HKS Israel Trek (1)

5/13-20の日程でHKS (Harvard Kennedy School)のIsrael Trekに妻と参加した。こちらは8日間の間にJerusalem、Tel Aviv、West Bank、Golan Heights、Kibbutz near the Gaza boarder、Dead Sea、Masadaとイスラエルの主要な見所をパレスチナ自治区のエリアまで含めて回るというかなり意欲的なプログラムで、密度の濃い8日間だった。Israel TrekはHBSでも行われているが、下記の2つの理由で個人的にはHKS主催のものに参加して良かったなと感じる。

■ プログラムがより教育的要素が強いものとなっている

HBS Israel Trekのプログラムと比較してみると、Jerusalem、Tel Aviv、Golan Heights、West Bankなど主要な場所に行くことは共通している。違いとしてはその密度の濃さだ。HBSのトレックは自由時間が比較的多くて観光要素が強く、夜もパーティやクラブなどイスラエルを楽しむ要素が多いのに対して、HKSのトレックは朝8:00から夜23:00近くまでほぼ毎日予定が入っており、朝・昼は歴史的な場所や政府機関への訪問、夜もディナーに元外務大臣やNGO/NPO責任者が来て食事と同時にスピーチがされるなど、ぎっしりと教育的な要素が詰まっている。各都市・訪問先を回る際にも知識豊富なガイドとイスラエル人数人が一緒に回ってくれるため、質問があればすぐに聞け、イスラエルについて学ぶにはこれ以上ないほどの環境が整えられている。

プログラムがぎっしり詰まっていて忙しいが、その分学ぶことが多かったのは確かだ。イスラエルの政治、歴史、経済を短期間で学ぶのに最適なプログラムだと思う。

■ HKSやHLSといった他のスクールの学生と仲良くなれる機会である

HBSでは2年目の選択授業でHKSやHLS (Harvard Law School)の授業をクロスレジストレーションで履修することはできるが、履修をしないと他のスクールと関わる機会は実はあまりない。それだけに、HKS主催のトレックに参加するのは、新しい友人を作る良い機会となる。

実際、HBSにいる人とHKSやHLSにいる人はバックグラウンドや関心が異なり、話していて新しい発見が多く、面白い。例えば、とあるHKSからの参加者は10数年の中東駐在経験を有する元軍人のアメリカ人男性で、卒業後にはアメリカの州議員選挙に立候補する予定であり、また、とあるHLSからの参加者は国連で長く勤めた経験を持つブラジル人女性で、卒業後にはまた国際機関で働く予定だ。彼らは政治、歴史、国際情勢に詳しく、話していても「そういう観点があるのか」と驚かされることが多い。ビジネスをしていると政治関連の視点が重要となることもあり(海外進出や規制関連など)、仕事の上でも付き合うことが将来あるかもしれない。

何よりも、人としても面白い人が多く、一緒にいて楽しい。8日間の濃密な時間を共に過ごすことで生まれる絆もあり、良い友人ができたという意味でもとても良かった。


一方、HBS主催のIsrael Trekに参加するメリットしては、①自由時間が多く、回りたい所を各自で回ることがしやすい、②HBSの他のセクションメイトと仲良くなる機会となる、③HBSの学事日程に合わせてトレックが組まれているので参加しやすい、があるだろう。

どちらを選ぶにしても、日本からではなかなか行く機会がなく、かつ個人旅行ではなかなか見えない部分が多いイスラエル。1年目はJapan Trekを運営することで得られるものが非常に多いので、個人的にはJapan Trekを運営した方が良いと思うが、1年目か2年目のJapan Trekと重ならない期間にHKS主催のIsrael Trekに参加することは非常におすすめだ。

MBA Oath

MBA Oathという宣誓式が卒業式の一日前の今日に行われ、それに参加してきた。これは医者にとってのヒポクラテスの誓いのように、マネジメントの道を進むリーダーにとっての倫理規範となることを目指して2009年に作られたもので、この理念に賛同するMBA生が自主的に参加するイベントだ。2017年のこのイベントは学生とその親族が集まり、Burden HallというHBSで最も大きな会場が半分以上は埋まった。

このイベントで幸いにもスピーカーの一人に選ばれたので、なぜ僕がこの宣誓に署名するかについて、下記のようなスピーチをしてきた。

Coming from a tiny East Asian country, called Japan, two years at HBS was full of surprises.  Who in the world have gone through 500 case discussions facilitated by world-renowned professors. Who have more than 90 friends, who share aspiration to make a difference in the world. Who have close-knitted global community to which you can reach out throughout your entire life. Most people at least in my country do not have a single one of them. This is a privilege, and with great privilege comes great responsibility. As a person who is lucky enough to receive such amazing education, make friends, and build networks, I would like to contribute to society. This is the reason why I sign the oath.

最初の”a tiny country”の出だしのところは笑いを狙っていたが、狙った通りに会場が笑ってくれて、その後がやりやすくなった。with great privilege comes great responsibilityはよく引用される表現の一文字を変えたのだが、気づいた人は気づいてくれたかなと思う。

HBSで2年間を過ごせたということは非常に幸運なことで、僕個人としては得たものを活かして社会に還元していく責任があると思う。この思いを忘れずに、社会を少しでも良い方向に導けるような活動をしたい。

MBA for Women (6/16 18:30) イベントのお知らせ

以下、転送です。

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HBS Club of Japanと有志が”MBA for Women”というタイトルにて6/16(金)の18:30より六本木ヒルズの森タワーにてイベントを行います。HBSのAdmissions DirectorのEileen Changも来る予定なので、みなさまぜひご参加ください。詳細は下記となります(日本語は英語の後になります)

HBS Club of Japan and some volunteers are planning the “MBA for Women: Let’s support potential female MBA applicants in Japan!” event on June 16 (Friday) evening.
PLEASE come and support, and bring a few potential female MBA applicants with you!!!

