分析

東京の数週間後の姿? コロナで変わるシドニーでの生活

全世界で猛威をふるうコロナウイルスですが、シドニーでの生活もこの2週間でガラリと変わりました。東京の数週間後の姿かもしれません。

日本で生活する皆さんの参考になるかと思いますので、どのように生活が変わったかを書いていきたいと思います。

オーストラリアのコロナウイルス

3月25日時点でのオーストラリアのコロナウイルス感染者数は2,423人です。西欧諸国やアメリカと同じく、ここ1週間で1,000人未満から2,000人越えと急速に増加しています。

Australia Coronavirus Chart

Australia Coronavirus Chart

先週までは海外からの入国規制などはありましたが、人々の集まりや施設に対する規制は緩いものでした。

そのため、皆そこまで危機感を抱いておらず、週末にはビーチで大勢の人がサーフィンや日光浴を楽しんでいました。

しかし、感染者数の急速な増加を背景に、感染の速度を遅くするため、ほぼ毎日のように、新たな規制が導入されていっています。この1週間で、世界が変わりました。

旅行規制

オーストラリアは1週間で、鎖国状態になりました。海外へ出ることも、海外から帰ることにも今では厳しい制限があります。

  • オーストラリア人の海外渡航中止の勧告(3月18日)から海外旅行禁止へ(24日)
  • オーストラリアは現在、国民と永住者以外は原則入国禁止
  • 海外から帰国した国民と永住者も、14日間の自主隔離を行う必要がある(守らないと多額の罰金)

25日には国内ですら、移動制限がかかりました。州を移動すると14日間の自主隔離を行う必要が出てくるので、州の移動もできなくなっています。

航空会社も大幅に減便しており、自分が現在住んでいる州からほぼ出られない状況になっています。

オーストラリア人は旅行が好きで、4月の大型連休(日本でいうゴールデンウィークのような連休があります)には多くの人が長い休みをとって海外旅行や国内旅行をするのですが、今年は皆キャンセルしています。

せっかくの連休なのにどこにも行けず、しかも後述するように友人と集まることも制限されて、「どうしても必要な用事がなければ、家から出るな」とも言われているので、何して過ごそうか・・・という感じです。

施設や集まりへの規制

3月23日、26日と規制が入り、オーストラリアでは下記のような制限が施設や集まりにかかっています。

  • 遊園地は閉鎖
  • 映画館、カジノ、バーなど娯楽施設は閉鎖
  • 屋内、屋外の子供の遊び場は閉鎖
  • 公共のプールは閉鎖
  • 美術館、図書館、歴史観光施設、コミュニティセンターは閉鎖
  • ジム、ヨガクラブ、サウナなどの健康施設は閉鎖
  • 美容院は30分以内ならOK
  • オークションハウスは閉鎖
  • 不動産のオークション、物件見学は禁止
  • 飲食店(レストラン、カフェなど)は持ち帰りのみ
  • 教会などで集まる場合の入場制限(1人あたり4平方メートル(2m×2m)のスペースを設けることが必須に)

いわゆる遊ぶ場所は公園以外、ほとんど閉鎖です。23日は飲食店、ジム、映画館などだけでしたが、26日にその範囲が大幅に拡大されました。

制限された後でもその制限に従わない人たちが多かったため、首相・閣僚がキレて制限を強化しました。

美容院は30分以内ならOK、はどういう基準なのか分からないですが、男性のカット時間を想定しているのでしょうか。髪の長い女性やカラーリングしている人は厳しそうです。。。

結婚式やお葬式にすら制限がかかっています。

  • 結婚式は5人までなら出席して良い
  • お葬式は10人までなら出席して良い
  • ホームパーティも禁止
  • 例え必須の集まりでも屋外で500人以上、屋内で100人以上は禁止
  • 必須の集まりで集まる場合でも、1.5メートル以上人と人との間隔を空け、衛生面での対応を取ること

冗談かと思うかもしれませんが、本当です(Australian Government Department of Health)。結婚式で爆発的に感染者が増えたことから、結婚式も規制の対象になりました。

