2年生春学期の振り返り

2年生の春学期が終わった。これまでの1年生2年生の秋学期と続いてきて、これがHBSでの最後の学期となる。振り返ってみたい。

学業

春学期は最後の学期ということもあり、先学期より2科目を増やし、”Launching Tech Ventures”、”Scaling Tech Ventures”、”Strategic IQ”、”Designing Competitive Organization”、”General Management Processes and Action”、”U.S. Healthcare Strategy”、”Innovating in Healthcare”の7科目を履修した。また、学期最後の3日間は”Bridges”という卒業後のキャリアや生き方を考えるセッションを履修した。

“Launching Tech Ventures”からはProduct Market Fit(製品がお客さんのニーズに合っており、かつビジネスとして成り立つことが確認できること)を実現するために製品・サービス、成長戦略、営業・マーケティングについて考慮すべき点やCustomer Life Time Value(顧客生涯価値)、Customer Acquisition Cost(顧客獲得コスト)をいかに測定し、改善していくかについて学んだ。”Scaling Tech Ventures”では6S (Staff, Shared Value, System/Structure, Series, Scope, Speed)のフレームワークに基づいて、Product Market Fitを実現したスタートアップをいかに急成長させていくべきかについて学んだ。”Strategic IQ”からは競争力を持続するために、環境に合わせて変化し、実験から学び続ける企業をいかに実現させるかについて学んだ。”Designing Competitive Organization”からは戦略を実行する組織に必要な7つの要素を学んだ。”General Management Processes and Action”からは、いかに経営者として意思決定、組織学習 、変化のプロセスを設計し、実行していくかを学んだ。”U.S. Healthcare Strategy”と”Innovating in Healthcare”からは米国ヘルスケア業界の知識とその中で成功するための条件を学んだ。成績は全て「2」以上でStrategic IQとDesigning Competitive Organizationは「1」だったので、目標達成だ。

授業からも学びが多かったが、最も印象深かったのはBridgesの最終日に聞いた、Clayton Christensen教授のHow will you measure your life?”の講義だった。この講義の中で、教授は企業の戦略・組織の理論を人生にあてはめて、「いかに人生を自分の生きたいように生きるか」、ということを語った。

Clayton Christensenは実務家としても教授としても成功した人だが、彼は自分が最も大切にしてきたのは家族と5人の子供を育てることだと言う。彼は土曜日と日曜日は家族のための時間にすると決め、自分の決意を同僚や上司にも話して土日に仕事が入らないような環境を作り出し、それを実行してきた。彼は、「何を人生において成し遂げたいか、どうやってそれを実現するか、そのために自分の時間という資源をどのように配分するかを考えないと、年収や地位など目に見えやすい成果を追い求めて仕事のみに時間を割いてしまい、結果として本当に得たいものを得られなくなってしまう」と語った。彼の講義は示唆に富み、どのように生きるべきかについて考える良い機会となった。また、脳梗塞など大病を患いながらもリハビリを繰り返して教壇に復帰し、学生に教えることを止めず、教壇に立ち続けるその姿は人知を超えた神々しさすら感じさせ、彼の一言一言が胸に刺さった。 体調悪化のために来年からは講義をさらに縮小するということで、彼の講義を受けることができるうちにHBSに在籍できたことは幸運だったと思う。

友人、課外活動 

春学期は秋学期に引き続き、週に1-2回友人を招いてホームディナーを行った。春学期中はアメリカのトランプ政権の100日間、イギリスのBrexit交渉の進展、フランスではルペンの台頭、と特に西側諸国の政治で大きな変化があったので、それらを話しながらのディナーは楽しいと同時に、そういう見方もあるのか、と視点を広げるきっかけにもなった。また、妻が作る肉じゃがや手巻き寿司は友人たちに好評で、友人たちと仲を深める良い機会となった。

また、Bridgesの期間中は約1年ぶりにセクション(クラス)で集まり、ケースディスカッションを行なったが、まるで地元に帰ったような懐かしさを感じ、HBSはやはりこのセクションの体験がユニークだと感じた。1年間を共に過ごした93人の仲間とは卒業後も大学主導の5年に一度の同窓会でボストンで集まることになる。93人の仲間の進路はまさしく国も業界も様々で、彼らと今後の人生を共に歩んで、時々にお互いの近況報告をし合えると思うとワクワクする。65周年まで同窓会が開かれるということなのでいつまで参加できるかは分からないが、体がついていく限り、できるだけ長く参加したいと思う。

