コロナウイルスが世界中で広まってきています。株式市場にも大きな影響を与えているコロナウイルスへの各国対策のまとめと、米国がこれからどのような対策を取っていくのか、について分析していきたいと思います。
目次
コロナウイルスの現状
3月16日22:30現在で、コロナウイルスの感染者数は173,027人。死亡者数は6,663人、死亡率は全体の平均で3.85%、トップ10ヶ国の中央値は2.4%です(worldometersより)。最も被害が多いのは中国で感染者数は80,880人、死亡者数は3,213人で約半数を占めます。
トップ10ヶ国は以下です。感染者数では中国がトップですが、既に新規の感染者数は2桁と数字の上では抑え込みに成功しつつあるように見えます。イラン、ヨーロッパで感染が拡大しています。
一方、2位のイタリアは感染が広がり続けていることに加え、死亡率も7.3%とトップ10で最悪の数字となっています。
Country, Other |
Total Cases |
New Cases |
Rate of infection | Total Deaths |
Mortality Rate |
China | 80,880 | 36 | 0% | 3,213 | 4.0% |
Italy | 24,747 | 1,809 | 7.3% | ||
Iran | 14,991 | 1,053 | 8% | 853 | 5.7% |
Spain | 8,794 | 806 | 10% | 297 | 3.4% |
S. Korea | 8,236 | 74 | 1% | 75 | 0.9% |
Germany | 6,215 | 402 | 7% | 13 | 0.2% |
France | 5,423 | 127 | 2.3% | ||
USA | 3,802 | 122 | 3% | 69 | 1.8% |
Switzerland | 2,217 | 14 | 0.6% | ||
UK | 1,391 | 35 | 2.5% |
日本の感染者は1,000人未満で、上から数えて17番目です。新規の患者の増加数は前日から1%未満の6人と、数字の上ではかなり押さえ込めています。死亡率は3.2%と、全体の死亡率よりは低めです。
トップ10の国で死亡率ではかなり低い数字もありますが、これは感染からさほど時間が経っていない国が含まれるためです。
感染者が重体となり、その一定割合が死亡すると考えると、感染者と死亡者の数の間にはタイムラグがあります。現段階では、先進国でも死亡率は3%近くなると考えた方が良いかもしれません(特にハイリスクの高齢者、持病のある人の死亡率は高くなっています)。
WHOによる戦略ガイド
WHOによる各国へのアドバイスは下記です。
- 人と人との接触を避けるように国民に促すこと(医療従事者への二次感染の防止、大規模なイベントの中止・延期勧告、国際移動の制限)
- 早期に検査を行い、感染者を特定し、隔離し、治療すること
- リスクと感染に関する正しい情報を国民に伝え、誤った情報については訂正すること
ほとんどの国でWHOに沿った対策が取られています。
例えば、韓国は、全国に500以上指定クリニックを設置し、ドライブスルーで検査を行うことができるようにして、早期の検査を徹底しました。また、感染者の情報を開示し、感染者が立ち寄った場所へ行くことへの注意を呼びかけました。また、不必要な外出や会合を避けるなど、他者との接触を最小限に抑えるようにも人々へ求めました。
これらの対策により、韓国では感染の速度を抑えることができています。
また、中国はより人と人との接触を避けること、感染者の隔離に重点を置き、民主主義国家ではできないようなかなり大胆な対応を行ったことで、感染の速度を低下させました。
アメリカでのコロナウイルス拡大
アメリカでのコロナウイルスの感染者数も増加の一途です。3月15日の段階で、感染者は3,000人、死者も60人を超えました。
ただし、アメリカは検査器具不足のため、3月9日までで、8,554人にしかテストを行なっていません(worldometersより)。アメリカでは100万人あたり検査を受けた人はわずか26人で、韓国の4,099人と比べると1%以下です。つまり、感染者の数は過小評価されている可能性が高いです。
アメリカの感染の速度はイタリアとほぼ同じ毎日33%の速度で増え続けており、このままのペースが続き、検査をする人が増えれば、感染者が10,000人を超えるのも時間の問題です。
アメリカでのコロナウイルス対策
連邦のレベルでは下記のような方針・対策が出されています
- トランプ大統領が非常事態を宣言
- 検査を拡大する方針
- CDC (Center for Disease Control and Prevention)が50人以上の人が集まるイベントの延期または中止をこの先8週間にわたって行うことを勧告
- ヨーロッパ28ヶ国からの入国制限
- 空港でのスクリーニングを開始(熱がないか、など)
下記のような対策が「社会距離戦略」(social distancing)の一環として、州のレベルで取られています:
- 学校の閉鎖
- バー、レストラン、娯楽施設、ジムなどの営業制限(持ち帰りのみ、席を一定以上離さなければならないなど)
- 一定人数を超えるイベントの禁止(スポーツ観戦やブロードウェイなどを含む)