首相は「必要がない限り、家から出ないでほしい。友人の家に行くことも」と言っています。

普通に空いている施設と言えば、スーパーマーケット、ドラッグストア、ガソリンスタンド、クリニック、学校、保育園といった生活にどうしても必要な施設くらいです。

街を走る車の数も日に日に減っていっています。運転がしやすくなるのは良いのですが、保育園への送り迎え以外、行く場所がないので寂しい気分になります。

今週末に予定されていた友人家族の子供の誕生日会もキャンセルになったので、ビデオメッセージを送りました。誕生日プレゼントも買ってあるのですが、いつ渡せるのか分かりません。

オフィス・学校について

多くの会社が自宅勤務 (work from home)を推奨して、オフィスには最小限の人しか行っていません。実際、政府はオフィスに行かないように推奨していますし、僕も過去2週間はオフィスへ行っていません。

多くの公立の学校は「まだ」開いています。これは、学校を閉鎖してしまうと

  • 教育や子供の精神に悪影響が出ることへの懸念
  • 親が働けなくなり、経済に影響が出ることへの懸念

があるためです。

しかし、子供がコロナウイルスにかかってしまうことへの懸念から多くの家庭が自主的に子供を学校に行かせないようにしています。

首相は子供が学校に行くのは問題ないと言っていますが、ニューサウスウェールズ州(シドニーがある州です)の州知事は「できるだけ子供を家にいさせてほしい」と発表するなど、連邦レベルと州レベルでの意見の違いも出てきており、人々の間で少なからず混乱を呼んでいます。

学校が完全閉鎖されるのも時間の問題かもしれません。そうすると、子供がいる家庭は家で働きにくくなるので、かなり困ります。

人と人との距離について

ここ数週間で最も大きく変わったのが、人と人との距離です。

オーストラリアはアメリカやヨーロッパと同じく、人と人との距離がとても近い文化です。挨拶で普通にハグをしますし、握手もします。

それが、コロナウイルスが流行り始めたこの2週間で、ガラリと変わりました。今は人と人との距離で1.5メートル間隔を保つように政府から言われているため、距離が遠いです。ハグも握手もできないため、挨拶の時には、皆どこか何をして良いのか分からないような表情を浮かべます。

また、近所の行きつけのカフェでは、店員の人がいつもうちの子を抱っこしてくれたりしていたのですが、今はそれができないようになっています。

極め付けはスーパーやカフェで、レジの前で並んでいる時ですら1.5メートル人と人との間隔を空けることを要請されているため、カフェで並んでいると店外まで出てしまい、すごく変な感じがします(※本記事のアイキャッチは近所のスーパーマーケットでの写真です)。

2週間前でしたらコントみたい、と笑い話でしたが、今ではそれが現実です。

同僚とは2週間前に冗談で、「次に会うのは冬になるかもね」(See you in winter! ※オーストラリアの冬は6月くらいからです)と言い合っていたのですが、オフィスはほぼ閉まっており、僕もしばらくは行く用事がないため、現実になりそうです。

病院について

戦時中です。

本日、3月25日にコロナウイルス対策に医療資源(人材、物資など)を割くために、国立のみならず私立病院まで含めて、緊急でない手術を全てキャンセルするよう連邦政府から要請がありました。

これをやられると、医薬品・医療機器業界は死にます。なぜかと言うと、医薬品・医療機器の中で検査・手術に用いられる商品はとても多く、その手術がなくなると売上がたたなくなるからです。

コロナウイルス対策で使われる人工呼吸器などは特需でしょうが、それ以外の商品は死にます。

数ヶ月ならばまだもつかもしれませんが、半年などとなると、飲食店などと同じく、キャッシュがもたない企業も出てくると思います。

私立病院も稼ぎ頭である手術ができなくなるために、売上が落ちます。

ヘルスケア企業もダメージが大きいとツイッターで書いたのも、この現象が世界の至る所で起きているからです。

経済への影響

これだけの規制が行われているため、当然経済への影響が出ています。以下は3月25日までに判明している数字です。

  • オーストラリアの人口は約2,500万人で、雇用されている人は1,300万人(フルタイム900万人、パートタイム400万人)。失業率は5.1%と2月までは割りと安定している社会(Australian Bureau of Statisticsより)
  • 旅行制限、店舗の営業制限などが始まってから飲食店をはじめとして一時解雇が多発
  • 失業者が失業給付金を申請するために訪れるmyGovという政府機関のサイトにて、1日で28万人もの社会保障の申請
  • 雇用されている人の2%以上が1日に社会保障を申請(失業率が1日で2%上昇)
  • 3月末までに100万人の失業が発生する可能性がある、と連邦政府が予測

