マーケティング 分析

「考える力」を上げる、考え方のプロセス

ビジネスの世界に入ると、目の前にある仕事をこなしていくスキルはつくのですが、意外と「どう考えれば良いか」というのは教えてくれる人がいません。

問題解決に関する本は何冊も出ており、様々なセミナーも行われていますが、実際にどのような流れで考えていくと良いのか、よくわからない方も多いのではないでしょうか。

下記は、自分が10代、20代の頃に知りたかったな、という思考の方法と流れについての記事です。この記事を読むと、あなたの「考える力」が上がるかもしれません。

  1. 分解して、考える
  2. 俯瞰して、考える
  3. 感情を、考える
  4. 視点を変えて、考える
  5. 誰かに話をして、考える

分けて、考える

大きな問題をそのまま考えようとすると、とっかかりがなかなか見つからなかったり、本質的な要因を見逃したりするものです。

問題を分解して、順番に考えると、全体像をみながら考えを進めることができます。例をあげてみましょう。

あなたは東京の住宅街で小さなカフェを経営しています。オープンから3ヶ月が過ぎ、売上が伸びずに、目標としている数値に達していないとします。どうすれば、売上をあげられるでしょうか?

ここでの問題は、「売上を上がらない」ということです。

売上が上がらない。「うーん、それではもっとお客さんを増やすために広告を」、とすぐに解決策を議論することも実世界ではしばしば見かけます。

しかし、それでは問題の一部しか見ておらず、本質的な問題を見逃してしまうことが多々あります。

より効果的なのは「売上はどう分解できるか」を考えて、売上が上がっていないことの本質的な問題を見つけ出すことです。

まず、分けて考えよう

売上は以下のように分解できます。

売上 = 客数 x 客単価

売上を上げるためには、「客数」を増やすか、「客単価」をあげれば良いのだ、と分けられます。単純ですね。

それでは、売上が伸び悩んだのはどうしてなのでしょうか?

客数をさらに分解してみましょう。

  • 客数 = 朝の客数 + 昼の客数 + 夜の客数 (時間の切り口)
  • 客数 = 新規の客数 + 既存の客数 (来店頻度の切り口)
  • 客数 = 20代以下 + 20-60代 + 60代以上 (顧客の属性での切り口)
  • 客数 = 看板を見て入ってきた人 + 広告を見て入ってきた人 + 元々知っていた人 + 口コミで知った人 (どのような経緯で入ってきたか)

こうやって切り口を変えて、時系列で見てみると、どこに問題がありそうか見えてきます。

例えば、売上が伸び悩んでいるのは、何度も来てくれるようなお客さんが少ないからかもしれません。あるいは、想定していたお客さん層がお店の存在を知らず、新規のお客さんが少ないからかもしれません。

前者が売上の伸び悩みの主な理由であれば

「いかに既存のお客さんに満足してもらい、リピート客になってもらうか」

が考えるべき主な問題になります。

大きな問題は分解して考えて、問題を明確にすることで、より取り組みやすくなります

同様に、客単価についても様々な切り口で分類できます

  • 客単価 = 一品あたりの単価 x オーダー数 (単価 x 購入数)
  • 客単価 = 食べ物 + 飲み物 (種類で分類)

切り口を変えて分解することで、より問題を多面的に分析することができます。

「もれなくダブりなく」(MECE - Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive)分解することは、問題の原因について考えるのに役立ちます。

また、定性的な問題についても、「それってどうして?」(why so?)、「要は何なの?」(so what?) と問いかけていくことで、論理的に分析することができます。

問題を洗い出したのちに、問題の優先順位付けを行い、さらに思考を進めていきます。

いかに既存のお客さんに満足してもらい、リピート客になってもらえば良いでしょうか

これはマーケティングの領域です。

マーケティング視点での切り口では、4P (商品・サービス、価格、立地・流通、プロモーション)を考えるのが定石であり、サービス業の場合はさらに加えて人(People)、プロセス(Process)を加えた6Pを考えます。