課外活動としては、文科省のスーパーグローバル・ハイスクールに採択されている長野県上田高等学校の生徒17人が高校のプログラムでボストンに来た際に、スタートアップに関する講義をHBSで行った。彼ら・彼女らは非常に熱心に講義を聴いてくれ、質問も活発に出て盛り上がった。僕としても何かを教えることは楽しく、卒業後もこの2年間で学んだものを継続的に社会に還元していきたいと思う。

加えて、今学期もHarvard Business Schoolの公式ブログの管理とこの個人ブログも書き続けて、こちらで学んだことを発信し続けた。2年間続けた個人ブログは今年のHBSの合格者の中でも読んでいた人が多く、HBSやMBAの実情を伝えることに少しでも貢献ができたのではないかと思う。 

また、最終授業から卒業式の間の5月中旬にHKS (Harvard Kennedy School)主催のIsrael Trekに妻と参加し、こちらも多くの学びと新しい繋がりを与えてくれた。旅行でもアイスランドとベリーズへ行ったりと、今学期はかなり見聞を広めることができたと思う。

キャリア

今学期は”Innovating in Healthcare”という授業の一環でBoston Children’s HospitalのBioinformaticsチームの依頼を受け、同級生2人とともにSMARTというIT Platformのビジネスプランを策定した。SMARTは互換性が低い米国の病院・クリニック向けのEMR (Electronic Medical Records)向けに互換性のあるソフトウェアを提供するためのプラットフォームという位置付けで、米国保健局(National Institutes of Health)からも支援を受けているNPOが運営している。

SMART: https://smarthealthit.org/

このプロジェクトを選んだ理由は、「病院・クリニック間の情報共有を促進させることで、効果的かつ効率的に患者さんに適した治療法を見つけやすくする」という点で、僕の将来のテーマに繋がると考えたからだ。

このプロジェクトを通じ、米国のITシステム業界がどのようになっているのかについてや、病院・クリニックの購買の意思決定者や意思決定プロセスについての理解が深まった。米国のITシステム業界は広く、統一された規格がないため、各企業が独立した規格を用いてソフトウェアのベンダーを抱え込んでいるため、結果として病院間で用いているソフトの互換性がなく、ヘルスケアのシステムとして非効率な状態となっている上、新たに参入する企業にとっても各ベンダーに合わせた仕様を作らなければならず、コスト高に繋がっている。また、病院・クリニックの購買はIT担当だけでなく、実際に診療を行う診療部門やグループ病院との調整が必要で、提案から成約までの期間が1年から2年と長く、この意思決定の長さがスタートアップがヘルスケア業界に入る際の障壁となっている。このプロジェクトを通じて、ヘルスケアで新しいビジネスを起こす際にどのような壁を乗り越えるべきかを認識できた。

同級生の2人が特に優秀だったこともあり、プロジェクトの成果はクライアント、教授ともに高い評価をいただけた。今回のアウトプットはSMARTを運営するNPOが5月末に申請する補助金の土台となる予定だ。


全体を通じて、今学期は忙しい学期だった。通常5科目選択のところを、最後だから学べるだけ学ぼうと7科目選択したのだが、やはり結構多かった。加えてヘルスケア系の授業は新鮮で学ぶことが多い一方、僕は前提知識がないためにかなりそこに時間を使った。その分学ぶことが多かった上、ヘルスケア系のクラスメイトともより多くの繋がりを築けたという点で非常に実りが多かった。

HBSの学生とも定期的にホームディナーを行って仲を深められたと同時に、HKSのIsrael Trekに参加してHKSやHLSとの繋がりも夫婦で広げることができたのは非常に良かった。

もう少しできたか、と問われれば、できたこともあるのかもしれないが、得られたものには満足をしている。7月からは久方ぶりの仕事をする生活だ。新しい挑戦に、ワクワクしている。

HKS Israel Trek (2)

8日間のIsrael Trekでは学ぶことが非常に多かった。同時に、経済、社会についてや、日本についても考えさせられた。

経済

イスラエルはStart-up Nationと呼ばれるくらいスタートアップが盛んな国で、実際に人口あたりのスタートアップの数は世界一で、人口は約800万人と日本の1/15程度に関わらず、スタートアップの数は日本を上回っている。スタートアップの分野はハイテク関連が多く、例えばGoogleに買収されたナビゲーションのWAZEや自動運転のコア技術の一つでありIntelに買収されたMobileyeなどがイスラエルを代表する企業だ。

