。進路の選択肢A、B、Cについて具体的に評価してみると下記のようになります。下記の例だと、Aが最も良い選択肢となります。

Step 4: 再検証

評価軸に抜け漏れダブりがないか、自分の重み付けが適切か、卒業後の選択肢がまだ他にないか、を考えました。

大枠は以上のように考えましたが、特にStep 4では妻も含め、色々な人に相談をしました。

僕の場合、特に迷ったのは起業という選択肢をどう考えるかです。

アメリカで起業するという選択肢

起業する場合、場所の選択肢としてはアメリカか東京の大きく二つを考えました。現状、インターナショナル生でアメリカで卒業後も起業して残る道はあるが、かなり狭いです。

卒業後にはOPT (Optional Practical Training)という期間が1年間あり、その間に多くの場合は起業家(E2)ビザ取得を目指すことになります。E2ビザ取得には起業家として成功してアメリカに貢献することを示す必要があり、この評価基準は、資金調達、アメリカ人の雇用、ビジネスプランの妥当性が必要です。

アメリカは当然のことながら起業家志望も多く、競争も激しいため、言語がネイティブでない、文化が違う、永住権がない、の三つの壁を乗り越えて相当額の資金調達をして雇用を生むのは、かなり細い道だと感じました。

資金調達できなければ、米国登記した会社や開発したものを置いて国外へ出ないといけないです。夏に作成した医療用アプリですが、病院・クリニックにサービスを販売することの困難さを理解できていなかったこと、規制と訴訟リスクの高さを過小評価していたことから、残念ながら公開停止しました。僕の場合、医療分野の経歴があるわけでもなく、医療業界という特殊な業界で卒業後すぐに起業できるだけの自分ならではの強みを見い出すことができませんでした。

また、自分一人ならば「えいや」で残る手もあったかもしれないですが、留学で貯蓄も減っていたことと家族のこともあり、そこまでのリスクを取りたくもなかったのも本音です。他のアジア人の米国での起業家を見ると、米国企業に就職して在住数年→グリーンカードを申請→起業、のパターンが多く、そちらの方が現実的だと感じました。よって、米国ですぐに医療分野での起業という選択肢は切りました。

東京で起業するという選択肢

東京に帰って起業するという選択肢も考えました。こちらは市場の土地勘もあるし、ネットワークもあるし、起業する上では良い環境です。起業は失敗を繰り返して、それでも諦めずに続けて何度かやってようやく成功するものだと思っているので、卒業後できるだけ早いうちに始めることには大きなメリットがあります。

海外で、勝負していたい

一方で、せっかくMBAを出て海外にいますし、もう少し海外で揉まれてチャレンジを続けたいという気持ちも強かった。米国の良いところは競争がより激しく、優秀な人が集まっている上、自分自身が語学、文化、土地勘でハンディキャップを負っており、より成長できる環境だと感じました。

また、特に医療テクノロジーの最先端はやはり米国で、より多くのことが学べるだろうという好奇心もあります。妻もまだ昨年に米国に来たばかりでこれから大学院に行く考えもあり、米国でまだ過ごしたいという思いもありました。これらの理由から、卒業後すぐに東京へ戻ることには躊躇がありました。

これらを考慮して考えた結果、選択肢Aの米国医療機器企業に就職、が最も点数が高かったです。妻の希望もありますが、何よりも僕の好奇心も米国に残りたいと告げていました。

就職先が、新商品のProduct Managerという僕がこれまでやってきたことであり、かつ最も情熱を注げる職をオファーしてくれたことが、大きな理由の一つでした。

アメリカで、優秀な人たちと働くというのはどんなものなのだろう。最先端のヘルスケアテクノロジーはどうなっているのだろう。新しいものを生み出せて、世界中の患者さんに良いインパクトを与えられたら、それはどんなに素晴らしいことだろう。フレームワークを用いて整理して考えましたが、最後は自分のワクワク感に沿って決めました。

これらが僕が意思決定をした手順です。MBAにこれから行く人・在籍中の人にとって少しでも参考になると嬉しいです。

HBS Show

HBSでは毎年4月にHBS Showという学生主体のミュージカルがキャンパス内で行われる。これがまた非常に楽しい。脚本、作詞、演出、振り付け、小道具、演技、演奏、スポンサー集め等々、全て学生により行われており、いかに才能豊かな人材がHBSにいるかを実感させてくれる。2016年の例はこちらで、リンクを辿れば大体の様子が伝わると思う。

