2年間でHBSから得られたもの

HBSでの最後の授業、Bridgesが終わった。Bridgesは3日間のいわゆる締めのプログラムで、地域・業界別のネットワーキングができたり、職務別のアドバイス、今後のキャリアに関するアドバイスを得られる機会だ。期間中、1年間を同じ教室で過ごしたセクションメイトと久方ぶりに同じ教室で再会し、近況を話し合い、その後に授業で再びケースを議論した。まるで1年前に戻ったようで、自分がいかにこの空間を好きだったか、を改めて感じた。また、Bridgesを通じて、自分がこの2年間で何を得たのか、がよりクリアになった。

昨年「MBA受験-ビジネススクールで得られるもの」、でMBAの価値として「A Good Business Foundation」、「Networking」、「Career Change Opportunity」の3つが主要な価値で、「Quality Time」、「Brand」の2つを加えた計5つが価値と述べた。それらが得られたというのはそうなのだが、最初の3つについては得られたものについてより具体的に表現できるようになったことと、少し感じ方が変わってきたので、今回続編を書いてみようと思う。内容はMBA一般というよりも、僕がHBSで得られたものについて、だ。

Personal Development

最も大きな成果は人としての成長だと思う。HBSでは1年目、2年目ともに人生の価値観について考えさせられる機会があり、その機会を経て、人生についての理解が深まった。

BSSE (Building Successful and Sustainable Enterprise)でClayton Christensenが行う最後の講義の”How will you measure your life?”もその一つだ。彼は実務家としても、教授としても成功した教授だが、彼が最も大事にしているのは妻と5人の子供を育てることだと言う。そのためにも、彼は土曜日と日曜日は家族のためにあてる時間としてコミットして、BCGで働いていた時から土日は働いていなかった。何を人生において成し遂げたいか、そのためにどのように自分の時間という資源を配分しているか、それをどうやって実現するか、という彼の講義は非常に示唆に富んでおり、彼の講義を受けることができたのは幸運だったと思う。同じテーマでFounders’ DilemmaのShikhar Ghoshも「幸せに最も影響を与えるのはどのような質のRelationshipsを築けているか」であり、”Relationships trump everything”ということを教えてくれた。人生における自分なりの成功の定義は何か、それを実現するために日々どう行動するべきか、について、HBSは自分なりの答えを見つけるための機会をくれた。

人との関わりを通じて、リスクについての考え方も変わった。HBSには本当に多くのゲストが来る。起業家もいるし、大企業の役員もいるし、政治家もいるし、訪れるゲストの幅が広い。彼らの生き方を聞き、彼らと話していて気づくのは、別に彼らが僕らと別次元に住んでいる人ではないということだ。いわゆる自分の人生を生きている人とそれ以外の人の違いは、リスクを取っているかどうか。彼らが口々に言うのは、「リスクを取らないことがリスクだ」、と。多くの教授もその見方を後押しする。一度や二度ではなく、2年間毎日のようにそういった話を聞いていると、自分もやれるという自信が生まれてくる。挑戦をしての失敗は僕を強くしてくれる。HBSは僕に「やればできないことはない」という自信をくれた。

HBSはBusinessについて学ぶ場かと思っていたが、実は人生について学ぶ場だった。自分の本当にやりたいことは何なのだろうか。何を自分の人生において大切にするべきであろうか。21ヶ月という比較的長い時間があったため、そういった質問を自分に問いかけ、考え、妻や友人や教授と議論する時間が持てた。これにより、自分がこの先の人生を生きる上での土台を作ることができたように思える。僕自身は、実はHBSに来る前にはもう自分の価値観はある程度固まっていてそこまで変化はないかと思っていたのだが、振り返ってみるとかなりの変化があったように思える。これは予想していなかったが、得られたものの中で最も大きかったものの一つだ。

A Good Business Foundation

ビジネスについては、幅広い視点を身に付けることができたと思う。特にLEAD (Leadership)の授業が素晴らしく、リーダーシップについては一生使えるような考え方を学べた。

