HBS Japan Trek 2016

HBS Japan Trek 2016というHBSの同級生を連れて日本を旅する企画が昨日終わりました。参加者は昨年度よりも77%増加し、108名の参加者、11名の幹事団というJapan Trekとしては過去最大級の規模で、HBS同級生の8名に1人が参加した計算になります。今年は9日間かけて京都、広島、名古屋、東京を巡り、日本の文化、歴史、ビジネスについて視察・観光しました。

Japan TrekはHBSに通う日本人の1年生が例年行っているもので、伝統行事なのですが、今年は運営団が11名いることを活かし、「参加者に楽しんでもらうことを通じて、日本についてより知ってもらうこと」を目的に以下のような工夫を行いました。

  1. 全体で動くよりも、小グループで動けるようにオプションの数を多くした。
    例えば、食事は夕食があった8日のうち、初日のウェルカムディナー、3日目の広島での座敷宴会、8日目夜の屋形船でのフェアウェルディナー、を除き、5日間は参加者に食事する場所の候補を8か所程度(寿司、居酒屋、焼肉、などジャンル別に毎日1件ずつ)提示し、選んでもらう形式にしました。これにより、参加者は食べたい料理を選ぶことができ、食事の満足度が増しました。

    また、同様に毎日のアクティビティについても、全体で行った京都の観光(伏見稲荷神社、金閣寺、嵐山)、広島の観光(原爆ドーム、平和記念資料館、宮島・厳島神社)、要人訪問(菅官房長官、楽天三木谷社長)などを除き、参加者に幹事団主催のツアーを提示し、選んでもらう形式にしました。これにより、例えば禅体験をしたい人は禅体験を、寺をより回りたい人は清水寺ツアーを、市場を体験したい人は錦市場のツアーを選び、それぞれの参加者がニーズに合わせたプランを組むことができるようにしました。これも満足度を高める要因になったと思います。

  2. できるだけトレックに伴う不便を減らした
    紙ベースで60ページを超える詳細なTrekのガイドブックを作り、配布しました。ガイドブックはスケジュール、地下鉄路線図やホテル、レストラン、観光の場所が記載されており、それぞれのトレッカーがたとえ迷ったとしても次の目的地にたどり着けるようにしました。また、ガイドブックの最後には幹事団と参加者の名前と顔写真を載せており、トレック参加者がお互いに名前を覚えて仲良くなりやすいようにしました。

    日本では無料WiFiがあまり普及しておらず、メッセージングアプリでコミュニケーションをとりたい海外からの旅行者にとって不便な状況ですが、できるだけWiFiを利用できるよう、幹事団がポケットWiFiを持ち歩き、幹事と一緒に行動している限り参加者がオンラインになれるようにしました。これにより、その場での写真の共有や他グループとの連絡が容易になりました。

    また、ベジタリアン、ペスカトリアン対応も人力で行いました。日本の食事処はまだベジタリアン、ペスカトリアン食を出すところは少なく、アレルギーなどの個別対応を行うことにも慣れていないため、幹事団が皿ごとに入れ替えるなどして、参加者が食事面で不便を感じないようにしました。

これらの工夫により、参加者からの満足度は非常に高いものとなると同時に、参加者にとっても得るものが多い旅になったと思います。「こんなにWell-organizedなトレックに参加したのは初めてだ」、「広島での体験がとても印象的だった。親に広島での体験を話していたら、涙が出てきて、親と一緒に電話で泣いてしまった」、「日本に来て知ることで、より日本が複雑な国だということがわかるようになった。神社や寺に行くという宗教的な行為をする一方で自分たちは宗教的でないと思っている。他国の文化や慣習を取り入れるオープンさがある一方で、移民に対してはクローズなところがある。一見矛盾する要素が共存しているように見える」などなど。最終日には出会う参加者ほぼ全てから最高だった、と言ってもらえました。当初の目的であった、「HBS同級生に日本を楽しんでもらい、知ってもらうこと」、は達成でき、大成功で終わったのではないかと思います。

