海外MBA受験から留学開始までのまとめ

海外のMBAを受験する場合、準備から留学するまでは長いプロセスになります。

海外のMBA取得に興味を持つ方へ向けて、MBAの受験準備から留学の開始までスムーズに進むよう、流れを解説しています。

MBAを受験するまでの流れ

MBA合格後の出発までの流れ

MBA卒業後の選択について

ハーバードMBA取得に実際にかかった費用

海外MBAの留学にかかる費用は2年間で20万ドルを越えると言われています。大学がかかる金額を発表していますが、実際には追加で費用がかかります。実際にはいくらかかったのかを紹介いたします。

数字は2020年入学の前提で、1$ = 108円として計算しています (2019年9月の為替より)。

単身夫婦
学費 (2年間)$146,900$146,900
教材費 (2年間)$5,100$5,100
健康保険代(自分、2年間)$9,800$9,800
健康保険代 (家族、2年間)0$15,400
住居費 (21ヶ月)$31,500$46,200
 固定費合計$193,300$223,400
変動費(食費、交通費、家具代、旅行代など)$42,000$48,300
合計 (US$)$235,300$271,700
合計 (円 1$ = 108円)2540万円2930万円

学費: $73,440 (1年)

1年間の学費は793万円です。卒業まで2年間あるため、単純計算で学費だけで1,600万円となります。僕が2017年に卒業した時には$72,000でしたので、物価の上昇に合わせて、毎年着実に1%程度ずつ上がっていくと考えた方が良いです。

教材費: $2,550 (1年)

1年間の教材費が約28万円なので、2年間で55万円です。こちらは教科書や印刷して渡される紙のケースなど。こちらも年々1%以上上昇しています。

健康保険代: $4,900 (1年、単身の場合)

健康保険代は単身の場合、53万円、夫婦の場合は136万円となります。健康保険に入らないとアメリカでは医療費が怖すぎることになるので、こちらも必要経費です。単身の場合、2年間で105万円で、夫婦の場合は270万円です。子供がいる場合、一年あたり$4,000(44万円)追加です。

住居費・家賃: 月々$1,500 (寮)/$2,200 (1ベッドルーム)

家賃は寮に住む場合は月々$1,500以下ですみますが(部屋の広さにより家賃が異なる)、OWAやSoldiers Field Parkというハーバードビジネススクール敷地内のアパートで1ベッドルームを借りる場合は月々$2,200はみておいた方が良いです。

2ベッドルームは$3,000近くしますが、シェアすることで家賃を削減することもできますので、2年目に一緒に住む人が見つかればシェアをして、寮と変わらない程度の家賃にすることもできます。

私の場合は一年目は寮の一番小さい部屋でしたので月々$900程度で、二年目は妻が合流したこともありSoldiers Field Parkという敷地内のアパートで1ベッドルームを借りたので、そちらは月々$2,200程度でした。

単身前提でMBA期間中の21ヶ月をキャンパス内の寮で借りたとすると、$1,500 x 21ヶ月で$31,500(約340万円)です。夫婦・子連れの場合はワンベッドルームで$2,200 x 21ヶ月で$46,200 (約500万円)です。

固定費合計

学費、教材費、健康保険、家賃という固定費を合計すると、単身でも固定費だけで$193,300と2,100万円近くになります。夫婦でワンベッドルームを借りる前提ですと、$222,680と2400万円になります。

授業料は奨学金がもらえれば割り引かれる可能性がありますが、なかなか厳しい金額です。

ちなみに保育園(Day Careと呼ばれます)に預ける必要がある子供がいて、保育園に預ける場合、1日あたり$100はかかりますし、ビジネススクール内の保育園はさらに高いので、月々$2,000は追加でかかる可能性があります。

変動費(食費、交際費など)

HBSは単身で月々$1,800 (約20万円)、夫婦で月々$2,176(役23万円)としていますが、実際には+10%程度かかると思っていた方が良いです。

なぜかと言うと、セクションでの旅行や友人との交際費でそれなりの額を使いますし、生活のセットアップのために家具を揃える必要があるためです。

切り詰めれば夫婦でも月々$1,800ですむかもしれませんが、ボストンの物価は日本より体感的には1.5倍くらいですので、レストランに食事に行くとすぐに一人あたり$30-$40くらいはかかるため、近くのTrader Joe’sというスーパーなどをうまく活用する必要があります。

単身だと21ヶ月で460万円、夫婦だと520万円はみておいた方が良いかと思います。

合計で費用はいくらかかるのか

単身の場合ですと、固定費で2,100万円、変動費で450万円の、計2,550万円が21ヶ月のハーバードMBAでの生活でかかる費用となります。

夫婦の場合ですと、固定費で2,400万円、変動費で530万円の計2,930万円が21ヶ月での生活費となります。

私の場合は1年目は単身でしたが2年目は夫婦でしたので、中間程度の、2700万円程度でした。

そのうち、1年目と2年目は3ヶ月のインターンシップで働ける機会があり、この期間にインターンシップ先によっては1ヶ月で80-100万円程度支給されるため、3ヶ月で240万円稼げるとすると、単身の場合は差額の約2,300万円が必要となる金額となります。

どうやって費用を賄うか

社費の場合は会社が授業料や生活費などを出してくれるので問題がないと思いますが、私費の場合は2,300万円を確保するのはかなり大変です。

借り入れを行う方法もありますが、奨学金を取るのがおすすめです。奨学金を得る方法については、下記のページをご覧ください。

次の記事へ >> MBA受験 – 海外留学向けの奨学金まとめ

MBA留学の全体像へ >> 海外MBA受験から留学開始までのまとめ

ハーバードビジネススクールMBAの価値

MBA受験-ビジネススクールで得られるもの」、でMBAの価値として「A Good Business Foundation」、「Networking」、「Career Change Opportunity」の3つが主要な価値で、「Quality Time」、「Brand」の2つを加えた計5つが価値と述べた。

それらが得られたというのはそうなのだが、最初の3つについては得られたものについてより具体的に表現できるようになったことと、少し感じ方が変わってきたので、今回続編を書いてみようと思う。

