900万人がハマるパチンコ・パチスロ業界の分析

日本のどこでも見かけるパチンコ・パチスロは、世界規模で見ても大きなギャンブルの市場です。

社会的な批判も多い業界ですが、今回は投資家という立場で分析してみます。色々な観点から書きますが、伝えたいことは、パチンコするお金と時間があれば、株式投資した方が良いと、ということです。

パチンコ・パチスロ市場

レジャー白書2018より

パチンコ・パチスロ市場は2018年時点で約20兆円と巨大です。参考までに、2018年の書籍・本の市場規模は全国出版協会によると約1.5兆円なので、12倍以上です。

ただ、パチンコ・パチスロ市場は減少傾向にあり、2008年からの10年で20%以上市場が縮小しました。パチンコ・パチスロを行う人口も同じ期間に1430万人から900万人まで縮小しています。ただし、その900万人は年間平均パチンコへ30回以行っています。

これを単純に計算すると一人当たりの消費金額は

19兆5400億円 ÷ 900万人= 21万7000円

一回あたりの訪問になおすと

217,000 円 ÷ 30回 = 7,200円

つまり、2018年は、平均をとると、900万人の人が、隔週以上の頻度で、毎回7,200円払ってくれているビジネスになります。2008年は1430万人の人が、隔週以上の頻度で、6,100円払っているビジネスでした。

パチンコ・パチスロ人口が減少しながら単価が上昇しているということは、ライトなユーザーが離れる一方、よりコアなユーザーが残っていることを示唆します

パチンコ業界の利益率 ダイナムジャパンの事例から

パチンコ業界の最大手はマルハンで2019年3月期の売上高は1兆5500億円です(この規模は花王や日本航空(JAL)よりも売上高が大きく、日本企業のトップ100に入ります。)。マルハンは上場しておりません。

2番手はダイナムジャパンホールディングスで、2019年3月期の売上高は7680億円。香港市場に上場しています。2019年3月時点での店舗数は450店舗と業界最大手。

ダイナムジャパンホールディングスは上場企業なので利益率まで開示されており、ビジネスを理解するのに参考になります。

ダイナムジャパンホールディングス年次報告書より

景品出荷額を引いた利益は1460億円で、いわゆる粗利は約19%です。

ここから営業費用の1280億円を引いた営業利益は193億円。営業利益率は2.5%。ここから法人税支払いを除いた当期純利益は126億円であり、純利益率は1.6%。

赤字ではないですが、業界2番手にしては、かなり低いという印象です。これは業界がまだ寡占化されておらず、比較的多くの企業が競争しているか、もしくは価格競争を挑んでいる企業が市場にいることを示唆します。

売上は2015年の8260億円から下落トレンドにありますが、純利益はほぼ横ばいです。

Bloombergより。単位は香港ドル

純利益の伸びが鈍っていることもあり、2019年は全世界的に株価が上がっているのにも関わらず、ダイナムホールディングスの株価は伸び悩んでいます。株価は10.5香港ドル (11月30日現在、1香港ドル=14円なので、147円)

配当は一株あたり12円なので、配当利回りは約8%とかなり高配当です。また、配当性向も73%なので2019年3月期だけを見れば少しは余裕があります。

 ダイナムホールディングス配当推移(年次報告書より)

キャッシュフローも問題ありません。営業キャッシュフローの範囲で投資をしています。財務活動によるキャッシュフローも、営業活動によるキャッシュフローに近い範囲で配当と借入金を返済しています。

ダイナムホールディングス年次報告書より

ダイナムジャパンの戦略

ダイナムジャパンホールディングス年次報告書より

ダイナムジャパンホールディングスの戦略はコスト戦略と地域独占戦略の組み合わせです。

  • 標準店舗の新規出店(店舗数が増えればより量を発注できるようになり、機器メーカーなどにより値引きを迫りやすくなる。規模の経済)
  • 同業他社の買収により、競争を減らす(=地域で独占することで、より利益率を高くする)
  • 中古機の積極導入、自社物流センターの活動、業務効率化(どれも費用を減少させる施策)

市場が縮小している成熟市場ですので、本来ならば利益を刈り取りたいのですが、業界全体が厳しくなっている中、コストを削り、なんとか利益を確保しようとしています。

また、同じような状態であることが予想される同業他社を買収することで、競争を減らし、より利益率をあげようとしています。

これらの戦略としては合理的です。

また、ダイナムジャパンホールディングスは近年「低貸玉店舗」というより低い単価で遊べる施設に注力して、新規に入ってくる人口を広げようとしてます。

パチンコは一度ハマってしまうと抜け出せない、中毒性が高い業種と言われているので、入り口を低くして新規のユーザーを入れるのは合理的です。

また、ダイナムジャパンホールディングスは「パチンコはボケ防止に良い」という、「健康」メリットを押し出すことで、高齢者層にパチンコを広めようとしています。

下記の点で、60歳以上の高齢者層はパチンコ業界にとって魅力的だと考えられます

  • 60歳以上人口が増えていること
  • 比較的豊かな世代であること(60歳以上世帯の平均貯蓄は約1600万円 – 内閣府高齢化白書令和元年より)
  • 多くが単身世帯となり時間を使う先を求めていること
  • 歳を取ることで認知能力が低下している層が増えていること
  • 年金という継続収入が国から入っており継続的な収入が見込めること(高齢世帯の平均所得金額は318万円- 内閣府高齢化白書令和元年より)

ダイナムジャパンホールディングスの戦略を見る限り、60歳以上を狙って、まずは低い単価で遊んでもらってハマってもらい、年金を原資に遊んでもらって、徐々に貯蓄も使ってもらう、という戦略をとっていくかと思います。

一昔前のスマートフォンゲームのビジネスモデルもこれに近く、まずは無課金ユーザーを集め、微課金ユーザーにして、その後、競争心、射幸心、同調圧力をあおって重課金ユーザーにしていくようなものです。

若い世代はそもそも収入が少なくなっておりカテゴリとしての魅力度が薄れていることと、スマートフォンの課金ゲームなど射幸性で競合する項目が多いことから、より競合の少ない、単身世代の高齢世代を狙うのがパチンコ業界にとっては経済的に合理的なのではないかと思います。

その観点で、ダイナムジャパンホールディングスの戦略は、倫理的な観点を除けば、経済的に合理的です。

パチンコ・パチスロ業界への投資で考慮すべき点

政治・規制リスク

パチンコ・パチスロ業界のビジネスは人間の射幸性(儲かるかもしれない、という期待)に訴えるものなので、中毒者を生みやすいモデルです。

厚生労働省もギャンブル中毒に対する対応に乗り出しており、政治の対応いかんによっては、新規店舗出店やビジネスモデルに規制が入る可能性があります。

これまではその規模の大きさから

  • 警察OBを業界団体に取り込んで警察から取り締まられるリスクを減らす
  • 政治献金を通して規制強化の動きが出るリスクを減らす
  • 広告費を通じてマスコミから不利な報道をされるリスクを減らす

ことができていましたが、今後規模が縮小していき、利害関係者にこれまでと同じような利益を提供できなくなったときに、今までのようにリスクヘッジができるかどうかは不透明です。

海外大手カジノ進出による競争激化・規制強化リスク

2019年現在、国会で統合型リゾート整備法案が審議されており、この法案の成立後、日本に海外からカジノ運営者が進出してくる可能性があります。

カジノ進出は2つの点でパチンコ業界にとってリスクとなります。

  • 同じカテゴリでお客のお財布を狙う競合が増える可能性
  • カジノへの規制をきっかけにパチンコ・パチスロ業界にまで同様の規制が飛び火する可能性

海外カジノが進出してくるのはまだ年単位で先の話ですが、法案成立が価格下落を引き起こす可能性があります。

パチンコをやる側に回るか、投資する側に回るか

パチンコ・パチスロをやるかどうかは個人の自由です。

ただし、資産運用の観点からすると、パチンコをするのは筋がよくない投資です。

パチンコをやりたいと言っている友人が知り合いにいれば、下記の2つのケースを提示してみるといいかもしれません。

  • パチンコは平均的に儲からない遊び(業界大手の粗利益が20% = あなたは20%損するモデル)。20万円使ったときに、あなたが受け取る金額の期待値は16万円で、4万円損する。また、年間30回、一回4時間行くと、年120時間使う。
  • そのお金を高配当株の購入に使えば、例えば税引き後の配当が5%ならば、20万円を投資すれば、年間1万円入ってくる。時間は一度に投資をすれば、1時間以下しかかからない。