ここでは、リピート客が少ない大きな問題の一つが「人」にあり、「店員の定着率が低く、サービスが安定しないから」だとしましょう。

次に考えるのは、「どうして店員の定着率が低いのか」です。こちらも分けて考えましょう。

  • 辞めた
    • やりがいを感じられなかったから(自己満足)
    • 同僚との間で問題が生じたから・仲が良くないから(チームワーク)
    • 他に良い仕事が見つかったから(機会)
    • 自分が認められていないと感じたから(帰属感)
    • 給料が良くないから(金銭的)

他にも理由があるかもしれません。ここからさらに、「どうしてやりがいを感じられなかったのだろう」と考えていくと、さらに一段階深い理由を考えることになります。

  • どうしてやりがいを感じられなかったか
    • 希望する仕事ができていなかった
    • 自分が成長できている実感を得ることができていなかった
    • そもそも自分のやりがいを理解できていない

ここまで考えることができれば、次のステップとしてはどの仮説が正しいかを検証するためにどのような作業をすれば良いか、を考えることになります。従業員にインタビューをしたと仮定して、以下のような回答を得られたとしましょう。

「Aさん? ああ、ボーナスの評価を見てショックを受けていたよ」、「Aさんが自分の仕事は何の役に立っているのだろうとぼやいていたのを良く聞いたよ」

「ボーナス評価にショック」、「仕事が誰のためなのかわからないとぼやいていた」というのは「要は何なんだろう?」と考えると、「業務評価に不満があった」というようにまとめられます。

「業務評価に問題があったこと」が本質的な問題であるとわかれば、次はこの問題に対してどのように改善策が打てるか、を考えることができます。

以上のように、「どうして?」と掘り下げていくことと、「要は何なの?」とまとめていくことの両方を通じて、問題を「構造化」して、課題を絞り込み、さらに考えを進めていくことができます。

また、ここで「リピート率を上げるためには他にどのような手を打てるか」と元の問題に戻って、商品、価格、プロモーションなど他の要因について考えることもできます。

以上のような問題を構造化して考える手法は、「ロジカル・シンキング」と呼ばれています。

この考え方については、少し古い本ですが、照屋華子さんの「ロジカル・シンキング」がわかりやすいです。

バーバラミントの「考える技術・書く技術」も良い本で、「仮説思考・事実に基づく・構造化」のポイントを解説していますが、やや分厚い本ですので、kindle版も出ている照屋さんの本の方が読みやすいです。

コンサルタントが著者の、「問題解決の考え方」の本の多くがこのロジカル・シンキングを扱っています。

参考:この項はマッキンゼーの問題解決の7つのステップの前半です。

  1. Define the Problem (問題を定義する)
  2. Disaggregate the Issues (課題を分解する)
  3. Prioritize the issues. Prune the Tree (課題の優先順位付けをする)
  4. Build a workplan and timetable (作業計画を立てる)
  5. Conduct critical analysis (重要な分析を行う)
  6. Synthesize findings from the analysis (分析結果から得られる洞察をまとめあげる)
  7. Prepare a powerful communication (効果的に伝える準備をする)

「問題を定義する」、「課題を分解する」、「課題の優先順位付をする」がこの項にあたります。

俯瞰して、考える

分解して考えることでうまく課題が絞り込める場合もありますが、違う切り口を用いた方がうまく課題が見えてくる場合もあります。

次のステップとして、自分の視点を上に持っていって俯瞰してみましょう。別の言い方をすれば、「抽象化して考える」です。

具体例で考えてみましょう。

あなたはある「投資信託」を売る仕事をしているとします。あなたにはノルマがあり、ノルマを達成すればボーナスがもらえます。どうやったら、より多く販売することができるでしょうか?