内容はMBA一般というよりも、僕がHBSで得られたものについて、だ。

Personal Development

最も大きな成果は人としての成長だと思う。HBSでは1年目、2年目ともに人生の価値観について考えさせられる機会があり、その機会を経て、人生についての理解が深まった。

BSSE (Building Successful and Sustainable Enterprise)でClayton Christensenが行う最後の講義の”How will you measure your life?”もその一つだ。彼は実務家としても、教授としても成功した教授だが、彼が最も大事にしているのは妻と5人の子供を育てることだと言う。そのためにも、彼は土曜日と日曜日は家族のためにあてる時間としてコミットして、BCGで働いていた時から土日は働いていなかった。何を人生において成し遂げたいか、そのためにどのように自分の時間という資源を配分しているか、それをどうやって実現するか、という彼の講義は非常に示唆に富んでおり、彼の講義を受けることができたのは幸運だったと思う。

同じテーマでFounders’ DilemmaのShikhar Ghoshも「幸せに最も影響を与えるのはどのような質のRelationshipsを築けているか」であり、”Relationships trump everything”ということを教えてくれた。人生における自分なりの成功の定義は何か、それを実現するために日々どう行動するべきか、について、HBSは自分なりの答えを見つけるための機会をくれた。

人との関わりを通じて、リスクについての考え方も変わった。HBSには本当に多くのゲストが来る。起業家もいるし、大企業の役員もいるし、政治家もいるし、訪れるゲストの幅が広い。彼らの生き方を聞き、彼らと話していて気づくのは、別に彼らが僕らと別次元に住んでいる人ではないということだ。

いわゆる自分の人生を生きている人とそれ以外の人の違いは、リスクを取っているかどうか。彼らが口々に言うのは、「リスクを取らないことがリスクだ」、と。多くの教授もその見方を後押しする。一度や二度ではなく、2年間毎日のようにそういった話を聞いていると、自分もやれるという自信が生まれてくる。挑戦をしての失敗は僕を強くしてくれる。

HBSは僕に「やればできないことはない」という自信をくれた。

HBSはBusinessについて学ぶ場かと思っていたが、実は人生について学ぶ場だった。

自分の本当にやりたいことは何なのだろうか。何を自分の人生において大切にするべきであろうか。21ヶ月という比較的長い時間があったため、そういった質問を自分に問いかけ、考え、妻や友人や教授と議論する時間が持てた。これにより、自分がこの先の人生を生きる上での土台を作ることができたように思える。

僕自身は、実はHBSに来る前にはもう自分の価値観はある程度固まっていてそこまで変化はないかと思っていたのだが、振り返ってみるとかなりの変化があったように思える。これは予想していなかったが、得られたものの中で最も大きかったものの一つだ。

A Good Business Foundation

ビジネスについては、幅広い視点を身に付けることができたと思う。特にLEAD (Leadership)の授業が素晴らしく、リーダーシップについては一生使えるような考え方を学べた。

HBSの1年目の必修科目はよく練られており、ケースメソッドでビジネスを包括的に学べるようになっていた。大きく分けると、マクロ経済・グローバライゼーション(BGIE、FIELD 2)、リーダーシップ(LEAD, LCA, FIELD 1)、ファンクション(STRAT, MKT, FIN1/2, FRC, TOM)、アントレプレナーシップ(TEM, FIELD 3)の計4つ。

ケースメソッドでは様々な経営の場面において、①何が起きているのかを分析し、②何をするべきかを立案し、③どう実行すれば良いのかのアクションプランを立て、④実行の際の障害やリスクとそれらを解決または減らす方法も立案する、ということをひたすら行うため、「どういう場面で、何を、どのように考えれば良いのか」、が思考のプロセスとして築かれる。この思考のプロセスが、より成功確率が高い意思決定をするために役立つと感じる。

一方、2年目は全て選択科目で、自分の伸ばしたい分野について学ぶことができた。僕の場合、戦略(Strategy and Technology、Strategic IQ)、組織(General Management Process and Actions、Designing Competitive Organizations)、ヘルスケア(U.S. Healthcare Strategy、Innovating in Healthcare)、アントレプレナーシップ(Founders’ Dilemma, Launching/Scaling Tech Ventures)、ネゴシエーション (Negotiation)、ファイナンス(Entrepreneurial Finance)、マクロ系(Globalization and Emerging Markets)と幅広く履修した。

得られたものの一例は、戦略的な思考がある。こちらに来て学び始めて、僕の場合、プロダクトマネジャーとしてプロダクトレベルの「戦術」や「アイデア」は考えていたが、事業レベルの「戦略」についてきちんと考えることができていなかったことに気づいた。

僕は新しい機能やデザインでの商品の差別化など、プロダクトマネジャーとして単年度で結果を出すような施策は考えて実行してきたが、中長期でどのように持続可能性のある競争優位性を築いていくか、そのためには組織に対して影響をどのように与えていくべきか、という観点が抜けてた。あの時の僕が今と同じように考えられたら、より戦略的な提言と実行ができたと感じる。

もう一つの例は、リーダーシップだ。僕は前職での経験を通じて、人に動いてもらうためには「情熱、論理、思いやり」が必要であり、そのためには自分が最もお客さんや商品、技術を理解して、チームを動かしていく必要がある、と考えてた。

今でもその考え方は残っているが、今ではチームをどうやってデザインし、立ち上げ、マネージするかについて、より多くの要素があることを知っている。前職で初めて人のマネジメントを経験した時にはマネジメントについて「何を、どう考えれば良いのか」、が全て手探りで一つずつ自分の使える道具を探していく感じだったが、今では以前は知らなかった道具があることを知っているので、その道具を使って、より良いリーダーシップがとれる気がしている。

MBAに来るまでは、学習から「知識」がつくのかと思っていたが、実際には様々な状況における「思考方法」や「視点」を学んだという方が近い。

この学びがどの程度役に立つのかは卒業後試してみないと分からないが、少なくとも僕は自分の思考の広さと深さが広がったことには十分の価値があったと思う。思考の広さと深さは一生磨き続けていくべきもので、MBAはそのベースを作ることを助けてくれた。

Networking/Friendship

HBSは仕組みに優れた大学であり、その最たるものが「セクション」という仕組みだ。HBSの場合、セクションと呼ばれる93-94人のクラスで1年目を過ごし、同じ教室で、授業を一緒に受ける。授業の大半がケースディスカッションのため、だんだんとその人の価値観や人となりも分かってきて、不思議な親近感を抱くようになる。

