ノヴァヴァックス(NVAX)の株価はどうして30%近く急騰したか?

ノヴァヴァックス(Novavax)がアメリカの「オペレーション・ワープスピード」に採択されたことにより、株価はプレマーケットで30%近く上昇しています。

今回の記事を読むと、オペレーション・ワープスピード、ノヴァヴァックス、他のワクチン銘柄への影響についてわかります。

オペレーション・ワープスピード

オペレーション・ワープスピード(Operation Warp Speed)は「2021年1月までに3億人分の新型コロナ向けワクチンを生産する」ことを目指した米政府のプロジェクトです。

米政府はワクチンの開発、生産、流通企業に対して投資と有形無形のサポートを行うことで、この目標を達成しようとしています。主要な政府機関が一丸となったプロジェクトであり、一言で言えば、新型コロナに対するアメリカの「総力戦」プロジェクトです

OWS is a partnership among components of the Department of Health and Human Services (HHS), including the Centers for Disease Control and Prevention (CDC), the Food and Drug Administration (FDA), the National Institutes of Health (NIH), and the Biomedical Advanced Research and Development Authority (BARDA), and the Department of Defense (DoD). (HHSホームページより。要は総力戦)

予算総額は$10b (1兆1000億円)と巨額の国家プロジェクトです。そのうち、$6.5bはBARDAを通じてのワクチン・治療薬の開発・生産に、$3bはNIHに割り振られています。

これまでオペレーション・ワープスピードでは、ワクチンの「開発」には3社に対しての支援が発表されていました。その3社とはJ&J、モデルナ(Moderna)、アストラゼネカ(AstraZeneca)です。Novavaxは4社目となります。

支援額 (m$) 7/7現在の進捗 メモ
J&J $ 456 フェーズ1/2準備中
2021年に10億本生産予定
Moderna $ 483 フェーズ3準備中
FDAの優先審査付。フェーズ3は7月後半より
AstraZeneca $ 1,200 フェーズ3進行中
3億本のワクチン供給含む。フェーズ3は8000人登録済み
Novavax $ 1,600 フェーズ1/2進行中
1億本のワクチン供給含む。フェーズ3は秋を予定
合計 $ 3,739

製造ではEmergent Biosolutionsが選ばれており、ワクチンの製造能力拡大のため、$628mの支援を受けています。

この他にもワクチン開発企業としては、Pfizer(ファイザー)/BioNtech(バイオンテック)、Sanofi(サノフィ)・グラクソスミスクラインなどがありますが、これらの企業が今後選ばれるかはわかりません。

これまでに発表された支援の合計がまだ$4.4bであり、予算の$10bの半分すら消化されていないため、今後も他の企業が支援を受ける可能性は十分あります

ノヴァヴァックス

ノヴァヴァックスは研究開発段階の製薬会社です。

インフルエンザワクチンをはじめとした5つの製品に対して、6つの治験が走っています。そのうち、2つのワクチンはすでにフェーズ3の試験を行っています。

Novavax pipeline

モデルナ、バイオンテックと同じく、まだ承認された製品がありません。

株価は新型コロナ向けワクチンへの期待によって大きく上昇しています。

今年の初めから考えると$7から$70超えとすでに10倍株でしたが、今回の発表を受けて、さらに株価は上昇し、15倍株になろうとしています。

ノヴァヴァックスのワクチン候補(NVX-CoV2373)は5月より健康な18-59歳の男女130人を対象に、フェーズ1/2を行っています。中間結果が7月末までに発表される予定です。

結果をみるまではこのワクチンが有望かどうかはまだわかりませんが、「オペレーション・ワープスピード」に採択されたことから、現在までの結果は悪くないのでしょう。

ノヴァヴァックスは秋に30,000人を対象としたフェーズ3の試験を行う予定です。こちらは先頭を走るアストラゼネカ、モデルナ、ファイザー・バイオンテックと比べると2-3ヶ月後に結果が出ることになります。

他の銘柄への影響

ワクチン業界は、メルク、サノフィ、グラクソスミスクライン 、ファイザーの4社のほぼ寡占状態であり、これらの企業が豊富な経験と製造技術を保有しています。

一方、ノヴァヴァックスはこれまでにワクチンを商業化させた実績のない企業です。オペレーション・ワープスピードに採択されたことは大きな成功ですが、臨床的な成功とは無関係です。ワクチンに有効性、安全性が求められる以上、結局は「フェーズ3の結果がどれだけ良いか」が鍵を握ります。

現在、10を超えるワクチンの臨床試験が走っており、どの企業も国からの支援を受け、数億本の生産能力を事前に確保しようとしています。

つまり、フェーズ3の結果が良い企業が複数出てきた時には、人類にとっては望ましいことですが、他の銘柄にも影響を及ぼします。特に臨床試験の進捗で先頭を走るアストラゼネカは少なくとも最初の20億本はほぼ無利益でワクチンを提供することを決めているので、市場に悪影響を与える可能性が高いです。

フェーズ3が7月に開始し、進捗が発表されるのは最速でも8月以降からと想定されるため、8月はワクチン関連のニュースがテレビ・新聞を賑わしそうです。

mRNAベースのワクチンを開発している他の企業、モデルナ(Moderna)とバイオンテック(BioNTech)についてより知りたい方はこちらをどうぞ。

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アストラゼネカのワクチンに関する記事はこちらです。

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アストラゼネカ(AZN) 新型コロナ向けワクチンの市場破壊

新型コロナ向けワクチンの開発と臨床試験が加速しており、米国、欧州、中国の製薬会社が一番手をめぐり競っています。英アストラゼネカ(AstraZeneca)は先頭を走る企業の一つです。

今回は、ワクチン市場、アストラゼネカのワクチンの開発と治験の進捗状況、そして他ワクチン開発企業への影響、の3点をみていきます。

ワクチン市場

Market Research Reportによれば、ワクチン市場は2018年で$41.6b(4兆5000億円)で、年率10%以上の成長を続け、2026年までに$93b(10兆円)まで拡大すると予想されています。

ワクチンは人口拡大、ワクチン普及率の上昇、新たなワクチンの発売に伴う需要喚起、により市場が安定的に拡大していっています。

一方、ワクチンは製薬の中でも大変な分野です。健康な人を対象とするために、リスク便益の観点から、安全性への要求が治療薬よりも厳しくなります。また、長期での安全性が求められるため、治験もその分長くなります。

また、ワクチンの種類にもよりますが、ウイルスの遺伝子組み換えにより作られるワクチンなどは生産にも高い技術力が要求され、大量生産のハードルも通常の低分子薬の生産よりも高くなります、

つまり、ワクチンは開発・生産に多額の資本と高い技術が必要であり、参入障壁が高い(参入しにくい)分野であると言えます。裏を返せば、一度ワクチンを発売してしまえば新規参入が入ってきにくいため、稼ぎ続けることができます。

例えば、世界最大のベストセラーワクチンであるPfizerのPrevar 13は肺炎球菌向けのワクチンであり、市場を長年ほぼ独占しています(2015年でシェア75%以上)。

売上は2010年の$2.4bから順調に拡大し、2019年には$5.8b (約6,000億円)の売上です。今ではファイザーの製品の中で最も売上の高い製品の一つになっています。

WHOのGlobal vaccine market reportによると、ワクチンの価格は$1-$50と大きく幅があり、新しく販売されるワクチンほど価格が高くなる傾向にあります。

同資料では、Prevnar 13の平均販売価格は$48程度と推定しています。つまり、高い価格の部類です。

ファイザーのPrevnarは独占状態をいかして高い値付けにし、高い売上と利益率を享受している一つの例です。

AstraZeneca(アストラゼネカ)のワクチン

英AstraZenacaはOxford(オックスフォード大学)と組んでワクチンを開発しています。現在、治験が行われているのはOxfordのワクチングループが開発した組換えアデノウイルスを用いたワクチンです(AZD1222)

新型コロナ向けワクチンでは最も開発状況が進んでいる一社です。6月よりフェーズ3(最終の大規模な治験)に入っており、8,000人が登録済みです

アストラゼネカはすでに米国、英国、欧州とワクチン提供の契約を行っています。

  • 米政府機関BARDAより$1b (1,100億円)の開発援助を受けた。4億回分をUS/UKに (US 3億、UK 1億 – FIERCE PHARMA)
  • 欧州(ドイツ、フランス、イタリア、オランダ)に4億回分を「利益なしで」提供(AstraZeneca Press Release)
  • ワクチンをCEPI、Gavi, the Serum Institute of India (SII)を通じて新興国に提供. CEPI、Gaviに3億回分を$750mで販売($2.5/回)。
  • SIIは10億回分を新興国向け(主にインド)に提供し、そのうち4億回分を2020年末までに提供する

すでに契約されているワクチンの量だけでも、20億回分を超えます。加えて、4億回分を2020年末までにワクチンを供給することを約束しています。

アストラゼネカはこのワクチンを利益0で提供する方針です。

ワクチンを利益0で提供すること自体は非常に世の中のためになっていますし、公益性の観点から望ましい行動です。

アストラゼネカにはワクチンで売上がなくてもやっていけるだけの企業体力と、評判・ブランド力を高めて他の製品を売るという動機があります。

一方、利益目的で研究開発を行っている他のワクチン開発企業からしたらたまったものではありません。市場を壊す、自爆テロのようなものです。

ワクチン銘柄への影響

具体例で考えてみましょう。モデルナ、バイオンテック・ファイザー、は同じくフェーズ3の試験を7月に始めようとしています。アストラゼネカの方が若干治験で先行しています。

仮にアストラゼネカの治験でワクチンの有効性・安全性が確認され、アストラゼネカが2020年末に「$2.5/1回」のワクチンを政府向けに提供したとしましょう。

すると、類似する製品がないため、世界ではその価格が一つの物差しとなります

後続のモデルナ、バイオンテック・ファイザーからすると、本当は1回$30 x 2回で計$60などの価格をつけたかったとしても、それを行うと「アストラゼネカの20倍なのか」、「こんなに大変なパンデミックの時に暴利を貪るのか」という社会からの批判が予想されますし、競争の観点からも、あまりに高い価格をつけるのが難しくなります。

また、有効性・安全性での差別化を行うためにはある程度長い期間のデータが必要となりますが、今年の末発売のワクチンですとどのワクチンも半年程度のデータしか入手できません。

よって、データで優位性を強調するのもやや難しくなります(通常必要となる1年後の安全性・有効性すら確認できないため)。

加えて、モデルナ・バイオンテックのワクチン手法であるmRNAは壊れやすいために低温保存が必要となり、その分流通コストが高くなります。アストラゼネカのワクチンと同じ価格をつけると赤字になる可能性大のため、同じことはできません。

アストラゼネカは主要な市場(米、西欧)に安価でワクチンを提供する契約をすでに結んでいます。

つまり、「アストラゼネカのワクチンの成功は他のワクチン開発企業にとって最大の脅威」になる可能性が高いです。

ワクチン銘柄に投資をしている場合、その銘柄の臨床試験の結果のみならず、アストラゼネカの臨床試験のニュースにも注意を払っていた方が良いかもしれません。

mRNAベースのワクチンを開発しているもう企業、モデルナ(Moderna)とバイオンテック(BioNTech)についてより知りたい方はこちらをどうぞ。

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バイオンテック(BNTX) 欧州のワクチン期待の星

新型コロナが猛威を奮い続け、世界中がワクチンを待望しています。そんな中、バイオンテック(BioNTech:BNTX)・ファイザーがワクチンの臨床試験の中間発表を行いました。相場全体にも影響を与えたこの発表、いったいどんな内容だったでしょうか?