より長く働く? それも一つの解かもしれませんが、あなたの普段の行動を抽象化して考えてみましょう

モノやサービスの販売は、プロセスで考えると、以下のようになります。

  • 見込み客を見つける
  • 連絡を取る
  • ニーズを見つける
  • 解決策を提案する
  • 顧客の不安や反論に対応する
  • 販売する

販売に近づくにしたがって、残るお客さんは減っていきます。例えば、過去の例から、100人の見込み客がいれば、10人に販売できるとします。すると、あなたの取れる戦略としては、

  • 見込み客を増やす
  • 見込み客から販売までの成功率を上げる

の2つが考えられます。プロセスに分けていれば、どの段階でお客さんが次の段階に進まないかがわかるため、その段階が問題であると見つけることができます。

また、どのような顧客のタイプがより販売に繋がりやすいか、もわかるようになってきます。

プロセスに分けて考えるのは、具体的な行動を「抽象化する」一つの方法です。

違う抽象化の例を考えてみましょう。

あなたは違う部署に異動したいとします。あなたが働いている会社は直属の上司の意向が反映されやすいため、異動先の上司からOKが出れば異動できる可能性が高いです。あなたはどうすれば良いでしょうか?

あなたには今の上司がおり、その上司にもさらに上司がいます。また、異動の際には、異動先で上司になる人だけでなく人事部も関わってきます。

抽象化して考えましょう。それぞれの関係者の「利害」と「誰が誰に影響力を持っているか」はどうなっているでしょうか。

  • 直属の現上司:利害「チームに穴を開けたくない」、影響力「異動を止められる」
  • 直属の現上司の上司:利害「部署の目標を達成したい」、影響力「直属の現上司の意思決定に影響力」
  • 異動先の上司:利害「良い人材をチームに加えたい。けれど会社内で争いは起こしたくない」
  • 人事:利害「異動をスムーズにしたい。人材を最適な場所に配置したい」 影響力「異動自体」

このように「利害関係者の繋がり」(=ネットワーク)を考えれば、どの利害関係者に対して、どのようなアクションを取れば、異動が実現しそうか、が見えてきます。

プロセス」や「ネットワーク」はどんな場面でも使える汎用的な切り口です。

良く言われる「フレームワーク」も抽象化です。フレームワークは数多くありますが、下記はビジネスで特に良く使われているものです。

  • PDCA (Plan, Do, Check, Action): 計画、実行、分析、改善のサイクル
  • ファイブフォーシーズ:業界の魅力度を分析する際に利用
  • 3C分析(顧客、競合、自社):戦略を考えるときに利用
  • SWOT分析(強み、弱み、機会、脅威):戦略を考える時に利用
  • マーケティングのSTP(セグメンテーション ・ターゲティング・ポジショニング):マーケティングの基本
  • マーケティングの4P(製品、価格、流通、プロモーション):マーケティングの基本
  • ベネフィットとリスク、短期と長期:計画を練る時に利用

これらの箱に沿って考えることで、「漏れなく、ダブりなく」効率的に考えることができます。

また、典型的なフレームワークは便利なビジネスの共通言語のため、この共通言語を用いることでコミュニケーションがスムーズになります

それぞれのフレームワークは特定の用途で効果を発揮しますので、良く使われるモノは覚えておくと便利です。ただし、より汎用的に使えるのは「抽象化」の考え方です。

現実に起きていることを一歩引いて、上から俯瞰した視点からみてみましょう。「ランチェスター戦略」、「ブルーオーシャン戦略」など様々な理論が提唱されていますが、それらの理論を現実に当てはめるのは、この「抽象化して考える」プロセスです。

感情を、考える

分解すること、俯瞰すること、は論理的に課題を分析して、打ち手を考えるステップでした。

論理的な思考は重要ですが、現実にはどんな現場も人が関わる限り、感情で動いています。問題自体が人間関係にあることもありますし、そもそも論理的に考えて導かれた解決策も、人の感情を無視すると、実行されないか、もしくは実行されてもうまくいきません。

第三のステップでは、頭のスイッチを論理から切り替えて、個人の感情に焦点をあてます。

関係者が「どのように感じているか」、「なぜそう感じているのか」、「どのような価値観を持っているのか」、「何を目指しているのか」を考えましょう。

具体的な例で考えてみましょう。

あなたはカフェのオーナーです。「ラテアート」を売りにしたメニューがありますが、店員が提供するのに時間がかかる上、販売額も利益率もさほど高くありません。オーナーとして、このメニューを止めて他の新しいメニューに切り替えるべきでしょうか

数字だけ見れば、「売上、または利益率に貢献する」メニューに絞り込んだ方が、ビジネスとしての効率は良くなります。また、売れないメニューの定期的な入れ替えは必要です。