これらの対策は基本的には「人と人との接触を避けるように国民に促すこと」、「早期に検査を行い、感染者を特定すること」を目的としています。
財政では、「新型コロナの検査無料化、食糧支援、2週間の有給の病気休暇、学生ローンの利子支払いの猶予」などのコロナウイルス対策が法案として下院を通過しました。
また、経済的な影響を緩和するため、金融の側面では、3月15日FRBが利率を1%下げて、ゼロ金利(0-0.25%に金利を誘導)、国債を購入しての量的緩和も開始しました。リーマンショック時の、非常時対応に戻った、と言っても良いかもしれません。
これらの対策がまとまったのは、先週末です。つまり、ようやくアメリカはコロナウイルスに対する対応のスタートラインに立ったところである、と言えます。
株式市場は安堵していますが、米の現実はここからがスタートです
・ハイリスク患者が多く(1/10が糖尿病、1/3が高血圧)重症化しやすい
・無保険者が3000万人(9%)。早期発見が難しくなる
・CDCの予測によれば、対策が遅れると20万人から170万人の米国民が死亡
西欧、日本より環境は苦しい
— アキ@日米豪株投資 (@AkiGlobe) March 14, 2020
今後予想される展開
中国、韓国の例を見る限り、国家が対策を総動員すれば、1-2週間で感染の速度を鈍化させることができると考えられます。
一方で、対策が後手に回り、医療がパンクするような事態(イタリア型)になると、外出禁止令などかなり大胆な対策を打たない限り感染の増加と死亡者の増加に歯止めがかからない可能性があります。
アメリカは、①ハイリスクである持病を抱えた高齢者が多く重症化しやすい、②無保険者が多い、ことからただでさえ被害が拡大しやすい土壌にあります。また、コロナの検査費用が無料化されても、治療や入院費までが無料化されておらず、検査へ行くのをためらわせる事情があることも懸念材料です。
さらに、州が強い権限を持っていて独自に対策を打っており、連邦レベルでの方針が出ていないことも課題です。ある州では感染を抑えることができ、違う州では感染が拡大している場合においても、国内での人の移動で感染が止まらない可能性があります。
今後の展開として
- 国内移動の制限(列車、飛行機による移動の制限)
- 入国制限の拡大(中南米などでコロナが拡大した場合)
- レストラン、バー、ジム、美術館などの施設の強制的な営業制限が連邦レベルに拡大
- 大規模イベントの禁止
- 大学・学校の閉鎖(オンライン授業へ移行)
- 外出制限
が実行される可能性があります。これらはドイツ・イタリア・フランスを始めとしたヨーロッパ各国で既に取り入れられている対策であり、アメリカも追随する可能性が高いです。
いずれにせよ、今後数週間はコロナの感染者数の増加とそれに対する対策で、荒れる相場になることが予想されます。
3月20日アップデート
- 米感染者が10,000人突破。2日間で2.5倍に(3月19日)。ニューヨーク州で5,000人を超え、従業員の75%に在宅勤務を義務付け
- 米国務省が全ての外国への渡航を中止するように米国人に勧告(3月19日)
- カリフォルニア州全土に外出禁止命令(3月20日)
コロナウイルスにより影響を受ける産業・セクター
以下の産業・セクターは大きな影響を受けると考えられます
- 航空、宿泊、観光、レジャー(不要不急かつ移動を伴うため、大きく影響を受けます)
- 飲食(人との接触を控えるために、人々が外出を控え、需要が大きく減少します)
- 百貨店、ショッピングモール(外出禁止のため、スーパーマーケットやドラッグストアなどの生活必需品を扱う以外の実店舗は大きな打撃を受けます)
- エネルギー(人の移動が減ることで石油・ガソリンの消費量が減り、石油価格の下落に繋がります。特にシェール業者が痛手を受けます)
- 金融(ゼロ金利に加え、上の産業で倒産する企業が出た場合、損失を被ります)
- 広告(このような状況ですと、大企業は広告への支出を減らす可能性が高いです)
一方、宅配のアマゾンやネットフリックスなどオンラインの娯楽については、人々が家で時間を過ごす時間が増えると追い風かもしれません。
アメリカの医療制度についてより知りたい方は、こちらをご覧ください。
[st-card myclass=”” id=2224 label=”分析” pc_height=”” name=”” bgcolor=”” color=”” fontawesome=”” readmore=”on”]
米国株のビジネス・株式の分析は下記のボタンから飛べます。
[st-mybutton url=”https://akihbs.com/category/us-stocks/” title=”米国株の記事一覧へ” rel=”” fontawesome=”” target=”_blank” color=”#fff” bgcolor=”#e53935″ bgcolor_top=”#f44336″ bordercolor=”#e57373″ borderwidth=”1″ borderradius=”5″ fontsize=”bold” fontweight=”bold” width=”” fontawesome_after=”fa-angle-right” shadow=”#c62828″ ref=”on”]