この記事を読むと、バイオンテック、治験の結果、今後の展開、最短でいつワクチンが出るか、がわかります。

バイオンテック(BioNTech)

バイオンテック(BioNTech)はモデレナ(Moderna)と同じく、研究開発段階のバイオ製薬企業です。本社はドイツにあります。

mRNAという「どのタンパク質を作るか」の情報を持ったRNAに特定のタンパク質を作らせる情報を乗せることによって、様々な病気の治療に適用することを目指しています。

現在は11の製品が臨床試験に入っていますが、ほとんどがフェーズ1という、人を対象にした臨床試験のはじめの段階です。

バイオンテックの主なターゲットはガン・感染症です。新型コロナに対しては、BNT162がワクチン候補にあたります。

バイオンテックはファイザー(Pfizer)と中国以外のワクチンの開発と製造で提携しており、中国については中国企業のFosun Pharmaと提携しています。

バイオンテック・ファイザーのワクチン試験結果

バイオンテックが用いるワクチンは、mRNAを用いる方式です。

これまでmRNAを用いたワクチンはありませんでした。

実績がないため、「mRNAを用いて本当に有効なワクチンができるのか」、「安全なのか」、が疑問点でした。この疑問に対して、フェーズ1・2の試験が行われました。

バイオンテックがファイザーと共同で行ったフェーズ1・2の臨床試験の枠組みは以下です

  • ワクチン候補名:BNT162b1
  • 治験の実施期間:5/4/2020 – 6/19/2020
  • 治験の参加者:19-54歳の健康な男女
  • 45人のランダム化試験(12人が10ugを中3週間空けて2回接種、12人が30ugを2回接種、12人が100ugを1回接種、9人が偽薬(プラシボ)を2回接種)

発表された中間結果の要点は以下です

  • ワクチン接種した人に、新型コロナから回復した人以上の抗体が観察された (10ugで1.8倍、30ugで2.8倍)
  • 副作用は疲労感、頭痛、寒気など。深刻な副作用はなし
  • 今後の用量は10ug-30ugの間の2回接種で検討

参考資料:Mulligan et al (2020) “Phase 1/2 Study to Describe the Safety and Immunogenicity of a COVID-19 RNA Vaccine Candidate (BNT162b1) in Adults 18 to 55 Years of Age: Interim Report“, MedRxiv

一言で言えば、ポジティブな結果です。

今回の中間報告では最初のワクチン接種から35日間までで、急性の深刻な副作用は観察されませんでした。これは安全性という点で良い知らせです。

次に、「新型コロナの症状(COVID-19)から回復した人以上の抗体が観察された」、というのも良い知らせです。mRNAを用いたワクチンからも抗体がきちんと形成されることを、この中間結果は示しました。

しかし、今回の試験の結果はまだまだ序の口にしか過ぎません。

今後、臨床試験で確かめられるべき項目

今回の結果はあくまでも「中間」報告です。

今回の臨床試験(フェーズ1・2)の追跡とフェーズ3の大規模臨床試験で下記の点がデータで示される必要があります

  • 中長期の安全性(特に半年後、2年後までの安全性)
  • 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対して、そもそも抗体が機能するか
  • 抗体が機能する場合、ワクチンで増加させられた抗体の増加がどの程度持続するか。
  • ワクチンを接種した人がコロナにかからなくなるか
  • 高齢者にも用いることができるのか

「新型コロナが体内でどう働くのか」、「私たちの免疫がどのように新型コロナに反応するのか」などまだわかっていないことが多く、今回の中間報告の「抗体が増えた」というだけでは効果があるとは断定できません

ウイルスの中には私たちが抗体を持っていても抗体をすり抜けて増殖するものもありますし、抗体のレベルによっては再感染することも十分にあり得るためです。

そのため、フェーズ3の結果が出るまでは、バイオンテックのワクチンが機能するかどうかはわかりませんし、これはどのワクチン候補についても当てはまります。

最短でいつ、どれくらいワクチンができるのか

新型コロナのワクチンを審査する際のガイドラインをFDAが6月30日に公開しました。

一言で言えば、「新型コロナのワクチンがいくら緊急で必要だとしても、安全性・有効性をきちんと審査をするよ」。

真っ当な内容です。

「選挙前までに承認しろ」という政治からの圧力が相当にあったことが容易に予想されるため、圧力に屈しなかった点は評価されても良いでしょう。

過去に「インフルエンザワクチンの承認を急いで、結果的に副作用が出て、FDAが叩かれた」という歴史の教訓です。

最短でいつワクチンが出るかを考える上で重要なのが下記の部分です。

Serious and other medically attended adverse events in all study participants for at least 6 months after completion of all study vaccinations. Longer safety monitoring may be warranted for certain vaccine platforms (e.g., those that include novel adjuvants).(少なくともワクチン接種から6ヶ月後の間に起きた重篤な副作用のデータを、安全性の証明として要求する)

つまり、フェーズ3の大規模試験に参加した人の6ヶ月先のデータを得るまで、米国のワクチンの認証はおりない、ということです。

現在、ワクチン開発の先頭を走るモデルナのフェーズ3が始まるのですら7月ですので、データが集まるのはどんなに早くとも来年1月。

そこからデータの収集・分析、FDAへの提出、FDAの審査、というプロセスがあるため、どんなに早くとも最初のワクチンのFDA認証がおりるのは来年1月後半でしょう。

バイオンテック・ファイザーも7よりフェーズ2b・3を始める予定ですので、モデレナとともに先頭を走っています。(BioNTech Press Release)

プレスリリースによると、バイオンテック・ファイザーは2020年末までに1億人回分、2021年末までには12億回分のワクチンの生産ができる見込みです。

バイオンテックの株価

BioNTech Stock Price

バイオンテックはコロナ前までは$40程度でしたが、現在は$64まで急進しました。

時価総額で言えば、$14b (1兆5000億円)ですでに中堅のサイズです。ただし、モデレナの$24b (2兆6000億円)と比べれば60%程度です

どちらの企業もmRNAをベースにしたワクチンを、同じような程度のスピードで開発しており、新型コロナ向けワクチンへの期待で株価が上昇しています。

新型コロナ向けのワクチンがどれだけの価値があるのか、は価格、数量、有効期間、バイオンテック・ファイザーの取り分の割合、競争環境、など変数が多過ぎて予測が難しいですが、仮に下記のような仮定を置いてみます。

  • 2回の接種が必要で、合計$40
  • ワクチンは1年間有効(インフルエンザのように毎年打つことが必要)
  • バイオンテック・ファイザーの取り分は50:50
  • 毎年7000万人が接種する(米国、西ヨーロッパの10人に1人)

以上のような条件であれば、$40 x 50% x 7000万人 = $1.4b (1,500億円)が毎年の売上になります。このくらいの売上が毎年上がるのであれば、1月からの上昇分は正当化できそうです。

人類が新型コロナを気にせず生活するためにはワクチンが必要であり、バイオンテック・モデレナともにその先頭を走っています。相場全体に影響を与えるという点でも、目が離せない企業の一つです。

mRNAベースのワクチンを開発しているもう一つの企業、モデレナ(Moderna)についてより知りたい方はこちらをどうぞ。

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ギリアド (GILD) の新型コロナ治療薬、25万円は高いのか?

製薬のギリアド・ライフサイエンシズが世界初の新型コロナ向け治療薬のレムデシビルの価格を発表しました。

先進国向けの「25万円」という価格に対して、2つの驚きがあるように見えます。一つは「高すぎる」。もう一つは「安すぎる」。今回は薬の価格について書きたいと思います。

この記事を読むと、薬の効果と価値、価格の決め方、なぜレムデシビルがその価格をつけたのか、がわかります。

レムデシビルの効果

NIAD (National Institute of Allergy and Infection Disease)が行ったACCT-1試験とギリアド主導で行ったSimple Trialの2つの臨床試験からは、下記のような効果が観察されました。

Remdesivir Clinical Trials

結果の抜粋は以下になります。

  • 中程度の患者に対して、5日間処方すれば、標準治療よりも65%高い確率で患者さんがより症状が改善した状態となる (SIMPLE trial)
  • 5日間の処方も、10日間の処方も、統計的に有意な差は生じていない (SIMPLE Trial)
  • 重症者に対して、レムデシビルは死亡率について統計的に有意な改善は示さなかったが、平均4日間入院期間を短縮できる(NIAID study  ACCT-1 Trial Journal)
  • 標準治療と比較して、統計的に有意な重篤な副作用は観察されなかった (SIMPLE Trial)

つまり、レムデシビルの主な効果は、「より良い状態になる」と「入院を4日間短縮できる」という2つです。

レムデシビルの経済的な価値

「より良い状態になる」という価値は算定しにくいですが、「平均4日間入院期間を短縮できる」ことには明確な経済的な価値があります。

患者さんからしても早く退院して日常に戻りたいです。

病院としてもベッドが早く空けば、より収益性の高い手術の回数を増やして収益を増やせるため、入院期間を短縮させたいです。実際に病院に支払いを行う保険会社の視点からしても、入院期間が短くなればそれだけ病院に支払う入院費用が減らせるため、望ましいです。

この3者にとっての価値が薬の価格に影響を与えるのでしょうか?

