投資効率を高めるための仕組み作り-国の制度を使い倒す

投資をする「仕組み」ができているかどうかで、資産形成のスピードは大きく変わってきます。年の初めに、今年こそは投資を初めよう、という方も多いのではないでしょうか。日本の制度を活かすため、日本に帰国してから、私が行った仕組みづくりをまとめてみます。

つみたてNISA (少額投資非課税制度)

つみたてNISA (少額投資非課税制度)は年40万円まで拠出でき、20年間の間、非課税で運用することができる制度です。

なぜ、つみたてNISAはお得なのか?

現在では上場株式へ投資をして運用益または配当が出た場合、所得税・住民税として20.315%の税金が課されるため、非課税になることで、25%手元に残るお金が増え、お得になる制度です(例;100円の運用益で、税引き後には80円になるところが、100円のままのため、100/80 = 125%)。

つみたてNISAの優れたところは、20年間非課税で投資できることです。例えば、40万円を毎年拠出し続けた場合、20年後の時点では、800万円を非課税で運用できることになります。

また、株式のように波はありながらも成長を続ける投資先に投資をした場合、仮に20年間の幾何平均が年率5%であった場合、40万円の今の投資は、20年後には106万円になります。もし税金を支払わなければならなければ、85万円程度の受け取りになるところが、そのまま106万円受け取れるというのは、大きな違いです。

特に、日本の場合は将来に渡って現在の税率が維持されるかどうかはわかりません。

仮に、「株式譲渡益・配当で儲けている富裕層へ課税を強化すべきだ」などの議論がこの先十年で起こった場合(現在の富の二極化を鑑みると、十分にありえる話です)、税率が上がるリスクもあります。基本的には一度作られた仕組みが遡及して変更されることは考えにくいため、現時点でつみたてNISAを行っておくことはこの税制が変わるリスクを下げることに繋がります。

リスクを長期で排除するという点からも、つみたてNISAは優れた長期の資産形成の制度です。

つみたてNISAか通常のNISAか

NISAにはつみたてNISAの他に、毎年120万円まで拠出でき、5年間非課税で運用することができる積み立てでないNISAもあります。こちらは短期または中期で運用する人向きです。私の場合、「長期で非課税で運用できること」、「20年後には最大で800万円を非課税で運用し続けられること」のメリットが大きいと考え、積み立てNISAの方を選びました。

どの証券口座で開くか

私は楽天証券で新たに証券口座と楽天カードを作り、つみたてNISAを1月から初めることにしました。

楽天証券を選んだ大きな理由は、楽天カードからつみたてNISAへ支払うと、1%のポイントがつくことです。こちらは年間6,000円分までのポイントが手に入ります。

投資の世界で1%リターンを高くするというのは大変なことです。このキャンペーンがいつまで続くのかはわかりませんが、当面の間は1%のポイントがつく = 1%リターンをあげられる、ことから楽天証券でつみたてNISAを初めるのが現状では最もお得だと判断しました。

eMAXIS Slimの全世界株式または米国株式(S&P500)で積み立てNISAを40万円分行いたいと思います。

加えて、妻の分のつみたてNISAもはじめました。これにより、非課税で運用できる口座に対して、年最大80万円拠出できるようになります。

iDeCo(個人型確定拠出年金)

つみたてNISAが「将来の運用益への課税」を節税できる制度だとすると、iDeCo(個人型確定拠出年金)は現在の税金の節税、ができる制度です。

なぜiDeCoがお得なのか

例えば、給与所得で年間600万円稼ぐような人(会社からお給料を貰って稼いでいる人)で課税所得が330万円程度だったとすると、課税所得が1万円増えるごとに、所得税+住民税で30%近く支払う必要があります。

iDeCoで拠出する金額は、この課税所得から引くことができます。つまり、上の例の場合で言えば、30%分の税金を支払わなくてすむので節税になります。

iDeCoは勤めているかどうか、勤めている企業が確定拠出年金があるかどうか、確定給付年金があるか、などそれぞれの状況により拠出できる金額が変わります(現在は自営業者の方は最大で月額6万8千円、企業方DCがない会社の会社員は月額2.3万円)。