お金でいえば、年間5万円と約120時間の差が出てきます(時給1000円とすると、12万円の価値)。

まとめ

  • パチンコ・パチスロは20兆円の巨大産業だが、縮小傾向
  • 平均的には、900万人が、隔週以上、毎回7,200円以上を使っている
  • パチンコ・パチスロ業界の利益率は業界2番手でも2%以下とさほど高くないが、安定している
  • 今後、パチンコ・パチスロ業界は再編が起き、次第に寡占化されていくと予想される
  • パチンコ・パチスロ業界は60歳以上の年金で生活しており、貯蓄も一定以上ある高齢者を狙っていくと予想される
  • パチンコをやるか、投資をするかで、年間5万円以上と120時間以上の時間の差が出てくる。資産運用の観点からは、投資をした方が良い

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Westpac (WBK)の株価はどうして落ちているの?

高配当株として人気の高い、豪Westpac(WBK)銀行の株ですが、11月に株価が急落しています。

今回は、オーストラリア第2位の銀行に一体何が起きているのかについて説明したいと思います。

Westpac (WBK)の株価

Westpacの株価

Westpacの株価は2018年末に向かって下落し、そして10月まで上がり続け、急激に下落しています。まるでジェットコースターのようなチャートです。

オーストラリア経済の成長鈍化と中央銀行の利下げ

オーストラリアの銀行業界は4大銀行 (Commonwealth、Westpac、Australia and New Zealand Banking Group、National Australia Banking)による寡占状態です。この4社で貸し出し金額の約80%を占めています。

Westpac銀行はCommonwealth銀行に次ぐ第2位の規模を持っています。

Westpacの19年度の投資家向け発表資料より

ビジネスの約50%を消費者向けが占めており、この大半が住宅ローンです。

オーストラリアのGDP

オーストラリアの経済は住宅市場の冷え込みから、2018年の後半に大きく減少し、10月-12月には景気後退すれすれの0.1%成長まで落ち込みました。

Westpac銀行は住宅への貸出が収益の大きな部分を占めているため、貸出の伸びが鈍化するのではないか、また景気が後退したときにローンを払えない人が出て貸し倒れが増えるのではないか、という懸念から、2018年末にかけて株価は下落していきました。

Royal Bank Australia Interest Rates

住宅価格の下落、景気の鈍化に対して、オーストラリアの中央銀行、Reserve Bank of Australia (RBA)は、経済を活性化させるため、2019年に入ってから断続的に利下げを行いました。

RBAは2019年1月に1.5%であった利率を0.75%まで下げています(11月27日現在)。

利下げのおかげによる住宅市場の回復と経済成長率が年率2%程度まで回復しました。それにより、10月までは株価は回復基調にありました。

しかし、11月に入り、RBAトップのPhilip Loweは、来年の前半のさらなる利下げの可能性を示唆し、利率が0.25%まで落ちたら、量的緩和も選択肢に入っている、と発言しました。

利下げが起きると、銀行は貸し出し金利を下げざるを得ず、一般的には利幅の減少=利益率の低下に繋がります。

また、利下げは国債の利回りの利率を落とすので、預金者から借りたお金を国債で運用している銀行の収益にとってもマイナスに働きます。

よって、基本的には、利下げ=銀行の事業利益にとってマイナス、です。

市場は住宅価格の下落による貸し倒れリスクよりも利下げによる収益への影響の方を懸念し始めました。これが、株価の上値を抑えている一つの理由です。

マネーロンダリング疑惑

11月のWestpacの株価の下落の主な理由は、オーストラリア証券投資委員会 (Australian Securities and Investments Commission – ASIC)が、Westpacを児童搾取を含んだ、マネーロンダリングに対して適切に対応していなかった、と調査していることが報道されたことです。

実はこのマネーロンダリング話、Westpacだけでなく、過去にも他の銀行で起きたことがあります。

2017年に、最大手のCommonwealth Bankはマネーロンダリング疑惑のある取引に関わったことを当局へ報告せず、このスキャンダルから2018年にはCEOが交代しています。

今回のWestpacについても、CEOがASICから指摘を受けたときに適切に対応せず批判が殺到し、CEOの辞任まで追い込まれました。

今後の経営にどれだけ影響が出るのか読めなかったことから、投資家がパニックになり売り始めたと考えられます。

当局による制裁金と株主訴訟

Westpacは2つの大きなリスクに直面しています。

1つ目として、ASICによるマネーロンダリング疑惑への捜査は続いており、今後制裁金が課される可能性があります。制裁金については、230万件の疑わしい取引に対して、10億ドルを超えるとみられており、2019年度の純利益が68億ドルであったWestpacにとっては少ない金額ではありません。

2つ目として、法律事務所が集団訴訟を準備しており、こちらもWestpacの利益を減少させる可能性があります。

これらの動きに対し、Westpacは当局の調査に積極的に協力すると同時に、マネーロンダリングの話が出る2週間前の新株購入に応じた株主に対し、払い戻しをすることを検討していると声明を出しています。こちらは当局との議論の後に出てきた、とのことですので当局が指示したのかもしれません。

しかし、この払い戻しは増資に応じた人が対象のため、この対応で集団訴訟が止まるかどうかは不明です。

ブランド価値の毀損

空気を読まないことで定評のあるCEO (Brian Hartzer)は退職金、270万オーストラリアドル(約二億円)を受け取って辞任すると現地の新聞では報道され、批判にあっています。

もともと、オーストラリアの銀行は寡占状態にあることもあり、不透明な経営と談合体質が近年問題にされていたのですが、今回の一件は国民の銀行への信頼をさらに失わせました。

特に、今回のマネーロンダリングは児童搾取(特に東南アジアにおける児童の性的搾取です)につながりのある団体にお金が回っていたということもあり、Westpacへの批判は強まっています。

Westpacはただでさえ米国、欧州、アジア系の銀行からの攻勢を受けて市場が厳しくなっている中でのこの一件なので、短期的には貸出の伸び悩みなど業績への影響が、長期的にもブランド価値の毀損という影響が出ると考えられます。

Westpacの19年度の投資家向け発表資料より

また、2019年は2018年に比べて純利益、一株あたり利益が16%落ちるなどただでさえ利益の成長に懸念があります。また、スキャンダルが起きる前に減配しているのですが、その状態ですら配当性向が70%を超えているため、制裁金の支払いが生じるとさらに減配される可能性が高く、この点も株価の懸念材料です。

Westpacの19年度の投資家向け発表資料より

これらの理由から、株価が落ちていると考えられます。

まとめ

  • Westpacの銀行の株価が落ちた理由は、1. オーストラリア中央銀行の利下げが予想されること、2. マネーロンダリング疑惑に対してCEOが適切に対応せず、辞任まで追い込まれたこと、3. 当局から制裁金を課され、株主からの集団訴訟されるリスクがあること、です。
  • 今回のスキャンダルはブランド価値に傷をつけ、中長期的にもネガティブな影響を与えると考えられます。
  • すでに今年、一度減配をしていますが、現状でも70%以上の配当性向のため、制裁金によっては来年さらなる減配のリスクがあります。
  • 一方、4大銀行がオーストラリアの市場を寡占している状況は今後も変わらず、オーストラリアの住宅市場も回復基調にあるため、さらに価格が落ちていくようでしたら購入の機会かもしれません。

