アメリカMBA留学後に海外で就職することにしました

あけましておめでとうございます。米国でも新年を迎えました。

卒業後の進路

就職したこともあり、どこまで書こうかと考えているうちにあっという間に時が過ぎてしまいました。2017年は、HBSを卒業して、アメリカ中西部に移り住み、米国企業の本社で働く、という新しい挑戦が始まった年になりました。

妻もミネソタ大学の大学院生となり大学院生活を始め、友人が増えるなど、夫婦揃って米国での地盤が固まりました。「HBSで学んだことが活きていますか?」と聞かれることもあるので、その観点から振り返ってみます。

ミネソタ州ミネアポリスでの生活

米国生活は想像以上に恵まれたものになっています。友人関係でいえば、HBS時代の友人のうち何人かもミネアポリスで働き始めたため、そもそもの友人のベースがあります。飛行機で2時間以内には中西部大都市のシカゴがあるため、シカゴにも友人がそれなりの数います。

昨年は一度シカゴで友人たちと再会しました。加えて、会社の同期がとても良い友人となり定期的に家で会ったり、妻の友人が僕の友人になったり、ミネソタで新たに入ったコミュニティでできた友人がいるなど、週末に過ごす相手には困まりません。

こうやって新しい場所でもすでに友人のベースがあることと、新しい場所でもスムーズに友人ができるようになったのは、やはりHBSでの2年間があったからだと思いますし、留学当初はできなかったことが今はできるようになっていると思います。

MBAで得たものは活かせているか

仕事の面でも順調で、良いスタートが切れたという印象です。最初の3ヶ月は成果を出して信頼を勝ち取ろうと、自分の強みである分析、戦略戦術策定にフォーカスして仕事をこなしました。

幸いにも高い評価をいただけ、信頼を得ることができ、その後の3ヶ月は様々な仕事を任せてもらえるようになりました。HBSにて約500ケースをこなして磨かれた分析と戦略・戦術策定の力と多面的に物事を見る視点は、成果を出す上で役立っていると感じています。

また、最初の数ヶ月はチームの中で人間関係を築くことにまずは力を注ぐべしという教えを守ったためか、スムーズにチームに溶け込むことがでました。この点もHBSで学んだ中で有益だった点です。

ハーバードビジネススクールMBAの価値」で”Good Business Foundation”、”Network”、”Career Change Opportunity”が得られると以前書きましたが、まさしくそれが活きた2017年でした。

今後のキャリアの方向性

また、もう少し長いスパンで振り返ると、大学時代に「10年後までに、世界のどこでも、多くの人を巻き込んで、新しいビジネス・商品を生み出せる人になる」と決めてから、2018年で約10年となります。

今、海外でそういう仕事についているというのは、目標を持って一歩ずつ進んでいったことの成果なのかもしれません。

2018年は中頃に米国生活に一区切りをつけ、海外赴任で今度はオーストラリアへ行く予定です。これまでプロダクトマネジャーとして大きな戦略を描き、製品をゼロから生み出すことに注力してきましたが、将来的に経営者となるためには実際に販売の現場に近いところで日々の数字を達成する経験が必要だと考えるからです。

世界のどこでも働けるようになるため、米国以外でも自分を試してみたいと思っており、今回はそのための機会となります。

僕自身、様々なチャレンジを常にしていた方が活き活きとしていられますし、”a rolling stone gathers no moss”のような生き方が好きなのかもしれません。さあ、新たな挑戦の一年です。

ハーバードビジネススクールMBAの価値

MBA受験-ビジネススクールで得られるもの」、でMBAの価値として「A Good Business Foundation」、「Networking」、「Career Change Opportunity」の3つが主要な価値で、「Quality Time」、「Brand」の2つを加えた計5つが価値と述べた。

それらが得られたというのはそうなのだが、最初の3つについては得られたものについてより具体的に表現できるようになったことと、少し感じ方が変わってきたので、今回続編を書いてみようと思う。

内容はMBA一般というよりも、僕がHBSで得られたものについて、だ。

Personal Development

最も大きな成果は人としての成長だと思う。HBSでは1年目、2年目ともに人生の価値観について考えさせられる機会があり、その機会を経て、人生についての理解が深まった。

BSSE (Building Successful and Sustainable Enterprise)でClayton Christensenが行う最後の講義の”How will you measure your life?”もその一つだ。彼は実務家としても、教授としても成功した教授だが、彼が最も大事にしているのは妻と5人の子供を育てることだと言う。そのためにも、彼は土曜日と日曜日は家族のためにあてる時間としてコミットして、BCGで働いていた時から土日は働いていなかった。何を人生において成し遂げたいか、そのためにどのように自分の時間という資源を配分しているか、それをどうやって実現するか、という彼の講義は非常に示唆に富んでおり、彼の講義を受けることができたのは幸運だったと思う。

同じテーマでFounders’ DilemmaのShikhar Ghoshも「幸せに最も影響を与えるのはどのような質のRelationshipsを築けているか」であり、”Relationships trump everything”ということを教えてくれた。人生における自分なりの成功の定義は何か、それを実現するために日々どう行動するべきか、について、HBSは自分なりの答えを見つけるための機会をくれた。

人との関わりを通じて、リスクについての考え方も変わった。HBSには本当に多くのゲストが来る。起業家もいるし、大企業の役員もいるし、政治家もいるし、訪れるゲストの幅が広い。彼らの生き方を聞き、彼らと話していて気づくのは、別に彼らが僕らと別次元に住んでいる人ではないということだ。

いわゆる自分の人生を生きている人とそれ以外の人の違いは、リスクを取っているかどうか。彼らが口々に言うのは、「リスクを取らないことがリスクだ」、と。多くの教授もその見方を後押しする。一度や二度ではなく、2年間毎日のようにそういった話を聞いていると、自分もやれるという自信が生まれてくる。挑戦をしての失敗は僕を強くしてくれる。

HBSは僕に「やればできないことはない」という自信をくれた。

HBSはBusinessについて学ぶ場かと思っていたが、実は人生について学ぶ場だった。

自分の本当にやりたいことは何なのだろうか。何を自分の人生において大切にするべきであろうか。21ヶ月という比較的長い時間があったため、そういった質問を自分に問いかけ、考え、妻や友人や教授と議論する時間が持てた。これにより、自分がこの先の人生を生きる上での土台を作ることができたように思える。

僕自身は、実はHBSに来る前にはもう自分の価値観はある程度固まっていてそこまで変化はないかと思っていたのだが、振り返ってみるとかなりの変化があったように思える。これは予想していなかったが、得られたものの中で最も大きかったものの一つだ。

A Good Business Foundation

ビジネスについては、幅広い視点を身に付けることができたと思う。特にLEAD (Leadership)の授業が素晴らしく、リーダーシップについては一生使えるような考え方を学べた。

HBSの1年目の必修科目はよく練られており、ケースメソッドでビジネスを包括的に学べるようになっていた。大きく分けると、マクロ経済・グローバライゼーション(BGIE、FIELD 2)、リーダーシップ(LEAD, LCA, FIELD 1)、ファンクション(STRAT, MKT, FIN1/2, FRC, TOM)、アントレプレナーシップ(TEM, FIELD 3)の計4つ。

ケースメソッドでは様々な経営の場面において、①何が起きているのかを分析し、②何をするべきかを立案し、③どう実行すれば良いのかのアクションプランを立て、④実行の際の障害やリスクとそれらを解決または減らす方法も立案する、ということをひたすら行うため、「どういう場面で、何を、どのように考えれば良いのか」、が思考のプロセスとして築かれる。この思考のプロセスが、より成功確率が高い意思決定をするために役立つと感じる。

一方、2年目は全て選択科目で、自分の伸ばしたい分野について学ぶことができた。僕の場合、戦略(Strategy and Technology、Strategic IQ)、組織(General Management Process and Actions、Designing Competitive Organizations)、ヘルスケア(U.S. Healthcare Strategy、Innovating in Healthcare)、アントレプレナーシップ(Founders’ Dilemma, Launching/Scaling Tech Ventures)、ネゴシエーション (Negotiation)、ファイナンス(Entrepreneurial Finance)、マクロ系(Globalization and Emerging Markets)と幅広く履修した。

得られたものの一例は、戦略的な思考がある。こちらに来て学び始めて、僕の場合、プロダクトマネジャーとしてプロダクトレベルの「戦術」や「アイデア」は考えていたが、事業レベルの「戦略」についてきちんと考えることができていなかったことに気づいた。

