メガバンク株(三菱UFJ、三井住友、みずほ)比較 – より魅力的な株はどれか

3つのメガバンクグループ(三菱UFJ、三井住友、みずほ)は高い配当とその知名度から、個人投資家に人気の株です。しかし、この3つのグループの違いを理解されて、株式を購入されていますでしょうか?

3つの株の中で、実は1つは購入をオススメできず、他2つの株の方がより魅力的です。今回の記事ではメガバンクの事業、財務を比較することで、その違いについて説明していきます。

この記事を読むとわかること

  • メガバンク3グループはどれも高配当かつ株価の指標上は割安という点で共通しているが、事業内容、海外比率で異なる
  • ●●●は利益率の低さ、成長領域である海外比率の低さ、国内での成長領域であるクレジットカード・消費者金融ビジネスが傘下にないことから、他2グループと比べて、投資対象としての魅力度は低い
  • ●●●は自社株買い、累進配当政策、と株主への利益還元に最も積極的であり、高配当株として魅力的
  • ●●●はインドネシアのバンクダナモンの減損で2,000億円の赤字を計上する予定で、通期目標達成は難しい。ただし、減損はビジネスに影響はないため、株価が調整されたら買い時になる可能性がある

2019年上期の業績比較

「3大メガバンク」と言われますが、実は規模でかなりの差があります。

項目 三菱UFJ 三井住友 みずほ
連結粗利益(億円) 19,733 13,832 10,307
経費(億円) 13,420 8,587 6,705
連結業務純益(億円) 6,313 5,546 3,488
経費率 68.0% 62.1% 65.1%
親会社株主純利益(億円) 6,099 4,372 2,876

粗利益、純利益の額で並べると、三菱UFJ、三井住友、みずほの順となり、実は三菱東京UFJの粗利益、純利益はみずほの2倍近いです。

経費率は三井住友銀行が最も低く62.1%で、みずほは65.1%、三菱UFJは68%で、三菱UFJが最も高くなっています(=利益率が低い)

利益率だけを見ると、「三井住友フィナンシャルグループは他2行に比べて、事業のポートフォリオが良い、または利益率改善のための改革が進んでいる」と言えます。

項目 三菱UFJ 三井住友 みずほ
上期親会社株主純利益(億円) 6,099 4,372 2,876
通期純利益目標(億円) 9,000 7,000 4,700
通期進捗率 68% 62% 61%

上期の進捗率では三菱UFJが最も高くなっており、みずほが最も低くなっています。三菱UFJ、三井住友、みずほ、3グループ全てで市場部門が想定よりも高い利益を出したため、進捗率は50%を大きく上回っています。

ただし、後述するように三菱UFJは2,000億円の減損を次の四半期決算で発表予定ですので、それを考慮すると実質の達成率は約45%と半分未満です。

メガバンクの事業比較

メガバンクは銀行業以外にも信託銀行、証券、アセットマネジメントなどのビジネスも保有しています。

  三菱UFJ 三井住友 みずほ
銀行
信託銀行
証券
クレジットカード  
消費者金融  
アセットマネジメント
研究所

大きな違いは三菱UFJ、三井住友はクレジットカード(UFJニコス、三井住友カード)と消費者金融(アコム、プロミス)のビジネスを持つのに対して、みずほは保有していない点です。

これが、リテール事業の売上と収益率に差を生んでいます。

リテール事業本部

リテールはいわゆる貸出や証券販売などの部署です。店舗やATMに加え、多数の人を雇用しているために、固定費が重いビジネスになっています。

項目 三菱UFJ 三井住友 みずほ
業務粗利益 (億円) 7,319 6,142 3,223
経費 (億円) 5,940 5,039 3,280
業務純益 (億円) 1,379 1,112 8
経費率 81% 82% 102%

※ 数字は以下の事業部より:三菱UFJ = 法人・リテール事業本部、三井住友 = リテール事業部門、みずほ=リテール・事業法人

三菱UFJ、三井住友はどちらとも売上がみずほの2倍近くあり、20%近い利益が出ています。

国内のリテール事業は、利ざやの縮小により、銀行のビジネスだけでは儲けられない状態となっています。

三菱UFJと三井住友の2グループとみずほで差がある大きな理由の一つは、三菱UFJ、三井住友は利益率の高いクレジットカード、消費者金融のビジネスを保有しているのに対して、みずほは保有していないからです。

  三菱UFJ 三井住友 みずほ
決済ビジネス(クレジットカード) 1,575 2,099 0
消費者金融 1,475 1,540 0
合計 3,050 3,639 0

もう一つの理由は店舗やATMの合理化の進み方が、みずほは他2社に比べて遅れているためです。

一例を挙げれば、三菱UFJと三井住友は相互でATMを利用できるような取り組みを行なってATM数の削減を行う予定ですが、みずほはまだパートナーを見つけられていません。

みずほは他企業との提携により上位2グループに追いつこうとしていますが、リテール事業では幅広い金融事業をグループ内に子会社として取り込み、「ユニバーサルバンク」化ができている三菱UFJと三井住友の方が一歩先を行っています。

ホールセール(国内法人向け)

コーポレート 三菱UFJ 三井住友 みずほ
業務粗利益(億円) 2,780 3,114 2,219
経費(億円) 1,627 1,396 1,043
業務純益(億円) 1,153 1,960 1,185
利益率 41% 63% 53%

※ 数字は以下の事業部より:三菱UFJ = コーポレートバンキング事業本部、三井住友 = ホールセール事業部門、みずほ=大企業・金融・公益法人

事業部により含まれている顧客とビジネスが異なるために単純比較はできませんが、似た事業部を比較してみると、ここでも三井住友の利益率の高さが光ります。

市場部門

市場部門はセールス・トレーディングなどを扱う部門です。こちらも単純比較はできませんが参考までに。

項目 三菱UFJ 三井住友 みずほ
業務粗利益(億円) 3,519 2,409 2,315
経費(億円) 1,383 287 1,034
業務純益(億円) 2,136 2,279 1,269
利益率 61% 95% 55%
市場部門利益の全体に占める割合 35% 52% 44%

※ 数字は以下の事業部より:三菱UFJ = 市場事業本部、三井住友 = 市場事業部門、みずほ=グローバルマーケッツ

あまりに利益率が異なることから、高い確率で三菱UFJ、三井住友、みずほの事業部に含まれている事業は、同じ「市場事業」であっても異なると想定されます。

ただし、絶対値をみると、3グループとも利益率は50%を超えています。また、市場部門利益の全体に占める割合は3グループとも1/3を超えており、三井住友にいたっては50%を超えています。

市場部門の利益、特にセールス・トレーディングはその性質上、変動しやすいです。2019年前半は市場が良い方向にいき、メガバンク3グループにとって好ましい結果になった、と言えます。

国際事業

項目 三菱UFJ 三井住友 みずほ
業務粗利益(億円) 5,812 3,298 2,080
経費(億円) 4,071 1,770 1,207
業務純益(億円) 1,740 1,789 931
利益率 30% 54% 45%

※ 数字は以下の事業部より:三菱UFJ = グローバルコマーシャルバンク・グローバルCIB、三井住友 = 国際事業部門、みずほ=グローバルコーポレート

海外事業では三菱UFJが最も売上粗利益が多く、みずほの約3倍です。

面白いのは純利益で見ると、三井住友の粗利益は三菱UFJの55%程度なのに関わらず、利益率の違いから純利益では三菱UFJよりも高い点です。

全ての事業を通じて、三井住友グループは利益率の高さが際立ちます。

項目 三菱UFJ 三井住友 みずほ
上期粗利益 (億円) 19,733 13,832 10,307
内海外部門(億円) 5,812 3,298 2,080
海外部門粗利割合 29% 24% 20%

粗利益ベースで見ると、三菱UFJは粗利益の29%が海外で、最も国際化が進んでいます。三井住友は次で、24%。みずほは三番手で20%です。

三菱UFJ-バンクダナモンの減損

三菱UFJは2019年12月30日にインドネシアのバンクダナモンの減損で2,034億円の赤字を計上する予定です。これにより、次の四半期での利益は大幅に減少すると見込まれています。

この2,000億円の減損により、三菱UFJの通期目標の9,000億円の純利益達成は厳しくなると予想されます(含み益のある株式を大量に売って、無理やり利益を計上する可能性もありますが)

ただし、バンクダナモン自体のビジネスは公開されている範囲では順調に推移しているように見えますし、そもそも株価が5月に下落した時点でいつ減損発表があるか、の時期の問題だけでしたので、株価にはすでにこの情報は織り込まれていると予想されます。

