HBS 1 Year Reunion

昨日、一昨日とボストンへ行き、HBSの1 Year Reunion(卒業生の同期会)に妻と参加してきました。HBSを卒業すると5年に一度Reunionが行われるのですが、最近は卒業後の関係を強めるためなのか、卒業1年後にもReunionが行われています。Class of 2017の出席率は70%超と高めで、アジアや中南米からもそれなりの同級生がReunion参加のためにボストンへ来ていました。

コンテンツ自体は卒業後に起業した人の話やそれぞれの近況報告とあまり内容が濃いものではなかったです。一方で、同級生と久方ぶりに会い、話すことは想像以上に価値がありました。以下、気づいた点です。

  • 今はコンサルティング、ヘッジファンド、プライベートエクイティに勤めている人が多い

HBSの統計にも出ているのですが、卒業後の進路は上記の三つがやはり多いです。僕のセクションではReunionで60人程度が集まったのですが、その中でもMcKinsey、BCG、Bainで15人程度いましたし、ヘッジファンドやプライベートエクイティも約10人いました。一方、スタートアップを卒業後にしていた人は上手くいっている人もいれば、あまり軌道に乗らずに一旦は就職したりで、今回来ていた人の中で今も起業を続けているセクションメイトは2人。4年後再び会う時にはもっとばらけているのかと思いますが、やはり一旦は高い給料が稼げる職について借金を返し、その後に好きなことをしよう、という考えが多いように思います。

  • 中西部と東・西海岸の価値観は異なる

HBSに戻ってきて改めて感じたのは、東・西海岸のキャリア重視の価値観。ミネソタは家族との時間を平日にもしっかりとり、週末には親族と時間を過ごしたりと密な親族関係を大事にしているのに対して、ニューヨークやサンフランシスコなどの沿岸部の大都市に住んでいる友人たち(つまり多くのHBS生)は平日はほぼ仕事、家族は違う都市に住んでいるから会うのは年に数回など、よりキャリアを重視しているように思います。どちらの価値観も良いと思いますし、人生のステージによって大事にするものも変わっていくものだと思いますが、ミネソタでの生活を10ヶ月近くしてきた自分がどれだけミネソタの価値観に影響を受けてきたかに気づき、「ああ、これだけの価値観や生活習慣の違いがあるのだな」と改めて感じました。

  • 同級生と話すことの楽しさ

同級生と話していて気づいたのは、彼らの議論に対する感度の良さ。ある話題を振った時に、それに対して自分はこう思うとか、自分だったらこうする、ということを簡潔かつ理由も含めてすぐに言える人が多いように感じました。例えば、「自分が幸せだと感じているとしたら、これ以上何を望むべきなのか」という点について議論をした時には、「家族を大切にして、家族に何かを残すというのも立派な生き方だと思う。ただ、それ以上に社会に何かを残したいという想いがあるのであれば、社会に対してのインパクトを追い求めても良いのではないか。例えば僕の場合では〜〜〜」、という意見がパッと出てくるなど、授業さながらの議論が普通の会話の中に出てきました。それぞれが自分自身の価値観や軸を理解した上で議論をする力があるので、一緒に話をしていると楽しい。議論をする力や自分自身の軸を見つけることはまさしくHBSでトレーニングしてきたこと。HBSにいた時には当たり前過ぎて気づかなかったのですが、卒業後の今は、そういう友人と会話ができることは貴重な機会だと感じます。

  • 世界中に共通の価値観を持った友人がいるということのありがたさ

今回のReunionで改めて感じたのは、世界中に様々な分野で挑戦をしている友人がいるということ。僕の次の行き先であるオーストラリアにも同級生がいますし、7月に参加する予定のロンドンでの結婚式でもアメリカ、欧州から集まった同級生と会う機会がある。政治コンサルティングをしているフランス人の同級生と最近のアメリカ情勢について話をしたり、Google本社に勤めているアメリカ人の同級生と各国選挙に関するGoogleの新しいサーチ機能について話をしたり。HBSは一学年に900人以上いるマンモス校なので、それだけネットワークは広いというのは入学前にも認識はしていましたが、卒業して皆がそれぞれの分野に進んだ今、改めてそれが事実だと感じます。これは仕事の面、個人の面のどちらの繋がりという点でもありがたく、この繋がりだけでも価値があると感じました。

全体を通して、1年後のReunionは、友人から刺激をもらえ、かつ旧交を温めることができるという点で、多くの友人と離れてしまっている人にとっては良いイベントではないかと思いました。特に僕のようにニューヨーク、ボストン、サンフランシスコといったHBS卒業生が多く集まる都市から離れて暮らしている人にとっては、良い機会となりました。

MBA Oath

MBA Oathという宣誓式が卒業式の一日前の今日に行われ、それに参加してきた。これは医者にとってのヒポクラテスの誓いのように、マネジメントの道を進むリーダーにとっての倫理規範となることを目指して2009年に作られたもので、この理念に賛同するMBA生が自主的に参加するイベントだ。2017年のこのイベントは学生とその親族が集まり、Burden HallというHBSで最も大きな会場が半分以上は埋まった。

このイベントで幸いにもスピーカーの一人に選ばれたので、なぜ僕がこの宣誓に署名するかについて、下記のようなスピーチをしてきた。

Coming from a tiny East Asian country, called Japan, two years at HBS was full of surprises.  Who in the world have gone through 500 case discussions facilitated by world-renowned professors. Who have more than 90 friends, who share aspiration to make a difference in the world. Who have close-knitted global community to which you can reach out throughout your entire life. Most people at least in my country do not have a single one of them. This is a privilege, and with great privilege comes great responsibility. As a person who is lucky enough to receive such amazing education, make friends, and build networks, I would like to contribute to society. This is the reason why I sign the oath.

