Summer in NY – 2

New Yorkでの4週間のインターンも今週で終わり、ボストンへ戻る。インターンはそれ自体から学ぶ事があったのはもちろん、働いて何かしらの価値を生んでいる感覚は久しぶりで、心地よかった。

今回は日系企業の米国支社でのインターンだったが、これまで自分が経験してきた日系企業の本社、外資系企業の日本支社の経験と比べてみるとなかなか面白い。CPT (Curricular Practical Training)としてインターンについてのレポートを書かないといけないので、その下書きをここに書いてみる。

まず、マネジメントスタイルについては以下のように感じる。

  • 創業者がマネジメントにいる企業は、創業者がカルチャーを作っている。創業者が細かく、数字にこだわり、透明性を重視して、現場に良く足を運び、ハードワーカーであれば、その他の人も創業者に習い、細かく、数字にこだわり、透明性を重視して、現場に良く足を運び、ハードワーカーになるようになっていく。創業者は企業の文化を作ると同時にロールモデルとなる。そして強い企業文化を持つ企業は、働き方に対して、国の文化よりも強い影響力を持つ。
  • 企業の成長速度は創業者、マネジメントの意思決定の早さに比例する。僕の米系と日系の創業者と接した経験では、どちらも意思決定が早く、大胆だった。「Aという問題があってBをしたら良いと思う」、とこちらがいうと「すぐやれ」なのか「それはCという理由で違う。Dのはずだ。(数字を見せられて)ほら、Dだろう」のように返ってくるか、のどちらかだ。創業者が細部まで理解しているので、話が圧倒的に早い。僕が働いた企業では創業者との関わりで、「それではそれを持って帰って審議する」、というパターンにはなったことがない。2社の事例なので普遍性はないが、創業者のそのスピード感や物事のさばき方は企業の成長速度を高めていると感じる
  • 本社か、本社でない場所で働くかによって、マネジメント層に入れるかどうかの機会が大きく異なる。どの企業でもやはり一定レベル以上の方針や人事を決めるのは本社であり、本社の方が強い力関係を持っている。日系であれ米系であれ、本社との人的なつながりが日々の仕事と中長期的なキャリアパスの両方の鍵となるのは共通している印象。言語や文化の面で、本社のマネジメント層と共通項のあるような企業に入った人の方が、評価されやすい印象。
  • 本社が強すぎる場合、支社で働く人はモチベーションを失ってしまうことがしばしばある。本社勤務の方がより大きな責任範囲が用意されることも多い。企業が急成長していて機会が豊富にある新興企業か、支社から本社へのルートが整備されている大企業でないと、支社で優秀な人材をリクルートして、保つのは難しいだろう。

同時に、日米の働き方の違いについては、以下のように感じた。

  • アメリカで働く人の方が専門性への意識が高い。日本で働く人は総合職がローテーションしていくのが一般的なのに対し、こちらでは専門性が重視される。特にニューヨークやボストンで働く若い世代は専門性を磨いてキャリアを築いていくという意識が強く、仕事と並行して違う職を持っていたり、独立のための準備をしていたり、大学院に通う人も一定割合いる。アメリカ人のキャリアへの関心が強い層に関しては競争が激しい分、目の前の仕事に追われがちな日本人よりキャリアに関して真剣に考えている印象。専門性を磨くために、同じ職種で違う企業へ転職してステップアップしていくのが一般的なこともあり、社外の機会に関してもアンテナをきちんと張っている。
  • アメリカの方が新陳代謝が早い。できる人は早いプロモーションを期待するし、実際に早くプロモーションされていく。プロモーションが見送られる理由で辞める人の割合も20代、30代では日本より多い印象。一方で、パフォーマンスを上げられない人は日本はクビにするのが難しいために閑職に追いやるなどの方法をとるが、こちらでは日本よりは解雇が容易なためにクビにする(しかし、訴えられるという法的リスクがあるために、ある程度以上の規模の企業ではきちんと評価プロセスを踏んで解雇しているという印象)。5年、10年というスパンで人を見ていく日本の企業よりも評価の期間が短く、アメリカ人の方がみな毎回のパフォーマンス評価に対して真剣な印象。
  • ネットワーキングが重要。このポジション空いているのだのような話は、公開される前に、コミュニティの中でぽっと出てきたりする。コミュニティは卒業した大学、専門性、人種、などに分かれており、定期的に集まっている場合も多い。この大学コミュニティは日本と比べるとかなり強い。

総合的に見て、僕は米国の専門性と効率性を重視した企業カルチャーは好きだ。常に努力し続けないとポジションが保障されないという点で全ての人にとって優しいカルチャーだとは思わないが、パフォーマンスを上げていればより早く機会が得やすいという点が良い。また、様々な専門性を持った人たちと会話するのも楽しい。

MBAで学んだことが役立ったかという点については、今回の仕事が前職で行っていた業務の一部とかなり近いものであったこともあり、授業で学んだことというよりは前職での経験や同級生と接する中で身につけたコミュニケーションスキルの方が役立ったという印象だ。僕にとっては留学が初めての海外生活であったため、仕事をする前の1年間、こちらの文化やコミュニケーションのスタイルを経験したことによって、職場でもコミュニケーションがよりスムーズにできるようになったと思う。きっとMBAで学んだ内容の効果は、マネジメントポジションについてからより感じるのだろう。

今回のインターンを通じて、あらためて自分は何か小さくてもビジネスを生み出し、経営したいと感じた。創業者を見ていて思うのは、ビジネスが子供のようで、長時間働いていても全く苦ではなさそうなこと。毎日毎日、「好きなこと」を続けられるというのは幸せであり、そんな生活にしたい。

