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Royalty Pharma(RPRX)分析。強みと株価

2020年夏の大型IPOであるロイヤルティファーマ(Royalty Pharma)について、業界の中での位置付け、強み、製品、株価について分析したいと思います。

ロイヤリティファーマの業界の中における位置付け

Royalty Pharmaのビジネスはベンチャーキャピタルに近く、「将来巨額の売上を生み出しそうな薬やその薬を開発している会社に投資をして、そこからリターンを得る」、というモデルになります。

Royalty Pharmaの詳しいビジネスに関してはNekoさんのRoyalty PharmaのNoteで詳しく書かれているので、こちらを参照していただくと良いと思います。僕はヘルスケア業界の観点から、Royalty Pharmaの位置付けについて書きます。

製薬はリスクが高い業界です。

医薬品の製品開発プロセスは、基礎研究、動物による治験、人での治験と段階を経て有効性と安全性を確認する必要があり、通常は10年以上かかります。

人での治験まで進んだとしても、3つのフェーズを通過して販売承認を得られる薬は8つに1つなので、投資しても報われるかどうかはわかりません。

近年では新薬の開発が特に難しくなっており、一つの製品を開発・販売するまでには$2.6b、販売後のモニタリングで$0.3mで合計約$3b (3,150億円)かかります(Joseph (2016) "Innovation in the pharmaceutical industry:New estimates of R&D costs", Journal of Health Economics 2016)。

開発費は高騰を続け、過去10年でほぼ2倍になっています。

このように製薬は長期に渡って高い研究開発費を支払っても薬として承認されるかどうかわからない、リスクが高いビジネスです

薬を生み出すのはそれだけ大変であるため、どの国も「特許」を薬に与えて、製薬会社が独占的にその薬を販売して利益を享受することを認めています。

「新薬開発というリスクの高いプロジェクトに投資をしていたのだから、開発費を回収して、次の薬に投資をできるだけの利益を得て良いよ」、ということですね。

期間は米国の場合、出願日から20年です。この特許で保護されている期間は、きちんとした有効性と安全性がある薬で、競合が出て来なければ、収益は右肩上がりで伸びていることが多いです。

つまり、「新薬が出るまではリスクが高い」ですが、「薬の販売承認が出て、すでに販売がされている薬はリスクが低い」です。

このようにリスクの高いビジネスを行っていることから、製薬会社からすると「リスクを減らしたい」というニーズがあります。

例えば、「研究開発費用の一部を支払ってもらう代わりに、薬が実際に販売されたときに売上の一部を渡す」ことで、リスクを減らせます。

薬がうまく行ったときには得られる収益が少なくなりますが、うまくいかなかったときの損失も少なくなりますので、うまくいったときとうまくいかなかった時の差が小さくなる、ということです。

また、大学の研究室発の薬など、研究開発を進めて治験を行うための資金がないという場合にも「薬が実際に販売されたときに売上の一部を渡す」契約を結ぶことで、資金調達ができ、薬の開発を進めることができます。

この「将来に薬が販売されたときの売上の一部を渡す」というのがロイヤリティ(Royalty)の仕組みであり、ロイヤリティファーマはこのロイヤリティの仕組みを通じて、製薬会社や研究開発段階の会社に対して、「薬の研究開発リスクの減少」と「研究開発コストの資金調達」、という価値を提供しています。

この役割は薬の開発コストの高まりに伴い、特に研究開発段階の会社において、重要性を増していっています。

ロイヤリティファーマはその名の通り、45を超える薬のロイヤリティを保有しており、これらの薬が販売される度に一定割合が売上として入るようなビジネスの構造になっています。

ロイヤリティファーマの強み

ロイヤリティファーマの強みは3点あります。

規模

1996年以降、ロイヤリティ市場のシェアでロイヤリティファーマのシェアは50%を超え、特に$500mを超える大型案件ではシェアは80%を超えます(Royalty Pharma S-1資料より)。

二番手のシェアは7%程度ということですから、ほぼ一強ということになります。

これは、製薬会社が大型調達を行うことを考えた場合、ほぼロイヤリティファーマに案件が回ってくることを意味します。

ベンチャーキャピタルのような投資先によりリターンが左右されるビジネスにおいて、有望な案件が第一に回ってくることは競争優位に繋がります。

また、45以上の薬で分散されたロイヤリティのポートフォリオを持っていることで、金融機関からしても債権の回収可能性が高い取引先として見なされており、低金利で資金の調達が可能となっています。