最初の”a tiny country”の出だしのところは笑いを狙っていたが、狙った通りに会場が笑ってくれて、その後がやりやすくなった。with great privilege comes great responsibilityはよく引用される表現の一文字を変えたのだが、気づいた人は気づいてくれたかなと思う。

HBSで2年間を過ごせたということは非常に幸運なことで、僕個人としては得たものを活かして社会に還元していく責任があると思う。この思いを忘れずに、社会を少しでも良い方向に導けるような活動をしたい。

2年間でHBSから得られたもの

HBSでの最後の授業、Bridgesが終わった。Bridgesは3日間のいわゆる締めのプログラムで、地域・業界別のネットワーキングができたり、職務別のアドバイス、今後のキャリアに関するアドバイスを得られる機会だ。期間中、1年間を同じ教室で過ごしたセクションメイトと久方ぶりに同じ教室で再会し、近況を話し合い、その後に授業で再びケースを議論した。まるで1年前に戻ったようで、自分がいかにこの空間を好きだったか、を改めて感じた。また、Bridgesを通じて、自分がこの2年間で何を得たのか、がよりクリアになった。

昨年「MBA受験-ビジネススクールで得られるもの」、でMBAの価値として「A Good Business Foundation」、「Networking」、「Career Change Opportunity」の3つが主要な価値で、「Quality Time」、「Brand」の2つを加えた計5つが価値と述べた。それらが得られたというのはそうなのだが、最初の3つについては得られたものについてより具体的に表現できるようになったことと、少し感じ方が変わってきたので、今回続編を書いてみようと思う。内容はMBA一般というよりも、僕がHBSで得られたものについて、だ。

Personal Development

最も大きな成果は人としての成長だと思う。HBSでは1年目、2年目ともに人生の価値観について考えさせられる機会があり、その機会を経て、人生についての理解が深まった。

BSSE (Building Successful and Sustainable Enterprise)でClayton Christensenが行う最後の講義の”How will you measure your life?”もその一つだ。彼は実務家としても、教授としても成功した教授だが、彼が最も大事にしているのは妻と5人の子供を育てることだと言う。そのためにも、彼は土曜日と日曜日は家族のためにあてる時間としてコミットして、BCGで働いていた時から土日は働いていなかった。何を人生において成し遂げたいか、そのためにどのように自分の時間という資源を配分しているか、それをどうやって実現するか、という彼の講義は非常に示唆に富んでおり、彼の講義を受けることができたのは幸運だったと思う。同じテーマでFounders’ DilemmaのShikhar Ghoshも「幸せに最も影響を与えるのはどのような質のRelationshipsを築けているか」であり、”Relationships trump everything”ということを教えてくれた。人生における自分なりの成功の定義は何か、それを実現するために日々どう行動するべきか、について、HBSは自分なりの答えを見つけるための機会をくれた。

人との関わりを通じて、リスクについての考え方も変わった。HBSには本当に多くのゲストが来る。起業家もいるし、大企業の役員もいるし、政治家もいるし、訪れるゲストの幅が広い。彼らの生き方を聞き、彼らと話していて気づくのは、別に彼らが僕らと別次元に住んでいる人ではないということだ。いわゆる自分の人生を生きている人とそれ以外の人の違いは、リスクを取っているかどうか。彼らが口々に言うのは、「リスクを取らないことがリスクだ」、と。多くの教授もその見方を後押しする。一度や二度ではなく、2年間毎日のようにそういった話を聞いていると、自分もやれるという自信が生まれてくる。挑戦をしての失敗は僕を強くしてくれる。HBSは僕に「やればできないことはない」という自信をくれた。

HBSはBusinessについて学ぶ場かと思っていたが、実は人生について学ぶ場だった。自分の本当にやりたいことは何なのだろうか。何を自分の人生において大切にするべきであろうか。21ヶ月という比較的長い時間があったため、そういった質問を自分に問いかけ、考え、妻や友人や教授と議論する時間が持てた。これにより、自分がこの先の人生を生きる上での土台を作ることができたように思える。僕自身は、実はHBSに来る前にはもう自分の価値観はある程度固まっていてそこまで変化はないかと思っていたのだが、振り返ってみるとかなりの変化があったように思える。これは予想していなかったが、得られたものの中で最も大きかったものの一つだ。

A Good Business Foundation

ビジネスについては、幅広い視点を身に付けることができたと思う。特にLEAD (Leadership)の授業が素晴らしく、リーダーシップについては一生使えるような考え方を学べた。

HBSの1年目の必修科目はよく練られており、ケースメソッドでビジネスを包括的に学べるようになっていた。大きく分けると、マクロ経済・グローバライゼーション(BGIE、FIELD 2)、リーダーシップ(LEAD, LCA, FIELD 1)、ファンクション(STRAT, MKT, FIN1/2, FRC, TOM)、アントレプレナーシップ(TEM, FIELD 3)の計4つ。ケースメソッドでは様々な経営の場面において、①何が起きているのかを分析し、②何をするべきかを立案し、③どう実行すれば良いのかのアクションプランを立て、④実行の際の障害やリスクとそれらを解決または減らす方法も立案する、ということをひたすら行うため、「どういう場面で、何を、どのように考えれば良いのか」、が思考のプロセスとして築かれる。この思考のプロセスが、より成功確率が高い意思決定をするために役立つと感じる。

一方、2年目は全て選択科目で、自分の伸ばしたい分野について学ぶことができた。僕の場合、戦略(Strategy and Technology、Strategic IQ)、組織(General Management Process and Actions、Designing Competitive Organizations)、ヘルスケア(U.S. Healthcare Strategy、Innovating in Healthcare)、アントレプレナーシップ(Founders’ Dilemma, Launching/Scaling Tech Ventures)、ネゴシエーション (Negotiation)、ファイナンス(Entrepreneurial Finance)、マクロ系(Globalization and Emerging Markets)と幅広く履修した。

得られたものの一例は、戦略的な思考がある。こちらに来て学び始めて、僕の場合、プロダクトマネジャーとしてプロダクトレベルの「戦術」や「アイデア」は考えていたが、事業レベルの「戦略」についてきちんと考えることができていなかったことに気づいた。僕は新しい機能やデザインでの商品の差別化など、プロダクトマネジャーとして単年度で結果を出すような施策は考えて実行してきたが、中長期でどのように持続可能性のある競争優位性を築いていくか、そのためには組織に対して影響をどのように与えていくべきか、という観点が抜けてた。あの時の僕が今と同じように考えられたら、より戦略的な提言と実行ができたと感じる。