なぜスタートアップが多いのかについては、移民、徴兵制、文化の3つの理由が挙げられる。

一つ目は移民だ。イスラエルはユダヤ系の移民を積極的に受け入れており(一方、ユダヤ人以外が移民するのは非常に難しい)、アメリカ大陸、ヨーロッパ大陸からユダヤ人が移住してきている。後述するようにユダヤ系は教育に非常に力をいれる文化があり高等教育を受けた人の割合が高かったことに加え、若い層が多く、経済に貢献するだけでなく社会保障費も安いという理想的な移民だった。彼ら・彼女らがイスラエルに多様性のみならず経済的な恩恵ももたらした。

二つ目は徴兵制だ。イスラエルでは「ユダヤ人」は男女問わず兵役の義務があり*、男性は3年、女性は通常は男性よりもやや短い期間、軍に従事する。軍での経験は国民にとって、ただ単なる就業経験ではなく、教育・就業経験・ネットワーキングの場となっている。有名なのはスタートアップ創業者を多く輩出している8200部隊だが、それ以外にもMedic(救護兵)として教育を受けて実務経験を積んだ後に医者になる人や、軍のレポーターを経験した後にテレビ局で勤めたりジャーナリストになる人もいる。加えて、軍の縦・横の繋がりは強く且つフラットで、兵役を終えた後にもその分野におけるネットワークを持つことになる。特にイスラエルではテルアビブにハイテク企業が集中しているため、ネットワークの密度が濃くなり、さらに効果的だ。

三つ目は文化だ。ユダヤ人は約2,000年の間、ヨーロッパや中東で迫害されてきた歴史を経験しており、土地や金融資産などの資産は政権次第で奪われるという感覚を共有している。その歴史から生まれた教訓として「実物・金融資産は奪われても頭の中までは奪われない」ということを知っており、それが教育に対する熱意に繋がっている。事実、イスラエルの大学進学率は日本を上回っている。

また、「権威に対する尊重がない文化」というのも現地で良く聞いた。日本やアメリカを始めとした多くの国では、上司に対して意見をする際に多少の遠慮があるのは通常かと思うが、イスラエルでは意見は意見として人と切り離し、はたから見るとちょっと言い過ぎなのではないかというラインまで意見をぶつけ合うとのこと。実際にKnesset (イスラエルにおける国会)を見学した時にも、与党の一人が教育の予算に関するスピーチをしている際にも関わらず、野党が「それは違う、兵器への予算を減らして教育により予算を振り分けるべきだ」とスピーチ中に割り込み、大声でスピーチの最中にディベートをやっていた。日米ではスピーチ中に割り込んで意見をするというのはかなり失礼なことで、この議論に対するハードルの低さがイノベーションに繋がっているのか、と感じた。

さらにユダヤ教を信仰するユダヤ人としての一体感もネットワークの形成に役立っている。ユダヤ人にとっての教会であるSynagogue(集まりそのもの、または集まる場所、という意味)では世代の異なる人が集まり、そこでの繋がりがビジネスに繋がることもある。また、イスラム教徒が圧倒的に多い中東の中ではユダヤ人は少数派であり、少数派の中で価値観を共有しているということで、より結びつきが強いように感じられた。

教育への熱意が高く、高等教育進学率が高い上に、軍隊の中での職業経験・ネットワーク形成が重なり、良質な人材が育成される。また、外部からは移民という形で異なった考え方をもつ人材が定期的に入ってくる。加えて前提を疑い徹底的に議論をするという文化があり、議論を通して新しいアイデアが生まれていく。こういった仕組みは今の日本に欠けているもので、スタートアップを生み出す環境づくりという点でシステムとして学べることが多いと感じた。

社会

イスラエルは上記で述べたようにイノベーションに対する受容度はとても高い国だが、安全に関わるような社会問題・安全保障に関することになると驚くほど保守的だ。これは日本からでは見えにくいことだったが、彼らの文脈を考えると多少なりとも理解できる。