背景としては、すでに似た制度に加入している人とそういった制度へのアクセスのない人の間で不公平にならないようにする、という思想があります。

いずれにしても、私たちからすると老後資金を貯めるための、有効な節税の制度です。

どの証券会社で開くか

3大ネット証券(SBI、楽天、マネックス)のどの証券会社を用いてもよかったのですが、私はこちらも楽天証券で行い、長期的な投資は楽天にまとめることにしました。

手数料はほぼ同じですし、商品のラインナップもさほど差はありません。つみたてNISAとiDeCoのどちらも長期投資であるため、長期投資をする口座をまとめた方が管理が楽だと考えたことが理由です。

ふるさと納税

NISA、iDeCoと並んで定番の節税がふるさと納税です。ふるさと納税を利用して控除できるのは主に次年度の住民税ですので、赴任から帰国した人もその年から利用することができます。

ふるさと納税でどの程度節税できるのかについてより詳しく知りたい方はこちらをどうぞ。

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ふるさと納税では返礼品の調達率が30%であるべきとされており、選べば寄付した額の30%以上の価値ある商品を入手することができます。

加えて、楽天ふるさと納税で納税を行うと、返礼品に加えて、ポイントがつきます。私の場合、楽天カード+楽天証券+楽天市場アプリ+楽天ブックス、で5%のポイント(SPU)がつくようにして、加えて0と5がつく日に楽天カードを使って納税することで+2%、加えて買い周りで3件以上の買い物をすることでさらに+3%、でふるさと納税で10%以上のポイントがつくようにしています。

支払った税金で返礼品がもらえることに加えて、10%のポイントでキャッシュバックされることを活かし、寄付額の40%程度を戻すことができるため。限度額まで行うことのメリットが大きいと思います。

クレジットカード

ちりも積もればでないですが、支払いをクレジットカードにまとめることで、お得に買い物ができます。どのクレジットカードもポイントのような仕組みがあり、利用した額に応じて還元してくれます。

例えば、楽天カードの還元率は100円で1ポイントであるため、1%です。楽天でポイントを貯めている人ならば、楽天でメインの買い物をするようにすれば、3%以上程度まで上がられます。

三井住友カードはVポイントが200円で1ポイント貯まるため、0.5%です。月々10万円買い物をするならば、ボーナスポイントが入り、ゴールドカードであれば追加で0.2%。

私のクレジットカードは航空会社と紐づいているものなので、還元率はマイルを1円と換算すれば、だいたい1.2%程度です。できるだけクレジットカードを用いるようにし、年間200万円の利用をすれば、2.4万円が返ってくる計算になります。

また、マイナンバーカードを持っていない人は、マイナポイントを予約・申込することで5,000円分までのポイントが手に入ります。私もマイナンバーカードを手に入れ、マイナポイントも受け取りました。

格安SIM

政府の携帯電話の料金を下げようという後押しもあり、日本では携帯電話で安いオプションが数多くあります。

楽天モバイルなど格安のプランは何社か提供していますが、私は料金の分かりやすさと縛りのなさから、LINEモバイルにしました。

税込で 3GBで月額1,600円と通信費を入れても2,000円以内におさまりそうです。ドコモの通常のプランであればおそらく月5,000円以上かかると思いますので、月3,000円近く節約できている計算になります。こちらもクレジットカードを用いるのと同じくらいのインパクトが出ます。

医療費控除

医療費+交通費が年間10万円分を超えた分は確定申告で医療費控除の申請ができます。こちらは生計をともにする家族の分も申請できるため、一人で10万円以上である必要はありません。

歯科の定期検診、健康診断や人間ドックなど保険適応にならず高額になる場合や、家族で大きい病気をした人がいる場合などには使える制度です。具体的には、医療費で10万円を超えた分のうち、課税所得が330万円を超える人は20%、695万円を超える人ですと30%、900万円を超える人ですと33%が戻ってきます。

私の場合、医療費まとめファイルを作って、そこに家族の分の領収書を貯める仕組みを作りました。

まとめ

NISA、iDeCo、ふるさと納税、クレジットカード、格安SIM、医療費控除、とどれも始める際にはやや手間がかかりますが、始めてしまえば後は仕組み化されるので、毎月あなたに「お得」をもたらしてくれます。加えて、これらの施策はどれも国が後押しをしているものです

NISA・iDeco・ふるさと納税はどれも国が作っている資産形成を促すための制度ですし、クレジットカードはキャッシュレスの社会推進のために国は補助金を一時期出していました。また、携帯電話の料金に関しても、菅総理や総務省が安いプランを浸透させようとしています。かつ、これらの仕組みは住宅ローン控除、生命保険控除、医療費控除など特定の支出がある人のみならず、収入のあるほぼ全ての人が利用できます。

稼ぐ力を上げるのは時間がかかりますが、上にあげた仕組みづくりは1ヶ月もあればできます。2021年、今後数十年にわたる資産形成の仕組みづくりから始めてみませんか?

