MBA卒業後の選択肢

今の時期のビジネススクールは、夏の過ごし方が定番の話題だ。すでに夏のインターンシップを獲得した人は落ち着いており、まだの人は獲得しようと若干の緊張感が漂っている。僕はというと夏は1ヶ月間は東京で、1ヶ月間はニューヨークで過ごすことが決まりそうで、まだ最後の1ヶ月間の過ごし方は決まっていないものの、やや落ち着いてきている。

最近は卒業後の進路を色々と考えている。アメリカに残って起業、アメリカで就職、日本へ帰って起業、日本で就職の4つがメインシナリオ。他の国での起業や就職も選択肢としてはあるが、他の国ではアメリカや日本であればある地域の知識や人的ネットワークが使いにくいので、強みを活かすという点ではやはりアメリカか日本が良いのだろうと考えている。

アメリカで起業をする主なメリットは、市場が大きく、最先端のビジネスが始まる場所でもあり、世界でのビジネスの展開を考えたときには最適な場所である点。またカルチャーとしてもこちらの方が自分はのびのびできるのと、異文化の中での挑戦ということで成長の余地が大きい。一方のデメリットはビザの問題。OPTという制度で卒業後に数ヶ月は残る事ができたとしても、E-1ビザという起業家ビザを取るためには$1m以上が必要。グリーンカードがない限りはその後もビザの問題が常につきまとう。加えて、アメリカ人との競争になるので、強みが活かしにくいし、チームを集めるのは大変な環境。言葉や文化を含めて様々なチャレンジを抱えながらの挑戦となる。

アメリカで就職するメリットはH1-Bが取れればビザの面をクリア出来ることと、自分がアメリカでやっていくだけの能力とネットワークを磨けること。数年間働いて、アメリカでグリーンカードを取得するというオプションもある。デメリットはグリーンカード取得までは時間がかかることと自分でビジネスを始めるという選択肢がやや遠のくこと。

日本で起業をするメリットは、日本に関する知識、日米のネットワークをフルに活かせること。言葉や文化の壁がない分、チームを組むのもアメリカよりはやりやすいだろう。一方で、一度日本に帰ると、アメリカや海外へまた出るのが難しくなるというのがデメリット。また、市場も縮小傾向にあるというのも懸念材料。

日本での就職についてのメリットは日本に関する知識と日米のネットワークを活かせること。一方で、他の選択肢に比べるとチャレンジの度合いやワクワク感で劣る。

今日、ニューヨークに住む中国人の実業家と話した時には、こんなアドバイスをもらった。「君は絶対にアメリカに残るべきだ。そのためにも、使えるものは全て使うべきだ。日本、アメリカにあるネットワーク、これまでに身につけてきた知識やしてきた経験、日本人であること、は全て資産であり、全てを最大限に使ってニッチを探せ。アメリカ人とまともに戦っても勝てない。まず小さいところで成功しろ。そうすれば、次に繋がる」

今回ビジネスプランコンテストに出そうと思っているアイデアをぶつけたときには、筋は悪くなさそうだというフィードバックをもらった。今学期と夏は、自分の可能性を見極める良い機会。挑戦を続けたい。

4連休を終えて

先週は金曜に授業がなく、月曜も祝日だったために、久方ぶりの4連休。とはいえ時間が経つのは早いもので、週末もあっという間に終わってしまった。

4連休はようやくまとまった時間が取れたので、友人と会ったりカンファレンスの準備を進めたりすることに加え、ケースの予習を15時間、Tech::CampでSwiftの勉強を15時間使った。Tech::Campは1月から始まり、2か月コースで3月6日までなのだが、授業や生活に追われてあまりできておらず、ようやく半分まできたところ。カリキュラムを終わらせるだけでもあと50時間はかかりそうだ。応用のオリジナルアプリ開発(数十時間必要)まで行いたいため、すでに延長することが見えているが、あと20日の間に週末を利用してカリキュラムの範囲はできるだけ頑張りたい。

Tech::Campへの時間の投資もそうだが、限られた時間というリソースをどこまで何に使うべきかは悩みどころ。僕自身がプロダクトマネジメントのバックグラウンドなので、ファイナンスやアカウンティングなど他のビジネス分野の学習に時間を注いでビジネスパーソンとしての基礎体力を磨いたほうが良いという考えもあるし、一方でそれでは差別化できないので、エンジニアリング力を上げることでよりプロダクトマネジメントの専門性を高めた方が良いとも思う。

これまでに少しでもやってきたのは、SQLを用いたデータベース操作、エクセルを用いた統計分析、Html/Cssでのウェブサイト構築、Ruby/Railsでの簡易アプリ作成。今はSwiftを使ってアプリを作ろうとしている。

これらの知識はまだまだ浅いので深めなければならないことに加え、アプリを作るためには、①サーバー側の知識(Amazon Web Server設定等)、②データベース構築・運用、③コーディング(Web (Html, css, Ruby/Rails) or iOS(swift) )、は少なくとも学ぶ必要がある。加えて、夏の仕事の関係で、データ分析についてももう少し深める必要がある(統計分析、R)。