また、仕事の内容としても、僕はやはり何か新しいものを生み出すこと、新しい挑戦を続けること、が好きだと感じた。今回の4週間は分析、提案作成、プレゼンテーションが主で、それはそれで得るものが多かったが、やはり自分でやってみて、結果まで見ていないので気持ち悪さが残る。自分の考えが世の中でどう受け止められるのか、実際にやってうまくいかせたいと思うし、そこまでやらないと僕自身は仕事の価値をあまり感じることができない。また、小さくても良いので、広い範囲を見れて、週ごと、月ごとくらいにやることが変わるような、そういう常に自分が新しいものにチャレンジできるような仕事の方が、僕は向上心と好奇心が満たされて良いと感じた(楽しかった瞬間を思い返すと、部署が変わった後、転職した後、HBSへ来た後、と自分が伸ばされた時、そして伸びた場所で結果を出せた時だ)。

今回のインターンシップを通じて、自分のなりたい姿はより明確になったように思える。僕は常に変化し続け、挑戦的な場で、新しいものやサービスを生み出して、それを世界的な規模で展開していたい。それを果たすためにも、MBA、プロダクトマネジメントの経験、あとはプログラミングのスキルは役立つだろう。8月はコーディングをして、自分でサービスをローンチするところまでやりたい。

Summer in NY

6月終わりからNYでの4週間のインターンが始まって、1週間が経過した。業界はアパレルで初めての業界ということもあり、毎日学ぶことが多くて楽しい。

いくつか気付いたこと。

  • サプライチェーンマネジメントが非常に重要。アパレルはパターン x サイズ x 色と掛け算で商品点数が増える上にシーズンがあり、売れる時期が限定されている。売り逃がし(stockout)しないように生産、物流を行い店頭または店頭近くの倉庫で在庫を持つ必要があるが、在庫を持ちすぎるとシーズン中に売れずに、値引き率を高くするか場合によっては廃棄しなければならなくなる。このあたりが商品点数が比較的限定されており、販売できる期間が比較的長いエレクトロニクスの製品よりも難しい(エレクトロニクスは部品点数が多くサプライチェーンが複雑になりやすいなどそれ相応の難しさもあるが)
  • コントロールできない天候の影響が大きい。雨が降る、暖冬、などでお客様の流れが大きく変わる。先々の天候まで読むのが難しいので、予想の精度を上げるのに苦労する。
  • 店頭でのオペレーションが勝負。サービス業のマーケティングを考えるときには4P (Product, Price, Place, Promotion)に加えてPeople、Processの2つを加えた6Pというフレームワークがあるが、アパレルの場合は特にPeopleが重要と感じた。店頭を綺麗、整頓されてかつ在庫がある状態に保つのはProductを見せる上で基本だが、それを行うのはPeopleだ。アパレルはお客様が商品を試すため、放っておくと商品があっちこっちに行ったり、店頭がごちゃごちゃになりやすい。Peopleへのオペレーションの原則をいかに徹底できるかで店頭の実力が出ると感じた。Product、Place、Peopleの3つの要素がリテールで特に重要。

同時に、ニューヨークでの生活も、博物館やブロードウェイのショーを観に行く、Citi Bikeで街中を回るなど楽しんでいる。あと3週間、せっかくのニューヨークなので楽しみたい。

病気になりにくい生活とは

新しいサービスを考える過程で、病気になりにくい生活を実現するにはどうしたら良いかをリサーチしています。簡単にまとめましたので、共有します。食事、睡眠、運動、その他の生活習慣を見直すことで、病気のリスクを下げることができます。

食事

健康に良いと科学的に証明されているものを摂るようにし、健康に悪いと証明されているものを置き換えていく*1, *2

健康に良い食物:(1)オリーブオイル、(2)ナッツ類、(3)魚、(4)野菜と果物(フルーツジュースは逆に健康に悪い)、(5)食物繊維を多く含む雑穀類(全粒粉含む)。

健康に悪い食物:(1)赤い肉(牛肉や豚肉。ハムやソーセージなどの加工肉は特に悪い。鶏肉は問題無い)、(2)炭水化物・糖質

睡眠

7.5 – 8.5時間/日の睡眠をとること。寝る時間、起きる時間の習慣を一定にすること。寝る前の激しい運動を避けること、カフェインやアルコールなど刺激物を避けることで、眠りの質を上げることができる。*3

運動

1日30分以上早足で歩くなど、適度な身体運動を行うこと。身体運動は徒歩通勤など生活の中で体を使うこととランニングなどの運動の2つがあり、生活の中で体を使うことによっても身体運動を行うことができる。*4

その他の生活習慣

リラックスできる習慣を取り入れる。ヨガや瞑想はストレスを減らす効果がある。

また、人との繋がりが多いことも病気のリスクを減らす。*5

行動を変えるためには、良い行動を行う可能性を高める要因を特定し、増やし、逆を減らすべき*6

参考

*1 科学的根拠に基づく、「本当に体に良い食事」とは?