減損はキャッシュフローには影響が出ないことは忘れないようにしましょう。

事業比較まとめ

  • 三井住友フィナンシャルグループはどの事業でおいても3グループの中で最も経費率が低く、魅力的な利益構造をもつ
  • 最も国際化が進んでいるのは三菱UFJフィナンシャルグループで、粗利の約30%が海外から。時点が三井住友で粗利の約25%が海外から。みずほは最も国内ビジネスの割合が大きく、海外割合は20%。
  • 国内においては三菱UFJ、三井住友は利益率の高い決済ビジネス(クレジットカード)、消費者金融ビジネスを傘下に持つためにリテールの経費率がある程度抑えられているが、みずほはこれらのビジネスを持たないためリテールは赤字。
  • 三菱UFJはバンクダナモンの減損2,000億円により、通期での純利益達成目標は難しくなる見込み

株主還元の施策

自社株買い

自社株買いは発行済の株式数を減らすため、一株あたりの利益 (Return on Equity)が増え、株主への利益となります。

ROE (Return on Equity – 一株あたり利益)は投資家が、対象となる企業が、資本をどの程度有効に利用しているかを見るときに注目する指標であり、3つのメガバンク共に中期目標を立てています。

三菱東京UFJは6年連続となる自社株買いを行う予定で、三井住友は2年連続となる自社株買いを行う予定の一方、みずほは自社株買いを行なっていません。

また、規模においては三井住友が1,000億円で発行済株式の2.3%を買い取る一方で、三菱UFJは2019年は規模を縮小し、発行済株式の0.8%程度にとどめています。

  三菱UFJ 三井住友 みずほ
通期業績目標 (億円) 9,000 7,000 4,700
自己株式 (億円) 500 1,000 0
自社株買いの発行済株式に占める割合 0.77% 2.30% 0

配当金

配当は、経営者が「事業に投資を行うよりも株主に利益を分配した方が良い」、と判断した時に行われます(つまり社内に魅力的な投資機会が存在しなくなった時)。一般的に、銀行のような成熟産業では配当性向が高くなります。

3メガバンクともに、配当の利回りは4%を超えており、かなりの高配当です。また、配当性向も30%を超えており、最も高いみずほは40%になります。

  三菱UFJ 三井住友 みずほ
株価 (円) 593 4038 168
配当 (円) 25 180 7.5
配当利回り 4.2% 4.5% 4.5%
通期純利益目標(億円) 9,000 7,000 4,700
配当金額 (億円) 3,240 2,520 1,900
配当性向 36% 36% 40%

配当性向が高いことは、今後の増配の余地がそれだけ小さくなるということで、必ずしも良いことではありません。

特にみずほは過去の金融危機の際に減配して以来、配当水準を据え置いていますので、現在の配当利回りが高くとも、増配の可能性が低いということは意識しておく必要があります。また、目指す配当の水準についても明言していません。

みずほフィナンシャルグループ ホームページより

一方、三菱UFJと三井住友は順調に配当を増加させていっています。両者ともまだ配当性向が36%程度であり、どちらも中期的に(2023年度程度まで)に配当性向40%を目指すと宣言しているため、利益が伸びずとも、今後10%程度の増配の余地があります。

MUFG 「2019年度中間期決算投資家説明会」より
SMBC 「2019年度上期決算 投資家説明会」より

よって、高配当を目的に投資をするならば、三菱UFJまたは三井住友の方が望ましいと言えます。

株式評価指標での比較

メガバンク3行で共通していますが、PER、PBRで割安です。

  三井住友FG 三菱UFJFG みずほFG
株価(円) 4,038 593 168
時価総額(億円) 55,449 81,077 42,736
予想PER 8.0 倍 8.9 倍 9.1 倍
PBR 0.51 倍 0.46 倍 0.48 倍
ROE 6.9 % 5.4% 1.1%
ROA 0.36 % 0.28 % 0.05 %
自己資本比率 5.3 % 5.2 % 4.3 %

時価総額では三菱UFJがトップですが、ROEで言えば三井住友FGが最も良く、三井住友FGの配当利回りも最も高いです。

株主への利益還元まとめ

  三菱UFJ 三井住友 みずほ
通期純利益目標(億円) 9,000 7,000 4,700
自社株買い+配当(億円) 3,740 3,520 1,900
総還元率 42% 50% 40%
  • 自社株買いと配当を合わせ、三井住友の総還元率は三井住友が50%となり、最も株主への利益還元に積極的
  • 三井住友は配当利回りが4.5%と最も高く、かつ配当性向の上昇予定から、今後も10%程度の増配の余地があり、高配当として魅力的
  • みずほは現状の配当性向がすでに他2社の目標である40%に達していることに加え、他2社と比べると、自社株買いを行なっていない点、配当性向の目標値を公言していない点、で相対的に株主への還元にあまり積極的ではない

まとめ

  • メガバンク3グループはどの株も高配当かつ株価の指標上は割安という点で共通しているが、事業内容、海外比率で大きく異なる
  • 「みずほ」は経費率の高さ、成長領域である海外比率の低さ、国内での成長領域であるクレジットカード・消費者金融ビジネスが傘下にないことから、他2グループと比べて、投資対象としての魅力度は低い
  • 「三井住友フィナンシャルグループ」は自社株買い、累進配当政策、と株主への利益還元に最も積極的であり、高配当株として魅力的
  • 「三菱UFJ」はインドネシアのバンクダナモンの減損で2,000億円の赤字を計上する予定。ただし、減損はビジネスに影響はないため、株価が調整されたら買い時になる可能性

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三井住友フィナンシャル(8316):累進配当・高配当銘柄の株価分析

累進配当銘柄であり、かつ配当利回りが4%を超えていることから、高配当の株を探している方に人気の三井住友フィナンシャルグループ (8316)。一株あたりの利益 (PER)や純資産(PBR)で見ると、株価は割安です。

どうしてこのメガバンクの株は割安で放置されているのでしょうか。また、購入する価値があるのでしょうか。事業、財務の観点から、分析していきます。

この記事を読んでわかること

  • 粗利益ベースで、三井住友フィナンシャルグループは50%を占める「成長領域」と、残りの50%の成熟した市場の中で停滞しているビジネス」の組み合わせ
  • 安定したキャッシュ創出能力と高配当が魅力。増配、自社株買いの余地もあり、経営陣が株主還元に積極的な点も評価できる。
  • 国内の銀行・証券ビジネスの成長の余地が限られていること、IT企業に事業基盤を侵食される可能性があること、「中小企業金融円滑化法」の後遺症で不良債権が景気後退化で増えることが予想されること、がリスク

三井住友フィナンシャルグループの中期経営方針

三井住友FG「2019年上期実績の概要」より

三井住友FGの中期経営方針 (2017-2019)は、Discipline、Focus、Integration、の3本柱です。

ざっくり言えば、中期計画のキーワードは下記の3つです。

  • ユニバーサルバンク
  • 海外展開
  • リテール事業の合理化

ユニバーサルバンク

ユニバーサルバンク、とは銀行業務のみならず証券、信託、カードローンなど、金融にまつわる業務をまとめて提供できるような銀行をさします。

銀行業だけでは差別化が難しいので、「ワンストップ」でお客さんに必要な機能を提供できるようになることで、他の銀行と差別化しようという戦略です。

三井住友FGは傘下にこれらの銀行業務以外のビジネスを保有しており、粗利益ベースではすでに40%以上がこれらの銀行以外からのビジネスです。特に資金需要が限られており、競争も激しい国内の銀行業務での売上は低迷しているため、銀行以外のビジネスにも注力していく、という方向です。

海外展開

資金の貸出需要は経済成長率が高い国・地域の方が高くなるため、銀行業は新興国での成長余地が大きいです。

三井住友FGはアジア地域に注力しており、特にインドネシアには銀行へ出資を行うなど、積極的にビジネスを拡大しようとしています。

三井住友FGの海外ビジネス比率は粗利ベースでは25%です。

リテール事業の合理化

より多くの人々がオンラインでお金を扱い、証券の売買も行うようになりました。

それにより、銀行や証券の「全国津々浦々に支店を持ち、人を配置し、サービスを行うこと」は強みというよりも、むしろコスト高となり、弱みになってきました(メガバンク、地銀のみならず、野村證券をはじめ、店舗型金融機関が抱える悩みです)

三井住友FGは店舗の統廃合に加え、付加価値の低い定型的な業務をRPA (Robotic Process Automation)を用いることで効率化し、そこから生まれた余剰な時間をより営業など付加価値のある業務に割り振ることで新規採用の抑制するなど、全体的にコストを下げようとしています。