一つ目は、国内のユダヤ系とアラブ系のイスラエル人の対立だ。この対立の背景には、イスラエルという国自体の成り立ちがアラブ人との戦争の歴史だということがある。1947年の国連決議を受けて1948年に独立宣言をして、そこからエジプト、シリア、イラク、レバノン、ヨルダン相手に生存権をかけた第一次中東戦争を戦った。1967年のSix-Day Warではこちらから戦争を仕掛けて、エジプトからシナイ半島、シリアからはゴラン高原、ヨルダンからは東エルサレムとヨルダン川西岸を奪った。(平和条約締結と同時にシナイ半島はエジプトへ返却した。それ以外は今に到るまで国際法上の違法占拠の状態が続いている。)1973年のYom Kippur Warでもエジプト、シリアとの戦争を行い、国土を防衛した。その後、エジプトとヨルダンとは平和条約を結んだが、シリアとは2017年現在も平和条約が結ばれておらず、ガザ地区を実効支配するハマス、レバノンを実効支配するヒズボラ、中東地域でシーア派の覇権を広げようとしているイランからも安全保障を脅かされており、平時とは言えない状況にある。同時に、イスラエルは戦争を通じて支配する地域を広げてきたため、国内にもパレスチナ人(およびアラブ系イスラエル人)を多く抱えている。

そんな状況の中で、イスラエルの課題となるのは、「ユダヤ人のための国としてのイスラエル」と、「民主主義の他民族国家であるイスラエル」の葛藤だ。イスラエルは国民の約20%はアラブ系イスラエル人だ。アラブ系イスラエル人の中にはイスラエルの社会に順応している人もいるが、多くは同じ国の中で、全く違うコミュニティに属している。例えば、ユダヤ系イスラエル人とアラブ系イスラエル人は違うコミュニティに住み、異なる学校に行き、異なる宗教施設に行く。あるアラブ系イスラエル人によると、「18歳になって他の都市に行くまで会ったことのあるユダヤ人は警官やガードマンのみで、一般的なユダヤ人と話したことはなかった」と。アラブ人との戦争の歴史もあり、軍隊はユダヤ人が大半を占め、ユダヤ系イスラエル人による治安維持を名目とした統治がされている。

この社会を二分する構造は、根深い。2-state solutionとして現在イスラエルが統治しているエリアをイスラエルとパレスチナに分断し、ユダヤ系イスラエル人はイスラエルに、アラブ系イスラエル人はパレスチナに移住する、というのが一つのアイデアではあるのだが、これも6つの論点でイスラエルとパレスチナで折り合う必要があり、合意とその実行は極めて困難だ: 1. Border、2. Sovereignty、3. Security、4. Settlements、5. Jerusalem、6. Refugees。トップダウンでの交渉が進まないのであれば、と草の根では、ユダヤ系とアラブ系の共同プロジェクトを行うIsraAidのようなNGOや、どちらのコミュニティからも通える教育機関が存在しているが、相互の不信感はまだまだ根強く、インパクトも限られている。

二つの社会がより大きなスケールで交わるまでにはトップダウンでの政治の強いリーダーシップがあるか、もしくは草の根の活動がさらに広がっていく必要があると感じた。

二つ目は経済格差だ。特にスタートアップで盛り上がるテルアビブでは高等教育を受けた人材やスタートアップのイグジットで儲けた人が移り住む一方、住宅やレストランなどの価格が上がり続けて、それ以外の人たちが生活に困窮するようになってきている。失業率は4%程度とかなり低いのだが、働いても都市で生活できる給料が得られていない人が多いというのが、現在イスラエルが抱える大きな社会問題の一つだ。これに対して、政府は教育投資を増やしたり社会保障をより充実させることで対応しようとしているが、こちらもその分安全保障費を減額して安全を脅かして良いのかとの議論になっている。

社会問題に関してはイスラエルと日本が抱える問題の程度は異なるが、一つ目の多様性がありかつ包容力のある社会をいかに実現するかというテーマは共通している。日本も移民に関しては議論を避けているが、根本には自分たちと異なる存在を受け入れることに対する恐れがあるように思える。この恐れ、実は相手のことをただ知らないだけで、日々触れる情報の中から勝手に相手のステレオタイプを作ってしまっていることが多い。この人々の恐れというハードルを越えるためには、政治家が”inclusiveな国に私たちはなる”というビジョンを繰り返し、繰り返し語り、草の根で異なる背景の人が交流し、協働する機会を増やしていくことが必要なのではないかと思う。

最後に、僕自身についての再発見ではあるが、僕はやはり経済・社会について考えたり、議論するのが好きだ。経済・社会の問題は複雑なことが多い上、国や地方の単位となると往々にして関係者も多く物事を早く進めるのが難しい。だからこそ、何が問題で、どうすればそれを解決でき、どうやって解決策を実行するべきか、を考えることが楽しい。仕事のみならずコミュニティに対する貢献などを通じて、僕も社会をより良い方向にできるようにしていきたいと感じた。