実は、この3者の視点は価格決定のときに考慮はされますが、価格決めで最も大事なのは保険会社の視点です。患者さんではありません。理由は、お金を出すのが保険会社であるからです。

他の産業とヘルスケアでは、サービス・薬で便益を受ける人と、実際にお金を支払う人が異なることが大きな相違点です

薬の価格は、「お金を支払う人の視点から見て、どのくらい価値があるか」が重要になります。

米国の場合は公的保険は政府、私的保険は民間保険会社になります。日本をはじめとする多くの西欧の場合は、国民皆保険であるために政府となります。つまり、政府および民間保険会社の視点が最も価格に影響してきます。

米国においてのレムデシビルの価値をCEOのDaniel O’Dayは下記のようにOpen Letterで述べています

Taking the example of the United States, earlier hospital discharge would result in hospital savings of approximately $12,000 per patient (米国の例では、(4日間)退院を早めることは、患者さんあたり$12,000の価値があります)

つまり、レムデシビルを処方することは政府・保険会社にとって$12,000の価値があるよ、と言っています。

実際、米国では州や病院の形態にもよりますが、ベッドを1日使われる費用で$3,000かかることはあり得るので (参考:Becker’s Healthcare)、保険会社・病院の視点から見て入院を4日間減らせることに$12,000の価値がある、というのは大げさではありません。

異なる視点では、NPOで薬の価格が適切かの分析を行っているICERが算出したコスト便益分析では、米国では$4,500-$5,000が適正価格であり、重症患者に対して効果があるというdexamethasoneを対照群とした場合は、$2,520-$2,800まで落ちる、と分析しています (ICER Remdesivir)。

Dexamethasoneはあくまでも重症患者に対する効果しか現在まででは報告されていないため、ICERが中程度の患者さんに処方する前提で対照群とするのはやや厳しい見方です。最大限厳しめに見て、$2,520というところでしょう。

まとめると、$2,520から$12,000まで、幅広い価値の推定が行われていました。薬の価値の決め方には幅があり、難しいとも言えます。

レムデシビルの価格

6月29日に、ギリアドのCEOであるDaniel O’Dayがレムデシビルの価格を発表しました。

  • 先進国の政府向けは5日間の治療前提で、$2,340 (約25万円。1本$390 x 6回分)
  • 米国の民間保険会社向けは5日間の治療前提で、$3,120 (約34万円。1本$520 x 6回分)
  • 新興国向けはジェネリックの製造メーカーと組み、より安価で提供する (インド、バングラディシュでの販売価格は1本$40-80程度と報道されています。先進国の1/10から1/5です)

この価格の水準と出し方について、3つポイントがあります。

価格の水準

1つ目は、政府向けの価格の$2,340は、$2,520-$12,000という価値の幅のさらに下であった、という事です。

未曾有の危機である新型コロナで、初の治療薬であるレムデシビルの価格には世界中から注目が集まっていました。ここで、$4,000程度でしたら、米国内ではコスト便益の観点から、「適正な価格をつけた」と評価されていた可能性が高いです。

ギリアドはさらに一歩踏み込んで、ICERが算出した価格の下限である$2,520よりもさらに低い価格をつけました。ICERが出す数字は政治家も用いる数字であり、この下限より低い数字を出したのは、「ギリアドは世界中の人のためにできる限り多くの人の手にわたる価格をつけます」というメッセージになります。

また、米国は世界一薬の価格が高い国であり、他の先進国では米国ほど価格が高いわけではありません。米国を基準に価格をつけると、他の先進国から見ると「高すぎる」、という印象になります。$2,500を下回る価格は、欧州でも「適正だ」と受け取られる値付けをしたのでしょう。

さらに、$2,340という価格は、米国では他に効果のある薬が出てきた時にも「併用しやすい」、あるいは「コスト便益の観点から競争力がある」価格です。現在、他の製薬会社が新型コロナ向けの新薬を開発していることも意識した価格になっています。

まとめると、レムデシビルでの利益を短期的に最大化するよりも、ギリアドとしての評判と長期的な売上を考えた価格付けです。

一律の価格の提示

2つ目のポイントは、一律の価格にした事です。

薬の価格で、このように全世界で一律の価格を提示するのは、極めて異例です。

通常、認証が取得できた後、薬の価格の交渉になります。米国であれば各保険会社との個別の交渉となり、欧州・日本であれば当局との保険償還価格の交渉になります(保険償還価格=保険からいくら支払われるか。病院が保険から受け取れる価格)。

当局側もその価格が適正なのかの分析の準備がかかりますし、今回のように他に薬がないような場合ですと、前例となる物差しがないためにさらに時間がかかります。

今回の場合、各国と交渉をする時間を省きたかったことと、透明性を確保したかったのでしょう。

「みんなこの価格だよ」と言うことで、価格の自由度は失いますが、「他の国よりも高いじゃないか」、という批判は出なくなります。また、先進国はみな公平に扱うという姿勢を明確にすることで、個別の国からの値引きの要求を断りやすくする効果もあります。

言い換えれば、一律の価格を提示することで、スピードと公平性を重視しました

新興国を別枠に

3つ目のポイントは、新興国を完全に別枠としたことです。保険価格を決める際に、「参照価格」として他の国の価格を参照する国・地域が多いです。そのため、安い価格で出さないと人々の手に入らない新興国に薬を回すのは後回しになりがちです。

今回の場合、新興国を特別扱いとし、生産・販売元を分けることで、先進国の価格に影響を与えないようにしながら、新興国にも薬を提供できるようにしました。

得られるライセンス料は先進国からの収入に比べれば微々たるものだと想像されますが、各国と良い繋がりを作り、ブランド認知度を高めるのに良い方法です。

医療業界は規制業種であることから、規制当局から信頼されることは非常に重要です。今回のレムデシビル供給により、新興国における規制当局との繋がりを強める効果があると考えられます。

他銘柄への影響

ギリアドのレムデシビルの価格は、今後出てくる治療法の価格に影響します。言い換えれば、各国がレムデシビルの価格を基準に考えます。

実際、ギリアドのレムデシビルの価格はかなり抑え気味であり、重症者向けに効果があるというデータが出てきたdexamethasoneも非常に安価です。

今後治療法が出てきた時にはこの2つの薬の組み合わせよりも有効であり、かつコスト便益に優れていることを示す必要が出てきますが、これは現在治療法を開発している企業にとってはあまり良いニュースではありません。

高い価格を提示した時に社会的な批判が出る可能性が高いため、新型コロナ関連の売上予想を押し下げる要因になります。

一方、ワクチンについては、そもそもカテゴリーが違うため、あまり影響はないと考えられます。

まとめ

以上のように、ギリアドは「いかにレムデシビルの利益を最大化するか」というよりは、「中長期的にギリアドとしてビジネスを拡大していくために、いかにレムデシビルを使うか」を考えて、値付けを行ったように見えます。

これは戦略的に正しいと思います。株式市場もこの価格を正しいと捉えたようで、株価は横ばいです。

幸か不幸か、新型コロナの感染は衰える様子がなく、特にアメリカでは1日に40,000人を超える新規感染者が続いています。

worldometersより

このまま感染がおさまらなければ、アメリカ国民にとっては悲劇ですが、ギリアドにとってはレムデシビルの需要が増え、売上増に繋がりそうです。

ギリアド(GILD)についてより知りたい方はこちらをどうぞ。

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ギリアド (GILD) – レムデシビルで注目を浴びるバイオ製薬会社

ギリアド・サイエンシズは新型コロナの治療薬候補として「レムデシビル」を持つことで、注目を浴びている企業です。

今回はギリアドについて分析していきたいと思います。この記事を読むと、製薬会社のビジネスモデル、ギリアド・サイエンシズのビジネス、新型コロナ向けの治療薬開発の進捗、についてわかります。

製薬会社のビジネスモデル

まず、製薬会社のビジネスモデルについて簡単に説明します。

製薬会社も製品(医薬品)の開発・生産・販売、をする点は他の業種のメーカーと同じです。一方、大きく違うのはその製品開発の特殊性です。

医薬品の開発には、長い年月と多額の費用がかかります。

医薬品は安全かつ有効な製品が求められるため、ほぼ全ての先進国で規制当局による販売規制がされています。販売するためには、規制当局の承認を得る必要があり、そのためには開発段階ごとに安全性・有効性を示すデータを提示しなければなりません。

具体的には、薬を作用させる対象を決めた後に、コンピューター上でのシミュレーション、実験室での実験、動物での治験、人間での治験(通常、安全性を見る第一段階、安全性・有効性をみて用法・用量を決める第二段階、最終的に大規模な試験を行って安全性・有効性を確かめる第三段階の三段階)、規制当局への認証申請、保険償還申請、のプロセスを経る必要があり、通常10年以上かかります。

薬の候補となる物質を研究者が見つけて、そこに社内で予算がつくのは数%。人での臨床試験までたどり着くのがさらにそこから数%。人での臨床試験(治験)段階まで進んだとしても、薬として製品化されるまで行くのはわずか12%と、8候補薬あってようやく1つが世に出る割合です。

候補となる物質から考えると、万に一つの世界です。加えて、薬として製品化された後も安全性・有効性についてモニタリングを行う必要があり、このモニタリングにも多額の費用がかかります。

複数のプロジェクトを走らせて、ようやく一つがモノになるような製品の性質上、一つの製品を開発・販売するのにかかる金額は平均$2.6b (約2,800億円)、販売後のモニタリングで$0.3mで合計約$3b (約3,300億円)かかると推定されています。10年間でこの数字は倍以上になりました。新薬の開発がそれだけ難しくなってきているからです(Joseph (2016) “Innovation in the pharmaceutical industry:New estimates of R&D costs”, Journal of Health Economics 2016)。

これだけの費用をかけて開発する医薬品ですので、他社が開発をせずに「ただ乗り」することを防ぐよう、特許による法的な保護が行われています。米国の例では、特許出願時から20年です。つまり、「その間は独占的に販売をしていいよ」、という政府からのお墨付きです。

製薬会社は「既存の製品で稼ぐことで、将来に向けての研究開発費を捻出し、自社開発または他社の買収・他社との提携を通じて、新たな製品を獲得して世に出すことでまた稼ぎ、将来への投資にあてていく」というビジネスになります。

そのため、大手製薬企業の財務を単年度で見ると、営業利益率は非常に高い一方、「研究開発費」も高い水準になります。

下のギリアドの例では、2019年の粗利益率が84%と高い一方、研究開発費(R&D)は$3.77bと17%近くであり、非常に高くなっています。

Gilead Financial Highlights 2018 vs 2019

また、その製品の性質から、買収と提携が非常に多く、ニュースを賑わす業界でもあります。

一方、特許が切れたあとは他社も参入できるようになり、一般的に特許が切れた後のその薬の価格は大きく落ちます。

「ジェネリック」医薬品という言葉を聞いたことがあると思います。これは特許が切れた後、開発元でない企業が同じ成分の薬を生産して販売している医薬品のことを言います。

米国ではジェネリック医薬品が市場に入ると値崩れすることに加え、シェアも奪われるため、「いかに特許期間を長くするか」、「いかにジェネリックが入ってこられないようにするか・入るのを遅らせるか」が製薬企業の既存の製品ポートフォリオ管理において重要になります。

バイオ医薬品

「バイオ医薬品」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。ギリアドはこの分野で強みを持つ企業です。

ざっくりと言えば、バイオ医薬品以前の薬は、化学物質を合成することで製造する薬です(低分子医薬品)。化学物質と化学物質を「ねるねるねるねして作る」と想像すると、わかりやすいかもしれません。生産プロセスの管理がしやすく、大量生産に適しています。僕らが日常飲んでいる薬は、ほとんどこのカテゴリーです。

一方、「バイオ医薬品」は特定のタンパク質を生物に生産させることで得られる医薬品です。目的のタンパク質の情報が含まれた遺伝子を細胞(大腸菌、酵母、動物など)に導入し、その細胞を培養し、タンパク質を作らせて、その後に特定のタンパク質だけを抽出し、精製し、薬剤とします。

要は、バイオ医薬品は、他の生物に薬を作ってもらうという点で、ヒトが化学物質を合成して作る低分子医薬品と異なっています。

バイオ医薬品は、一般的に化学合成で作られる低分子医薬品よりも製造の難易度が高く、手間もかかります。治験で人に効果が出るタンパク質を特定できた、けれど製造がどうにもならない・・・ということも頻繁に起こります。