三井住友FGの事業概観

三井住友FGは事業をリテール、ホールセール、国際、市場、の4つに分けています。

リテール事業

リテールは以下の5つの消費者向けビジネスの集合体です

  • 預金・貸出を行う三井住友銀行
  • 証券を販売するSMBC日興証券
  • 信託業務を行う(相続相談など)SMBC信託銀行
  • 消費者金融のSMBCコンシューマーファイナンス(プロミス・モビット)
  • クレジットカード・カードローンを販売する三井住友カード

預貸金収益(住宅ローンなど)と資産運用ビジネス(証券の販売やアセットマネジメントビジネスなど)が前年比でマイナス成長な一方、クレジットカードとコンシューマーファイナンス(消費者金融)のビジネスは順調に伸びています。

三井住友銀行・SMBC日興証券・SMBC信託

三井住友FGの消費者向けの銀行、証券、信託は市場全体の伸びが悪い上に競争が激しく、売上は伸び悩んでいます。

銀行の貸出のビジネスの売上は単純化すれば

(貸出の金利 − 仕入れの金利)x 貸出の金額 – 回収不可能な額(不良債権)

です。仕入れの金利は預金者の金利を考えるとわかりやすいです。

つまり、100万円預けてくれる人に年利0.1%の金利を支払い、そのお金を1万円ずつ、100人の人に、年利2.1%の金利で貸し出しをしたとします。もし皆が返却してくれれば、

(2.1% − 0.1%) x 100万円 = 2万円

になります。100万円を元手にした利益率は2%ですね。

ただ、ここで1人が元本を返せないようになる(不良債権になる)と、売上は2万円- 1万円 = 1万円、と一気に半分になります。2人返せないと、売上は0になります。

ごの例では、100人中1人が返せないだけで売上が半分になり、2人返せないと0になります。

近年では銀行は競争が激しく、貸出金利と預金者の金利の差(スプレッドと呼ばれます)はどんどん縮小して、大企業向けの国内のスプレッドは1%を切ります。つまり、この例ですと、100人のうち1人でも返せなくなったら、赤字になります。

だから、不良債権を出来るだけ発生させないことが銀行にとっては大事であり、リスクが高い相手には貸せないのです。

三井住友銀行は実際、預金の55%程度しか貸出をしておりません。これは、資金を貸し出せる相手はすでに借りており、追加で貸し出せるお客さんに乏しいということを示唆します(=貸出で売上を伸ばす余地が少ない)

売上が伸び悩む状況で利益を伸ばしていくためには、コストを削る必要があります。

売上 − コスト = 利益

三井住友FGは銀行・証券・信託をまとめて一つの店舗にするグループ共同店舗や、ITを利用して人員をより削減した店舗の導入、三菱東京UFJ銀行とATMの共同利用を行い、ATMの削減を目指しています。

過去3年間で、経費は中期目標を上回る500億円以上が削減される予定です。500億円は2016年度の経費の約2.7%にあたります。

2019年上期の数字を見る限り、経費コントロールは確かに中期経営計画を上回る進捗ですが、ビジネスを増収にするまでは足りていません。

三井住友FGの利益、そして株価を下に引っ張っているのはこの「売上を伸ばす余地が少なく、固定費の重い消費者向けの銀行・証券・信託ビジネス」であり、より迅速な事業の合理化が必要となります。

SMBCコンシューマーファイナンス(プロミス・モビット)

SMBCコンシューマーファイナンスは消費者金融の部門です。三井住友FGの粗利益で10%、純利益で15%を占めます。これがどのようなことを意味するかと言うと、「利益率が高い」、と言うことです。

消費者金融の事業は2010年代前半に業界の貸出金利や過払金が問題となり、貸出金利に上限をつけられた上、業界全体の評判が落ち、5年前まで市場は下落傾向にありました。

5年前に市場は底をうち、現在は市場全体が微増しています。

アコムのホームページより(消費者向貸付残高の推移(貸金業者))

SMBCコンシューマーファイナンスも市場の成長の追い風を受け、順調に成長しています。

消費者金融においては三井住友FGは

  • 市場が伸びていること
  • すでに市場が寡占状態にあり(少数のプレイヤーが横を見ながらビジネスを行なっている)、高い貸出金利を維持できていること
  • プロミス・モビットという顧客認知度の高い2つの強いブランドを持っていること
  • 日本は金融業への規制が厳しく、LINEなどの新しいプレーヤーが個人間の貸出サービスを始めるハードルが高いこと

から、今後も市場の伸びに合わせてビジネスが伸びていくことが期待できます。

三井住友カード(クレジットカード)

三井住友カードは三井住友FGの業務粗利益、業務純利益において共に15%を占めるビジネスです。

特に、クレジットカードのビジネスにおいて、三井住友カードはアクワイアリングで23%のシェアを持つ業界大手であることから、キャッシュレスの市場拡大の恩恵を受けやすいです。

キャッシュレスにはペイペイなどの他業種からの参入もあり競争が激しくなることも予想されますが、クレジットカードほどどこでも使えるようになるまでには、まだかなりの時間がかかると予想されます。

上期も前年同期比+100億円と順調に成長しており、今後の期待が持てるビジネスです。

三井住友FGのビジネスの中で最も成長の早い成長市場の一つであり、シェアの拡大が焦点になります。

ホールセール事業

ホールセール(法人向け)は過去4年、売上も経費も比較的安定しています。

注目すべきは、貸出金利の下げ止まりです。銀行の貸出ビジネスは、日銀のゼロ金利・マイナス金利政策のために貸出金利が下がり続け、貸出ビジネスの縮小と銀行全体の収益率悪化に繋がっていました。

しかし、三井住友FGの貸金収益は2019年上期に10年ぶりに増益に転じています。これが底打ちのサインであるとすれば、今後、金利収益の低下で抑えられていた成長率が多少上向くことを意味するため、良いサインです。

国際事業

国際事業部門はその名の通り、三井住友FGの国外でのビジネスとなります。

国際事業部門の粗利益の割合は約25%で、純利益の割合は約32%となります。

国際業務の方が利益率が高いのは、主に、利益率の低いリテールのビジネスの割合が小さいことと、海外の方がスプレッド(貸出金利と調達金利の差)が大きいことによります。

三井住友FGはインドネシアのBTPN銀行と三井住友銀行を2019年2月に合併させた新会社の株式を保有しており、成長を続けるインドネシアに注力する方針です。

市場事業

市場事業部門は、株式や債権を売り買いすることで利益をあげるトレーディングの部署です。トレーディングは市況に左右されますが、三井住友FGのセールス・トレーディングは2,500億円程度で2016年から安定しています。

特に2019年は好調で、リテール部門での落ち込みをカバーしています。

三井住友フィナンシャルグループ事業分析まとめ

  • リテール部門のうち、銀行・証券・信託は市場の伸びが鈍く、競争も厳しく、三井住友FGの差別化も難しいため、売上が伸び悩み、経費が高止まりしている。経費をどれだけ踏み込んで削減できるかが鍵
  • リテール部門の、消費者金融、クレジットカードは市場が伸びていることに加え、比較的寡占化されており、三井住友FGも業界内で最大手の一角を担っているため、今後も成長が期待できる。この成長分野は粗利益で25%純利益で30%を占める
  • ホールセール部門、市場部門は高い成長はあまり見込めないが、安定している。中小企業向け貸出金利が下げ止まりつつあることがプラス。
  • 国際事業は全体の粗利益で25%、純利益で32%を占める。今後も成長が期待できる領域。
  • つまり、三井住友FGは粗利益ベースで50%を占める成長領域(国際、クレジットカード、消費者金融)と、成熟した市場の中で停滞している残りの50%のビジネスの組み合わせ、と考えられる。
  • 新規のIT企業が技術を元に業界へ参入して、三井住友FGの事業基盤を揺るがす可能性はあるが、日本は規制当局が厳しいため、新しいサービスの普及速度は他先進国に比べて緩やかであると予想される

財務分析

売上・経常利益・当期純利益

三井住友FGの過去5年間の純利益は安定しています。経常利益は1兆1000億円前後、純利益は7,000億円前後で推移しています。

三井住友ファイナンシャルグループ過去5年間の売上・利益推移

2020年3月は減益で、当期純利益が7,000億円の見込みです。これは事業分析から導かれた、半分が成長領域で、半分が停滞・低迷しているビジネスである、という結論と整合的です。

キャッシュフロー

銀行業はキャッシュが預金者の預け入れという形で入ってくるため、キャッシュフロー表がかなり独特です。

三井住友ファイナンシャルグループ過去5年間のキャッシュフロー

営業キャッシュフローは預け入れと貸出金のズレが大きいため、かなり乱高下しています。投資キャッシュフローも乱高下しており、これは有価証券の売却・償還と購入を行なっていることによります。

