HBSを卒業しました

HBSを5月25日に卒業しました。当日はあいにくの雨で、午前中のHarvard YardでのHarvard全体の卒業式、および午後のHBSでの卒業証書授与式は濡れながらの参加となりました。天候も含め、思い出に残る卒業式になりました。

午後のHarvard YardでのスピーチはMark Zuckerbergが行いました。Campaign Speechかと感じさせるような要素もありましたが、①”Purpose”を持つこと、②まずやってみること、③コミュニティへの貢献、の大切さに僕は共感しました。”There is always someone who wants to slow you down”のラインには特にそうだよな、と。

卒業式は終わりであり、始まりでもあります。これから世の中に対してどのように影響を与えていくか、が勝負。卒業生として恥じない活動をすることで、HBSにも貢献していきたいと思います。


僕は卒業後はミネソタ州のMinneapolisに移り、新しい挑戦をすることになります。それに伴って、ブログのタイトルも変えようと思います。守秘義務があり職務関連の内容は書けず、ブログの更新頻度も落ちる可能性が高いですが、MBA後に海外で就職して働くという選択肢をとるとどのような生活になるのか、をメインで伝えられたらと思います。

2年生春学期の振り返り

2年生の春学期が終わった。これまでの1年生2年生の秋学期と続いてきて、これがHBSでの最後の学期となる。振り返ってみたい。

学業

春学期は最後の学期ということもあり、先学期より2科目を増やし、”Launching Tech Ventures”、”Scaling Tech Ventures”、”Strategic IQ”、”Designing Competitive Organization”、”General Management Processes and Action”、”U.S. Healthcare Strategy”、”Innovating in Healthcare”の7科目を履修した。また、学期最後の3日間は”Bridges”という卒業後のキャリアや生き方を考えるセッションを履修した。

“Launching Tech Ventures”からはProduct Market Fit(製品がお客さんのニーズに合っており、かつビジネスとして成り立つことが確認できること)を実現するために製品・サービス、成長戦略、営業・マーケティングについて考慮すべき点やCustomer Life Time Value(顧客生涯価値)、Customer Acquisition Cost(顧客獲得コスト)をいかに測定し、改善していくかについて学んだ。”Scaling Tech Ventures”では6S (Staff, Shared Value, System/Structure, Series, Scope, Speed)のフレームワークに基づいて、Product Market Fitを実現したスタートアップをいかに急成長させていくべきかについて学んだ。”Strategic IQ”からは競争力を持続するために、環境に合わせて変化し、実験から学び続ける企業をいかに実現させるかについて学んだ。”Designing Competitive Organization”からは戦略を実行する組織に必要な7つの要素を学んだ。”General Management Processes and Action”からは、いかに経営者として意思決定、組織学習 、変化のプロセスを設計し、実行していくかを学んだ。”U.S. Healthcare Strategy”と”Innovating in Healthcare”からは米国ヘルスケア業界の知識とその中で成功するための条件を学んだ。成績は全て「2」以上でStrategic IQとDesigning Competitive Organizationは「1」だったので、目標達成だ。

授業からも学びが多かったが、最も印象深かったのはBridgesの最終日に聞いた、Clayton Christensen教授のHow will you measure your life?”の講義だった。この講義の中で、教授は企業の戦略・組織の理論を人生にあてはめて、「いかに人生を自分の生きたいように生きるか」、ということを語った。

Clayton Christensenは実務家としても教授としても成功した人だが、彼は自分が最も大切にしてきたのは家族と5人の子供を育てることだと言う。彼は土曜日と日曜日は家族のための時間にすると決め、自分の決意を同僚や上司にも話して土日に仕事が入らないような環境を作り出し、それを実行してきた。彼は、「何を人生において成し遂げたいか、どうやってそれを実現するか、そのために自分の時間という資源をどのように配分するかを考えないと、年収や地位など目に見えやすい成果を追い求めて仕事のみに時間を割いてしまい、結果として本当に得たいものを得られなくなってしまう」と語った。彼の講義は示唆に富み、どのように生きるべきかについて考える良い機会となった。また、脳梗塞など大病を患いながらもリハビリを繰り返して教壇に復帰し、学生に教えることを止めず、教壇に立ち続けるその姿は人知を超えた神々しさすら感じさせ、彼の一言一言が胸に刺さった。 体調悪化のために来年からは講義をさらに縮小するということで、彼の講義を受けることができるうちにHBSに在籍できたことは幸運だったと思う。

友人、課外活動 

春学期は秋学期に引き続き、週に1-2回友人を招いてホームディナーを行った。春学期中はアメリカのトランプ政権の100日間、イギリスのBrexit交渉の進展、フランスではルペンの台頭、と特に西側諸国の政治で大きな変化があったので、それらを話しながらのディナーは楽しいと同時に、そういう見方もあるのか、と視点を広げるきっかけにもなった。また、妻が作る肉じゃがや手巻き寿司は友人たちに好評で、友人たちと仲を深める良い機会となった。

また、Bridgesの期間中は約1年ぶりにセクション(クラス)で集まり、ケースディスカッションを行なったが、まるで地元に帰ったような懐かしさを感じ、HBSはやはりこのセクションの体験がユニークだと感じた。1年間を共に過ごした93人の仲間とは卒業後も大学主導の5年に一度の同窓会でボストンで集まることになる。93人の仲間の進路はまさしく国も業界も様々で、彼らと今後の人生を共に歩んで、時々にお互いの近況報告をし合えると思うとワクワクする。65周年まで同窓会が開かれるということなのでいつまで参加できるかは分からないが、体がついていく限り、できるだけ長く参加したいと思う。

課外活動としては、文科省のスーパーグローバル・ハイスクールに採択されている長野県上田高等学校の生徒17人が高校のプログラムでボストンに来た際に、スタートアップに関する講義をHBSで行った。彼ら・彼女らは非常に熱心に講義を聴いてくれ、質問も活発に出て盛り上がった。僕としても何かを教えることは楽しく、卒業後もこの2年間で学んだものを継続的に社会に還元していきたいと思う。

加えて、今学期もHarvard Business Schoolの公式ブログの管理とこの個人ブログも書き続けて、こちらで学んだことを発信し続けた。2年間続けた個人ブログは今年のHBSの合格者の中でも読んでいた人が多く、HBSやMBAの実情を伝えることに少しでも貢献ができたのではないかと思う。 

また、最終授業から卒業式の間の5月中旬にHKS (Harvard Kennedy School)主催のIsrael Trekに妻と参加し、こちらも多くの学びと新しい繋がりを与えてくれた。旅行でもアイスランドとベリーズへ行ったりと、今学期はかなり見聞を広めることができたと思う。

キャリア

今学期は”Innovating in Healthcare”という授業の一環でBoston Children’s HospitalのBioinformaticsチームの依頼を受け、同級生2人とともにSMARTというIT Platformのビジネスプランを策定した。SMARTは互換性が低い米国の病院・クリニック向けのEMR (Electronic Medical Records)向けに互換性のあるソフトウェアを提供するためのプラットフォームという位置付けで、米国保健局(National Institutes of Health)からも支援を受けているNPOが運営している。

SMART: https://smarthealthit.org/

このプロジェクトを選んだ理由は、「病院・クリニック間の情報共有を促進させることで、効果的かつ効率的に患者さんに適した治療法を見つけやすくする」という点で、僕の将来のテーマに繋がると考えたからだ。