もう一つの例は、リーダーシップだ。僕は前職での経験を通じて、人に動いてもらうためには「情熱、論理、思いやり」が必要であり、そのためには自分が最もお客さんや商品、技術を理解して、チームを動かしていく必要がある、と考えてた。今でもその考え方は残っているが、今ではチームをどうやってデザインし、立ち上げ、マネージするかについて、より多くの要素があることを知っている。前職で初めて人のマネジメントを経験した時にはマネジメントについて「何を、どう考えれば良いのか」、が全て手探りで一つずつ自分の使える道具を探していく感じだったが、今では以前は知らなかった道具があることを知っているので、その道具を使って、より良いリーダーシップがとれる気がしている。

MBAに来るまでは、学習から「知識」がつくのかと思っていたが、実際には様々な状況における「思考方法」や「視点」を学んだという方が近い。この学びがどの程度役に立つのかは卒業後試してみないと分からないが、少なくとも僕は自分の思考の広さと深さが広がったことには十分の価値があったと思う。思考の広さと深さは一生磨き続けていくべきもので、MBAはそのベースを作ることを助けてくれた。

Networking/Friendship

HBSは仕組みに優れた大学であり、その最たるものが「セクション」という仕組みだ。HBSの場合、セクションと呼ばれる93-94人のクラスで1年目を過ごし、同じ教室で、授業を一緒に受ける。授業の大半がケースディスカッションのため、だんだんとその人の価値観や人となりも分かってきて、不思議な親近感を抱くようになる。1年目は何をするにもセクションが主な単位となるので、自然と独自のカルチャーができてくる。セクションごとに卒業後も5年ごとに集まるReunionという機会が用意されているため、この友人関係は(HBSと関わり続ける限り)一生続くものとなる。卒業した時点で誰もが93-94人の一定以上の深さを有する友人を持て、かつ5年後も彼らと会うために戻って来ようと思わせるような帰属感を持たせるこのセクションという仕組みは、とてもよくできている。

加えて、セクションが全てではなく、1年目はディスカッショングループやFIELD 2という新興国のコンサルティング・プロジェクトでセクションを跨いだ人間関係が築け、2年目の授業でさらに人間関係が広がる。Trekの運営や参加、カンファレンス運営、その他クラブ活動等々で、何だかんだでHBSだけで2年間で300人は友人・知り合いと呼べる人はできると思う。ボストン自体も他の大学の学生や研究者の人たちとの出会いの機会が豊富で、出会える人の幅も広い。僕の場合、この2年間でFacebookで新たに繋がった人の数は400人だった。

また、HBSはAlumniとの結びつきも強く、驚くぐらい卒業生が後輩をサポートしてくれる。こちらも卒業後に出会うことができる人の幅を大きく広げてくれる。

世界中に、助け・助けられ、共に刺激し合える友人がいるというのはとても幸せなことだ。この幅広さと深さの人間関係は、僕の一生の財産になるだろうし、全員とは難しくとも、特に仲の良い友人とは今後も定期的に連絡を取り合うことで、より関係を深められるようにしたいと思う。

Career Change Opportunity

HBSを出たことによって、就労の機会が大きく広がった、というのは実感としてある。僕自身、地域と業界を変えて米国で就職することにしたが、これはMBAを経なければほぼ無理であっただろう。

一方で、友人と話していて、見えていなかった現実もあるなと感じた。一つには、インターナショナル生にとってのMBA後の米国就労の厳しさ。米国で就労するためには、企業にH1-Bビザという抽選で取得するビザの申請をしてもらわなければならず、このビザサポートをしている企業が本当に少ない。いわゆるスタートアップ系企業はほぼビザサポートをしないと思っていた方が良い。中規模くらいの会社でも就労のための門がそもそも空いておらず、文字通り門前払いだし、大企業でも人気のあるところは競争が厳しい。ネットワーキングで門をこじ開ける方法もあるが、狭い道だ。科学技術の学位取得者に関しては(特にコンピューターサイエンス)より門が開いているので、単に米国での就労が目的なのであれば、エンジニアリングの専門で大学院に行った方がずっと良いだろう。

二つ目は、年齢が上がってから来ると、納得いくポジションが見つかるとは限らないことだ。米国MBAの平均入学年齢は約28歳で、卒業が30歳前後となる。いわゆるMBA採用をしている企業では、入社時点が実務経験3年+MBA2年の28歳と、実務経験7年+MBA2年の32歳を同じMBA卒として同じポジションで採用することが多いため、実務経験が長い人ほどキャリアアップというよりも、キャリアの横滑りの可能性が高くなる(前者がスタッフ→MBA→マネジャーなのに対して後者はマネジャー→MBA→マネジャー、など)。特に欧州から来る学生はやや年齢が上のことが多いので、この点でオファーを受けるべきかどうかで悩む学生が多いようだ。

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全てをひっくるめて、僕がHBSに来て良かったかと聞かれれば、間違いなく良かったと思う。21ヶ月の機会費用や計24万ドル以上のコストは非常に高いが(奨学金がなければ本当に苦しかった。。。)、生き方、友人、仕事の土台を築けたし、今後の人生をサポートしてくれるようなネットワークへのアクセスや「HBS卒」という一定の信頼を得ることもできた。

MBAを考える人は、検討しているプログラムの学業の内容だけでなく、卒業生が何を得ているかを上記のような観点で検討してみると良いのではないかと思う。

卒業後の進路について

時が経つのは早いもので、本日で授業も終わり。卒業式は5月25日なのだが、僕のHBS生活もあと実質Bridgesという3日間のイベントを残すのみだ。21ヶ月の学生生活は長いなと思っていたが、振り返ってみるとあっという間だ。

僕の卒業後の進路だが、米系医療機器の会社に就職して、米国に残ることにした。卒業後にどうするかは、MBAに来ている人、特にインターナショナル生は行き先の国も含めて悩む話だと思うし、僕もかなり悩んだ。僕の場合、下記のような手順を踏んで考え、意思決定をした。