幹事団の一人としても、今回のトレックを運営したことはHBSの体験の中でも最も価値あることだと感じました。まず第一に、参加者の多くと新しく知り合うことができ、さらに親しくなる機会であったこと。そもそも日本に興味を少しは持っている人たちなので話しやすく、今回のトレックを通じて数十人と新しく知り合うことができ、数人とはかなり仲良くなれたので、来学期以降の人間関係がかなり楽になると思いました。第二に、幹事団のメンバーとより親しくなる機会になったこと。やはり一緒にプロジェクトをしてみることでわかることが多く、このトレック一緒に企画・実行し、一緒に達成感を感じたことは、この先ずっと続く友情につながるのではないかと思います。第三に、今回のトレックはあらためて日本を見つめ直す機会を与えてくれました。日本は自然、文化、歴史、食、と観光資源が豊かな国であり、おもてなしの心や安全な治安と合わさり、旅行先としては非常に魅力的な国だと思います。ただ、現状は特にその魅力を外国語で十分伝えることができるガイドが不足していること、多様な食事制限に答える食事処が少ないこと、などの要因でその魅力が日本人と一緒に旅しないと伝わりにくいと感じました。今回の旅でも参加者の中にはまた日本を訪れたいという人は多く(今回のトレックでは私たちと一緒であったのでほとんど不便は感じなかったのではないかと)、これらのネガティブ要因を改善することで、よりリピーターを増やすことに繋がるのではないかと思います。

HBS1年目を終えて

HBSでの1年目が終了した。僕がMBAで何を得ようとして、結果として何を得たかについて、全体、学業、友人関係・ネットワーキング、課外活動、キャリアの順に振り返ってみたい。

1年目の感想

MBAは”transformational experience”、とMBAのadmissionは言う。”transformational experience”の定義にもよるが、文字通りの「人生が変わる体験」と定義すると、僕にとってはそうだったな、と思う。

変わったものでいうと、ビジネスを見る視点は広く、深くなったと思う。入学前は前職のプロダクトマネジャーの視点から物事を見ていたのに対して、この1年でビジネスに関しては他の機能(ファイナンスやオペレーション等)やリーダーの視点でも物事を見ることができるようになった。政治、経済については世界で起きていることを抽象化して見れるようになった。決断の際に、経済的な視点だけでなく、法的や倫理的な面も含めて考えるようになった。こうした視点の変化は、250以上のケースディスカッションを通じて徐々に培われたものであり、より良い意思決定に繋がる。

次に、友人のネットワークが圧倒的に広がった。これまで僕は日本で生まれ、学び、働いてきたので、大学や社内で出会った海外の友人もそれなりにはいたが、ネットワークは圧倒的に日本が中心だった。一方、今は国籍ベースで言えば本当に世界各地に友人がいるようになった。HBSの「仕組み化された」ネットワーキングのおかげで、今は40ヶ国籍以上の友人がいるし、国名を聞くと友人の顔がパッと出てきて、それぞれの国を近く感じる。このネットワークや世界の近さの感覚は期待以上のものであったし、僕の将来の可能性を広げてくれた。

また、知らない世界で挑戦してもなんとかなるという自信が生まれた。渡米前は、海外と主に仕事をしていたと言っても、ディスカッションでうまく貢献できなかったり、日常会話で苦労したりと、英語圏で仕事をするには力不足と感じることが多かった。渡米後の今でも英語と話題は今でも課題があり(ドラマ、映画、音楽、スポーツ、本、ニューヨークのローカル話題、どれも分からない。。) 、この課題の克服にはおそらくあと5年くらいかかると思うが、9ヶ月かけて少しずつ状況は改善されてきた。また、足りていない能力でもここまで学業と友人関係の実績を築き上げてこれたというのが自信になった。加えて、先人達のおかげでHBSというブランドもあるので、ビザの問題を除けば、卒業できれば おそらく就職することはでき、食うに困ることはないかなと思う。自信とセーフティネットを得たことで、より挑戦する意思が強まった。