財務キャッシュフローは赤字で、これは主に配当、自己株式取得と非支配株主への払い戻しのためです。配当と自己株式取得による株主への還元を強化し始めた過去数年は、赤字額が大きくなってきています。

フリーキャッシュフローは過去2年は6兆円前後で推移していますが、預金が増えて貸出をしないだけでフリーキャッシュフローは増えるので、事業会社の場合と違い、フリーキャッシュフローが増えていても良いこととは限らないので注意が必要です。

配当推移

三井住友FGは累進配当方針(配当を減配せず、増加させていくこと)をとっており、配当はきれいな右肩上がりになっています。

三井住友ファイナンシャルグループ配当推移

2020年3月期の配当は180円が予定されており、12月29日時点での株価4,065円からすると、配当は4.4%となります。これは日本の上場企業の中ではかなり高い水準になります。

予想配当利回りと市場の中での位置付け

三井住友FGの発行済株式数が14億株のため、180円の配当のためには

180円 x 14億株 = 2,520億円

が必要となります。2020年3月期の当期純利益が会社予定の7,000億円である場合の配当性向は

2,520億円 ÷ 7,000億円 = 36%

となります。三井住友FGが中期戦略通りに配当性向40%にするとすると、2,800億円分の配当となるため (7000億円 x 40%)、一株あたりになおすと200円となります。

つまり、三井住友FGが予定通りの配当政策をとるとすると、一株あたり200円になる(20円の増額)可能性があります。

ただし、ROE(Return on Equity)向上のためには自社株買いの方が効果的なため、三井住友FGは後述するような自社株買いの方を優先させる可能性があります。

自社株買い

三井住友FGは自社株買いを行なっており、2019年度3月期は700億円行いました。2020年3月期は1,000億円の自社株買いを行う予定です。

1,000億円の自社株買いは発行済株式数の2.3%にあたり、全株償却予定のため、その分だけ一株あたりの利益が増えることになります。

配当での2,500億円と自社株買いの1,000億円の合わせて3,500億円を株主に還元する方針(純利益の50%)は、自社内で成長の余地が限られる成熟企業としては株主の方を向いた経営であり、評価できます。

政策保有株の売却

三井住友FGは政策保有株(いわゆる株式の持ち合いで保有している株)の売却を行なっており、これが毎年1,000億円以上となっています。

三井住友FGは2019年時点でも1.4兆円の政策保有株式を保有しており、2020年を目処に株式のCET1に対する比率を14%にする、と言っています。

これを具体的な数字に直します。三井住友FGのCET1比率の目標が10%でリスクアセットが80兆円であることから、目標としている株式保有額は1.12兆円になります。

8兆円 x 14% = 1.12 兆円

現状の保有額が1.4兆円であることから、リスクアセットを増やさない前提では、ざっくりと差分の2,800億円を2019年、2020年で売却することが目標だよ、と言っていることになります。

もしこの売却して得た資金を自社株買いに回すのであれば、税金を考慮しても、4%以上の発行済株式の自社株買いになります。

財務分析のまとめ

  • 三井住友FGの利益は過去5年で比較的安定している。良く言えば安定して利益を生み出している企業であり、悪く言えば、成長のない成熟企業
  • 配当利回りは4.4%と現状でも高い上に、配当性向を中期戦略目標どおりの40%まで引き上げるのであれば、さらに10%の増加の可能性がある
  • 自社株買いを2年連続で行い、ROEを上げようとしており、株主重視の姿勢が評価できる
  • 政策保有株式の売却を進めており、2020年末までに追加で2,000億円以上が売却される可能性がある。この資金が自社株買いに使われれば株主還元となる

三井住友フィナンシャルグループを買う理由

安定した高配当と自社株買い

3大メガバンクの一つであり、銀行以外のユニバーサルバンク化と海外展開も進んでいる企業であるため、一定程度の成長の可能性があります。

また、累進配当政策を採用しており、減配の可能性は低いです。財務分析の項で述べたように増配の余地もあります。また、政策保有株式の売却によりキャッシュも生めることもあり、2020年度に自社株買いが継続される可能性も高いです。

高配当狙いであれば選択肢の一つです。

各指標(PER、PBR)で割安

メガバンク3行で共通していますが、PER、PBRで割安です。

  三井住友FG 三菱UFJFG みずほFG
株価(円) 4,038 593 168
時価総額(億円) 55,449 81,077 42,736
予想PER 8.0 倍 - 倍 9.1 倍
PBR 0.51 倍 0.46 倍 0.48 倍
予想配当利回り 4.5 % 4.2 % 4.5 %
ROE 6.9 % 5.4% 1.1%
ROA 0.36 % 0.28 % 0.05 %
自己資本比率 5.3 % 5.2 % 4.3 %

時価総額では三菱UFJがトップですが、ROEで言えば三井住友FGが最も良く、三井住友FGの配当利回りも最も高いです。

「売上を海外とクレジット・消費者金融ビジネスに注力することで伸ばし、採算の悪い消費者向け銀行・証券・信託は合理化を進めていくことで利益を伸ばしていく」、という方向性もクリアであるため、バリュー株として購入する選択肢はあるかと思います。

三井住友フィナンシャルグループを買わない理由

成長の余地が限られている

三井住友FGはいわゆる急成長している市場でビジネスをしている銘柄ではありませんし、海外比率も粗利ベースで25%と、海外展開もグローバル企業までの道半ばです。

そのため、三井住友FGの収益は日本全体の経済成長に大きく影響されますし、日本経済は人口減少の影響による潜在成長率の低下により、低成長が予想されています。

3年で収益が2倍になるような株ではないため、キャピタルゲイン狙いであれば他の株の方が良い選択肢だと思います。

将来的にビジネスの基盤をIT企業に奪われるリスク

いわゆるフィンテックと呼ばれるIT企業による金融業界への参入により、三井住友FGの抱える事業との競争が激しくなることが予想されます。

例えば、信用スコアを用いた個人への貸出はアリババなどが行なっていますが、これが日本へ来ると、日本の消費者金融のビジネスにとって脅威になる可能性があります。

ただし、金融は規制業種であり、フィンテックのプレーヤーは金融庁の認可を得た上でビジネスを行う必要があり、普及の速度が海外に比べて緩やかになる可能性はあります。

景気後退期に不良債権が増加するリスク

2019年3月に、10年続いた悪名高い「中小企業金融円滑化法」(モラトリアム法)が終了しました。この法案はざっくり言えば、通常であれば貸し続けることがためらわれる中小企業にさえ銀行に貸出の継続を求める、いわゆる「ゾンビ企業を生かし続けるための法律」です。

10年続いたこの法案のため、日本の中小企業には正常貸出先ではないゾンビ企業が倒産を免れて多数存在していると考えられ、これらの企業の倒産・清算件数が増えれば、不良債権の増加となって銀行の収益に跳ね返ってきます。

このリスクは景気後退期に特に顕在化しやすいため、消費税増税の影響が出てくる2020年に不良債権の増加により、各地銀・都銀の収益が減益となる可能性があります。

まとめ

  • 粗利益ベースで、三井住友フィナンシャルグループは50%を占める「成長領域」と、残りの50%の成熟した市場の中で停滞しているビジネス」の組み合わせ
  • 安定したキャッシュ創出能力と高配当が魅力。増配、自社株買いの余地もあり、経営陣が株主還元に積極的な点も評価できる。
  • 国内の銀行・証券ビジネスの成長の余地が限られていること、IT企業に事業基盤を侵食される可能性があること、「中小企業金融円滑化法」の後遺症で不良債権が景気後退化で増えることが予想されること、がリスク

銀行の比較については、こちらの記事もどうぞ。

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日本株のビジネス・株式の分析の一覧はこちらです。

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三菱商事(8058) – 高配当・累進配当銘柄に潜む事業リスク

高い配当で個人投資家からも人気の三菱商事。10つの異なる事業を運営していることもあり、きちんと個別事業の分析された方は少ないのではないかと思います。

今回は三菱商事の事業分析を行なっていきます。

この記事を読むとわかること

  • 三菱商事の中期経営計画の数字(2021年に9000億円)は資源全面高の神風が吹かない限り、ほぼ達成不可能
  • 三菱商事は下落リスクの高い市況系と低成長の事業系の組み合わせ
  • 配当利回り、PBRの観点からは割安であり、自己株式を積極的に購入する姿勢も株主重視で評価できる
  • 累進配当銘柄ではあるが、すでに目標配当性向に達している上、事業リスクが高い。安定した高配当を狙う人は他の銘柄も見るか、三菱商事の比重を一定程度に抑えた方が良い。