歌は原曲の歌詞を変えてHBSに関するネタが豊富に盛り込まれており、HBS生がすごく楽しめる内容となっている。具体的には、1年目の必修科目のケースに含まれるProtagonist(登場人物)に関するものであったり、HBSにおける恋愛や、普段の生活ではpolitically incorrectで言えないような事柄など。1年目、2年目の学生がどちらも舞台に立っているため、自分のセクションメイトや友人の思わぬ一面も楽しめ、約2時間半の公演を全く飽きずに鑑賞できるだろう。

HBSにおける最大のエンターテインメントの一つであり、毎年の評価も非常に高い。僕も2016年、2017年のどちらの公演も観たが、どちらも素晴らしかった。ぜひ会場で観て欲しい。

MBA取得後にアメリカ就職する時の3つの壁とその越え方

アメリカのビジネススクールへ留学するアメリカ人以外の学生にとって、卒業後の進路として魅力的な選択肢として米国での就職があります。分かりやすいメリットとしては、以下の5つがあります。

  1. MBA採用という仕組みをすでに多くの企業が持っており、昇進速度の早いLeadership Development Programなど魅力的なプログラムが多い
  2. 給与水準が他国よりも高い($135,000/yearがHBSでの卒業後の平均給与、これにボーナスや転勤費用補助などその他の福利厚生が加わる)
  3. 労働環境が相対的に良い(米国では日本よりも労働時間が相対的に短い職場が多い)
  4. 世界中から優秀な人が集まっており、働いていて楽しい
  5. 子育てをする環境としても良い(高額だが、保育所やNannyなど子供を預ける仕組みが整っている上に良質な教育機会が多い)

一方で、これらのメリットを求めてインターナショナル生が米国労働市場に殺到するため、競争は結構厳しく、米国就労には3つのハードルを超える必要があります。ハードルとその越え方について説明します。

ビザ(Visa)のハードル

最も大きなハードルはビザの壁です。アメリカ国籍や永住権(グリーンカード)を保有していない場合には、米国で就労し続けるためには労働ビザが必要です。

米国の大学を卒業したインターナショナル生の場合、OPT (Optional Practical Training)というプログラムで1年間は労働ビザなしで就労できますが、その期間を超えて就労しようとすると一般的にはH1-Bという労働ビザが必要となります。

このH1-Bですが、米国人の雇用を守るために年間の発行上限が定められており(20,000が大学院以上の学位保有者の優先枠で、65,000がそれ以外の全て)、それを超えた人数が応募した場合は抽選、とかなり留学生泣かせの作りになっています。

近年では200,000人以上が応募しているために、大卒の資格で応募した場合にはH1-Bが取得できる可能性は1/3以下。加えて、トランプ大統領の政策により、より移民抑制の方向に舵を切ろうとしているために、このH1-Bの制度自体がどうなるのかも不透明です。

ビザは個人にとってもリスクですが、企業にとってもせっかく採用してトレーニングした人材が国外に離れるために離職してしまうということでリスクとなります。おまけにH1-Bは企業にスポンサーしてもらう必要があるために、多くの企業はその手間やコストを嫌がります。

結果として、MBA生をターゲットとした採用枠でも、90%以上の企業はそもそもインターナショナル生は採用しません。残りの10%以下の枠でも一般的にはすでに労働ができることが決まっている米国国籍保有者・永住権保持者、もしくは過去にH1-Bを取得していた留学生(H1-Bの延長、とすれば抽選のプロセスから逃れられる)を採用する方が企業側にとってはリスクが低いため、ビザなしの応募者はそもそもかなりのハンデを負っての戦いとなります。

ビザの問題は個人の力でどうにもできないこともあり、悩ましいです。米国で就労したいという人はH1-Bのシステムが新しい大統領の下でどう変わるかを注視しておいた方が良いでしょう。

アメリカのMBAであれば移民法を専門にした弁護士によるビザに関するセッションが年数回開かれることが多く、個々人の状況に応じたアドバイスも受けられるため、積極的に利用するといいかもしれません。

言葉・文化のハードル

これは言わずもがなですが、米国で就労する場合には英語でコミュニケーションをとれる力があることが大前提となります。インターナショナル生の中でも同じ土俵で戦うのは、多くが高校や大学から米国に来て米国で就業した経験のある人や英語が母語の人なので、彼らの方が英語のレベルが高いです。