HBSの1年目の必修科目はよく練られており、ケースメソッドでビジネスを包括的に学べるようになっていた。大きく分けると、マクロ経済・グローバライゼーション(BGIE、FIELD 2)、リーダーシップ(LEAD, LCA, FIELD 1)、ファンクション(STRAT, MKT, FIN1/2, FRC, TOM)、アントレプレナーシップ(TEM, FIELD 3)の計4つ。ケースメソッドでは様々な経営の場面において、①何が起きているのかを分析し、②何をするべきかを立案し、③どう実行すれば良いのかのアクションプランを立て、④実行の際の障害やリスクとそれらを解決または減らす方法も立案する、ということをひたすら行うため、「どういう場面で、何を、どのように考えれば良いのか」、が思考のプロセスとして築かれる。この思考のプロセスが、より成功確率が高い意思決定をするために役立つと感じる。

一方、2年目は全て選択科目で、自分の伸ばしたい分野について学ぶことができた。僕の場合、戦略(Strategy and Technology、Strategic IQ)、組織(General Management Process and Actions、Designing Competitive Organizations)、ヘルスケア(U.S. Healthcare Strategy、Innovating in Healthcare)、アントレプレナーシップ(Founders’ Dilemma, Launching/Scaling Tech Ventures)、ネゴシエーション (Negotiation)、ファイナンス(Entrepreneurial Finance)、マクロ系(Globalization and Emerging Markets)と幅広く履修した。

得られたものの一例は、戦略的な思考がある。こちらに来て学び始めて、僕の場合、プロダクトマネジャーとしてプロダクトレベルの「戦術」や「アイデア」は考えていたが、事業レベルの「戦略」についてきちんと考えることができていなかったことに気づいた。僕は新しい機能やデザインでの商品の差別化など、プロダクトマネジャーとして単年度で結果を出すような施策は考えて実行してきたが、中長期でどのように持続可能性のある競争優位性を築いていくか、そのためには組織に対して影響をどのように与えていくべきか、という観点が抜けてた。あの時の僕が今と同じように考えられたら、より戦略的な提言と実行ができたと感じる。

もう一つの例は、リーダーシップだ。僕は前職での経験を通じて、人に動いてもらうためには「情熱、論理、思いやり」が必要であり、そのためには自分が最もお客さんや商品、技術を理解して、チームを動かしていく必要がある、と考えてた。今でもその考え方は残っているが、今ではチームをどうやってデザインし、立ち上げ、マネージするかについて、より多くの要素があることを知っている。前職で初めて人のマネジメントを経験した時にはマネジメントについて「何を、どう考えれば良いのか」、が全て手探りで一つずつ自分の使える道具を探していく感じだったが、今では以前は知らなかった道具があることを知っているので、その道具を使って、より良いリーダーシップがとれる気がしている。

MBAに来るまでは、学習から「知識」がつくのかと思っていたが、実際には様々な状況における「思考方法」や「視点」を学んだという方が近い。この学びがどの程度役に立つのかは卒業後試してみないと分からないが、少なくとも僕は自分の思考の広さと深さが広がったことには十分の価値があったと思う。思考の広さと深さは一生磨き続けていくべきもので、MBAはそのベースを作ることを助けてくれた。

Networking/Friendship

HBSは仕組みに優れた大学であり、その最たるものが「セクション」という仕組みだ。HBSの場合、セクションと呼ばれる93-94人のクラスで1年目を過ごし、同じ教室で、授業を一緒に受ける。授業の大半がケースディスカッションのため、だんだんとその人の価値観や人となりも分かってきて、不思議な親近感を抱くようになる。1年目は何をするにもセクションが主な単位となるので、自然と独自のカルチャーができてくる。セクションごとに卒業後も5年ごとに集まるReunionという機会が用意されているため、この友人関係は(HBSと関わり続ける限り)一生続くものとなる。卒業した時点で誰もが93-94人の一定以上の深さを有する友人を持て、かつ5年後も彼らと会うために戻って来ようと思わせるような帰属感を持たせるこのセクションという仕組みは、とてもよくできている。

加えて、セクションが全てではなく、1年目はディスカッショングループやFIELD 2という新興国のコンサルティング・プロジェクトでセクションを跨いだ人間関係が築け、2年目の授業でさらに人間関係が広がる。Trekの運営や参加、カンファレンス運営、その他クラブ活動等々で、何だかんだでHBSだけで2年間で300人は友人・知り合いと呼べる人はできると思う。ボストン自体も他の大学の学生や研究者の人たちとの出会いの機会が豊富で、出会える人の幅も広い。僕の場合、この2年間でFacebookで新たに繋がった人の数は400人だった。