このプロジェクトを通じ、米国のITシステム業界がどのようになっているのかについてや、病院・クリニックの購買の意思決定者や意思決定プロセスについての理解が深まった。米国のITシステム業界は広く、統一された規格がないため、各企業が独立した規格を用いてソフトウェアのベンダーを抱え込んでいるため、結果として病院間で用いているソフトの互換性がなく、ヘルスケアのシステムとして非効率な状態となっている上、新たに参入する企業にとっても各ベンダーに合わせた仕様を作らなければならず、コスト高に繋がっている。また、病院・クリニックの購買はIT担当だけでなく、実際に診療を行う診療部門やグループ病院との調整が必要で、提案から成約までの期間が1年から2年と長く、この意思決定の長さがスタートアップがヘルスケア業界に入る際の障壁となっている。このプロジェクトを通じて、ヘルスケアで新しいビジネスを起こす際にどのような壁を乗り越えるべきかを認識できた。

同級生の2人が特に優秀だったこともあり、プロジェクトの成果はクライアント、教授ともに高い評価をいただけた。今回のアウトプットはSMARTを運営するNPOが5月末に申請する補助金の土台となる予定だ。


全体を通じて、今学期は忙しい学期だった。通常5科目選択のところを、最後だから学べるだけ学ぼうと7科目選択したのだが、やはり結構多かった。加えてヘルスケア系の授業は新鮮で学ぶことが多い一方、僕は前提知識がないためにかなりそこに時間を使った。その分学ぶことが多かった上、ヘルスケア系のクラスメイトともより多くの繋がりを築けたという点で非常に実りが多かった。

HBSの学生とも定期的にホームディナーを行って仲を深められたと同時に、HKSのIsrael Trekに参加してHKSやHLSとの繋がりも夫婦で広げることができたのは非常に良かった。

もう少しできたか、と問われれば、できたこともあるのかもしれないが、得られたものには満足をしている。7月からは久方ぶりの仕事をする生活だ。新しい挑戦に、ワクワクしている。

HKS Israel Trek (2)

8日間のIsrael Trekでは学ぶことが非常に多かった。同時に、経済、社会についてや、日本についても考えさせられた。

経済

イスラエルはStart-up Nationと呼ばれるくらいスタートアップが盛んな国で、実際に人口あたりのスタートアップの数は世界一で、人口は約800万人と日本の1/15程度に関わらず、スタートアップの数は日本を上回っている。スタートアップの分野はハイテク関連が多く、例えばGoogleに買収されたナビゲーションのWAZEや自動運転のコア技術の一つでありIntelに買収されたMobileyeなどがイスラエルを代表する企業だ。

なぜスタートアップが多いのかについては、移民、徴兵制、文化の3つの理由が挙げられる。

1つ目は移民だ。イスラエルはユダヤ系の移民を積極的に受け入れており(一方、ユダヤ人以外が移民するのは非常に難しい)、アメリカ大陸、ヨーロッパ大陸からユダヤ人が移住してきている。後述するようにユダヤ系は教育に非常に力をいれる文化があり高等教育を受けた人の割合が高かったことに加え、若い層が多く、経済に貢献するだけでなく社会保障費も安いという理想的な移民だった。彼ら・彼女らがイスラエルに多様性のみならず経済的な恩恵ももたらした。

2つ目は徴兵制だ。イスラエルでは「ユダヤ人」は男女問わず兵役の義務があり*、男性は3年、女性は通常は男性よりもやや短い期間、軍に従事する。軍での経験は国民にとって、ただ単なる就業経験ではなく、教育・就業経験・ネットワーキングの場となっている。有名なのはスタートアップ創業者を多く排出している8200部隊だが、それ以外にもMedic(救護兵)として教育を受けて実務経験を積んだ後に医者になる人や、軍のレポーターを経験した後にテレビ局で勤めたりジャーナリストになる人もいる。加えて、軍の縦・横の繋がりは強く且つフラットで、兵役を終えた後にもその分野におけるネットワークを持つことになる。特にイスラエルではテルアビブにハイテク企業が集中しているため、ネットワークの密度が濃くなり、さらに効果的だ。

3つ目は文化だ。ユダヤ人は約2,000年の間、ヨーロッパや中東で迫害されてきた歴史を経験しており、土地や金融資産などの資産は政権次第で奪われるという感覚を共有している。その歴史から生まれた教訓として「実物・金融資産は奪われても頭の中までは奪われない」ということを知っており、それが教育に対する熱意に繋がっている。事実、イスラエルの大学進学率は日本を上回っている。

また、「権威に対する尊重がない文化」というのも現地で良く聞いた。日本やアメリカを始めとした多くの国では、上司に対して意見をする際に多少の遠慮があるのは通常かと思うが、イスラエルでは意見は意見として人と切り離し、はたから見るとちょっと言い過ぎなのではないかというラインまで意見をぶつけ合うとのこと。実際にKnesset (イスラエルにおける国会)を見学した時にも、与党の一人が教育の予算に関するスピーチをしている際にも関わらず、野党が「それは違う、兵器への予算を減らして教育により予算を振り分けるべきだ」とスピーチ中に割り込み、大声でスピーチの最中にディベートをやっていた。日米ではスピーチ中に割り込んで意見をするというのはかなり失礼なことで、この議論に対するハードルの低さがイノベーションに繋がっているのか、と感じた。

さらにユダヤ教を信仰するユダヤ人としての一体感もネットワークの形成に役立っている。ユダヤ人にとっての教会であるSynagogue(集まりそのもの、または集まる場所、という意味)では世代の異なる人が集まり、そこでの繋がりがビジネスに繋がることもある。また、イスラム教徒が圧倒的に多い中東の中ではユダヤ人は少数派であり、少数派の中で価値観を共有しているということで、より結びつきが強いように感じられた。

教育への熱意が高く、高等教育進学率が高い上に、軍隊の中での職業経験・ネットワーク形成が重なり、良質な人材が育成される。また、外部からは移民という形で異なった考え方をもつ人材が定期的に入ってくる。加えて前提を疑い徹底的に議論をするという文化があり、議論を通して新しいアイデアが生まれていく。こういった仕組みは今の日本に欠けているもので、スタートアップを生み出す環境づくりという点でシステムとして学べることが多いと感じた。

社会

イスラエルは上記で述べたようにイノベーションに対する受容度はとても高い国だが、安全に関わるような社会問題・安全保障に関することになると驚くほど保守的だ。これは日本からでは見えにくいことだったが、彼らの文脈を考えると多少なりとも理解できる。

一つ目は、国内のユダヤ系とアラブ系のイスラエル人の対立だ。この対立の背景には、イスラエルという国自体の成り立ちがアラブ人との戦争の歴史だということがある。1947年の国連決議を受けて1948年に独立宣言をして、そこからエジプト、シリア、イラク、レバノン、ヨルダン相手に生存権をかけた第一次中東戦争を戦った。1967年のSix-Day Warではこちらから戦争を仕掛けて、エジプトからシナイ半島、シリアからはゴラン高原、ヨルダンからは東エルサレムとヨルダン川西岸を奪った。(平和条約締結と同時にシナイ半島はエジプトへ返却した。それ以外は今に到るまで国際法上の違法占拠の状態が続いている。)1973年のYom Kippur Warにもエジプト、シリアとの戦争を行い、イスラエルの国土を防衛した。その後、エジプトとヨルダンとは平和条約を結んだが、シリアとは2017年現在も平和条約が結ばれておらず、ガザ地区を実効支配するハマス、レバノンを実効支配するヒズボラ、中東地域でシーア派の覇権を広げようとしているイランからも安全保障を脅かされており、平時とは言えない状況にある。同時に、イスラエルは戦争を通じて支配する地域を広げてきたため、国内にもパレスチナ人(およびアラブ系イスラエル人)を多く抱えている。