◆ Step 1: 価値判断の軸を決める

まず卒業後の進路を考えるにあたり、僕は「目的」(Purpose)、「人間関係」(Relationships)、「金銭」(Finance)の三つの軸で考えた。

「目的」は僕がどのように世界に貢献したいかだ。20代の終わりに改めて自分の人生を振り返って気付いたのは、やはり僕は病気を抱えた人やその家族・友人が治療法が見つからずに苦しんでいるのが許せないし、そのことに対して考えたり動いている時に充実感を感じるということだ。だから、世界中の人が自分の病気の治療法を見つけられるような世界にしたいと思うし、「その目標に繋がる仕事」というのを第一の項目として入れた。第二に、僕はテクノロジーの力を信じており、テクノロジーを通じてその目標を達成したいと考えているため、「テクノロジーに関わる仕事」という項目も加えた。第三に、僕は自分でコントロールしたいタイプなので、「事業責任者として動ける」という項目を加えた。最後に、僕は多様なバックグラウンドを持つ人と働いている時に特に楽しさを感じるため、米国、ロンドン、シンガポールなど「英語圏でかつ世界中から人が集まっている場所で働けること」を第四項目に加えた。「目的」としては以上の「病気の人を治療する・もしくは治療法を見つけやすくできるか」、「テクノロジー × ヘルスケアか」、「事業責任者か」、「場所」の4つを評価項目とした。

次に「人間関係」であるが、これも大事な要素だと考えた。まず、働く場所は自分の価値観と合うようなカルチャーにしたい、もしくはそんなカルチャーで働きたいので、「企業カルチャー」を第一の項目として入れた。次に、「一緒に働く人が尊敬できるか、一緒に働いていて楽しいか」を二つ目の項目にした。三つ目としては、「僕の家族が幸せか」、を入れた。

最後に、生活をする上で必要となる「金銭」も評価軸に入れた。僕の場合、「目的」で4つ、「人間関係」で3つ、「金銭」で1つ、の計8つが評価の軸となった。

◆ Step 2: 価値判断に重み付けをする

次にしたことは、それぞれの項目に「重み」をつけることだ。僕の場合、計8つの項目に、合計で100%となるように重みをつけた。具体的には「目的」の4つで40%、「人間関係」の3つで40%、「金銭」で20%の重みをつけた。重み付けの仕方は人により大きく異なると思う。

◆ Step 3: 選択肢を評価する

卒業後の選択肢のそれぞれについて、それぞれの項目に「1(満たしていない)」から「3(満たしている)」まで数字を入れて、点数を洗い出した。すると、合計点数が出てくる。進路の選択肢A、B、Cについて具体的に評価してみると下記のようになる。下記の例だと、Aが最も良い選択肢となる。

※サンプル(数値は例)

◆ Step 4: 再検証

評価軸に抜け漏れダブりがないか、自分の重み付けが適切か、卒業後の選択肢がまだ他にないか、を考えた。

大枠は以上のように考えたが、特にStep 4では妻も含め、色々な人に相談をした。

僕の場合、特に迷ったのは起業という選択肢をどう考えるかだ。

起業する場合、場所の選択肢としてはアメリカか東京の大きく二つを考えた。現状、インターナショナル生でアメリカで卒業後も起業して残る道はあるが、かなり狭い。卒業後にはOPT (Optional Practical Training)という期間が1年間あり、その間に多くの場合は起業家(E2)ビザ取得を目指すことになる。E2ビザ取得には起業家として成功してアメリカに貢献することを示す必要があり、この評価基準は、資金調達、アメリカ人の雇用、ビジネスプランの妥当性などとなる。アメリカは当然のことながら起業家志望も多く、競争も激しいため、言語がネイティブでない、文化が違う、永住権がない、の三つの壁を乗り越えて相当額の資金調達をして雇用を生むのは、かなり細い道。資金調達できなければ、米国登記した会社や開発したものを置いて国外へ出ないといけない。僕の場合、Healthcare Techの経歴があるわけでもなく、これらの壁を乗り越えるだけの自分ならではの強みを見い出すことができなかった。また、自分一人ならば「えいや」で残る手もあったかもしれないが、妻もいるため、そこまでのリスクを取りたくもなかった。他のアジア人の米国での起業家を見ると、米国企業に就職して在住数年→グリーンカードを申請→起業、のパターンが多く、そちらの方が現実的だと感じた。よって、米国ですぐに起業という選択肢は切った。

東京に帰って起業するという選択肢も考えた。こちらは市場の土地勘もあるし、ネットワークもあるし、起業する上では良い環境だ。起業は失敗を繰り返して、それでも諦めずに続けて何度かやってようやく成功するものだと思っているので、卒業後できるだけ早いうちに始めることには大きなメリットがある。一方で、せっかくMBAを出て海外にいるので、もう少し海外で揉まれてチャレンジを続けたいという気持ちも強かった。米国の良いところは競争がより激しく、優秀な人が集まっている上、自分自身が語学、文化、土地勘でハンディキャップを負っており、よりストレッチされる環境であることだ。また、特にHealthcare Techの最先端はやはり米国で、より多くのことが学べるだろうという好奇心もある。妻もまだ昨年に米国に来たばかりでこれから大学院に行く考えもあり、米国でまだ過ごしたいという思いもあった。これらの理由から、卒業後すぐに東京へ戻ることには躊躇があった。

これらを考慮して考えた結果、選択肢Aの米国医療機器企業に就職、が最も点数が高かった。妻の希望もあるが、何よりも僕の好奇心も米国に残りたいと告げていた。就職先が、新商品のProduct Managerという僕がこれまでやってきたことであり、かつ最も情熱を注げる職をオファーしてくれたことが、大きな理由の一つだ。アメリカで、優秀な人たちと働くというのはどんなものなのだろう。最先端のHealthcare × Techはどうなっているのだろう。新しいものを生み出せて、世界中の患者さんに良いインパクトを与えられたら、それはどんなに素晴らしいことだろう。

これらが僕が意思決定をした手順だ。MBAにこれから行く人・在籍中の人にとって少しでも参考になると嬉しい。

米国MBAの就職活動について

HBSに来るインターナショナル生にとって、卒業後の進路として魅力的な選択肢として米国での就職がある。分かりやすいメリットとしては、以下の5つがある。

  1. MBA採用という仕組みをすでに多くの企業が持っており、昇進速度の早いLeadership Development Programなど魅力的なプログラムが多い
  2. 給与水準が他国よりも高い($135,000/yearがHBSでの卒業後の平均給与、これにボーナスや転勤費用補助などその他の福利厚生が加わる)
  3. 労働環境が相対的に良い(米国では日本よりも労働時間が相対的に短い職場が多い)
  4. 世界中から優秀な人が集まっており、働いていて楽しい
  5. 子育てをする環境としても良い(高額だが、保育所やNannyなど子供を預ける仕組みが整っている上に良質な教育機会が多い)