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幸せになるためにするべき、たった1つのこと – ハーバードの研究

もっとお金があれば、将来について不安にもならず、幸せに暮らせるのにな。

そんなふうに思ったことはありませんか?実は、たった一つのことが、幸福感に大きな影響を与えることが、研究から分かっています。

今回は、幸せに生きるために、何をすれば良いかの話です。

ハーバードの幸せ研究

ハーバードの成人に関する研究は、世界で最も長く続けられている研究の一つです。

「人の幸せと健康に何が影響を与えるのか」、を調べるために始まったこの研究は、1938年から75年にわたり、4人の研究者に引き継がれながら、724人の男性の人生を追いました。

研究の対象と方法は以下になります。

  • 研究対象となったのは、2つの10代のグループの男性。一方のグループはハーバード大学に通う2年生、もう一方のグループはボストンで暮らす貧困家庭の子供。
  • 研究方法としては、2年間ごとに質問票を送り回答してもらうことに加え、本人と家族へのインタビューが行われました。また、健康情報については、研究対象の医療記録を主治医からもらうことに加え、脳のMRIスキャンや血液検査も行われました。

幸せ研究の結果

研究対象となった人たちの人生は様々でした。社会的に成功した人もいれば、そうでない人もいました。健康でいた人もいれば、アルコール中毒や精神病を発症した人もいました。結婚した人もいれば、結婚していない人もいました。

彼らの人生における幸福度と健康の変化を調べた時、結果は非常に興味深いものでした。

一体何が、彼らの幸福度と健康に影響を与えたのでしょうか。

たくさん働いたことでしょうか?

違います。

どれくらいお金を持っているかでしょうか?

違います。

どれくらい高い社会的地位を得ることができたかでしょうか?

違います。

結論は、たった一つです:「良い人間関係が、あなたを幸福で健康にする」

研究からは3つのことが分かりました。

孤独は人を殺す

孤独だと感じている人ほど、外に出る頻度が少なく、さらに不健康となり、脳の働きも低下していました。また、自分が望むより孤独だと感じている人は、より幸福度が低いという結果が出ました。

孤独感を感じている人は、そうでない人よりも早死にしていました。

人間関係の質が大事

研究結果は、友人が多ければ多いほど幸福感が増すわけではなく、また、結婚をしていれば自動的に幸福感が増すわけではないという結果でした。

幸福感に影響を与えていたのは、量ではなく、人間関係の質でした。

喧嘩ばかりの結婚生活は、健康に多大な悪影響を与えていました(おそらく離婚した方がより良い結果が出ていたと考えられています)。一方、愛に満ちた家庭を築いている人はより幸せでした。

50歳の時点で、最も人間関係に満足していた人は、歳をとった時に、最も健康な人でした。

体は不健康でも人間関係に満足している人は安定して幸せを感じていたのに対し、人間関係に満足していない人はより体の痛みを感じていました。感情が、痛みの感覚に影響を与えていたのです。

良い人間関係は、脳に良い影響を与える

安定した人間関係は、脳の活動をより活発化させ、記憶力の向上に繋がっていました。

どうして私たちは富や名声に引っ張られるのか

人間関係は、測れるものではなく、見えるものでもありません。一方、人は数字で表せたり、見えるものに、どうしても関心が向きがちです。

また、人間関係への投資は一生続くものなのに対し、金銭や仕事での投資はもっと短い期間で成果が得やすいです。

これらの「見えるもの・測れるものに注意が向きやすい」、「より短期間で成果が得やすい」、というのが、多くの人が仕事により多くの時間を使い、良い人間関係に割く時間を減らしてしまう理由かと思います。

けれど、今回の幸せ研究の結果は大事なことを教えてくれます。富も、名声も、あなたを幸せにも健康にもしてくれません。

あなたを幸せにしてくれるのは、質の高い人間関係です。

まとめ

  • 富や名声は、あなたを幸せにはしてくれない
  • 質の高い人間関係が、あなたを健康に、そして幸せにしてくれる
  • だから、親、友人、そしてコミュニティとの関係に時間の投資をしよう

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TEDでも見ることができます。日本語の字幕にもできます。

日本が財政破綻したらどうなるの?

思考実験をしてみます。2030年、社会保障費の膨張により膨れ上がった国の借金は、ついに国債の主な買い手である銀行・生命保険会社ですら価値が急減するリスクを意識するようになった。

米国格付け機関のS&Pは、国債残高が国民の金融資産の合計よりも大きくなったことを理由に、日本国債をBB(「投機的」)に格下げした。これに準じて、他の外国大手格付け機関のムーディーズも日本国債を投機的水準に格下げ。

日本政府は格付け機関の評価は誤っていると声明を出すも、銀行・生命保険会社は投機的な水準の国債を購入することは株主利益に反するとし(もともと国営であった日本郵政を含む)、国債の引き受けを断ることになり、ついに日本政府が発行する国債を売り切れず、日銀が直接国債を引き受けることになった。

日本政府は緊急事態だと宣言し、閣僚を集め、対応を協議することに。

あなたは日本に暮らす、一人の国民です。

あなたの生活は、どう変わるでしょうか?

財政破綻のプロセス

預金封鎖

あなたは円の価値が急落するのではないか、銀行が倒産するのではないか、とパニックになり、銀行から預金を下ろそうとします。

しかし、銀行は預金者の預金を企業や個人に貸し出しており、全ての預金者へ預金を返せるだけのお金が手元にありません。

あなたと同じような人が銀行に殺到しますが、銀行は預金封鎖を行うことになり、1人につき1日1万円まで、などの制限がかかります。

国債、株が暴落し、資本移動規制が入る

日銀引き受けが決まった時点で、市場では国債価格が暴落することを予想し、銀行・生命保険会社が我先に日本国債を売ろうとして、日本国債の価格がどんどん落ちてきます。

海外の投資家から見れば、日本国債は急激に落下するジェットコースターのような商品ですし、中央銀行が国債を直接引き受けることにより、貨幣の供給増加によるインフレへの懸念から、日本円建の資産は目減りするリスクが高くなります。

海外の投資家も日本円建ての資産を出来るだけ減らそうとして、株式を売り浴びせ、かつ円を売ってドルにかえようとします。また、空売りの好機だとみたファンドと、自動取引により一方的な流れで円の価値が落ちていきます。

日本政府は円の価値を防衛するため、外貨準備のドルを売却しますが、市場の勢いに負け、1ドルが200円の壁、300円の壁を越えていきます。

これ以上円が安くなると物価が上昇し、国民生活が破綻してしまうと判断した政府は資本移動規制を導入します。

これにより、貿易を除いた資本移動については、中央銀行の許可がなければできないようになります。個人も一定額を越える海外送金が制限されます。

また、富裕層が資産を移す流れに対抗するように、国会は緊急法案として、海外に資産を移して移住しようとする人に、一定額以上の資産を持ち出した場合には課税をする出国税の税率引き上げを行います(実際には状況を重くみた富裕層はほとんど資産を移し終えた後ですが)。

海外に資産を移そうか迷っていたあなたが決める前に、あなたの日本株式資産は目減りし、しかも海外へ資産を移すことが難しくなります。

ニュースでは、「仮想通貨の価値が急上昇している」、と報じています。どうやら円の価値に不安を感じた日本人が、預金封鎖をかいくぐる方法として仮想通貨を購入しているようです。

銀行・生命保険会社の破綻と政府による救済

財務省 国債等の保有者別内訳より

日本国債の価格が大きく下がったことで、大きくバランスシート(資産状況)が悪化した銀行、生命保険会社は債務超過状態となり、政府へ公的資金注入の支援を求めます。

もし銀行・生命保険会社が破綻すれば、リーマンショックのように連鎖破綻が起き、金融システムが停止してしまうと考える政府は、公的資金投入を決定します。

政府は国債を日銀に引き受けてもらうことで公的資金を調達しますが、円の価値をこれ以上落とさないよう、政府はIMF(国際通貨基金)とECB(欧州中央銀行)にも救済を依頼します。