*2 「難しいことはわかりませんが、「がん」にならない方法を教えてください!」水上治

*3 Get Sleep (Harvard Medical School Website)

*4 Harvard T.H. Chan School of Public Health

*5 「命の格差は止められるか ハーバド日本人教授の、世界が注目する授業」 イチロー・カワチ

*6 健康行動をさまたげるもの (厚生労働省) 

【読書】学力の経済学 – 中室牧子

 

教育効果を経済学的手法を用いて分析した本。主張は「教育はエビデンスベースで議論されるべき」とシンプルであり、教育経済学の研究成果からどのように教育を行うのが費用対効果が高いかを紹介している。

家庭での教育について

  • 教育生産関数(インプット・アウトプットアプローチ)で費用対効果を測定する
  • テストの成績と勉強時間のどちらに対してご褒美をあげるべきか?
    • 成績(アウトプット)よりも勉強の仕方(インプット)の方にインセンティブを与えるべき
    • なぜならば、アウトプットにインセンティブがあっても、それを改善するための方法がわからなければ(勉強方法がわからなければ)効果が出にくいから。
    • また、人は近い将来のインセンティブのほうが割引率が低い(魅力的に感じる)ので、よりモチベーションを上げやすい
      • 遠い将来は近い将来よりも割引率が高くなることを双曲割引と呼ぶ
    • 金銭以外のインセンティブもある。トロフィーなど
  • 成果を上げてほめる時には能力ではなく、努力を褒めるべき。
    • 特に悪い成績を褒めると、自尊心を満たしてしまい、反省の機会を奪う
  • 勉強時間を増やさせたいならば人が関与するべき
    • 勉強しなさいと言うよりも、隣で見ていたり同じ空間にいる方が学ぶ時間が増える
  • 男の子ならば父親が、女の子ならば母親が関わった方が成果が高くなる
  •  人的資本への投資はとにかく小さいうちに行うべき
    • 子供が母の体内にいる時、就学前の幼児教育が最も費用対効果が良い
    • 特に幼児期に非認知能力を育成することが重要
    • 非認知能力とは自己認識、意欲、忍耐力、自制心、メタ認知ストラテジー、社会的適性、回復力と対処能力、創造性、性格的な特性
    • 非認知能力が高い生徒はその後の人生において、テストの点数、卒業率、就職率、収入などの項目で非認知能力が低い生徒よりも勝っている

学校での教育について

  • “Peer effect”(周囲からの影響)を利用する。良い学習環境に子供を入れる
    • クラスの平均的な学力が高いと、クラス全体に正の影響を与える
    • 優秀な生徒の存在は他の優秀な生徒に良い影響を受けるが、平均より劣った生徒に対してはむしろマイナスの影響を与える
    • 問題児の存在はクラス全体に負の影響を与える。学校は早急に対応すべき。
    • 周囲から悪影響を受けている場合は、子供のために環境を変えることが一つの解決策となる
  • 質の高い教員のいる場所を選ぶ
    • 質の高い教員(付加価値の高い教員)との出会いは遺伝や家庭環境の要因での不利を覆すほどの影響力を持つ

教育の政策について

  • 実験と効果測定を行い、費用対効果が高い施策を選んで展開する必要がある
  • 最も費用対効果が高いのは、教育を受けることが将来の収入にもたらす経済的価値を伝えること
    • 費用は低いが、教育への投資意欲を高める上で効果的で費用対効果が高い
  • 少人数学級や子ども手当の支給はコストが高い割に効果が低く、費用対効果の悪い施策
  • 習熟度別学習は効果が高いが、学力の階層を作ってしまうリスクがある
    • 最初に高い習熟度の生徒はどんどん先に進み、低い生徒との差が開いていく
  • 教員へインセンティブを与えること、研修を行うことの効果は大きくない
  • 教員免許は付加価値の向上に繋がっていない。教員免許を廃止して、優れた能力を持つ人が教師になれるようにした方がより良い教育になるのではないか
    • Teach for Americaの教員の付加価値は教員免許を持つ教員と同じかそれ以上であった。しかもばらつきが少なかった
    • 教員免許を持つ教師のうち付加価値が低い人達を教員免許を持たないが付加価値が高い人に入れ替えることで平均が上がる
  • 教育に科学的アプローチを用いることが重要。施策の実験、効果の測定、分析。

教育の効果を科学的に分析するというのは非常に興味深い。子供の教育に関しては、①家庭内での学習を幼児から行う(一緒について勉強してあげるまたは幼稚園、塾や家庭教師などを利用する、インセンティブ設計をうまく行う、非認知能力を伸ばすようにする)、②良い学校教育環境を選んで与える、ことで子供の未来の可能性を伸ばしたいと感じた。

 

 

東京での時間の過ごし方

Japan Trekが終わり、早10日。この期間は家族と久方ぶりにゆっくり3日過ごし、それ以外は友人や医者、エンジニアなど様々な人と会い、本を読み、新しいアイデアを考える日々だ。デジタル x ヘルスケアの分野でいくつか考えていること。

  • 人工知能を用いた機械と人とのコミュニケーションはこれから面白くなる。特にBotは進化が早く面白い。現在は人工「無能」のBotが主だが、特定用途での人工「知能」のBotは今後2、3年でかなり発展し、普及するだろう。おそらく最初はサポート業務やECの購買サポートあたりから始まるのではないか。FacebookのWit.aiを始めとしたプラットフォームも使い勝手がより上昇して、より多様なリクエストに応えられるBot作成を加速させるようになるのだろう。
  • ただし、問い合わせ対応以上のコミュニケーション用途に人工知能を実用レベルで使うまでにはまだまだ課題が多そう。自然言語解釈、表現の揺れへの対応、など。スタートアップでやるためには用途特化してできるだけシンプルにする必要があるか。
  • どうすれば健康に長生きできるか、という課題はPublic Healthの研究レベルでわかっていることと人が実際に行動していることの間にかなり溝がある。人は病気、例えば糖尿病や痛風、になってから始めて健康の大切さに気づき、生活を変えるが、差し迫った害やインセンティブがないとなかなか行動変容を起こさない。生活習慣を評価するようなシステムを作り、見える化することで行動変容を促すことはできるか。