三菱商事の中期経営方針

三菱商事は2018年に中期経営方針を発表しました。一言で言うと、「事業投資を行い、価値を上げ、時には売却することで利益を得ていく」です。

三菱商事中期経営戦略2021

大きな時代の流れでいくと、下記のように商社は機能を徐々に変えていきました。

  1. 貿易仲介・金融機能を提供していたトレーディングのビジネス
  2. マイノリティ投資(50%未満の投資)をして投資からのリターンを狙う事業投資のビジネス
  3. マジョリティ投資(50%以上の投資)をして経営権を握り、事業の経営を行い価値を上げ、事業運営・事業売却をして利益をあげるビジネス

今後は3の事業経営に注力する、というメッセージです。

三菱商事中期経営戦略2021

2021年度の目標としては、9000億円の利益、配当性向35% (配当一株あたり約200円)を目指す、とのことです。

この目標が達成できる可能性について、この記事では分析していきます。

三菱商事の事業概観

三菱商事のビジネスは大きく分けて、市況系と非市況系(事業系)に分かれます。

市況系は資源の価格が上がれば価値が上がり、下がれば下がる、という市況に左右されやすいビジネスです。一方、事業系は比較的資源の価格に左右されにくいビジネスです。

2019年11月 三菱商事 第二四半期決算発表より

2019年の見通しでは、事業系で4000億円、市況系で2000億円の予定でしたが、11月時点で、事業系から350億円、市況系から550億円引き下げ、2019年は800億円減の5,200億円の見込みです。

市況系(天然ガス、金属資源、産業インフラ)

市況系ビジネスの巡行利益(一時的な変動要素を除いた利益)を見ていきます。

事業部 事業内容 2018年第2四半期
巡行利益
2019年第2四半期
巡行利益
前年同期比
金属資源 石炭、銅 1,289 886 ▲403
天然ガス LNG事業 453 409 ▲44
産業インフラ プラント 145 142 ▲3
合計   1,887 1,437 ▲450

金属資源、天然ガス、産業インフラ、の3つの事業部が三菱商事を支える資源ビジネスです。

金属資源ビジネス

市況系の中では、金属資源が最も大きな利益貢献をしています。この中でもオーストラリアの原料炭ビジネスは2018年に1,000億円、2019年度も760億円とほぼ半分以上の利益を出しています。

金属資源ビジネスの減益要因の約80%はこのオーストラリアの石炭ビジネスの減益です。そして、金属資源ビジネスは市況系の60%を占めます。

言い換えれば、三菱商事の資源ビジネスの半分を支えているのはオーストラリアの石炭ビジネスであり、このビジネスがうまくいけば利益があがりますし、ここがこけるとかなり厳しくなります。

しかしながら、石炭はCO2排出量が多く、近年の環境意識の高まりから、忌避されるエネルギー源になってきました。2019年に入り、石炭価格はトンあたりUS$200超えから$150未満まで落ち込んできています。

環境省「燃料別二酸化炭素排出の例」より

金融機関が新規の石炭をエネルギー源にした火力発電所の建設への融資をしない例など、世界中で石炭に対して逆風が吹いており、今後も石炭価格が急激に上がる可能性は高くないでしょう。

また、チリの銅鉱山についても銅の価格が低迷しており、足を引っ張ってきています。銅は世界経済のバロメーターと呼ばれるように、世界経済が減速すると価格が伸びにくくなります。

世界経済の牽引役であった中国の景気が減速していることから、こちらも今後の価格の急激な伸びが期待しにくい状態です。

一方、2022年にはペルーの銅山が生産を始める予定で、予定通りに生産が進めば、銅の生産量は50%増となります(現状の銅の価格では利益貢献としてはおそらくそこまでではないでしょうが。。)

天然ガス

LNGの価格にも影響を与える石油価格は、OPECの協調減産のおかげでもあり、$60/バレルと比較的高値で安定しています。

Dubai 石油価格 Index Mundiより

しかしながら、米国のシェールオイルの生産が増加するにつれて上値が抑えられる可能性が高く、過去の資源バブルの時のように1バレル$100を超える未来が想像しにくい状態です。

一方、建設中のキャメロン・タングーが来年、再来年と本格的に生産を始めれば、生産能力が1.5倍となり、収益は大きく伸びると考えられます。

また、LNGカナダも2020年代中頃の生産開始の見通しであり、天然ガスビジネスは、価格が変わらなければ、伸びていく見通しです。

産業インフラ

産業インフラ(プラント)のビジネスは、レンタルのニッケンと千代田化工建設の2本柱。レンタルのニッケンの収益は過去5年で減少傾向にあり、主に千代田化工建設がキャメロン(アメリカ)とタングー(インドネシア)を計画通りに建設できるか、にかかっています。

そもそも千代田化工建設はこれらの工事の遅れから赤字となり、三菱商事の支援を仰ぐことになったため、工事がきちんと完了し、生産が始まるまで、まだリスクが残っていると言えます。

三菱商事の市況ビジネスについてまとめ

  • オーストラリアの石炭の権益が三菱商事の市況系ビジネスの鍵で、約50%のインパクト
  • 石炭価格は下落傾向にあり、今後もESG投資の流れから下落する可能性が高く、三菱商事の市況ビジネスにとっては頭の痛い問題
  • 次の柱のチリの銅資源は、世界経済の減速により銅の価格が低迷しており、収益の柱になれていない。2022年のペルーの銅山の生産開始がアップサイド。
  • 天然ガスは市況系の約30%を占める。石油価格が1バレル$60と安定しているために比較的安定している。石油価格が今後急上昇する可能性は高くないが、キャメロン・タングーといった現在建設中の施設が稼働することで、生産能力は2020年代前半に50%増加する。
  • 産業インフラの市況系に占める割合は10%程度であり、上昇余地も大きくない。むしろ、千代田化工建設がキャメロンとタングーを計画通り建設できず、追加で資金が必要になるリスクを抱える
  • 三菱商事に投資するのであれば、石炭価格、銅価格、石油価格、千代田化工建設のLNGプロジェクト進捗、に要注意

事業系(その他)

事業系は7つの事業部があります。下記の表を見ていただければわかるように、電力ソリューションをのぞく6つの事業部の巡行利益が、マイナス成長となっています。

事業部 事業例 2018年第2四半期 2019年第2四半期 前年同期比
自動車・モビリティ いすず・三菱自動車など 433 284 (149)
石油・化学 サウディ石油など 229 110 (119)
食品産業   223 142 (81)
複合都市グループ   182 157 (25)
コンシューマー産業 ローソンなど 181 152 (29)
総合素材 メタルワンなど 178 146 (32)
電力ソリューション   101 113
12
合計   1,527 1,104 (423)

三菱商事が発表した、修正後の2019年の見通しです。

事業部 事業例 2018 2019予定 差分
自動車・モビリティ いすず・三菱自動車など 972 690 (282)
石油・化学 サウディ石油など 358 (70) (428)
食品産業   99 530 431
複合都市グループ   324 340 16
コンシューマー産業 ローソンなど 315 250 (65)
総合素材 メタルワンなど 353 330 (23)
電力ソリューション   331 380 49
合計   2,752 2,450 (302)

石油・化学はシンガポールのデリバティブ取引による損失が331億円あるため、大きなマイナスになっています。しかし、それがなくとも前期比マイナス成長です。

食品産業が大きなプラスになっているのは、事業売却による利益を見込んでいるためであり、持続可能な利益ではありません。

つまり、三菱商事の事業系は実力値で言えば、電力ソリューションを除いた6事業部は、前年度比でマイナス成長の事業群です

三菱商事が目指すような2021年に利益9000億円の姿(事業系で70%とすると6,300億円)を達成するためには、利益を30%以上で伸ばして行かなければならないところを、2019年はむしろ10%以上のマイナス成長です。

加えて、コンシューマー産業のローソンや自動車・モビリティのいすず・三菱自動車のビジネスは市場構造的な問題を抱えており、利益を伸ばしていきにくい状態になっています。

電力ソリューションと複合都市の事業部の伸びで、低成長・マイナス成長している他の事業系を補って、事業系全体を成長させるには馬力が足りないように見えます。

前年度10%下落したビジネスを翌年40%成長できる可能性はどのくらいあるでしょうか? 中期計画の目標値はすでに絵に描いた餅になってしまっているように見えます。

経常利益・キャッシュフロー・配当の推移

以上の事業分析を踏まえて、財務を見てみます。

三菱商事の過去5年間の経常利益と当期純利益の推移

経常利益は2016年を底に改善傾向にあります(2016年はチリ銅山などの減損のために赤字へ転落)。2020年3月期の純利益は5200億円と前年度の5900億円から700億円減少する見込みです。