そのため、バイオ医薬品の開発・生産は専門性が高く、限られた大手製薬会社しか生産まで含めてできない分野です。また、バイオ医薬品は高価であることも多く、現在の新薬開発の主流になってきています。

IQVIAが2019年に発表したレポートによると、全世界のトップ100のうちバイオ医薬品は41品目で、低分子医薬品は59品目。売上で見るとバイオ医薬品が低分子医薬品を上回りました。低分子医薬品の大型製品が特許切れで売上が減少するのに対し、バイオ医薬品はまだ特許が残っている製品が多く、バイオ医薬品の製薬全体に占める割合は年々上昇していっています。

また、バイオ医薬品は「再生医療」や後述する「細胞療法」など新たな治療法が生まれてきており、発展著しい分野です。

ギリアドのコアビジネス

ギリアドはバイオ製薬会社であり、主にHIV向けの薬とC型肝炎向けの薬(HCV)に強みを持っています。もう一度2018/2019年の売上を見てみましょう。売上の70%以上がHIV向けで、15%程度がC型肝炎向けです。Yescartaという新規事業が2%程度、その他が10%程度です。

Gilead Financial Report 2018 vs 2019

特にHIV向けの薬はシェアが高く、アメリカではシェア上位の薬を独占し、シェアNo.1。欧州でも高いシェアを誇ります。
C型肝炎ビジネスもソバルディ・ハーボニーという優れた製品を保有し、アメリカでは60%近いシェア、欧州でも高いシェアを持ちます。

C型肝炎ビジネスの売上が急激に減少しているのは、競合がいることもありますが、この薬が「効きすぎる」ためでもあります

実際、ギリアドの売上はこの薬の爆発的なヒットのため、2010年代中盤にピークを迎えました。

下の図のように、ギリアドのビジネスは「HIV向け」が順調に毎年伸びる一方、C型肝炎向けのビジネスは急速に伸びた後、急激に失速しています。なぜでしょうか?C型肝炎は、インターフェロンという体の中でも作られるタンパク質を注射することでC型肝炎ウイルスの排除を行う治療が以前までの標準治療でした。こちらはC型肝炎の種類にもよりますが、完治率は低く、治療期間も長いため、多くの患者さんが新しい薬を待ち望んでいました。

それに対し、ハーボニー・ソバルディは完治率が非常に高く、さらに治療期間も短い、という患者さんにとっては福音でした。そして、瞬く間にシェアを得て、これらの薬は普及しました。これがC型肝炎向けビジネスが爆発的に伸びた理由です。

結果、何が起きたのでしょうか? ハーボニー・ソバルディが必要な患者さんが激減したのです。高血圧や糖尿病などの生活習慣病であれば、ずっと薬を飲み続けるため、患者さんが生きている間は需要が見込めます。一方、画期的な新薬で患者さんが完治すると、患者さんはいなくなります。

つまり、発売されて数年が経つと、既存のC型肝炎で苦しんでハーボニー・ソバルディが必要となる患者さんが激減し、薬の需要が新規でC型肝炎にかかる人のみになってしまいます。当然、対象となる患者さんが少なければ売上も落ちます。C型肝炎向けのビジネスは年20%以上の勢いで減少していますが、これは薬の競争力が落ちているわけではなく、そもそも需要が減っているためです。

一方、HIV向けの商品は、HIV患者はHIVの発症を抑えるために薬を飲み続けなければならないため、既存の患者さんは薬を飲み続け、新規の患者さんもギリアドの薬を飲むことになります。つまり、売上は積み上げ式になり、患者さんが生存し続ける限り、増えていきます。事実、HIV向けの製品の売上は順調に増加を続けています。

画期的な新薬は必ずしも長期的なビジネス的成功につながらない、というのは古くからある製薬ビジネスのジレンマです。継続的に飲み続けられる生活習慣病や、患者数が多く再発率も高いガン治療向けの開発プロジェクトが多いのはそういう背景もあります。

HIVやHCVと並んでいるYescartaは「細胞療法」と呼ばれる新しい治療法であり、FDAから認可を受けたのは2017年。まだまだ薬としてのライフサイクルが始まったばかりの薬です。ギリアドはこの技術と製品を持つKite Pharmaという企業を2017年に1兆円以上の金額で買収しました($11.9b)。

現在はほぼ同時期に認証を受けたノバルティスのKymriahとギリアドのYescartaの2つがFDAより商品として認可されています。

細胞療法は生産が非常に難しく、現在は適応も限られている(=使うことができる患者さんが限られている)ため、ほぼノバルティスとギリアドが寡占状態になる可能性が高いです。先行者利益が取りやすく、より多くの病気に適応できるようであれば市場も拡大するため、将来が期待できる事業です。

以上のように、ギリアドは堅いコアの事業(HIV、C型肝炎)と細胞療法(例: Yescarta)というバイオ製薬の中でも新しい分野を既存製品として持っています

C型肝炎のビジネスの下げ止まりが見えていないこと、その他事業(B型肝炎向け治療薬など)が減益傾向にあることから、HIVとYescartaの成長と相殺され、しばらくは売上は横ばいでしょうが、商品の競争力があることと主要製品の特許期間もまだ余裕があるので、当面大崩れはしなさそうです。

ギリアドの開発パイプライン

ギリアドの開発パイプライン

「製薬会社のビジネス」で述べたように、製薬会社のビジネスは今の既存の薬が特許で保護されているうちに稼ぎ、次の新薬を育てる、のが基本的な経営方法です。ギリアドは自社開発に加え、買収や提携で開発のパイプラインを拡充しています。

ギリアドは強みを持つ感染症向け(主にHIV)に加えて、炎症性疾患(リウマチなど)、繊維性疾患、ガン向けに注力する方針です。感染症向けは主に現在のHIV向け製品のポートフォリオ強化でより現在の地位を盤石にするためであり、ガン向けは主にKiteが担います。

「製薬会社のビジネスモデル」の項でも述べたように、臨床試験に入った薬でも販売までたどり着くのが8つに1つの世界です。炎症性疾患、ガンともに市場が大きいので良い治験結果が出る商品が出せれば大きな可能性がありますが、製薬につきものの運頼みです。

また、炎症性疾患、ガン向けともに競争が激しい分野なので、臨床試験での有効性に注目です。

レムデシビル (Remdesivir)

レムデシビルは抗ウイルス剤として新型コロナにかかった患者さんに一定の効果がみられたため、注目されています。現在は、日本では新型コロナの重症患者向けの承認を受けており、米国ではEmergency Use Authorization(一時的な許可)を得ています。

レムデシビルについて、現在の治験結果からわかっていることは以下です。

  • 中程度の患者に対して、5日間処方すれば、標準治療よりも65%高い確率で患者さんがより良い状態となる (SIMPLE trial)
  • 5日間の処方も、10日間の処方も、統計的に有意な差は生じていない(SIMPLE Trial)
  • 重症者に対して、レムデシビルは死亡率を改善はしないが、平均4日間入院期間を短縮できる(NIAID study)
  • 標準治療と比較して、統計的に有意な重篤な副作用は観察されなかった (SIMPLE Trial)

これまでに行われたランダム化された臨床試験結果から見るに、レムデシビルは決定的に効果的な治療薬ではなく、「ないよりはマシ」な薬です。中程度の患者さんを良くする可能性が高まること、入院期間を短縮できること、のどちらも患者さん、病院にとって価値があります。重篤な副作用がみられなかったことから、現時点では安全性についてもクリアしているように見えます。

一方、現時点で得られているデータは数ヶ月後、1年後などにフォローアップが行われたものではなく、あくまでも速報であり、かつ数百人程度の小さいサンプル数から得られたデータであるため、今後大規模に使用されたときに副作用が報告される可能性は残っています。

現在、治療薬ではdexamethasoneが「重篤な患者」の死亡率を改善させる、とイギリスの治験から発表が出ています(WHO News)。これは非常に良いニュースですが、「重篤な」状態に至る前に治療する方が望ましいため、中程度の患者さんに処方することでメリットのあるレムデシビルの必要性は残ります。

第三段階のさらなるフォローアップの結果、他の治療薬の開発進捗次第(ファビビラデル(アラガン)など含む)ではありますが、速報と同程度の有効性と安全性が観察されれば、薬として米国、欧州、日本で中程度の新型コロナの患者さん向けに認証される可能性は高いのではないかと考えられます。

価格は先進国の政府向けで5日間の治療で$2,340、民間向けで$3,120と発表されました。コスト便益分析からは$4,000程度が妥当と言われていたので、批判が出にくいよう、かなり価格を抑えた印象です。新興国向けには異なる価格が適用されます。

まだまだ新型コロナは収束時期が見えておらず、今後新型コロナで中程度と診断される人の数の推定は難しいです。過去6ヶ月で世界の感染者は1,000万人、死亡者は50万人を超えました。

仮に先進国、米国民間向けに年間100万人分を平均$3,000で販売したとすると、

100万人 x $3,000 = $3b (3,300億円)と、現在の売上を15%増やす計算になります。価格を抑えているので粗利益率はそこまで高くないかもしれませんが、純利益ベースでも10%程度は増えてもおかしくないかと。

また、将来の可能性として、現在のレムデシビルの投与は点滴方式ですが、ギリアドはレムデシビルの吸引型の治験をはじめました。仮に吸引型で効果が出るならば、軽症の患者さん向けにも処方しやすくなるため、よりビジネスとしての可能性が広がります。

通常の治療薬、ワクチンの開発には10年以上かかることがざらであること、治験に進んだ治療薬・ワクチンであっても有効性・安全性を兼ね備えて認証される製品は10%台であること、を考えると、夏が過ぎても「レムデシビル」のみが唯一の選択肢になる事態も十分に考えられます

ワクチン、他の治療薬の治験結果があまりよくないと、世界中でレムデシビルの需要が突発的に増加する可能性があります。

ギリアドの株価

ギリアドの株価は現在$75程度で、年初の$65から15%程度上昇しています。

元々のビジネスが安定しており、かつ大きい分、コロナ関連のニュースによる株価の変動幅はワクチンで注目されているModernaやBioNtechなどと比べると小さくなっています(これらの企業の売上はほぼ0で、ワクチンの行方に売上がより大きく左右されるため)。

配当は直近四半期で$0.68となっており、配当利回りでも3.7%と高めです。2019年のEPSは$4.22で、PERは18程度。

ギリアドは、バイオ製薬企業としても、新型コロナに関連した銘柄としても、注目すると面白い企業かと思います。

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モデルナ (Moderna: MRNA) 新型コロナワクチンの先駆者

新型コロナ感染者数拡大とFRBの暗い経済の見通しから、今週ダウが史上4番目の下落をしました。新型コロナが市場を左右する状態はまだ終わっておらず、ワクチン・治療薬への期待が高まっています。