それ以外に、Agosの横山さんやHLABの小林さんなど、過去1週間は教育関係者の人と会い、繋がることが多かった。HLABなど、日本の高校生に海外の学生と触れ合う機会を提供して、日本の大学に行く、就職する以外の選択肢を増やすという考え方に僕は賛成だ。HLABではないが、その他の団体よりボストンに来た中高生に話をしてくれないかという依頼があったため、HBS2年目には、中高生の短期留学生に対して講演する機会がありそうだ。

HBS Japan Trek 2016

HBS Japan Trek 2016というHBSの同級生を連れて日本を旅する企画が昨日終わりました。参加者は昨年度よりも77%増加し、108名の参加者、11名の幹事団というJapan Trekとしては過去最大級の規模で、HBS同級生の8名に1人が参加した計算になります。今年は9日間かけて京都、広島、名古屋、東京を巡り、日本の文化、歴史、ビジネスについて視察・観光しました。

Japan TrekはHBSに通う日本人の1年生が例年行っているもので、伝統行事なのですが、今年は運営団が11名いることを活かし、「参加者に楽しんでもらうことを通じて、日本についてより知ってもらうこと」を目的に以下のような工夫を行いました。

  1. 全体で動くよりも、小グループで動けるようにオプションの数を多くした。
    例えば、食事は夕食があった8日のうち、初日のウェルカムディナー、3日目の広島での座敷宴会、8日目夜の屋形船でのフェアウェルディナー、を除き、5日間は参加者に食事する場所の候補を8か所程度(寿司、居酒屋、焼肉、などジャンル別に毎日1件ずつ)提示し、選んでもらう形式にしました。これにより、参加者は食べたい料理を選ぶことができ、食事の満足度が増しました。

    また、同様に毎日のアクティビティについても、全体で行った京都の観光(伏見稲荷神社、金閣寺、嵐山)、広島の観光(原爆ドーム、平和記念資料館、宮島・厳島神社)、要人訪問(菅官房長官、楽天三木谷社長)などを除き、参加者に幹事団主催のツアーを提示し、選んでもらう形式にしました。これにより、例えば禅体験をしたい人は禅体験を、寺をより回りたい人は清水寺ツアーを、市場を体験したい人は錦市場のツアーを選び、それぞれの参加者がニーズに合わせたプランを組むことができるようにしました。これも満足度を高める要因になったと思います。

  2. できるだけトレックに伴う不便を減らした
    紙ベースで60ページを超える詳細なTrekのガイドブックを作り、配布しました。ガイドブックはスケジュール、地下鉄路線図やホテル、レストラン、観光の場所が記載されており、それぞれのトレッカーがたとえ迷ったとしても次の目的地にたどり着けるようにしました。また、ガイドブックの最後には幹事団と参加者の名前と顔写真を載せており、トレック参加者がお互いに名前を覚えて仲良くなりやすいようにしました。

    日本では無料WiFiがあまり普及しておらず、メッセージングアプリでコミュニケーションをとりたい海外からの旅行者にとって不便な状況ですが、できるだけWiFiを利用できるよう、幹事団がポケットWiFiを持ち歩き、幹事と一緒に行動している限り参加者がオンラインになれるようにしました。これにより、その場での写真の共有や他グループとの連絡が容易になりました。

    また、ベジタリアン、ペスカトリアン対応も人力で行いました。日本の食事処はまだベジタリアン、ペスカトリアン食を出すところは少なく、アレルギーなどの個別対応を行うことにも慣れていないため、幹事団が皿ごとに入れ替えるなどして、参加者が食事面で不便を感じないようにしました。

これらの工夫により、参加者からの満足度は非常に高いものとなると同時に、参加者にとっても得るものが多い旅になったと思います。「こんなにWell-organizedなトレックに参加したのは初めてだ」、「広島での体験がとても印象的だった。親に広島での体験を話していたら、涙が出てきて、親と一緒に電話で泣いてしまった」、「日本に来て知ることで、より日本が複雑な国だということがわかるようになった。神社や寺に行くという宗教的な行為をする一方で自分たちは宗教的でないと思っている。他国の文化や慣習を取り入れるオープンさがある一方で、移民に対してはクローズなところがある。一見矛盾する要素が共存しているように見える」などなど。最終日には出会う参加者ほぼ全てから最高だった、と言ってもらえました。当初の目的であった、「HBS同級生に日本を楽しんでもらい、知ってもらうこと」、は達成でき、大成功で終わったのではないかと思います。

幹事団の一人としても、今回のトレックを運営したことはHBSの体験の中でも最も価値あることだと感じました。まず第一に、参加者の多くと新しく知り合うことができ、さらに親しくなる機会であったこと。そもそも日本に興味を少しは持っている人たちなので話しやすく、今回のトレックを通じて数十人と新しく知り合うことができ、数人とはかなり仲良くなれたので、来学期以降の人間関係がかなり楽になると思いました。第二に、幹事団のメンバーとより親しくなる機会になったこと。やはり一緒にプロジェクトをしてみることでわかることが多く、このトレック一緒に企画・実行し、一緒に達成感を感じたことは、この先ずっと続く友情につながるのではないかと思います。第三に、今回のトレックはあらためて日本を見つめ直す機会を与えてくれました。日本は自然、文化、歴史、食、と観光資源が豊かな国であり、おもてなしの心や安全な治安と合わさり、旅行先としては非常に魅力的な国だと思います。ただ、現状は特にその魅力を外国語で十分伝えることができるガイドが不足していること、多様な食事制限に答える食事処が少ないこと、などの要因でその魅力が日本人と一緒に旅しないと伝わりにくいと感じました。今回の旅でも参加者の中にはまた日本を訪れたいという人は多く(今回のトレックでは私たちと一緒であったのでほとんど不便は感じなかったのではないかと)、これらのネガティブ要因を改善することで、よりリピーターを増やすことに繋がるのではないかと思います。