僕は新しい機能やデザインでの商品の差別化など、プロダクトマネジャーとして単年度で結果を出すような施策は考えて実行してきたが、中長期でどのように持続可能性のある競争優位性を築いていくか、そのためには組織に対して影響をどのように与えていくべきか、という観点が抜けてた。あの時の僕が今と同じように考えられたら、より戦略的な提言と実行ができたと感じる。

もう一つの例は、リーダーシップだ。僕は前職での経験を通じて、人に動いてもらうためには「情熱、論理、思いやり」が必要であり、そのためには自分が最もお客さんや商品、技術を理解して、チームを動かしていく必要がある、と考えてた。

今でもその考え方は残っているが、今ではチームをどうやってデザインし、立ち上げ、マネージするかについて、より多くの要素があることを知っている。前職で初めて人のマネジメントを経験した時にはマネジメントについて「何を、どう考えれば良いのか」、が全て手探りで一つずつ自分の使える道具を探していく感じだったが、今では以前は知らなかった道具があることを知っているので、その道具を使って、より良いリーダーシップがとれる気がしている。

MBAに来るまでは、学習から「知識」がつくのかと思っていたが、実際には様々な状況における「思考方法」や「視点」を学んだという方が近い。

この学びがどの程度役に立つのかは卒業後試してみないと分からないが、少なくとも僕は自分の思考の広さと深さが広がったことには十分の価値があったと思う。思考の広さと深さは一生磨き続けていくべきもので、MBAはそのベースを作ることを助けてくれた。

Networking/Friendship

HBSは仕組みに優れた大学であり、その最たるものが「セクション」という仕組みだ。HBSの場合、セクションと呼ばれる93-94人のクラスで1年目を過ごし、同じ教室で、授業を一緒に受ける。授業の大半がケースディスカッションのため、だんだんとその人の価値観や人となりも分かってきて、不思議な親近感を抱くようになる。

1年目は何をするにもセクションが主な単位となるので、自然と独自のカルチャーができてくる。セクションごとに卒業後も5年ごとに集まるReunionという機会が用意されているため、この友人関係は(HBSと関わり続ける限り)一生続くものとなる。卒業した時点で誰もが93-94人の一定以上の深さを有する友人を持て、かつ5年後も彼らと会うために戻って来ようと思わせるような帰属感を持たせるこのセクションという仕組みは、とてもよくできている。

加えて、セクションが全てではなく、1年目はディスカッショングループやFIELD 2という新興国のコンサルティング・プロジェクトでセクションを跨いだ人間関係が築け、2年目の授業でさらに人間関係が広がる。Trekの運営や参加、カンファレンス運営、その他クラブ活動等々で、何だかんだでHBSだけで2年間で300人は友人・知り合いと呼べる人はできると思う。ボストン自体も他の大学の学生や研究者の人たちとの出会いの機会が豊富で、出会える人の幅も広い。僕の場合、この2年間でFacebookで新たに繋がった人の数は400人だった。

また、HBSはAlumniとの結びつきも強く、驚くぐらい卒業生が後輩をサポートしてくれる。こちらも卒業後に出会うことができる人の幅を大きく広げてくれる。

世界中に、助け・助けられ、共に刺激し合える友人がいるというのはとても幸せなことだ。この幅広さと深さの人間関係は、僕の一生の財産になるだろうし、全員とは難しくとも、特に仲の良い友人とは今後も定期的に連絡を取り合うことで、より関係を深められるようにしたいと思う。

Career Change Opportunity

HBSを出たことによって、就労の機会が大きく広がった、というのは実感としてある。僕自身、地域と業界を変えて米国で就職することにしたが、これはMBAを経なければほぼ無理であっただろう。

一方で、友人と話していて、見えていなかった現実もあるなと感じた。一つには、インターナショナル生にとってのMBA後の米国就労の厳しさ。米国で就労するためには、企業にH1-Bビザという抽選で取得するビザの申請をしてもらわなければならず、このビザサポートをしている企業が本当に少ない。いわゆるスタートアップ系企業はほぼビザサポートをしないと思っていた方が良い。中規模くらいの会社でも就労のための門がそもそも空いておらず、文字通り門前払いだし、大企業でも人気のあるところは競争が厳しい。

ネットワーキングで門をこじ開ける方法もあるが、狭い道だ。科学技術の学位取得者に関しては(特にコンピューターサイエンス)より門が開いているので、単に米国での就労が目的なのであれば、エンジニアリングの専門で大学院に行った方がずっと良いと思う。

二つ目は、年齢が上がってから来ると、納得いくポジションが見つかるとは限らないことだ。米国MBAの平均入学年齢は約28歳で、卒業が30歳前後となる。いわゆるMBA採用をしている企業では、入社時点が実務経験3年+MBA2年の28歳と、実務経験7年+MBA2年の32歳を同じMBA卒として同じポジションで採用することが多いため、実務経験が長い人ほどキャリアアップというよりも、キャリアの横滑りの可能性が高くなる(前者がスタッフ→MBA→マネジャーなのに対して後者はマネジャー→MBA→マネジャー、など)。

特に欧州から来る学生はやや年齢が上のことが多いので、この点でオファーを受けるべきかどうかで悩む学生が多いようだ。

* * * * *

全てをひっくるめて、僕がHBSに来て良かったかと聞かれれば、間違いなく良かったと思う。21ヶ月の機会費用や計24万ドル以上のコストは非常に高いが(奨学金がなければ本当に苦しかった。。。)、生き方、友人、仕事の土台を築けたし、今後の人生をサポートしてくれるようなネットワークへのアクセスや「HBS卒」という一定の信頼を得ることもできた。

MBAを考える人は、検討しているプログラムの学業の内容だけでなく、卒業生が何を得ているかを上記のような観点で検討してみると良いのではないかと思う。

この記事を読んだ方で、MBAに興味を持たれた方は、「MBA受験から卒業までの流れ (準備から卒業まで)」をご参考に。

2年生春学期の振り返り

2年生の春学期が終わった。これまでの1年生2年生の秋学期と続いてきて、これがHBSでの最後の学期となる。振り返ってみたい。

学業

春学期は最後の学期ということもあり、先学期より2科目を増やし、”Launching Tech Ventures”、”Scaling Tech Ventures”、”Strategic IQ”、”Designing Competitive Organization”、”General Management Processes and Action”、”U.S. Healthcare Strategy”、”Innovating in Healthcare”の7科目を履修した。また、学期最後の3日間は”Bridges”という卒業後のキャリアや生き方を考えるセッションを履修した。

“Launching Tech Ventures”からはProduct Market Fit(製品がお客さんのニーズに合っており、かつビジネスとして成り立つことが確認できること)を実現するために製品・サービス、成長戦略、営業・マーケティングについて考慮すべき点やCustomer Life Time Value(顧客生涯価値)、Customer Acquisition Cost(顧客獲得コスト)をいかに測定し、改善していくかについて学んだ。”Scaling Tech Ventures”では6S (Staff, Shared Value, System/Structure, Series, Scope, Speed)のフレームワークに基づいて、Product Market Fitを実現したスタートアップをいかに急成長させていくべきかについて学んだ。”Strategic IQ”からは競争力を持続するために、環境に合わせて変化し、実験から学び続ける企業をいかに実現させるかについて学んだ。”Designing Competitive Organization”からは戦略を実行する組織に必要な7つの要素を学んだ。”General Management Processes and Action”からは、いかに経営者として意思決定、組織学習 、変化のプロセスを設計し、実行していくかを学んだ。”U.S. Healthcare Strategy”と”Innovating in Healthcare”からは米国ヘルスケア業界の知識とその中で成功するための条件を学んだ。成績は全て「2」以上でStrategic IQとDesigning Competitive Organizationは「1」だったので、目標達成だ。

授業からも学びが多かったが、最も印象深かったのはBridgesの最終日に聞いた、Clayton Christensen教授のHow will you measure your life?”の講義だった。この講義の中で、教授は企業の戦略・組織の理論を人生にあてはめて、「いかに人生を自分の生きたいように生きるか」、ということを語った。