今回は世界でのワクチンの進捗と、ワクチン開発の先頭を走るModerna(モデルナ)について書きたいと思います。

新型コロナのワクチンの進捗

新型コロナに向けたワクチンは現在、100以上の候補の研究が行われています。

しかし、人に対して臨床試験が行われているのは数えるほどしかありません。代表的なのは下記の10のワクチン候補です。

参照:Mullard (2020) “COVID-19 vaccine development pipeline gears up”, THE LANCET

通常、製薬は10年かかることも珍しくないプロセスです。

製薬の臨床試験について、ざっくりと説明すると、動物において安全性(副作用が出ないか)と有効性(病気の治療に効果的か)を確認した後に、人での治験に入ります。フェーズ1 -> フェーズ2 -> フェーズ3、と通常は3段階の試験を行い、安全性と有効性を調べられます。

フェーズが進めば進むほど、治験は大規模になっていきます。

新型コロナ向けの薬・ワクチンの場合、有効性が確認されている既存の薬・ワクチンがまだないため、「フェーズ3(Phase 3)で安全性と有効性が確認されれば、薬として認可される」と捉えてもらえればOKです(既に標準治療として薬がある場合には異なる審査基準になります)。

製薬・医療機器の製品開発についてより詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

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Moderna(モデルナ)のワクチン進捗

新型コロナ向けワクチン開発の先頭を走るのはモデルナ(Moderna)です。政府からの受注も行っており、米国の官民合同ワクチン開発促進プロジェクトであるOperations Warp Speedにも選定されている企業の一つです。

モデルナは既にPhase 3までの計画を発表しており、ワクチン進捗では他の企業に先んじています。

Phase 1

モデルナは2月よりPhase 1の臨床試験を始め、5月に中間報告を行いました。

Phase 1では健康な18-55歳のグループに25ug、100ug、250ugを投与して、有効性と安全性を確かめました(各15人)。

Phase 1では100ugを二度投与した時にできた抗体のレベルが新型コロナ回復患者よりも上回っており、副作用は他のワクチンと同程度で許容できる範囲でした。

そのため、Phase 2へ進み、以降の試験では容量として100ugが選択されました。

Phase 2

現在、Phase 2の試験が進捗しています。試験の枠組みは以下です。

  • 600人(300人の18-55歳のグループ、300人の55歳以上のグループ)
  • ランダム化試験。対照群にはプラシーボ(偽薬)
  • 50ug、100ugを2度投与 (28日間の間隔をあける)
  • 2度目の投与後から1年後に抗体のレベルを検査
  • エンドポイント(薬として「使える」かの指標)は1年後の有効性と安全性

こちらは結果が出るのは一年後です。

Phase 3

モデルナは6月11日に7月より、最終段階であるPhase 3の臨床試験を行うと発表しました (Moderna Press Release)。

発表の主な要点は下記です。

  • Phase 3の臨床試験の枠組みをFDA(Food and Drug Administration – 米の薬・医療機器の審査機関です)と合意。NIAID(National Institute of Allergy and Infectious Diseases – 米の政府機関です)のサポートを得ながら進める
  • Phase 3はランダム化試験、USの患者30,000人が対象
  • 対照群はプラシーボ。主要なエンドポイント(効果があるかどうかを判断する測定基準)は症候性のCOVID-19を防げるかどうか。第ニのエンドポイントは、深刻な症候性のCOVID-19を防げるかどうか
  • イベント・ドリブン分析(イベント=新型コロナにかかるかどうか)
  • 容量は100ugを2度投与
  • 年間5億人分のワクチンを生産する準備を進めている。Lonzaと提携して、2021年には10億人分まで生産を拡大できる可能性がある
  • BARDA(Biomedical Advanced Research and Development Authority)より試験や製造設備拡大のための資金援助を受ける

Phase 3では、Phase 2のように「ワクチン摂取後◯年後、◯ヶ月後にどれくらいの被験者が抗体を維持しているのか」を見るのではなく、「ワクチン摂取後に何%の被験者がどの段階で新型コロナにかかったか」を分析するイベント・ドリブン手法が取り入れられています。

そのため、Phase 3の結果は中間報告として1年経たずに発表されると考えられます。

モデルナのワクチン開発の進捗

このフェーズの進め方は、異例の早さです。

臨床試験には多額の投資が必要となることに加え、FDAの枠組みへの同意が必要となります。また、治験への登録者を集めるにも時間が必要となります。

通常はPhase 1の臨床試験結果の最終データをみ見てから、結果がよければFDAがPhase 2の計画承認。Phase 2の結果をみてから、結果がよければFDAがPhase 3の計画承認、と順に進捗させていきます。

それに対して、今回の例ではほぼPhase 1、2、3を同時並行で進めています。

これは、それだけ事態が深刻なため、

  • FDAが中間データでも次のステップに進めることを認めている
  • NIHが治験に協力をして、治験者登録をスムーズにしている
  • BARDAが治験の投資費用への援助を行うことで、投資リスクを減らしている

ことが大きな理由です。結果がわかる前から既に5億人分のワクチン製造能力に投資することは、普通の企業は取れない大きなリスクですが、BARDAの援助がそのリスクを大きく減らしています。

モデルナのワクチン候補は、「Operations Warp Speedに採択され、BARDAが資金を援助し、NIHが治験に協力を行い、FDAよりFast Track Designation(優先され、より短期間で審査される)の認可を得ている」、とアメリカが国として全力でサポートしています

モデルナは国策として応援されている企業、とも言えるでしょう。

モデルナの株価

新型コロナ向けワクチンの先駆者となる期待から、モデルナの株価は年初の$20の3倍以上の$60前後で推移しています

モデルナの株価はPhase 1の臨床試験の中間報告内容がよかった、というニュースを受けて$80をつけました。この時が今年に入ってからの最高値で、その後は$60前後で推移しています。

6月12日にはワクチンのマウスでの実験で効果が見られたという発表があり、株価は再び3%上昇しました。時価総額は既に2兆5000億円($24b)を超えています。

モデルナの株価推移

しかしながら、モデルナ自体は、まだ製品をローンチする前の会社です。直近の四半期の売上はわずか約8億円($8m)で赤字が130億円です。

モデルナの2020年第一四半期の業績

現在のキャッシュフローと新型コロナ向けワクチン以外のパイプラインだけでは正当化できない水準まで株価が上昇しています。

この企業の株価がどうなるかは、まさしく新型コロナのワクチンが成功するか否か次第でしょう。

今後は、

  • Phase 1、2の中間結果
  • Phase 3の進捗と結果(数ヶ月後に結果報告がされる可能性が高いです)
  • 新型コロナがどれだけ長引くか

が株価の材料になりそうです。

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コロナ後の世界を感染症の歴史から考える

米国株価は3月の底値から折り返し、年初から-13%まで急速に回復しました。背景にはロックダウンの解除と治療薬・ワクチンの開発の進展、再度の感染拡大リスクが低いと見積もられていることがあり、依然として新型コロナウイルスに左右される相場が続いています。

人類は過去にも世界規模の感染症を何度も経験してきています。歴史的な視点から、今後どのような展開になるかを考えてみましょう。

人類の歴史は感染症との戦いであった

人類の歴史は感染症との戦いの歴史でした。ハンセン病、コレラ、天然痘など現在でも知られている感染症は過去に世界で大流行し、多くの人の命を奪っています。

具体的には、13世紀にハンセン病、14世紀にペスト、15世紀に梅毒、17-18世紀に天然痘、19世紀にコレラと結核、20世記にインフルエンザとエイズ、そして21世紀には今回の新型コロナウイルス、が世界的に流行しました。

背景にあるのは、以下の3つです。

  • 人口が都市へ集中するようになり人口の密集度が上がったこと
  • 家畜化により動物との接触機会が増えて動物由来のウイルスが人に感染するようになったこと
  • 交通機関の発達により人が大陸を越えて移動するようになったこと

具体例を一つあげれば、クリストファー・コロンブスがアメリカ大陸を発見して以来、アステカ帝国はヨーロッパより持ち込まれた天然痘・麻疹・チフスにより壊滅状態に追い込まれ、滅亡しました。

アステカ王国は数十万人を超える人がいたのに対し、船で人を運んでこなければならず、圧倒的な数の不利があったスペインが新大陸を制覇できたのは、感染症を有効利用したためです。

また、感染症は戦争や飢饉など、衛生状態が悪化したときにも急速に広まり、非戦闘員を含めて命を奪ってきました。感染症は、戦争や天災を上回り、人類の歴史上、最も人の命を奪ってきた要因です

人類は対抗策をとってきた

人類もただ手をこまねいてきたわけではありません。

上下水道の整備はその最たる例です。上水道の整備は、水を媒介して感染する病気を防いできました(寄生虫、コレラ、赤痢、チフスなど消化器系の感染症)。

上下水道が整備される前は、排泄物を川に流し、その水が飲み水として使われていたため、排泄物を通じて感染が広まっていました。

飲み水と下水を分けることにより、感染症の広がりを抑えることができたことに加え、1800年代には水を浄化するということができるようになり、先進国では安全で清潔な水を手に入れました。

また、人類は医学・疫学を発達させ、薬やワクチンを発明してきました。現代に生きる私たちは当たり前に感じてしまいますが、200年前には病気にかかっても、抗生物質もなければ、抗ウイルス剤もない世の中です。ワクチンもありません。

どうして疫病が流行るのかすらわからないため多くの場合、感染症はかかるもので、生き残れるかは運次第で、個人の免疫と自然治癒力に頼るしかありませんでした。感染症にかかることは、文字通り命がけでした。

疫学の発展により、いかに感染が広がるかがわかったことは大きな進歩です。特に石鹸を用いての手洗いや身体を清潔に保つことは、多くの感染症の広まりを抑えました。

また、医療インフラの整備により医療へのアクセスが向上したこと、緑の革命により食糧生産が増加して食べ物が行き渡るようになって栄養状態が向上したこと、も感染症への抵抗力をあげることに貢献しています。

科学の発展により、新たな感染症が見つかったとしても、「発見し、隔離し、治療し、予防する」スピードが早くなりました。

  • 上水道の整理
  • 医学の発展(抗生物質、抗ウイルス剤)
  • ワクチンの接種
  • 疫学の発展
  • 医療インフラの整備
  • 衛生状態・栄養の向上

により人類は感染症の影響をかなりの程度抑えることに成功してきました。

例えば、天然痘は17-18世紀に中南米の人口を80%以上減らした人類への脅威ですが、WHOが1958年に根絶計画の決議をとって以来、治療法とワクチンの普及により、わずか22年でこの世界から根絶することに成功しました。

ポリオなどの小児がかかる重い感染症も、ワクチンが普及した結果、根絶に近づきつつあります。

終わりなき戦い

しかし、人類と感染症は終わりなき戦いを続けることになります。なぜなら、細菌・ウイルスは変異し、形を変えて襲いかかってくるためです。

例えば、馴染みの深いインフルエンザですが、定期的にワクチンを打つことが一般的です。これはその年により、流行るウイルスのタイプが異なるためです。ウイルスは細菌よりも変異の速度が早く、数ヶ月で既存の薬が効かなくなることもあります。