  • Date: June 16, 2017 (Friday)
  • Place: Roppongi Hills Mori Tower
  • Agenda (tbc):6:30pm: Door Open
    • 6:45pm: Welcome Speech
    • 6:50pm: Keynote speech by Eileen Chang (Admissions Director, HBS)
    • 7:15pm: Panel discussion of recent female graduates (facilitator: Y. Murakami)
    • 7:45pm: Q&A, Discussion
    • 7:45-8:45pm: Cocktail reception, Networking
    • 8:45pm: Closing remarks (tbc)
  • Price: 3,300 yen per person (to pay for food & drinks)
  • Ticket: http://ptix.co/2pgsFVZ
  •  Password: 2017

We look forward to seeing you many of you at the event!

MBA進学を応援!(女性MBAホルダーとMBAを考えている女性の懇親会)

MBAとは?、女性のキャリアにとってのメリットは?、いつ行くのがいいの?、それぞれのスクールはどう違うの?、どうやって選ぶの?、出願プロセスは?
近年の女性MBA生によると「実際に女性の先輩の話を聞いて現実的に考えるようになった」「直接話を聞いたことがきっかけとなった」という声が多く、将来MBAを考える方々のために、MBAホルダーの女性たちからいろんな話を聞きネットワークする機会を作りました。

今回はスペシャルゲストとして、Harvard Business Schoolから MBA Admissions Director の Ms. Eileen Changをお迎えして、実際に出願の参考になるアドバイスもお話いただきます。
また、パネルディスカッションでは複数のMBA校の卒業生から経験談(本音)をご紹介し、懇親会では、様々な経験をされた女性リーダーの皆様とも意見交換の機会を設けています。
皆様ふるってご参加ください。
(MBA女性アプリカントを応援する男性もWelcomeです!)

  • 日程:6/16 (金)
  • 時間:6:30 – 8:45pm
  • 場所:六本木ヒルズ 森タワー 内
  • 飲み物&食べ物代:3300円
  • 参加申し込み先: http://ptix.co/2pgsFVZ
  •  Password:2017
  • 企画:HBS Club of Japan 及びボランティアMBA女性ホルダー
  • Contact: MBAforWomen2017@googlegroups.com

ボストンのレストラン

ボストンともあと1ヶ月でお別れなので、僕が気に入っていたレストランをいくつか挙げてみます。ビジットした際などの参考までに。

◆ Seafood – Island Creek Oysters

ボストンに来たからにはシーフード、というのであればIsland Creekがオススメ。牡蠣は新鮮だし、クラムチャウダー、ロブスターロールとボストン名物を美味しく食べることができる。お店の雰囲気も良い。難点はいつも混んでいて、予約なしでは夜はかなり待つ可能性があること。Open Tableまたは電話で予約をしてから行った方が良い。17:30のスロットなどは結構直前でも空いている。

Atlantic Fish Companyも美味しいが、こちらも要予約。Island CreekやAtlantic Fish Companyよりも利便性が良いのはLegal Seafoodで、ハーバード・スクエアを含めボストン市内・周辺に何店舗かあるので、ここに行くのも良い。Neptune Oysterも美味しいが事前予約ができず、よほど早く行かないと順番待ちとなって結構待つので、時間がない人にはあまりオススメしない。

◆ American – Grill 23 (Steakhouse)

せっかくアメリカにいるのだからたっぷりのステーキを食べたい、となったらGrill 23。Tボーンステーキなどが美味しい。Capital Grilleと並んで日本人の中では評価が高いステーキハウス。前菜、肉、お酒にチップを入れて一人当たり$100は覚悟しておいた方が良い。

◆ Chinese – Mala Restaurant (Huoguo)

アメリカで中華?、と思うかもしれないが、Mala Restaurantの汁なし火鍋は本当に美味しい。何か入っているのではないかと思うほど中毒性が高く、アジア系の人がハマって、夜18:30を過ぎると平日でも人が並んでいる。4人で行って、キュウリ、羊肉の串焼き、汁なし火鍋、麻婆豆腐、米またはチャーハン、を食べるのが鉄板だ。これだけ食べても一人当たり$30程度と安いのが魅力。人が並んでいる場合は近くのJo Jo Taipeiも美味しいのでそちらに移動するのもあり。Malaは店が狭いので大人数でいく場合にはSichuan Gourmetが広くて数十人でも入るので便利だ。

Harvardの学生はDumpling Houseが近くて良いので、徒歩でいく場合はこちらも便利だ。ただ夜は混んでいて並ぶことも多いので早めに行くか予約した方が良い。

◆ Korean – Koreana (Barbecue)

ボストン周辺で美味しいKoreanといえばSeoul Soulontanだが、Koreanaも肉がうまい。カルビを2人前以上頼むと目の前の鉄板で焼いてくれる。店が広いので、20人以上などの集まりをする際にも便利。

◆ Japanese – Ittoku (Izakaya)

わざわざボストンまで旅行に来て日本食を食べたくはならないかもしれないが、住んでいると行きたくなるのが日本食レストラン。Ittokuはまさしく居酒屋で刺身からお好み焼き、焼き鳥、寿司まで一通り揃っている。価格も日本食の中ではリーズナブル。Gyukakuもボストンに2店舗ほどあり、こちらは日本よりもお肉の味が美味しい印象。デザートのLady Mというケーキが特に美味しくて女性陣に人気。Sugidamaも居酒屋でこちらはそばが食べられるのでそばが食べたい時には良い。Itadakiも日本食・日本酒を提供しているのでBack Bayに宿泊しているのであれば近くて良い。

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参考になれば!