Clayton Christensenは実務家としても教授としても成功した人だが、彼は自分が最も大切にしてきたのは家族と5人の子供を育てることだと言う。彼は土曜日と日曜日は家族のための時間にすると決め、自分の決意を同僚や上司にも話して土日に仕事が入らないような環境を作り出し、それを実行してきた。彼は、「何を人生において成し遂げたいか、どうやってそれを実現するか、そのために自分の時間という資源をどのように配分するかを考えないと、年収や地位など目に見えやすい成果を追い求めて仕事のみに時間を割いてしまい、結果として本当に得たいものを得られなくなってしまう」と語った。彼の講義は示唆に富み、どのように生きるべきかについて考える良い機会となった。また、脳梗塞など大病を患いながらもリハビリを繰り返して教壇に復帰し、学生に教えることを止めず、教壇に立ち続けるその姿は人知を超えた神々しさすら感じさせ、彼の一言一言が胸に刺さった。 体調悪化のために来年からは講義をさらに縮小するということで、彼の講義を受けることができるうちにHBSに在籍できたことは幸運だったと思う。

友人、課外活動 

春学期は秋学期に引き続き、週に1-2回友人を招いてホームディナーを行った。春学期中はアメリカのトランプ政権の100日間、イギリスのBrexit交渉の進展、フランスではルペンの台頭、と特に西側諸国の政治で大きな変化があったので、それらを話しながらのディナーは楽しいと同時に、そういう見方もあるのか、と視点を広げるきっかけにもなった。また、妻が作る肉じゃがや手巻き寿司は友人たちに好評で、友人たちと仲を深める良い機会となった。

また、Bridgesの期間中は約1年ぶりにセクション(クラス)で集まり、ケースディスカッションを行なったが、まるで地元に帰ったような懐かしさを感じ、HBSはやはりこのセクションの体験がユニークだと感じた。1年間を共に過ごした93人の仲間とは卒業後も大学主導の5年に一度の同窓会でボストンで集まることになる。93人の仲間の進路はまさしく国も業界も様々で、彼らと今後の人生を共に歩んで、時々にお互いの近況報告をし合えると思うとワクワクする。65周年まで同窓会が開かれるということなのでいつまで参加できるかは分からないが、体がついていく限り、できるだけ長く参加したいと思う。

課外活動としては、文科省のスーパーグローバル・ハイスクールに採択されている長野県上田高等学校の生徒17人が高校のプログラムでボストンに来た際に、スタートアップに関する講義をHBSで行った。彼ら・彼女らは非常に熱心に講義を聴いてくれ、質問も活発に出て盛り上がった。僕としても何かを教えることは楽しく、卒業後もこの2年間で学んだものを継続的に社会に還元していきたいと思う。

加えて、今学期もHarvard Business Schoolの公式ブログの管理とこの個人ブログも書き続けて、こちらで学んだことを発信し続けた。2年間続けた個人ブログは今年のHBSの合格者の中でも読んでいた人が多く、HBSやMBAの実情を伝えることに少しでも貢献ができたのではないかと思う。 

また、最終授業から卒業式の間の5月中旬にHKS (Harvard Kennedy School)主催のIsrael Trekに妻と参加し、こちらも多くの学びと新しい繋がりを与えてくれた。旅行でもアイスランドとベリーズへ行ったりと、今学期はかなり見聞を広めることができたと思う。

キャリア

今学期は”Innovating in Healthcare”という授業の一環でBoston Children’s HospitalのBioinformaticsチームの依頼を受け、同級生2人とともにSMARTというIT Platformのビジネスプランを策定した。SMARTは互換性が低い米国の病院・クリニック向けのEMR (Electronic Medical Records)向けに互換性のあるソフトウェアを提供するためのプラットフォームという位置付けで、米国保健局(National Institutes of Health)からも支援を受けているNPOが運営している。

SMART: https://smarthealthit.org/

このプロジェクトを選んだ理由は、「病院・クリニック間の情報共有を促進させることで、効果的かつ効率的に患者さんに適した治療法を見つけやすくする」という点で、僕の将来のテーマに繋がると考えたからだ。

このプロジェクトを通じ、米国のITシステム業界がどのようになっているのかについてや、病院・クリニックの購買の意思決定者や意思決定プロセスについての理解が深まった。米国のITシステム業界は広く、統一された規格がないため、各企業が独立した規格を用いてソフトウェアのベンダーを抱え込んでいるため、結果として病院間で用いているソフトの互換性がなく、ヘルスケアのシステムとして非効率な状態となっている上、新たに参入する企業にとっても各ベンダーに合わせた仕様を作らなければならず、コスト高に繋がっている。また、病院・クリニックの購買はIT担当だけでなく、実際に診療を行う診療部門やグループ病院との調整が必要で、提案から成約までの期間が1年から2年と長く、この意思決定の長さがスタートアップがヘルスケア業界に入る際の障壁となっている。このプロジェクトを通じて、ヘルスケアで新しいビジネスを起こす際にどのような壁を乗り越えるべきかを認識できた。

同級生の2人が特に優秀だったこともあり、プロジェクトの成果はクライアント、教授ともに高い評価をいただけた。今回のアウトプットはSMARTを運営するNPOが5月末に申請する補助金の土台となる予定だ。


全体を通じて、今学期は忙しい学期だった。通常5科目選択のところを、最後だから学べるだけ学ぼうと7科目選択したのだが、やはり結構多かった。加えてヘルスケア系の授業は新鮮で学ぶことが多い一方、僕は前提知識がないためにかなりそこに時間を使った。その分学ぶことが多かった上、ヘルスケア系のクラスメイトともより多くの繋がりを築けたという点で非常に実りが多かった。

HBSの学生とも定期的にホームディナーを行って仲を深められたと同時に、HKSのIsrael Trekに参加してHKSやHLSとの繋がりも夫婦で広げることができたのは非常に良かった。

もう少しできたか、と問われれば、できたこともあるのかもしれないが、得られたものには満足をしている。7月からは久方ぶりの仕事をする生活だ。新しい挑戦に、ワクワクしている。

MBA卒業後の進路の選び方

MBA在学中には様々な選択肢が目の前にあり、機会も多い分、卒業後の進路については誰もが悩む点です。今回は進路を選ぶのに役立つフレームワークを、僕の事例を元に紹介します。

僕の卒業後の進路ですが、米系医療機器の会社に就職して、米国に残ることにしました。卒業後にどうするかは、下記のような手順を踏んで考え、意思決定をしました。

Step 1: 価値判断の軸を決める

まず卒業後の進路を考えるにあたり、僕は「目的」(Purpose)、「人間関係」(Relationships)、「金銭」(Finance)の三つの軸で考えました。

「目的」は僕がどのように世界に貢献したいかです。20代の終わりに改めて自分の人生を振り返って気付いたのは、やはり僕は病気を抱えた人やその家族・友人が治療法が見つからずに苦しんでいるのが許せないし、そのことに対して考えたり動いている時に充実感を感じるということです。

だから、世界中の人が自分の病気の治療法を見つけられるような世界にしたいと思いますし、「その目標に繋がる仕事」というのを第一の項目として入れました。

第二に、僕はテクノロジーの力を信じており、テクノロジーを通じてその目標を達成したいと考えているため、「テクノロジーに関わる仕事」という項目も加えました。

第三に、僕は自分でコントロールしたいタイプなので、「事業責任者として動ける」という項目を加えました。

最後に、僕は多様なバックグラウンドを持つ人と働いている時に特に楽しさを感じるため、米国、ロンドン、シンガポールなど「英語圏でかつ世界中から人が集まっている場所で働けること」を第四項目に加えました。

「目的」としては以上の「病気の人を治療する・もしくは治療法を見つけやすくできるか」、「テクノロジー × ヘルスケアか」、「事業責任者か」、「場所」の4つを評価項目としました。

次に「人間関係」ですが、これも大事な要素だと考えました。まず、働く場所は自分の価値観と合うようなカルチャーにしたい、もしくはそんなカルチャーで働きたいので、「企業カルチャー」を第一の項目として入れました。

次に、「一緒に働く人が尊敬できるか、一緒に働いていて楽しいか」を二つ目の項目にし、三つ目としては、「僕の家族が幸せか」、を入れました。

最後に、生活をする上で必要となる「金銭」も評価軸に入れました。僕の場合、「目的」で4つ、「人間関係」で3つ、「金銭」で1つ、の計8つが評価の軸となった。

Step 2: 価値判断に重み付けをする

次にしたことは、それぞれの項目に「重み」をつけることです。僕の場合、計8つの項目に、合計で100%となるように重みをつけました。具体的には「目的」の4つで40%、「人間関係」の3つで40%、「金銭」で20%の重みをつけました。