そんな状況の中で、イスラエルの課題となるのは、「ユダヤ人のための国としてのイスラエル」と、「民主主義の他民族国家であるイスラエル」の葛藤だ。イスラエルは国民の約20%はアラブ系イスラエル人だ。アラブ系イスラエル人の中にはイスラエルの社会に順応している人もいるが、多くは同じ国の中で、全く違うコミュニティに属している。例えば、ユダヤ系イスラエル人とアラブ系イスラエル人は違うコミュニティに住み、異なる学校に行き、異なる宗教施設に行く。あるアラブ系イスラエル人によると、「18歳になって他の都市に行くまで会ったことのあるユダヤ人は警官やガードマンのみで、一般的なユダヤ人と話したことはなかった」と。アラブ人との戦争の歴史もあり、軍隊はユダヤ人が大半を占め、ユダヤ系イスラエル人による治安維持を名目とした統治がされている。

この社会を二分する構造は、根深い。2-state solutionとして現在イスラエルが統治しているエリアをイスラエルとパレスチナに分断し、ユダヤ系イスラエル人はイスラエルに、アラブ系イスラエル人はパレスチナに移住する、というのが一つのアイデアではあるのだが、これも6つの論点でイスラエルとパレスチナで折り合う必要があり、合意とその実行は極めて困難だ: 1. Border、2. Soveringty、3. Security, 4. Settlements, 5. Jerusalem, 6. Refugees。トップダウンでの交渉が進まないのであれば、と草の根では、ユダヤ系とアラブ系の共同プロジェクトを行うIsraAidのようなNGOや、どちらのコミュニティからも通える教育機関が存在しているが、相互の不信感はまだまだ強く、インパクトも限られている。

二つの社会がより大きなスケールで交わるまでにはトップダウンでの政治の強いリーダーシップがあるか、もしくは草の根の活動がさらに広がっていく必要があると感じた。

二つ目は経済格差だ。特にスタートアップで盛り上がるテルアビブでは高等教育を受けた人材やスタートアップのイグジットで儲けた人が移り住む一方、住宅やレストランなどの価格が上がり続けて、それ以外の人たちが生活に困窮するようになってきている。失業率は4%程度とかなり低いのだが、働いても都市で生活できる給料が得られていない人が多いというのが、現在イスラエルが抱える大きな社会問題の一つだ。これに対して、政府は教育投資を増やしたり社会保障をより充実させることで対応しようとしているが、こちらもその分安全保障費を減額して安全を脅かして良いのかとの議論になっている。

社会問題に関してはイスラエルと日本が抱える問題の程度は異なるが、一つ目の多様性がありかつ包容力のある社会をいかに実現するかというテーマは共通している。日本も移民に関しては議論を避けているが、根本には自分たちと異なる存在を受け入れることに対する恐れがあるように思える。この恐れ、実は相手のことをただ知らないだけで、日々触れる情報の中から勝手に相手のステレオタイプを作ってしまっていることが多い。この人々の恐れというハードルを越えるためには、政治家が”inclusiveな国に私たちはなる”というビジョンを繰り返し、繰り返し語り、草の根で異なる背景の人が交流し、協働する機会を増やしていくことが必要なのではないかと思う。

最後に、僕自身についての再発見ではあるが、僕はやはり経済・社会について考えたり、議論するのが好きだ。経済・社会の問題は複雑なことが多い上、国や地方の単位となると往々にして関係者も多く物事を早く進めるのが難しい。だからこそ、何が問題で、どうすればそれを解決でき、どうやって解決策を実行するべきか、を考えることが楽しい。仕事のみならずコミュニティに対する貢献などを通じて、僕も社会をより良い方向にできるようにしていきたいと感じた。

* ここで「ユダヤ人」としたのは、イスラエルの中で約20%を占める「アラブ系」イスラエル人に徴兵義務がないためだ。イスラエルの中ではユダヤ人とアラブ人が居住場所や教育機関など明確に違うコミュニティで過ごしているが、兵役の義務という点でも区別されている。

 

HKS Israel Trek (1)

5/13-20の日程でHKS (Harvard Kennedy School)のIsrael Trekに妻と参加した。こちらは8日間の間にJerusalem、Tel Aviv、West Bank、Golan Heights、Kibbutz near the Gaza boarder、Dead Sea、Masadaとイスラエルの主要な見所をパレスチナ自治区のエリアまで含めて回るというかなり意欲的なプログラムで、密度の濃い8日間だった。Israel TrekはHBSでも行われているが、下記の2つの理由で個人的にはHKS主催のものに参加して良かったなと感じる。

■ プログラムがより教育的要素が強いものとなっている

HBS Israel Trekのプログラムと比較してみると、Jerusalem、Tel Aviv、Golan Heights、West Bankなど主要な場所に行くことは共通している。違いとしてはその密度の濃さだ。HBSのトレックは自由時間が比較的多くて観光要素が強く、夜もパーティやクラブなどイスラエルを楽しむ要素が多いのに対して、HKSのトレックは朝8:00から夜23:00近くまでほぼ毎日予定が入っており、朝・昼は歴史的な場所や政府機関への訪問、夜もディナーに元外務大臣やNGO/NPO責任者が来て食事と同時にスピーチがされるなど、ぎっしりと教育的な要素が詰まっている。各都市・訪問先を回る際にも知識豊富なガイドとイスラエル人数人が一緒に回ってくれるため、質問があればすぐに聞け、イスラエルについて学ぶにはこれ以上ないほどの環境が整えられている。

プログラムがぎっしり詰まっていて忙しいが、その分学ぶことが多かったのは確かだ。イスラエルの政治、歴史、経済を短期間で学ぶのに最適なプログラムだと思う。

■ HKSやHLSといった他のスクールの学生と仲良くなれる機会である

HBSでは2年目の選択授業でHKSやHLS (Harvard Law School)の授業をクロスレジストレーションで履修することはできるが、履修をしないと他のスクールと関わる機会は実はあまりない。それだけに、HKS主催のトレックに参加するのは、新しい友人を作る良い機会となる。

実際、HBSにいる人とHKSやHLSにいる人はバックグラウンドや関心が異なり、話していて新しい発見が多く、面白い。例えば、とあるHKSからの参加者は10数年の中東駐在経験を有する元軍人のアメリカ人男性で、卒業後にはアメリカの州議員選挙に立候補する予定であり、また、とあるHLSからの参加者は国連で長く勤めた経験を持つブラジル人女性で、卒業後にはまた国際機関で働く予定だ。彼らは政治、歴史、国際情勢に詳しく、話していても「そういう観点があるのか」と驚かされることが多い。ビジネスをしていると政治関連の視点が重要となることもあり(海外進出や規制関連など)、仕事の上でも付き合うことが将来あるかもしれない。

何よりも、人としても面白い人が多く、一緒にいて楽しい。8日間の濃密な時間を共に過ごすことで生まれる絆もあり、良い友人ができたという意味でもとても良かった。


一方、HBS主催のIsrael Trekに参加するメリットしては、①自由時間が多く、回りたい所を各自で回ることがしやすい、②HBSの他のセクションメイトと仲良くなる機会となる、③HBSの学事日程に合わせてトレックが組まれているので参加しやすい、があるだろう。

どちらを選ぶにしても、日本からではなかなか行く機会がなく、かつ個人旅行ではなかなか見えない部分が多いイスラエル。1年目はJapan Trekを運営することで得られるものが非常に多いので、個人的にはJapan Trekを運営した方が良いと思うが、1年目か2年目のJapan Trekと重ならない期間にHKS主催のIsrael Trekに参加することは非常におすすめだ。

MBA Oath

MBA Oathという宣誓式が卒業式の一日前の今日に行われ、それに参加してきた。これは医者にとってのヒポクラテスの誓いのように、マネジメントの道を進むリーダーにとっての倫理規範となることを目指して2009年に作られたもので、この理念に賛同するMBA生が自主的に参加するイベントだ。2017年のこのイベントは学生とその親族が集まり、Burden HallというHBSで最も大きな会場が半分以上は埋まった。

このイベントで幸いにもスピーカーの一人に選ばれたので、なぜ僕がこの宣誓に署名するかについて、下記のようなスピーチをしてきた。

Coming from a tiny East Asian country, called Japan, two years at HBS was full of surprises.  Who in the world have gone through 500 case discussions facilitated by world-renowned professors. Who have more than 90 friends, who share aspiration to make a difference in the world. Who have close-knitted global community to which you can reach out throughout your entire life. Most people at least in my country do not have a single one of them. This is a privilege, and with great privilege comes great responsibility. As a person who is lucky enough to receive such amazing education, make friends, and build networks, I would like to contribute to society. This is the reason why I sign the oath.