加えて、米国文化への理解もコミュニケーションの際に重要となるため、はじめてアメリカに留学に来る留学生には辛い点の1つです。例えば、ネットワーキングの機会でどれだけ会話を盛り上げられるか、は文化への理解度に結構左右されるので、英語が話せてもこの点で難しさを感じるインターナショナル生も多いです。

競争のハードル

ビザと言葉・文化の壁に問題がなかったとしても、米国は世界各地から就労したい人が来ることもあり、そもそもの競争環境が日本よりも厳しいです。

日本での就職活動以上に自分の強みと会社のニーズを理解し、どうして自分なのか、をうまく伝えることが求められます。特に競争相手となる米国人のMBA生は米国の就職活動というゲームのルールを理解した上で、かなりの時間を使って就職活動に挑むので、レジュメ、カバーレター、ネットワーキング、インタビューの各プロセスが高いレベルに仕上がっていないと、オファーまでたどり着くことは厳しいと思います。

いかにハードルを超えるか

そうは言っても、これらはあくまでもハードルであり、飛び越えれば良いだけの話です。ビザについてはそもそもインターナショナル生をスポンサーしている企業に絞る、もしくはネットワーキングを通じて窓口をこじ開けることができます。

言葉・文化についてはせっかく米国MBAにいるのですし、日々の生活で改善していけば良いです。競争の壁についても、自分が強みを有する分野を狙えば、十分戦えます。

MBAでは付属のキャリアセンターがレジュメやカバーレターを見て直してくれますし、キャリアコーチがどのような企業にどうやってアプローチをすれば良いかを一対一でアドバイスをくれます。ネットワーキングやインタビューについても練習の機会を提供してくれることが多いため、一般的には就職活動に必要な資源をMBAは提供してくれるでしょう。

僕の周りのClass of 2017のインターナショナル生では、大学内の就職活動支援やインターンを通じてMcKinsey、BCGなどのコンサルティング、Goldman Sachs、UBSなどの投資銀行、Amazonなどのテック系企業、Danaher、Samsung、Fordなどの大手製造業からオファーをもらった人が多いです。

これらの企業の特徴はグローバルに展開しており、もしH1-Bが受からなくても米国外への転勤が可能な企業ということです。海外オフィスのない中小企業やスタートアップは正攻法では門が開いていないために厳しいですが、個人的なネットワークを使ってオファーをもらい、米国に残る人もいます。

そもそもアメリカに残る必要はあるのか

また、昨今では母国へ帰る方が良いオプションとなることも多いため、なぜアメリカに残りたいのか、をはっきりさせた方が良いかもしれません。

米国MBA取得者が少ない日本のような国であれば、帰国した方がより差別化ができ、就きたい仕事に就きやすいです。例えば、アメリカのプライベートエクイティやヘッジファンドについては、米国本社についてはインターナショナル生が入るのはほぼ不可能と言われるくらい狭き門ですが、母国に帰れば支社の門が開いていることがあります。また、スタートアップの日本支社立ち上げの機会もあるようです。

実際、中国やインドのように急速に発展している国の出身者の場合、帰国した方がより将来性があると考える人も多く、最近はアメリカに無理に残ろうとせず、帰国する人の割合が増えてきています。母国の方が家族や友人がおり落ち着くし、ご飯も美味しい、というのもよく聞く理由の一つです。

アメリカ、自国以外に行くという選択肢

アメリカ、自国、以外の国に行くという選択肢もあります。アメリカのトップスクールのMBAのメリットとしては世界中に就労するためのパスポートを与えてくれ、特に英語圏であれば移動が比較的しやすい印象です。

米国内でオプションを探しても良いし、自国へ帰っても良い。あるいはシンガポールやロンドンなどの英語圏に行っても良い。特に、HBSは世界中に卒業生がいてネットワークがあること、HBSブランドが評価されていることなどから、行きたい場所にアプローチしやすいです。

こういった世界のどこでも働けるようになるための下地は日本で教育を受けただけではなかなか持つことが難しいため、世界のどこでも働けるようになりたい、と考える人にとってはアメリカのトップスクールのMBAは良いパスポート取得の機会になるかもしれません。

ハーバードビジネススクールでの起業に関する授業外の機会

起業に関するHBSの機会は授業だけではなく、課外活動でも様々な機会がある。

iLab

まず、iLab (innovation Lab)と呼ばれる施設がHBSのキャンパス上にある。こちらはスタートアップに興味のある人が集まる場所で、様々な起業に関するイベントが毎週のように開かれている。イベントはアイデアピッチコンテスト、プロダクトマネジメント、マーケティング、デザイン、資金調達、知的財産、など様々で、スタートアップをする上で有用なアドバイスをかなり得られる。iLabはチームとして申請して、申請が通るとコワーキングスペースとして使え、他のチームとのやりとりで新しいアイデアがもらえる。また、アメリカのコワーキングスペースらしく、コーヒーなどの飲み物やスナックが飲み放題、食べ放題だ。