1年目は何をするにもセクションが主な単位となるので、自然と独自のカルチャーができてくる。セクションごとに卒業後も5年ごとに集まるReunionという機会が用意されているため、この友人関係は(HBSと関わり続ける限り)一生続くものとなる。卒業した時点で誰もが93-94人の一定以上の深さを有する友人を持て、かつ5年後も彼らと会うために戻って来ようと思わせるような帰属感を持たせるこのセクションという仕組みは、とてもよくできている。

加えて、セクションが全てではなく、1年目はディスカッショングループやFIELD 2という新興国のコンサルティング・プロジェクトでセクションを跨いだ人間関係が築け、2年目の授業でさらに人間関係が広がる。Trekの運営や参加、カンファレンス運営、その他クラブ活動等々で、何だかんだでHBSだけで2年間で300人は友人・知り合いと呼べる人はできると思う。ボストン自体も他の大学の学生や研究者の人たちとの出会いの機会が豊富で、出会える人の幅も広い。僕の場合、この2年間でFacebookで新たに繋がった人の数は400人だった。

また、HBSはAlumniとの結びつきも強く、驚くぐらい卒業生が後輩をサポートしてくれる。こちらも卒業後に出会うことができる人の幅を大きく広げてくれる。

世界中に、助け・助けられ、共に刺激し合える友人がいるというのはとても幸せなことだ。この幅広さと深さの人間関係は、僕の一生の財産になるだろうし、全員とは難しくとも、特に仲の良い友人とは今後も定期的に連絡を取り合うことで、より関係を深められるようにしたいと思う。

Career Change Opportunity

HBSを出たことによって、就労の機会が大きく広がった、というのは実感としてある。僕自身、地域と業界を変えて米国で就職することにしたが、これはMBAを経なければほぼ無理であっただろう。

一方で、友人と話していて、見えていなかった現実もあるなと感じた。一つには、インターナショナル生にとってのMBA後の米国就労の厳しさ。米国で就労するためには、企業にH1-Bビザという抽選で取得するビザの申請をしてもらわなければならず、このビザサポートをしている企業が本当に少ない。いわゆるスタートアップ系企業はほぼビザサポートをしないと思っていた方が良い。中規模くらいの会社でも就労のための門がそもそも空いておらず、文字通り門前払いだし、大企業でも人気のあるところは競争が厳しい。

ネットワーキングで門をこじ開ける方法もあるが、狭い道だ。科学技術の学位取得者に関しては(特にコンピューターサイエンス)より門が開いているので、単に米国での就労が目的なのであれば、エンジニアリングの専門で大学院に行った方がずっと良いと思う。

二つ目は、年齢が上がってから来ると、納得いくポジションが見つかるとは限らないことだ。米国MBAの平均入学年齢は約28歳で、卒業が30歳前後となる。いわゆるMBA採用をしている企業では、入社時点が実務経験3年+MBA2年の28歳と、実務経験7年+MBA2年の32歳を同じMBA卒として同じポジションで採用することが多いため、実務経験が長い人ほどキャリアアップというよりも、キャリアの横滑りの可能性が高くなる(前者がスタッフ→MBA→マネジャーなのに対して後者はマネジャー→MBA→マネジャー、など)。

特に欧州から来る学生はやや年齢が上のことが多いので、この点でオファーを受けるべきかどうかで悩む学生が多いようだ。

* * * * *

全てをひっくるめて、僕がHBSに来て良かったかと聞かれれば、間違いなく良かったと思う。21ヶ月の機会費用や計24万ドル以上のコストは非常に高いが(奨学金がなければ本当に苦しかった。。。)、生き方、友人、仕事の土台を築けたし、今後の人生をサポートしてくれるようなネットワークへのアクセスや「HBS卒」という一定の信頼を得ることもできた。

MBAを考える人は、検討しているプログラムの学業の内容だけでなく、卒業生が何を得ているかを上記のような観点で検討してみると良いのではないかと思う。

この記事を読んだ方で、MBAに興味を持たれた方は、「MBA受験から卒業までの流れ (準備から卒業まで)」をご参考に。

MBA取得後にアメリカ就職する時の3つの壁とその越え方

アメリカのビジネススクールへ留学するアメリカ人以外の学生にとって、卒業後の進路として魅力的な選択肢として米国での就職があります。分かりやすいメリットとしては、以下の5つがあります。

  1. MBA採用という仕組みをすでに多くの企業が持っており、昇進速度の早いLeadership Development Programなど魅力的なプログラムが多い
  2. 給与水準が他国よりも高い($135,000/yearがHBSでの卒業後の平均給与、これにボーナスや転勤費用補助などその他の福利厚生が加わる)
  3. 労働環境が相対的に良い(米国では日本よりも労働時間が相対的に短い職場が多い)
  4. 世界中から優秀な人が集まっており、働いていて楽しい
  5. 子育てをする環境としても良い(高額だが、保育所やNannyなど子供を預ける仕組みが整っている上に良質な教育機会が多い)

一方で、これらのメリットを求めてインターナショナル生が米国労働市場に殺到するため、競争は結構厳しく、米国就労には3つのハードルを超える必要があります。ハードルとその越え方について説明します。

ビザ(Visa)のハードル

最も大きなハードルはビザの壁です。アメリカ国籍や永住権(グリーンカード)を保有していない場合には、米国で就労し続けるためには労働ビザが必要です。

米国の大学を卒業したインターナショナル生の場合、OPT (Optional Practical Training)というプログラムで1年間は労働ビザなしで就労できますが、その期間を超えて就労しようとすると一般的にはH1-Bという労働ビザが必要となります。

このH1-Bですが、米国人の雇用を守るために年間の発行上限が定められており(20,000が大学院以上の学位保有者の優先枠で、65,000がそれ以外の全て)、それを超えた人数が応募した場合は抽選、とかなり留学生泣かせの作りになっています。

近年では200,000人以上が応募しているために、大卒の資格で応募した場合にはH1-Bが取得できる可能性は1/3以下。加えて、トランプ大統領の政策により、より移民抑制の方向に舵を切ろうとしているために、このH1-Bの制度自体がどうなるのかも不透明です。