重み付けの仕方は人により大きく異なると思います。

Step 3: 選択肢を評価する

卒業後の選択肢のそれぞれについて、それぞれの項目に「1(満たしていない)」から「3(満たしている)」まで数字を入れて、点数を洗い出しました。

すると、合計点数が出てきます。進路の選択肢A、B、Cについて具体的に評価してみると下記のようになります。下記の例だと、Aが最も良い選択肢となります。

Step 4: 再検証

評価軸に抜け漏れダブりがないか、自分の重み付けが適切か、卒業後の選択肢がまだ他にないか、を考えました。

大枠は以上のように考えましたが、特にStep 4では妻も含め、色々な人に相談をしました。

僕の場合、特に迷ったのは起業という選択肢をどう考えるかです。

アメリカで起業するという選択肢

起業する場合、場所の選択肢としてはアメリカか東京の大きく二つを考えました。現状、インターナショナル生でアメリカで卒業後も起業して残る道はあるが、かなり狭いです。

卒業後にはOPT (Optional Practical Training)という期間が1年間あり、その間に多くの場合は起業家(E2)ビザ取得を目指すことになります。E2ビザ取得には起業家として成功してアメリカに貢献することを示す必要があり、この評価基準は、資金調達、アメリカ人の雇用、ビジネスプランの妥当性が必要です。

アメリカは当然のことながら起業家志望も多く、競争も激しいため、言語がネイティブでない、文化が違う、永住権がない、の三つの壁を乗り越えて相当額の資金調達をして雇用を生むのは、かなり細い道だと感じました。

資金調達できなければ、米国登記した会社や開発したものを置いて国外へ出ないといけないです。夏に作成した医療用アプリですが、病院・クリニックにサービスを販売することの困難さを理解できていなかったこと、規制と訴訟リスクの高さを過小評価していたことから、残念ながら公開停止しました。僕の場合、医療分野の経歴があるわけでもなく、医療業界という特殊な業界で卒業後すぐに起業できるだけの自分ならではの強みを見い出すことができませんでした。

また、自分一人ならば「えいや」で残る手もあったかもしれないですが、留学で貯蓄も減っていたことと家族のこともあり、そこまでのリスクを取りたくもなかったのも本音です。他のアジア人の米国での起業家を見ると、米国企業に就職して在住数年→グリーンカードを申請→起業、のパターンが多く、そちらの方が現実的だと感じました。よって、米国ですぐに医療分野での起業という選択肢は切りました。

東京で起業するという選択肢

東京に帰って起業するという選択肢も考えました。こちらは市場の土地勘もあるし、ネットワークもあるし、起業する上では良い環境です。起業は失敗を繰り返して、それでも諦めずに続けて何度かやってようやく成功するものだと思っているので、卒業後できるだけ早いうちに始めることには大きなメリットがあります。

海外で、勝負していたい

一方で、せっかくMBAを出て海外にいますし、もう少し海外で揉まれてチャレンジを続けたいという気持ちも強かった。米国の良いところは競争がより激しく、優秀な人が集まっている上、自分自身が語学、文化、土地勘でハンディキャップを負っており、より成長できる環境だと感じました。

また、特に医療テクノロジーの最先端はやはり米国で、より多くのことが学べるだろうという好奇心もあります。妻もまだ昨年に米国に来たばかりでこれから大学院に行く考えもあり、米国でまだ過ごしたいという思いもありました。これらの理由から、卒業後すぐに東京へ戻ることには躊躇がありました。

これらを考慮して考えた結果、選択肢Aの米国医療機器企業に就職、が最も点数が高かったです。妻の希望もありますが、何よりも僕の好奇心も米国に残りたいと告げていました。

就職先が、新商品のProduct Managerという僕がこれまでやってきたことであり、かつ最も情熱を注げる職をオファーしてくれたことが、大きな理由の一つでした。

アメリカで、優秀な人たちと働くというのはどんなものなのだろう。最先端のヘルスケアテクノロジーはどうなっているのだろう。新しいものを生み出せて、世界中の患者さんに良いインパクトを与えられたら、それはどんなに素晴らしいことだろう。フレームワークを用いて整理して考えましたが、最後は自分のワクワク感に沿って決めました。

これらが僕が意思決定をした手順です。MBAにこれから行く人・在籍中の人にとって少しでも参考になると嬉しいです。

2年間のHBS留学生活で得られたもの

HBSの2年間もあっという間に最終学期ということで、「この留学生活で得られた一番のものはなんだっただろうね」、という話をある食事でした。ある人は「友人」と答え、ある人は「広い視野」と答えた。

僕の番になって、僕が答えたのは「自信」だ。「挑戦して失敗しても、最後には成し遂げられる。たとえ失敗したところで、食うには困らない」という自信。これは、「失敗したってなんとかなるのだから、世の中のためになること、自分の好きなことをやろう」という気持ちに繋がる。

HBSで育てられる楽観主義

HBSでの生活の中で、何十、何百という成功または失敗した起業家やビジネスパーソンと話をしたり、経営者の判断をケースで議論していると、楽観主義が湧いてくる。自分が意義あると思うことをやって、成功したら楽しい。失敗しても失敗の仕方を間違えなければ次に繋げられる。失敗を何度繰り返しても、そこから学んで挑戦することで、ある程度の成功まではいける。成功した起業家やビジネスパーソンは別次元の人間ではなく、自分と同じ人。成功と失敗のリアリティを身近で感じられたことは、自分でもやればできる、という自信に繋がった。また、セクションメイトと青臭い話ができたり、教授からフィードバックを受けられるこの理想的な環境も、この楽観主義を育てるのに一役買っている。

HBSが与えてくれるセーフティネット

加えて、「失敗」してもセーフティネットがあるとも感じる。HBSのMBAというのは、学校側の絶え間ないカリキュラムの改善と卒業生たちの功績のおかげで一つの品質の保証となっており、これを取得していることで、日米に限らず、世界中の企業で働く可能性が開ける。

また、卒業生のネットワークもかなり強いため、本当にどうしようもなくなっても、きっと助けてくれる人がいるだろうな、という安心感がある。つまり、MBAがセーフティネットとして機能して、失敗したところで、(よほどひどい失敗の仕方をしなければ)家族が食うに困るということはないだろう。

こういった気持ちの変化があることはMBAに来るまでは予想していなかったが、僕はとても価値ある変化だと思うし、そういう変化をもたらしてくれたHBSでの機会に感謝している。

2年生秋学期の振り返り

すでに春学期が始まってしまっているが、2年生の秋学期を振り返ってみる。

学業 (Academics)

秋学期は”Strategy and Technology”、”Negotiation”、”Entrepreneurial Finance”、”Globalization and Emerging Markets”、”Founders Dilemma”の5科目を履修した。このうち、Entrepreneurial Finance、Globalization and Emerging Markets、Founders Dilemmaは内容と教授も人気の授業。受講した科目はどれも良い科目で、選択授業の良さを実感した。

“Strategy and Technology”ではIntelやMobileyeの社外取締役も務めるDavid Yoffee教授からテクノロジーの業界で特に重要となる戦略の5つの原則、ネットワーク効果、マルチサイドプラットフォーム、柔道・相撲戦術、知的財産、ガバナンスについてどのような点を考慮して戦略を立てるべきかを学んだ。特に5つの原則のうち、”Look forward, Reason back”、未来に世界がどのように変化するかを予想して、そこから逆算して今行うことを考える、というのは技術変化でビジネスがガラリと変わるテクノロジー業界では特に重要だと感じた。

”Negotiation”はMichael Wheeler教授。交渉を分析するフレームワークとその適用方法、信用構築の方法、交渉における学び・適応・影響のサイクル、相手の感情を用いて交渉をいかに有利に進めるかのテクニック、突っ込みすぎた時の対応の仕方、多数のステークホルダーがいる際に有利な状況を作り出すためのプロセスなどを交渉のシミュレーションや優れた交渉人の交渉過程を観察することから学んだ。授業は振り返りや観察からの学びに重点が置かれており、卒業後にも交渉力を高めていくための手法を学べたのが良かった。