また、HBSはAlumniとの結びつきも強く、驚くぐらい卒業生が後輩をサポートしてくれる。こちらも卒業後に出会うことができる人の幅を大きく広げてくれる。

世界中に、助け・助けられ、共に刺激し合える友人がいるというのはとても幸せなことだ。この幅広さと深さの人間関係は、僕の一生の財産になるだろうし、全員とは難しくとも、特に仲の良い友人とは今後も定期的に連絡を取り合うことで、より関係を深められるようにしたいと思う。

Career Change Opportunity

HBSを出たことによって、就労の機会が大きく広がった、というのは実感としてある。僕自身、地域と業界を変えて米国で就職することにしたが、これはMBAを経なければほぼ無理であっただろう。

一方で、友人と話していて、見えていなかった現実もあるなと感じた。一つには、インターナショナル生にとってのMBA後の米国就労の厳しさ。米国で就労するためには、企業にH1-Bビザという抽選で取得するビザの申請をしてもらわなければならず、このビザサポートをしている企業が本当に少ない。いわゆるスタートアップ系企業はほぼビザサポートをしないと思っていた方が良い。中規模くらいの会社でも就労のための門がそもそも空いておらず、文字通り門前払いだし、大企業でも人気のあるところは競争が厳しい。ネットワーキングで門をこじ開ける方法もあるが、狭い道だ。科学技術の学位取得者に関しては(特にコンピューターサイエンス)より門が開いているので、単に米国での就労が目的なのであれば、エンジニアリングの専門で大学院に行った方がずっと良いだろう。

二つ目は、年齢が上がってから来ると、納得いくポジションが見つかるとは限らないことだ。米国MBAの平均入学年齢は約28歳で、卒業が30歳前後となる。いわゆるMBA採用をしている企業では、入社時点が実務経験3年+MBA2年の28歳と、実務経験7年+MBA2年の32歳を同じMBA卒として同じポジションで採用することが多いため、実務経験が長い人ほどキャリアアップというよりも、キャリアの横滑りの可能性が高くなる(前者がスタッフ→MBA→マネジャーなのに対して後者はマネジャー→MBA→マネジャー、など)。特に欧州から来る学生はやや年齢が上のことが多いので、この点でオファーを受けるべきかどうかで悩む学生が多いようだ。

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全てをひっくるめて、僕がHBSに来て良かったかと聞かれれば、間違いなく良かったと思う。21ヶ月の機会費用や計24万ドル以上のコストは非常に高いが(奨学金がなければ本当に苦しかった。。。)、生き方、友人、仕事の土台を築けたし、今後の人生をサポートしてくれるようなネットワークへのアクセスや「HBS卒」という一定の信頼を得ることもできた。

MBAを考える人は、検討しているプログラムの学業の内容だけでなく、卒業生が何を得ているかを上記のような観点で検討してみると良いのではないかと思う。

卒業後の進路について

時が経つのは早いもので、本日で授業も終わり。卒業式は5月25日なのだが、僕のHBS生活もあと実質Bridgesという3日間のイベントを残すのみだ。21ヶ月の学生生活は長いなと思っていたが、振り返ってみるとあっという間だ。

僕の卒業後の進路だが、米系医療機器の会社に就職して、米国に残ることにした。卒業後にどうするかは、MBAに来ている人、特にインターナショナル生は行き先の国も含めて悩む話だと思うし、僕もかなり悩んだ。僕の場合、下記のような手順を踏んで考え、意思決定をした。

◆ Step 1: 価値判断の軸を決める

まず卒業後の進路を考えるにあたり、僕は「目的」(Purpose)、「人間関係」(Relationships)、「金銭」(Finance)の三つの軸で考えた。

「目的」は僕がどのように世界に貢献したいかだ。20代の終わりに改めて自分の人生を振り返って気付いたのは、やはり僕は病気を抱えた人やその家族・友人が治療法が見つからずに苦しんでいるのが許せないし、そのことに対して考えたり動いている時に充実感を感じるということだ。だから、世界中の人が自分の病気の治療法を見つけられるような世界にしたいと思うし、「その目標に繋がる仕事」というのを第一の項目として入れた。第二に、僕はテクノロジーの力を信じており、テクノロジーを通じてその目標を達成したいと考えているため、「テクノロジーに関わる仕事」という項目も加えた。第三に、僕は自分でコントロールしたいタイプなので、「事業責任者として動ける」という項目を加えた。最後に、僕は多様なバックグラウンドを持つ人と働いている時に特に楽しさを感じるため、米国、ロンドン、シンガポールなど「英語圏でかつ世界中から人が集まっている場所で働けること」を第四項目に加えた。「目的」としては以上の「病気の人を治療する・もしくは治療法を見つけやすくできるか」、「テクノロジー × ヘルスケアか」、「事業責任者か」、「場所」の4つを評価項目とした。