一方、「ラテアート」のような創造性が発揮されるメニューは、従業員が作る過程を楽しんでいたり、難しいアートをできるようになることに充実感を感じていたりします。

お客さんもラテアートに書かれた文字などのちょっとした心遣いに喜びを感じたり、それをきっかけにSNSでシェアすることも多いものです。

ある商品やサービスが従業員やお客さんの感情に強く結びついている場合、「止めるべきかどうか」を考えるよりは、「いかにその商品やサービスをお店の強みとして打ち出すか」と考えを逆転させた方が、お店にとっても、従業員にとっても、お客さんにとってもプラスになる可能性があります。

数字に出てこない、人の「こだわり」や「喜び・楽しさ・安心・誇り」などの感情を、意識するだけで異なった視点が出てきます。

現場に出て、従業員やお客さんと話をすると、見えてくるものはたくさんあります。

論理と感情は車の両輪であり、片方だけでは回りませんどんな課題を考える時にも、感情の要素を考慮することを忘れないようにしましょう。

感情について理解するのは、ダニエル・カーネマンの「ファスト & スロー」がおすすめです。

視点を変えて、考える

分解すること、俯瞰すること、感情を考えること、のステップを経ると、あなたの視点で論理と感情の両方を考慮した現状の認識と解決策の仮説ができるはずです。

次のステップは、視点を変えて、あなたの分析と解決策をチェックします

上司の視点で考える。

立場によって気にする点も異なるものです。例えば、上司が「他社、他の部署、他の国の支社はどうやっているのか」を気にする人であればその点が抜けていないかをみる必要があります。

同様に、上司が「プランB」(うまくいかなかった時の次善の策)を常に持ちたい人であれば、プランB、プランCまで考えておくのが良いでしょう。

反対の立場から考える

「もしあなたの案に反対する人であれば、どう反論してくるか」を考えてみましょう。

議論は、「前提、根拠、推論、主張」の4つの要素で成り立っており、反対の立場の人は、そのいずれかを問うてくる可能性が高いです。

例えば、あなたが「うちはITの会社だが、給与水準はIT業界の水準と比べて低い。だから人が定着しない」と主張したとしましょう。この議論は、以下のように分解できます。

  • 主張:給与が低いのが人が定着しない理由だ
  • 推論:給与が低いと人が定着しない
  • 根拠:給与水準が業界水準と比べて低い
  • 前提:自社がIT業界水準と比べられる

もしあなたの主張に反対の人でしたら、以下のように反論できるでしょう。

  • 給与が低くても、人が定着している会社はある。給与が主な理由ではない(推論が違うという反論)
  • 自社は中小企業であり、すでにビジネスが確立されている大企業の給与水準と比較するのは適切でない(前提が違うという反論)
  • 自社は中小企業の中では標準的な給与水準である(根拠が違うという反論)

このような反論が来ることを予測できていれば、それに応える準備ができます。

反論にどう対応するか(Objection Handling)を考えることで、考えをより一段深めることができます。

また、「前提を変えて考える」ことで新しい解決策が生まれることもあります。例えば、「〇〇の理由で無理だ」という言い分に対して、じゃあ「〇〇がなかったらどうする」と制約を外すことで、新しいアイデアが生まれることもあります。

誰かに話をして、考える

以上のステップを経れば、自分の中で考えがまとまるはずです。最後のステップは、人の頭を使わせてもらうことです。

自分一人で考えていても、どうしても見えていない観点が出てきます。

他の人に質問をしてもらったり、他の人の意見を聞くことで、より考えは洗練されていきます。

また、人に話をしたり、誰かに向けてアウトプットを書いたりしている中で、自分の中で新しい考えが見つかることも多いものです。同じチームなど、他の人と話をして、考えをより深めていきましょう。

まとめ

ビジネス上の課題を考えるときのプロセスとしては以下の5つの流れがあります。

  • 分解して、考える
  • 俯瞰して、考える
  • 感情を、考える
  • 視点を変えて、考える
  • 誰かに話をして、考える

以上が思考のプロセスです。僕自身、このプロセスを日本、米国、オーストラリアで用いてきましたが、どの国でも通用していました。

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