低金利で資金が調達であればそれだけ低い利回りでも投資が可能となるため、こちらも競争優位性に繋がります。

投資判断のプロセス

医薬品の市場性を判断するのは、異なる医療の専門分野は異なる市場であるため、幅広い知識と経験が必要となります。

ロイヤリティファーマは20年以上にわたり医薬品に投資を続けており、着実に成功する取引を積み重ね、成功体験と失敗体験が投資判断のプロセスに組み込まれています。

この知識と経験の積み重ねは一朝一夕で真似できるわけではなく、またロイヤリティファーマ一強の市場であるため、他の競合が同等程度の経験を積むことは容易ではありません。

過去の実績に裏付けされた投資プロセスはロイヤリティファーマが持つ競争優位性の2つ目です。

ネットワーク

ロイヤリティファーマは資金だけではなく、ネットワークも提供しています。

医薬品は研究開発がうまくいき、販売承認を取れたとしても、そこから販売するには販売のネットワークを築く必要があります。

そして、販売ネットワークを一から築くにはコストがかかりすぎるため、多くの場合、研究開発段階の企業は、販売承認が得られた時点で大手の製薬会社に買収されるか、もしくは提携して大手の販売ネットワークを使わせてもらうことを選びます。

ロイヤリティファーマは過去のロイヤリティ取引を通じて、大手と研究開発段階企業へのネットワークがあります。このネットワークは過去の取引実績から築かれたものであり、こちらも一朝一夕で真似ができるものではありません。

ネットワークが競争優位性の3つ目です。

ロイヤリティファーマはこれらの3つの強みをもつ業界のリーダー的な存在であり、ロイヤリティ業界が伸びれば、その市場の伸びを享受すると考えられます。

ロイヤリティファーマの製品群

2020年上半期の売上

ロイヤリティファーマの2020年のロイヤリティ受け取りを見ると、ロイヤリティ期間がまだ十分に長い製品については順調に成長しており、上半期は$1bを超える受け取りとなりました。

新型コロナの影響で製薬全体の売上に影響が出ている中、2020年の上半期は2019年のペースを上回っています。

ロイヤリティ受け取り製品 適用 企業 ロイヤリティ期限 2020 上半期 2019
Cystic fibrosis franchise cystic fibrosis Vertex 2037 $235,522 $424,741
Tysabri multiple sclerosis Biogen Perpetual $176,324 $332,816
Imbruvica chronic GVHD Abbvie 2027-2029 $159,222 $270,558
HIV franchise HIV Gilead 2021 $148,379 $262,939
Januvia, Jaumet, Other DPP-IVs diabetes Merck 2022 $69,647 $143,298
Xtandi prostate cander Pfizer 2027-2028 $68,908 $120,096
Promacia Hematology Novartis 2025-2027 $62,401 $86,266
Farxiga/Ongyza Diabetes AstraZeneka $8,257 $0
Prevymis Infectious Diseases Merck $6,413 $0
Crysvita Rare disease Ultragenyx $2,620 $0
Erleaada Cancer $1,772 $0
Emgality Neurology Eli lily $2,236 $0
Tazverk 2034-2036 $0 $0
Nutec migrane Biohaven 2034-2036 $0 $0
Trodelvy Immunomedics Perpetual $0 $0
Others $148,344 $242,767
Sum $1,090,045 $1,883,481

これらの売上高が高い製品群については、多くが2020年代を通じてロイヤリティを受け取ることができます。

加えて、2020年には大型のロイヤリティ切れが続いたため、ロイヤリティ切れの影響が大きく、ポートフォリオ全体のロイヤリティ受け取りは2019年と比較して微減となる見込みです。

ロイヤリティ切れ製品 company 2020 1H 2019
Tecfidera Biogen $0 $150,000
Lyrica Pfizer $12,557 $128,264
Letairis Gilead $22,275 $112,656
Remicade JNJ $0 $6,068
Humira Abbvie $0 $0
Others $3,545 $21,047
Mature Sum $38,377 $418,035
Total $1,128,422 $2,301,516

微減はあまり好ましい数字ではありませんが、2020年は

  • 大型ロイヤリティ切れが起きた
  • 新型コロナの影響で製薬全体の売上に悪影響が出て、ロイヤリティも伸び悩んだ

年になります。その中で、前年度から微減程度のロイヤリティ受け取りを確保できているのはポジティブと考えられます。

ただし、2021年にHIVの特許が、2022年にDPP-IVsのロイヤリティが切れるため、2021年に$300m (15%)、2022年に140m(7%)程度の売上減少が見込まれます。