最初の”a tiny country”の出だしのところは笑いを狙っていたが、狙った通りに会場が笑ってくれて、その後がやりやすくなった。with great privilege comes great responsibilityはよく引用される表現の一文字を変えたのだが、気づいた人は気づいてくれたかなと思う。

HBSで2年間を過ごせたということは非常に幸運なことで、僕個人としては得たものを活かして社会に還元していく責任があると思う。この思いを忘れずに、社会を少しでも良い方向に導けるような活動をしたい。

2年間でHBSから得られたもの

HBSでの最後の授業、Bridgesが終わった。Bridgesは3日間のいわゆる締めのプログラムで、地域・業界別のネットワーキングができたり、職務別のアドバイス、今後のキャリアに関するアドバイスを得られる機会だ。期間中、1年間を同じ教室で過ごしたセクションメイトと久方ぶりに同じ教室で再会し、近況を話し合い、その後に授業で再びケースを議論した。まるで1年前に戻ったようで、自分がいかにこの空間を好きだったか、を改めて感じた。また、Bridgesを通じて、自分がこの2年間で何を得たのか、がよりクリアになった。

昨年「MBA受験-ビジネススクールで得られるもの」、でMBAの価値として「A Good Business Foundation」、「Networking」、「Career Change Opportunity」の3つが主要な価値で、「Quality Time」、「Brand」の2つを加えた計5つが価値と述べた。それらが得られたというのはそうなのだが、最初の3つについては得られたものについてより具体的に表現できるようになったことと、少し感じ方が変わってきたので、今回続編を書いてみようと思う。内容はMBA一般というよりも、僕がHBSで得られたものについて、だ。

Personal Development

最も大きな成果は人としての成長だと思う。HBSでは1年目、2年目ともに人生の価値観について考えさせられる機会があり、その機会を経て、人生についての理解が深まった。

BSSE (Building Successful and Sustainable Enterprise)でClayton Christensenが行う最後の講義の”How will you measure your life?”もその一つだ。彼は実務家としても、教授としても成功した教授だが、彼が最も大事にしているのは妻と5人の子供を育てることだと言う。そのためにも、彼は土曜日と日曜日は家族のためにあてる時間としてコミットして、BCGで働いていた時から土日は働いていなかった。何を人生において成し遂げたいか、そのためにどのように自分の時間という資源を配分しているか、それをどうやって実現するか、という彼の講義は非常に示唆に富んでおり、彼の講義を受けることができたのは幸運だったと思う。同じテーマでFounders’ DilemmaのShikhar Ghoshも「幸せに最も影響を与えるのはどのような質のRelationshipsを築けているか」であり、”Relationships trump everything”ということを教えてくれた。人生における自分なりの成功の定義は何か、それを実現するために日々どう行動するべきか、について、HBSは自分なりの答えを見つけるための機会をくれた。

人との関わりを通じて、リスクについての考え方も変わった。HBSには本当に多くのゲストが来る。起業家もいるし、大企業の役員もいるし、政治家もいるし、訪れるゲストの幅が広い。彼らの生き方を聞き、彼らと話していて気づくのは、別に彼らが僕らと別次元に住んでいる人ではないということだ。いわゆる自分の人生を生きている人とそれ以外の人の違いは、リスクを取っているかどうか。彼らが口々に言うのは、「リスクを取らないことがリスクだ」、と。多くの教授もその見方を後押しする。一度や二度ではなく、2年間毎日のようにそういった話を聞いていると、自分もやれるという自信が生まれてくる。挑戦をしての失敗は僕を強くしてくれる。HBSは僕に「やればできないことはない」という自信をくれた。

HBSはBusinessについて学ぶ場かと思っていたが、実は人生について学ぶ場だった。自分の本当にやりたいことは何なのだろうか。何を自分の人生において大切にするべきであろうか。21ヶ月という比較的長い時間があったため、そういった質問を自分に問いかけ、考え、妻や友人や教授と議論する時間が持てた。これにより、自分がこの先の人生を生きる上での土台を作ることができたように思える。僕自身は、実はHBSに来る前にはもう自分の価値観はある程度固まっていてそこまで変化はないかと思っていたのだが、振り返ってみるとかなりの変化があったように思える。これは予想していなかったが、得られたものの中で最も大きかったものの一つだ。

A Good Business Foundation

ビジネスについては、幅広い視点を身に付けることができたと思う。特にLEAD (Leadership)の授業が素晴らしく、リーダーシップについては一生使えるような考え方を学べた。

HBSの1年目の必修科目はよく練られており、ケースメソッドでビジネスを包括的に学べるようになっていた。大きく分けると、マクロ経済・グローバライゼーション(BGIE、FIELD 2)、リーダーシップ(LEAD, LCA, FIELD 1)、ファンクション(STRAT, MKT, FIN1/2, FRC, TOM)、アントレプレナーシップ(TEM, FIELD 3)の計4つ。ケースメソッドでは様々な経営の場面において、①何が起きているのかを分析し、②何をするべきかを立案し、③どう実行すれば良いのかのアクションプランを立て、④実行の際の障害やリスクとそれらを解決または減らす方法も立案する、ということをひたすら行うため、「どういう場面で、何を、どのように考えれば良いのか」、が思考のプロセスとして築かれる。この思考のプロセスが、より成功確率が高い意思決定をするために役立つと感じる。

一方、2年目は全て選択科目で、自分の伸ばしたい分野について学ぶことができた。僕の場合、戦略(Strategy and Technology、Strategic IQ)、組織(General Management Process and Actions、Designing Competitive Organizations)、ヘルスケア(U.S. Healthcare Strategy、Innovating in Healthcare)、アントレプレナーシップ(Founders’ Dilemma, Launching/Scaling Tech Ventures)、ネゴシエーション (Negotiation)、ファイナンス(Entrepreneurial Finance)、マクロ系(Globalization and Emerging Markets)と幅広く履修した。

得られたものの一例は、戦略的な思考がある。こちらに来て学び始めて、僕の場合、プロダクトマネジャーとしてプロダクトレベルの「戦術」や「アイデア」は考えていたが、事業レベルの「戦略」についてきちんと考えることができていなかったことに気づいた。僕は新しい機能やデザインでの商品の差別化など、プロダクトマネジャーとして単年度で結果を出すような施策は考えて実行してきたが、中長期でどのように持続可能性のある競争優位性を築いていくか、そのためには組織に対して影響をどのように与えていくべきか、という観点が抜けてた。あの時の僕が今と同じように考えられたら、より戦略的な提言と実行ができたと感じる。