この数字は、三菱商事は低成長な事業系の集合体と市況次第の市況系の組み合わせ、ということを裏付けています。

三菱商事過去5年のキャッシュフロー

過去5年の営業キャッシュフローは6,000-8,000億円で、2015年より減少傾向です。営業キャッシュフローから投資キャッシュフローをひいた、フリーキャッシュフローは4,000億円程度で過去3年は推移しています。

三菱商事過去7年の配当推移

配当は2020年3月期は年間132円を予定しています。発行済株式数が15億9000万株のため、132円の配当のためには

132円 x 15億9000万 = 2,100億円

が必要となります。

5,200億円の利益予想が達成された場合においても、配当性向は

2,100億円 ÷ 5,200億円 = 40.3%

と40%を超えます。つまり、2020年3月時点で、すでに目安とする配当性向35%を超えています

4000億円のフリーキャッシュフローベースでは、50%を超えます。

三菱商事を購入する理由

安定した高配当

三菱商事は2019年に増配を発表し、125円から132円へ増配しました。2019年12月26日現在の株価は2,922円のため、配当の利回りは4.5%となります。

4.5%という水準は日本株のこのサイズの上場企業の中ではかなり高く、倒産リスクがほぼない銘柄としてはかなり魅力的です。

増配の可能性は今後の利益水準次第ですが、すでに目標としている35%の配当性向を超える40%の配当性向となっていることから、市況系が改善しない限り、今後の増配の可能性はやや低いように見えます。

しかし、三菱商事は累進配当政策(配当を増やしていくという方針)を宣言しているため、少なくとも中期計画終了の2021年までの減配リスクは低いと考えられます。

自己株式購入の継続

三菱商事は2019年3月に3,000億円、1億2000万株を上限とした自己株式取得の発表をしました。これは発行済株式の7.5%にあたります。自己株式はストックオプション用の500万株を除いたものが償却予定です。

自己株式の購入は2つの点で投資家にとっては魅力的です:

  • 単純に、一株あたり利益が増え、既存の株主にとっては利益となる(分子の利益は同じでも、分母の発行済株式数が減れば、「一株あたりの」利益が増えます)
  • 経営陣が投資家の方を向いているというシグナルになる

PBR(一株あたり純資産)で見ると割安

PBRは1倍を割っており、一株あたり3,500円程度です。三菱商事が保有している資産を売却して、自己株式購入に当てて投資家へ還元していけば、株価は上昇する可能性が高いです。

配当、自己株式購入、PBRで割安、という理由から、ある程度、価格の下支えがあると考えられます。

三菱商事を購入しない理由

事業のリスクが高い

これまで見てきたように、三菱商事は低成長の規模の大きな事業系と、市況次第で利益が大きく変動する市況系の組み合わせです。

市況系は石炭、銅、石油(LNG)の価格に大きく左右される上、ESG投資の流れで石炭を主とした火力発電所の建設の抑制もあり、特に石炭の価格は上がりにくいと予想されます。

また、千代田化工建設のキャメロン・タングーの建設が完了するかもリスクであり、さらなる遅延は数百億円の損失に繋がります。

高配当株であれば他により良い選択肢がある

高配当株を求めている人であれば、事業が安定している企業の株を購入する方が望ましいですが、三菱商事はこれまで見てきたように市況次第なところがあり、読みにくい銘柄です。

高配当により価格の下落リスクが軽減されるとはいえ、「石炭価格の大幅下落で大幅減損」、「キャメロンプロジェクトのさらなる遅延からの減損」、などの予想不可能なニュースで株価の下落を見るくらいならば、より事業の先行きが読みやすい銘柄の方が適していると思います。

また、資源株として持つにしても、低成長の事業系を持っていることは下落リスクを減らしますが、価格上昇も限定的になるため、中途半端です。

まとめ

  • 三菱商事の中期経営計画の数字(9000億円)は資源全面高の神風が吹かない限り、ほぼ達成不可能
  • 三菱商事は低成長の事業系と下落リスクの高い市況系の組み合わせ
  • 配当利回り、PBRの観点からは割安であり、自己株式を積極的に購入する姿勢も株主重視で評価できる
  • 累進配当銘柄ではあるが、すでに目標配当性向に達している上、事業リスクが高い。安定した高配当を狙う人は他の銘柄も見るか、三菱商事の比重を一定程度に抑えた方が良い。

日本株のビジネス・株式の分析の一覧はこちらです。

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ソフトバンクグループ(9984)の株価はどうしてこんなに安いのか?

時価総額でトップ10に入り、株を保有している人も多いソフトバンクグループ。実は、保有株式の価値よりも大きく割引されていることで有名な銘柄です。

ソフトバンクグループの株価はどうしてこんなに安いのか、について分析していきます。

ソフトバンクグループの企業価値

ソフトバンクグループは投資会社です。

投資会社は、「他の企業に投資をし、投資をした企業の企業価値が上がれば利益が上がり、逆に下がれば損失がでる」、というビジネスです。

ソフトバンクグループは、「ソフトバンクグループの1株当たり株主価値については、11,300円ある」、と主張しています。

一方、実際の株価は12月7日時点で4,257円、とソフトバンクグループが主張する40%以下です。

ソフトバンクグループホームページより(2019年12月7日)

株式市場が合理的であるならば、60%も割安な株が長い間放置されることは考えにくいです。いったい、どうしてソフトバンクグループの株はこんなに割安なのでしょうか?

その秘密は、保有している株式(事業)を個別に見ると見えてきます

ソフトバンクグループホームページより(2019年12月7日)

アリババ

アリババは中国で最も大きなECサイトで、Alipayという中国で広く普及している決済手段でもよく知られています。ソフトバンクは13.3兆円分のアリババ株を保有しています。

ソフトバンクグループ決算説明資料より

これをソフトバンクグループの発行済株式で割り、一株あたりになおすと、6,600円になります。

株を売却した時には、売却額 – 取得額、の売却益に課税されます。ソフトバンクグループにおける、アリババの簿価は2兆3659億円です。

ソフトバンク2020年3月期 第二四半期決算説明資料より

節税のスキームにもよりますが、ここで仮に売却益への法人税の実効税率が30%と仮定すると

(13.3兆円 – 2.4兆円 ) x 30% = 3.3兆円

つまり13.3兆円のうち、3.3兆円(25%近く)は税金でもってかれる計算になります。

売却時の税金も含めて、一株あたりの価値を考えると

6,600円 x (100% – 25%) = 4,950 円/株

現実的にはソフトバンクグループがアリババ株全て売ります、といったら株が暴落するために、法人税のみの30%割引はかなり楽観的な見積もりですが、ソフトバンクグループは節税策に優れているため、売却による株価下落と法人税の支払いを含めても、30%程度の割引で済む可能性もあります。

この30%の割引前提でも、4,950円と現状の株価4,300円より高いです。

ソフトバンク(株)(ヤフー含む)

何度かグループの資本構成を変えた結果、現在はソフトバンクグループの子会社としてソフトバンク(株)が、そしてソフトバンク(株)の下にヤフー(Zホールディングス)があるという、3層構造になっています。

ソフトバンクグループはソフトバンク(株)の66.77%の株式を保有しており、ソフトバンクグループは時価総額7兆円の会社なので、ソフトバンクグループは4.8兆円分の株式をもっていることになります。

こちらも1株あたりになおすと2,200円です。簿価の情報がないので全額利益参入でき、アリババの時と同様に売却時の税金30%が割り引かれると考えると、1株あたりの価値は

2,200 x (100% – 30%) = 1,550 円

アリババ+ソフトバンク(ヤフー含む)で

4,950 円 + 1,550 円 = 6,500円/株

この計算からは、他の資産がマイナスでない限り、少なくとも6,500円/株の価値はあるという計算になります。

ソフトバンクの現在の株価は4,250円とかなり差があります。

ここまでが孝行息子たちの話で、ここから問題を抱えた子供達の話です。

スプリント

アメリカの大手通信会社スプリントは、ソフトバンクが2013年に2兆円で買収しました。

買収した当時のスプリントは全米の通信会社でVerizon、AT&Tに次ぐ3位でしたが、現在では当時の4番手のTモバイルに抜かされ、4番手です。

スプリントはTモバイルに2兆9000億円で売却予定ですが、規制当局と連邦・州レベルの承認を得る必要があります。現在、連邦レベルの承認は得られていますが、州レベルでの司法によるストップが複数の州でかかっているため、売却が成立するかどうかは不透明です。

スプリントの株価推移

スプリントの12月7日現在の企業価値は2.4兆円で、ソフトバンクグループは84%を保有しています。つまり、保有している株式の価値は2兆円です。

これは一株あたりになおすと、950円/株、になります。

しかし、数字上はスプリントはソフトバンクグループの株式を増やす資産に見えますが、実際のところ、キャッシュを奪っていくお荷物です。

米国スプリントはユーザー数が減少傾向にあり、2四半期連続で赤字です。負債の比率が高いことから、2019年は毎期、9000億円弱の売上、500億円以下の営業利益に対して、600億円以上の利子の支払いを行なっています。