これらの22%のロイヤリティ減少を既存のロイヤリティの成長と新しいロイヤリティの貢献でカバーし、売上を伸ばせるかが焦点になります。

Immunomedics/Trodelvyの影響

先日ギリアドがTrodelvyを持つimmunomedicsを$21bで買収するとの発表がありました。

ロイヤリティファーマはこのImmunomedicsに$250m投資を行っており、株式を保有していることに加え、Trodelvyについてもロイヤリティを受け取る契約をしています。(Market Insider - Immunomedics and Royalty Pharma Announce Royalty Funding and Stock Purchase Agreements Totalling $250 Millionより)

当時、一株$17.15で$75m分の株式を取得しており、ギリアド の買収提案では一株$88での買収提案のため、単純計算で$300mほどの売却益が入ることになります

$300mは2019年にロイヤリティファーマが受け取ったロイヤリティの15%に相当する額で、一過性とはいえ、少なくない額です。

また、ロイヤリティについても売上の$2bまでは4.15%、そこから段階的に%は下がりますが$6bを超える分も1.75%を受け取れる契約になっています。

仮にTrodelvyが$2bの売上を超える薬になれば、毎年$80m以上の売上の上乗せになります。こちらは今のロイヤリティ受取額から考えると、4%程度になります。HIV、DPP-IVsの売上減をカバーする一つの薬です。

その他のパイプライン

現在はまだ売上が立っていない、今年FDAより承認された薬(Tazverk, Nutec, Trodelvy)も今年の後半から売上に貢献してきます。

さらに2020年に$1.5bの投資を行った、Nurtech、Evrysdi, IDHIFA, PrevimisもFDAから承認され次第、今後ロイヤリティ受取額に貢献してきます。

そのほかにも研究開発段階の薬のロイヤリティをロイヤリティファーマは保有しています(Ibrance等)。

ロイヤリティファーマの今後の見通し

第二四半期の決算報告プレゼンテーションにおいて、ロイヤリティファーマの経営陣は以下のように述べました

  • キャッシュフローを用いて、今後5年間で$7bの投資を行っていく。借入金はクレジットレーティングを考慮して、EBITDAの4倍までを目処に行っていく
  • キャッシュフローの25%以下を配当として支払っていく
  • 2025年まで、ロイヤリティ受け取りは6-9%の成長を見込んでいる。成長の半分は既存のパイプラインから、半分は新規投資からを見込んでいる。

この先数年でHIV、DPP-IVsの製品の特許が切れますが、経営陣は2025年まで成長を続けられるという見通しを出しています。

確かにパイプラインは充実しており、2020年を底として、年率7%以上の成長することも不可能ではないと感じます。

ロイヤリティファーマの株価

ロイヤリティファーマの9月18日の終値は$42で、時価総額は$25b (約2兆7000億円)です。2020年の予想利益からPERを計算すると18.3、2021年の予想利益からPERを計算すると、15.8になります。

Stock Price $ 42.0
Market Cap (m$) $ 25,635
2020 Expected PER 18.3
2021 Forward PER 15.8
2020 Adjusted Cash Flow Receipts per Share 14.6
Stock Outstanding (fully diluted, m) 607

S&P500の終値は$3,320です。2020年、2021年の予想EPSからPERを計算すると、2020年は25.3、2021年は20です。つまり、市場全体よりもPERは低めです。

ロイヤリティファーマは2020年以降の製薬業界の成長率は7%、ロイヤリティファーマの成長は年6-9%程度で推移すると予想しています。これは過去5年のS&P500のEPS成長率よりも高い数字です。

まとめ

  • ロイヤリティファーマはベンチャーキャピタルのように医薬品に投資を行い、リターンを得るビジネスモデル
  • 製薬ロイヤリティ市場の中での圧倒的なリーダー。規模・投資プロセス・ネットワークの3つの競合優位性を持ち、市場の伸びとともに成長が見込まれる
  • 大型ロイヤリティ切れ、新型コロナの影響による製薬全体の売上減少から2019と比べて2020年のロイヤリティ受け取りは微減となる見通し。2021年、2022年と売上高の15%、7%を占める大型の薬のロイヤリティ期限が来る為、今後数年で収益への大きな影響がある。
  • しかし、ロイヤリティ期間が残っている薬は順調に成長しており、かつギリアドが大型買収を行ったTrodelvy含めた薬が2020年下期以降に売上へ貢献を始める。ロイヤリティファーマの経営陣は2025年まで、年6-9%で成長を見込んでいると公表している。
  • 株価は2020、2021年の予想PERを元に計算すると18.3、15.8と現状のS&P500全体の水準と比べると割安な水準。

製薬会社のビジネスについてより詳しく知りたい方はこちらをどうぞ。

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