もう一つの例は、リーダーシップだ。僕は前職での経験を通じて、人に動いてもらうためには「情熱、論理、思いやり」が必要であり、そのためには自分が最もお客さんや商品、技術を理解して、チームを動かしていく必要がある、と考えてた。今でもその考え方は残っているが、今ではチームをどうやってデザインし、立ち上げ、マネージするかについて、より多くの要素があることを知っている。前職で初めて人のマネジメントを経験した時にはマネジメントについて「何を、どう考えれば良いのか」、が全て手探りで一つずつ自分の使える道具を探していく感じだったが、今では以前は知らなかった道具があることを知っているので、その道具を使って、より良いリーダーシップがとれる気がしている。

MBAに来るまでは、学習から「知識」がつくのかと思っていたが、実際には様々な状況における「思考方法」や「視点」を学んだという方が近い。この学びがどの程度役に立つのかは卒業後試してみないと分からないが、少なくとも僕は自分の思考の広さと深さが広がったことには十分の価値があったと思う。思考の広さと深さは一生磨き続けていくべきもので、MBAはそのベースを作ることを助けてくれた。

Networking/Friendship

HBSは仕組みに優れた大学であり、その最たるものが「セクション」という仕組みだ。HBSの場合、セクションと呼ばれる93-94人のクラスで1年目を過ごし、同じ教室で、授業を一緒に受ける。授業の大半がケースディスカッションのため、だんだんとその人の価値観や人となりも分かってきて、不思議な親近感を抱くようになる。1年目は何をするにもセクションが主な単位となるので、自然と独自のカルチャーができてくる。セクションごとに卒業後も5年ごとに集まるReunionという機会が用意されているため、この友人関係は(HBSと関わり続ける限り)一生続くものとなる。卒業した時点で誰もが93-94人の一定以上の深さを有する友人を持て、かつ5年後も彼らと会うために戻って来ようと思わせるような帰属感を持たせるこのセクションという仕組みは、とてもよくできている。

加えて、セクションが全てではなく、1年目はディスカッショングループやFIELD 2という新興国のコンサルティング・プロジェクトでセクションを跨いだ人間関係が築け、2年目の授業でさらに人間関係が広がる。Trekの運営や参加、カンファレンス運営、その他クラブ活動等々で、何だかんだでHBSだけで2年間で300人は友人・知り合いと呼べる人はできると思う。ボストン自体も他の大学の学生や研究者の人たちとの出会いの機会が豊富で、出会える人の幅も広い。僕の場合、この2年間でFacebookで新たに繋がった人の数は400人だった。

また、HBSはAlumniとの結びつきも強く、驚くぐらい卒業生が後輩をサポートしてくれる。こちらも卒業後に出会うことができる人の幅を大きく広げてくれる。

世界中に、助け・助けられ、共に刺激し合える友人がいるというのはとても幸せなことだ。この幅広さと深さの人間関係は、僕の一生の財産になるだろうし、全員とは難しくとも、特に仲の良い友人とは今後も定期的に連絡を取り合うことで、より関係を深められるようにしたいと思う。

Career Change Opportunity

HBSを出たことによって、就労の機会が大きく広がった、というのは実感としてある。僕自身、地域と業界を変えて米国で就職することにしたが、これはMBAを経なければほぼ無理であっただろう。

一方で、友人と話していて、見えていなかった現実もあるなと感じた。一つには、インターナショナル生にとってのMBA後の米国就労の厳しさ。米国で就労するためには、企業にH1-Bビザという抽選で取得するビザの申請をしてもらわなければならず、このビザサポートをしている企業が本当に少ない。いわゆるスタートアップ系企業はほぼビザサポートをしないと思っていた方が良い。中規模くらいの会社でも就労のための門がそもそも空いておらず、文字通り門前払いだし、大企業でも人気のあるところは競争が厳しい。ネットワーキングで門をこじ開ける方法もあるが、狭い道だ。科学技術の学位取得者に関しては(特にコンピューターサイエンス)より門が開いているので、単に米国での就労が目的なのであれば、エンジニアリングの専門で大学院に行った方がずっと良いだろう。

二つ目は、年齢が上がってから来ると、納得いくポジションが見つかるとは限らないことだ。米国MBAの平均入学年齢は約28歳で、卒業が30歳前後となる。いわゆるMBA採用をしている企業では、入社時点が実務経験3年+MBA2年の28歳と、実務経験7年+MBA2年の32歳を同じMBA卒として同じポジションで採用することが多いため、実務経験が長い人ほどキャリアアップというよりも、キャリアの横滑りの可能性が高くなる(前者がスタッフ→MBA→マネジャーなのに対して後者はマネジャー→MBA→マネジャー、など)。特に欧州から来る学生はやや年齢が上のことが多いので、この点でオファーを受けるべきかどうかで悩む学生が多いようだ。

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全てをひっくるめて、僕がHBSに来て良かったかと聞かれれば、間違いなく良かったと思う。21ヶ月の機会費用や計24万ドル以上のコストは非常に高いが(奨学金がなければ本当に苦しかった。。。)、生き方、友人、仕事の土台を築けたし、今後の人生をサポートしてくれるようなネットワークへのアクセスや「HBS卒」という一定の信頼を得ることもできた。

MBAを考える人は、検討しているプログラムの学業の内容だけでなく、卒業生が何を得ているかを上記のような観点で検討してみると良いのではないかと思う。

HBS授業紹介: U.S. Healthcare Strategy

HBSはInitiativesとしていくつかの領域の強化をしており、Healthcare Initiativeもそのうちの一つだ。日本人の視点からすると、なぜヘルスケア?、非営利の分野なのではないか?、と思う人もいるかもしれないが、米国ではヘルスケアはGDPの17.8%を占め、インフレ率以上の成長を続ける民間主導の産業であり非常に重要度が高い(2015年)。おまけに、国民一人当たり$8,508 (約92万円)も使っていながらOECD Health Statisticsによれば、医療の質はOECDの国の中でも低い位置にあり、HBSとしても「どげんかせんといかん」というわけだ。

U.S. Healthcare Strategyは元McKinsey、元Kelloggの教授であるLeemore S. Dafnyが開講しているコースだ。Leemoreは特にヘルスケアに関する公共政策の分野ではかなり知られた教授。

2017年のコースは半セメスター(約8週間)で、扱うケースは米国のヘルスケア業界の幅広さを示すように、病院、クリニック、製薬、保険とかなり幅広い。具体的には病院では保険と診療の垂直統合モデルであるKaiser、水平統合のケースであるPartners Healthcare、クリニックは透析クリニックのDaVita、保険は米国のAffordable Care Act成立後に急伸したOscar、Preventive Careに焦点をあてたOak Street Healthなど、それぞれの分野で注目すべき企業・組織が選択されている。教授が経済学に強いためか、視点は公共政策に近く、マクロ経済やミクロ経済の視点を多く用いる。具体的に扱うコンセプトの例は、垂直統合モデル、水平統合モデル、代替財・補完財、規模の経済・範囲の経済、など。買収に関連して、独占禁止法や米国の訴訟プロセスについても触れる。HBSの1年目の必修では特にミクロ経済はさわり程度でほとんど扱わないため、必修科目との重なりはかなり少ない。

教授のファシリテーションはうまく、結構バシバシと突っ込んでいくし、生徒同士で議論もさせる。学生はMD/MBA (医者とMBAのダブルディグリープログラム)、元ヘルスケア業界、Public Health専攻の学生が多く、業界の知識がかなり出てきたりして生徒同士の議論からの学びも多い。米国のヘルスケア業界に知見がない人はついていくためにやや努力が必要だが、毎回ハンドアウトが配られるので、要点を掴むのは難しくはない。