などがあげられる。

一方で、これらのメリットを求めてインターナショナル生が米国労働市場に殺到するため、競争は結構厳しく、米国就労には3つのハードルを超える必要がある。

① ビザ(Visa)のハードル

最も大きなハードルはビザの壁だ。アメリカ国籍や永住権(グリーンカード)を保有していない場合には、米国で就労し続けるためには労働ビザが必要だ。米国の大学を卒業したインターナショナル生の場合、OPT (Optional Practical Training)というプログラムで1年間は労働ビザなしで就労できるのだが、その期間を超えて就労しようとすると一般的にはH1-Bという労働ビザが必要となる。

このH1-Bだが、米国人の雇用を守るために年間の発行上限が85,000と決められており(20,000が大学院以上の学位保有者の優先枠で、65,000がそれ以外の全て)、それを超えた人数が応募した場合は抽選、とかなりインターナショナル生泣かせの作りになっている。近年では200,000人以上が応募しているために、大卒の資格で応募した場合にはH1-Bが取得できる可能性は1/3以下。加えて、大統領が代わり、より移民抑制の方向に舵を切ろうとしているために、来年以降にこのH1-Bの制度自体がどうなるのかも不透明だ。

これは個人にとってもリスクだが、企業にとってもせっかく採用してトレーニングした人材が国外に離れるために離職してしまうということでリスクとなる。おまけにH1-Bは企業にスポンサーしてもらう必要があるために、多くの企業はその手間やコストを嫌がる。結果として、MBA生をターゲットとした採用枠でも、90%以上の企業はそもそもインターナショナル生は採用しません、となる。残りの10%以下の枠でも一般的にはすでに労働ができることが決まっている米国国籍保有者・永住権保持者、もしくは過去にH1-Bを取得していたインターナショナル生(H1-Bの延長、とすれば抽選のプロセスから逃れられる)を採用する方が企業側にとってはリスクが低いため、ビザなしの応募者はハンデを負っての戦いとなる。

ビザの問題は個人の力でどうにもできないこともあり、悩ましい。米国で就労したいという人はH1-Bのシステムが新しい大統領の下でどう変わるかを注視しておいた方が良いだろう。

HBSでは移民法を専門にした弁護士によるビザに関するセッションが年数回開かれており、個々人の状況に応じたアドバイスも受けられるため、得られる情報は比較的充実していると思う。

② 言葉・文化のハードル

これは言わずもがなだが、米国で就労する場合には英語でコミュニケーションをとれる力があることが大前提となる。インターナショナル生の中でも同じ土俵で戦うのは、多くが高校や大学から米国に来て米国で就業した経験のある人や英語が母語の人なので、彼らの方が英語のレベルが高い。加えて、米国文化への理解もコミュニケーションの際に重要となる。例えば、ネットワーキングの機会でどれだけ会話を盛り上げられるか、は文化への理解度に結構左右されるので、英語が話せてもこの点で難しさを感じるインターナショナル生も多い。

③ 競争のハードル

ビザと言葉・文化の壁に問題がなかったとしても、米国は世界各地から就労したい人が来ることもあり、そもそもの競争環境が日本よりも厳しい。日本での就職活動以上に自分の強みと会社のニーズを理解し、どうして自分なのか、をうまく伝えることが求められる。特に競争相手となる米国人のMBA生はゲームのルールを理解した上で、かなりの時間を使って就職活動に挑むので、レジュメ、カバーレター、ネットワーキング、インタビューの各プロセスが高いレベルに仕上がっていないと、オファーまでたどり着くことは厳しいだろう。

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そうは言っても、これらはあくまでもハードルであり、飛び越えれば良いだけの話だ。ビザについてはそもそもインターナショナル生をスポンサーしている企業に絞る、もしくはネットワーキングを通じて窓口をこじ開けることができる。言葉・文化についてはせっかく米国MBAにいるのだし、日々の生活で改善していけば良い。競争の壁についても、自分が強みを有する分野を狙えば、十分戦える。HBSでは付属のキャリアセンターがレジュメやカバーレターを見て直してくれるし、キャリアコーチがどのような企業にどうやってアプローチをすれば良いかを一対一でアドバイスをくれる。ネットワーキングやインタビューについても練習の機会を提供してくれるため、かなり使えるリソースだ。

僕の周りのClass of 2017のインターナショナル生では、大学内の就職活動支援やインターンを通じてMcKinsey、BCGなどのコンサルティング、Goldman Sachs、UBSなどの投資銀行、Amazonなどのテック系企業、Danaher、Samsung、Fordなどの大手製造業からオファーをもらった人が多い。これらの企業の特徴はグローバルに展開しており、もしH1-Bが受からなくても米国外への転勤が可能な企業ということだ。海外オフィスのない中小企業やスタートアップは正攻法では門が開いていないために厳しいが、個人的なネットワークを使ってオファーをもらい、米国に残る人もいる。

また、昨今では母国へ帰る方が良いオプションとなることも多い。米国MBA取得者が少ない日本のような国であれば、帰国した方がより差別化ができ、就きたい仕事に就きやすい(プライベートエクイティやヘッジファンドについては、米国ではインターナショナル生が入るのはほぼ不可能と言われるくらい狭き門だが、母国に帰ればまだ門が開いている、あるいは、スタートアップの日本支社立ち上げの機会がある、など)。また、中国やインドのように急速に発展している国の出身者の場合、帰国した方がより将来性があると考える人も多い。母国の方が家族や友人がおり落ち着くし、ご飯も美味しい、というのもよく聞く理由の一つだ。

色々なオプションはあるが、HBSのメリットの一つとしては世界中に就労するためのパスポートを与えてくれることだ。米国内でオプションを探しても良いし、自国へ帰っても良い。あるいはシンガポールやロンドンなどの第三国に行っても良い。特に、HBSは世界中に卒業生がいてネットワークがあること、HBSブランドが評価されていることなどから、行きたい場所にアプローチしやすい。こういったmobilityは日本で教育を受けただけではなかなか持つことが難しいため、世界のどこでも働けるようになりたい、と考える人にとってはHBSは良いパスポート取得の機会になるかもしれない。