ビザは個人にとってもリスクですが、企業にとってもせっかく採用してトレーニングした人材が国外に離れるために離職してしまうということでリスクとなります。おまけにH1-Bは企業にスポンサーしてもらう必要があるために、多くの企業はその手間やコストを嫌がります。

結果として、MBA生をターゲットとした採用枠でも、90%以上の企業はそもそもインターナショナル生は採用しません。残りの10%以下の枠でも一般的にはすでに労働ができることが決まっている米国国籍保有者・永住権保持者、もしくは過去にH1-Bを取得していた留学生(H1-Bの延長、とすれば抽選のプロセスから逃れられる)を採用する方が企業側にとってはリスクが低いため、ビザなしの応募者はそもそもかなりのハンデを負っての戦いとなります。

ビザの問題は個人の力でどうにもできないこともあり、悩ましいです。米国で就労したいという人はH1-Bのシステムが新しい大統領の下でどう変わるかを注視しておいた方が良いでしょう。

アメリカのMBAであれば移民法を専門にした弁護士によるビザに関するセッションが年数回開かれることが多く、個々人の状況に応じたアドバイスも受けられるため、積極的に利用するといいかもしれません。

言葉・文化のハードル

これは言わずもがなですが、米国で就労する場合には英語でコミュニケーションをとれる力があることが大前提となります。インターナショナル生の中でも同じ土俵で戦うのは、多くが高校や大学から米国に来て米国で就業した経験のある人や英語が母語の人なので、彼らの方が英語のレベルが高いです。

加えて、米国文化への理解もコミュニケーションの際に重要となるため、はじめてアメリカに留学に来る留学生には辛い点の1つです。例えば、ネットワーキングの機会でどれだけ会話を盛り上げられるか、は文化への理解度に結構左右されるので、英語が話せてもこの点で難しさを感じるインターナショナル生も多いです。

競争のハードル

ビザと言葉・文化の壁に問題がなかったとしても、米国は世界各地から就労したい人が来ることもあり、そもそもの競争環境が日本よりも厳しいです。

日本での就職活動以上に自分の強みと会社のニーズを理解し、どうして自分なのか、をうまく伝えることが求められます。特に競争相手となる米国人のMBA生は米国の就職活動というゲームのルールを理解した上で、かなりの時間を使って就職活動に挑むので、レジュメ、カバーレター、ネットワーキング、インタビューの各プロセスが高いレベルに仕上がっていないと、オファーまでたどり着くことは厳しいと思います。

いかにハードルを超えるか

そうは言っても、これらはあくまでもハードルであり、飛び越えれば良いだけの話です。ビザについてはそもそもインターナショナル生をスポンサーしている企業に絞る、もしくはネットワーキングを通じて窓口をこじ開けることができます。

言葉・文化についてはせっかく米国MBAにいるのですし、日々の生活で改善していけば良いです。競争の壁についても、自分が強みを有する分野を狙えば、十分戦えます。

MBAでは付属のキャリアセンターがレジュメやカバーレターを見て直してくれますし、キャリアコーチがどのような企業にどうやってアプローチをすれば良いかを一対一でアドバイスをくれます。ネットワーキングやインタビューについても練習の機会を提供してくれることが多いため、一般的には就職活動に必要な資源をMBAは提供してくれるでしょう。

僕の周りのClass of 2017のインターナショナル生では、大学内の就職活動支援やインターンを通じてMcKinsey、BCGなどのコンサルティング、Goldman Sachs、UBSなどの投資銀行、Amazonなどのテック系企業、Danaher、Samsung、Fordなどの大手製造業からオファーをもらった人が多いです。

これらの企業の特徴はグローバルに展開しており、もしH1-Bが受からなくても米国外への転勤が可能な企業ということです。海外オフィスのない中小企業やスタートアップは正攻法では門が開いていないために厳しいですが、個人的なネットワークを使ってオファーをもらい、米国に残る人もいます。

そもそもアメリカに残る必要はあるのか

また、昨今では母国へ帰る方が良いオプションとなることも多いため、なぜアメリカに残りたいのか、をはっきりさせた方が良いかもしれません。

米国MBA取得者が少ない日本のような国であれば、帰国した方がより差別化ができ、就きたい仕事に就きやすいです。例えば、アメリカのプライベートエクイティやヘッジファンドについては、米国本社についてはインターナショナル生が入るのはほぼ不可能と言われるくらい狭き門ですが、母国に帰れば支社の門が開いていることがあります。また、スタートアップの日本支社立ち上げの機会もあるようです。

実際、中国やインドのように急速に発展している国の出身者の場合、帰国した方がより将来性があると考える人も多く、最近はアメリカに無理に残ろうとせず、帰国する人の割合が増えてきています。母国の方が家族や友人がおり落ち着くし、ご飯も美味しい、というのもよく聞く理由の一つです。

アメリカ、自国以外に行くという選択肢

アメリカ、自国、以外の国に行くという選択肢もあります。アメリカのトップスクールのMBAのメリットとしては世界中に就労するためのパスポートを与えてくれ、特に英語圏であれば移動が比較的しやすい印象です。

米国内でオプションを探しても良いし、自国へ帰っても良い。あるいはシンガポールやロンドンなどの英語圏に行っても良い。特に、HBSは世界中に卒業生がいてネットワークがあること、HBSブランドが評価されていることなどから、行きたい場所にアプローチしやすいです。

こういった世界のどこでも働けるようになるための下地は日本で教育を受けただけではなかなか持つことが難しいため、世界のどこでも働けるようになりたい、と考える人にとってはアメリカのトップスクールのMBAは良いパスポート取得の機会になるかもしれません。

MBA受験 -HBS訪問でのキャンパスの回り方

Round 1が近いためか、10月は日本から訪問される方が多い月です。在校生にコンタクトされている方は在校生が案内する場合が多いかと思いますが、特にアポイントなしで来られた時のHBSについての回り方について書いてみます。前提はTaxi、UberやLyftでOne Western Avenue側に着いたことを想定しています。地図はこちら

そもそもキャンパスビジットをどのように行うのが効率が良いかは「MBA受験 – キャンパスビジット (Campus Visit)」をご覧ください。

HBS定番観光コース (約50分)