授業の負荷は普通からやや重い程度。元々業界の知見がある人であれば、ケースや資料をすんなり読めるのだろうが、僕のように米国ヘルスケア業界に知見がない人にとっては、その度に調べることが出てきて、やや時間がかかる。例えばMedicare Advantageとは何か、Primary/Secondary/Tertiary Careの定義は何か、などは知っていることが前提として議論がなされるため、授業についていくためにはそれらを知っている必要がある。僕は最初はさっぱり分からなかったので、新しい単語が出てくるたびに毎回Googleで検索をしていた。

全体として、ヘルスケアに興味のある僕としては非常に満足度が高いコースで、5段階中4.5くらいの評価だ。米国の広大なヘルスケア産業をこれだけ全体感をもって説明してくれる授業は初めて。公共政策的な観点も企業視点の科目が多いHBSでは新鮮。また公共政策的な観点のみならず、企業視点としてもヘルスケア業界の特殊性を活かしてどんな戦略がありえるか、ということを扱い、これも非常に学びが多かった。

製薬業界をもとに学びの具体例を挙げると、ジェネリックが入ってきて独占的な利益を失うことを防ぐために、①Product Hopping (同じ効能の薬を容量や摂取方法などマイナーチェンジをすることで新たに特許を取得して、独占的な利益を享受できる期間を伸ばす)、②Pay-for-Delay (ジェネリック薬製造企業に金銭または金銭的価値があるものを払うことによってジェネリックが入ってくる時期を遅らせること)、③Shadow Pricing (独禁法に触れない範囲で競争相手に価格上昇でシグナルを送り、お互いに価格を上げる行為)など。業界ごとにこういった学びがあり、卒業後に米国ヘルスケア業界で働く人に対しては履修を強くお勧めできる授業だ。来年は1セメスターを通してのコースになるようなので、より深く、広くアメリカのヘルスケア業界が学べると思う。

一方、得られる学びは他の規制が強い業界にも適用できる(電力などインフラ系など)と思うが、かなり業界特化した授業なので、ヘルスケア業界に関心がない人にとっては他の授業を履修した方が良いかもしれない。

HBS授業紹介: Launching Tech Venture

HBSでは起業家教育に力を入れており、起業家向けのコースも多い。米国ではテクノロジー系の起業が特に多いこともあり、テクノロジー系の起業家育成に焦点をあてたのが、この”Launching Tech Venture”だ。教授はJeffrey RayportJeffrey Bussang。僕の履修している授業の教授はJeffrey Rayportで、Ph.Dを持ちながらPEや起業家としての経験も豊富な、ハイブリッドタイプだ。

2017年のコースでは半セメスターで、扱うケースはほとんどがシードからSeries Bくらいまで、とアーリーステージの企業を扱う。ケースで扱われるビジネスはアメリカでのトレンドを反映してか、ソフトウェア系が多く、マルチサイドプラットフォーム(Amazonやメルカリなどの売り手と買い手を結びつけるサービス)やSaas (Service as a software)の企業を扱う。有名どころだとRapid SOSなど。扱う分野はプロダクトマネジメント、グロースハック、ビジネスディベロップメントで、学ぶコンセプトの代表例はPMT (Product Market Fit)、LTV (Life Time Value)、CAC (Customer Acquisition Cost)、Sales Learning Curve、など。基本的には1年目の必修であるTEM (The Entrepreneurial Manager)で浅く学んだ科目をテック企業に焦点を当ててもう少し深めた科目だ。

僕は元々プロダクトマネジメント、グロースハックに近い仕事をしていたために、これらの分野は元々仕事でやっていたことを整理するのに役立ったレベルだが、ビジネスディベロップメントについては新しいことが多く、学びが多かった。最初のSales責任者の選び方、Sales Learning Curve、Sales Cycleの長さとインパクトの大きさのトレードオフをスタートアップでどう考えるか、など知るのと知らないのとでは営業やパートナーシップチームを設計する際に大きく差が出ると思う。

教授のJeffreyは学生の議論のファシリテーションがうまく、しかも取締役会さながらに突っ込んだ質問をしてきたりと、学生からの発言をうまく引き出している。話し方もエネルギッシュで、退屈させないし、毎回のケースからのTakeawayもしっかり説明するため、何を学んでいるかが明確だ。

最も良い点は、ほぼ毎回、ケースの当事者の起業家が来ることだ。授業の後半20分はケースの当事者からの議論を聞いての感想と、当事者への質疑応答に使われる。その後、ランチまたはコーヒーチャットのセッションが用意され、そこでより深い質疑応答をすることができる。起業家は年齢が同じくらいな人が多く、彼らから生の体験を聞ける機会は、かなり貴重だ。

要求されるケース自体のワークロードは軽め。ただ、Optional Readingや毎週日曜日に補足として扱ったトピックに関するブログや記事を全て読めばそれなりの量になるし、各トピックについての理解を深める助けになるので、学びたい人にとっても期待に応えられる授業になっている。

全体を通して、僕にとっては5段階中の3.5くらいの満足度。元々同じ業界にいたためか、得られた学びは他の授業と比べると少なかった。元GoogleでProduct Mangerをやっていた友人も同じような感想を抱いていた。一方、コースの内容としてはテクノロジーのスタートアップで働く人に役立つ学びが多く含まれており、教授も良いため、前職まででこの業界に経験がない人であれば4以上となると思う。教授についてはJeffery Bussangの方の評価が高いが(HBS生活の中で最も良かったという人も多い)、人気なため、ビッディングのプロセスで高めにする必要があると思う。

HBS最終学期開始

1月23日から、いよいよ2年生にとっては最終学期となる、2年目の春学期が始まった。春学期は授業が4月28日までで、間に1週間の春休みが入っているため、HBS生活もあと実質90日を切っている。最後の学期は学業、友人関係に力を入れて、悔いのないように過ごしたいと思う。

学業

卒業後に米国のヘルスケア関連企業に進むことから、春学期はHealth CareとGeneral Managementを中心とした7つの授業を履修する予定だ。

Innovating Health Care (Prof. Regina Herzlinger)

米国のヘルスケア業界の経営研究では知らない人がいないと言われるほど有名なHerzlingerの、いかにヘルスケア業界で新しいビジネスを起こすか、という授業。授業はケーススタディ形式の授業とビジネスプランを作るという最終提案の二本立て。HBSに入学する前から履修したかった授業なので楽しみだ。まだ一度しか受けていないが、ヘルスケア業界のユニークな構造にかなり深く突っ込んでいくため、ケースの内容が非常に専門的。また、参加している生徒のほとんどが元々ヘルスケアのバックグラウンドを持つ人やMD/MBA(医者とMBAのダブルディグリープログラム)のため、生徒の議論も専門性が高い。例えば、Medicare/Medicaidと呼ばれる米国政府が運営している保険がどのようにreimburseするか、という門外漢には分かりづらい点も普通に議論に出てくる。教授がヘルスケア業界にかなりネットワークがあるので、ケースで扱われている経営者が実際に教室に来る機会がそれなりにありそう。ヘルスケア業界初心者の僕にとってはかなりついていくのが大変そうだが、その分得るものも多そうだ。

U.S. Healthcare Strategy (Prof. Leemore Dafny)

ヘルスケア業界に特化して、どのように状況を分析し、企業戦略を立てていくかという授業で、教授はヘルスケア業界のStrategyコースを作ったパイオニアであり、元McKinseyのコンサルタントでもあるDafny。こちらも内容が非常に専門的かつ履修している生徒がヘルスケアバックグラウンドの人ばかりなので議論の内容も深い。教授の説明が非常に明確で分かりやすい点が授業の魅力を高めている。こちらも業界初心者の僕にとってはついていくのが大変だが、得るものがその分多い業界特化の授業。例年の授業評価も高い。

Launching Tech Venture/Scaling Tech Venture (Jeffery F. Rayport, Thomas R. Eisenmann)