今は比較的時間には恵まれた環境にありながらも、授業にかけなければならない時間が多い上、友人関係、イベント運営、ビジネスコンテスト、エンジニアリング力の強化、と優先順位をつけないと回らない。次は春休みが3月13日から一週間あるので、それまでの一ヶ月間は嵐のように過ぎ去るのだろうと思う。

歴史、教育に関する友人からの学び

HBSでは友人からの学びが多い、というのは何回か書いているトピックだが、今週も友人から新しい事を学んだ週であった。特にBGIE (Business, Government, International Economy)が始まった今学期は、経済、政治、文化、歴史、教育について話すことも自然となり、それぞれの国の学生との会話を楽しんでいる。

例えば、ドイツからの留学生の友人とは歴史について話した。僕が、「ドイツでは第二次世界大戦、特にナチス政権についてどう教えているのか。ナチス政権が生まれる土壌となったのは第一次世界大戦後のイギリス、フランスからの多額の損害賠償の重荷と世界恐慌の影響から経済が悪化し、社会的な不安が高まったことが背景にあると思っている。ナチスが生まれる土壌作りとしてイギリス、フランスにも戦争を引き起こした原因があるというように学校では教えているのか?」と聞くと、

「その分析は正しく、実際に第一次世界大戦の反省から第二次世界大戦後にはイギリスもフランスも損害賠償をドイツに課してはいない。ただ、教育に関してはドイツではナチスについては基本的には100%自国が悪かったと教えている。おそらく責任転嫁の余地を残さないため」

と返ってくる。その他にも第二次世界大戦後の戦後処理(ドイツが4分割された)、その後の統合の過程、1989年以降の経済的、政治的な統合(通貨統合、西から東ドイツへの投資、現在にも続く経済格差)、メルケル首相についての評価、などを話した。どの話も面白かったのだが、メルケル首相は「女性であること、東ドイツ出身であること」を全く利用していない、というのが意外で面白かった。アメリカではクリントンが女性であること、ビルクリントンの旦那であることをうまく利用して選挙を戦っているのとは対照的だ。

また、同じく別のアメリカ人のクラスメイトとは家庭での教育について話した。話して印象的だったのは、その育てられ方。

  • 親族も含めて役員のため、小さい頃から家の中が取締役会のようだった
  • 今日の予定は、と聞くと1日のスケジュールからどうしてそれが必要なのかを説明してくれて、何をしているのかの透明性がとてもあった
  • 質問や意見をするとそれにきちんと答えてくれ、小さい頃から一人の大人として扱ってくれた
  • 継がせようという姿勢はなく、好きに何でもやらせてもらえた
  • 母親を通じて情報を得て、私にとって大事なイベントがある日には父親が必ず一緒にいてくれた

こういった小さい頃から経営者としての視点を育ませるような育て方は非常に効果的だなと感じた。アメリカでは良い家系の子女が良い教育を受けて、家族のネットワークを使ってさらに大きなことを成し遂げていく、という方程式が一定レベル以上の層には広まっているように見える。HBSには一定数以上財閥や大企業社長の息子や娘がいるため、在学中に彼ら・彼女らがどんな教育を受けてきたのか、知りたいところだ。

議論、議論、議論

ハーバードには様々な分野からその国や分野を代表する人が集まっており、そういう人たちと議論したり、話をしたりすることほど楽しいことはない。昨日は、①日本人元経営者の方と日本での経営環境(規制、投資家、経営手法など)について議論し、②官僚の人と経済政策について議論し、③同じ寮の台湾人と歴史や文化について話をした。夕方18時半から始まり、気がついたら午前3時。こういう会話は、楽しすぎて時間を忘れる。