よって全ての感染症を、天然痘のように、根絶できるわけではありません。

また、野生動物は様々なウイルスを体内に保っており、それらが変異し、ヒトに感染することもあります。

例えば、SARSやエボラ出血熱はコウモリ由来と言われています。ヒトがコウモリを食べて、感染。そこからさらに他のヒトに感染、と感染の輪が広がっていきました。

家畜や生きた動物を扱うマーケットから、変異したウイルスを受けとることで、新たな感染症が広まることは過去20年でも何度か起きていますし(SARS、MERS、エボラ出血熱)、新型コロナも動物由来と言われています。

この終わりなき戦いは、私たちが生きている間にも、広まりの程度の差はあれ(ある地域で止まるか、全世界的に広まるか)、続くことでしょう。

新型コロナ後の世界

新型コロナは感染症の恐ろしさを人類に再び知らしめました。現在、モデルナ(Moderna)、バイオンテック(BioNTech)、ジョンソンアンドジョンソン(J&J)をはじめとしてワクチンの開発が急速に進んでいます。また、治療薬もギリアドのレムデシビルが入院期間を短縮する効果を示したたことに加え、多くの治験が行われています。

仮に、全てがうまくいったとしましょう。全てがうまくいく、というのは下記のようにワクチンと治療薬が発見、生産、分配されることを意味します。

  • ワクチンが安全性、有効性を示す
  • ワクチンが十分な量生産される
  • ワクチンが人々に行き渡る
  • 安全で、有効性が高い治療薬が発見される
  • 治療薬が十分な量生産される
  • 治療薬が人々に行き渡る

この条件が満たされて、初めて国際的な人の移動が元に戻ります。逆に言えば、この条件が満たされなければ、国ごとにどの国からなら人を受け入れることができるか、などという制限が設けられ、空の移動にも感染を防ぐための対策が持ち込まれる可能性が高いです。

ワクチンの普及速度を考えても、この制限は一定規模で数年間続き、来年東京で開かれる予定のオリンピックにも影響が出る可能性は高いです。つまり、航空会社、インバウンドを主なお客にしているビジネス、オリンピック需要をあてにしているビジネス、はこの先2年間はコロナ前の水準まで戻れない可能性が高いでしょう。

加えて、変異によりワクチン・治療薬が効かなくなること、新たな感染症が生まれてくることもリスクです。

今後、大勢のヒトが集まることで成り立つビジネスに投資をする際には(テーマパーク、空港、公共交通機関など)、このリスクが意識されるようになり、株価の重荷や特に借入金や社債の利率に影響が出てくると考えられます。

もしかしたら、多くの人と接触しない余暇がブームになるかもしれません(キャンプなど)。

安全保障の観点からは、今回の新型コロナは生物兵器の有効さとウイルスの脅威を示しました。ウイルスの研究は、核兵器について研究するよりも意図が見抜かれにくいです。感染力があり、重症化率の高いウイルスが大国の経済を破壊できるだけの力を持つことは、小国であっても、感染兵器を製造することで大国と交渉できるカードになり得ることを意味します。

歴史においても、感染症は相手の戦力を弱めるために使われてきました(天然痘など)。今後は、相手の国力を削ぐ、または抑止力として選択肢に入れる国が増えると考えられます。

同時に、各国ともに自国にウイルスが持ち込まれた時に対応できるような能力を持とうとする動きが出るでしょう。ワクチンの開発・製造、製薬の開発・製造について、国内企業を優遇、または育成しようとする国が増えると予想されます。

加えて、今回のマスクやPPE (Personal Protective Equipment)の不足は、医療物資を他国に依存することのリスクを顕在化させました。こちらもワクチン・製薬と同様に、医療用途の消耗品・医療機器についての産業育成に国が投資をする動機になるのではないかと思います。

実際にアメリカは自国に優先して薬が回るように他国の製薬会社に働きかけを行ったり、自国の製薬会社にアメリカ向けを優先するようにしむけています。ワクチン・治療薬を用いた外交はすでに始まっています。

まとめますと

  • ヒトが大勢集まることで成立するビジネスのリスクが高い状態が数年は続く(ショッピングセンター、テーマパーク、交通機関など)。借入金や債券の高い利率といった形でリスクが織り込まれる。
  • 製薬・医療機器は国策として重要となってくるため、国が何らかの産業保護または産業振興の政策を打つことが予想される。
  • 製薬・ワクチンが外交の道具としてみなされるようになる。

大きな流れで見ると、今回の感染症はヘルスケアメーカーにとって、一つの転機になるかもしれません。

参考図書:石弘之 『感染症の世界史』 洋泉社 2014

米国の医療事情についてより知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

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米国の史上最大の景気対策は、経済を救えるのか?

6週間で3,000万人が失業給付の申請をした米国ですが、経済を救うために、政府・議会が「史上最大」の景気対策を取っています。この景気対策は、米国経済を救えるのでしょうか?

この記事を読むと、米国経済の現状の理解が深まると同時に、影響の大きい産業と小さい産業もわかり、投資にも役立つ可能性があります。

失業率の急上昇

米国では6週間で3,000万人が失業給付の申請を行いました。4月23日(木)に発表された新規失業申請の件数は440万人、4月30日(木)発表の数字は384万人。伸びは鈍化してきていますが、依然として高い水準です。

Jobless Claim Chart from BBC

米国で16歳以上の就労可能な人口の数は2億6000万人。労働者の数は、2月末の時点で約1億6,500万人で、労働参加率は63%、失業率は3.5%でした。

米国の失業のデータはUS Bureau of Labor Statisticsが毎月、月の始めに出しています。4月のレポートによると、3月末の就業者数は1億5570万人で300万人減少。失業者数は710万人で、150万人増加。失業率は前月から0.9%上昇して、4.4%でした。

TOTAL Feb.
2020
Mar.
2020
Mar – Feb
Civilian noninstitutional population 259,628 259,758 130
Civilian labor force 164,546 162,913 -1,633
Participation rate 63.4 62.7
Employed 158,759 155,772 -2,987
Employment-population ratio 61.1 60
Unemployed 5,787 7,140 1,353
Unemployment rate 3.5% 4.4%
Not in labor force 95,082 96,845 1,763
Persons who currently want a job 4,962 5,5

3月末からの6週間での新規失業申請は3,000万人。2月末の失業者数と合わせると、3,500万人。つまり、現在は、就労可能な人の約5人に1人が失業給付を受け取っている計算になります。

想像してみてください。単純計算で友人同士で5人集まると、1人が失業しているのです。

どこの産業がもっとも影響を受けているでしょうか?

特に旅行、レジャー、レストラン業界(Leisure and Hospitality)はほぼ壊滅状態です。3月の時点で20%の人が失業しました。下の表のように、3月の時点で、46万人がこの業界で職を失っています(U.S. Bureau of Labour Statisticsより)

業界 2020 MAR(1000人) 割合 3月の変化 (1000人)
Mining and logging 708 0% -7
Construction 7,605 5% -29
Manufacturing 12,839 9% -18
Trade, transportation, and utilities 27,781 19% -49
Information 2,899 2% 2
Financial activities 8,853 6% -1
Professional and business services 21,507 14% -52
Education and health services 24,523 16% -76
Leisure and hospitality 16,393 11% -459
Other services 5,919 4% -24
Government 22,759 15% 12

失業は労働者の観点からすると、収入、精神の健康面で問題ですが、国家の観点から見ても大きな問題です。

GDPは「労働可能な人口 x 労働参加率 x 生産性」で計算されます。

失業が増えると、労働参加率が減ります。つまり、GDPは減少します。

また、失業が長引くと、その人は価値を社会に生み出す機会を失います。何割かの人は諦めて労働市場から出て行ってしまい、社会福祉に頼ることになります。よって、GDPを短期的のみならず、長期的に押し下げるとともに、財政的にも負担になります。

そのため、国家運営の観点からすると、出来るだけ労働者が雇用されている状態を維持したく、失業者には一刻も早く職場に戻って欲しい、という動機があります。実際、米国の財政政策はこの2点を目標にして、巨額の支出を行なっています。

米国の第一四半期のGDP

外出禁止令が発令されたのは3月中盤からであり、第一四半期への影響は限られます。それでも米国の実質GDPは年率換算で4.8%の減少となりました。

前期が年率2.1%の成長だったことを考えると、大きな落ち込みです(出典:BEA “Gross Domestic Product, 1st Quarter 2020”

US 2020Q1 GDP

GDPは個人消費、設備投資、政府支出、純輸出、の4つに大きく分けられます。

米国の第一四半期は、個人消費、設備投資が落ち込んでいます。一方、政府支出は1%の増加で、設備投資の減少分と相殺しています。

US GDP 2020Q1 vs 2019Q4

米国は個人消費の国です。個人消費がGDPの約70%を占め、投資と政府支出が20%弱で、輸入が輸出よりも多い国です。

もっと言えば、クレジットカードやローンで借金をして消費を増やしているという国です。消費が減少しているというのは、赤信号です。

また、米国はサービス業の国でもあります、個人消費の約2/3をサービスへの消費が占めます(残りは車や食料品などのモノへの消費)。

個人消費のサービスのうち、特に支出の割合が大きいのは家庭・公共サービスで消費に占める割合は19%、ヘルスケアへの支出は次いで17%です。

US GDP Service 2020Q1

セクターごとに見てみると、家庭・公共サービス、金融サービスが好調な一方、その他のサービス業は大きな影響を受けていることがわかります。

食事・宿泊などの産業で失業が増えているのも納得できる数字ですね。

外出禁止の影響がよりはっきりとしてくるのは次の第二四半期のデータです。経済への影響はどの程度と予測されているのでしょうか?

米国の2020年、2021年の経済の見通し

米国のCBO (Congressional Budget Office)が4月24日に第二四半期以降の経済の見通しを発表しています。

CBO Economic Outlook (CBO Press Releaseより)

CBOによると、第二四半期のGDPは11.8%の減少、第三四半期、第四四半期は5.4%、2.5%と回復していく、と予想されています。

現在の21.6兆ドルのGDPは第二四半期には19兆ドルと、20兆ドルを切ることが予想されています。CBOの予想によると、2021年末の時点でも、GDPは2020年の第一四半期の水準まで戻りません

つまり、それだけ今回のコロナウイルスの危機の爪痕は大きいということです。

失業率は第三四半期に16%になると予測されています

こちらは経済が再開し、現在失業給付を受給している3,500万人の人たちの一部が職場に復帰することを想定していると考えられます。具体的には、失業給付を受給している人の数が現在の3,500万人から、2,640万人まで約850万人減ることを予想しています

今回の失業をきっかけに、現在の労働者の5%にあたる800万人の人が、労働市場に戻るのを諦める、つまり「就職するのを諦める」、と予想されています。それに伴い、労働参加率も2月末の63%から60%まで落ちると予想されています。

先に述べたように、労働参加率が落ちることは、GDPの下押し要因になります。それでは、どのようにこの経済・雇用危機に対応するべきでしょうか?