* ここで「ユダヤ人」としたのは、イスラエルの中で約20%を占める「アラブ系」イスラエル人に徴兵義務がないためだ。イスラエルの中ではユダヤ人とアラブ人が居住場所や教育機関など明確に違うコミュニティで過ごしているが、兵役の義務という点でも区別されている。

HKS Israel Trek (1)

5/13-20の日程でHKS (Harvard Kennedy School)のIsrael Trekに妻と参加した。こちらは8日間の間にJerusalem、Tel Aviv、West Bank、Golan Heights、Kibbutz near the Gaza boarder、Dead Sea、Masadaとイスラエルの主要な見所をパレスチナ自治区のエリアまで含めて回るというかなり意欲的なプログラムで、密度の濃い8日間だった。Israel TrekはHBSでも行われているが、下記の2つの理由で個人的にはHKS主催のものに参加して良かったなと感じる。

■ プログラムがより教育的要素が強いものとなっている

HBS Israel Trekのプログラムと比較してみると、Jerusalem、Tel Aviv、Golan Heights、West Bankなど主要な場所に行くことは共通している。違いとしてはその密度の濃さだ。HBSのトレックは自由時間が比較的多くて観光要素が強く、夜もパーティやクラブなどイスラエルを楽しむ要素が多いのに対して、HKSのトレックは朝8:00から夜23:00近くまでほぼ毎日予定が入っており、朝・昼は歴史的な場所や政府機関への訪問、夜もディナーに元外務大臣やNGO/NPO責任者が来て食事と同時にスピーチがされるなど、ぎっしりと教育的な要素が詰まっている。各都市・訪問先を回る際にも知識豊富なガイドとイスラエル人数人が一緒に回ってくれるため、質問があればすぐに聞け、イスラエルについて学ぶにはこれ以上ないほどの環境が整えられている。

プログラムがぎっしり詰まっていて忙しいが、その分学ぶことが多かったのは確かだ。イスラエルの政治、歴史、経済を短期間で学ぶのに最適なプログラムだと思う。

■ HKSやHLSといった他のスクールの学生と仲良くなれる機会である

HBSでは2年目の選択授業でHKSやHLS (Harvard Law School)の授業をクロスレジストレーションで履修することはできるが、履修をしないと他のスクールと関わる機会は実はあまりない。それだけに、HKS主催のトレックに参加するのは、新しい友人を作る良い機会となる。

実際、HBSにいる人とHKSやHLSにいる人はバックグラウンドや関心が異なり、話していて新しい発見が多く、面白い。例えば、とあるHKSからの参加者は10数年の中東駐在経験を有する元軍人のアメリカ人男性で、卒業後にはアメリカの州議員選挙に立候補する予定であり、また、とあるHLSからの参加者は国連で長く勤めた経験を持つブラジル人女性で、卒業後にはまた国際機関で働く予定だ。彼らは政治、歴史、国際情勢に詳しく、話していても「そういう観点があるのか」と驚かされることが多い。ビジネスをしていると政治関連の視点が重要となることもあり(海外進出や規制関連など)、仕事の上でも付き合うことが将来あるかもしれない。

何よりも、人としても面白い人が多く、一緒にいて楽しい。8日間の濃密な時間を共に過ごすことで生まれる絆もあり、良い友人ができたという意味でもとても良かった。


一方、HBS主催のIsrael Trekに参加するメリットしては、①自由時間が多く、回りたい所を各自で回ることがしやすい、②HBSの他のセクションメイトと仲良くなる機会となる、③HBSの学事日程に合わせてトレックが組まれているので参加しやすい、があるだろう。

どちらを選ぶにしても、日本からではなかなか行く機会がなく、かつ個人旅行ではなかなか見えない部分が多いイスラエル。1年目はJapan Trekを運営することで得られるものが非常に多いので、個人的にはJapan Trekを運営した方が良いと思うが、1年目か2年目のJapan Trekと重ならない期間にHKS主催のIsrael Trekに参加することは非常におすすめだ。

MBA Oath

MBA Oathという宣誓式が卒業式の一日前の今日に行われ、それに参加してきた。これは医者にとってのヒポクラテスの誓いのように、マネジメントの道を進むリーダーにとっての倫理規範となることを目指して2009年に作られたもので、この理念に賛同するMBA生が自主的に参加するイベントだ。2017年のこのイベントは学生とその親族が集まり、Burden HallというHBSで最も大きな会場が半分以上は埋まった。

このイベントで幸いにもスピーカーの一人に選ばれたので、なぜ僕がこの宣誓に署名するかについて、下記のようなスピーチをしてきた。

Coming from a tiny East Asian country, called Japan, two years at HBS was full of surprises.  Who in the world have gone through 500 case discussions facilitated by world-renowned professors. Who have more than 90 friends, who share aspiration to make a difference in the world. Who have close-knitted global community to which you can reach out throughout your entire life. Most people at least in my country do not have a single one of them. This is a privilege, and with great privilege comes great responsibility. As a person who is lucky enough to receive such amazing education, make friends, and build networks, I would like to contribute to society. This is the reason why I sign the oath.