    1. iLab/Batten Hall (10-15分): Harvardの学生を対象とした起業推進のための施設で、One Western Avenue側にあります。ビジネスアイデアとチームを申請して、承認されると無料のコワーキングスペースとして使えます。無料の飲み物やスナック、壁一面をホワイトボードとして書ける会議室、仕切りや決まった席のないレイアウト、などアメリカのコワーキングスペースらしい特徴を持った施設です。起業の際の法律やコーディングなどに関するレクチャーも月に2度くらいのペースで行われ、参加することができます。iLabの見学が終わったら、北のSpanglerへ移動してみましょう。
    2. Spangler Lawn (5分): Spangler前の芝生です。9月などまた暖かいうちは朝に1年生がグループでディスカッションをしている姿が見れます。晴れた日のお昼には食事をしていたり、ケースを読んでいる人が多いです。夕方にハッピーアワーが開かれたり、アイスクリームが配布されたりとHBS生がセクションを越えて集まる場所になっています。芝生はよく手入れされており、夏、秋はいつもみずみずしい緑の芝生があり、過ごしていて気持ち良いです。12月以降は雪に覆われていることが多く、寒さに震えながらHBS生は春を待ち望むことになります。ベンチに座って少しのんびりしたらSpanglerへ入ってみましょう。
    3. Spangler (10-15分): Spanglerは教室棟のAldrichに並んでHBS生活のメインとなる棟です。1FにはSpangler Diningという食堂があり、ビュッフェ形式の食事に加え、その場で調理してくれるサンドイッチ、アジア系、日替わりのメニュー、カフェなどがあります。学生の多くがお昼はここで食事を買って、食堂内の席や外で友人と食べます。食堂以外の1Fはロビーになっており、ケースを読んだり、PCを操作していたり、会話を楽しんでいるHBS生の様子が見えます。ロビーはかなり豪華で、ホテルのロビーのよう。Diningが空いていればコーヒーを買って、ロビーで休んでも良いかもしれません。地下に行くと、Spangler Grillというもう一つの食堂やケースを受け取るためのポスト、郵便局のUPSSや生協があります。地下から地下通路を通ってAldrichという教室棟に移動してみましょう。
    4. Aldrich(10分): Aldrichは教室棟です。教室には010、011などと番号が付いています。1年生は同じ教室で授業を受けるため、1年生の教室には常に名札が置いてあり、どの教室が1年生の教室かわかります。HBSはケースディスカッションが主な教授法のため、教室はすり鉢型になっており、どの席からでも議論に参加しやすいようになっています。一番上の段の席は教室全体が見渡せるためにSkydeckと呼ばれ、多くのセクションではSkydeckがその週に起こった面白い出来事や面白い発言を金曜日に発表したりします。授業中でなく、教室が空いていれば、様子を見ても良いかもしれません。
    5. Baker Library (10分) : Aldrichの教室を見終わったら、1Fに上がる、もしくはAldrichから地下通路を使って、Baker Libraryに向かいましょう。Baker Libraryは1Fがロビー、3FがLibraryになっています。3FのLibraryは学生証がないと入れないですが、入り口から中は見えるので覗いてみましょう。机がいくつもあり、時間帯によってはケースを読んでいるHBS生が見えるかと思います。Libraryもかなり綺麗な造りで、ホテルのようです。中の見学が終わったら、正面から出て、チャールズ川の方へ向かいましょう。振り返ると、米国旗とHBSの旗が風ではためいている裏にBaker Libraryが立つという、なかなか絵になる光景が見れます。写真を撮るのも良いかもしれません

Harvard Squareから川を渡って来られた方であれば、順序としては逆になります。

他にもジムのShad、学生寮のChase、Morris、家族用のアパートであるOne Western AvenueやSoldiers Field Park、Executive用の近代的で立派な施設であるChaoやTataなどもありますが、基本的には学生か居住者しか入れないために、個人で見て回るには上記の5施設が基本的にはメインとなるかと思います。春、夏は外が気持ち良いので回るのにはオススメですが、冬も地下通路があるのでSpangler、Aldrich、Baker Libraryがあるので学内を回るのはそこまで大変ではありません。

参考になれば!

Skydeckで取り上げられた一例

一例を挙げると、僕は汚職に関する授業で、教授が「汚職の定義は公的機関に勤める人に金銭・あるいはそれに相当するものを渡して自分に便宜を図ってもらうようにすること」と言った時に、「アメリカではdonationとして政治家にお金を渡して、ロビー活動を行い、自分に便宜を図ってもらうようにしているけれど、それと汚職はどう違うのか?」、と質問したらクラスから笑いが起きて(シニカルな見方を直接的に質問したからでしょうか)、それがSkydeckになったりしました。

MBA受験 – キャンパスビジット(大学訪問)をしよう

受験する予定の大学を訪れる、いわゆる大学訪問については、応募前に行なった方が良いのかどうかを迷う方もいらっしゃるかと思います。

「志望度が高い学校はした方が良い、訪れることがほぼ必須になる大学については特に」というのが僕のアドバイスです。

大学訪問を行うメリット、デメリット、どの大学で影響がありそうなのか、どのように在校生にコンタクトをとれば良いか、どのような準備をするべきか、について書きます。

大学を訪れることで得られるメリット

  • 自分が暮らすことになる街がどのような環境かを知ることができる
  • 大学、学生の雰囲気が自分にあっているかどうかを感じることができる
  • 訪問した痕跡を残すことで、大学に志望度の高さを伝えることができる

特に3点目のキャンパス訪問については訪問が合否に大きく影響する大学があるために、注意が必要です。

大学を訪れることによるデメリット

旅費と旅行のための時間が主なコストとなります。特にアメリカの西海岸、東海岸、ヨーロッパの大学、と幅広く受ける場合は、移動だけでも数日が必要になるので注意が必要です。

大学訪問が合否に影響する可能性の高い大学

応募書類のフォーマット、在校生やアドミッションからの情報により、大学訪問の影響の度合いを推測することができます。僕が受けた大学については以下です(2015年時点での情報です)。