2年間でHBSから得られたもの

HBSでの最後の授業、Bridgesが終わった。Bridgesは3日間のいわゆる締めのプログラムで、地域・業界別のネットワーキングができたり、職務別のアドバイス、今後のキャリアに関するアドバイスを得られる機会だ。期間中、1年間を同じ教室で過ごしたセクションメイトと久方ぶりに同じ教室で再会し、近況を話し合い、その後に授業で再びケースを議論した。まるで1年前に戻ったようで、自分がいかにこの空間を好きだったか、を改めて感じた。また、Bridgesを通じて、自分がこの2年間で何を得たのか、がよりクリアになった。

昨年「MBA受験-ビジネススクールで得られるもの」、でMBAの価値として「A Good Business Foundation」、「Networking」、「Career Change Opportunity」の3つが主要な価値で、「Quality Time」、「Brand」の2つを加えた計5つが価値と述べた。それらが得られたというのはそうなのだが、最初の3つについては得られたものについてより具体的に表現できるようになったことと、少し感じ方が変わってきたので、今回続編を書いてみようと思う。内容はMBA一般というよりも、僕がHBSで得られたものについて、だ。

Personal Development

最も大きな成果は人としての成長だと思う。HBSでは1年目、2年目ともに人生の価値観について考えさせられる機会があり、その機会を経て、人生についての理解が深まった。

BSSE (Building Successful and Sustainable Enterprise)でClayton Christensenが行う最後の講義の”How will you measure your life?”もその一つだ。彼は実務家としても、教授としても成功した教授だが、彼が最も大事にしているのは妻と5人の子供を育てることだと言う。そのためにも、彼は土曜日と日曜日は家族のためにあてる時間としてコミットして、BCGで働いていた時から土日は働いていなかった。何を人生において成し遂げたいか、そのためにどのように自分の時間という資源を配分しているか、それをどうやって実現するか、という彼の講義は非常に示唆に富んでおり、彼の講義を受けることができたのは幸運だったと思う。同じテーマでFounders’ DilemmaのShikhar Ghoshも「幸せに最も影響を与えるのはどのような質のRelationshipsを築けているか」であり、”Relationships trump everything”ということを教えてくれた。人生における自分なりの成功の定義は何か、それを実現するために日々どう行動するべきか、について、HBSは自分なりの答えを見つけるための機会をくれた。

人との関わりを通じて、リスクについての考え方も変わった。HBSには本当に多くのゲストが来る。起業家もいるし、大企業の役員もいるし、政治家もいるし、訪れるゲストの幅が広い。彼らの生き方を聞き、彼らと話していて気づくのは、別に彼らが僕らと別次元に住んでいる人ではないということだ。いわゆる自分の人生を生きている人とそれ以外の人の違いは、リスクを取っているかどうか。彼らが口々に言うのは、「リスクを取らないことがリスクだ」、と。多くの教授もその見方を後押しする。一度や二度ではなく、2年間毎日のようにそういった話を聞いていると、自分もやれるという自信が生まれてくる。挑戦をしての失敗は僕を強くしてくれる。HBSは僕に「やればできないことはない」という自信をくれた。

HBSはBusinessについて学ぶ場かと思っていたが、実は人生について学ぶ場だった。自分の本当にやりたいことは何なのだろうか。何を自分の人生において大切にするべきであろうか。21ヶ月という比較的長い時間があったため、そういった質問を自分に問いかけ、考え、妻や友人や教授と議論する時間が持てた。これにより、自分がこの先の人生を生きる上での土台を作ることができたように思える。僕自身は、実はHBSに来る前にはもう自分の価値観はある程度固まっていてそこまで変化はないかと思っていたのだが、振り返ってみるとかなりの変化があったように思える。これは予想していなかったが、得られたものの中で最も大きかったものの一つだ。

A Good Business Foundation

ビジネスについては、幅広い視点を身に付けることができたと思う。特にLEAD (Leadership)の授業が素晴らしく、リーダーシップについては一生使えるような考え方を学べた。

HBSの1年目の必修科目はよく練られており、ケースメソッドでビジネスを包括的に学べるようになっていた。大きく分けると、マクロ経済・グローバライゼーション(BGIE、FIELD 2)、リーダーシップ(LEAD, LCA, FIELD 1)、ファンクション(STRAT, MKT, FIN1/2, FRC, TOM)、アントレプレナーシップ(TEM, FIELD 3)の計4つ。ケースメソッドでは様々な経営の場面において、①何が起きているのかを分析し、②何をするべきかを立案し、③どう実行すれば良いのかのアクションプランを立て、④実行の際の障害やリスクとそれらを解決または減らす方法も立案する、ということをひたすら行うため、「どういう場面で、何を、どのように考えれば良いのか」、が思考のプロセスとして築かれる。この思考のプロセスが、より成功確率が高い意思決定をするために役立つと感じる。

一方、2年目は全て選択科目で、自分の伸ばしたい分野について学ぶことができた。僕の場合、戦略(Strategy and Technology、Strategic IQ)、組織(General Management Process and Actions、Designing Competitive Organizations)、ヘルスケア(U.S. Healthcare Strategy、Innovating in Healthcare)、アントレプレナーシップ(Founders’ Dilemma, Launching/Scaling Tech Ventures)、ネゴシエーション (Negotiation)、ファイナンス(Entrepreneurial Finance)、マクロ系(Globalization and Emerging Markets)と幅広く履修した。