次に「人間関係」であるが、これも大事な要素だと考えた。まず、働く場所は自分の価値観と合うようなカルチャーにしたい、もしくはそんなカルチャーで働きたいので、「企業カルチャー」を第一の項目として入れた。次に、「一緒に働く人が尊敬できるか、一緒に働いていて楽しいか」を二つ目の項目にした。三つ目としては、「僕の家族が幸せか」、を入れた。

最後に、生活をする上で必要となる「金銭」も評価軸に入れた。僕の場合、「目的」で4つ、「人間関係」で3つ、「金銭」で1つ、の計8つが評価の軸となった。

◆ Step 2: 価値判断に重み付けをする

次にしたことは、それぞれの項目に「重み」をつけることだ。僕の場合、計8つの項目に、合計で100%となるように重みをつけた。具体的には「目的」の4つで40%、「人間関係」の3つで40%、「金銭」で20%の重みをつけた。重み付けの仕方は人により大きく異なると思う。

◆ Step 3: 選択肢を評価する

卒業後の選択肢のそれぞれについて、それぞれの項目に「1(満たしていない)」から「3(満たしている)」まで数字を入れて、点数を洗い出した。すると、合計点数が出てくる。進路の選択肢A、B、Cについて具体的に評価してみると下記のようになる。下記の例だと、Aが最も良い選択肢となる。

※サンプル(数値は例)

◆ Step 4: 再検証

評価軸に抜け漏れダブりがないか、自分の重み付けが適切か、卒業後の選択肢がまだ他にないか、を考えた。

大枠は以上のように考えたが、特にStep 4では妻も含め、色々な人に相談をした。

僕の場合、特に迷ったのは起業という選択肢をどう考えるかだ。

起業する場合、場所の選択肢としてはアメリカか東京の大きく二つを考えた。現状、インターナショナル生でアメリカで卒業後も起業して残る道はあるが、かなり狭い。卒業後にはOPT (Optional Practical Training)という期間が1年間あり、その間に多くの場合は起業家(E2)ビザ取得を目指すことになる。E2ビザ取得には起業家として成功してアメリカに貢献することを示す必要があり、この評価基準は、資金調達、アメリカ人の雇用、ビジネスプランの妥当性などとなる。アメリカは当然のことながら起業家志望も多く、競争も激しいため、言語がネイティブでない、文化が違う、永住権がない、の三つの壁を乗り越えて相当額の資金調達をして雇用を生むのは、かなり細い道。資金調達できなければ、米国登記した会社や開発したものを置いて国外へ出ないといけない。僕の場合、Healthcare Techの経歴があるわけでもなく、これらの壁を乗り越えるだけの自分ならではの強みを見い出すことができなかった。また、自分一人ならば「えいや」で残る手もあったかもしれないが、妻もいるため、そこまでのリスクを取りたくもなかった。他のアジア人の米国での起業家を見ると、米国企業に就職して在住数年→グリーンカードを申請→起業、のパターンが多く、そちらの方が現実的だと感じた。よって、米国ですぐに起業という選択肢は切った。

東京に帰って起業するという選択肢も考えた。こちらは市場の土地勘もあるし、ネットワークもあるし、起業する上では良い環境だ。起業は失敗を繰り返して、それでも諦めずに続けて何度かやってようやく成功するものだと思っているので、卒業後できるだけ早いうちに始めることには大きなメリットがある。一方で、せっかくMBAを出て海外にいるので、もう少し海外で揉まれてチャレンジを続けたいという気持ちも強かった。米国の良いところは競争がより激しく、優秀な人が集まっている上、自分自身が語学、文化、土地勘でハンディキャップを負っており、よりストレッチされる環境であることだ。また、特にHealthcare Techの最先端はやはり米国で、より多くのことが学べるだろうという好奇心もある。妻もまだ昨年に米国に来たばかりでこれから大学院に行く考えもあり、米国でまだ過ごしたいという思いもあった。これらの理由から、卒業後すぐに東京へ戻ることには躊躇があった。