起業に関する授業外の機会 at HBS

起業に関するHBSの機会は授業だけではなく、課外活動でも様々な機会がある。

まず、iLab (innovation Lab)と呼ばれる施設がHBSのキャンパス上にある。こちらはスタートアップに興味のある人が集まる場所で、様々な起業に関するイベントが毎週のように開かれている。イベントはアイデアピッチコンテスト、プロダクトマネジメント、マーケティング、デザイン、資金調達、知的財産、など様々で、スタートアップをする上で有用なアドバイスをかなり得られる。iLabはチームとして申請して、申請が通るとコワーキングスペースとして使え、他のチームとのやりとりで新しいアイデアがもらえる。また、アメリカのコワーキングスペースらしく、コーヒーなどの飲み物やスナックが飲み放題、食べ放題だ。

同様の施設としてRock Centerがあり、こちらでも時々スタートアップ関連のイベントが開かれる。特に法律関連のイベントは外で相談すると数百ドルかかるような内容が無料で聞けるのでおすすめだ。

1年目と2年目の間の夏休みにある「Rock Summer Fellows」も有用なプログラムだ。これは夏休みに自分のアイデアを試したい学生を対象にした金銭サポートのプログラム。スタートアップのアイデアに挑戦したいが、夏休み中にインターンをして少しでも学費の足しにしたい、という学生の悩みに対するHBSのアプローチで、Summer Fellowsに選択された学生には週$600が支給される。2016年は他国でリサーチする学生へ航空券代まで支給されたので、この種のプログラムとしてはかなり寛大だと思う。また、このFellowsはスタートアップに関心のある学生が集まるため、ここでの集まりも良いネットワークとなる。

HBSで最大のビジネスコンテストとなるのが毎年春学期に行われる「New Venture Competition」だ。こちらはいわゆるビジネスコンテストで、営利ビジネスと非営利ビジネスの2つのコースで審査がされる。HBSの学生が少なくとも一人はチームに含まれていることが参加条件で、多くのチームがHarvardの他スクールやMITなどのHBS以外の学生とチームを組んで出場している。MITの100Kと同様にボストン界隈では大きな学生ビジネスコンテストの1つで、優勝賞金も$75,000と起業の頭金として悪くない額だ。

クラブとしてはEntrepreneurship Clubの活動などがある。こちらは年一回のSPARK Entrepreneurship Conferenceが主な活動で、カンファレンス運営に興味があれば良いが、クラブとしては正直集まりが少なく、あまり有用ではない。テクノロジー系であればCODEというコーディング系のクラブの方が活動が活発でほぼ毎週集まりがあってサービス開発の進捗管理ができるので、こちらの方が良いだろう。

他にもEntrepreneurship in Residenceとして起業経験者がHBS近くに住んでおり、この中からアドバイザーを見つけて相談をすることもできる。アドバイザーはテクノロジー系、サービス系、メディカル系などかなり幅広くいるため、たいていの分野で関連するアドバイザーを見つけることができるだろう。

最後に、Harvardやボストンという場所も大きな魅力だ。HarvardはHBSのみならずMedical、Public Policy、Law、Engineering、Educationなど幅広い大学院を持つために、異なった専門分野の人と話をする機会にあふれている。ボストンはHarvard、MIT、Boston University、Boston Collegeなど多くの大学や研究機関が集積しており、大学や研究所にはスタートアップの種がゴロゴロと転がっている。具体的にはケンブリッジには研究所発のライフサイエンス系のスタートアップの集積がある。研究寄りのテクノロジー、特にライフサイエンスに興味のある人にとっては、ボストンは最適な場所だろうと思う。

起業に関する授業 at HBS

今週で3月も終わり、残すところ授業はあと1ヶ月を切った。HBSの2年生の間では「卒業後どうする?」が定番の話題だ。すでに仕事が決まって卒業旅行の計画を練っている人もいれば、スタートアップなど卒業のタイミングギリギリから採用活動を始める会社への就職活動がピークになっている人もいる。起業してすでにバリバリと自分のビジネスを進めている人もいる。起業に興味のある人向けに、今回はHBSでの起業に関する授業について紹介したい。

HBSでの授業は1年目は必修で、2年目は完全に選択授業だ。1年目の必修のうち、起業に関する直接的な授業は「The Entrepreneurial Manager」という2学期目の科目だ。この授業ではビジネスモデルの分析、資金調達、ビジネスモデルの改善などを扱い、扱う企業のサイズもまさしくアイデアの段階から上場するレベルの大きさまで扱う。ゲストも多く、実際の起業家の話を聞いたり、質疑応答をすることで、ケースの登場者から直接学ぶことができる。

また、1年目の冬休みには希望者向けにStartup Bootcampがあり、こちらは10日間でアイデアを実際の形にするところまでを実践できる、かなり密度の濃いプログラムだ。スケジュールを見てみればわかるが、スタートアップのCEOやベンチャーキャピタルのパートナーなどゲストもそうそうたる顔ぶれで、ゲストからの学びも非常に多い。

2年目の選択授業でも起業に関する科目が多く提供されている。個人的なオススメはRobert Whiteの「Entrepreneurial Finance」とShikhar Ghoshの「Founders Dilemma」だ。Robert WhiteはBain Capitalの創設メンバーであり豊富な実務経験を持つとともに、Mitt Romneyの2012年の選挙参謀を担うという政治にも明るい教授で、まさしくHBSでないと出会えないような人だ。Shikhar GhoshもCEOとしてAppex、Open Marketを成長させ、どちらもExitを成功させるなど実務経験が豊富な教授で学びが多い。

他にも、HubspotのChief Revenue OfficerであるMark Robergeが教える「Entrepreneurial Sales and Marketing」も評判が良い。テクノロジー系に興味がある人には「Launching Tech Ventures」や「Scaling Tech Ventures」、ヘルスケア系に興味がある人には「Innovating in Health Care」など分野別に特化した科目もあり、その気になれば起業系の科目だけで選択授業の大半を埋めることができる。「Launching Tech Ventures」や「Scaling Tech Ventures」はほぼ毎回ゲストがいるので、起業家とネットワーキングをしたい人にとっても非常に価値がある授業だ。