得られたものの一例は、戦略的な思考がある。こちらに来て学び始めて、僕の場合、プロダクトマネジャーとしてプロダクトレベルの「戦術」や「アイデア」は考えていたが、事業レベルの「戦略」についてきちんと考えることができていなかったことに気づいた。僕は新しい機能やデザインでの商品の差別化など、プロダクトマネジャーとして単年度で結果を出すような施策は考えて実行してきたが、中長期でどのように持続可能性のある競争優位性を築いていくか、そのためには組織に対して影響をどのように与えていくべきか、という観点が抜けてた。あの時の僕が今と同じように考えられたら、より戦略的な提言と実行ができたと感じる。

もう一つの例は、リーダーシップだ。僕は前職での経験を通じて、人に動いてもらうためには「情熱、論理、思いやり」が必要であり、そのためには自分が最もお客さんや商品、技術を理解して、チームを動かしていく必要がある、と考えてた。今でもその考え方は残っているが、今ではチームをどうやってデザインし、立ち上げ、マネージするかについて、より多くの要素があることを知っている。前職で初めて人のマネジメントを経験した時にはマネジメントについて「何を、どう考えれば良いのか」、が全て手探りで一つずつ自分の使える道具を探していく感じだったが、今では以前は知らなかった道具があることを知っているので、その道具を使って、より良いリーダーシップがとれる気がしている。

MBAに来るまでは、学習から「知識」がつくのかと思っていたが、実際には様々な状況における「思考方法」や「視点」を学んだという方が近い。この学びがどの程度役に立つのかは卒業後試してみないと分からないが、少なくとも僕は自分の思考の広さと深さが広がったことには十分の価値があったと思う。思考の広さと深さは一生磨き続けていくべきもので、MBAはそのベースを作ることを助けてくれた。

Networking/Friendship

HBSは仕組みに優れた大学であり、その最たるものが「セクション」という仕組みだ。HBSの場合、セクションと呼ばれる93-94人のクラスで1年目を過ごし、同じ教室で、授業を一緒に受ける。授業の大半がケースディスカッションのため、だんだんとその人の価値観や人となりも分かってきて、不思議な親近感を抱くようになる。1年目は何をするにもセクションが主な単位となるので、自然と独自のカルチャーができてくる。セクションごとに卒業後も5年ごとに集まるReunionという機会が用意されているため、この友人関係は(HBSと関わり続ける限り)一生続くものとなる。卒業した時点で誰もが93-94人の一定以上の深さを有する友人を持て、かつ5年後も彼らと会うために戻って来ようと思わせるような帰属感を持たせるこのセクションという仕組みは、とてもよくできている。

加えて、セクションが全てではなく、1年目はディスカッショングループやFIELD 2という新興国のコンサルティング・プロジェクトでセクションを跨いだ人間関係が築け、2年目の授業でさらに人間関係が広がる。Trekの運営や参加、カンファレンス運営、その他クラブ活動等々で、何だかんだでHBSだけで2年間で300人は友人・知り合いと呼べる人はできると思う。ボストン自体も他の大学の学生や研究者の人たちとの出会いの機会が豊富で、出会える人の幅も広い。僕の場合、この2年間でFacebookで新たに繋がった人の数は400人だった。

また、HBSはAlumniとの結びつきも強く、驚くぐらい卒業生が後輩をサポートしてくれる。こちらも卒業後に出会うことができる人の幅を大きく広げてくれる。

世界中に、助け・助けられ、共に刺激し合える友人がいるというのはとても幸せなことだ。この幅広さと深さの人間関係は、僕の一生の財産になるだろうし、全員とは難しくとも、特に仲の良い友人とは今後も定期的に連絡を取り合うことで、より関係を深められるようにしたいと思う。

Career Change Opportunity

HBSを出たことによって、就労の機会が大きく広がった、というのは実感としてある。僕自身、地域と業界を変えて米国で就職することにしたが、これはMBAを経なければほぼ無理であっただろう。

一方で、友人と話していて、見えていなかった現実もあるなと感じた。一つには、インターナショナル生にとってのMBA後の米国就労の厳しさ。米国で就労するためには、企業にH1-Bビザという抽選で取得するビザの申請をしてもらわなければならず、このビザサポートをしている企業が本当に少ない。いわゆるスタートアップ系企業はほぼビザサポートをしないと思っていた方が良い。中規模くらいの会社でも就労のための門がそもそも空いておらず、文字通り門前払いだし、大企業でも人気のあるところは競争が厳しい。ネットワーキングで門をこじ開ける方法もあるが、狭い道だ。科学技術の学位取得者に関しては(特にコンピューターサイエンス)より門が開いているので、単に米国での就労が目的なのであれば、エンジニアリングの専門で大学院に行った方がずっと良いだろう。

二つ目は、年齢が上がってから来ると、納得いくポジションが見つかるとは限らないことだ。米国MBAの平均入学年齢は約28歳で、卒業が30歳前後となる。いわゆるMBA採用をしている企業では、入社時点が実務経験3年+MBA2年の28歳と、実務経験7年+MBA2年の32歳を同じMBA卒として同じポジションで採用することが多いため、実務経験が長い人ほどキャリアアップというよりも、キャリアの横滑りの可能性が高くなる(前者がスタッフ→MBA→マネジャーなのに対して後者はマネジャー→MBA→マネジャー、など)。特に欧州から来る学生はやや年齢が上のことが多いので、この点でオファーを受けるべきかどうかで悩む学生が多いようだ。