一方で、変わらないことを確認したものもある。それは自分のコアな価値観であったり、性格だ。HBSの1年目はLGBTの活動、米国内経済的格差、モロッコでの体験、セクションメイトから聞く話、から自分が知らなかった世界を知る機会が多く、それらを通じて自分の視野は広がった。10代や20代前半であれば、もっと価値観に影響を受けたのかもしれない。ただ、僕ももう30代で、自分がどんな価値観を持っており、何が好きで、どんな時に幸せを感じるのかは、渡米前にだいたいわかっていた(僕が好きなのは、挑戦すること、慌てず・焦らず・諦めず前に進むこと、挑戦から新しいものを学ぶこと、情報を集め、分析し、戦略を立てて実行すること、アイデアを出すこと、人と一緒に新しいものを生み出すこと、人を成長させること、人を受け入れること、世の中にとって自分が良いと思うことをすること、等)。僕にとっては、この1年を通じて、そうした自分のコアな部分が変わることはなかった。

まとめると、HBSの1年目が”transformational experience”だったか、という問いには、僕にとっては人生の可能性を広げてくれたという点でそうだった。また、同時に僕にとってコアな部分は変わらないことも確認できた。HBSでは4つの分野 (学業、友人関係、課外活動、キャリア)に分けて物事を進めてきたので、それぞれについて振り返りたい。

学業 (Academics)

1年目は計10の必修授業とFIELDという実践授業を受けた。授業は以下のようになる。

  • 政治、経済を扱う授業
    • BGIE (Business Government and International Economy)
  • 企業の中の特定の機能を扱う授業
    • Strategy、TOM (Technology and Operations Management)、Marketing、Finance 1、Finance 2、FRC (Financial Reporting and Control)
  • リーダーシップを扱う授業
    • LEAD (Leadership)、LCA (Leadership and Corporate Accountability)
  • アントレプレナーシップを扱う授業
    • TEM (The Entrepreneurial Manager)
  • 学んだことを実践に移す場・チームワーク
    • FIELD1/2/3

この中でも僕が最も学びが多いと感じたのが1学期目のLEADと2学期目のBGIEだ。LEADではリーダーの行動と決断のケースから、いかにチームをマネージするか、効果的な人間関係を築くか、いかに組織を作り上げるか、いかに組織を変えるか、について学んだ。こちらは授業でのtake-away(学んだこと)で目から鱗のことが多く、加えて教授のMukundaの議論のファシリテーションの仕方が素晴らしかったため、非常に学びが多い授業だった。楽天の英語化のケースを扱ったのもこの授業だ。この授業を受ける前と後で、自分のチームや組織に対する見方が変わり、マネジメントの仕方も確実に変わったと思う。

BGIEは世界に対する見方を変えてくれる科目だった。大半の授業では国のケースを扱い、それぞれのトピックに関連する事柄に分析の焦点が当てられる。例えばインドを扱ったケースでは、「多民族国家で収入格差が非常に大きく、教育水準も高くないインドではどうして独立以降民主主義が生き残っているのか」、という問いについて議論した。その中では、カーストの文化により、人々が自分の社会的ポジションに納得するような構造となっている(人々が自分の置かれている社会的ポジションに納得いかなくなった時、暴動が起きたり、社会が不安定化する)という観点が出たりする。また、その一方で、人々が民族や言語別によって投票するようになり、統一的な政策が打ち出しにくいという問題点も議論されたりする。今までにぼんやりとしていた、国家とは何か、民主主義とは何か、それらが成り立つために必要な条件は何か、を要素として話せるようになった。この授業を通じて、国レベルで、どのような政治的な目的があり、それを達成するためのツールとして何があり、実行に際しての制約に何があるか、を経済的、政治的に考えて議論するための下地を作れた。この下地はビジネスの機会の分析において有用なだけでなく、社交の場での会話の種にもなり、今後の人生を豊かにしてくれると思う。