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2021年に向けた政治の流れとビジネス・投資機会

2021年、どのように社会が変化していくかを考え、投資機会を考えていきます。定番のPEST(Politics, Economy, Society, Technology)のフレームワークで整理していきますが、今回は、政治について書きます。

2020年の政治(Politics)

2020年は新型コロナの年と言っても過言でないでしょう。インフルエンザの世界的流行以来、約100年ぶりの感染症の大規模感染に対し、各国の政治家のリーダーシップが試される年になりました*

*政治家が直面した「命を救うために、いくらまでなら支払えるか」という課題については、下記の昨年3月に書いた記事に詳しく書いています。
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課題に対し、それぞれの国・地域は異なったアプローチを取りました。中国、オーストラリア、米国、日本の例をみていきます。

中国

新型コロナ発祥の国と考えられる中国では感染症に対して非常に厳しい対応を取りました。具体的には、

  • マスクの着用義務化、街中に検温施設を設けて、早期発見を強化
  • 大規模な検査による早期発見
  • 厳しい営業制限により人の動きを制限
  • 都市封鎖や区画封鎖により感染症が起きた地を隔離する
  • 新型コロナ患者専用の病院の開設により、感染者を隔離
  • 海外からの渡航禁止・帰国制限により海外からの感染者の流入を制限
  • 携帯のアプリケーション(健康コード)を通じて、全国民の行動を監視するとともに、経済再開開始を支援
  • 国による大規模な支援によるワクチン・治療薬開発の加速

特に、アプリケーションを通じての行動監視は効果的で、感染者、濃厚接触者の特定が効率的にでき、感染を抑えることに成功しました。

四早(早期発見、早期隔離、早期診断、早期治療)を目指した施策により、人口13億人の国であるにもかかわらず、2020年12月も新規感染者は連日数十人程度です。しかもその数十人のほとんどは海外からの帰国者であり、空港から市内まで至る事なく、隔離されています。

人々の自由を大きく制限して、プライバシーに大きく踏み込むアプローチは、議会による合意を得る必要のない、一党独裁国家であることから素早い実行が可能でした。中国の意思決定と施策の実施までの早さは時間とともに広がっていく感染症を抑え込むという点で、優れた結果を出しました。

オーストラリア・ニュージーランド

オーストラリア・ニュージーランドも中国に近い、厳格な行動制限を用いるアプローチで感染を抑え込みました。

しかし、アプローチとしてはトップダウンで力で抑え込むというよりは、政治家のリーダーシップにより国民からの合意を得るという方法でした。

両国が継続的に出していたメッセージは、「人命は最も重要であり、感染症を止めるには国民一人一人、ビジネス一つ一つの協力が必要」です。

外出禁止などの行動制限や罰則を用いたことは中国と同じですが、段階的に行動制限を緩和し、どの程度の行動は許されるかを明確に伝えました。検査を受けるか受けないか、どの程度制限を厳密に守るか、は個々人の判断に任されました。

また、政府は新型コロナにより生活に影響が出た人々への支援や危機に陥ったビジネスへも手厚い支援を行いました。失業保険の増額、ビジネスへの財政・金融支援、により人々の生活を支えました。

オーストラリア・ニュージーランドは、島国の利点を活かし、他国からの移動を制限し、自国内の感染をほぼ0にすることを目指しました。国のリーダーである政治家は明確なメッセージ、プロトコルを作って国民に共有し、継続的なコミュニケーションを通じて国民の行動変容に繋げました。結果として、感染症を抑え込み、素早い経済回復に繋げました

米国

アメリカは感染症を抑えることよりも、「いかにビジネスを継続させるか」、「いかに治療薬・ワクチンまでの時間を稼ぐか」に重点を置きました。

  • 失業保険の増額、現金の家庭への至急
  • ビジネスへの財政・金融支援 (Payment Protection Program等)
  • ワクチン・治療薬開発・生産・流通への巨額の財政支援と政府による治験などの支援(Operation Warp Speed)