Rock Center

同様の施設としてRock Centerがあり、こちらでも時々スタートアップ関連のイベントが開かれる。特に法律関連のイベントは外で相談すると数百ドルかかるような内容が無料で聞けるのでおすすめだ。

1年目と2年目の間の夏休みにある「Rock Summer Fellows」も有用なプログラムだ。これは夏休みに自分のアイデアを試したい学生を対象にした金銭サポートのプログラム。スタートアップのアイデアに挑戦したいが、夏休み中にインターンをして少しでも学費の足しにしたい、という学生の悩みに対するHBSのアプローチで、Summer Fellowsに選択された学生には週$600が支給される。2016年は他国でリサーチする学生へ航空券代まで支給されたので、この種のプログラムとしてはかなり寛大だと思う。また、このFellowsはスタートアップに関心のある学生が集まるため、ここでの集まりも良いネットワークとなる。

New Venture Competition

HBSで最大のビジネスコンテストとなるのが毎年春学期に行われる「New Venture Competition」だ。こちらはいわゆるビジネスコンテストで、営利ビジネスと非営利ビジネスの2つのコースで審査がされる。HBSの学生が少なくとも一人はチームに含まれていることが参加条件で、多くのチームがHarvardの他スクールやMITなどのHBS以外の学生とチームを組んで出場している。MITの100Kと同様にボストン界隈では大きな学生ビジネスコンテストの1つで、優勝賞金も$75,000と起業の頭金として悪くない額だ。

クラブ活動

クラブとしてはEntrepreneurship Clubの活動などがある。こちらは年一回のSPARK Entrepreneurship Conferenceが主な活動で、カンファレンス運営に興味があれば良いが、クラブとしては正直集まりが少なく、あまり有用ではない。テクノロジー系であればCODEというコーディング系のクラブの方が活動が活発でほぼ毎週集まりがあってサービス開発の進捗管理ができるので、こちらの方が良いだろう。

他にもEntrepreneurship in Residenceとして起業経験者がHBS近くに住んでおり、この中からアドバイザーを見つけて相談をすることもできる。アドバイザーはテクノロジー系、サービス系、メディカル系などかなり幅広くいるため、たいていの分野で関連するアドバイザーを見つけることができるだろう。

ボストン

最後に、Harvardやボストンという場所も大きな魅力だ。HarvardはHBSのみならずMedical、Public Policy、Law、Engineering、Educationなど幅広い大学院を持つために、異なった専門分野の人と話をする機会にあふれている。ボストンはHarvard、MIT、Boston University、Boston Collegeなど多くの大学や研究機関が集積しており、大学や研究所にはスタートアップの種がゴロゴロと転がっている。具体的にはケンブリッジには研究所発のライフサイエンス系のスタートアップの集積がある。研究寄りのテクノロジー、特にライフサイエンスに興味のある人にとっては、ボストンは最適な場所だろうと思う。

ハーバードビジネススクールの起業に関する授業

今週で3月も終わり、残すところ授業はあと1ヶ月を切った。HBSの2年生の間では「卒業後どうする?」が定番の話題だ。すでに仕事が決まって卒業旅行の計画を練っている人もいれば、スタートアップなど卒業のタイミングギリギリから採用活動を始める会社への就職活動がピークになっている人もいる。起業してすでにバリバリと自分のビジネスを進めている人もいる。起業に興味のある人向けに、今回はHBSでの起業に関する授業について紹介したい。

カリキュラム

HBSでの授業は1年目は必修で、2年目は完全に選択授業だ。1年目の必修のうち、起業に関する直接的な授業は「The Entrepreneurial Manager」という2学期目の科目だ。この授業ではビジネスモデルの分析、資金調達、ビジネスモデルの改善などを扱い、扱う企業のサイズもまさしくアイデアの段階から上場するレベルの大きさまで扱う。ゲストも多く、実際の起業家の話を聞いたり、質疑応答をすることで、ケースの登場者から直接学ぶことができる。