これらを考慮して考えた結果、選択肢Aの米国医療機器企業に就職、が最も点数が高かった。妻の希望もあるが、何よりも僕の好奇心も米国に残りたいと告げていた。就職先が、新商品のProduct Managerという僕がこれまでやってきたことであり、かつ最も情熱を注げる職をオファーしてくれたことが、大きな理由の一つだ。アメリカで、優秀な人たちと働くというのはどんなものなのだろう。最先端のHealthcare × Techはどうなっているのだろう。新しいものを生み出せて、世界中の患者さんに良いインパクトを与えられたら、それはどんなに素晴らしいことだろう。

これらが僕が意思決定をした手順だ。MBAにこれから行く人・在籍中の人にとって少しでも参考になると嬉しい。

HBS Show

HBSでは毎年4月にHBS Showという学生主体のミュージカルがキャンパス内で行われる。これがまた非常に楽しい。脚本、作詞、演出、振り付け、小道具、演技、演奏、スポンサー集め等々、全て学生により行われており、いかに才能豊かな人材がHBSにいるかを実感させてくれる。2016年の例はこちらで、リンクを辿れば大体の様子が伝わると思う。

歌は原曲の歌詞を変えてHBSに関するネタが豊富に盛り込まれており、HBS生がすごく楽しめる内容となっている。具体的には、1年目の必修科目のケースに含まれるProtagonist(登場人物)に関するものであったり、HBSにおける恋愛や、普段の生活ではpolitically incorrectで言えないような事柄など。1年目、2年目の学生がどちらも舞台に立っているため、自分のセクションメイトや友人の思わぬ一面も楽しめ、約2時間半の公演を全く飽きずに鑑賞できるだろう。

HBSにおける最大のエンターテインメントの一つであり、毎年の評価も非常に高い。僕も2016年、2017年のどちらの公演も観たが、どちらも素晴らしかった。ぜひ会場で観て欲しい。

米国MBAの就職活動について

HBSに来るインターナショナル生にとって、卒業後の進路として魅力的な選択肢として米国での就職がある。分かりやすいメリットとしては、以下の5つがある。

  1. MBA採用という仕組みをすでに多くの企業が持っており、昇進速度の早いLeadership Development Programなど魅力的なプログラムが多い
  2. 給与水準が他国よりも高い($135,000/yearがHBSでの卒業後の平均給与、これにボーナスや転勤費用補助などその他の福利厚生が加わる)
  3. 労働環境が相対的に良い(米国では日本よりも労働時間が相対的に短い職場が多い)
  4. 世界中から優秀な人が集まっており、働いていて楽しい
  5. 子育てをする環境としても良い(高額だが、保育所やNannyなど子供を預ける仕組みが整っている上に良質な教育機会が多い)

などがあげられる。

一方で、これらのメリットを求めてインターナショナル生が米国労働市場に殺到するため、競争は結構厳しく、米国就労には3つのハードルを超える必要がある。

① ビザ(Visa)のハードル

最も大きなハードルはビザの壁だ。アメリカ国籍や永住権(グリーンカード)を保有していない場合には、米国で就労し続けるためには労働ビザが必要だ。米国の大学を卒業したインターナショナル生の場合、OPT (Optional Practical Training)というプログラムで1年間は労働ビザなしで就労できるのだが、その期間を超えて就労しようとすると一般的にはH1-Bという労働ビザが必要となる。

このH1-Bだが、米国人の雇用を守るために年間の発行上限が85,000と決められており(20,000が大学院以上の学位保有者の優先枠で、65,000がそれ以外の全て)、それを超えた人数が応募した場合は抽選、とかなりインターナショナル生泣かせの作りになっている。近年では200,000人以上が応募しているために、大卒の資格で応募した場合にはH1-Bが取得できる可能性は1/3以下。加えて、大統領が代わり、より移民抑制の方向に舵を切ろうとしているために、来年以降にこのH1-Bの制度自体がどうなるのかも不透明だ。

これは個人にとってもリスクだが、企業にとってもせっかく採用してトレーニングした人材が国外に離れるために離職してしまうということでリスクとなる。おまけにH1-Bは企業にスポンサーしてもらう必要があるために、多くの企業はその手間やコストを嫌がる。結果として、MBA生をターゲットとした採用枠でも、90%以上の企業はそもそもインターナショナル生は採用しません、となる。残りの10%以下の枠でも一般的にはすでに労働ができることが決まっている米国国籍保有者・永住権保持者、もしくは過去にH1-Bを取得していたインターナショナル生(H1-Bの延長、とすれば抽選のプロセスから逃れられる)を採用する方が企業側にとってはリスクが低いため、ビザなしの応募者はハンデを負っての戦いとなる。