ニューヨーク州やカリフォルニア州など民主党が州知事を勤める州では外出禁止などの行動制限がされましたが、国としては人々の行動を制限することには消極的であり、トランプ大統領は感染症が広まったのちも、「ウイルスは危険ではなく、行動を変える必要がない」という立場でした。

特に、Operation Warp Speedはアストラゼネカ(英)、バイオンテック(独)・ファイザー(米)、モデルナ(米)の三種類のワクチンの開発やGilead SciencesやRegeneronの治療薬開発・生産に貢献し、人類と新型コロナとの戦いに大きな希望をもたらしました。

一方、「感染症を放置しながら時間を稼ぐ」というアプローチをとった弊害として、米国は現在新型コロナで最も苦しんでいる国です。2021年1月1日現在、3億3000万人中、2,000万人以上が感染し、約35万人が死亡しました(worldmeters.infoより)。1,000人に1人がこの感染症で命を落とした計算になり、今でも毎日新規で20万人が感染しています。

感染症の広まりとそれによる経済の落ち込み、失業率の増加、は現職大統領に不利に働き、トランプ大統領は再選することができませんでした。大統領としては「国民の結束」を訴える民主党のバイデンが選ばれています。

日本

日本はアメリカに近いアプローチで、人々やビジネスの行動を制限するのではなく、「いかにビジネスを継続させるか」を重視しました。

法改正が必要だったこともあり、他国で行われたようなnon-essential (必要不可欠でない)ビジネスの営業停止や人々の外出制限などの行動制限には踏み込まず、罰則のない「要請」にとどめました。「要請」であるため、政治家など国のリーダーも要請通りの行動をとるわけではなく、要請から外れた行動をとった政治家に対しての罰則もなく、あくまでも「個々の判断」に任せました。

日本では大多数の国民が「要請」に従い外出を自粛し、マスクの着用をした結果、政府が罰則を伴う外出禁止などの施策をとっていないにも関わらず、感染者の数は抑えられました。一方、強い施策を取っていないためにウイルスが残り続ける状況は変わらず、国民の長期にわたる自粛によりビジネスに影響が出てきました。

政府が対策として打ち出した「Go to Eat」や「Go to Travel」といった施策は人の移動を促しながら、新型コロナで特に売り上げにダメージを受けた飲食業、旅行業を支援する施策です。西欧や豪のようにそれぞれのビジネスに休業を依頼しながらビジネスを支援するというやり方ではなく、「お客さんを増やすことで支援する」、というアプローチを取りました。

これらのアプローチは第三波と呼ばれる2020年12月の感染拡大まではある程度機能しており、日本の感染者数は欧州、米国と比較してはかなり低い水準で推移していました。しかし、2021年1月1日現在、東京を始めとして感染者の数が急速に増加しており、予断を許さない状況です。また、感染の拡大を受けて、政府への支持率は下落傾向にあります。

2021年に何が起こるか

感染症は世界中の人が同じ問題に直面したという点で、非常にユニークな現象です。

施策と結果が国を越えて比較できるため、結果が比較しやすくなっています。そのため、同じ問題に直面した時、その問題をうまく解決できた国はその他の国からの尊敬を集め、逆に感染症を抑えることができなかった国は他国からの評価を落としました。

結果として、2020年は「民主主義が最適な政治形態である」という西側諸国が信じていた価値観を揺さぶられる年となりました。その影響が2021年以降に出てきます。

新型コロナに対して、最もうまく対応できた国一つは、強権的に対応した一党独裁の中国です。

一方、民主主義の守り手を標榜していた米国は新型コロナへの杜撰な対応を繰り返し、最も多くの国民が感染している国になっています。選挙結果を覆そうというトランプ大統領の「あがき」や社会の分断を煽って再選を果たそうというその姿勢も、民主主義が社会を安定させるシステムではないということを全世界に示し、民主主義への信頼度を低下させました。

コロナ対策で成果を出しており、かつ安定的に経済成長を続けているという点で、中国の一党独裁の政治システムと国民をコントロールする仕組みは、まだ政治システムが固まっていない途上国にとってはより魅力的に見えるようになりました。