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全てをひっくるめて、僕がHBSに来て良かったかと聞かれれば、間違いなく良かったと思う。21ヶ月の機会費用や計24万ドル以上のコストは非常に高いが(奨学金がなければ本当に苦しかった。。。)、生き方、友人、仕事の土台を築けたし、今後の人生をサポートしてくれるようなネットワークへのアクセスや「HBS卒」という一定の信頼を得ることもできた。

MBAを考える人は、検討しているプログラムの学業の内容だけでなく、卒業生が何を得ているかを上記のような観点で検討してみると良いのではないかと思う。

卒業後の進路について

時が経つのは早いもので、本日で授業も終わり。卒業式は5月25日なのだが、僕のHBS生活もあと実質Bridgesという3日間のイベントを残すのみだ。21ヶ月の学生生活は長いなと思っていたが、振り返ってみるとあっという間だ。

僕の卒業後の進路だが、米系医療機器の会社に就職して、米国に残ることにした。卒業後にどうするかは、MBAに来ている人、特にインターナショナル生は行き先の国も含めて悩む話だと思うし、僕もかなり悩んだ。僕の場合、下記のような手順を踏んで考え、意思決定をした。

◆ Step 1: 価値判断の軸を決める

まず卒業後の進路を考えるにあたり、僕は「目的」(Purpose)、「人間関係」(Relationships)、「金銭」(Finance)の三つの軸で考えた。

「目的」は僕がどのように世界に貢献したいかだ。20代の終わりに改めて自分の人生を振り返って気付いたのは、やはり僕は病気を抱えた人やその家族・友人が治療法が見つからずに苦しんでいるのが許せないし、そのことに対して考えたり動いている時に充実感を感じるということだ。だから、世界中の人が自分の病気の治療法を見つけられるような世界にしたいと思うし、「その目標に繋がる仕事」というのを第一の項目として入れた。第二に、僕はテクノロジーの力を信じており、テクノロジーを通じてその目標を達成したいと考えているため、「テクノロジーに関わる仕事」という項目も加えた。第三に、僕は自分でコントロールしたいタイプなので、「事業責任者として動ける」という項目を加えた。最後に、僕は多様なバックグラウンドを持つ人と働いている時に特に楽しさを感じるため、米国、ロンドン、シンガポールなど「英語圏でかつ世界中から人が集まっている場所で働けること」を第四項目に加えた。「目的」としては以上の「病気の人を治療する・もしくは治療法を見つけやすくできるか」、「テクノロジー × ヘルスケアか」、「事業責任者か」、「場所」の4つを評価項目とした。

次に「人間関係」であるが、これも大事な要素だと考えた。まず、働く場所は自分の価値観と合うようなカルチャーにしたい、もしくはそんなカルチャーで働きたいので、「企業カルチャー」を第一の項目として入れた。次に、「一緒に働く人が尊敬できるか、一緒に働いていて楽しいか」を二つ目の項目にした。三つ目としては、「僕の家族が幸せか」、を入れた。

最後に、生活をする上で必要となる「金銭」も評価軸に入れた。僕の場合、「目的」で4つ、「人間関係」で3つ、「金銭」で1つ、の計8つが評価の軸となった。

◆ Step 2: 価値判断に重み付けをする

次にしたことは、それぞれの項目に「重み」をつけることだ。僕の場合、計8つの項目に、合計で100%となるように重みをつけた。具体的には「目的」の4つで40%、「人間関係」の3つで40%、「金銭」で20%の重みをつけた。重み付けの仕方は人により大きく異なると思う。

◆ Step 3: 選択肢を評価する

卒業後の選択肢のそれぞれについて、それぞれの項目に「1(満たしていない)」から「3(満たしている)」まで数字を入れて、点数を洗い出した。すると、合計点数が出てくる。進路の選択肢A、B、Cについて具体的に評価してみると下記のようになる。下記の例だと、Aが最も良い選択肢となる。

※サンプル(数値は例)

◆ Step 4: 再検証

評価軸に抜け漏れダブりがないか、自分の重み付けが適切か、卒業後の選択肢がまだ他にないか、を考えた。

大枠は以上のように考えたが、特にStep 4では妻も含め、色々な人に相談をした。

僕の場合、特に迷ったのは起業という選択肢をどう考えるかだ。

起業する場合、場所の選択肢としてはアメリカか東京の大きく二つを考えた。現状、インターナショナル生でアメリカで卒業後も起業して残る道はあるが、かなり狭い。卒業後にはOPT (Optional Practical Training)という期間が1年間あり、その間に多くの場合は起業家(E2)ビザ取得を目指すことになる。E2ビザ取得には起業家として成功してアメリカに貢献することを示す必要があり、この評価基準は、資金調達、アメリカ人の雇用、ビジネスプランの妥当性などとなる。アメリカは当然のことながら起業家志望も多く、競争も激しいため、言語がネイティブでない、文化が違う、永住権がない、の三つの壁を乗り越えて相当額の資金調達をして雇用を生むのは、かなり細い道。資金調達できなければ、米国登記した会社や開発したものを置いて国外へ出ないといけない。僕の場合、Healthcare Techの経歴があるわけでもなく、これらの壁を乗り越えるだけの自分ならではの強みを見い出すことができなかった。また、自分一人ならば「えいや」で残る手もあったかもしれないが、妻もいるため、そこまでのリスクを取りたくもなかった。他のアジア人の米国での起業家を見ると、米国企業に就職して在住数年→グリーンカードを申請→起業、のパターンが多く、そちらの方が現実的だと感じた。よって、米国ですぐに起業という選択肢は切った。