最初の”a tiny country”の出だしのところは笑いを狙っていたが、狙った通りに会場が笑ってくれて、その後がやりやすくなった。with great privilege comes great responsibilityはよく引用される表現の一文字を変えたのだが、気づいた人は気づいてくれたかなと思う。

HBSで2年間を過ごせたということは非常に幸運なことで、僕個人としては得たものを活かして社会に還元していく責任があると思う。この思いを忘れずに、社会を少しでも良い方向に導けるような活動をしたい。

ボストンのおすすめグルメ・レストラン

2年間過ごしたボストン。僕が気に入っていたレストランをいくつか挙げてみます。ボストンを訪れた時の参考までに。

シーフード – Island Creek Oysters

ボストンに来たからにはシーフード、というのであればIsland Creekがオススメ。牡蠣は新鮮だし、クラムチャウダー、ロブスターロールとボストン名物を美味しく食べることができる。お店の雰囲気も良い。難点はいつも混んでいて、予約なしでは夜はかなり待つ可能性があること。Open Tableまたは電話で予約をしてから行った方が良い。17:30のスロットなどは結構直前でも空いている。

Atlantic Fish Companyも美味しいが、こちらも要予約。Island CreekやAtlantic Fish Companyよりも利便性が良いのはLegal Seafoodで、ハーバード・スクエアを含めボストン市内・周辺に何店舗かあるので、ここに行くのも良い。Neptune Oysterも美味しいが事前予約ができず、よほど早く行かないと順番待ちとなって結構待つので、時間がない人にはあまりオススメしない。

アメリカン- Grill 23 (Steakhouse)

せっかくアメリカにいるのだからたっぷりのステーキを食べたい、となったらGrill 23。Tボーンステーキなどが美味しい。Capital Grilleと並んで日本人の中では評価が高いステーキハウス。前菜、肉、お酒にチップを入れて一人当たり$100は覚悟しておいた方が良い。

中華 – Mala Restaurant (Huoguo)

アメリカで中華?、と思うかもしれないが、Mala Restaurantの汁なし火鍋は本当に美味しい。何か入っているのではないかと思うほど中毒性が高く、アジア系の人がハマって、夜18:30を過ぎると平日でも人が並んでいる。4人で行って、キュウリ、羊肉の串焼き、汁なし火鍋、麻婆豆腐、米またはチャーハン、を食べるのが鉄板だ。これだけ食べても一人当たり$30程度と安いのが魅力。人が並んでいる場合は近くのJo Jo Taipeiも美味しいのでそちらに移動するのもあり。Malaは店が狭いので大人数でいく場合にはSichuan Gourmetが広くて数十人でも入るので便利だ。

Harvardの学生はDumpling Houseが近くて良いので、徒歩でいく場合はこちらも便利だ。ただ夜は混んでいて並ぶことも多いので早めに行くか予約した方が良い。

韓国料理 – Koreana (Barbecue)

ボストン周辺で美味しいKoreanといえばSeoul Soulontanだが、Koreanaも肉がうまい。カルビを2人前以上頼むと目の前の鉄板で焼いてくれる。店が広いので、20人以上などの集まりをする際にも便利。

日本料理 – Ittoku (Izakaya)

わざわざボストンまで旅行に来て日本食を食べたくはならないかもしれないが、住んでいると行きたくなるのが日本食レストラン。Ittokuはまさしく居酒屋で刺身からお好み焼き、焼き鳥、寿司まで一通り揃っている。価格も日本食の中ではリーズナブル。Gyukakuもボストンに2店舗ほどあり、こちらは日本よりもお肉の味が美味しい印象。デザートのLady Mというケーキが特に美味しくて女性陣に人気。Sugidamaも居酒屋でこちらはそばが食べられるのでそばが食べたい時には良い。Itadakiも日本食・日本酒を提供しているのでBack Bayに宿泊しているのであれば近くて良い。

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参考になれば!