”Entrepreneurial Finance”はBain Capitalの創設メンバーであるRobert White教授。起業をする際に「いくら、誰から、どんな条件で」資金調達を行うべきかに加え、近年広がりつつあるベンチャー向けの貸出、クラウドファンディング、売掛金の現金化などの現金調達の手法について学んだ。スタートアップを評価する上で、PDCOフレームワーク(People, Deal, Context, Opportunity)や3 Statge Model (Growth, Profitability, Asset Intensity)は有用だと感じたし、特に資金調達の際の契約書の内容について一つ一つの条項レベルである程度学べたのが良かった(Participation, Anti-dillusion, etc.)。資金調達の際に、どの条項が何にどのようにきいてくるか、を理解していることは必須だと感じたし、将来的によりフェアな条件交渉をするための下地ができたという点で非常に有益だった。実践的には今の市場のスタンダードを知り、良い弁護士を雇うことが大事。

”Globalization and Emerging Markets”はSophus Reinert教授の人気授業だ。新興国が国の発展のために用いている戦略とその国がどのような産業構造になっているのかをフレームワークで分析する手法を学び、それぞれの国でどのような仕組み(institutions)が欠けており、どのステークホルダーがその欠けている仕組みを活かしており、そのような環境へどのように進出するのが良いのか、という企業の進出戦略についても学んだ。例えば、キューバやロシアでinstitutional void(欠けている部分)を活かして事業をする例からは、新興国では機会もあるが、obsoleting bargaining powerのリスク(最初は政府に必要とされて進出しても、徐々に政府がノウハウを吸収して、会社ごと国有化されるなど、必要とされなくなるリスク)があるため、政府とかなりデリケートな関係を築かなければいけないことを学んだ(例えば、こちらを刺したら国際社会から相手も刺されるような状況を作り出すなど)。

これらの授業を履修したことで、①戦略を立て、②多数のステークホルダーと交渉し、③事業提携や資金調達を行い、④新興国までサービスを広げる、という点についてより失敗のリスクを減らし、成功の可能性を高められるようになったと思う。

5つ目のSkikhar Ghosh教授の”Founders’ Dilemma”は僕にとって特に思い出に残る授業となった。秋学期のその他の4つの授業を含めてHBSでこれまで受けてきた授業の中にはビジネスをする上での視点を広げてくれたり、知識を増やしてくれるものは多かったが、”Founders’ Dilemma”は自分の人生観にまで影響を与える授業だった。Hard choiceをいかに行うか、いかに公平さを互いに感じるようなプロセスを築くか、採用と解雇の手法、建設的な失敗の仕方、など、学びは多かったのだが、特に印象深かった授業は、「成功とは何か、失敗とは何か、幸せは何で決まるか」についてだ。端的に言えば、幸せはquality of relationships=どれくらい深い人間関係を築けたか、で決まるというのが主な学びだが、彼が自分の人生のストーリーを交えて語ってくれたその教えは心に残った。

彼の講義は、自分自身を振り返る良い機会となると同時に、行動を変えるきっかけとなった。彼の授業を履修して以降、人からの評価を気にして物事を決めていないだろうか、自分の周囲の人を大切にできているだろうか、意義あることに時間を使えているだろうか、を定期的に振り返るようになった。また、より頻繁に家族と連絡を取るようになり、留学以降やや離れてしまっていた日本の友人と連絡を取る頻度も増えた。これらの行動の変化は、人間関係という点で数年、数十年単位で人生をより良い方向に導いてくれると思う。彼の授業を受けられたことは、幸運だ。

成績は、特に好きな授業であったFounders DilemmaとNegotiationが「1 (優)」で残り3つが「2 (良)」だった。成績は全てが「2」以上取れれば良いと思っているので、目標達成。また、「1」の割合が先学期よりも増えたのも英語での学習環境に慣れてきたということで良い傾向。そのうち一つの授業では教授からも「Final(期末テスト)がとても良かった」と褒められ、嬉しかった。

友人、課外活動

先学期より妻がボストンへ来て、単身用の寮からキャンパス内のアパートへ引越しを行ったため、自宅に友人を呼ぶことができるようになった。そのため、平均して週に一度は2〜4人程度の友人を家に呼んで日本食をふるまうという小さなホームディナーをした。

ディナーの席では話題も様々で、キャリアや家庭といったプライベートな話から、学校生活、国際政治や歴史の話まで及び、話が尽きることがない。ホームディナーでは時間を気にせずゆっくり話せるし、集団ではなかなかしにくい突っ込んだ話もできるので、非常に良い。昨年はアメリカ大統領選挙の年ということもあり政治関連の話を多くした。これらの話を通じて、世界の政治に関する自分の感度がより高くなったように感じる。

一方、昨年の同時期はハーバード日本人会やボーゲル塾に参加していたが、2年目の秋学期はキャリアに集中するため、あまり参加しなかった。

キャリア

卒業後にどうするか、についてじっくりと考え、行動し、人と話す期間だった。ビジネスプランについて投資家と話し、同時に就職活動も行い、米国企業からオファーももらった。MBA卒でもインターナショナル生が米国でのオファーをもらうのはかなり狭き門なため(H1Bビザの関門が大きく、99%の企業は永住権のないインターナショナル生が応募しても門前払い)、自信に繋がったという点でも良かった。色々と考えたが、いくつかの選択肢の中から米国に残る選択肢を選んだ。卒業後に新しいチャレンジが待っていると考えると、ワクワクする。

* * * * *

2年生の秋学期は特に過ぎるのが早かったという印象だ。特に大きな活動があったわけではないが、卒業後の進路を決めるため、9月、10月はキャリア関係に使っている時間が多かった。リサーチや受け答えの練習など、想像以上に時間がかかった。11月、12月は課題とレポートに追われていてあっという間だった。また、友人とも1年生の時以上に会っていたので、その点でも時間を使っていた。秋学期は英語やトレーニングなどの自己研鑽を怠ってしまったが、学問、友人関係、キャリアで目標はある程度達成していたため、点数をつけるならば70点というところだ。もう少し自分への目標を高く設定しておいても良かったかもしれない。

最後の学期である2年生の春学期は、振り返りをより仕組み化して、悔いのないような学期にしたいと思う。

HBS1年目を終えて

HBSでの1年目が終了した。僕がMBAで何を得ようとして、結果として何を得たかについて、全体、学業、友人関係・ネットワーキング、課外活動、キャリアの順に振り返ってみたい。

1年目の感想

MBAは”transformational experience”、とMBAのadmissionは言う。”transformational experience”の定義にもよるが、文字通りの「人生が変わる体験」と定義すると、僕にとってはそうだったな、と思う。

変わったものでいうと、ビジネスを見る視点は広く、深くなったと思う。入学前は前職のプロダクトマネジャーの視点から物事を見ていたのに対して、この1年でビジネスに関しては他の機能(ファイナンスやオペレーション等)やリーダーの視点でも物事を見ることができるようになった。政治、経済については世界で起きていることを抽象化して見れるようになった。決断の際に、経済的な視点だけでなく、法的や倫理的な面も含めて考えるようになった。こうした視点の変化は、250以上のケースディスカッションを通じて徐々に培われたものであり、より良い意思決定に繋がる。

次に、友人のネットワークが圧倒的に広がった。これまで僕は日本で生まれ、学び、働いてきたので、大学や社内で出会った海外の友人もそれなりにはいたが、ネットワークは圧倒的に日本が中心だった。一方、今は国籍ベースで言えば本当に世界各地に友人がいるようになった。HBSの「仕組み化された」ネットワーキングのおかげで、今は40ヶ国籍以上の友人がいるし、国名を聞くと友人の顔がパッと出てきて、それぞれの国を近く感じる。このネットワークや世界の近さの感覚は期待以上のものであったし、僕の将来の可能性を広げてくれた。

また、知らない世界で挑戦してもなんとかなるという自信が生まれた。渡米前は、海外と主に仕事をしていたと言っても、ディスカッションでうまく貢献できなかったり、日常会話で苦労したりと、英語圏で仕事をするには力不足と感じることが多かった。渡米後の今でも英語と話題は今でも課題があり(ドラマ、映画、音楽、スポーツ、本、ニューヨークのローカル話題、どれも分からない。。) 、この課題の克服にはおそらくあと5年くらいかかると思うが、9ヶ月かけて少しずつ状況は改善されてきた。また、足りていない能力でもここまで学業と友人関係の実績を築き上げてこれたというのが自信になった。加えて、先人達のおかげでHBSというブランドもあるので、ビザの問題を除けば、卒業できれば おそらく就職することはでき、食うに困ることはないかなと思う。自信とセーフティネットを得たことで、より挑戦する意思が強まった。