東京に帰って起業するという選択肢も考えた。こちらは市場の土地勘もあるし、ネットワークもあるし、起業する上では良い環境だ。起業は失敗を繰り返して、それでも諦めずに続けて何度かやってようやく成功するものだと思っているので、卒業後できるだけ早いうちに始めることには大きなメリットがある。一方で、せっかくMBAを出て海外にいるので、もう少し海外で揉まれてチャレンジを続けたいという気持ちも強かった。米国の良いところは競争がより激しく、優秀な人が集まっている上、自分自身が語学、文化、土地勘でハンディキャップを負っており、よりストレッチされる環境であることだ。また、特にHealthcare Techの最先端はやはり米国で、より多くのことが学べるだろうという好奇心もある。妻もまだ昨年に米国に来たばかりでこれから大学院に行く考えもあり、米国でまだ過ごしたいという思いもあった。これらの理由から、卒業後すぐに東京へ戻ることには躊躇があった。

これらを考慮して考えた結果、選択肢Aの米国医療機器企業に就職、が最も点数が高かった。妻の希望もあるが、何よりも僕の好奇心も米国に残りたいと告げていた。就職先が、新商品のProduct Managerという僕がこれまでやってきたことであり、かつ最も情熱を注げる職をオファーしてくれたことが、大きな理由の一つだ。アメリカで、優秀な人たちと働くというのはどんなものなのだろう。最先端のHealthcare × Techはどうなっているのだろう。新しいものを生み出せて、世界中の患者さんに良いインパクトを与えられたら、それはどんなに素晴らしいことだろう。

これらが僕が意思決定をした手順だ。MBAにこれから行く人・在籍中の人にとって少しでも参考になると嬉しい。

HBS Show

HBSでは毎年4月にHBS Showという学生主体のミュージカルがキャンパス内で行われる。これがまた非常に楽しい。脚本、作詞、演出、振り付け、小道具、演技、演奏、スポンサー集め等々、全て学生により行われており、いかに才能豊かな人材がHBSにいるかを実感させてくれる。2016年の例はこちらで、リンクを辿れば大体の様子が伝わると思う。

歌は原曲の歌詞を変えてHBSに関するネタが豊富に盛り込まれており、HBS生がすごく楽しめる内容となっている。具体的には、1年目の必修科目のケースに含まれるProtagonist(登場人物)に関するものであったり、HBSにおける恋愛や、普段の生活ではpolitically incorrectで言えないような事柄など。1年目、2年目の学生がどちらも舞台に立っているため、自分のセクションメイトや友人の思わぬ一面も楽しめ、約2時間半の公演を全く飽きずに鑑賞できるだろう。

HBSにおける最大のエンターテインメントの一つであり、毎年の評価も非常に高い。僕も2016年、2017年のどちらの公演も観たが、どちらも素晴らしかった。ぜひ会場で観て欲しい。

米国MBAの就職活動について

HBSに来るインターナショナル生にとって、卒業後の進路として魅力的な選択肢として米国での就職がある。分かりやすいメリットとしては、以下の5つがある。

  1. MBA採用という仕組みをすでに多くの企業が持っており、昇進速度の早いLeadership Development Programなど魅力的なプログラムが多い
  2. 給与水準が他国よりも高い($135,000/yearがHBSでの卒業後の平均給与、これにボーナスや転勤費用補助などその他の福利厚生が加わる)
  3. 労働環境が相対的に良い(米国では日本よりも労働時間が相対的に短い職場が多い)
  4. 世界中から優秀な人が集まっており、働いていて楽しい
  5. 子育てをする環境としても良い(高額だが、保育所やNannyなど子供を預ける仕組みが整っている上に良質な教育機会が多い)

などがあげられる。

一方で、これらのメリットを求めてインターナショナル生が米国労働市場に殺到するため、競争は結構厳しく、米国就労には3つのハードルを超える必要がある。

① ビザ(Visa)のハードル

最も大きなハードルはビザの壁だ。アメリカ国籍や永住権(グリーンカード)を保有していない場合には、米国で就労し続けるためには労働ビザが必要だ。米国の大学を卒業したインターナショナル生の場合、OPT (Optional Practical Training)というプログラムで1年間は労働ビザなしで就労できるのだが、その期間を超えて就労しようとすると一般的にはH1-Bという労働ビザが必要となる。

このH1-Bだが、米国人の雇用を守るために年間の発行上限が85,000と決められており(20,000が大学院以上の学位保有者の優先枠で、65,000がそれ以外の全て)、それを超えた人数が応募した場合は抽選、とかなりインターナショナル生泣かせの作りになっている。近年では200,000人以上が応募しているために、大卒の資格で応募した場合にはH1-Bが取得できる可能性は1/3以下。加えて、大統領が代わり、より移民抑制の方向に舵を切ろうとしているために、来年以降にこのH1-Bの制度自体がどうなるのかも不透明だ。

これは個人にとってもリスクだが、企業にとってもせっかく採用してトレーニングした人材が国外に離れるために離職してしまうということでリスクとなる。おまけにH1-Bは企業にスポンサーしてもらう必要があるために、多くの企業はその手間やコストを嫌がる。結果として、MBA生をターゲットとした採用枠でも、90%以上の企業はそもそもインターナショナル生は採用しません、となる。残りの10%以下の枠でも一般的にはすでに労働ができることが決まっている米国国籍保有者・永住権保持者、もしくは過去にH1-Bを取得していたインターナショナル生(H1-Bの延長、とすれば抽選のプロセスから逃れられる)を採用する方が企業側にとってはリスクが低いため、ビザなしの応募者はハンデを負っての戦いとなる。

ビザの問題は個人の力でどうにもできないこともあり、悩ましい。米国で就労したいという人はH1-Bのシステムが新しい大統領の下でどう変わるかを注視しておいた方が良いだろう。