テクノロジー業界でいかに新しい企業を立ち上げて、スケールさせていくか、を扱った授業。春学期の前半がLaunchingで後半がScalingの内容となり、教授も変わる。授業履修としては別々だ。Rayportは教授職と起業家の両方を経験しているハイブリッドで、Eisenmannは起業研究の大家かつteachingでの高い評価をコンスタントに得ている教授だ。ほぼ毎回、ケースに登場する登場人物がゲストとして授業に来てくれるため、生の起業家と接することが多い授業だ。似た科目として、Entrepreneurship in Healthcare IT and Servicesという科目も開講されていたのだが、他に取りたい授業と時間が重なっていたことと、こちらのLaunching/Scaling Tech Ventureの方が教授が良いのでこちらにした。ケースメソッドでは教授の良し悪しで得られるものがだいぶ変わってくるので、良い教授を選ぶことが非常に重要だ。あくまで個人的な印象だが、実務経験(特にマネジメント経験)がある教授の方がインサイトのある学びをくれることが多く、僕は実務経験がある教授を選ぶようにしている。

General Management: Process and Action (Prof. Joseph B. Fuller)

世界的なコンサルティングファームであるMonitor Groupの創設メンバーの一人であるFullerが教える、事業責任者 (General Manager)としてどのように戦略を実行(Implementation)するかについての授業。実行に重点を置いており、どのようにプロセスを設計・運営し、どのように動くことでどのような影響力を組織に及ぼすべきか、が学べる。昨年度の授業評価が非常に高く、今季も人気授業の一つ。戦略論については1年目と先学期に履修したが、戦略実行の難しさは立てることよりも実行することにある。より戦略を効果的に実行するためのツールボックスを増やしたいと思い、履修することにした。

Designing Competitive Organization (Robert Simons)

管理系の科目の大家であるSimonsが教える組織設計と運営に関する授業。戦略がすでにある前提で、組織をどのように設計するか。何を成果の指標として測るか。どのようにインセンティブの仕組みを設計するか。やるべきこととやるべきでないことをどのように決めてコミュニケーションし、どのように仕組み化するか、など。僕も日本で働いていた時に組織設計や変更がもたらす正と負の影響のどちらも経験しているので、組織運営においてはどのようなレバーがあり、どのレバーを引くとどうなるか、と知ることは非常に有益だと思う。こちらも戦略の実行について、自分が持てるツールボックスを増やしたいために履修することにした。一つ上の学年のある日本人の先輩が絶賛していたこともあって、同じ時間帯の授業に日本人が6人くらいいる。毎週、ちょっとした同期会だ。

Strategic IQ (John Wells)

1年目に必修授業の戦略(Strategy)を僕のクラスに教えていたJohn Wellsが開講する戦略の授業。WellsはPhD取得後にPepsicoで欧州の事業責任者を担うなど実務家と研究者のハイブリッドで、授業は非常にsarcasticかつentertaining。受けていて楽しい教授の一人だ。1年目の必修のStrategyは教授は良かったのだがコースの設計がイマイチで得られたものが少なかったため、今回はWellsの手腕に期待。

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今学期は以上の7科目(そのうちの3科目は前半か後半のみで、他の4科目は通期)を履修予定だ。先学期よりも量が多いのでやや大変だが、これだけ学びに集中できる環境は働き始めたらなかなか得られないと思うことと、HBSの教授のようなそれぞれの分野の第一人者から学べる機会の貴重さに改めて気づいたことから、最後に詰め込んだ。また、今回の科目はU.S. Healthcare StrategyとGeneral Managementの2科目を除く5科目は全てペーパーのため、書くトレーニングにもなるかと思っている。

先学期と同じく、今学期も全科目において半分以上の授業で発言すること、2以上の評価を取ることを目標にしたい。

友人関係

HBS生活も3学期を経ると、だいぶ人間関係も固まってくる。僕の場合、やはり仲が良いのは大きく分けると、①テクノロジー業界に関わるアメリカ人、②セクション内のインターナショナルの学生、③アジア系学生、④Harvardに関わりのある日本人、だ。先学期は妻の協力もあって、平均すると週1回は自宅に友人を呼んでホームディナーができていたので、今学期も週1回のホームディナーは継続し、ホームディナーを含めて週2回は友人関係を深めるためにディナーの機会を利用したい。また、お昼も友人とキャッチアップする良い機会であるので、週4回はランチまたはコーヒーを友人と一緒にするようにしたいと思う。

3学期を通じて、なんだかんだで200人以上とは繋がっており、卒業後も仕事に関するメールのやり取りができるくらいの仲にはなっている。今学期は友人関係を広げるよりも深めて、最終的には人生や仕事について、卒業後にも定期的に話をしていける一生の友人が数人できればいいなと思う。

キャリア

元々はNew Venture Competitionに出る気でいたのだが、米国のヘルスケア関連企業に就職し、卒業後も米国に残ることにしたので(先学期はこの点についてかなり時間を使って考えた。この意思決定については落ち着いたら書く予定)、今年は参加を見送る予定。ビジネスプランについてはInnovating in Healthcareの授業内でチームで書く予定なので、そちらを将来自分でやりたい事業について考える機会にあてる予定だ。

また、特にヘルスケア業界について先学期感じたのだが、この業界では深い業界知識とネットワークがないとビジネスをやることが非常に難しい。僕は業界については完全に素人なので、現状では医者や病院とまともに話ができない。そのため、今学期のゴールは専門家の言っていることが分かり、まともに会話ができるレベルまで達することだ。そのために、2つのヘルスケア関係の授業に加えて、John WellsのStrategic IQなどのペーパーのお題でもヘルスケア業界の企業を選択し、業界の知識やそもそものヘルスケア関連の語彙を増やしていきたいと思う。

時間の使い方

今学期は授業外でもやりたいことが多い。まず、教授から選んでもらったこともあり、FIN2 (Finance 2)という授業のTutorをやる予定だ。TutorはHBSの1年生が分からないことがあったときに1対1のセッションをやる、という2年生による個別指導だ。どれくらいの依頼があるのか分からないが、Tutorをするというのは面白い経験であり、依頼があったら積極的に受けていきたい。今学期は4月末までに10時間はこれに時間を割く予定。

授業外では、Accent Americanという発音・イントネーションに関する10週のプログラムを履修しており、こちらは2月末まで続く予定だ。1日1時間は練習するように、と言われており結構大変だが、良い発音・イントネーションは一生の財産になるため、しっかりとこなして得るものを得たい。

また、米国で卒業後に生活することを考えて、こちらで運転免許を取ろうと思っている。僕自身は日本で免許は持っているがほとんど運転していなかったので、勘を取り戻すことも含めて、教習所通いで時間がややかかりそう。卒業後に行く先は車が必須なので、4月末までにはなんとかして免許を取りたい。

加えて、働き始める前に体力づくりをしたい。先学期は膝をやや痛めて走れなくなってしまい、その後運動不足になり、旅行の前後に風邪をひいたりとかなり体力が落ちてきてしまっているので、運動習慣の改善が必要。体重も約1年半の米国生活で2キロ増えてしまった。今学期は少しずつ運動量を増やして週2回はジムに行き、働き始める7月にはハーフを怪我なく走れるくらいまでもっていきたいと思う。

最後にだが、授業終了から卒業式前までには2週間強の時間がある。引っ越しがあるためにフルに時間を使うことはできないが、MBA中は旅行をして世界を知る良いチャンスでもあるので、その期間にまだ行ったことがない場所へ行き、視野をさらに広げたいと思う。

2年生秋学期の振り返り

すでに春学期が始まってしまっているが、2年生の秋学期を振り返ってみる。

学業 (Academics)