しかし、IMFもECBも、1000兆円を軽く超える日本の負債規模は大きすぎて助けることはできず、かといって日本の財政破綻を放置すると自国まで連鎖的に金融不安が押し寄せて恐慌になる、というジレンマに直面します。

結果的に、国債の大部分は日銀が政府から直接引き受け、IMFとECBは一部を救済するという形に落ち着きます。実質破綻状態にあった銀行・生命保険会社は統合され、国有化されます。

ただし、IMFとECBは継続的な融資をする条件として、大掛かりなリストラと債務返済計画を立てることを要求します。

あなたは、自分が預けている銀行が救済されると知り、少しホッとします。

社会保障費の削減

国税庁ホームページより

IMFとECBはまず膨れ上がった歳出のカットを要求します。まず削る先として大鉈が振るわれるのは、歳出の膨張を引き起こしている社会保障関係費です。

国税庁ホームページより

100兆円規模の歳出をカットするため、IMFとECBはこれまで高齢者の反対が多く、聖域とされていた社会保障費の削減を提案します

  • 後期高齢者であっても、一定以上の資産または収入がある高齢者は医療費が3割負担となる(2019年時点では後期高齢者は全員1割)
  • 介護保険料を引き上げ、介護における自己負担も3割に引き上げる
  • 年金の支給開始年齢を70歳からに後ろ倒しする
  • 国からの年金への拠出分を減らし、年金を20%カットする

また、公務員の人数、給料も大幅にカットすることがIMFから提案され、政府は公務員の早期退職と、全員の給料を20%カットすることを受諾します。

早期退職や給料のカットに不満な公務員は街へ出てストライキを行いますが、国民の多くも同様に生活や失業に苦しんでいるため、公務員のストライキは特権を維持しようとしている、と見られて共感を得られません。

あなたは駅前でプラカードを持ち、「IMFの横暴を止めろ」と叫んでいる人たちをみて、何かとんでもないことが起きているのだと感じます。

公共サービスの削減

次に、国や地方は今まで行なっていた公共サービスの削減、有料化を順次行なっていきます。

例えば、ゴミ捨てにゴミの量に応じて支払いを行う必要が出てきたり、水道代が値上がりしたり、公共バスの本数が減らされたりします。

あなたは、今まで無料で当たり前だと思っていたものが有料になったり、生活を支えていたサービスが実は国や地方により担われていたことに気づくとともに、どんどん改悪されていくサービスに不満を感じるようになります。

国による増税

国税庁ホームページより

社会保障、サービスの削減だけでは日本の赤字は解消できません。

100兆円を超えている歳出をカバーするために、消費税と個人金融資産への課税がもたらす効果が大きいので、IMFは歳入を増やす策として、下記の税の導入を提案します。

  • 消費税の増税を行い、消費税20%とする(ただし、食料品など軽微税率が適用されている品目は消費税変わらず)
  • 資産税の導入。マイナンバーに紐づいている資産を元に、3000万円を超える金融資産については、毎年1%を納税する
  • インボイスの導入により自営業者、農林業者の収入の把握と課税を行う
日銀2019第二四半期の資金循環資料より

政府は、IMFからの圧力とこれまで税負担が少なかった層にも負担させる策だ、自分たちは過去の政権のツケを支払わされているのだ、と外国と過去の政権に責任を転嫁しながらこれらの歳出改革を行います。

これまで租税負担の軽かった層も税金を負担するようになることに加え、一定以上の財産を持つ層は資産税を支払う必要が出てきて、負担が増加します。

あなたは、保有している株式の価格は下落するわ、税金も増えるわ、将来もらえる予定の年金も減るわ、で政府への不満がどんどん高まっていきます。

生活に必要な光熱費、食料品、日用品の価格が倍になる

円が急激に下落したことから、輸入に頼っている石油・ガソリンの価格が急激に上昇します。また、2030年になっても、日本は輸入した石油・石炭・天然ガスの発電に頼るエネルギー構造を変えられていないため、光熱費が2倍になります。

日本原子力文化財団ホームページより

特に輸入比率が高い小麦を使った製品(パンなど)や肉類(牛肉、豚肉、鶏肉)の価格が上昇し、洋食のレストランの価格が月単位で変わっていきます。

農林水産省 「知ってる?日本の食料事情」2014

また、米国産牛肉の値上げとインフレにより、吉野家の牛丼が800円になることが発表され、牛丼愛好家の中で激震が走ります。

電化製品や日用品などの価格も上昇し、消費税の上昇と合わさり、あなたが気がついた時には、電化製品の価格が2倍以上に上がっています。

変動金利で住宅ローンを組んでいる人の生活が破綻する

日本の国債の引受先がいなくなるため、金利が急上昇します。そしてそれに連動して、住宅ローンの金利が変動金利であれば上昇します。金利が20%まで上昇した場合、利息制限法の上限である年利15%まで金利が上昇します。

2000万円を1%の変動金利で借りている人の年間利払いが20万円なのに対し、金利が15%まで上がると、年間利払いが300万円まで膨れ上がります。

マイホームを変動金利ローンで購入してる人の多くが、金利支払いのために住宅を手放さなければならなくなります。

あなたは住宅購入の際、35年の固定金利にしていたために負担は変わりません。けれど、隣のマンションを同時期に購入した人が、「ローンの負担が増えて売却しなければならないけれど、今の時代、誰も住宅を購入しようとせず、希望するような価格がつかない」、と言って嘆いているのを聞きます。

テレビではローンを支払いきれずに自己破産し、ホームレスになった人たちが公園に集まり、集落を作っているという話や、NPOが空き家をホームレスになった人たちに無料で貸し出すサービスを始めた、などのニュースが流れています。

国内向けの比率が高い企業の連鎖倒産が起きる

国民の購買力が減少してモノを買い控えるようになり、売上数量が下がる上、海外からの材料の仕入れに関わる価格の値上がりに、値上げが追いつかず、国内向け事業を行なっている企業が赤字となります。

特に特定の大企業向けの売上が高い中小企業が連鎖的に苦境に陥り、銀行も貸し出しを行う余力がないため、資金繰りに困って倒産します。

あなたは連日のように、危機的な状況になった企業と救済される企業のニュースを見ることになります。

特に、日本の企業がバーゲン価格となり、かつ資本注入の必要に優れた技術を有する企業を買いに多くの海外企業が買収提案や資本提携を行うニュースが連日のように報道されます。

国内から海外へ輸出を行なっている企業、インバウンド旅行業界にとっては機会到来

一方、国内に生産拠点を持ち、海外に輸出している企業は、コスト競争力をもち、輸出が好調となり、最高益を更新します。

また、物価の安さから訪日旅行者が増加し、訪日旅行者を対象とした宿泊機関や飲食業界にとっては機会となり、景気が良さそうです。

あなたは街中で、日本人で外出して買い物する人が減っているのに対し、外国からの観光客が増えていることに気づきます。

財政破綻が起きても変わらないもの

消費税は上がり、資産税も導入されて支払う税金が増えている割に、年金・医療への国からの補助は減り、公的サービスも削減か有料化されました。物価も電化製品の価格も2倍以上になりました。

テレビをつけると「平成の時代は良かった」と昔を懐かしむ番組や、「それでも世界から敬われる日本」といった日本の良いところを強調するような番組が流行っています。みんなどこか、生活のどこかで明るさや希望を見つけようとしているように感じます。

確かに生活は前に比べると苦しくなりましたし、将来についても不安を感じることはあります。

ただし、変わらず、あなたの親も友人も日本にいますし、ご飯も美味しければ、少し電車に乗れば豊かな自然を楽しむことができます。確かに社会保障は大きく削減されましたが、いざとなれば生活保護がありますし、働けているうちは食べるくらいは稼げるし、両親と同居しているため両親の年金と合わせれば家計としてなんとかなっています。