HBSでは移民法を専門にした弁護士によるビザに関するセッションが年数回開かれており、個々人の状況に応じたアドバイスも受けられるため、得られる情報は比較的充実していると思う。

② 言葉・文化のハードル

これは言わずもがなだが、米国で就労する場合には英語でコミュニケーションをとれる力があることが大前提となる。インターナショナル生の中でも同じ土俵で戦うのは、多くが高校や大学から米国に来て米国で就業した経験のある人や英語が母語の人なので、彼らの方が英語のレベルが高い。加えて、米国文化への理解もコミュニケーションの際に重要となる。例えば、ネットワーキングの機会でどれだけ会話を盛り上げられるか、は文化への理解度に結構左右されるので、英語が話せてもこの点で難しさを感じるインターナショナル生も多い。

③ 競争のハードル

ビザと言葉・文化の壁に問題がなかったとしても、米国は世界各地から就労したい人が来ることもあり、そもそもの競争環境が日本よりも厳しい。日本での就職活動以上に自分の強みと会社のニーズを理解し、どうして自分なのか、をうまく伝えることが求められる。特に競争相手となる米国人のMBA生はゲームのルールを理解した上で、かなりの時間を使って就職活動に挑むので、レジュメ、カバーレター、ネットワーキング、インタビューの各プロセスが高いレベルに仕上がっていないと、オファーまでたどり着くことは厳しいだろう。

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そうは言っても、これらはあくまでもハードルであり、飛び越えれば良いだけの話だ。ビザについてはそもそもインターナショナル生をスポンサーしている企業に絞る、もしくはネットワーキングを通じて窓口をこじ開けることができる。言葉・文化についてはせっかく米国MBAにいるのだし、日々の生活で改善していけば良い。競争の壁についても、自分が強みを有する分野を狙えば、十分戦える。HBSでは付属のキャリアセンターがレジュメやカバーレターを見て直してくれるし、キャリアコーチがどのような企業にどうやってアプローチをすれば良いかを一対一でアドバイスをくれる。ネットワーキングやインタビューについても練習の機会を提供してくれるため、かなり使えるリソースだ。

僕の周りのClass of 2017のインターナショナル生では、大学内の就職活動支援やインターンを通じてMcKinsey、BCGなどのコンサルティング、Goldman Sachs、UBSなどの投資銀行、Amazonなどのテック系企業、Danaher、Samsung、Fordなどの大手製造業からオファーをもらった人が多い。これらの企業の特徴はグローバルに展開しており、もしH1-Bが受からなくても米国外への転勤が可能な企業ということだ。海外オフィスのない中小企業やスタートアップは正攻法では門が開いていないために厳しいが、個人的なネットワークを使ってオファーをもらい、米国に残る人もいる。

また、昨今では母国へ帰る方が良いオプションとなることも多い。米国MBA取得者が少ない日本のような国であれば、帰国した方がより差別化ができ、就きたい仕事に就きやすい(プライベートエクイティやヘッジファンドについては、米国ではインターナショナル生が入るのはほぼ不可能と言われるくらい狭き門だが、母国に帰ればまだ門が開いている、あるいは、スタートアップの日本支社立ち上げの機会がある、など)。また、中国やインドのように急速に発展している国の出身者の場合、帰国した方がより将来性があると考える人も多い。母国の方が家族や友人がおり落ち着くし、ご飯も美味しい、というのもよく聞く理由の一つだ。

色々なオプションはあるが、HBSのメリットの一つとしては世界中に就労するためのパスポートを与えてくれることだ。米国内でオプションを探しても良いし、自国へ帰っても良い。あるいはシンガポールやロンドンなどの第三国に行っても良い。特に、HBSは世界中に卒業生がいてネットワークがあること、HBSブランドが評価されていることなどから、行きたい場所にアプローチしやすい。こういったmobilityは日本で教育を受けただけではなかなか持つことが難しいため、世界のどこでも働けるようになりたい、と考える人にとってはHBSは良いパスポート取得の機会になるかもしれない。

起業に関する授業外の機会 at HBS

起業に関するHBSの機会は授業だけではなく、課外活動でも様々な機会がある。

まず、iLab (innovation Lab)と呼ばれる施設がHBSのキャンパス上にある。こちらはスタートアップに興味のある人が集まる場所で、様々な起業に関するイベントが毎週のように開かれている。イベントはアイデアピッチコンテスト、プロダクトマネジメント、マーケティング、デザイン、資金調達、知的財産、など様々で、スタートアップをする上で有用なアドバイスをかなり得られる。iLabはチームとして申請して、申請が通るとコワーキングスペースとして使え、他のチームとのやりとりで新しいアイデアがもらえる。また、アメリカのコワーキングスペースらしく、コーヒーなどの飲み物やスナックが飲み放題、食べ放題だ。

同様の施設としてRock Centerがあり、こちらでも時々スタートアップ関連のイベントが開かれる。特に法律関連のイベントは外で相談すると数百ドルかかるような内容が無料で聞けるのでおすすめだ。

1年目と2年目の間の夏休みにある「Rock Summer Fellows」も有用なプログラムだ。これは夏休みに自分のアイデアを試したい学生を対象にした金銭サポートのプログラム。スタートアップのアイデアに挑戦したいが、夏休み中にインターンをして少しでも学費の足しにしたい、という学生の悩みに対するHBSのアプローチで、Summer Fellowsに選択された学生には週$600が支給される。2016年は他国でリサーチする学生へ航空券代まで支給されたので、この種のプログラムとしてはかなり寛大だと思う。また、このFellowsはスタートアップに関心のある学生が集まるため、ここでの集まりも良いネットワークとなる。