また、起業に集中する人は、FIELDという実践系の授業や「Independent Study」という教授と組んで自分のスタートアップを題材にしたレポートを出す授業を取る人が多い。これは、①教授からアドバイスを定期的に受けられる、②授業を受けなくて良いのでその分の時間をスタートアップに使える、という2つのメリットがある。

他の大学との比較はできないが、起業に関する授業に関しては、①サイズの大きなMBAプログラムのため選べる科目数が多い、②実務経験とアカデミックの両方を併せもった経験豊富な教授が多い、③ゲストが来る率が非常に高くゲストから直接学べ、しかもネットワーキングの機会もある、という3点がHBSでは強みとしてあるのではないかと思う。

加えて、授業はあくまでもほんの1部分でしかない。他にもHBSが用意している起業家向けのプログラム(Rock Summer Fellows、New Venture Competition)や施設(iLab、Rock Center)や課外活動の機会(Club etc)も豊富にあるため、こちらは次回以降に紹介したい。

日本の高校生へのレクチャー

縁あって日本から来ている高校生十数名にビジネスについてレクチャーをする機会があった。構成は高校生側からの英語でのプレゼンテーション、僕からのビジネスプランとリーンスタートアップについてのレクチャー、最後にキャリアについての質疑応答。プレゼンテーションは高校生とは思えないほどしっかりしていたし、臆せず手をあげて質問をする学生が多いなど、自分が高校生の時よりもずっとしっかりしているな、と感じた。彼ら・彼女らのような学生が増えれば、日本の将来も明るいのだろう。

キャリアについてはいくつか質問を受けたが、面白いなと思ったのは、「今、高校生だったら海外の大学に進学しますか?」という質問。

僕は「僕が君らと同じ立場ならすると思う」、と答えた。日米の大学での学生生活を経験して感じるのは、やはり米国・英国トップレベルの大学には世界中から優秀な人が集まっており、より刺激的だということだ。僕が通った大学も良い大学だと思うし優秀な人に囲まれていたと感じるが、同じかそれ以上に優秀な人がおり、かつ多様性があるという点ではやはり米国・英国の大学が勝る。加えて、今は孫さんや柳井さんの奨学金があるため、受給できれば金銭面でもかなりの部分がカバーされる。日本国外でも勝負したいならば、挑戦しない手はないと思う。

また、「それだけ色々な経験をしてきているという話を聞いて、安心しました。大人はみんな夢を持て、やりたいことを見つけてそれを続けるんだ、と言うのだけど、途中で変えても良いのですよね」、というコメントはそうだよな、と思った。そして、「そうだと思うよ」、と答えた。

僕が高校生の時は、社会のことなんて全然分かっていなかったし、「多くの人の命を救えるような仕事をしたい」(当時はHIVやガンを完治させる薬を作り出したい)、というようなある意味漠然とした思いしかなかった。就職の際も軸は持っていたが、これが自分の生きる道だ、とまで言い切れるほどのものはなかった。働き始めて、色々試して、自分を振り返って、より自身を理解して、ようやく自分がやりたいことが見えてきた、というのが正直なところだ。

ずっと好きなもの・やりたいことがあればそれをやれば良い。それが見つかっていなくとも焦る必要はなく、今、興味があったりやりたいものを選べば良い。そうやって選んで、試してみて、考えて、また選んでいけば、真にやりたいことが見つかるのではないかな、と思う。

留学生活で得られたもの

最終学期ということで、「この留学生活で得られた一番のものはなんだっただろうね」、という話をある食事でした。ある人は「友人」と答え、ある人は「広い視野」と答えた。

僕の番になって、僕が答えたのは「自信」だ。「挑戦して失敗しても、最後には成し遂げられる。たとえ失敗したところで、食うには困らない」という自信。これは、「失敗したってなんとかなるのだから、世の中のためになること、自分の好きなことをやろう」という気持ちに繋がる。

HBSでの生活の中で、何十、何百という成功または失敗した起業家やビジネスパーソンと話をしたり、経営者の判断をケースで議論していると、楽観主義が湧いてくる。自分が意義あると思うことをやって、成功したら楽しい。失敗しても失敗の仕方を間違えなければ次に繋げられる。失敗を何度繰り返しても、そこから学んで挑戦することで、ある程度の成功まではいける。成功した起業家やビジネスパーソンは別次元の人間ではなく、自分と同じ人。成功と失敗のリアリティを身近で感じられたことは、自分でもやればできる、という自信に繋がった。また、セクションメイトと青臭い話ができたり、教授からフィードバックを受けられるこの理想的な環境も、この楽観主義を育てるのに一役買っている。

加えて、「失敗」してもセーフティネットがあるとも感じる。HBSのMBAというのは、学校側の絶え間ないカリキュラムの改善と卒業生たちの功績のおかげで一つの品質の保証となっており、これを取得していることで、日米に限らず、世界中の企業で働く可能性が開ける。また、卒業生のネットワークもかなり強いため、本当にどうしようもなくなっても、きっと助けてくれる人がいるだろうな、という安心感がある。つまり、MBAがセーフティネットとして機能して、失敗したところで、(よほどひどい失敗の仕方をしなければ)家族が食うに困るということはないだろう。

こういった気持ちの変化があることはMBAに来るまでは予想していなかったが、僕はとても価値ある変化だと思うし、そういう変化をもたらしてくれたHBSでの機会に感謝している。

 

DeNA WELQとHBSの教育について

DeNAのWELQの問題について、僕自身、医療系の情報Webサービスをやろうかと考えたこともあったので、僕の考え方を書いてみる。

ランサーズやクラウドワークスなどのクラウドソーシングを用いての安価なコンテンツ作成は、僕が前職でSEOに関わる仕事をしていた2013年に、試したことがある。①ある特定の地域について、②このタイプの事柄について、③自社のサイトのこのページの中にあるキーワードを用いて、書いてほしいという依頼をしていた。僕の場合は記事の内容の品質を保ちたかったので、最初の間口を広くして来るもの拒まずとして、最初に5記事を書いてもらい、その内容の質を元に、良い記事を書くライターの方に次回以降はまとまった数を発注する、という作業をしていた。テーマやキーワードはDeNAのケースと同様にSEOを重視して選んでいた。