一方で、変わらないことを確認したものもある。それは自分のコアな価値観であったり、性格だ。HBSの1年目はLGBTの活動、米国内経済的格差、モロッコでの体験、セクションメイトから聞く話、から自分が知らなかった世界を知る機会が多く、それらを通じて自分の視野は広がった。10代や20代前半であれば、もっと価値観に影響を受けたのかもしれない。ただ、僕ももう30代で、自分がどんな価値観を持っており、何が好きで、どんな時に幸せを感じるのかは、渡米前にだいたいわかっていた(僕が好きなのは、挑戦すること、慌てず・焦らず・諦めず前に進むこと、挑戦から新しいものを学ぶこと、情報を集め、分析し、戦略を立てて実行すること、アイデアを出すこと、人と一緒に新しいものを生み出すこと、人を成長させること、人を受け入れること、世の中にとって自分が良いと思うことをすること、等)。僕にとっては、この1年を通じて、そうした自分のコアな部分が変わることはなかった。

まとめると、HBSの1年目が”transformational experience”だったか、という問いには、僕にとっては人生の可能性を広げてくれたという点でそうだった。また、同時に僕にとってコアな部分は変わらないことも確認できた。HBSでは4つの分野 (学業、友人関係、課外活動、キャリア)に分けて物事を進めてきたので、それぞれについて振り返りたい。

学業 (Academics)

1年目は計10の必修授業とFIELDという実践授業を受けた。授業は以下のようになる。

  • 政治、経済を扱う授業
    • BGIE (Business Government and International Economy)
  • 企業の中の特定の機能を扱う授業
    • Strategy、TOM (Technology and Operations Management)、Marketing、Finance 1、Finance 2、FRC (Financial Reporting and Control)
  • リーダーシップを扱う授業
    • LEAD (Leadership)、LCA (Leadership and Corporate Accountability)
  • アントレプレナーシップを扱う授業
    • TEM (The Entrepreneurial Manager)
  • 学んだことを実践に移す場・チームワーク
    • FIELD1/2/3

この中でも僕が最も学びが多いと感じたのが1学期目のLEADと2学期目のBGIEだ。LEADではリーダーの行動と決断のケースから、いかにチームをマネージするか、効果的な人間関係を築くか、いかに組織を作り上げるか、いかに組織を変えるか、について学んだ。こちらは授業でのtake-away(学んだこと)で目から鱗のことが多く、加えて教授のMukundaの議論のファシリテーションの仕方が素晴らしかったため、非常に学びが多い授業だった。楽天の英語化のケースを扱ったのもこの授業だ。この授業を受ける前と後で、自分のチームや組織に対する見方が変わり、マネジメントの仕方も確実に変わったと思う。

BGIEは世界に対する見方を変えてくれる科目だった。大半の授業では国のケースを扱い、それぞれのトピックに関連する事柄に分析の焦点が当てられる。例えばインドを扱ったケースでは、「多民族国家で収入格差が非常に大きく、教育水準も高くないインドではどうして独立以降民主主義が生き残っているのか」、という問いについて議論した。その中では、カーストの文化により、人々が自分の社会的ポジションに納得するような構造となっている(人々が自分の置かれている社会的ポジションに納得いかなくなった時、暴動が起きたり、社会が不安定化する)という観点が出たりする。また、その一方で、人々が民族や言語別によって投票するようになり、統一的な政策が打ち出しにくいという問題点も議論されたりする。今までにぼんやりとしていた、国家とは何か、民主主義とは何か、それらが成り立つために必要な条件は何か、を要素として話せるようになった。この授業を通じて、国レベルで、どのような政治的な目的があり、それを達成するためのツールとして何があり、実行に際しての制約に何があるか、を経済的、政治的に考えて議論するための下地を作れた。この下地はビジネスの機会の分析において有用なだけでなく、社交の場での会話の種にもなり、今後の人生を豊かにしてくれると思う。

その他の授業からも各領域について、自分が意思決定をする際に、どのような枠組みで分析を行い、打ち手のオプションを考え、それを評価するか、についてのプロセスを学ぶことができた。よく言われることではあるが、何せほぼ毎日、異なる状況のケースを分析して自分だったら何をするかを考える、というプロセスを行っているので、分析をする際の広さと深さは増したと思う。

また、これは最近感じた想定外のメリットだったが、250以上のケースを議論することによって、他の業界の人と話す時の知識のベースを作ることができた 。例えば、以前製薬企業の人と当局との折衝について話をした時だ。僕は渡米前は製薬企業の開発やマーケティングのプロセスを殆ど知らなかったが、製薬企業のケースを複数扱った経験から、治験のどの段階でどういう折衝が行われるのか、という話をより突っ込んで質問して、話すことができた。業界についての知識はケースを読む主目的ではないが、副次的に得られるメリットでもあった。

身につけた考え方のプロセスを実践で活かすのがFIELDという実践授業だ。個人的にはFIELDはチームワークの経験としては良かったが、学業という観点での学びはさほど大きくなかった。新興国へ行きコンサルティングプロジェクトを行うFIELD2は違う文化の国を体験するという点では良いが、現地滞在は1週間強なのでインプットもアウトプットのレベルも限定される 。スタートアップ体験をするFIELD3もチームワークの体験やスタートアップを行う大変さを味わえたという点は悪くはなかったが、学びという意味では他の授業と比べるとやや落ちた。僕としては、実践を通じて学ぶ機会は、夏のインターンシップが主になりそうだ。

友人関係・ネットワーキング

僕にとってHBSで最も大きな財産となるのが、この友人関係・ネットワーキングだ。1年間の授業を同じ教室で過ごしたセクションFの93人とは卒業後も5年に一度、同窓会で会う生涯の仲間だ。チームワークで1学期間を共に過ごしたディスカッショングループの5人、FIELD 2のチームの5人、FIELD 3のチームの4人、EVOLVEという少人数の人生についてディスカッションを1学期間かけて行うプログラムのチームの4人とは話す機会も多く、仲良くなった。寮での生活、Asia Business Conferenceの運営、スタートアップ関連のイベントでも良い友人ができた。HBSは人数が多く、HBSカルチャーで繋がり 、しかも活躍する人が多いので、友人として人生を一緒に 過ごす喜びだけでなく、プロフェッショナルとしてもこのネットワークは役立つものだと思う。

また、日本人の友人にも恵まれた。HBSで1年生の13人、2年生の7人は皆個性があり、仲が良く、一緒にいて居心地が良い。HKS (Kennedy School)、HLS (Law School)やPublic Healthにも友人がおり、数回飲んだりとHarvard内でもいい友人関係を築けたと思う。冬の飲み会はかなりカオスで、楽しい写真が結構撮れた。加えて、MIT、Wharton、Kellogg、DukeのMBAの友人たちやボーゲル塾を通じて知りあった国際政治分科会の人たち、ヘルスケア勉強会の人たちとも一緒に様々なことを語り合えて、良かった。特に中国の経済成長、中東情勢、移民などの国際政治における議題に対して、日本はどうするべきか、を官庁、自衛官、マスコミ、アカデミアの方々とボーゲル塾で毎回語るのはとても有意義で、学びが多かった。

人間関係を大幅に広げることができるというのはMBAの特権なのかなと思う。 様々な背景を持つ人がいて、時間があり、お互いに利害関係のない状態で話ができる。話をしてお互いの知らないことを共有し合うと共に、学生でないと出会わない人たちが出会うことで、新しい化学反応が生まれる。友人関係・ネットワーキングで得られるものは想像以上に大きかった。

課外活動

1年目はHarvard日本人会のHBS代表、ボーゲル塾国際分科会への所属、Asia Business ConferenceのCTO、Japan Trek運営という活動を行った。これは他のHBS生と比べるとおそらく平均よりは多い活動であり、活動の選択についても満足している。

入学する前にはわからなかったが、HBSの1年目は学業、ネットワーキング、キャリアが忙しく、クラブや課外活動に時間を注ぐ人はそんなに多くない。僕の知る限り、HBS以外の米国2年制MBAは金曜日が休みだが、HBSは金曜に授業があり、学業での負担が結構重い。セクションという仕組みで93人の新しい友人と1年過ごすので、クラスメイト全員と話そうと思えばかなり時間がかかる。キャリアは人生の一大事なので、企業派遣で来ていたり、家業を継ぐ人以外にとって最優先になる。こうした理由から、優先順位をつけていくと低くなるのがクラブや課外活動となる。