また、1年目の冬休みには希望者向けにStartup Bootcampがあり、こちらは10日間でアイデアを実際の形にするところまでを実践できる、かなり密度の濃いプログラムだ。スケジュールを見てみればわかるが、スタートアップのCEOやベンチャーキャピタルのパートナーなどゲストもそうそうたる顔ぶれで、ゲストからの学びも非常に多い。

2年目の選択授業でも起業に関する科目が多く提供されている。個人的なオススメはRobert Whiteの「Entrepreneurial Finance」とShikhar Ghoshの「Founders Dilemma」だ。Robert WhiteはBain Capitalの創設メンバーであり豊富な実務経験を持つとともに、Mitt Romneyの2012年の選挙参謀を担うという政治にも明るい教授で、まさしくHBSでないと出会えないような人だ。Shikhar GhoshもCEOとしてAppex、Open Marketを成長させ、どちらもExitを成功させるなど実務経験が豊富な教授で学びが多い。

他にも、HubspotのChief Revenue OfficerであるMark Robergeが教える「Entrepreneurial Sales and Marketing」も評判が良い。テクノロジー系に興味がある人には「Launching Tech Ventures」や「Scaling Tech Ventures」、ヘルスケア系に興味がある人には「Innovating in Health Care」など分野別に特化した科目もあり、その気になれば起業系の科目だけで選択授業の大半を埋めることができる。「Launching Tech Ventures」や「Scaling Tech Ventures」はほぼ毎回ゲストがいるので、起業家とネットワーキングをしたい人にとっても非常に価値がある授業だ。

また、起業に集中する人は、FIELDという実践系の授業や「Independent Study」という教授と組んで自分のスタートアップを題材にしたレポートを出す授業を取る人が多い。これは、①教授からアドバイスを定期的に受けられる、②授業を受けなくて良いのでその分の時間をスタートアップに使える、という2つのメリットがある。

他の大学との比較はできないが、起業に関する授業に関しては、①サイズの大きなMBAプログラムのため選べる科目数が多い、②実務経験とアカデミックの両方を併せもった経験豊富な教授が多い、③ゲストが来る率が非常に高くゲストから直接学べ、しかもネットワーキングの機会もある、という3点がHBSでは強みとしてあるのではないかと思う。

そのほかのプログラム

加えて、授業はあくまでもほんの1部分でしかない。他にもHBSが用意している起業家向けのプログラム(Rock Summer Fellows、New Venture Competition)や施設(iLab、Rock Center)や課外活動の機会(Club etc)も豊富にあるため、こちらは次回以降に紹介したい。

アイスランド旅行(観光・教育・経済)

アイスランドへ旅行に行ってきました。日本からは遠いですが、オーロラや氷の洞窟をはじめとした豊かな自然で有名なアイスランド。

一度は訪れてみたいアイスランドの観光について書いていきます。

人気の行き先のアイスランド

HBS生の人気の行き先はボストンから直行便が出ており、かつ比較的近いアイスランドだ。同学年の5人に1人以上はアイスランドへ行っている印象だ。僕も春休みの1週間を利用して、4泊5日でアイスランドへ妻と行ってきた。

アイスランドでは観光がBalance of Paymentを見ても一大輸出産業なのだが、それを裏付けるように観光面で非常に整備された国だと感じた。

アイスランドの自然

まず、アイスランドの目玉は何といっても大自然だ。メインの空港であるケフラヴィーク国際空港からバスで20-30分ほどで行けるBlue Lagoonは、何もない場所にある天然温泉の施設で、ぬるめの温泉の中に浸かっているのはとても気持ちよかった。

ブルーラグーン

総称してGolden Circleと呼ばれるシンクヴェトリル国立公園、滝、間欠泉、火口湖も見応えがあった。氷河を掘って人工的に作られたIce Caveも不思議な空間で、氷河についての関心と理解がさらに増した。冬なので寒かったが、どの光景も雪や氷で覆われており、まさしくIceland、氷の国だった。

ゴールデンサークル

自然という観光資源を活かすためのインフラも整っており、Reykjavik Excursionsをはじめとした観光会社が日帰りツアーを運営しており、ツアーに参加すればレンタカーをしなくても効率的に回ることができる。

氷の洞窟の中

首都レイキャビック

レイキャビック(Reykjavik)の街もコンパクトで観光客フレンドリーだ。街のカフェやレストランのいたるところにFree WiFiがあり、観光バスですらWiFiがついている。また、訪れたすべてのお店でクレジットカードが利用でき、結局、僕は現金を一度も使っていない。