治安が悪化するのでは、とも心配されていましたが、人口の1/3以上が60歳を超えているためか、変わらず平和です。

「今の時代、仕事があるだけマシだし、節約すれば、なんとか暮らせないことはないかな」。あなたはそう呟き、今日も会社に行きます。

そんな後ろで、「家族、友人との絆、助け合いが大事だと思う」と答える人が増えている、というニュースが流れています。

もしかしたら、財政の危機は、人と人を結びつける機会になったのかもしれません。

まとめ

  • 日本の財政破綻が起きると、円が急落し、物価が急上昇し、生活が激変する。
  • 政府は増税と歳出カットを同時に行う必要が出てくる。特に大きな被害を受けるのは、カットされる年金に頼る高齢者と国に雇用されている公務員。
  • 資産課税が課される可能性が高く、かつ株価の暴落とインフレにより資産が目減りするため、富裕層の資産も大きく影響を受ける。
  • 日本を主にしたビジネスを行なっている企業の経営は厳しくなる。
  • 日本全体として貧しくなるが、一部の海外で稼いでいる企業にとっては円安メリットを享受でき、機会となる。
  • 財政破綻が起きても日本が無秩序になるわけではなく、日常は続く。親、友人との関係、美味しいご飯、安心・安全な環境、といったものは変わらない。人と人との助け合いが、生活を守る鍵となる。

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いちごホテルリートで学ぶ、損しないためのホテル主体型REITの選び方

安定して配当を受け取れることで人気のREIT(不動産投資信託)。その中でも年5%を超える利回りがあり、高配当を好む投資家に人気なのがホテルや旅館などに投資するホテル特化型REITです。

REITは気をつけないと、「見かけの配当」で買った後に、実は思っていたのと違う、となり損をしてしまうことがあります。

今回はいちごホテルリート(3463)を例に、説明していきます。

ホテル主体型REIT(不動産投資信託)とは

REIT(不動産投資信託)は

  • 投資家から資金を集め
  • 資金を元に不動産に投資し
  • オペレーターと呼ばれる事業を行う主体に貸し出て、賃貸収入を得て
  • 得た賃貸収入を投資家に配当という形で還元する(利益の90%以上)

というビジネスモデルになります。どんな事業に貸し出すかにより、オフィス用途、物流用途、ホテル用途、などカテゴリが分かれますが、基本的な仕組みは同じです。

特に宿泊主体型の場合はホテルのオペレーターに物件を貸し出して、そこから賃料を受け取るのが収入源です。

ホテルの賃料の受け取り方には、大きく分けて下記の2種類があります。

  • 変動賃料:ホテルの売上に応じて賃料が変わる
  • 固定賃料:ホテルの売上に関わらず賃料が一定

変動賃料はホテルの調子がよければ受け取れる賃料が大きくなる一方、ホテルの調子が悪くなれば受け取れる賃料が少なくなります。

固定賃料はその名の通り、ホテルの売上に関わらず賃料が一定のため、より安定した賃料が見込めます。

一般的には、旅行の市場が拡大して、ホテル間の競争が激しくないうちは、ホテルの売上が上がりやすいので変動賃料の方が有利で、逆に市場が停滞して、ホテル間の競争が激しい場合は、固定賃料の方が有利です。

ホテル主体型リートの種類

Japan Reit不動産投資ポータルより(2019年11月22日)

現在、上場しているホテル主体型REITは上図の6銘柄(ジャパン・ホテル・リート、インヴィンシブル、星野リゾート、いちごホテル、大江戸温泉、森トラスト・ホテル)です。

規模としてはジャパン・ホテル・リートが圧倒的に大きく約4000億円で最も小さいのが大江戸温泉の230億円。

利回りは4-6%です。

いちごホテルリートのビジネス状況

いちごホテルリート投資法人(3463)は東京証券取引所に上場している宿泊特化型のREIT (不動産投資信託)です。時価総額は340億円程度とREITの中ではかなり小粒です。

いちごホテルリート投資法人2019年7月期決算発表より

いちごホテルリートは2019年11月3日時点で22ホテルを保有しています。全国に幅広く物件を持ち、よく分散されています。

ホテルの売上はシンプルに下記のように分解されます。

売上 = 部屋数 x 稼働率 x 部屋あたり平均単価

つまり、部屋数が変わらなければ、稼働率(部屋にお客さんが宿泊している割合)が高ければ高いほど、部屋あたりの平均単価が高くなれば高いほど、売上が大きくなります。

ホテル系のREITの決算発表の資料ですと、RevPARと書いてあるのを見かけると思いますが、RevPARはRevenue per Roomの略で 、意味は「一部屋あたりの売上」です。

RevPAR = 稼働率 x 部屋あたり平均単価

ですので、この数字を見ればそのホテルがうまくいっているのかどうかがざっくりわかります。

さて、いちごリートですが、そのRevPARが2019年2月から7月までで3%下落しています。

いちごホテルリート投資法人2019年7月

また、この下落基調は8月、9月も続いて、しかも拡大しており、RevPARは前年度と比較して10.6%減です。

いちごホテルリート投資法人 2019年9月度運営状況

深刻な点は、特に「変動賃料」(いちごホテルリートが受け取る賃料がホテルの売上に応じて増減する契約形態)のRevPARの落ち込みが大きいことです。

2つの大きな構造的な要因があります。

1つ目は、訪日外国人の減少です。

JNTO 2019年10月訪日外客統計の集計・発表より

2019年10月の訪日外国人は前年度と比べて5.5%の減少になりました。韓国における日本関連製品へのボイコットの動きが続いており、特に韓国人の観光客の落ち込みが65.5%とかなり激しく落ち込んでいます。

韓国は中国に次いで訪日客を送り出してきている国ですので、韓国からの観光客減少が特にインバウンドに力を入れていたホテルチェーンに影響を与えています。

いちごホテルは一泊1万円以下の市内観光、ビジネス用ホテルが中心で、インバウンドにも力を入れていました。韓国人訪日客の減少が稼働率に影響を与えている可能性が高いです。

2つ目は、ホテル間の競争の激化です。

特にインバウンドを見込んで多くの宿泊業者が宿泊施設を新設して、競争が激しくなっています。例えば、京都市では、過去3年で宿泊施設数が3万施設から4.6万施設まで増加しました(参考:京都市の京都観光総合調査結果)。

京都などは一時期は供給不足でしたが、現在は供給過剰の状態に入りつつあります。

これらの、韓国人旅行者の落ち込み、宿泊施設の供給過剰は短期的には解決が見通せないため、いちごホテルリートのビジネス環境としては厳しいと言えます。

いちごホテルリートの分配金推移

いちごホテルの分配金は3,300円で2017年、2018年と推移しています。

2019年1月にはホテルの売却益を還元したため、5,500円近くの配当がありました。

いちごホテルリート決算資料より

保有しているホテルを売却したため、2020年1月の配当も一時的に4,700円と増加する予定です。

2020年以降の売却益の分配を除いた巡航配当は3,000円程度になる見込みです。

いちごホテルの分配金利回り

J-Reit 不動産投資ポータルより

いちごホテルリートの利回りは2019年11月21日の価格134,000円で5.7%となっていますが、2020年1月期は保有するホテルビスタプレミア京都の売却益を株主還元して、一時的な利回りが高く見えています

2020年1月に予定される配当は4,700円ですが、これは売却益1,700円、保有するホテルからの分配金3,000円に分解できます。

つまり、売却益を除いた保有ホテルからの2020年の利回りは4.5% (6,000円 / 134,000 = 4.48%)であり、物件の追加購入や売却がなければ、2020年の配当以降はこの数字がベースになります。