秋学期は”Strategy and Technology”、”Negotiation”、”Entrepreneurial Finance”、”Globalization and Emerging Markets”、”Founders Dilemma”の5科目を履修した。このうち、Entrepreneurial Finance、Globalization and Emerging Markets、Founders Dilemmaは内容と教授も人気の授業。受講した科目はどれも良い科目で、選択授業の良さを実感した。

“Strategy and Technology”ではIntelやMobileyeの社外取締役も務めるDavid Yoffee教授からテクノロジーの業界で特に重要となる戦略の5つの原則、ネットワーク効果、マルチサイドプラットフォーム、柔道・相撲戦術、知的財産、ガバナンスについてどのような点を考慮して戦略を立てるべきかを学んだ。特に5つの原則のうち、”Look forward, Reason back”、未来に世界がどのように変化するかを予想して、そこから逆算して今行うことを考える、というのは技術変化でビジネスがガラリと変わるテクノロジー業界では特に重要だと感じた。

”Negotiation”はMichael Wheeler教授。交渉を分析するフレームワークとその適用方法、信用構築の方法、交渉における学び・適応・影響のサイクル、相手の感情を用いて交渉をいかに有利に進めるかのテクニック、突っ込みすぎた時の対応の仕方、多数のステークホルダーがいる際に有利な状況を作り出すためのプロセスなどを交渉のシミュレーションや優れた交渉人の交渉過程を観察することから学んだ。授業は振り返りや観察からの学びに重点が置かれており、卒業後にも交渉力を高めていくための手法を学べたのが良かった。

”Entrepreneurial Finance”はBain Capitalの創設メンバーであるRobert White教授。起業をする際に「いくら、誰から、どんな条件で」資金調達を行うべきかに加え、近年広がりつつあるベンチャー向けの貸出、クラウドファンディング、売掛金の現金化などの現金調達の手法について学んだ。スタートアップを評価する上で、PDCOフレームワーク(People, Deal, Context, Opportunity)や3 Statge Model (Growth, Profitability, Asset Intensity)は有用だと感じたし、特に資金調達の際の契約書の内容について一つ一つの条項レベルである程度学べたのが良かった(Participation, Anti-dillusion, etc.)。資金調達の際に、どの条項が何にどのようにきいてくるか、を理解していることは必須だと感じたし、将来的によりフェアな条件交渉をするための下地ができたという点で非常に有益だった。実践的には今の市場のスタンダードを知り、良い弁護士を雇うことが大事。

”Globalization and Emerging Markets”はSophus Reinert教授の人気授業だ。新興国が国の発展のために用いている戦略とその国がどのような産業構造になっているのかをフレームワークで分析する手法を学び、それぞれの国でどのような仕組み(institutions)が欠けており、どのステークホルダーがその欠けている仕組みを活かしており、そのような環境へどのように進出するのが良いのか、という企業の進出戦略についても学んだ。例えば、キューバやロシアでinstitutional void(欠けている部分)を活かして事業をする例からは、新興国では機会もあるが、obsoleting bargaining powerのリスク(最初は政府に必要とされて進出しても、徐々に政府がノウハウを吸収して、会社ごと国有化されるなど、必要とされなくなるリスク)があるため、政府とかなりデリケートな関係を築かなければいけないことを学んだ(例えば、こちらを刺したら国際社会から相手も刺されるような状況を作り出すなど)。

これらの授業を履修したことで、①戦略を立て、②多数のステークホルダーと交渉し、③事業提携や資金調達を行い、④新興国までサービスを広げる、という点についてより失敗のリスクを減らし、成功の可能性を高められるようになったと思う。

5つ目のSkikhar Ghosh教授の”Founders’ Dilemma”は僕にとって特に思い出に残る授業となった。秋学期のその他の4つの授業を含めてHBSでこれまで受けてきた授業の中にはビジネスをする上での視点を広げてくれたり、知識を増やしてくれるものは多かったが、”Founders’ Dilemma”は自分の人生観にまで影響を与える授業だった。Hard choiceをいかに行うか、いかに公平さを互いに感じるようなプロセスを築くか、採用と解雇の手法、建設的な失敗の仕方、など、学びは多かったのだが、特に印象深かった授業は、「成功とは何か、失敗とは何か、幸せは何で決まるか」についてだ。端的に言えば、幸せはquality of relationships=どれくらい深い人間関係を築けたか、で決まるというのが主な学びだが、彼が自分の人生のストーリーを交えて語ってくれたその教えは心に残った。

彼の講義は、自分自身を振り返る良い機会となると同時に、行動を変えるきっかけとなった。彼の授業を履修して以降、人からの評価を気にして物事を決めていないだろうか、自分の周囲の人を大切にできているだろうか、意義あることに時間を使えているだろうか、を定期的に振り返るようになった。また、より頻繁に家族と連絡を取るようになり、留学以降やや離れてしまっていた日本の友人と連絡を取る頻度も増えた。これらの行動の変化は、人間関係という点で数年、数十年単位で人生をより良い方向に導いてくれると思う。彼の授業を受けられたことは、幸運だ。

成績は、特に好きな授業であったFounders DilemmaとNegotiationが「1 (優)」で残り3つが「2 (良)」だった。成績は全てが「2」以上取れれば良いと思っているので、目標達成。また、「1」の割合が先学期よりも増えたのも英語での学習環境に慣れてきたということで良い傾向。そのうち一つの授業では教授からも「Final(期末テスト)がとても良かった」と褒められ、嬉しかった。

友人、課外活動

先学期より妻がボストンへ来て、単身用の寮からキャンパス内のアパートへ引越しを行ったため、自宅に友人を呼ぶことができるようになった。そのため、平均して週に一度は2〜4人程度の友人を家に呼んで日本食をふるまうという小さなホームディナーをした。

ディナーの席では話題も様々で、キャリアや家庭といったプライベートな話から、学校生活、国際政治や歴史の話まで及び、話が尽きることがない。ホームディナーでは時間を気にせずゆっくり話せるし、集団ではなかなかしにくい突っ込んだ話もできるので、非常に良い。昨年はアメリカ大統領選挙の年ということもあり政治関連の話を多くした。これらの話を通じて、世界の政治に関する自分の感度がより高くなったように感じる。

一方、昨年の同時期はハーバード日本人会やボーゲル塾に参加していたが、2年目の秋学期はキャリアに集中するため、あまり参加しなかった。

キャリア

卒業後にどうするか、についてじっくりと考え、行動し、人と話す期間だった。ビジネスプランについて投資家と話し、同時に就職活動も行い、米国企業からオファーももらった。MBA卒でもインターナショナル生が米国でのオファーをもらうのはかなり狭き門なため(H1Bビザの関門が大きく、99%の企業は永住権のないインターナショナル生が応募しても門前払い)、自信に繋がったという点でも良かった。色々と考えたが、いくつかの選択肢の中から米国に残る選択肢を選んだ。卒業後に新しいチャレンジが待っていると考えると、ワクワクする。

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2年生の秋学期は特に過ぎるのが早かったという印象だ。特に大きな活動があったわけではないが、卒業後の進路を決めるため、9月、10月はキャリア関係に使っている時間が多かった。リサーチや受け答えの練習など、想像以上に時間がかかった。11月、12月は課題とレポートに追われていてあっという間だった。また、友人とも1年生の時以上に会っていたので、その点でも時間を使っていた。秋学期は英語やトレーニングなどの自己研鑽を怠ってしまったが、学問、友人関係、キャリアで目標はある程度達成していたため、点数をつけるならば70点というところだ。もう少し自分への目標を高く設定しておいても良かったかもしれない。

最後の学期である2年生の春学期は、振り返りをより仕組み化して、悔いのないような学期にしたいと思う。