レイキャビックのみならば、クレジットカードがあれば両替しなくても生活できるだろう。英語がどこでも通じるため、言葉の面でも苦労がない。道路もそれぞれにわかりやすい位置に通り名が書いてあり、加えて各家に番地を表す数字がついているため、住所とマップさえあれば比較的容易に目的地に到着できる。メイン通りが歩行者天国になっているなど車通りもそこまでは多くないため、街を歩いていて、寒いことを除けばストレスを感じることが少なかった。この街の造りは、インバウンドを伸ばしたい日本の自治体にとって参考になることが多いだろう。

アイスランドの物価

一方、旅をしていて物価の高さには驚かされた。僕はアメリカの中でも物価が高い地域であるボストンに住んでおり、日本の1.5倍くらいの物価には慣れているのだが、アイスランドはボストンと比べてもかなり高い。普通のスーパーで買うアボガド・チキンサンドイッチが990クローネ (約1,000円)くらいするし、レストランへ行けば前菜が1,500クローネ (1,560円)、メインメニューが4,000クローネ (4,160円)くらいする。食事は美味しいのだが、量は日本と同じくらいの量で、米国の量に慣れるとやや少なく感じる。

感覚的には日本の2から3倍くらいの価格だ。あまりの物価の高さに、僕らはBonusという安売りスーパーやベジタリアン向けのスーパーで食材を買って、なるべく滞在先(Airbnbとアパートメントタイプのホテル)で食べるようにしていた。

アイスランドの教育

観光という点を除いても、アイスランドは興味深い点が多い。まずは教育。Human Development Indexが示すように、国民のほとんどが英語を話し、教育水準も高そうな印象だ。ガイドの人曰く、アイスランド語はアルファベットの数が多く、英語、ロシア語の音が理解しやすいとのこと。また、アイルランド語を守ることへの意識が高く、外来語も英語をそのまま使うのではなく、アイルランド語に訳したものを使うとのことだ。自国だけではビジネスとして規模が小さすぎるアイスランドにとっては、英語を使えることが必須でありながら、同時に自国の言葉も守ろうとする姿勢は、小国のみならず日本のような比較的大きな国も学べることが多いと思う。

アイスランドの経済

経済という点でも興味深い点がいくつかあった。アイスランドは国が小さく、人口はそもそも30万人超と宮崎市よりも少ない。そのように小さく、かつ他の国から離れている市場のため、おそらく進出の優先度が低く、グローバルブランドが少ない。街中を歩いていてもZARAやH&Mといったヨーロッパでメジャーなブランドは見当たらないし、チェーンもDunkin Dounutを見かける程度でStarbucksやMcDonaldも見当たらない。首都でこれほどグローバルブランドが見当たらないというのも珍しい。

色々なことに気づかせてくれるという点で、旅行はやはり楽しいし、学びになる。MBA生活も残り2ヶ月を切ったが、修了までにあと数ヶ国訪れたいと思う。

短期留学の高校生へレクチャーをする

縁あって日本から来ている高校生十数名にビジネスについてレクチャーをする機会があった。構成は高校生側からの英語でのプレゼンテーション、僕からのビジネスプランとリーンスタートアップについてのレクチャー、最後にキャリアについての質疑応答。

プレゼンテーションは高校生とは思えないほどしっかりしていたし、臆せず手をあげて質問をする学生が多いなど、自分が高校生の時よりもずっとしっかりしているな、と感じた。彼ら・彼女らのような学生が増えれば、日本の将来も明るいだろう。

今、高校生だったら海外の大学に進学しますか?

キャリアについてはいくつか質問を受けたが、面白いなと思ったのは、「今、高校生だったら海外の大学に進学しますか?」という質問。

僕は「僕が君らと同じ立場ならすると思う」、と答えた。日米の大学での学生生活を経験して感じるのは、やはり米国・英国トップレベルの大学には世界中から優秀な人が集まっており、より刺激的だということだ。

僕が通った大学も良い大学だと思うし優秀な人に囲まれていたと感じるが、同じかそれ以上に優秀な人がおり、かつ多様性があるという点ではやはり米国・英国の大学が勝る。加えて、今は孫さんや柳井さんの奨学金があるため、受給できれば金銭面でもかなりの部分がカバーされる。日本国外でも勝負したいならば、挑戦しない手はないと思う。

また、「それだけ色々な経験をしてきているという話を聞いて、安心しました。大人はみんな夢を持て、やりたいことを見つけてそれを続けるんだ、と言うのだけど、途中で変えても良いのですよね」、というコメントはそうだよな、と思った。そして、「そうだと思うよ」、と答えた。