社会の分断が目立つ米国、ブリクジット後にスコットランド独立など分裂のリスクを抱える英国、極右政党の台頭が目立つフランス、「メルケル後」が描けないドイツ、と民主主義各国が政治的な脆さを抱えています。2021年のこれらの国の政治的な状況次第では、さらに民主主義への信頼が失われる可能性があります。

そのため、2020年を一つの転換点として、途上国への中国型の政治と経済のシステムの輸出が進むと考えられます。これは、国レベルのサポートを得ながら輸出先を増えせるという点で、中国の国策企業にとってはポジティブな話です

また、新型コロナで経済的にダメージを受けた人が多く出たことに対し、全世界的に政府が財政支出を拡大させて失業者対策、貧困対策を行い、企業を資金注入で支え、中央銀行が金利を下げて景気を保とうとしたため、全世界が同時に社会保障を充実させる「大きな政府化」しました

米の例で言えば、財政支出に積極的でない共和党がGDPの約15%に当たる$3.1兆ドルの財政赤字を容認したこと自体、異例です。緊縮的な財政政策の傾向のあるドイツですらEUの仕組みを利用した財政支出の拡大に賛成しており、全世界の政府が市場にお金を流し込んでいます。その状態でも、米国、欧州を見る限り、好調な株式市場とは正反対に、雇用情勢は依然として厳しい状況です。また、いくつかの国では税金を下げながら財政支出を上げたため、財政は急激に悪化しました。

雇用状態が依然として厳しい状況であるため、2021年も「大きな政府」の流れが続くでしょう。つまり、政府は財政支出により社会保障の拡大や経済活性化のための投資を行っていくことになります。

政治的に特に注目を浴びているのが、クリーンテクノロジーの分野です。米国ではバイデン次期大統領が「再生可能エネルギー」への大幅な投資を公約している他、欧州も「グリーンディール」に基づいて、再生可能エネルギーへの投資を拡大させています。日本も2050年に「カーボンニュートラル」の目標を掲げています。政府からの後押しを受け、この分野は今後数年間、政府からの投資を受けて成長を続けていくでしょう。

支援を受けるのがクリーンエネルギー業界ですが、全ての業界にとって追い風が吹くわけではありません。2021年は米中の大手テクノロジー企業に対しては規制が厳しくなることが予想されます。

特に対象となるのは、GAFAと軍事と結びつきの強い中国テクノロジー企業(半導体、監視ソフトウェア、ドローン企業等)でしょう。GAFAに対しては欧州で税率の引き上げと規制が検討されており、米国内でも独禁法での訴えがされるなど、段々と行動範囲に制約がかけられるようになっています。

過去にマイクロソフトは独禁法により訴えられ、和解により事業分割は避けられましたが、その後は法務リスクを意識してあらゆる変化への対応が遅くなり、結果として検索エンジンではGoogleに抜かれ、SNSではFacebookの台頭を防げませんでした。GAFAについても事業分割は避けられた和解ができたとしても、これまで以上に当局を刺激しないようなアプローチが求められ、今後の事業運営に足枷が課されることになるでしょう。

また、中国のテクノロジー企業については米国市場へのアクセスがなくなること、また米国企業からの調達ができなくなるリスクがあります。「中国への圧力が必要」というのは米国議会でも党派を問わずコンセンサスとなっていることと、米国国民の中でも中国への悪感情が広まっており、中国へ譲歩するような姿勢は大統領も見せづらいでしょう。バイデン大統領となったとしても、急速に米中関係が改善する可能性は低そうです。

以上のように、2021年は

  • 民主主義国家の政治的な混乱リスクが増加し、全世界的な民主主義への信頼感の低下する(相対的に、中国的な統治システムの魅力増加する)
  • 大きな政府化、政府が財政支出と低金利にて経済を支えつづける体制が続く。先進国、中国がクリーンエネルギーへ投資を始めており、クリーンエネルギーでどこの国が覇権を握るかの国家間競争が加速する
  • 大手テクノロジー企業への規制が厳しくなり、中長期的な成長性に影響を与える

と予想されます。中国はカントリーリスクはありますが、今後途上国への影響力を拡大していくと考えると、米国や香港に上場している軍事関連以外の中国株を調べてみても面白いかもしれません。また、クリーンエネルギーは今後数年の投資テーマになりそうなので、要注目です。

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