僕としては、やりたい経験はできたと思う。Harvard日本人会、Asia Business ConferenceではHarvard内の繋がりを、ボーゲル塾ではボストンでの日本人の繋がりを広げることができた。そして、Japan Trekでは日本人内の運営団で 一つのものを作り上げている。これから始まるJapan Trekでの他セクションの人と仲良くなるチャンスも楽しみだ 。

キャリア

1学期目は学業と友人関係・ネットワーキングで結構手一杯で、iLab Scrambleというスタートアップのイベントに参加したり、iLabで不定期に開かれるイベントへの参加がメインだった。2学期目はNew Venture CompetitionというビジネスコンテストにHMS (Harvard Medical School)の学生と組んで出場し、応募まではそれなりに時間を使っていたが、上位16チームには選ばれず。一方、Rock Summer Fellowsという起業を考えている、あるいはスタートアップで働きたい人向けの夏の支援プログラムには選ばれることができた。1年目にやりたかったことはやったが、キャリアに関してはもう少し時間を使ってリサーチを進めたり、インタビューをしたり、アイデアを考えることに時間を使いたかったな、というのが本音だ。

今はというと、デジタルヘルスの領域で新しいビジネスのアイデアを考えたいと試行錯誤していて、まだ”これだ”、というアイデアを思いつけていないのが現状。Tele Medicineは将来的により普及する業界だと思うが、スタートアップでやるには既に大きいプレイヤーがいて勝てる道筋が描けない(規制の動向次第だが)。ある一定の患者へのAIの医療行為への適用もビジネスアイデアとして考えたが(New Venture Competitionに出したのはこれ系のアイデア)、liabilityの問題、monetization、処方箋のロジをどうするかが課題でこれを解決できていない。Omada Health的な医療費削減分を企業に請求するB to B to CのビジネスやCastlight Healthのような医療費最適化のB to B to Cの提案サービスも面白いと思うが、公的保険の範囲が限られている米国ならではのサービスだし、ここも今から勝負しても難しいな、という感じ。IoTを使った診断革新系のサービスはリサーチ不足でまだ面白い技術を見つけられていない。

今はより健康的な行動ができるよう、行動変容を促すB to Cビジネスを考えており、夏はそのアイデアを深掘りして検証しようと思っているが、まだまだ生煮え。2学期の後半にややダレてしまったところがあるので、その時間を使ってもう少しキャリアに時間を使えばよかったと反省。

2年目について

1年目は学業、友人関係、課外活動、キャリアともに計画したことの多くは達成できて、70点くらいだ。反省点としては、ややダレてしまった時間があるので、それを運動と英語の勉強にあてられたらより良かった。

2年目は1年目をベースにして、さらに積み重ねていく予定だ。学業では将来ビジネスを行う上で必要となるファイナンス、組織論などの科目を履修する予定だ(Entrepreneurship Finance、Negotiation、Managing, organizing, and motivating for value、Designing competitive organizations等)。友人関係では友人を定期的に自宅へ招待して、仲良くなり、卒業後ずっと仕事や人生について相談できる8人程度のboard memberを作りたい。課外活動としてはマラソン大会に向けてトレーニングし、ボストンでのハーフや、シカゴのフルマラソンに出場する予定だ。キャリアについてはNew Venture Competitionなどのビジネスコンテストで勝てるだけのチーム、ビジネスプラン、商品、実績を2年目に作りたい。

MBAは21ヶ月間の、今後の人生のベースを作る期間。精一杯活かしたい。

春学期前半の振り返り

春学期も既に半分が経過し、MBAの1年目も残すところ1/4となった。全体を通して、慣れとともに少し緩みが出てしまい、挑戦の度合いが秋学期と比べて少なかったなという反省。MBAでどんなことをしているのかを伝えるためにも、①学業、②友人関係/ネットワーキング、③キャリア、④課外活動、の各項目について、簡単に振り返りたい。

学業

今学期の科目は必修の5科目とFIELDという必修の実習授業。LCA (Leadership and Corporate Accountability)というグレーゾーンの判断をする際にどのように考えるべきかという授業やTEM (The Entrepreneurial Manager)というアントレプレナーシップに焦点を当てた授業など個人的に学びたかったものが多く、楽しんでいる。ただ、ケースの形式にある程度慣れてきたことから、あまり準備をしないで臨むケースが少しあったり、授業中の態度も前期に比べるとそこまで必死になって発言をしようとはしなかった。特にTEMはどのタイミングでどういう発言が求められているのかが分かりにくく、発言回数がやや少なめとなった。

結果として、TEMで初の中間評価で”3″(下位20%)の授業評価をもらってしまった。他の必修4科目は”1″であったので、発言の質はよくなってきていると思うのだが、やはり授業に臨む姿勢がやや緩んできたのが理由だろう。

“3”はややショックではあったが、気合を入れるのが必要な時期であったので、良いメッセージとなった。きっと、「お前はそんなに気を抜いて良いような立場でないよ。一つ一つの授業をもっと大切に受けなさい」という厳しくも愛のあるメッセージだ。

発言については①半分の授業で発言することを意識し、準備の段階でTakeawaysを意識する、②議論の流れに乗せる(同意して追加または反論)、③教授が求めている発言を推測する、④授業に貢献する発言をする(現実論と抽象論、ファクトによるサポート、情熱や感情を入れる)、⑤CREC (claim, reason, example, claim)で話す、ことを意識している。ただ、最近はその徹底が足りていなかったので、授業前に見返すなどして、習慣化することが必要そうだ。

友人関係/ネットワーキング

友人関係については、今学期から始まったEVOLVEという5人組のグループに所属して、人生のゴールは何か、HBSで何を成し遂げたいか、友情とは何か、と2週間に1度かなり突っ込んだ会話をしている。このEVOLVEというのは中で話したことは外には話さないというNorm(規範)があるために詳しくは書けないが、この活動を通じて、同級生が自分とあまり変わらない悩みを持っていたり、外からでは見えないようなことを感じていることが良くわかった。HBSでの人間関係は意識しなければ、広く浅くになりがちなので、こういった深めるグループに所属して、ずっと続くような人間関係を築けるのはとても良い。

また、Discussion Group、FIELD 3のメンバーとも定期的に会っている。これらのグループのメンバーとも卒業後に続く友人関係になりそうだ。

また、今学期は日本人とも飲む頻度が増え、週に1度は飲むようにしている。特に2年生は再来月で卒業であるし、HBSのみならず、HLS (Law School)、HKS (Kennedy School)、HPUH(Public Health)に通う人たちの中で5月でボストンを離れる人たちもいるので、ボストンで気軽に会える間に話したいと思っている。ボストンへ派遣されて学びに来ている人たちは各分野での第一線の人達であることが多く、そういった人たちと話をするのは楽しいし、またボストン留学繋がりというのは今後も仕事をしていく上でお互いに良いネットワークになるのではないかなとも思う。

一方で、HBSのセクションメイトと授業外で過ごす時間は今学期は少なくなってしまった。春学期になるとFIELD 2前後の旅行や春学期に行われるスキーやアイスランドトレック、春休みのキューバやマチュピチュトレックへの参加などで濃い人間関係ができて、そこからそれぞれ小さなグループができて、その中でイベントが行われているように思える。僕は後述するAsia Business ConferenceやNew Venture Competitionの参加で時間を使っていたことから、トレックや旅行を通じてグループに入る機会を逃してしまった。選択の結果とはいえ、セクションですごく仲の良い関係を築く機会を逃してしまったのは、やや残念なところではある。特に1年目の秋学期、春学期の始めは人間関係が構築される時期であるので、積極的に旅行や週末のイベントに一緒に参加するべきだ。

僕は4月、5月は学業とキャリアに主な時間を使う予定なので、セクションメイトとは週1回ディナーをする程度にして、夏休みや来学期にセクションメイトとの仲をもっと深めたいと思う。夏休み以降はアパートに住む予定なので、セクションメイトを家に招待したりして、仲を深めたいと思う。