並べて書くだけでも嫌になる数字ですが、これは始まりにすぎません。

首相は現在行なっている規制が、6ヶ月間は継続されることを見込んでおり、失業者数は増加していくと考えられます。大失業時代の幕開けです。

経済対策

失業で生活に困る人達を支援するため、連邦政府は下記のような支援策を決定しました。

  • 仕事を探している人向けの社会保障として、6ヶ月間、隔週で$550(約35,000円)を追加で支給。月で7万円の増額
  • 約650万人の社会保障受給者(障害年金、老齢年金受給者など)に$750(約5万円)を3月と7月に支給。計10万円のバラマキ

規制により失業した人が、生活を送れるようにすることを目指しています。

オーストラリアは家賃が高く、特にシドニー市内は1ベッドルームでも月で$2,000はするのですが、通常の失業給付に月7万円が増額されることで、何とか暮らせるレベルにはなると思います。

また、州ごとにビジネスを救済するために減税などの支援を行なっており、ビジネスが存続できるようにしています(ニューサウスウェールズ州はAUD$2.3bの支援法案を可決し、州の病院への投資と中小規模ビジネスへの支援を行っています)。

コロナウイルスが問うあるべき社会

コロナウイルスは、民主主義に一つの問いを投げかけました。

「命を救うために、いくらまでなら経済的な代償を支払えるか」

コロナウイルスに対しては、2つの解決策があります。

1つ目は、多くの欧米諸国が行なっているように、全員が大きな経済的な犠牲を支払いながら(旅行・外出規制などで産業を破壊して失業を生みながら)、ウイルスによる人命被害を最小化しようとする方法。これは、「国民の命は何よりも重く、国家は何をもっても優先して守るべき」、という原理原則論に基づいた考え方です。

2つ目は、ウイルスによる人命被害を少なくするコストと、旅行・外出規制を行うことで生じる経済的な損失のコストを比べて、バランスをとっていく方法。これは、功利主義的な考え方で、経済的な損失から命を断つ人もいるし生活苦でひどい思いをする人が出るコストと、一定割合の人が死亡するコストを比べて、最適なバランスをとろうよ、という考え方です。

オーストラリアは明確に1つ目の考え方で、「弱い人たちのために、みんなが協力して耐える必要がある。そのために生じる経済的犠牲(倒産・失業など)については国家がサポートする」という姿勢です。

一方、米国のトランプ大統領は、下記のように「治療法が問題そのものよりも悪かったらダメだろうが」と言っていますが、彼の主張は2つ目の考え方です。暗に意図しているのは、多少の死人が出たとしても、経済的に自殺して大勢が経済的に困窮するよりはマシだろう、ということです。

“WE CANNOT LET THE CURE BE WORSE THAN THE PROBLEM ITSELF,” Trump wrote in a tweet posted near midnight on Sunday. “AT THE END OF THE 15 DAY PERIOD, WE WILL MAKE A DECISION AS TO WHICH WAY WE WANT TO GO!”

功利主義的な考え方は人道的に批判されがちですが、一つの考え方です。特に、西欧・オーストラリアで行なっている外出規制などは経済的な自殺で長引けば長引くほど国家の財政、産業、失業者の負担が増えるので、デメリットが後遺症が出るレベルまで達してしまいます。

特に若い、健康な人からすると、自らが重症化するリスクが低いため、「なぜ高齢者や不健康な人のために自分が犠牲になって、失業しなければならないのか」と感じる人も多いのではないかと思います。そういう人には、功利主義的な考えの方が響きます。

一方、自らが命の危険に晒される高齢者を始めとするハイリスクの人たちからすると、国家は自分たちの命を救うために厳しくも必要な措置を取ってほしい、と思うでしょう。

どちらが正しいというわけではありません。政治的にはどちらの視点も持ちながら、現実解を探っていくことになります。

日本でコロナウイルスの感染が今後急速に拡大していくのかどうかは分かりませんが、すでに感染者は1,000人を超えており、オーストラリアのように1週間後に急に感染者が増えている可能性は十分にあります。

そうなった時に、直面するのは、上記の質問です。

「命を救うために、いくらまでなら経済的な代償を支払えるか」

現在の政権の議論や対策を、上記の視点で見てみると、また違った見方になるかもしれません。

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