この作業、想像してもらえばわかると思うが、結構手間がかかる。依頼したい記事の内容をSEOを元にリストを作り、ライターの方にどう割り振るかを決め、それぞれのライターとのやりとりを行い、彼ら・彼女らの質問に答え、発注、回収、検査、アップロード、を行う。クラウドソーシングで働く人は副業として行なっている人が多いため、短納期であまり大量に受けてくれる人も多くない。そうなると、多くのライターの方々の窓口兼仕事のやりとりをすることになる。これだけで一仕事だ。確かに一記事あたりの価格はかなり抑えられるのだが、僕の裏方作業の工数を考えると、少人数に大量発注する形でないと、あまり割が合わなかった。当時この手法の費用対効果を分析してみたところ、他の手法の方がより効果的だったため、前職ではこの手法をスケールさせることはしなかった。一方でこの手法を使えば記事を大量発行させて、旅行や住宅など、単価が高くアフィリエイトで稼ぎやすいもので個人として副業を立ち上げることはできるな、と感じていた。もし僕がMBAに来ることを選ばなかったら、違う分野で試していたかもしれない。

DeNAはマニュアル化と品質の割り切りでこの課題を解決し、クラウドソーシングをコンテンツ大量作成に用いた。BuzzFeedの報道によると、DeNAは記事の構成や他サイトをコピーして内容をリライトする方法をマニュアル化しており、それを用いてクラウドソーシングで発注していたとのこと。リライトについては、著作権について指摘している人も多いが、SEO対策専門家として入っている辻さんのTwitterからもわかるように、むしろGoogleからコピー割合の多いサイトとしてペナルティをくらわないようにするための対策としていた。また、意図的に引用を避けているのは、これは僕の推測だが、リンクジュースを渡さないようにするため(SEOの世界では、ページからリンクがあると、そのリンク先にサイトの影響力が伝播すると考えられている)だろう。コンテンツのオリジナリティの度合いが低ければ黒に近いグレーではあるが、SEOの観点からは今でもいくつかのビジネスが行っている施策の一つではある。

品質の割り切りについても、ウェブ系企業のロジックで照らし合わせると、自然な対策法だ。そもそもウェブ系の企業は一般的に、品質管理がハードウェア企業に比べるとゆるく、商品を市場に出すまでのサイクルが圧倒的に早い。不良品を出したら回収しなければならず、膨大な費用がかかるハードウェアに比べて、ウェブの場合の改修はサーバー側の修正で済むことが多く、ウェブは業界として品質よりも速度を優先する傾向が強い。WELQに関しても記事数、ページビュー数のKPI達成が重要で、問題が指摘されたらその記事を修正するか引っ込めれば良い、という感覚だったのだろう。

日本のウェブ系企業の人は、「これ、うちもやばいかも」、と感じた人が一定数いるのではないか。「できるだけ早く走り、問題が起きたらその時点で修正する」、という考え方はウェブ系以外の業種からすると危うい慣習にも見えるだろう。今回の場合、医療という、法的に縛られており、社会的にも失敗への許容度が低い業種にウェブと同じようなアプローチで挑んだことが失敗の一因だろう。

視点を変えて、僕がMBAで学んだことと、今回のWELQの件はどう関連付けられるだろうか。

HBSの1年目のLCA (Leadership and Corporate Accountability)の授業では、僕らはビジネスのグレーな領域の判断をするときには、①経済的な観点、②法的な観点、③倫理的な観点、の3点について、少なくとも4つのステークホルダー(顧客、投資家、従業員、社会)について考えるべき、と教わった。このフレームワークにのっとれば、WELQの手法自体は、SEO最適化という点ではビジネスの論理では優れていたと思う。一方で、今回のWELQの件は、著作権に関する法的な側面でリスクをかなりとっていた。倫理的な面でも、キュレーションサイトであるとして責任を逃れようとしながら実質は編集権を持ったメディアであり、責任逃れとも取れる行動をとっていた点、医療に関わる誤った情報を伝えて患者さんがより症状を悪化させてしまう可能性があった点で倫理的な側面の検討が甘かった、もしくは考慮から漏れていたのだろう。

顧客に関しては、ページビューやページ当たり収益といった数値を追い求めて、スクリーンの先に実際の人がいるという意識が希薄になってしまったのではないか。投資家については、訴訟リスクを十分に考慮して事業を運営できていたのだろうか。従業員に対しては、KPIで追い詰めすぎて、手法を問わないような状況になっていなかっただろうか。社会に関しては、医療の情報が社会にもたらす影響についての理解が足りていなかったのではないか。(*補足:DeNA創業者の南場さんもHBS出身(Class of 1990)だが、彼女が学ばれていた時はエンロン事件以前で、HBSの教育方針も今とはだいぶ異なっており、LCAは必修ではなかった。)

こうした法的・倫理的観点は、僕はHBSに来るまではそこまで意識していなかった。もし僕がHBSに来る前に医療メディアの分野で起業をしていたら、DeNAほどアグレッシブにはやっていなかったと思うが、似たような判断をして、DeNAと同じような問題に直面していたかもしれない。

一方で、今は難しい判断をする際には自然とこれらの観点を含めて考えるようになっているので、違うやり方をとるだろう。また、情報が入った時点でおそらくより早く閉鎖の判断をしていただろう。

意思決定の力を鍛えるというと抽象的だが、具体的な事例に当てはめると上記のような違いが出てくる。僕にとっては、HBSで学んだ観点が僕の意思決定に影響を与えており、その価値は大きいと感じている。

3月18日追記:

第三者委員会の調査報告書が公表されました。トラフィックの推移や内部の意思決定プロセスがかなり詳細に書かれています。会社を一面的に批判するのではなくスピードを重視する意思決定の必要性やDeNAの日本におけるIT業界のリーダー的ポジションを考慮しながら建設的に問題点と改善策を指摘した、非常にバランスの取れた報告書という印象です。

DeNAのビジネスを牽引してきた守安さんの重要性を考慮すれば守安さんの辞任は避けたく、守安さんは減給、DeNAの中では比較的新参者の村田さんと中川さんの辞任で幕引きを狙う、というのは投資家の論理としてもDeNAの内側の論理としても理にかなっているのでしょう。南場さんが社長に復帰して二人体制になるのでコンプライアンス的にも強化される、というのもうまいロジックだと思います。