ホテルの売却益により、一時的な利回りが高く見えていることに注意です。

いちごホテルリートの分配金増加の可能性

いちごホテルリート決算資料より

いちごホテルリートの株価は134,000円ですが、一株あたりの資産は146,580円あります。

これは、所有しているホテルを全て売り払い、投資家に還元すれば、現在の株価以上の価値になる、ということです。

実際、いちごホテルリートはホテルビスタプレミオを購入価格より高く売却しました。得た利益を投資家に還元する予定で、分配金が2020年1月は1,700円程度高くなる予定です。

今後もいちごホテルリートが物件売却を現在の高値で売り続けて、投資家に還元し続ければ、保有するホテルから生み出される4.5%の利回りよりも高い利回りが見込めます。

いちごホテルリートのリスク

保有するホテルからの収益減少リスク

新規ホテルの建設が続き、ホテルの競争が激化していることもあり、全体のRevPARが下落傾向なのが1番のリスクです。

特にいちごホテルリートは変動賃料の割合が高く、稼働率または単価の下落は収益への影響が大きいです。

成長の鈍化、競争に負けるリスク

いちごホテルリートの株価が現在の1株あたり純資産価値よりも低いことは、資金調達をする上での障害となります。

株式市場のいちごホテルリートへの評価が高くないために、低い株価での資金調達をせざるを得なく、それを行うと一株あたりの純資産の減少が起こります。

これは既存の株主にとっては株の価値を下げられることになります。基本的には、1株あたり価値以下での価格の増資は株主に嫌がられる行動です。

つまり、株価が低いと、増資をした時に既存の株主にとってのデメリットが大きくなるため、資金調達がしにくくなり、それゆえにビジネスの拡大がしにくくなります。

そしてビジネス拡大がしにくいと、規模を拡大させることによる固定費削減やブランド価値の向上といった手段が使えなくなるため、同様の手段を使ってくる競争相手に負ける可能性が上がります。

まとめ

  • ホテル特化型REITを見るときにはRevPAR (部屋あたり売上)が増加しているか、減少しているかを見ることがポイント
  • 変動賃料のREITは、より旅行市場が良い、または競争力のある宿泊施設を保有しているときに有利で、固定賃料は市場環境が悪化しているときに有利
  • ホテル特化型REITは、宿泊施設の供給過剰、インバウンドのブレーキ、という2つの市場の流れに直面している。RevPARは下落傾向
  • 保有施設を売却することで一時的な配当を増加させているREITがあることに注意。配当を見る際には、売却益による影響を外して、保有している物件から継続的に生み出される利益を見た方が良い
  • 株価が1株あたり純資産価値よりも低いREITは増資がしにくく、他の規模拡大をしている競争相手に負けるリスクがある

高い配当のREITが気になる方は、こちらもどうぞ。

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インフラファンド(太陽光発電)は債権として優秀な投資先

銀行預金でも国債でも年に1%も増えない中、5%を超える高配当を毎年もらえたらいいと思いませんか? しかも、減配しないかと怯えるような不安定な株ではなく、安定している株が。

そんな安定と高配当を求める人にぴったりの、インフラファンドについて説明します。

インフラファンドとは

インフラファンドとは東京証券取引所に上場している、再生可能エネルギーに投資をしているファンドです。現在は下記の6つのファンドが上場しており、主に太陽光発電に投資をしています。

5%から6%と高い利回りを持っていることが特徴です。

また、比較的新しい投資のカテゴリのため、最も企業価値が大きいカナディアンソーラーでも270億円程度、次点のタカラレーベンで170億円程度とJ-Reitと比べても小粒です。

  タカラレーベン いちごグリーン 日本再生可能エネルギーインフラ カナディアンソーラー 東京エネルギーインフラ エネクス・インフラ
証券コード 9281 9282 9283 9284 9285 9286
株価(円) 125,400 63,500 105,600 120,100 112,000 108,700
2020配当予定(円) 7,005 3,580 6,400 7,300 6,793 5,936
2020配当利回り(税引き前) 5.59% 5.64% 6.06% 6.08% 6.07% 5.46%
時価総額 (百万円) 17,377 6,538 16,516 27,766 5,156 9,981

株価は2019年11月21日時点の情報です。

インフラファンドの特徴

インフラファンドは、国の固定価格買取制度(一定価格で電力を20年間買い取る制度)を利用して、価格が安定している点に特徴があります。

この制度がある理由は、国が再生可能エネルギーの普及を進めたいからです。

具体例をあげます。例えば、カナディアンソーラー・インフラ投資法人(9284)が保有している、宮城県美里町にある太陽光発電所は、買取価格が32円/1キロワット(電気の単位)です。

天然ガスを使った発電のコストは14円/キロワット程度と言われているため、電力会社からしたら、32円で買うのはコスト高です。

しかし、電力会社は他の発電所からより安い価格で電気を変えるとしても、固定価格買取制度のため、この太陽光の発電所からはこの価格で買い取らなければなりません。

また、購入を拒否することも基本的にはできません(電力が溢れてしまい不安定になり、接続制限をせざるを得ない場合を除く)

固定価格買取制度による価格は20年間続く予定です。発電所がどれくらい発電できるかは日照時間により、そして太陽光発電は年によってブレはあるものの、日照時間はそこまでブレません。

 

安定している発電量 x 一定の価格 = 安定した売り上げ

 

これが何を意味するかというと、太陽光発電は国債などの債権に近く、毎年一定の配当が入ってくる可能性の高い商品ということです。

インフラファンドの配当

インフラファンドの配当は主に2つの源泉があります。

タカラレーベン インフラ投資法人ウェブサイトより

1つ目は、発電由来の営業収入です。インフラファンドは発電量に応じた賃貸料を受け取り、そこから費用を引いた利益を分配します(下の表の「利益分配金」です)。

2つ目は、タコ足のように自分の資本から配当を出す方法です(下の表の「利益超過分配金」です)。

利益超過分配金は減価償却費とよばれる、設備の償却で生じる費用から出ます。減価償却は会計上の費用ですが、実際のお金(キャッシュ)のやりとりを含まれないため、実際にはキャッシュが残っており、その余ったキャッシュをファンドが株主に還元しています。

全てのインフラファンドがそこで浮いたキャッシュを配当していますが、その割合は大きくファンドによって異なります。

気をつけた方が良いのは、配当がどちらの源泉から多く来ているか、です。

通常のビジネスでは、設備は使えば使うほど古くなるので、どこかの時点で設備を新しくする必要が出てきます。その際、減価償却費の分を設備の更新に回していけば将来の収入を増やす要因になりますし、減価償却費の分を今の投資家に配分していけば、将来の収入が減る要因になります。

  タカラレーベン いちごグリーン 日本再生可能エネルギーインフラ カナディアンソーラー 東京エネルギーインフラ エネクス・インフラ
2020配当予定(円) 7,005 3,580 6,400 7,300 6,793 5,936
– 内利益分配金(円) 6,326 1,390 3,890 5,632 4,619 2,102
– 内利益超過分配金(円) 679 2,190 2,510 1,658 2,174 3,834
2020利益分配金割合(円) 90.3% 38.8% 60.8% 77.2% 68.0% 35.4%

タカラレーベンは配当に占める利益分配金(発電量に応じて生まれる利益)の割合が90%以上と高いのに対し、いちごグリーンとエネクス・インフラは40%未満と、配当の大部分を減価償却費から生まれるキャッシュから出していることがわかります。

異なった視点で2019年の予想売り上げを見ると、タカラレーベンとカナディアンソーラーは経常利益率が他4つと比べて高いことがわかります。この違いは主に、減価償却費が低いことからきています。