HBSで最大のビジネスコンテストとなるのが毎年春学期に行われる「New Venture Competition」だ。こちらはいわゆるビジネスコンテストで、営利ビジネスと非営利ビジネスの2つのコースで審査がされる。HBSの学生が少なくとも一人はチームに含まれていることが参加条件で、多くのチームがHarvardの他スクールやMITなどのHBS以外の学生とチームを組んで出場している。MITの100Kと同様にボストン界隈では大きな学生ビジネスコンテストの1つで、優勝賞金も$75,000と起業の頭金として悪くない額だ。

クラブとしてはEntrepreneurship Clubの活動などがある。こちらは年一回のSPARK Entrepreneurship Conferenceが主な活動で、カンファレンス運営に興味があれば良いが、クラブとしては正直集まりが少なく、あまり有用ではない。テクノロジー系であればCODEというコーディング系のクラブの方が活動が活発でほぼ毎週集まりがあってサービス開発の進捗管理ができるので、こちらの方が良いだろう。

他にもEntrepreneurship in Residenceとして起業経験者がHBS近くに住んでおり、この中からアドバイザーを見つけて相談をすることもできる。アドバイザーはテクノロジー系、サービス系、メディカル系などかなり幅広くいるため、たいていの分野で関連するアドバイザーを見つけることができるだろう。

最後に、Harvardやボストンという場所も大きな魅力だ。HarvardはHBSのみならずMedical、Public Policy、Law、Engineering、Educationなど幅広い大学院を持つために、異なった専門分野の人と話をする機会にあふれている。ボストンはHarvard、MIT、Boston University、Boston Collegeなど多くの大学や研究機関が集積しており、大学や研究所にはスタートアップの種がゴロゴロと転がっている。具体的にはケンブリッジには研究所発のライフサイエンス系のスタートアップの集積がある。研究寄りのテクノロジー、特にライフサイエンスに興味のある人にとっては、ボストンは最適な場所だろうと思う。

起業に関する授業 at HBS

今週で3月も終わり、残すところ授業はあと1ヶ月を切った。HBSの2年生の間では「卒業後どうする?」が定番の話題だ。すでに仕事が決まって卒業旅行の計画を練っている人もいれば、スタートアップなど卒業のタイミングギリギリから採用活動を始める会社への就職活動がピークになっている人もいる。起業してすでにバリバリと自分のビジネスを進めている人もいる。起業に興味のある人向けに、今回はHBSでの起業に関する授業について紹介したい。

HBSでの授業は1年目は必修で、2年目は完全に選択授業だ。1年目の必修のうち、起業に関する直接的な授業は「The Entrepreneurial Manager」という2学期目の科目だ。この授業ではビジネスモデルの分析、資金調達、ビジネスモデルの改善などを扱い、扱う企業のサイズもまさしくアイデアの段階から上場するレベルの大きさまで扱う。ゲストも多く、実際の起業家の話を聞いたり、質疑応答をすることで、ケースの登場者から直接学ぶことができる。

また、1年目の冬休みには希望者向けにStartup Bootcampがあり、こちらは10日間でアイデアを実際の形にするところまでを実践できる、かなり密度の濃いプログラムだ。スケジュールを見てみればわかるが、スタートアップのCEOやベンチャーキャピタルのパートナーなどゲストもそうそうたる顔ぶれで、ゲストからの学びも非常に多い。

2年目の選択授業でも起業に関する科目が多く提供されている。個人的なオススメはRobert Whiteの「Entrepreneurial Finance」とShikhar Ghoshの「Founders Dilemma」だ。Robert WhiteはBain Capitalの創設メンバーであり豊富な実務経験を持つとともに、Mitt Romneyの2012年の選挙参謀を担うという政治にも明るい教授で、まさしくHBSでないと出会えないような人だ。Shikhar GhoshもCEOとしてAppex、Open Marketを成長させ、どちらもExitを成功させるなど実務経験が豊富な教授で学びが多い。

他にも、HubspotのChief Revenue OfficerであるMark Robergeが教える「Entrepreneurial Sales and Marketing」も評判が良い。テクノロジー系に興味がある人には「Launching Tech Ventures」や「Scaling Tech Ventures」、ヘルスケア系に興味がある人には「Innovating in Health Care」など分野別に特化した科目もあり、その気になれば起業系の科目だけで選択授業の大半を埋めることができる。「Launching Tech Ventures」や「Scaling Tech Ventures」はほぼ毎回ゲストがいるので、起業家とネットワーキングをしたい人にとっても非常に価値がある授業だ。

また、起業に集中する人は、FIELDという実践系の授業や「Independent Study」という教授と組んで自分のスタートアップを題材にしたレポートを出す授業を取る人が多い。これは、①教授からアドバイスを定期的に受けられる、②授業を受けなくて良いのでその分の時間をスタートアップに使える、という2つのメリットがある。

他の大学との比較はできないが、起業に関する授業に関しては、①サイズの大きなMBAプログラムのため選べる科目数が多い、②実務経験とアカデミックの両方を併せもった経験豊富な教授が多い、③ゲストが来る率が非常に高くゲストから直接学べ、しかもネットワーキングの機会もある、という3点がHBSでは強みとしてあるのではないかと思う。

加えて、授業はあくまでもほんの1部分でしかない。他にもHBSが用意している起業家向けのプログラム(Rock Summer Fellows、New Venture Competition)や施設(iLab、Rock Center)や課外活動の機会(Club etc)も豊富にあるため、こちらは次回以降に紹介したい。