ビザの問題は個人の力でどうにもできないこともあり、悩ましい。米国で就労したいという人はH1-Bのシステムが新しい大統領の下でどう変わるかを注視しておいた方が良いだろう。

HBSでは移民法を専門にした弁護士によるビザに関するセッションが年数回開かれており、個々人の状況に応じたアドバイスも受けられるため、得られる情報は比較的充実していると思う。

② 言葉・文化のハードル

これは言わずもがなだが、米国で就労する場合には英語でコミュニケーションをとれる力があることが大前提となる。インターナショナル生の中でも同じ土俵で戦うのは、多くが高校や大学から米国に来て米国で就業した経験のある人や英語が母語の人なので、彼らの方が英語のレベルが高い。加えて、米国文化への理解もコミュニケーションの際に重要となる。例えば、ネットワーキングの機会でどれだけ会話を盛り上げられるか、は文化への理解度に結構左右されるので、英語が話せてもこの点で難しさを感じるインターナショナル生も多い。

③ 競争のハードル

ビザと言葉・文化の壁に問題がなかったとしても、米国は世界各地から就労したい人が来ることもあり、そもそもの競争環境が日本よりも厳しい。日本での就職活動以上に自分の強みと会社のニーズを理解し、どうして自分なのか、をうまく伝えることが求められる。特に競争相手となる米国人のMBA生はゲームのルールを理解した上で、かなりの時間を使って就職活動に挑むので、レジュメ、カバーレター、ネットワーキング、インタビューの各プロセスが高いレベルに仕上がっていないと、オファーまでたどり着くことは厳しいだろう。

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そうは言っても、これらはあくまでもハードルであり、飛び越えれば良いだけの話だ。ビザについてはそもそもインターナショナル生をスポンサーしている企業に絞る、もしくはネットワーキングを通じて窓口をこじ開けることができる。言葉・文化についてはせっかく米国MBAにいるのだし、日々の生活で改善していけば良い。競争の壁についても、自分が強みを有する分野を狙えば、十分戦える。HBSでは付属のキャリアセンターがレジュメやカバーレターを見て直してくれるし、キャリアコーチがどのような企業にどうやってアプローチをすれば良いかを一対一でアドバイスをくれる。ネットワーキングやインタビューについても練習の機会を提供してくれるため、かなり使えるリソースだ。

僕の周りのClass of 2017のインターナショナル生では、大学内の就職活動支援やインターンを通じてMcKinsey、BCGなどのコンサルティング、Goldman Sachs、UBSなどの投資銀行、Amazonなどのテック系企業、Danaher、Samsung、Fordなどの大手製造業からオファーをもらった人が多い。これらの企業の特徴はグローバルに展開しており、もしH1-Bが受からなくても米国外への転勤が可能な企業ということだ。海外オフィスのない中小企業やスタートアップは正攻法では門が開いていないために厳しいが、個人的なネットワークを使ってオファーをもらい、米国に残る人もいる。

また、昨今では母国へ帰る方が良いオプションとなることも多い。米国MBA取得者が少ない日本のような国であれば、帰国した方がより差別化ができ、就きたい仕事に就きやすい(プライベートエクイティやヘッジファンドについては、米国ではインターナショナル生が入るのはほぼ不可能と言われるくらい狭き門だが、母国に帰ればまだ門が開いている、あるいは、スタートアップの日本支社立ち上げの機会がある、など)。また、中国やインドのように急速に発展している国の出身者の場合、帰国した方がより将来性があると考える人も多い。母国の方が家族や友人がおり落ち着くし、ご飯も美味しい、というのもよく聞く理由の一つだ。

色々なオプションはあるが、HBSのメリットの一つとしては世界中に就労するためのパスポートを与えてくれることだ。米国内でオプションを探しても良いし、自国へ帰っても良い。あるいはシンガポールやロンドンなどの第三国に行っても良い。特に、HBSは世界中に卒業生がいてネットワークがあること、HBSブランドが評価されていることなどから、行きたい場所にアプローチしやすい。こういったmobilityは日本で教育を受けただけではなかなか持つことが難しいため、世界のどこでも働けるようになりたい、と考える人にとってはHBSは良いパスポート取得の機会になるかもしれない。