その他の授業からも各領域について、自分が意思決定をする際に、どのような枠組みで分析を行い、打ち手のオプションを考え、それを評価するか、についてのプロセスを学ぶことができた。よく言われることではあるが、何せほぼ毎日、異なる状況のケースを分析して自分だったら何をするかを考える、というプロセスを行っているので、分析をする際の広さと深さは増したと思う。

また、これは最近感じた想定外のメリットだったが、250以上のケースを議論することによって、他の業界の人と話す時の知識のベースを作ることができた 。例えば、以前製薬企業の人と当局との折衝について話をした時だ。僕は渡米前は製薬企業の開発やマーケティングのプロセスを殆ど知らなかったが、製薬企業のケースを複数扱った経験から、治験のどの段階でどういう折衝が行われるのか、という話をより突っ込んで質問して、話すことができた。業界についての知識はケースを読む主目的ではないが、副次的に得られるメリットでもあった。

身につけた考え方のプロセスを実践で活かすのがFIELDという実践授業だ。個人的にはFIELDはチームワークの経験としては良かったが、学業という観点での学びはさほど大きくなかった。新興国へ行きコンサルティングプロジェクトを行うFIELD2は違う文化の国を体験するという点では良いが、現地滞在は1週間強なのでインプットもアウトプットのレベルも限定される 。スタートアップ体験をするFIELD3もチームワークの体験やスタートアップを行う大変さを味わえたという点は悪くはなかったが、学びという意味では他の授業と比べるとやや落ちた。僕としては、実践を通じて学ぶ機会は、夏のインターンシップが主になりそうだ。

友人関係・ネットワーキング

僕にとってHBSで最も大きな財産となるのが、この友人関係・ネットワーキングだ。1年間の授業を同じ教室で過ごしたセクションFの93人とは卒業後も5年に一度、同窓会で会う生涯の仲間だ。チームワークで1学期間を共に過ごしたディスカッショングループの5人、FIELD 2のチームの5人、FIELD 3のチームの4人、EVOLVEという少人数の人生についてディスカッションを1学期間かけて行うプログラムのチームの4人とは話す機会も多く、仲良くなった。寮での生活、Asia Business Conferenceの運営、スタートアップ関連のイベントでも良い友人ができた。HBSは人数が多く、HBSカルチャーで繋がり 、しかも活躍する人が多いので、友人として人生を一緒に 過ごす喜びだけでなく、プロフェッショナルとしてもこのネットワークは役立つものだと思う。

また、日本人の友人にも恵まれた。HBSで1年生の13人、2年生の7人は皆個性があり、仲が良く、一緒にいて居心地が良い。HKS (Kennedy School)、HLS (Law School)やPublic Healthにも友人がおり、数回飲んだりとHarvard内でもいい友人関係を築けたと思う。冬の飲み会はかなりカオスで、楽しい写真が結構撮れた。加えて、MIT、Wharton、Kellogg、DukeのMBAの友人たちやボーゲル塾を通じて知りあった国際政治分科会の人たち、ヘルスケア勉強会の人たちとも一緒に様々なことを語り合えて、良かった。特に中国の経済成長、中東情勢、移民などの国際政治における議題に対して、日本はどうするべきか、を官庁、自衛官、マスコミ、アカデミアの方々とボーゲル塾で毎回語るのはとても有意義で、学びが多かった。

人間関係を大幅に広げることができるというのはMBAの特権なのかなと思う。 様々な背景を持つ人がいて、時間があり、お互いに利害関係のない状態で話ができる。話をしてお互いの知らないことを共有し合うと共に、学生でないと出会わない人たちが出会うことで、新しい化学反応が生まれる。友人関係・ネットワーキングで得られるものは想像以上に大きかった。

課外活動

1年目はHarvard日本人会のHBS代表、ボーゲル塾国際分科会への所属、Asia Business ConferenceのCTO、Japan Trek運営という活動を行った。これは他のHBS生と比べるとおそらく平均よりは多い活動であり、活動の選択についても満足している。