Sprintの決算プレスリリースより

次世代の通信インフラである5Gのための巨額の投資をしなければならない中、現在でさえ負債の負担が重く赤字です(2019年9月時点でも4兆8000億円の負債)。

巨額の投資をしないとさらにユーザーを失っていき赤字が拡大する。投資をしたとしても、よりシェアの高いトップ2社が積極的に投資を行なっているので優位性には繋がらず、シェア獲得には繋がりにくい。端的に言って、単独ではかなり詰んでいる状況です。

スプリントは親会社の価値を毀損させる、撤退したいビジネスです。

ソフトバンクグループ連結有利子負債(第二四半期決算資料より)

確かにスプリントは株式自体の価値はあるのですが、火中の栗を拾うような買収相手はTモバイルくらいしか見当たりません。そのため、Tモバイルへの合併が承認されなければ、投資を必要としながらも、先が見えないまま赤字を垂れ流すビジネスとなり、むしろソフトバンクグループ全体のお荷物となります。

以上の理由から、合併の承認がおりるまで、株の価値がほぼない、むしろ価値を毀損する資産である、と市場から見なされている可能性があります。

ARM(アーム)

ソフトバンクは2016年にARM(半導体の開発・設計し、その知的財産を販売するビジネス)を3.3兆円(240億ポンド)で買収しました。

3.3兆円の価値があるのかどうかを見ていきます。

ARMのビジネスはシンプルです。半導体となる基盤となる技術を開発し、その技術を販売しています。具体的な収入源としては、半導体企業にテクノロジーを販売する一回払いのライセンス料と、チップの出荷数に応じたロイヤルティーフィーがあります。

ARMロードショー資料より

2019年の売上を見ると、ロイヤルティーフィーが売上の60%でライセンス料が40%です。

ライセンス料は各会計期間に契約が取れるかどうかによるために比較的変動が大きいですが、ロイヤルティーフィーは既に結ばれた契約の分に上乗せされるため、チップが生産される限り増えていき、比較的安定しています。

今後、新商品が発売された時にはライセンス料が増加すると考えられます。

ARMロードショー資料より

このビジネス、急成長していると考えるかもしれませんが、実は2019年の直近6ヶ月の売上高は885億円と前年同期比2.8%の減少です。

加えて、同期間の「利払い前、税引き前、減価償却前、その他償却前利益」(EBITDA)が37億円で、これらを考慮した同期間のセグメント利益は270億円の赤字です。

ARMロードショー資料より

赤字は急成長しているのであれば悪いことではありませんが、マイナス成長で、かつ赤字というのは赤信号です。

ARMのビジネスに近い業態としては、通信に用いられる半導体を開発・設計して知財を販売しているQualcommがあります。こちらは時価総額10兆円を越え、利益率も10%を超える優良上場企業であり、12月7日時点での、企業価値をEBITDAを割ったものは10.45です。

Qualcommを参考に、ARMの企業価値を算定してみます(類似企業比較法。企業価値を算出するのによく使われる手法の一つです。本来はより売上規模が近い企業を比較するのが望ましいですが、ビジネスモデルが近く、特定分野のシェアが高い半導体開発・設計企業でARMに近い企業が他に思い浮かばなかったため、Qualcommを用いています)。

2018年のARMのEBITDAが約300億円であったことから、Qualcommの企業価値 ÷ EBITDAの10.45をかけると

300億円 x 10.45 = 3145億円

つまり、3.3兆円で購入したARMの価値は、類似企業比較法によると3.000億円超の価値しかないことになります。

ソフトバンクグループは買収時に企業価値をDCF法(割引キャッシュフロー法)で算出したのだと思いますが、過去3年間の売上高とEBITDAの伸びを考慮すると、買収時の前提は成り立っておらず、普通に考えれば減損の必要があるかと思います。

現在、ソフトバンクの財務諸表にはアーム分だけで2.5兆円ののれん(買収の際に支払ったプレミアム)と5,000億円の無形資産があります。

ソフトバンク2020年3月期決算説明資料より

ソフトバンクグループは会計基準としてIFRSを利用しており、減損するべきかどうかの基準としてDCF法を用いています。

しかし、先に述べたように、過去3年で売上高が18%弱しか伸びておらず、EBITDAについては67%減の状態なので、よほど将来の前提を楽観的に見積もらない限り、減損すべきと考えられます。

節税策に長けているソフトバンクグループですので、おそらくアリババの株式を売却して含み益を出す段階、もしくはビジョンファンドからの利益を計上した段階でARMを減損して、法人税支払いを減らすと予想されます。

(12月9日修正。のれんの減損については、連結上ののれんが減損となっても、将来の回復可能性を否定する要件を満たすハードルが高く、損金扱いにならない可能性が高い、というご指摘を受けたため、修正させていただきます)

まとめると、

  • ソフトバンクは3.3兆円でARMを買収した
  • 現在でも2.5兆円ののれん・5000億円の無形資産が貸借対照表にのっている
  • ARMの売上高は2018年度、1,800億円でEBITDAは300億円。売上高は3年で18%しか伸びておらず、EBITDAは67%減
  • 類似企業比較法での価値は3,000億円程度。DCF法でも前提によるが、よほど無理な前提にしない限り、1兆円の企業価値にすらならない
  • よって、ソフトバンクは2.5兆円の「のれん」は一部もしくは全てを遅かれ早かれ減損せざるをえず、損失が発表される可能性が高い
  • 3000億円の企業価値前提では、ソフトバンクグループからすると1株100円程度と無視できる価値になる

ソフトバンクビジョンファンド

ソフトバンク ビジョンファンド6月末時点

ソフトバンクはソフトバンクビジョンファンドに、3.3兆円(10兆円ファンドのうち、約1/3)出資しています。成功報酬を除けば、ビジョンファンドの利益の1/3がソフトバンクグループの利益になることになり、逆に損失が出れば損失額の1/3がソフトバンクグループの損失となります。

そのビジョンファンドですが、6月から9月にかけて、Real Estate(WeWork)、Transportation + Logistics (Uber)、Enterprise (Slack)のために、価値が大きく減少しました。

2019年9月時点でのビジョンファンド

特に投資額が大きかったUberの株価は下記のように8月から大きく下落しています。Uberには77億ドル(8400億円)を投資して約16%を取得しましたが、現状の株価、1株$28ですとほぼ投資額と同程度です。

Uberの株価

Uberの株が1$落ちると、ビジョンファンド全体で約80億円の損失が出ることになり、ソフトバンクグループからのビジョンファンドへの出資は1/3のため、ソフトバンクグループへのダメージは25億円程度となります。

WeWorkについては、$47b (5兆円超え)の評価を80%減まで減損しました。この減損により、WeWorkだけですでに$4.8b(5000億円以上)以上の損失がソフトバンクグループに出ており、WeWorkがこのままさらにうまく行かなければ、損失が拡大します。

孫さんはWeWorkの可能性を信じており、さらにソフトバンクグループからお金をだす予定です。

Slackの株価も上場後に右肩下りです。

アメリカ株式市場全体は最高値の更新をうかがうくらい好調であるにも関わらず、WeWork、Uber、Slackと大型の投資先の価値が大幅に減少する自体が続いています。

ソフトバンクはビジョンファンドの価値が10兆円以上あり、ソフトバンクグループの持分だけで3.2兆円あると主張していますが、この価格が、今後下落していくことも十分考えられます。

ソフトバンクの保有株式

現状、ソフトバンクグループはビジョンファンドの持分だけで1,500円以上あると主張していますが、WeWork、Uber、Slackと大型の投資の失敗が続いているため、10%以上は割り引いて考えた方が良いかもしれません。

例えば10%、株価が下落するとすると、それだけでソフトバンクグループの営業損益に3000億円以上の下落圧力となります。

また、ビジョンファンドは出資者の一部に一定額の支払いを毎期ごとに行うような仕組みになっているため、保有株式の株価が下落した時に、ビジョンファンドが保有株の下落と支払いのダブルパンチを受けることも注意点です。

ペイペイ (PayPay)

PayPayの決算

他の事業の規模の大きさと比べると誤差かもしれませんが、PayPay(ペイペイ)事業も収益性を低下させる原因となっています。過去6ヶ月で350億円の投資をペイペイに行なっており、こちらも今後収益性がどうなるかはわかりません。

もし仮に毎年700億円の赤字が今後数年間予定されており、収益化の目処が立っていないと投資家が判断したならば、ペイペイもソフトバンクグループの株価を下落させる原因になります。