  • HBS (Harvard Business School): 訪問は合否には関係ないと名言されています。応募用紙にも訪問の有無を書く欄もありません。ただ、ケースの授業形式は特殊なので自分に合うかは授業見学はして見ておいた方が良いです。
  • Stanford: おそらくない。訪問の有無を書く欄なし。
  • Wharton: おそらくない。訪問の有無を書く欄なし。ただ、暮らすにあたってはフィラデルフィアでの生活がどのようなものなのかは知っておいた方が良い、というのが同級生からのアドバイスです。
  • Columbia: 訪問した方が良いです。応募用紙でもどのadmissionと会ったか書く欄があるため、admissionの人の名前も覚えること。また、ニューヨーク関連についてのエッセイの質問もあることがあるため、材料を増やすためにも訪問は役立ちます。
  • MIT: 訪問した方が良い。訪問の有無を書く欄があることに加え、どのMITのイベントに参加したか、誰を知っているか、などを書く欄がありました。本気で受かりたいのであれば、訪問時にネットワーキングを行い、MITと繋がりを作った方が良い。
  • LBS: 訪問した方が良い。LBS関係者で会った人を書く欄があることに加え、欧州とアメリカのビジネススクールはかなり雰囲気が異なるため、どちらが自分と合うかを見極める上でも訪問が大事。比較的多くのOB/OG、在校生と会って、ネットワーキングした方が良い。

在校生へアプローチしよう

在校生についてですが、①エッセイカウンセラーに頼む、②公式ブログにメールする、③友人の友人のネットワークを使う、ことで日本人とはアプローチできることが多いと思いますので、学校の正規プログラムに加えて在校生とコンタクトを取ると、学校の雰囲気をつかむのに良いかと思います。

キャンパスビジットの準備と実践

また、キャンパスビジットを行う祭ですが、下記のような準備と実践を行うことが個人的なアドバイスです。

  • 仮説を持って行く。質問例:「私のやりたいことがAで、この大学のMBAプログラムのBがCというようにAに繋がるのではないかと思うのですが、いかがですか?」
  • 具体例を聞く。「DというプログラムがEなのではないかと思い、とても興味があるのですが、具体的にはどのような体験でしたか?」
  • あまり多くの人と同じ時間で一度に会わないようにする。たまに受験生1人に対して6人が同じ時間に集まるなどを聞きますが、そういう場合は一人に突っ込んで質問することが難しくなりますし、在校生の間でもお互いを見合ってしまうことがあります。可能であれば1対1か1対2くらいで違う時間帯に会ってもらった方が効果的です。
  • ホームページで調べられることは調べておく。既に書いてあることを聞いても時間がもったいないです。「1年目の必修授業は何がありますか?」の質問への答えばどの大学でもHPに書いてあります。
  • 在校生ブログを確認しておく。殆どのMBAプログラムには日本人がおり、ブログを個人的、あるいは学校単位で書いている場合が多いです。生活感がわかるため、一通り目を通しておいた方が良いです
  • テストについて聞かない。TOEFLやGMATの点の取り方は参考書やブログを始めとした様々な媒体で書いてあります。在校生に聞いても、ここまで来てテストを聞くのか、という印象を与えるため、やめた方が良いです。

上記のような点を押さえると、キャンパスビジットをした時に得られるものが多くなり、よりエッセイを書く際にも役立つと思います。

次のステップ

エッセイについては「MBA受験 – エッセイ(Essay)の書き方とテクニック」を、全体像については「MBA – 受験から卒業までの流れ」をご覧ください。

海外ビジネススクールでMBAを取得する5つの価値

海外のビジネススクールへ行き、MBAを取得する価値は何でしょうか?

僕なりに整理すると、ビジネスパーソンとしての基盤づくり、人脈・友情、キャリア変更の機会の3つが主な価値で、質の高い時間と学位が付属的な価値かと思います。

ビジネスパーソンとしての基盤づくり(A Good Business Foundation)

経営者として持っておいたほうが良い、ビジネスを構成する各機能についての知識を体系的に身につけられる、というのが一つ目の価値です。

HBSを例に取ると、1年目の必修科目ではビジネスを複数の視点から見れるような科目構成となっています (BGIE, Strategy, Technology and Operations Management (TOM), Marketing, Finance I & II, Financial Reporting and Control (FRC), The Entrepreneurial Manager, Leadership x 2 + FIELD I/II/III)。

具体的には、一学期ではMarketingでいかに価値を創造して獲得するかを学び、TOMでは戦略と整合性の取れたオペレーションを構築し、評価し、改善していくかを学びました。Finance IとFRCでは財務分析、会計分析、投資評価に加え、いかに会計を利用して組織のパフォーマンスを測定し、改善していくか、また資本市場とコーポレートガバナンスについても学びました。これらの科目から導き出された戦略も実行できなければただの絵に描いた餅です。戦略をいかに実行するかについてはLeadershipで学び、それを実践する機会の一つとしてFIELDがありました。

経営者として経営判断をする際に役立つ知識を効率良く身につけることができる、というのが一つ目の価値です。

人脈・友情(Networking/Friendship)

これはHBS一学期まとめ、でも書いていますが、MBAプログラムで最もユニークかつ大きい価値かと思います。世界中から集まった将来のリーダー達と2年間、利害のないフラットな関係で濃密な時間を過ごせるというのは貴重な場です。また、教授陣も世界から集められた非常に優秀な人であり、そういった教授との繋がりも大きな財産となります。

また、一緒に日々を過ごす中で築かれる友情というのはネットワーク以上に人生にとって価値があると僕は思っています。目標を持ち、一緒に切磋琢磨できる人と出会うのは簡単なことではありませんでしたが、ここではそういった人達と出会う機会が多くあります。

ネットワーク、友人の輪を大きく広げられるというのが二つ目の価値です。

キャリア変更の機会(Career Change Opportunity)

キャリアチェンジをしたい、キャリアアップをしたい、と考える人にとってはMBAで得られる時間と機会が価値になります。普段の仕事が忙しく、自分が本当にやりたいことがわからない。あるいは現在の職から違う職に行くのがキャリア的に難しい。そういった人達にとってはMBA取得はキャリアのリセットの役割を果たします。また、投資銀行やPrivate Equityなど昇進にMBA取得が実質的な条件になっているような業界にとっては、キャリアアップのためにMBAの肩書き自体が価値になります。