入学する前にはわからなかったが、HBSの1年目は学業、ネットワーキング、キャリアが忙しく、クラブや課外活動に時間を注ぐ人はそんなに多くない。僕の知る限り、HBS以外の米国2年制MBAは金曜日が休みだが、HBSは金曜に授業があり、学業での負担が結構重い。セクションという仕組みで93人の新しい友人と1年過ごすので、クラスメイト全員と話そうと思えばかなり時間がかかる。キャリアは人生の一大事なので、企業派遣で来ていたり、家業を継ぐ人以外にとって最優先になる。こうした理由から、優先順位をつけていくと低くなるのがクラブや課外活動となる。

僕としては、やりたい経験はできたと思う。Harvard日本人会、Asia Business ConferenceではHarvard内の繋がりを、ボーゲル塾ではボストンでの日本人の繋がりを広げることができた。そして、Japan Trekでは日本人内の運営団で 一つのものを作り上げている。これから始まるJapan Trekでの他セクションの人と仲良くなるチャンスも楽しみだ 。

キャリア

1学期目は学業と友人関係・ネットワーキングで結構手一杯で、iLab Scrambleというスタートアップのイベントに参加したり、iLabで不定期に開かれるイベントへの参加がメインだった。2学期目はNew Venture CompetitionというビジネスコンテストにHMS (Harvard Medical School)の学生と組んで出場し、応募まではそれなりに時間を使っていたが、上位16チームには選ばれず。一方、Rock Summer Fellowsという起業を考えている、あるいはスタートアップで働きたい人向けの夏の支援プログラムには選ばれることができた。1年目にやりたかったことはやったが、キャリアに関してはもう少し時間を使ってリサーチを進めたり、インタビューをしたり、アイデアを考えることに時間を使いたかったな、というのが本音だ。

今はというと、デジタルヘルスの領域で新しいビジネスのアイデアを考えたいと試行錯誤していて、まだ”これだ”、というアイデアを思いつけていないのが現状。Tele Medicineは将来的により普及する業界だと思うが、スタートアップでやるには既に大きいプレイヤーがいて勝てる道筋が描けない(規制の動向次第だが)。ある一定の患者へのAIの医療行為への適用もビジネスアイデアとして考えたが(New Venture Competitionに出したのはこれ系のアイデア)、liabilityの問題、monetization、処方箋のロジをどうするかが課題でこれを解決できていない。Omada Health的な医療費削減分を企業に請求するB to B to CのビジネスやCastlight Healthのような医療費最適化のB to B to Cの提案サービスも面白いと思うが、公的保険の範囲が限られている米国ならではのサービスだし、ここも今から勝負しても難しいな、という感じ。IoTを使った診断革新系のサービスはリサーチ不足でまだ面白い技術を見つけられていない。

今はより健康的な行動ができるよう、行動変容を促すB to Cビジネスを考えており、夏はそのアイデアを深掘りして検証しようと思っているが、まだまだ生煮え。2学期の後半にややダレてしまったところがあるので、その時間を使ってもう少しキャリアに時間を使えばよかったと反省。

2年目について

1年目は学業、友人関係、課外活動、キャリアともに計画したことの多くは達成できて、70点くらいだ。反省点としては、ややダレてしまった時間があるので、それを運動と英語の勉強にあてられたらより良かった。

2年目は1年目をベースにして、さらに積み重ねていく予定だ。学業では将来ビジネスを行う上で必要となるファイナンス、組織論などの科目を履修する予定だ(Entrepreneurship Finance、Negotiation、Managing, organizing, and motivating for value、Designing competitive organizations等)。友人関係では友人を定期的に自宅へ招待して、仲良くなり、卒業後ずっと仕事や人生について相談できる8人程度のboard memberを作りたい。課外活動としてはマラソン大会に向けてトレーニングし、ボストンでのハーフや、シカゴのフルマラソンに出場する予定だ。キャリアについてはNew Venture Competitionなどのビジネスコンテストで勝てるだけのチーム、ビジネスプラン、商品、実績を2年目に作りたい。