  タカラレーベン いちごグリーン 日本再生可能エネルギーインフラ カナディアンソーラー 東京エネルギーインフラ エネクス・インフラ
売上 (百万円) 2,976 1,118 2,828 4,398 867 1,256
営業利益 (百万円) 1,038 282 828 1,614 306 428
経常利益 (百万円) 897 174 528 1,382 226 312
経常利益 % 30.1% 15.6% 18.7% 31.4% 26.1% 24.8%
減価償却 (百万円) 1,134 638 1,470 1,644 356 660
減価償却% 38.1% 57.1% 52.0% 37.4% 41.1% 52.5%

将来も安定してビジネスが続くか、というのはインフラファンドを選ぶ際の大事な点の一つです。

この点から見ると、タカラレーベン とカナディアンソーラーが優れているように見えます。

逆に、いちごグリーン、日本再生エネルギー、エネクス・インフラは配当の半分以上が利益超課分配金から来ています。将来への投資を先送りしている可能性があるので、要注意です。

インフラファンドの財務状況

  タカラレーベン いちごグリーン 日本再生可能エネルギーインフラ カナディアンソーラー 東京エネルギーインフラ エネクス・インフラ
LTV (借入比率、2019) 52.40% 57.80% 56% 47% 53.20% NA

エネクス・インフラは負債比率を2019年11月時点ではまだ公表しておりません。

借入比率はカナディアンソーラーが47%と低く、いちごグリーンが58%と高めです。

インフラファンドは安定した売上が見込めること、低金利状態が続いているために倒産の可能性は相当に低いですが、財務状況がよければ今後さらに借入を行って規模を大きくしやすいため、借入比率は低いほうが有利です。

インフラファンドについてよくあげられるリスク

天候・自然災害リスク

太陽光発電は天候次第で発電量が変わります。また、台風や地震など自然災害にあった時に太陽光発電施設がダメージを受けることもあります。

天候・災害リスクは防ぐのが難しいリスクです。なるべく発電施設が日本全国に分散していた方が被害が大きくなるリスクが低くなり、望ましいと言えます。

2019年10月のインフラファンドの地域分散

その視点で考えた時、タカラレーベン 、エネクス・インフラは関東に、カナディアンソーラーは九州に東京エネルギーインフラは東北に70%以上の発電施設が集中しており、やや天候・災害リスクは高いと言えます。

一方、いちごグリーンと日本再生エネルギーインフラはよく地域分散されています。

出力制限リスク

九州電力など一部の地域では、必要となる電力需要以上の発電がされている時、発電会社に発電を止める要請を行う、「出力制限」が行われています。

これは発電量の制限に繋がり、収入の減少に繋がります。影響が大きいのはカナディアンソーラー、いちごグリーンです。

カナディアンソーラー決算発表資料2019年6月より

一方、出力制限は行われる頻度は限られることから収益に与えている影響は、現在のところ軽微です。

また、今後は地域を超えた送電の枠を増やすなど九州電力も対策をうっていること、テロ対策施設の建設の遅れから原発が停止して出力制限の頻度が減ること、から今後も出力制限のリスクは軽微だと考えられます。

固定価格買取制度の見直しのリスク

固定価格買取制度による買取価格は、太陽光設備の価格の下落に伴い毎年見直されており、2018年以降は大規模太陽光発電の価格は入札となっています。

経済産業省 固定価格買取制度ページより

一方で、今後の価格改定は、現在すでに稼働している太陽光の買取価格には影響がないため、現状のインフラファンドの経営には影響を与えません。

インフラファンドが今後、新たに太陽光発電事業を購入する際にも、高い価格で契約されている太陽光発電を主に購入すると考えられるため、直近で影響は出ないと考えられます。

インフレーションリスク

インフラファンドは固定価格買取制度により固定の価格となっているため、インフレ(モノの値段が上がること)に弱いという弱みがあります。

ただし、日本はバブル崩壊後、過去30年間の物価上昇は非常に穏やかであり、日本がハイパーインフレーションに陥る可能性が低いと考えるならば、インフレがインフラファンドの価格に与えるリスクもさほど高くないと考えられます。

また、導管性(法人税と配当への課税の二重課税を防ぐ仕組み)が20年しかなく、恒久的でないという課題もありますが、こちらは15年後程度に問題となる話であり、今後政策検討されることになると考えているので、今の時点では大きなリスクではないと考えています。

インフラファンドのリスクについて、参考になるサイト:上場インフラファンドの投資リスク

発電側基本料金

こちらは現在、政策が検討されている段階ですが、送配電網の維持・管理のための費用を発電側にも負担させよう、と言う議論がされています。こちらは導入された場合、再生エネルギー事業者の費用増となるため、事業上のリスクです。

再生エネルギーの事業者が対象になるかどうか、基本料金の設定がどの程度になるか、調整措置が取られるか、などに要注目です。

撤去費用積立

太陽光発電設備の撤去費用を積み立てるべきという議論がこちらも経産省のワーキンググループでされています。こちらも費用の増加に繋がるため、リスクになります。どのような結論になるか、要注目です。

インフラファンドの可能性

東京証券取引所が2020年4月27日より、上場インフラファンド指数を公表する予定です。7銘柄が組み込まれる予定。

指数化されることによって、指数に連動する投資信託ができることが期待され、より株式の流動性が高まることに加えて、インフラファンドへの需要が増えれば株価が上がる可能性もあります。

特に今はESG(環境、社会、ガバナンス)投資がトレンドであるため、太陽光発電に資金が集まる可能性があります。保有者としては楽しみな流れです。

まとめ

  • インフラファンドは利回りが5-6%と高く、配当も安定しており、高配当を求める投資家に適している商品
  • 上場しているインフラファンドは6銘柄あるが、高配当株と同じように、配当余力を確かめる必要がある。資本から配当を出している割合が高い銘柄は要注意
  • 発電収入からの配当が多いのはタカラレーベンとカナディアンソーラー
  • インフラファンドは政策により大きな影響を受けるため、定期的に固定価格買取制度の政策を確認した方が良い

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米国株ブロガーに人気の個別米国株12選/ETF 2選

米国株って最近よく聞くけど、どうやって株を選んだら良いかわからない、と思ったことはありませんか。

上場している株は1000を越えるため、1つ1つの株を見ていくのは大変です。米国株投資の経験者から学ぶため、著名な日本人米国株ブロガー10名の方が保有している銘柄を調べてみました。

米国株ブロガーが選んだ12銘柄

製薬、医療機器、消費者向け商品と幅広くビジネスを展開する、ヘルスケア企業のジョンソンエンドジョンソン (J&J) が1位で、10人中9人が保有していました。

J&Jはビジネスを安定的に成長させていることに加え、配当を継続的に増加させていることが、評価されているポイントかと思います。

銘柄評価はこちら => 【株式分析】J&J (JNJ-ジョンソン・エンド・ジョンソン)配当貴族の有名銘柄

2位以降はVISA、マクドナルド、コカコーラとおなじみの名前が並びます。

5位のAltriaは日本ではあまり馴染みがないですが、アメリカのタバコ会社で、世界で最も大きなタバコ会社の一つです。喫煙者の方にはマルボロの銘柄でおなじみかもしれません。

同じく同率5位のプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)は洗剤のアリエールやシャンプーのパンテーンなどでおなじみですよね。世界中でビジネスを展開する、アメリカの最大手日用品メーカーの一つです。

7位以降は同列です。マイクロソフト、スターバックスもおなじみかと思います。

AbbVieはもともとアボット(Abbott)という医療機器メーカーの一部からスピンオフして作られた製薬会社です。配当による株主還元に積極的で配当の利回りが大きく、高配当株を狙う方に好まれています。

3Mは化学品メーカーです。日用品ですとポストイットなどでおなじみですよね。

AT&Tは通信でいえば日本でいうKDDIのような位置付け(つまり通信大手2番手)で、TV放送も持っているメディア会社です。エクソンモービルは世界大手のエネルギー会社です。

