高値づかみを防ぐための、株式投資に役立つ先行指標まとめ

いざ投資を始めようとした時に、「いつ投資をするか」、は迷いますよね。「高値づかみをする可能性を減らしたい」、という場合に、「今の価格が割高なのかどうか」を判断するのに役立つ指標を7つ紹介します。

基本となる指標

1、2. PER・EPS(日本株)

日経平均の価格は、EPS(Earnings per Share: 一株あたり利益) × PER (株価収益率:Price to Earnings Ratio: 株価を一株あたり利益で割った値)で表されます。

日経平均とPERの推移(投資の森より)

日経平均のPER(株価➗一株あたり利益)は現在14.51と、過去5年の平均程度まで上がってきています。直近2年間の安値である2018年12月に19,327円をつけた時のPERは10.8でした。また、2019年8月に20,618円まで落ちた時のPERは11.64でした。

実は、一株あたり利益は2019年は減少傾向です。米中の関税の応酬で、設備投資に関する企業の利益が特に落ちました。

2019年の日経平均一株あたり利益(株式マーケットデータより)

今の日本の株価をPERとEPSの観点から見ると、EPSは下落傾向である一方、全世界的な金融緩和と米中の貿易摩擦が緩和されるという期待から、PERが上昇し、株価の上昇に繋がっています

1. 2. EPS・PER(米国株)

米国株はほぼ一貫して上昇を続け、特に2019年は30%近い上昇をしました。

S&P500の株価の推移(Googleより)

米国株(S&P500)の予想PERの推移です。

S&P500の予想PERの推移(FACTSETより)

米国の予想PERはほぼ一貫して上昇を続け、2018年の冬に一度調整が入りましたが、その後も順調して伸びてきました。、現在は18.7と2017年に急落した水準まで上がってきています。

過去5年間の平均予想PERが16.7で、10年間の平均予想PERは約15.0ですので、現在は過去10年間の平均よりも予想PERが24%程度高いことになります。

米国のS&P500の企業のEPSは2014年から2016年までは停滞し、2017年からは大きく成長しています。2018年にEPSが大きく伸びているのはトランプ大統領が行なった連邦法人税を35%から21%へ減税した影響が大きいです。

S&P500のEPSの推移(FACTSETより)

一方、2019年のEPSは2018年と比較して、微増が予想されています(1%程度)。

つまり、この2つのチャートからは、2019年の株価の上昇の1%は実際のビジネスにもとづくEPSの上昇から、残りの27%以上は将来の成長期待に基づいての株価上昇ということがわかります。

2020年、2021年のEPS成長はアナリストによる予想ですが、過去の実績や現在のコロナウイルスによる中国経済への影響をみる限り、やや楽観的なように見えます。

株価が将来の成長期待を元に上がっている時には、実際のビジネスの成果であるEPSが伸びていない場合、期待が剥げ落ちた時の下落が大きくなる可能性があるため、注意が必要です。

景気の先行指標

3. ラッセル2000

米国の小型株2,000銘柄(米国の時価総額上位3,000銘柄のうち、下位2,000銘柄の時価総額加重平均型指数)です。

ラッセル2000の推移(Googleより)

小型株の方が景気の影響を受けやすいため、大型株の集合であるS&P500よりも先に株価が動きやすい、というのが先行指標としてラッセル2000が注目される理由です。

現状はコロナウイルスの広がりから少し落ちてまだ戻ってはいませんが、高値圏で推移しています

4. バルチック海運指数 (Baltic Dry Index)

バルチック海運指数は世界の不定期船の輸送レートを指数化したものです。不定期船のレートは、ざっくり言えば燃料となる原油価格と、船の輸送の需給によって決まります。

わかりやすく言えば、貿易でモノがどれくらい活発に流れているか、に関連のある指数です。

バルチック海運指数の推移(Trading Economicsより)

バルチック海運指数は昨年末から急落しており、過去5年で最低レベルまで落ち込んでいます。つまり、それだけモノの移動が滞っている=世界経済の状態があまりよくない、ことを示唆します。

5. 石油価格 (WTI Crude Oil Price)

輸送のみならず、様々な製品の原材料にも使われる石油価格も世界の経済状況を反映する先行指標の一つです。

石油価格の推移(WTI)

石油価格はコロナウイルスが中国の生産活動を低下させるという懸念から下落を続け、現在$50近くまで下落しています。

6. 米国新規住宅着工件数

住宅には様々な産業が関わってくるため、米国の新規住宅着工件数も重要な先行指数です。一般的に、景気がよくなればなるほど家を建てたいという人が増えると、住宅着工件数も増えます。

米国新規住宅着工件数の推移 (Trading Economicsより)

直近の2019年12月は年160万戸のペースと予想を大幅に上回る数字でした

7. 米国中古住宅販売

米国では住宅を資産と考え、住宅価格の値上がりは消費の活性化と関連があり(懐が緩くなる)、中古住宅販売の件数・価格も経済の好調さを表す一つの指標です。

米国中古住宅販売推移 (Bloombergより)

直近では中古住宅販売は在庫不足にも関わらず好調で、住宅購入の需要の力強さを表しています

まとめ

  • EPS(一株あたり利益)はビジネスの実態を、PER (株価収益率)は将来への期待を表し、株価を構成する二つの基本となる指標
  • 日本株のPERは歴史的には平均程度、米国株のPERは歴史的には高値の水準にある。
  • 米国の2019年のEPSは微増であり、2019年の株価の値上がりのほとんどはPERの上昇による
  • 株価の先行指標として、米国の小型株指数であるラッセル2000、バルチック海運指数、石油価格、新規住宅着工件数、米国中古住宅販売がある。どれもS&P500など大型株の株価に先行して動く指数だと考えられている。
  • バルチック海運指数、石油価格は歴史的な安値にあり、モノの流れと投資が滞っていることを示唆する
  • ラッセル2000の推移、新規住宅着工件数、米国中古住宅販売は上昇基調にあり、米国経済が依然として好調であることを示唆する

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投稿者: aki

アキ。東京での勤務の後、ハーバードビジネススクール(HBS)へ留学しました。卒業後は、医療の世界で働いています。現在シドニー在住。ご連絡はTwitterまで。

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