前回の「お客さんの5つのニーズをおさえる」では人の5つの欲求について説明しました。人は欲求を感じても、すぐに行動するわけではありません。モノやサービスを買ってもらうためには、お客さんの購入までの流れを理解し、適切な働きかけをする必要があります。
今回は、人がモノやサービスを購入するまでのプロセスを理解する上で役立つ考え方について説明したいと思います。
目次
古典的な購買行動モデル – AIDMA
人がある商品を購入するまでのプロセスについて有名なものとして、AIDMAという購買行動モデルがあります。AIDMAはAttention, Interest, Desire, Memory, Actionの頭文字をとってつくった造語です。
- Attention(注意):そのモノ・サービスの存在を知る
- Interest (興味):興味をもつ
- Desire (欲求):欲しいと思う
- Memory (記憶):記憶する
- Action (行動):購入する
AIDMAの具体例
日清の「日清カレーメシ」(お湯を入れて作るカレー味のインスタント食品)を例に、人が商品を買うまでの流れがどのようにAIDMAで整理されるかをみてみましょう。
今は日曜の夜。会社員のAさんがテレビをみていると、CMでカレーメシの広告が流れてきました。CMは一味違って面白く、Aさんはカレーメシという商品があることを知りました(Attention)。
Aさんが寝る前にベッドで転がりながら携帯でネットサーフィンをしていると、カレーメシの違う広告が表示されました。Aさんはテレビでも違う広告を見ていたため、カレーメシって何だろう、と興味を持ちました(Interest)。
翌日のお昼、Aさんがお茶を入れに給湯室へ行くと、同僚が給湯室の前でカレーメシを食べていました。お腹が空いていましたし、同僚が食べている姿を見たことで、Aさんも試してみたいと感じました(Desire)。
Aさんが同僚にそれ美味しい?と聞いてみると、美味しいよ、という答えがかえってきました。Aさんは今度試してみようと思い、パッケージを見て覚えました(Memory)。
Aさんが仕事終わりにコンビニに飲み物を買いに行ったとき、カレーメシが目線の高さに陳列されていました。そういえばお昼に試してみようと思ったな、とAさんは商品を手に取り、レジに持っていきました(Action)。
上記のように、人がある商品を購入するまでには、商品の存在を知り、興味を持ち、欲しいと思い、そして行動するというプロセスがあり、AIDMAはそのプロセスを整理するのに役立ちます。
新しい購買行動モデル(AISCEAS)
AIDMAは依然として有用な考え方ですが、テクノロジーの進化と共に人の購買パターンもかわってきました。特に、スマートフォンの普及により、検索(Search)、比較 (Comparison)がしやすくなりました。また、レビューサイトやSNSの普及により、個人が意見を発信しやすくなった上に、他の個人からの影響も大きくなってきています。言い換えれば、共有(Share)の影響が大きくなってきています。
これらの購買動向の変化を反映して、AIDMAを拡張したのがAISCEAS (Attention, Interest, Search, Comparison, Examination, Action, Share)という購買モデルです。
- Attention (注意):あるモノ・サービスを知る
- Interest (興味):興味をもつ
- Search (検索):検索する
- Comparison (比較):比較する
- Examination (検討):検討する
- Action (行動):行動する
- Share (共有):共有する
特に、電化製品や旅行など大きな買い物の場合、よく調べて、比較して買う人が多いため、AISCEASのフレームワークの方がAIDMAより有用かと思います。
購買行動モデルの限界
購買行動モデルはコミュニケーションの計画をするときに役立ちます。
ただ、このモデルは一人が意思決定をすることを暗黙に想定しているため、複数人の意見が意思決定に影響する場合を考えるためには、違うモデルが必要となります。
企業の意思決定は、ほとんどの場合、複数の関係者の意見が反映されて決定されます。また、家庭においても、例えば夫婦でテレビを買う場合など、一人の意見だけでなく、複数人の意見を擦り合わせて何を買うか決める家庭も多いかと思います。このような場合は、購買行動だけでなく、お客さんの意思決定の仕組みを理解する必要があります。
次回は購買の意思決定に影響を与える、意思決定の仕組み(Decision Making Unit)について説明したいと思います。
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