MBAは21ヶ月間の、今後の人生のベースを作る期間。精一杯活かしたい。

FIELD 3 – ビジネスを立ち上げる

本日はFIELD 3というビジネスを立ち上げる授業の発表会。各セクションで18チームがプレゼンテーションを行い、15週間で作り上げたビジネスを発表した。僕らのチームはLOCALSというローカルな体験をしたい旅行者と旅行者をガイドして収入を得たい地元の人のマッチングサービス(Airbnbの旅行ガイド版のようなもの)を立ち上げ、その結果をプレゼンテーションした。

コンセプトとしては良いと思っていたが、実際にやってみると想定外のことが多く、立ち上げるのにかなり苦労した。具体的には

  • ガイドしても良いという地元の人がなかなか見つからない
  • 見つかっても、そのガイドの質が低く、お金を取れるほどのサービスにならない。
  • 質の確認がオンラインだけでは難しい
  • ガイドが集まらないと、ユーザーをサイトに呼んできても購入してくれないので、立ち上がりが遅くなる(いわゆる2 sided-marketの立ち上げの際の卵と鶏の問題にぶち当たった)
  • ガイドが空いている時間とユーザーのガイドしてほしい時間が合わない(2 sided-marketの需要と需要をすり合わせる問題)
  • 結果として顧客獲得コスト (Customer Acquisition Cost)が生涯顧客価値 (Customer Lifetime Value)を上回り、ビジネスにならない

という問題にあたった。ガイド側の需要の刺激、品質コントロール、2 sided marketの問題、は数週間という短い期間で片手間に動いていてもなかなか解決が難しく、結局収益をあまりあげることはできなかった。

最終的な審査員であるVCからの評価はセクションで真ん中くらいで、「経験の価値が大きくなっている今、将来的に大きくなる可能性のあるビジネスだと思う。ただし、ガイドの品質コントロールが難しく、スケールに時間がかかる」というもの。結局、1都市ずつ攻めていかなければならないので、そこでかかる時間が一定期間の間で大きなリターンを狙うVCにとってネックになったようだ。また、僕らが調べた限りでは見つからなかったが、どうやらHBSの卒業生で2000年代に同様のサービスを始めて、今ではそれなりに大きくなっているサービスもあるようで、そこと競合するとも指摘された。これらの指摘はもっともであると思うし、最終的な評価については納得だ。

FIELD3は2 sided marketをやってみることで気づくことも多く、プラットフォームビジネスを立ち上げる際に気をつけることを学べたことが良かった。また、パキスタンのエンジニアと一緒に動いたのだが、彼らに支払った金額に対してのアウトプットの品質に驚いた。MVP (Minimal Viable Product)レベルであれば、十分に作れるという印象。スタートアップでエンジニアリングをアウトソースしなければならない状況であっても、かなりのところまではできると学べたのも大きな収穫だった。

また、友人作りという意味でもとても良かった。Sabrina、Terrance、Alex、Samというアメリカ人4人と組んだのだが、この15週間を通じて彼らのことをより深く知ることができた。FIELD3まではそこまで深く話したことのなかった彼らと一緒にプロジェクトを行い、達成感と友人関係を得ることができたのは、非常に大きな財産だ。

FIELD 3の他のチームの結果であるが、うちのセクションの優勝チームはカメラのライティング用器具が風で飛ばないようにするという製品で、1年生全体の優勝チームはヘルメットに取り付ける脳震盪を防ぐための器具だった。両方ともかなり絞ったニーズに対して技術で挑み、今日までにそれなりの売り上げを上げ、特許を申請するなど、かなり本格的なチームだった。両方のチームとも、プレゼンを聞くと優勝が納得の出来。ビジネススクールの学生のみで組んだチームでありながら、技術をチーム内で開発して売り上げを上げるところまでもっていったというのが驚き。エンジニアとして働いてからビジネススクールに来る学生も一定数おり、それだけのタレントが揃っているのが、HBSの層の厚さなのだな、とあらためて感じた。