HBS1年目を終えて

HBSでの1年目が終了した。僕がMBAで何を得ようとして、結果として何を得たかについて、全体、学業、友人関係・ネットワーキング、課外活動、キャリアの順に振り返ってみたい。

1年目の感想

MBAは”transformational experience”、とMBAのadmissionは言う。”transformational experience”の定義にもよるが、文字通りの「人生が変わる体験」と定義すると、僕にとってはそうだったな、と思う。

変わったものでいうと、ビジネスを見る視点は広く、深くなったと思う。入学前は前職のプロダクトマネジャーの視点から物事を見ていたのに対して、この1年でビジネスに関しては他の機能(ファイナンスやオペレーション等)やリーダーの視点でも物事を見ることができるようになった。政治、経済については世界で起きていることを抽象化して見れるようになった。決断の際に、経済的な視点だけでなく、法的や倫理的な面も含めて考えるようになった。こうした視点の変化は、250以上のケースディスカッションを通じて徐々に培われたものであり、より良い意思決定に繋がる。

次に、友人のネットワークが圧倒的に広がった。これまで僕は日本で生まれ、学び、働いてきたので、大学や社内で出会った海外の友人もそれなりにはいたが、ネットワークは圧倒的に日本が中心だった。一方、今は国籍ベースで言えば本当に世界各地に友人がいるようになった。HBSの「仕組み化された」ネットワーキングのおかげで、今は40ヶ国籍以上の友人がいるし、国名を聞くと友人の顔がパッと出てきて、それぞれの国を近く感じる。このネットワークや世界の近さの感覚は期待以上のものであったし、僕の将来の可能性を広げてくれた。

また、知らない世界で挑戦してもなんとかなるという自信が生まれた。渡米前は、海外と主に仕事をしていたと言っても、ディスカッションでうまく貢献できなかったり、日常会話で苦労したりと、英語圏で仕事をするには力不足と感じることが多かった。渡米後の今でも英語と話題は今でも課題があり(ドラマ、映画、音楽、スポーツ、本、ニューヨークのローカル話題、どれも分からない。。) 、この課題の克服にはおそらくあと5年くらいかかると思うが、9ヶ月かけて少しずつ状況は改善されてきた。また、足りていない能力でもここまで学業と友人関係の実績を築き上げてこれたというのが自信になった。加えて、先人達のおかげでHBSというブランドもあるので、ビザの問題を除けば、卒業できれば おそらく就職することはでき、食うに困ることはないかなと思う。自信とセーフティネットを得たことで、より挑戦する意思が強まった。

一方で、変わらないことを確認したものもある。それは自分のコアな価値観であったり、性格だ。HBSの1年目はLGBTの活動、米国内経済的格差、モロッコでの体験、セクションメイトから聞く話、から自分が知らなかった世界を知る機会が多く、それらを通じて自分の視野は広がった。10代や20代前半であれば、もっと価値観に影響を受けたのかもしれない。ただ、僕ももう30代で、自分がどんな価値観を持っており、何が好きで、どんな時に幸せを感じるのかは、渡米前にだいたいわかっていた(僕が好きなのは、挑戦すること、慌てず・焦らず・諦めず前に進むこと、挑戦から新しいものを学ぶこと、情報を集め、分析し、戦略を立てて実行すること、アイデアを出すこと、人と一緒に新しいものを生み出すこと、人を成長させること、人を受け入れること、世の中にとって自分が良いと思うことをすること、等)。僕にとっては、この1年を通じて、そうした自分のコアな部分が変わることはなかった。

まとめると、HBSの1年目が”transformational experience”だったか、という問いには、僕にとっては人生の可能性を広げてくれたという点でそうだった。また、同時に僕にとってコアな部分は変わらないことも確認できた。HBSでは4つの分野 (学業、友人関係、課外活動、キャリア)に分けて物事を進めてきたので、それぞれについて振り返りたい。

学業 (Academics)

1年目は計10の必修授業とFIELDという実践授業を受けた。授業は以下のようになる。

  • 政治、経済を扱う授業
    • BGIE (Business Government and International Economy)
  • 企業の中の特定の機能を扱う授業
    • Strategy、TOM (Technology and Operations Management)、Marketing、Finance 1、Finance 2、FRC (Financial Reporting and Control)
  • リーダーシップを扱う授業
    • LEAD (Leadership)、LCA (Leadership and Corporate Accountability)
  • アントレプレナーシップを扱う授業
    • TEM (The Entrepreneurial Manager)
  • 学んだことを実践に移す場・チームワーク
    • FIELD1/2/3

この中でも僕が最も学びが多いと感じたのが1学期目のLEADと2学期目のBGIEだ。LEADではリーダーの行動と決断のケースから、いかにチームをマネージするか、効果的な人間関係を築くか、いかに組織を作り上げるか、いかに組織を変えるか、について学んだ。こちらは授業でのtake-away(学んだこと)で目から鱗のことが多く、加えて教授のMukundaの議論のファシリテーションの仕方が素晴らしかったため、非常に学びが多い授業だった。楽天の英語化のケースを扱ったのもこの授業だ。この授業を受ける前と後で、自分のチームや組織に対する見方が変わり、マネジメントの仕方も確実に変わったと思う。