高校生に伝えたこと

僕が高校生の時は、社会のことなんて全然分かっていなかったし、「多くの人の命を救えるような仕事をしたい」(当時はHIVやガンを完治させる薬を作り出したい)、というようなある意味漠然とした思いしかなかった。

就職の際も軸は持っていたが、これが自分の生きる道だ、とまで言い切れるほどのものはなかった。働き始めて、色々試して、自分を振り返って、より自身を理解して、ようやく自分がやりたいことが見えてきた、というのが正直なところだ。

ずっと好きなもの・やり続けていたいものがあれば、それをやり続ければ良いと思う。好きなことが見つかっているのは、幸せなことだ。

ただ、好きなことが見つかっていなくとも焦る必要はなく、今、興味があったりやりたいものを選べば良いと思う。そうやって選んで、試してみて、考えて、また選んでいけば、真にやりたいことに出会えるのではないかな、と思う。

HBS授業紹介: U.S. Healthcare Strategy

HBSはInitiativesとしていくつかの領域の強化をしており、Healthcare Initiativeもそのうちの一つだ。日本人の視点からすると、なぜヘルスケア?、非営利の分野なのではないか?、と思う人もいるかもしれないが、米国ではヘルスケアはGDPの17.8%を占め、インフレ率以上の成長を続ける民間主導の産業であり非常に重要度が高い(2015年)。おまけに、国民一人当たり$8,508 (約92万円)も使っていながらOECD Health Statisticsによれば、医療の質はOECDの国の中でも低い位置にあり、HBSとしても「どげんかせんといかん」というわけだ。

U.S. Healthcare Strategyは元McKinsey、元Kelloggの教授であるLeemore S. Dafnyが開講しているコースだ。Leemoreは特にヘルスケアに関する公共政策の分野ではかなり知られた教授。

2017年のコースは半セメスター(約8週間)で、扱うケースは米国のヘルスケア業界の幅広さを示すように、病院、クリニック、製薬、保険とかなり幅広い。具体的には病院では保険と診療の垂直統合モデルであるKaiser、水平統合のケースであるPartners Healthcare、クリニックは透析クリニックのDaVita、保険は米国のAffordable Care Act成立後に急伸したOscar、Preventive Careに焦点をあてたOak Street Healthなど、それぞれの分野で注目すべき企業・組織が選択されている。教授が経済学に強いためか、視点は公共政策に近く、マクロ経済やミクロ経済の視点を多く用いる。具体的に扱うコンセプトの例は、垂直統合モデル、水平統合モデル、代替財・補完財、規模の経済・範囲の経済、など。買収に関連して、独占禁止法や米国の訴訟プロセスについても触れる。HBSの1年目の必修では特にミクロ経済はさわり程度でほとんど扱わないため、必修科目との重なりはかなり少ない。

教授のファシリテーションはうまく、結構バシバシと突っ込んでいくし、生徒同士で議論もさせる。学生はMD/MBA (医者とMBAのダブルディグリープログラム)、元ヘルスケア業界、Public Health専攻の学生が多く、業界の知識がかなり出てきたりして生徒同士の議論からの学びも多い。米国のヘルスケア業界に知見がない人はついていくためにやや努力が必要だが、毎回ハンドアウトが配られるので、要点を掴むのは難しくはない。

授業の負荷は普通からやや重い程度。元々業界の知見がある人であれば、ケースや資料をすんなり読めるのだろうが、僕のように米国ヘルスケア業界に知見がない人にとっては、その度に調べることが出てきて、やや時間がかかる。例えばMedicare Advantageとは何か、Primary/Secondary/Tertiary Careの定義は何か、などは知っていることが前提として議論がなされるため、授業についていくためにはそれらを知っている必要がある。僕は最初はさっぱり分からなかったので、新しい単語が出てくるたびに毎回Googleで検索をしていた。

全体として、ヘルスケアに興味のある僕としては非常に満足度が高いコースで、5段階中4.5くらいの評価だ。米国の広大なヘルスケア産業をこれだけ全体感をもって説明してくれる授業は初めて。公共政策的な観点も企業視点の科目が多いHBSでは新鮮。また公共政策的な観点のみならず、企業視点としてもヘルスケア業界の特殊性を活かしてどんな戦略がありえるか、ということを扱い、これも非常に学びが多かった。