米国の財政対策

未曾有の経済危機に対応するため、米国は次々と財政対策を打ち出しています。

CARES Act

最も大規模で包括的な財政政策は、3月末に成立したCARES Actです、

この法案は、$2.2tn (240兆円)の史上最大の景気対策法案であり、国民・企業・州政府・自治体が危機を乗り切るために、以下の対策が含まれています(出典: US Department of The Treasury

国民の生活を守るための施策

  • 大人1人あたり$1,200、子供1人あたり$500の小切手での給付(所得制限あり)
  • 失業した場合、13週間の間、週$600を連邦政府が追加で支払い(州の失業給付に加えて)
  • コロナウイルスの検査は無料。また治療も民間保険でカバーされる。

大切なことは、国民が生活を送れるようにすることです。生活費を補助するため、夫婦・子供2人の4人家族であれば、$3,400 (37万円)がもらえます。かなり多額のバラマキです。

また失業しても月に$2,400連邦政府からもらえ、加えて州からも失業給付が出ます。

州により失業給付の額は異なりますが、平均すると週$900程度(10万円)もらえるため、パートタイムで働いている人によっては失業中の方が収入が高くなるケースも多いです。

具体的には、労働者の平均の収入は3月末で週$980でした。上乗せされた失業給付はこの平均額を元に計算されているとのことですが、「平均」ということは多くの人が平均以下の週給であるため、働かずに週$900というのはかなり寛大な額です。

特に失業が多く発生している、ホスピタリティ、飲食は一般的に低賃金の職業です。新規失業申請を出している人の中には、働き続ける選択肢がありながらも、失業給付を受給した方が、自分の時間をもて、かつ収入もよくなるために申請をしている、という人も多数含まれていると考えられます。

中小企業向けの施策

  • Pay Check Protection Program: 従業員500人以下の中小企業向け。一定条件を満たせば、8週間分の従業員の給与を国が提供(ローンだが返済義務がなくなる)
  • Emergency Economic Injury Disaster Loan Program: コロナ危機で大きな影響を受けた500人以下の中小企業向け。返済不要の$10,000の支給
  • Employee Retention Credit: 従業員あたり$10,000まで、税金を減らすことができるクレジットが与えられる(ただし対象となる企業には条件がある)

中小企業向けの施策は「潰れないようにすること」、「雇用を維持すること」に重点が置かれています。

コロナ危機が落ち着いた後に経済活動が素早く再開できるよう、緊急でつなぎの融資が受けられるような仕組みも用意されています。

大企業、州・自体体への支援

  • 特定業界への支援(例: 航空業界への$25bの給与支払い支援)
  • 州・自治体への支援
  • 借り入れのプログラム
Morgan Stanleyの記事より

何がなんでも経済・産業を崩壊させない、という意思を感じる、大企業、州政府向けの支援の法案です。

加えてFRBが無制限の国債・社債の買取も行なっており、金融政策の面からも援護射撃を行い、企業が資金切れにならないようにしています。

追加の支援

4月24日に$484bn (52兆円)の景気対策が議会を通過しました(the Paycheck Protection Program and Health Care Enhancement Act)。

大部分の$320bnはPaycheck Protection Programの枠の増加です。

中小企業が殺到して、第三弾で用意した分がわずか13日で枯渇したため、今回の景気対策で枠が増加されました。

$60bnは農家向けのローンと補助金です。

$75bn (8,200億円)は病院へ、$25bnはコロナウイルスの検査の拡充に回されます。$25bnのうち、$11bnは州に回される予定です。

参考:The White House Press Release

さらに追加の支援

さらに$1tn (110兆円)規模の第五弾の景気対策が民主党と共和党で議論されています。財政難に喘ぐ州を連邦が救済すべきか、が焦点になっています。

財政赤字

Bloombergより

これらの大盤振る舞いの結果、すでに合意されている政策だけでも2020年だけで$3.8tn (410兆円-米国GDPの約18%)の赤字が見込まれています。

2020年末の米国の債務残高はGDPを超える101%となる見込みです

FRBが国債の無制限の買取を行なっているため、実質的に米国では政府が借金をして、中央銀行がドルを刷る状態になっています。ドルが刷られるということは、それだけ世の中にドルが溢れるということです。

「現在は非常時であり、財政赤字はこの危機を乗り切ってから考えれば良い」と米国議会は大幅な財政政策を党派を超えてスピード合意しています。

しかし、家計・企業・政府に積み上がる債務は消えるわけではありません。コロナ後に膨れ上がった債務をどうするかは将来に持ち越される課題です。

景気対策は十分か?

3.8bnの景気対策に加えて、さらに$1tn(110兆円)の追加の支援が追加されると、1年のうち、3ヶ月分のGDPに相当するほどの景気対策が打たれようとしています

異なる言い方をすれば、日本のGDPは$4.9trillionのため、追加の景気対策が実現すれば、米国の景気対策はほぼ日本一国分になる、とも言えます。

その大部分は雇用の維持、生活給付、雇用の維持を前提とした企業救済、に割かれています。これだけの財政支出を行なって国民の所得を保障しているため、国民の所得へのダメージはかなり緩和されており、消費が急激に減少することにはならないでしょう。

そのため、仮に第二四半期の企業活動がかなりストップしてしまっても、6月末までに経済活動をある程度正常化できれば、国民の生活や企業の経済活動へのダメージをかなり緩和できると考えられます。

副作用はないのか

財政政策は無からお金を取り出す打ち出の小づちではなく、「国債」の発行により賄われています。この国債は保有者に利子を支払う必要があるため、将来にわたり、歳出を増やすことに繋がります。

利子の支払いが増えるとどうなるでしょうか? 将来、さらにお金を借りて利子を返済するか、税金をあげて歳入を増やすか、あるいは社会福祉などに回していた歳出を減らす、などしなければならなくなります。

もちろん、現時点での危機を放置することで将来に影響が出るため、大切なのは現時点と将来のバランスです。

現在の危機を乗り越えるために国債発行を増やせば増やすほど、将来の課題も大きくなること、は忘れてはならない点でしょう。

また、FRBが投資適格でない企業の社債まで含めて購入するなど、相当の緩和を行なっているので、市場はお金であふれています。FRBがバキュームカーのように国債、社債、ローン担保の債権を購入しているため、FRBのバランスシートが急速に膨れ上がっています。

これだけの規模の緩和ですから、当然FRBが資産を減らそうとした時の舵取りが難しくなります。FRBが緩和を続ければ住宅などの資産価格のバブルを生む可能性が高まりますし、緩和が早ければ市場は動揺して荒れる可能性が高まります。

また、何かあってもFRBが最後には買ってくれるだろう、という安心感から、投資不適格な債券にまでお金が大量に流れており、市場が適切にリスクを価格に織り込んでいません。これはある種のモラルハザードであり、どこかで揺り戻しがある可能性もあります。

財政政策、金融政策ともに、今は非常時の対応として市場最大の打ち手を打っており、薬漬けの状態です。

お薬の副作用がどの程度か、お薬が切れたときにどんな反応が来るのか、には注意を払っておいたほうが良いでしょう。

まとめ

  • 現在、起きているのは未曾有の経済・雇用危機であり、国民の5人のうち1人が失業状態にある。
  • 第一四半期のGDPは前期比1%減だが、第二四半期は11.8%の減少が見込まれている。
  • 米国の経済は2021年末になっても、コロナ危機前の水準には戻らない見通し。
  • 経済への影響を緩和するため、史上最大の財政政策が取られている。追加緩和を含めると、ほぼ3ヶ月分の経済活動に当たる額を政府が支出し、経済を支えようとしている。
  • 一方、債務は積み上がっているため、今回の危機時に増えた政府・企業の債務は、危機の後に副作用を及ぼす可能性が高い。
  • 財政政策・金融政策ともに今は非常時の対応だが、バブルを生みかねない規模の緩和。緩和の出口に市場が荒れる可能性があることに注意。

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はじめての経済:ストーリーでわかる、政府

中央銀行(日銀やFRB)の金融緩和、政府の大幅な財政支出、と連日ニュースが続きます。しかし、「そもそも経済はどのように回っているのか」は、あまり説明されたことがないのではないでしょうか。

前回の記事では、企業、家計、銀行について説明しました。

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今回は、前回の続きです。政府の役割を、わかりやすい例で説明します。この記事を読むと、経済ニュースを聞いた時の理解度が上がるかもしれません。

前回までのあらすじ

小さな100人の村に銀行ができたことにより、村のお店(企業)が投資を行い、ビジネスを拡大。

それに伴い、企業が人をより雇い、より多くを生産したことで、村の経済は豊かになりました。村の人口は100人から200人に増え、村の経済規模は月1,000万円から2,000万円へと倍増。

喜ぶ村長を尻目に突然の疫病が村を襲い、村に高熱で呼吸困難な人が増える。

村長は苦渋の決断として、村民に「不要不急の外出禁止令」を出す。これにより、村に10あるお店のうち、5つは必要なお店(クリニック、スーパー、薬局など)なので、社会的距離を保ちながらならば開けても良いけれど、残りの5つ(飲食、建設など)は不要不急ということでお店を1ヶ月間閉じることに。

5つのビジネスで働く100人の村民は、1ヶ月間、仕事がなくなり、収入もなくなります。蓄えがないので、収入が1ヶ月間なくなっては、生活できません。

お店のオーナー、従業員、銀行は大慌てで村長の所にやってきました。「村長、助けてください!」

政府の始まり:借金、税金

村長は悩みます。疫病が蔓延して村の人々の命が脅かされるのは村長として許容できませんし、同時に村民の半分の生活が成り立たず、食べるにも困ってしまうのも困ります。かと言って、村長には個人としてこれだけ多くの人を助けることもできません。

「仕方ない。お金を借りにいこう」

村長は、より豊かな隣町の町長の所へ行きました。

「町長さん、うちの村で疫病が蔓延してしまい、村の半分の人が収入が途切れて、困っているんだ。1人あたり月あたり平均10万円必要で、100人なので、1,000万円必要なのだけど、なんとか借りられないかな。疫病が落ち着いたら、村としてお金を集めて返すから」

町長は少し悩みますが、隣の村は大事な交易相手で、疫病で潰れられてしまっても困ります。「仕方ない。1年後に利子5%をつけて返してくれるならばいいよ」と言って、1,000万円を貸してくれることになりました。

村長はその1,000万円を村に持ち帰り、村民に伝えます。

「今回の疫病を皆で乗り越えるために、隣町から1,000万円を借りました。この1,000万円を、疫病のために仕事ができず、生活に苦しんでいる100人に割り振るつもりです。

ただし、これは借りたお金であり、1年後には隣町に返さなければなりません。今回、これはみんなの生活に影響することのため、今後1年間は1人当たり、毎月5,000円を集めさせてもらえないですか?」

お店が疫病の影響を受けていない村民は、毎月5,000円というお金を出すということにやや戸惑います。しかし、事態の深刻さを身を持って感じていますし、村の半分の人の生活が困窮してしまえば、最終的に自分たちのお店の売上も落ちてみんなの生活が苦しくなる、という村長の発言に納得しました。多数決の結果、賛成多数で、村長の提案を受け入れることにしました。

疫病の蔓延で仕事ができなくなった人たちは、1ヶ月の間、給与と同じ額の支援金を受け取ることができるという、村の決定に感謝しました。そして、全ての村民は、外出を控えることを可能な限り守りました。

1ヶ月の後、疫病は無事におさまりました。全ての村民は平均10万円の給与・支援金を受け取りました。200人が受け取った額は、2,000万円でした。

そして、村民が給与・支援金を受け取った時に、5,000円は自動的に「村口座」へ振り込まれました。そのため、実際に受け取った額は平均10万円ではなく、9万5,000円になりました。村民が消費できる額は、200人で1,900万円になりました。

村口座には、200人からそれぞれ5,000円が天引きされたため、100万円が振り込まれました。このままのペースでいけば、年間1,200万円が貯まるため、村が隣町へ借りている金額に利子を加えた1,050万円を返済することができます。

村長はほっと一息つきました。

今回のストーリーから学べること

ここで、今回のストーリーを振り返ってみましょう。

今回の危機で、村長は、個人を超えた、「村」という行政組織を設立しました

お店、村民、銀行だけでは、今回のような危機を乗り越えることができませんでしたが、村として外部からお金を借り入れ、村民にお金を支給することで、生活の危機に陥りそうだった村民を救い、村として危機を乗り切りました。

また、その条件として、村長は村民からお金を定期的に徴収することの仕組みを導入することに成功しました。

これらを言い換えると、村長は政府(村という行政単位)を設立し、債券(いくらを、どれくらいの利率で借りて、いつ返済するかの約束)を発行してお金を手に入れ、徴税(お金を定期的に徴収すること)の仕組みを作りました。

現実の社会とどう関係するの?