BGIEは世界に対する見方を変えてくれる科目だった。大半の授業では国のケースを扱い、それぞれのトピックに関連する事柄に分析の焦点が当てられる。例えばインドを扱ったケースでは、「多民族国家で収入格差が非常に大きく、教育水準も高くないインドではどうして独立以降民主主義が生き残っているのか」、という問いについて議論した。その中では、カーストの文化により、人々が自分の社会的ポジションに納得するような構造となっている(人々が自分の置かれている社会的ポジションに納得いかなくなった時、暴動が起きたり、社会が不安定化する)という観点が出たりする。また、その一方で、人々が民族や言語別によって投票するようになり、統一的な政策が打ち出しにくいという問題点も議論されたりする。今までにぼんやりとしていた、国家とは何か、民主主義とは何か、それらが成り立つために必要な条件は何か、を要素として話せるようになった。この授業を通じて、国レベルで、どのような政治的な目的があり、それを達成するためのツールとして何があり、実行に際しての制約に何があるか、を経済的、政治的に考えて議論するための下地を作れた。この下地はビジネスの機会の分析において有用なだけでなく、社交の場での会話の種にもなり、今後の人生を豊かにしてくれると思う。

その他の授業からも各領域について、自分が意思決定をする際に、どのような枠組みで分析を行い、打ち手のオプションを考え、それを評価するか、についてのプロセスを学ぶことができた。よく言われることではあるが、何せほぼ毎日、異なる状況のケースを分析して自分だったら何をするかを考える、というプロセスを行っているので、分析をする際の広さと深さは増したと思う。

また、これは最近感じた想定外のメリットだったが、250以上のケースを議論することによって、他の業界の人と話す時の知識のベースを作ることができた 。例えば、以前製薬企業の人と当局との折衝について話をした時だ。僕は渡米前は製薬企業の開発やマーケティングのプロセスを殆ど知らなかったが、製薬企業のケースを複数扱った経験から、治験のどの段階でどういう折衝が行われるのか、という話をより突っ込んで質問して、話すことができた。業界についての知識はケースを読む主目的ではないが、副次的に得られるメリットでもあった。

身につけた考え方のプロセスを実践で活かすのがFIELDという実践授業だ。個人的にはFIELDはチームワークの経験としては良かったが、学業という観点での学びはさほど大きくなかった。新興国へ行きコンサルティングプロジェクトを行うFIELD2は違う文化の国を体験するという点では良いが、現地滞在は1週間強なのでインプットもアウトプットのレベルも限定される 。スタートアップ体験をするFIELD3もチームワークの体験やスタートアップを行う大変さを味わえたという点は悪くはなかったが、学びという意味では他の授業と比べるとやや落ちた。僕としては、実践を通じて学ぶ機会は、夏のインターンシップが主になりそうだ。

友人関係・ネットワーキング

僕にとってHBSで最も大きな財産となるのが、この友人関係・ネットワーキングだ。1年間の授業を同じ教室で過ごしたセクションFの93人とは卒業後も5年に一度、同窓会で会う生涯の仲間だ。チームワークで1学期間を共に過ごしたディスカッショングループの5人、FIELD 2のチームの5人、FIELD 3のチームの4人、EVOLVEという少人数の人生についてディスカッションを1学期間かけて行うプログラムのチームの4人とは話す機会も多く、仲良くなった。寮での生活、Asia Business Conferenceの運営、スタートアップ関連のイベントでも良い友人ができた。HBSは人数が多く、HBSカルチャーで繋がり 、しかも活躍する人が多いので、友人として人生を一緒に 過ごす喜びだけでなく、プロフェッショナルとしてもこのネットワークは役立つものだと思う。

また、日本人の友人にも恵まれた。HBSで1年生の13人、2年生の7人は皆個性があり、仲が良く、一緒にいて居心地が良い。HKS (Kennedy School)、HLS (Law School)やPublic Healthにも友人がおり、数回飲んだりとHarvard内でもいい友人関係を築けたと思う。冬の飲み会はかなりカオスで、楽しい写真が結構撮れた。加えて、MIT、Wharton、Kellogg、DukeのMBAの友人たちやボーゲル塾を通じて知りあった国際政治分科会の人たち、ヘルスケア勉強会の人たちとも一緒に様々なことを語り合えて、良かった。特に中国の経済成長、中東情勢、移民などの国際政治における議題に対して、日本はどうするべきか、を官庁、自衛官、マスコミ、アカデミアの方々とボーゲル塾で毎回語るのはとても有意義で、学びが多かった。

人間関係を大幅に広げることができるというのはMBAの特権なのかなと思う。 様々な背景を持つ人がいて、時間があり、お互いに利害関係のない状態で話ができる。話をしてお互いの知らないことを共有し合うと共に、学生でないと出会わない人たちが出会うことで、新しい化学反応が生まれる。友人関係・ネットワーキングで得られるものは想像以上に大きかった。

課外活動

1年目はHarvard日本人会のHBS代表、ボーゲル塾国際分科会への所属、Asia Business ConferenceのCTO、Japan Trek運営という活動を行った。これは他のHBS生と比べるとおそらく平均よりは多い活動であり、活動の選択についても満足している。