多くのMBA生が入学と同時に自分とその後の人生について考え、幾つかの企業を受け、夏のインターンシップを今まで勤めてきた業界と違う業界に挑戦し、自分の可能性を探っています。在学中の起業というのも自分の可能性を試す一つの選択肢です。

リスクがない環境の中で自分の可能性を試せる機会、というのが三つ目の価値です。

質の高い時間

以上の三つが主な価値だと思いますが、質の高い時間(”Quality Time”)を4つ目の価値として考える人もいます。特にコンサルティングや投資銀行など長時間労働を長い間にしてきた人としては、人生の夏休み的に旅行や友人と遊ぶ時間を謳歌することが価値になりますし、今まで時間を割けていなかった子供やパートナーと過ごす時間として使う人もいます。MBAで過ごす時間は基本的に自分で時間割を決めるので、時間の自由度自体が価値になります。

MBAの学位

また、学位自体を5つ目の価値として考える人もいます。米系企業のマネジャー以上のポジションの求人にてMBA PreferredまたはRequiredとなっており、実質的にMBAが必要になっている例も多いです(逆にテック系企業やP&Gのように伝統的に内部昇進の企業ではMBAがあまり評価されない印象です)。

大学院の学位を持っているということも信用を補完する効果があるため(MBAを得ているならば一定レベルのビジネスの知識はあるのだろう、という推定が働く)、それも交渉などの場で役立つかと思います。

以上の5点が主なMBAの価値になるかと思います。加えて、個人的にはこれが最初の海外生活となるため、留学による価値観の広がりや英語によるコミュニケーション能力の向上にも価値を感じています。

MBAの費用対効果

MBAに行くことがコストに見合うか?という話については、僕は「人による」と思います。上記の4点はあくまでも機会があるという話です。その機会を活かしてそれ以上の価値を将来的に出すことができる人もいるでしょうし、自分から動かずに機会を活かすことができなければおそらく日本で2年間働いていた方が良いと思います。

MBAの費用について知りたい方は >> ハーバードMBA留学で実際にかかる費用

また、プログラムを通じて学んだ内容、広がった視野、得られたネットワークは卒業後すぐに役立つというよりは、時が経つにつれて活かせる場が増えていくものだと思いますので、2年間の時間 + 20万ドル近い投資は短期的というよりも長期的な投資かと思います。

「機会を活かして、長期的なリターンを得たい人」にとってはMBAは一つの魅力的なキャリアの選択肢だと思いますし、そうでなければ違う選択肢の方が良いでしょう。

僕個人としては、ここで得られる機会を楽しんでいる方ですので、来て良かったなと思います。価値があるかは主観的なものですので、下記のような他のMBA取得者が書いている記事を見て、比較してみても面白いかと思います。

My Life After Sloan

Chikirinの日記

@Type

Axiom

次のステップ

実際に2年間終えた後にどう考え方が変わったかを知りたい方は、

>> ハーバードビジネススクールMBAの価値

MBAの全体像について知りたい方は

>>海外MBA受験から留学開始までのまとめ

アメリカMBAプログラムの比較

アメリカのMBAプログラム(MIT, Wharton, Kellogg, Haas, HBS)を比較してみるとHBSの1年目はかなりはっきりとした特徴を持っているということがあらためて分かる。

学業:ケーススタディと意思決定( “Case Method” / “Decision Making”)

HBSの一年目ではいわゆるレクチャーという形式はほぼない。各学期で6科目中の5つの授業はケース形式やシミュレーションでの授業で、残りの1つはFIELDというチームを組んでのグループディスカッション、コンサルティングプロジェクト、起業プロジェクトといった実践系の授業になる。

ケース形式の総本山ということもあり、このケース形式の教え方の割合は他のUSの大学と比べて圧倒的に高い。学生は1学期で約140本のケースを読んで、”お前なら何をどうするか”と問われ続けるので、意思決定をするための現状の分析力とアクションプランを策定する力がかなり高くなる。また、発言が成績の50%なので、発言の方法や内容にも気を配るようになる。

一方、WhartonやMITなどは科目によりケース、レクチャー、グループワークを組み合わせるなどバランスを取っている印象を持った。また、”Decision Making”のみならず、自分で手を動かしてテクニカルな統計分析ができるようにしたりと、マネジメントとしての視点と現場レベルでのスキルの両方をバランスよく身につけさせようとしている印象。

人脈形成:(Networking – “Section Experience”)

HBSではSectionというクラスのくくりで一年間過ごし、一年目は全ての授業が必修であるために、同じSectionの93-94人とはかなり強い絆が生まれる。ケースの授業では他の生徒の発言を一年間聞き続けるため、Sectionmateの性格や価値観もわかっていく。

イベントも多くがSection単位で行われること、Sectionだけでも90人以上いるためにそこが自分の居場所になる。卒業後に5年毎にReunionがBostonで開かれる時もSectionが単位で、HBSのコミュニティに属する限り、まさしく一生付き合う仲となる。

一方で、他の大学では必修もWaiveができたり、選択必修であったりと、常にクラス全員が教室に集まるわけではない。運動会などでClass等のくくりはあるものの、Classなどに対する帰属感はそこまで強いものではなさそう。グループワークやクラブの機会を活かして、気の合う仲間とグループをいくつか作って、そのグループで仲が深まっている印象だ。

クラブ活動:Career/Club – “Intensive Program”

HBSは月曜日から金曜日まで授業があるのに対して、他の2年制のアメリカMBAプログラムはほとんど月から木曜まで。Thanksgivingがある週もHBSは月、火と3ケースの授業があるのに対して、他の大学は一週間休みのところも多い。

HBSはintensive programであるということを、あらためて感じた。これは得られるものが多い一方、大学のカリキュラムに時間を使う必要がよりある。他の大学に行っている人の方が就職活動、起業準備、クラブなどの学外で自由に時間を使っている印象を持った。

HBSは仕組みの大学

比較を通じて感じたのは、HBSは仕組みの大学だということ。Case Methodで全ての必修基礎科目をこなすことで、Leaderとして幅広い視野を持ちDecision Makingを行うスキルを集中的に鍛えるような仕組みになっている。