僕が感じたことを、簡単にまとめると

  • どのVCと組むかが重要。利益を早めに出させようとするVCと組むと、長期的な視点で見れなくなる。長期的な視点をもち、スケールするのに十分なネットワークも持ったVCと組めた方が良い
  • CFOは最初はCEOと兼任しても良いが、CEOはビジョンや人を、CFOは現実とキャッシュを見る必要があるため、両方を同時にやるのは難しい。資金調達にはかなり時間がかかるので、早めに分けた方が良い
  • インターネットの分野はグローバルに展開しないと、規制された産業でない限り最終的にはグローバルプレイヤーに押しつぶされる(e.g. Facebook、Amazon)。日本だけでやってある程度まで拡大しても、グローバルプレーヤーが豊富な資金力で一気に投資をしてくると、勝てない
  • 日本は現場は優秀だが、意思決定のプロセスに問題がある。特に政治ではよく分からない力学が働いて、合理的ではない手段が選択される
  • 日本の衰退、経済危機は所与のものとして動いた方が良い。今は日銀が国債を引き受けているので、理論的にはお金を刷り続けることはできるが、どこかのタイミングで為替が暴落し、輸入価格が高騰し(特にエネルギー)、インフレーションによって円の価値が大きく落ちる。その頃には高度成長期のような人口ボーナスはなく、むしろ人口オーナスの状態。かつ、中国や韓国も強力な競争相手であるので、高度成長期のように輸出メインで経済を大きく成長させるのも難しい。
  • ただし、経済危機はここ3年ではなく、10年などのスパンでリスクが高くなると予想。所得収支が大きくプラスであること、米国債を大量に保有していること、からいきなり対外債務を支払えなくなる事態にはならないだろう。
  • 台湾の視点からすると、日本への視点はmixed。占領時に乱暴された人を親族に持つ人にとっては嫌いな国であるし、一方、教育、衛生、交通など社会のインフラを整備してくれた国であるという認識もある。日本のポップカルチャーも浸透しており、全体的に見れば若者からの好感度は高い
  • 歴史の話は東アジアで国を超えて、本当に仲良くなろうと思うと避けては通れない。それは中国と台湾でも同じ。お互いに感情的にならないという前提で話をして、お互いがお互いの視点を理解することで、本当の意味で信頼できる仲になれる。
  • 歴史の話を中韓台日で話す機会は多くない。仲がかなり深まらない限りそれを避けようとするため、あえてそこまで踏み込むことで、一段違う信頼関係を築くことができる。

ビジネス、政策、文化、とこういう話ができるHBSという場所が、僕はとても好きだ。HBS生という立場だからこそ会える人がいるので、この機会に様々な人と出会い、自分の幅を広げたい。

HBS1年生春学期

新学期が始まって2週間が経過した。1年目の秋学期を乗り切ったので今学期は楽になるかと思いきや、HBSはそんなに甘くないようだ。授業、友人関係、課外活動に時間を使っていたら、あっという間に時間が過ぎてしまった。

授業

今学期の科目はBGIE (Business, Government, and International Economy)、LCA (Leadership and Corporate Accountability)、FIN2 (Finance 2)、STRAT (Strategy)、TEM (The Entrepreneurial Manager)、FIELD 3の6科目。特にBGIE、LCA、FIN2は秋学期の科目よりも一段階専門的になった印象で、ケースの量も予習の量も増えている。アカデミックに割く割合を少し減らそうと思っていたところでプレッシャーをかけてくるので、やはりHBSは学生のことをよくわかっているなと思う。

またFIELD 3はチームで起業のシミュレーションをするという授業で、こちらもそれなりに時間が取られる。うちのチームは基本的には学校側で用意してくれている時間をミーティングに使い、それ以外は作業を分担して行う予定だが、こちらもそれなりに時間を使うことになりそうだ。

友人関係

今学期は友人との仲を深める学期にしたいと思っている。先週は金曜に日本人の他のハーバード生と集まり、日曜に友人と4人でCatanというゲームを集まってやり、今週の木曜夜に台湾とアメリカ人の友人と火鍋を食べに行った。少人数で集まってご飯を食べたりやゲームをするのは楽しく、お互いを理解できるため、週1回はこういう機会を自分で作っていきたいと思う。

また、第一回目のEVOLVE(少人数のグループで様々な人生のトピックについて話す会)があって、それぞれがこれまでの人生について話した。一学期の間一緒に過ごしていたセクションメイトのことを、全然分かっていなかったのだなと実感するとともに、彼ら、彼女らがこれまで成し遂げてきたことに驚かされた。普段普通に話している同級生だが、彼ら、彼女らはHBSが選ぶような魅力を持った人であり、もっともっと知って、仲良くなりたいと思った。HBSにおいては、Section、Discussion Group、Club (ABC/AABA)、Competition、FIELD 2、FIELD 3、EVOLVE、Harvard同期の会などは仲良くなる良い機会だと思う。これらの機会を利用して、卒業後もずっと定期的に連絡を取り合うような友人を何人も作れるといいなと思う。

課外活動・キャリア

クラブの活動のピークが来ていることもあり、先週、今週は特に忙しかった。Asia Business Conference(ABC)は2月28日(日)の予定で、そちらに向けて準備を進めている。

また、Japan Trekも準備を進め、1日の月曜日に申し込みを始めた。こちらは驚くべきスピードで予約が来て、目標人数に1日で達して幸先の良いスタートを切ることができた。10セクション全員にきちんとプロモーションをした上、それぞれのセクションに日本人がいたことが、これだけの数が集まった理由だろう。実際に準備が本格化していくのは2月から3月にかけてだと思うので、こちらも参加者に満足してもらうようなものにしたい。

3日にはNew Venture CompetitionのEarly Registrationを済ませた。授業、友人関係、ABCにJapan Trekにボーゲル塾がある中でCompetition応募用紙を書いていたので、結構時間がなかった。最終提出物の締め切りは3月なので、それに向けてプランを詰めていきたい。

やりたいこと、やるべきことは多いが、日々の生活はとても充実している。せっかくのHBS生活。悔いのないように精一杯やりたい。