入学する前にはわからなかったが、HBSの1年目は学業、ネットワーキング、キャリアが忙しく、クラブや課外活動に時間を注ぐ人はそんなに多くない。僕の知る限り、HBS以外の米国2年制MBAは金曜日が休みだが、HBSは金曜に授業があり、学業での負担が結構重い。セクションという仕組みで93人の新しい友人と1年過ごすので、クラスメイト全員と話そうと思えばかなり時間がかかる。キャリアは人生の一大事なので、企業派遣で来ていたり、家業を継ぐ人以外にとって最優先になる。こうした理由から、優先順位をつけていくと低くなるのがクラブや課外活動となる。

僕としては、やりたい経験はできたと思う。Harvard日本人会、Asia Business ConferenceではHarvard内の繋がりを、ボーゲル塾ではボストンでの日本人の繋がりを広げることができた。そして、Japan Trekでは日本人内の運営団で 一つのものを作り上げている。これから始まるJapan Trekでの他セクションの人と仲良くなるチャンスも楽しみだ 。

キャリア

1学期目は学業と友人関係・ネットワーキングで結構手一杯で、iLab Scrambleというスタートアップのイベントに参加したり、iLabで不定期に開かれるイベントへの参加がメインだった。2学期目はNew Venture CompetitionというビジネスコンテストにHMS (Harvard Medical School)の学生と組んで出場し、応募まではそれなりに時間を使っていたが、上位16チームには選ばれず。一方、Rock Summer Fellowsという起業を考えている、あるいはスタートアップで働きたい人向けの夏の支援プログラムには選ばれることができた。1年目にやりたかったことはやったが、キャリアに関してはもう少し時間を使ってリサーチを進めたり、インタビューをしたり、アイデアを考えることに時間を使いたかったな、というのが本音だ。

今はというと、デジタルヘルスの領域で新しいビジネスのアイデアを考えたいと試行錯誤していて、まだ”これだ”、というアイデアを思いつけていないのが現状。Tele Medicineは将来的により普及する業界だと思うが、スタートアップでやるには既に大きいプレイヤーがいて勝てる道筋が描けない(規制の動向次第だが)。ある一定の患者へのAIの医療行為への適用もビジネスアイデアとして考えたが(New Venture Competitionに出したのはこれ系のアイデア)、liabilityの問題、monetization、処方箋のロジをどうするかが課題でこれを解決できていない。Omada Health的な医療費削減分を企業に請求するB to B to CのビジネスやCastlight Healthのような医療費最適化のB to B to Cの提案サービスも面白いと思うが、公的保険の範囲が限られている米国ならではのサービスだし、ここも今から勝負しても難しいな、という感じ。IoTを使った診断革新系のサービスはリサーチ不足でまだ面白い技術を見つけられていない。

今はより健康的な行動ができるよう、行動変容を促すB to Cビジネスを考えており、夏はそのアイデアを深掘りして検証しようと思っているが、まだまだ生煮え。2学期の後半にややダレてしまったところがあるので、その時間を使ってもう少しキャリアに時間を使えばよかったと反省。

2年目について

1年目は学業、友人関係、課外活動、キャリアともに計画したことの多くは達成できて、70点くらいだ。反省点としては、ややダレてしまった時間があるので、それを運動と英語の勉強にあてられたらより良かった。

2年目は1年目をベースにして、さらに積み重ねていく予定だ。学業では将来ビジネスを行う上で必要となるファイナンス、組織論などの科目を履修する予定だ(Entrepreneurship Finance、Negotiation、Managing, organizing, and motivating for value、Designing competitive organizations等)。友人関係では友人を定期的に自宅へ招待して、仲良くなり、卒業後ずっと仕事や人生について相談できる8人程度のboard memberを作りたい。課外活動としてはマラソン大会に向けてトレーニングし、ボストンでのハーフや、シカゴのフルマラソンに出場する予定だ。キャリアについてはNew Venture Competitionなどのビジネスコンテストで勝てるだけのチーム、ビジネスプラン、商品、実績を2年目に作りたい。

MBAは21ヶ月間の、今後の人生のベースを作る期間。精一杯活かしたい。

FIELD 3 – ビジネスを立ち上げる

本日はFIELD 3というビジネスを立ち上げる授業の発表会。各セクションで18チームがプレゼンテーションを行い、15週間で作り上げたビジネスを発表した。僕らのチームはLOCALSというローカルな体験をしたい旅行者と旅行者をガイドして収入を得たい地元の人のマッチングサービス(Airbnbの旅行ガイド版のようなもの)を立ち上げ、その結果をプレゼンテーションした。

コンセプトとしては良いと思っていたが、実際にやってみると想定外のことが多く、立ち上げるのにかなり苦労した。具体的には

  • ガイドしても良いという地元の人がなかなか見つからない
  • 見つかっても、そのガイドの質が低く、お金を取れるほどのサービスにならない。
  • 質の確認がオンラインだけでは難しい
  • ガイドが集まらないと、ユーザーをサイトに呼んできても購入してくれないので、立ち上がりが遅くなる(いわゆる2 sided-marketの立ち上げの際の卵と鶏の問題にぶち当たった)
  • ガイドが空いている時間とユーザーのガイドしてほしい時間が合わない(2 sided-marketの需要と需要をすり合わせる問題)
  • 結果として顧客獲得コスト (Customer Acquisition Cost)が生涯顧客価値 (Customer Lifetime Value)を上回り、ビジネスにならない

という問題にあたった。ガイド側の需要の刺激、品質コントロール、2 sided marketの問題、は数週間という短い期間で片手間に動いていてもなかなか解決が難しく、結局収益をあまりあげることはできなかった。