MBAは全員がお互いを知らない状態から始まる、という人間関係を考える上ではかなり面白い実験だと思うが、その実験から一定のパターンが見えてきた。僕が見る限り、①全体イベントを通じて薄く広い繋がりが築かれていく、②旅行など宿泊を伴う短い期間のイベントや数回のスモールグループディナーで数人と仲が少し深まる、③スポーツの機会やプロジェクトを通じて一定期間お互いに共通の目的に向かって動き、仲がより深まる、④気軽に誘い合ったり、深い話を話すことでさらに仲が深まる、というようなプロセスで進むように見える。このプロセスを意識することで、より効果的に人間関係を広げて、深めていくことができるのではないかと思う。

キャリア

3月に応募したNew Venture Competitionは残念ながら予選落ちとなった。色々なものを同時並行しており、アイデアやビジネスプランの詰めが甘かったのが理由なので、悔しさがあまりないのが悔しい。特に「なぜこのチームなのか」、「どうやって実行するつもりか」という競争優位性と実行可能性の詰めが甘かった。悔しいと感じれるレベルまで、もっとタイムマネジメントを工夫して力を注ぐべきであった。ただし、何が求められているのかを知る上で良い勉強となった。来年こそは勝ち残りたい。

一方、良いニュースとしては、Rock Summer Fellowsという起業を目指す人または小さいベンチャーでインターンをする人向けのプログラムには受かることができた。こちらは夏の間、自分のアイデアに取り組む人を金銭的にサポートしてくれるというプログラム(週$600)。金銭だけではなく、メンタリングを受けることができたり、Rock Centerのネットワークに入ることができる。受かることができたのは今学期の一つの成果であり、4月から夏にかけてこの機会を活かして新しいビジネスの可能性を探り、プロトタイプ作成までいきたい。

課外活動

Asia Business Conferenceを2月28日(日)に運営した。こちらは人数は想定以上となり、RCのSki Tripと重なるなどかなり時期が悪かった条件では、成功の部類に入ったかと思う。一方で感じたのは、一部をやるのはやはり面白くないということ。せっかくやるのであれば、代表となり、運営を自分で回した方が充実感もあり、より楽しいと思う。

5月に行う予定のJapan Trek運営も順調に進んでいる。僕は主にテクノロジー面、集客、トレッカーとのコミュニケーションを担っている。Japan Trekは運営陣含めて120人と近年では最大の人数であり、Harvardの学生に日本を感じ、知ってもらう良い機会となるため、良い体験を提供したいと考えている。また、一緒に運営をしている日本人も優秀かつそれぞれに強みを持っており、それぞれから学ばせてもらっている。特に商社や金融出身者がゴリゴリと交渉して良い条件を引き出す姿はおおー、と思わせられることが多く、営業経験のあるなしがもたらす価値の大きさを実感している。

その他、個人的には運動をすること、英語力を強化すること、が課題なのだがこちらはうまく仕組み化できておらず、忙しくなると止まる、ということが続いている。一方で、HBS生の多くは運動を定期的に行っており、しっかりとした生活を送っている。特にアメリカ社会では定期的に運動をすることがエグゼクティブの当たり前となっているので、その習慣を自分も身につけたい。

HBS1学期まとめ (授業・ネットワーキング・キャリア)

早いもので、もう今週でHBSのAcademic Termである17週間が終わる。この17週間は濃密で、急激に自分の世界が広がっていく貴重な4ヶ月だった。

授業:

以下の2つを目標として授業を受けていた。

  • リーダーとして正しい判断と行動ができるよう、分析力、決断力、アクション策定能力を磨くこと
  • 自分の価値観、行動の軸を固めること

1学期目は Leadership、Marketing、Technology and Operation Management、Finance、Financial Reporting and Control、FIELDという6科目が必修であった。それぞれの授業からは、その領域において考えるべき論点とそれぞれの論点について考えるプロセスを学べた。

例えばMarketingでは下記のような分析の流れとコンセプトを学んだ。

  • Customer Understanding (Value, DMP, DMU) -> 5C analysis -> STP -> Branding Strategy -> 4P (Product, Price, Place, Promotion) -> Financial/branding impact
    • Product: Product Diffusion Framework 
    • Price: Willingness to Pay, Key success factors (value-based, customized, dynamic, strategic, fair, consistent)
    • Place: Channel’s roles and how to resolve conflicts
    • Promotion: 6M framework (market, mission, message, media, money, measurement), customer’s perception pyramid

僕はProduct ManagerというMarketingに近い仕事をしていたため、上の概念のある程度は知っていたが、包括的にマーケティングのプロセスを見れるほどには知識がなく、また実践に活かせるほど習熟していなかった。今学期では様々な業界のケースを通じて「自分ならどうするか」を考え続けることで、知識をより血肉にすることができた。マーケティングについてより広い視野で、より深く、より速い速度で考えることができるようになったと思う。

自分のリーダーシップのスタイルについては、原理原則を挙げることができるようになった。”Listen well and do not be Judgmental”はそのうちの一つ。来学期にもリーダーシップ関連の科目があるので、引き続き自己認識を深めて、自分なりのリーダーシップの形を作っていきたい。

今学期は予習・復習に力を入れており、平均して約8時間を毎日割いていたため(クラス含む)、学業から得られるものが非常に多かった。特にリーダーシップ (LEAD)からの学びは新鮮であり、毎回の授業が楽しかった。成績は1月中旬に発表されるということでまだ何とも言えないが、全科目で2以上が取れていれば、満足だ。 “HBS1学期まとめ (授業・ネットワーキング・キャリア)” の続きを読む

ハーバードMBAでのクラスメートからの学び

早いもので2週間が経過した。秋学期が17週間しかないことを考えると、既に1/8近くが終了したことになる。ここ2週間で印象に残っているのは、FIELDと呼ばれる実践型の授業。まだ二回だが、どちらも価値観をゆさぶるものだった。

FIELD 1: Portrait

内容は卒業生が”Tell me what is it you plan to do with your one wild and precious life?”という詩に答えて書いたポートレイトを読んで、それについて自分なりに考えるというもの。僕は、「失敗を恐れてこれまでは自分が成果を出せる土俵を選んできたが、これからはLive Fearlesslyに挑戦していこう」という卒業生と、「がんになって人生を楽しむことの大切さに気づけたのは幸運だ。Life is too short not to be happy every day. Life is too not to celebrate those whom you love and who love you」という卒業生を選んだ。

僕もこれまで、失敗を恐れる気持ちから挑戦をしなかったり、自分が成果を出せる分野を選んでしまったりしていたことがあった。失敗は誰でも怖い。ただ、その怖さも受け入れて、挑戦できる人でありたい。HBSでは挑戦をして失敗することが奨励されるし、自分も常に挑戦を続ける人でありたいため、この二年間は毎日挑戦をして、Live Fearlesslyの選択を意識せずともしている自分になっていたい。

一方で、ゴールだけを追い求めるのも人生を楽しみきれていない、というのもそうだと感じた。ひたすら仕事面でのゴールを追い求める生き方もあると思うが、僕はそれでは人生が与えてくれるものを楽しみきれないと思う。僕は仕事、家族、友人、自分自身、のそれぞれの分野でゴールを持って、人生を楽しみながら目標を「慌てず、焦らず、諦めず」追っていきたい。

FIELD 1: Diversity

Diversityについて議論をして、それをセクション(クラス)で共有するという授業。セクションメイトが自分はゲイであるということをみんなの前で発表したことが非常に印象的だった。

日本ではゲイというと先入観を持つ人が多く、多くのゲイの人が自分の性向を職場などでは隠しているのが実情ではないかと思う。マイノリティであることを告白することはおそらく勇気がいることだろうと思うし、それをまだ出会ってから2週間足らずのセクションメイト全員の前で告白するその高潔さは、とても印象的だった。僕自身がそのセクションメイトのことをより好きになったことに加え、彼の発言以降のセクションメイトはより踏み込んだ発言をするようになったように思う。

高潔であること(integrity)は僕がそうでありたいと思っている人の資質であり、彼からは高潔さが個人とグループに与える影響力を学んだ。僕も自分がどんな状況であっても高潔さを保てるような人でありたいと思う。 ハーバードのMBAは”We educate leaders who make a difference in the world”をミッションとし、”transformational experience”を提供することを約束している。”Transformational experience”について入学した時には分からなかったが、少しずつ分かるようになってきた気がする。

ここは、自分の価値観、視点を目一杯広げて、なりたい自分を見つけて、その自分になろうとする場所だ。 もっともっと、自分の器を広げたい。どこまで自分がなりたい自分を見つけて、そこに近づけるのか、とても楽しみだ。