AT&T、エクソンモービルも継続的に成長している上にAbbVieのように配当利回りが高いため、安定して配当をもらいたい人にも人気です。

これらの12銘柄のうち、テクノロジーはマイクロソフトのみであり、米国株ブロガーの方々はより長い間の時の洗礼を受けて成長してきた銘柄を好んで購入している印象です。

12銘柄の過去10年のパフォーマンス

次点で保有率の高かった銘柄

2名、3名の方々が保有していたのは下記の15銘柄でした。

10名中、2名、3名が保有していた銘柄

市場を支配し成長を続けるGAFA (Google, Apple, Facebook, Amazon)のうち、Facebookを除く3銘柄が含まれていますね。

British Tabaco(ブリティッシュタバコ、英国のたばこ会社)、Royal Dutch Shell (欧州のエネルギー企業)、Westpac Banking (オーストラリアの銀行)といった高い配当利回りをもつ株式が含まれています。

1名のみが保有していた銘柄

1名が保有していたのは下記の23銘柄となります。

こちらはユニリーバやネスレなど日用品でもおなじみの銘柄もありますが、主にはアメリカや欧州を中心にビジネスを行なっている企業が並んでいます。

米国株ブロガー10人が選んだETF 2選

米国株ETF(上場投資信託)で保有率が高かったのは下記の2つでした

  • VOO (VanguardのS&P500に価格が連動するETF)
  • SYPD (S&P500のうち、高配当の株に投資するETF)

複数のETFを購入されている方が6人いらっしゃり、平均3銘柄を保有していました。

まとめ

  • 米国株ブロガー10名の保有個別株のうち、12銘柄の保有率が40%を超えていた。特にJ&Jは10人中9人が保有
  • 保有率が高い12銘柄は20年以上にわたって成長し続けている優良企業が多く、テクノロジー企業はマイクロソフトのみ
  • GAFA (Google, Apple, Facebook, Amazon)は次点で人気のグループに入る
  • ETFで人気なのはS&P500に連動したもので、VOOとSYPDが人気

分析を面白いと感じていただいたら、Twitterなどでフィードバックいただけると嬉しいです!

分析方法

ブロガーの選定基準

元となるデータ

順序は2019年11月13日時点のブログ村米国株ランキングに準じています。

30代夫婦の家計簿 – 収入、支出、財産、住宅ローン残高

いわゆる「平均的な」30 代夫婦の家計簿はどのようでしょうか。 何に一番お金を使っているのでしょうか? 将来に向けて着々と貯金をしているのでしょうか? それとも、住宅ローンや家賃を支払うと、ほとんど収入が残らないのでしょうか?

国の統計をもとに、平均的な30代夫婦の家計簿をみていきたいと思います。

30代、世帯の平均収入

出典:厚生労働省 平成30年「国民生活基礎概況」

厚生労働省の2017年世帯データを使います。データによると、2017年の30代の世帯当たり平均所得金額は574万円です(こちらは単身、二人以上世帯の両方を含んでいます)。

社会保険料、所得税、住民税で20%程度引かれると仮定すると、手取りの年収は460万円。月になおすと、30代の世帯の手取りは平均して月38万円となります。

30代、2人以上世帯の支出

家計調査(2018年)によると、二人以上世帯、30代の支出の平均は下記のようになります。毎月、合計月28万円の支出です。

項目金額割合
食費¥68,63024.58%
交通・通信¥47,53616.76%
その他¥43,77615.57%
娯楽¥28,74310.07%
住居費¥23,1219.06%
光熱費・水道¥18,9136.85%
被服¥13,1204.68%
教育¥13,5234.61%
家具・家事用品¥10,9083.97%
保険医療¥10,5933.85%
合計¥278,863100.00%

データによると、世帯主の平均年齢は35歳。持ち家率は63.7%と約3人に2人は持ち家を持っています。30代、2人以上世帯の女性は1人に2人が就業しており、同居している人数の平均は3.7人です。

支出を割合のグラフにすると、どこにどれくらい支出しているのかわかりやすくなります。

出典:家計調査結果 2018(総務省統計局)

食費が約1/4を占め、交通・通信が次に大きな割合を占めています。

これは自動車関連費用(保険、車検など)で毎月平均27,000円かかっていることと、通信費が約15,000円かかっていることによります。

管官房長官が通信費の値下げにこだわる理由がわかるような気がしますね。

住居費は23,000円。大都市の家賃の水準から比較するとかなり低く見えますが、これは、3人に2人は持ち家のために家賃を払っていないことと、住宅ローン返済は上記の消費から除かれているためです。

その他は交際費やお小遣いや美容サービスなどです。

30代、2人以上世帯の貯蓄

出典:家計調査結果 2018(総務省統計局)

総務省の家計調査を用います。家計調査では20代、30代の貯蓄を40歳未満とまとめているため、上のデータは40歳未満のデータです。

貯蓄残高は単純平均で600万円です。定期預金が最も高い割合を占めています。

項目金額(万円)割合予想利回り(年, %)
定期預金27846%0.35%
普通預金14124%0.001%
貯蓄型生命保険11920%0%
有価証券(株・債券など)386%6.15%
その他264%0%
合計600100%0.55%

利回りの前提は定期預金 (5年、オリックス銀行)、普通預金は3大メガバンク。有価証券は日経225の過去5年のトータルリターンインデックスからです。

これはかなり興味深いです。2000年以降、ほとんどの定期預金の利回りが0.5%未満になり、15年以上経つにも関わらず、いまだに平均的な家庭で貯蓄の半分近くが定期預金です。

また、貯蓄型の生命保険にも金融資産の20%程度を割いています。

最も利回りが高い有価証券の割合はわずか6%。平均して38万円であることから、NISA(少額投資非課税制度)はこの世代であまり活用されていないことがわかります。

平均的な40歳未満が世帯主の家庭の予想利回りは0.55%です。

これは100万円を10年間預けて、約6万円を受け取る計算になります。

30代、2人以上世帯の負債

出典:家計調査結果 2018(総務省統計局)

20代、30代の負債残高の平均は1,248万円で、9割以上は土地・建物取得のための住宅ローンです。

これは負債のない人も含めた「平均」のため、実際に負債をもっている人(ほぼ住宅ローン)の負債残高平均は2,030万円となります (=1248万円/61.5%)

出典:家計調査結果 2018(総務省統計局)

この負債は2015年から年々増え続けています。要因としては、住宅価格の値上がりにより、住宅購入時に必要な住宅ローンの額が増えたことが考えられます。

住宅価格の値上がりを反映してか、平均的な貯蓄額も600万円前後を過去5年推移しています。

30代、2人以上世帯の収支

2,000万円の住宅ローンを20年で組んでいる場合支払い金利を1%と仮定した場合、約9万円になります。

あくまでも平均の数字ですが、38万円の世帯の手取りの中から、住宅ローンで9万円を支払い、さらに支出として28万円近くを支払う、と手取りとして残る金額はあまりないかもしれません。

これがNISAやiDeCoといった明らかに有利な仕組みの利用率が30代でもなかなか上がらない理由とも考えられます(NISAの30代の年代別比率は2019年6月でも12%)

出典:金融庁 NISA・ジュニアNISA利用状況調査

まとめ

  • 30代の平均世帯年収は574万円
  • 30代の2人以上世帯の支出は平均して月28万円。食費が25%、交通費・通信費の負担が17%と重い
  • 30代の2人以上世帯の貯金額は600万円で、ほとんどが定期預金か普通預金。株式・債権投資はわずか38万円。予想利回りは0.55%。
  • 30代の2人以上世帯の3人に2人は持ち家をもっている
  • 負債をもっている30代世帯の平均負債額(9割以上が住宅ローン)は2,000万円。
  • 住宅ローン、あるいは家賃を支払い、さらに平均支出28万円を行うと、月々の残りは数万円。
  • 30代の働き世代は住宅ローン・または家賃支払いのため、老後への蓄えがしにくい状況にあり、NISAの利用も約12%と普及はまだまだ。

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