最終的な審査員であるVCからの評価はセクションで真ん中くらいで、「経験の価値が大きくなっている今、将来的に大きくなる可能性のあるビジネスだと思う。ただし、ガイドの品質コントロールが難しく、スケールに時間がかかる」というもの。結局、1都市ずつ攻めていかなければならないので、そこでかかる時間が一定期間の間で大きなリターンを狙うVCにとってネックになったようだ。また、僕らが調べた限りでは見つからなかったが、どうやらHBSの卒業生で2000年代に同様のサービスを始めて、今ではそれなりに大きくなっているサービスもあるようで、そこと競合するとも指摘された。これらの指摘はもっともであると思うし、最終的な評価については納得だ。

FIELD3は2 sided marketをやってみることで気づくことも多く、プラットフォームビジネスを立ち上げる際に気をつけることを学べたことが良かった。また、パキスタンのエンジニアと一緒に動いたのだが、彼らに支払った金額に対してのアウトプットの品質に驚いた。MVP (Minimal Viable Product)レベルであれば、十分に作れるという印象。スタートアップでエンジニアリングをアウトソースしなければならない状況であっても、かなりのところまではできると学べたのも大きな収穫だった。

また、友人作りという意味でもとても良かった。Sabrina、Terrance、Alex、Samというアメリカ人4人と組んだのだが、この15週間を通じて彼らのことをより深く知ることができた。FIELD3まではそこまで深く話したことのなかった彼らと一緒にプロジェクトを行い、達成感と友人関係を得ることができたのは、非常に大きな財産だ。

FIELD 3の他のチームの結果であるが、うちのセクションの優勝チームはカメラのライティング用器具が風で飛ばないようにするという製品で、1年生全体の優勝チームはヘルメットに取り付ける脳震盪を防ぐための器具だった。両方ともかなり絞ったニーズに対して技術で挑み、今日までにそれなりの売り上げを上げ、特許を申請するなど、かなり本格的なチームだった。両方のチームとも、プレゼンを聞くと優勝が納得の出来。ビジネススクールの学生のみで組んだチームでありながら、技術をチーム内で開発して売り上げを上げるところまでもっていったというのが驚き。エンジニアとして働いてからビジネススクールに来る学生も一定数おり、それだけのタレントが揃っているのが、HBSの層の厚さなのだな、とあらためて感じた。

New Venture Competition

HBSでは毎年New Venture Competitionというビジネスプランコンテストを行っている。エントリーにはHBSの卒業生または在校生がチームにいることが必要で、賞金総額は$300,000相当とビジネススクール主催にしてはかなり大きなコンテストだ。在校生の営利目的のベンチャー、非営利目的ベンチャー(NPO等)、卒業生の営利目的のベンチャー、の計3つのコースがあり、在校生は在校生のコースへ応募することができる。審査は主にビジネスプランの書類とプレゼンテーションで行われ、各コースについて最終選考に残った4チーム(ファイナリスト)、計12チームがBurdenという大講堂でピッチをする機会を得る。

4月26日(火)はファイナリストによるピッチをする日だった。日本人留学生のはるうみさんが創業したNature.Incが営利目的ビジネスのコースでファイナリストとして選定され、90秒のピッチを行った。結果は惜しくも受賞はならなかったが、100を超える応募の中から最終4チームまで残ったのは大きな実績であり、この実績が今後のPRや資金調達に繋がるのではないかと思う。

ビジネスコースでの優勝者は肺がんの検査キットのビジネスであった。プレゼンテーションを聞く限り、小型で、扱いやすく、コストも安く、しかも市場も大きいという。90秒のプレゼンでポイントのみなので詳しいメカニズムは聞けなかったが、もしこれが本当ならばかなり革新的な技術だ。

卒業生の部、在校生の営利目的、非営利目的ベンチャーの部のファイナリスト12チームの中で、女性向けの健康相談のPeer to PeerサービスやTelemedicineなどヘルスケア関係のビジネスが6チームを占めており、あらためてボストンがヘルスケアに強いことを実感した。

HBSはEntrepreneurshipに力を入れており、New Venture Competitionに加えて、Rock Summer Fellows (夏休みの間、スタートアップに挑戦しようとする人を金銭的にサポートする制度)、iLab (スタートアップに関心を持つ人へオフィスを提供したり、様々なセミナーやネットワーキングの機会を提供する施設)など支援する仕組みがある。HBSで過ごす1年9ヶ月はリスクフリーな期間なので、これらの機会をフルに使って起業準備に充てるのも一つのHBSの過ごし方だ。

MBA1年目の夏休みの予定

楽しい時間はあっという間に過ぎるというが、気づけばHBSの1年目もあと4週間となった。5月6日からは期末試験が始まるので、授業日数もあと数えるほど。2年生は授業がほとんど終わっており、今週末には2年生の送別会を行う予定だ。1年目の終わりは着実に近づいてきている。

夏休み(15週間)だが、僕は東京、ニューヨーク、ボストンの3都市に主に滞在する予定だ。幸いにもRock Summer Fellowsという起業・スタートアップへの参加をする学生を金銭的に応援するプログラムに受かることができたため、東京、ボストンで過ごす10週間は新しい事業のアイデア、プロトタイプを作り、2年目に繋がるものを作りたいと思っている。また、ニューヨークではインターンを4週間行う予定だ。これにJapan TrekでHBSの学生を日本で案内する1週間を加えると、もう15週間となり(10 + 4 + 1)、夏休みも終わってしまう。

2年間というのはこちらへ来る前までは長いように思えたが、実質プログラムは9月始まりの5月終わりの21ヶ月であり、学校生活、夏休みと詰め込むと仕事をしていた時と同じくらいすぐに過ぎてしまう、というのが実感だ。