政府は個人や企業だけではできないような大胆な施策を打つことができる一方で、政府が施策を計画・実行するためには、お金が必要になります。

そのお金を政府に属する国民から得る仕組みが、徴税です。徴税を導入するのは権力者が力で行う場合もありますが、今回の村の例ですと、危機をきっかけにして「村」という単位で物事が動き始めました。

経済が大不況になった時に、政府が債券を発行して消費を増やすのは、今の社会でも行われる有力な処方箋です。コロナウイルス対策として各国が大規模な経済対策を打ち出しているのも、同じ考えに基づいています。

また、日本の例では、東日本大震災の後に、復興のために巨額の財政支出がくまれ、その後に「復興特別所得税」として所得税に増税が行われました。今回の村の例と同じですね。

もう一つ大事なポイントは、「危機の後に徴税が増えると、村民の所得が減り、消費も減る」ということです。

今回の場合のように、借金を返済するための税金は、消費を減らします。政府が税金を借金返済に回す場合、輸出が増えない限り、村の中の消費は縮小し、経済規模は小さくなります。

実は今回のストーリーの前提は、輸出(=村の外への売上)が増えないと成り立たない話です。村の中で消費される金額が1,900万円ですと、輸出がなければ、企業の売上の最大は1,900万円で、従業員の所得の最大も1,900万円になります。

1,900万円の所得から100万円の税がとられると、企業の売上の最大は1,800万円になり、従業員が受け取れる金額も減り、と繰り返していくともうお分かりですね。経済規模がする中で政府が税金を高止まりさせ、財政支出をしないと、経済規模は縮小していきます。

危機の際に借金を増やす国は多いですが、その借金がどのように処理されるか、には要注目です。

その後

早いもので、さらに11ヶ月が過ぎ、町長へ借金返済の時がやってきました。この1年間で「村口座」には毎月100万円が振り込まれたため、村口座には1,200万円が貯まっています。

村長は隣町の町長へ1,000万円と約束した利子の50万円の計1,050万円を支払いました。村口座には、まだ150万円が残っています。

村民の一部の人は、村が借金を返し終えたら1人あたり毎月5,000円を支払わなくてよくなり、より消費ができようになる、と楽しみにしています。

町から帰った後、村長は村民を集めて、借金を返し終わったことを伝えました。良いニュースを期待する村民に対して、村長は言いました。

「村として借金は返し終わりましたが、これからも月5,000円は自動的に村口座へ振り込まれます」

「なんで!!」

何人かの村人が叫びました。

続く、かもしれないです。

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はじめての経済:ストーリーでわかる、企業、家計、銀行

中央銀行(日銀やFRB)の金融緩和、政府の大幅な財政支出、と連日ニュースが続きます。しかし、「そもそも経済はどのように回っているのか」は、あまり説明されたことがないのではないでしょうか。

今回は、お金が世界をどう回るのかを、わかりやすい例で説明します。この記事を読むと、経済ニュースを聞いた時の理解度が上がるかもしれません。

企業と家計

小さな100人の村を考えてみましょう。10人はオーナー社長で、お店を運営しており(クリニック、スーパー、飲食など)、それぞれ1つのお店を持っています。残りの90人は従業員です。

それぞれのお店は毎月100万円稼いでおり(材料などは近くの山や川からとってきて無料で、かかる費用は人件費だけとします)、オーナー・従業員はそれぞれ毎月10万円もらって、10万円使うとします。

  • すると、企業が稼ぐお金は 100万円 x 10社 = 1,000万円
  • 社長・従業員がもらうお金(「家計」としましょう)と使うお金は 10万円 x 100人 = 1,000万円

企業が稼いでいるお金と、家計が受け取るお金、家計が使うお金、は等しくなります。お金は企業→家計→企業→家計、とぐるぐる回っていきます。世の中に回っているお金は1,000万円です。みんなその月暮らしですが、平等な村ですね。

この村のGDP (Gross Domestic Product)という経済の指標は、実はこの1,000万円になります。村が生み出した付加価値の合計です。多くの村が、このGDPを上げることが人々の幸せに繋がると考え、この指標を上げることを目指しています。

銀行と企業投資

ここで、村の1人が「僕が兼業で『銀行』をやるよ」、と言い始めました。この「銀行」ではお金を預けることも、お金を借りることもできるようです。また、「銀行」を通じてお金のやり取りをすると、現金を直接やり取りしなくても良いようです。

現金を持ち歩かずにすむのなら、と企業もお金を預け、家計もお金を預けます。企業も家計も全てのお金を銀行に預けました。銀行には企業・家計からの預金合わせて、1,000万円のお金が入っています。

あらゆる決済が銀行口座に紐づいて、銀行役に連絡をするだけですむので、誰も現金を企業や家計に置きません。みんなラクラクで嬉しそうです。

ここで、野心あふれるあるオーナーが牛丼のお店を増やしたいので、「お金を借りたい」と言い始めました。

「牛野屋」としましょう。牛野屋は新しいお店を開くのに、「300万円かかる」と言い、「300万円を1年間借りたい」と言ってきました。

銀行は、「毎月1%の利子を支払ってくれるならいいよ」、と言ったので、牛野屋は300万円を借り、銀行は牛野屋さんの口座のお金を増やしました。牛野屋は建築業者に300万円で仕事を依頼しました。

建築業者は、仕事をし、牛野屋から受け取った300万円を銀行に預けました。

するとどうでしょう。銀行の手元には1,300万円分の預金があります。あれ、不思議ですね。300万円増えています。牛野屋へ貸し出された300万円がまわりまわって、預金になりました

つまり、貸出を行なったことで、銀行は村の中に回るお金の量を増やしたことになります

牛野屋は新しいお店を開店し、隣町から新しく10人を雇用し、月100万円を売り上げるお店になりました。

牛野屋はビジネスがうまくいっていれば元本はまた来年借りればいいやと利子返済以外は従業員に支払うこととし、従業員には毎月9万7000円ずつ渡すことにしました。つまり、97万円は従業員に、毎月3万円分は利子返済に回すことにしました。

銀行役は月10万円の給与に加えて、月3万円の利子をもらい、消費に回しました。これらの従業員もお金を銀行に全てを預けたため、銀行に新しく100万円が預金され、銀行を回るお金は1,300万円 + 100 万円で、1,400万円になりました。

  • 村では、新しく牛丼屋が100万円を売り上げるようになったので、お店の数は11に増え、「企業」の売上は1,100万円です。
  • 110人が働き、平均給与が月10万円ですので、「家計」がもらうお金も、消費するお金も1,100万円です。
  • 村の中の預金額は1,400万円で、借金額は300万円です。

牛野屋の投資により、企業の売上・家計の収入・消費が100万円増えてますね。さらに、借り入れを行なったことで、その分村の中を回るお金も300万円増えてますね。

これが銀行の役割の一つです。銀行は、世の中に回るお金を増やして投資を促し、経済のパイを大きくします

投資ブーム

牛丼屋の成功を見た他の9人のオーナーも我も我もと同じ「300万円を1年間、利子月1%」の条件で借り入れを行い、新しいお店をオープンしました。新しいお店はそれぞれ従業員を10人雇用し、オーナーは売上100万円のうち、銀行に月3万円支払う以外は従業員に回しました。

銀行役の人は大喜びです。なにせ、1人で月10万円の給与に加えて、3,000万円を貸出した利子の1%である30万円が入ってきて、毎月40万円もらえているからです。しかし、銀行役は湯水のようにお金を使って、毎月全部消費します。

  • 村のお店の数は20に増え、隣町からさらに90人が移動してきて、人口も200人に増えました。企業の売上は2,000万円です。
  • 200人が働き、平均給与は月10万円で変わらず、家計がもらうお金も、消費するお金も2,000万円です(ただし、100人の給与は9万7000円、99人の給与は10万円、1人の給与は40万円です)
  • 村の中の預金額は5,000万円で、借金額は3,000万円です。

銀行がせっせと貸出を行なった結果、貸出金額が企業の売上高よりも大きくなりました。

このことからもわかるように、銀行は預金額以上の貸出を行うことができます。なぜなら、銀行は何か現物を右から左へ貸し出しているわけではなく、貸出を通じて、お金を創造しているからです

みんなの景気が良い時には、企業の投資意欲が高く、銀行が貸出を増やし、企業は投資をして、雇用が生まれ、消費が増えて、さらに企業の投資意欲が高まって、と良い循環が回っていきます。

村Aは人口が2倍のが200人、売上も2倍になり、GDPは2倍の2,000万円になりました。村長さんは大喜びです。

ブームの綻び

しかし、良い時はずっとは続きません。突然、村に疫病が蔓延、村長は村の住人に1ヶ月間の外出禁止令を出しました。

ここで大変なのは、ビジネスをしているオーナー達です。村にある10の事業のうち、5つは必要不可欠な事業(クリニック、スーパー、薬局など)なのに対して、残りの5つの事業は必要不可欠でない事業(飲食など)と見なされ、営業できなくなってしまいました。

  • 事業が継続できないオーナーはパニックです。売上が上がらなければ、従業員への給料も支払えませんし、銀行への利子も払えません。
  • 従業員もパニックです。給料が入ってこなければ、生活ができません。
  • 銀行もパニックです。融資をした企業が潰れてしまえば、お金を回収できません。

このような事態になった時に、村としてはどうしたら良いでしょうか? 企業、家計、銀行だけでは解決できません。ここで、「政府」の役割が重要になります。

政府のストーリーは、こちらです。

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