また、Section単位で授業やイベント活動を一年間行うことでSectionとして一体感を持ち、誰もがHBSで幅広いバックグラウンドの90人以上と一定以上の深さを持ったNetworkを持ち、かつCommunityに帰属感を持てるような仕組みになっている。まさしく、Leaderを育成するということにFocusしたカリキュラムだ。

一年目の自由度は他の大学に比べると少ないが、二年目は他の大学のように全て選択科目となり、自由度がはるかに増す。学生は一年目と二年目で全く違った体験をすることとなる。幅広い視野とセクションを中心としたHBSネットワークを一年目で得て、二年目に好きなことをする、というのが基本的な流れだ。

どんな人にHBSの仕組みは向いているか

僕はというと、この仕組みに満足している。やはりこのintensiveなプログラムをこなすからこそ得られる自信があるし、90人を超える学生と深い関係を完全に自由な環境で築くのは言語や文化の問題でなかなか厳しいので、この仕組みはありがたい。また、Case MethodでLeaderとしてのDecision making skillを集中的に磨くというのは元々の目的なので、これも僕にとっては非常に価値がある。二年目から自由度が増す、というのは僕にとっては遅くはない。

一方で、この仕組みは一年目から自由に時間を使いたい人やもう少しゆったりと時間を過ごしたい人には向いていないと思う。例えば、何かの分野に特化して一年目から学びたい人、すでに起業のアイデアがあって一年目から起業に時間を使いたい人、にとってはHBSの一年目の仕組み化された自由度が相対的に少ないカリキュラムは辛いだろう。

また、それなりに必修の課題などに追われるので、ゆったり過ごしたい人には向いていない。そういう人にとっては、MITやWhartonのような一学期目から選択の余地が大きく、授業の負担も軽減しようと思えばできるプログラムの方が向いていると思う。

僕自身、HBSに満足しているために多少バイアスがかかっている可能性もあるが、今感じて居る印象は上記のような感じだ。MBAプログラムについては受験生の時に調べていた時はどれも似たものに見えたが、実際に入ってみると大学ごとに仕組みに特徴があるのに気づいた。

①どんな教え方か、②学生がどこで人間関係を築いているか、③どれくらいプログラムがintensiveか、④どの場所にあるか、というのは学校選びの時に見ると良いポイントかと思う。

Pre MBA CELOP (ボストン大学)は費用に見合うプログラムか

MBA前にPre-MBAと呼ばれる英語圏での学習に慣れるために参加される方がいます。僕はボストン大学のCELOP (Center for English Language and Orientation Programs)が運営しているPre-MBAに参加しました。

CELOPのプログラムへ参加するべきなのかどうかについては、コスト的には微妙で、ボストンの環境に慣れるためにはありかな、という印象です。

参加することで得られたもの

  • MBA他校の友人 (HBS/MIT/BU/Tuckなど)
  • セットアップの準備の時間(荷物の受け取り、家具や必要なものの買い出しなどセットアップはプログラムの数日前の現地入りだと結構大変。子供がいればより大変)
  • 1日4時間の英語の授業への慣れ(仕事とまた違った集中力が要求される)

参加することで失ったもの

  • $4,000+の授業料(寮や食事も含めると4週間で $7,000近く)
  • インターンや旅行などにも使うことができた時間

僕自身はセットアップができたというメリットに加えて、ケース分析の方法、自分の発音の癖、ライティング時に間違えやすい文法の傾向、がわかったので投資分の学びはギリギリ得られたかなという印象です。あとは同じクラスの友人とは仲良くなれたので、それが一番の収穫でした。

ただ、英語圏で学んだ経験のある人にとっては得られるものが少ないかと思うので、旅行やインターンなどをした方が良いかもしれません。

MBA受験 – エッセイ(Essay)の書き方とテクニック

MBAへの応募でも奨学金の応募でも肝となるのはエッセイです。僕は江戸義塾のエドと相談しながらエッセイを作り上げていったのですが、彼からもらったアドバイスは、多くの人に役立つと思いますので共有いたします。

エッセイの基本方針

  • ユニークさや自分の強みを伝える。経験、価値観、強み、何が自分をユニークにするのか。アイデアが肝。
  • 具体的な例を用いて、「生々しく」ストーリーを伝える。抽象的な話ではなく、自分の体験や感じたこと、学んだことを書く。
  • 数字や結果の話を入れる
  • レジュメと整合性のあるストーリーにする
  • ProfessionalとPersonalな話の両方が伝わるようにする

 エッセイのテクニック

    • 一番最初のセンテンスと一番最後のセンテンスの話を繋げる
    • あることをする前と後、自分と同じ職種の人との違い、のような比較の話が分かりやすい
    • Why MBA? では具体的な授業名、教授名、などを入れてきちんと学校について調べていることを示す
    • Transition wordを使って、流れをより分かりやすくする
    • 不要な副詞は使わない (successfulなど)。数字や事実で語れば良い
    • Activeな動詞を用いた表現の方が強く聞こえる (Aim/Plan > Hope)
    • 短縮系は使わない (I’m I can’t -> I am, I cannot)

エッセイの仮説検証をする

上記のエドからもらったアドバイスに加えて、第一志望の大学に関しては、自分のネットワークを使い、在校生または卒業生にカウンセラーと詰めた後のエッセイを見てもらう、またはエッセイの方向性を話すことを強くお勧めします。

在校生が読めば、おそらく通らないだろうな、とすぐに分かるようなエッセイを出して落ちるのはもったいないです。

一方で、在校生や卒業生にとってはエッセイを読んでアドバイスをするのはそれなりの時間がかかるので、知り合いでない限り、生煮えのものを見せたり、エッセイカウンセラー代わりに依頼することはなるべく避けましょう。

在校生・卒業生にとっては、エッセイを読んで、この人のバックグラウンドや価値観ならば何をどう伝えるかのが良いかを考え、アドバイスをどう伝えるかを考えて、メールまたは対面で話して、としていると簡単に数時間以上のタスクになってしまいます。エッセイのレビューの依頼をする時には、お互い真剣勝負だというつもりで依頼をした方が良いと思います。

次のステップ

エッセイを書き終えたらいよいよ応募と面接対策です。受験の全体像は「MBA – 受験から卒業までの流れ」をご覧ください。