製薬業界をもとに学びの具体例を挙げると、ジェネリックが入ってきて独占的な利益を失うことを防ぐために、①Product Hopping (同じ効能の薬を容量や摂取方法などマイナーチェンジをすることで新たに特許を取得して、独占的な利益を享受できる期間を伸ばす)、②Pay-for-Delay (ジェネリック薬製造企業に金銭または金銭的価値があるものを払うことによってジェネリックが入ってくる時期を遅らせること)、③Shadow Pricing (独禁法に触れない範囲で競争相手に価格上昇でシグナルを送り、お互いに価格を上げる行為)など。業界ごとにこういった学びがあり、卒業後に米国ヘルスケア業界で働く人に対しては履修を強くお勧めできる授業だ。来年は1セメスターを通してのコースになるようなので、より深く、広くアメリカのヘルスケア業界が学べると思う。

一方、得られる学びは他の規制が強い業界にも適用できる(電力などインフラ系など)と思うが、かなり業界特化した授業なので、ヘルスケア業界に関心がない人にとっては他の授業を履修した方が良いかもしれない。

HBS授業紹介: Launching Tech Venture

HBSでは起業家教育に力を入れており、起業家向けのコースも多い。米国ではテクノロジー系の起業が特に多いこともあり、テクノロジー系の起業家育成に焦点をあてたのが、この”Launching Tech Venture”だ。教授はJeffrey RayportJeffrey Bussang。僕の履修している授業の教授はJeffrey Rayportで、Ph.Dを持ちながらPEや起業家としての経験も豊富な、ハイブリッドタイプだ。

2017年のコースでは半セメスターで、扱うケースはほとんどがシードからSeries Bくらいまで、とアーリーステージの企業を扱う。ケースで扱われるビジネスはアメリカでのトレンドを反映してか、ソフトウェア系が多く、マルチサイドプラットフォーム(Amazonやメルカリなどの売り手と買い手を結びつけるサービス)やSaas (Service as a software)の企業を扱う。有名どころだとRapid SOSなど。扱う分野はプロダクトマネジメント、グロースハック、ビジネスディベロップメントで、学ぶコンセプトの代表例はPMT (Product Market Fit)、LTV (Life Time Value)、CAC (Customer Acquisition Cost)、Sales Learning Curve、など。基本的には1年目の必修であるTEM (The Entrepreneurial Manager)で浅く学んだ科目をテック企業に焦点を当ててもう少し深めた科目だ。

僕は元々プロダクトマネジメント、グロースハックに近い仕事をしていたために、これらの分野は元々仕事でやっていたことを整理するのに役立ったレベルだが、ビジネスディベロップメントについては新しいことが多く、学びが多かった。最初のSales責任者の選び方、Sales Learning Curve、Sales Cycleの長さとインパクトの大きさのトレードオフをスタートアップでどう考えるか、など知るのと知らないのとでは営業やパートナーシップチームを設計する際に大きく差が出ると思う。

教授のJeffreyは学生の議論のファシリテーションがうまく、しかも取締役会さながらに突っ込んだ質問をしてきたりと、学生からの発言をうまく引き出している。話し方もエネルギッシュで、退屈させないし、毎回のケースからのTakeawayもしっかり説明するため、何を学んでいるかが明確だ。

最も良い点は、ほぼ毎回、ケースの当事者の起業家が来ることだ。授業の後半20分はケースの当事者からの議論を聞いての感想と、当事者への質疑応答に使われる。その後、ランチまたはコーヒーチャットのセッションが用意され、そこでより深い質疑応答をすることができる。起業家は年齢が同じくらいな人が多く、彼らから生の体験を聞ける機会は、かなり貴重だ。

要求されるケース自体のワークロードは軽め。ただ、Optional Readingや毎週日曜日に補足として扱ったトピックに関するブログや記事を全て読めばそれなりの量になるし、各トピックについての理解を深める助けになるので、学びたい人にとっても期待に応えられる授業になっている。

全体を通して、僕にとっては5段階中の3.5くらいの満足度。元々同じ業界にいたためか、得られた学びは他の授業と比べると少なかった。元GoogleでProduct Mangerをやっていた友人も同じような感想を抱いていた。一方、コースの内容としてはテクノロジーのスタートアップで働く人に役立つ学びが多く含まれており、教授も良いため、前職まででこの業界に経験がない人であれば4以上となると思う。教授についてはJeffery Bussangの方の評価が高いが(HBS生活の中で最も良かったという人も多い)、人気なため、ビッディングのプロセスで高めにする必要があると思う。