孫さんへの信頼の低下

ソフトバンクグループは、これまでのソフトバンク・スプリントを中心とした通信会社中心のビジネスから、ビジョンファンドと呼ばれる巨大な投資ファンドを設立し、「AIなど世界を変える会社に投資して大きなリターンをもたらす投資会社に変わる」、という野望を抱いていました。

その期待値から、ビジョンファンド1号は$93 billion (10兆円)を集め、そのうち$60 billionは中東(サウジアラビアとアブダビ)から2016年に集めました。

しかし、WeWork、Uberなどのライドシェア企業やSlack (コミュニケーション)など、大型投資をした企業の株価が下落傾向にあることから、1号ファンドのリターンが低下しています。

ビジョンファンド2号は約$100 billion (10.8兆円)を目指していたが、Bloombergの報道によると、1号ファンドの不振により、11月15日現在で$2b (2160億円)しか集まっていないとのことです。

ビジョンファンド以前に行なった大型投資、スプリントについては司法の判断次第、ARMについても将来次第ですが、どちらの大型投資も現段階ではうまく行っているとは言い難い状況です。

これらの大型の投資が連続して苦戦していることが、孫さんの投資の目利きへの疑いとなり、株価低迷の直接の理由になっていると考えられます。

言い方をかえれば、投資家は「孫さんは自らの能力を過信して株主利益を無視して振る舞い、価値を創造するよりも毀損している」と感じ、それが保有している株価よりも低いソフトバンクグループの株価になって反映されているのではないかと思います。

まとめ

  • ソフトバンクグループの株価は割安(4,300円/株)で放置されている
  • 優良資産である、アリババ、ソフトバンク(ヤフー含む)だけで、税金を考慮しても6,500円/株の価値はある
  • しかし、米国通信会社のスプリントは米国司法の判断次第では、赤字の金食い虫となる可能性があり、950円/株の価値は大きなリスクを抱えている
  • また、3.3兆円で買収したARMは2.5兆円の「のれん」の減損リスクを抱える。実際は100円/株、程度の価値
  • ソフトバンクビジョンファンド自体は現状で1,500円/株の価値があるが、主要な投資先の株価が下落傾向。今後の株価次第でさらに営業損失が生じる可能性がある
  • ペイペイ(PayPay)で半年で350億円の赤字が出ており、今後も損失が生じる可能性が高い
  • これらの大型投資の苦戦から、市場は孫さんの目利きへの信頼が低下している。この信頼の低下が、孫さんは企業価値をむしろ毀損させるという評価になり、株価の割引に繋がっている。

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900万人がハマるパチンコ・パチスロ業界の分析

日本のどこでも見かけるパチンコ・パチスロは、世界規模で見ても大きなギャンブルの市場です。

社会的な批判も多い業界ですが、今回は投資家という立場で分析してみます。色々な観点から書きますが、伝えたいことは、パチンコするお金と時間があれば、株式投資した方が良いと、ということです。

パチンコ・パチスロ市場

レジャー白書2018より

パチンコ・パチスロ市場は2018年時点で約20兆円と巨大です。参考までに、2018年の書籍・本の市場規模は全国出版協会によると約1.5兆円なので、12倍以上です。

ただ、パチンコ・パチスロ市場は減少傾向にあり、2008年からの10年で20%以上市場が縮小しました。パチンコ・パチスロを行う人口も同じ期間に1430万人から900万人まで縮小しています。ただし、その900万人は年間平均パチンコへ30回以行っています。

これを単純に計算すると一人当たりの消費金額は

19兆5400億円 ÷ 900万人= 21万7000円

一回あたりの訪問になおすと

217,000 円 ÷ 30回 = 7,200円

つまり、2018年は、平均をとると、900万人の人が、隔週以上の頻度で、毎回7,200円払ってくれているビジネスになります。2008年は1430万人の人が、隔週以上の頻度で、6,100円払っているビジネスでした。

パチンコ・パチスロ人口が減少しながら単価が上昇しているということは、ライトなユーザーが離れる一方、よりコアなユーザーが残っていることを示唆します

パチンコ業界の利益率 ダイナムジャパンの事例から

パチンコ業界の最大手はマルハンで2019年3月期の売上高は1兆5500億円です(この規模は花王や日本航空(JAL)よりも売上高が大きく、日本企業のトップ100に入ります。)。マルハンは上場しておりません。

2番手はダイナムジャパンホールディングスで、2019年3月期の売上高は7680億円。香港市場に上場しています。2019年3月時点での店舗数は450店舗と業界最大手。

ダイナムジャパンホールディングスは上場企業なので利益率まで開示されており、ビジネスを理解するのに参考になります。

ダイナムジャパンホールディングス年次報告書より

景品出荷額を引いた利益は1460億円で、いわゆる粗利は約19%です。

ここから営業費用の1280億円を引いた営業利益は193億円。営業利益率は2.5%。ここから法人税支払いを除いた当期純利益は126億円であり、純利益率は1.6%。

赤字ではないですが、業界2番手にしては、かなり低いという印象です。これは業界がまだ寡占化されておらず、比較的多くの企業が競争しているか、もしくは価格競争を挑んでいる企業が市場にいることを示唆します。

売上は2015年の8260億円から下落トレンドにありますが、純利益はほぼ横ばいです。

Bloombergより。単位は香港ドル

純利益の伸びが鈍っていることもあり、2019年は全世界的に株価が上がっているのにも関わらず、ダイナムホールディングスの株価は伸び悩んでいます。株価は10.5香港ドル (11月30日現在、1香港ドル=14円なので、147円)

配当は一株あたり12円なので、配当利回りは約8%とかなり高配当です。また、配当性向も73%なので2019年3月期だけを見れば少しは余裕があります。

 ダイナムホールディングス配当推移(年次報告書より)

キャッシュフローも問題ありません。営業キャッシュフローの範囲で投資をしています。財務活動によるキャッシュフローも、営業活動によるキャッシュフローに近い範囲で配当と借入金を返済しています。

ダイナムホールディングス年次報告書より

ダイナムジャパンの戦略

ダイナムジャパンホールディングス年次報告書より

ダイナムジャパンホールディングスの戦略はコスト戦略と地域独占戦略の組み合わせです。

  • 標準店舗の新規出店(店舗数が増えればより量を発注できるようになり、機器メーカーなどにより値引きを迫りやすくなる。規模の経済)
  • 同業他社の買収により、競争を減らす(=地域で独占することで、より利益率を高くする)
  • 中古機の積極導入、自社物流センターの活動、業務効率化(どれも費用を減少させる施策)

市場が縮小している成熟市場ですので、本来ならば利益を刈り取りたいのですが、業界全体が厳しくなっている中、コストを削り、なんとか利益を確保しようとしています。

また、同じような状態であることが予想される同業他社を買収することで、競争を減らし、より利益率をあげようとしています。

これらの戦略としては合理的です。

また、ダイナムジャパンホールディングスは近年「低貸玉店舗」というより低い単価で遊べる施設に注力して、新規に入ってくる人口を広げようとしてます。

パチンコは一度ハマってしまうと抜け出せない、中毒性が高い業種と言われているので、入り口を低くして新規のユーザーを入れるのは合理的です。

また、ダイナムジャパンホールディングスは「パチンコはボケ防止に良い」という、「健康」メリットを押し出すことで、高齢者層にパチンコを広めようとしています。

下記の点で、60歳以上の高齢者層はパチンコ業界にとって魅力的だと考えられます

  • 60歳以上人口が増えていること
  • 比較的豊かな世代であること(60歳以上世帯の平均貯蓄は約1600万円 – 内閣府高齢化白書令和元年より)
  • 多くが単身世帯となり時間を使う先を求めていること
  • 歳を取ることで認知能力が低下している層が増えていること
  • 年金という継続収入が国から入っており継続的な収入が見込めること(高齢世帯の平均所得金額は318万円- 内閣府高齢化白書令和元年より)

ダイナムジャパンホールディングスの戦略を見る限り、60歳以上を狙って、まずは低い単価で遊んでもらってハマってもらい、年金を原資に遊んでもらって、徐々に貯蓄も使ってもらう、という戦略をとっていくかと思います。

一昔前のスマートフォンゲームのビジネスモデルもこれに近く、まずは無課金ユーザーを集め、微課金ユーザーにして、その後、競争心、射幸心、同調圧力をあおって重課金ユーザーにしていくようなものです。

若い世代はそもそも収入が少なくなっておりカテゴリとしての魅力度が薄れていることと、スマートフォンの課金ゲームなど射幸性で競合する項目が多いことから、より競合の少ない、単身世代の高齢世代を狙うのがパチンコ業界にとっては経済的に合理的なのではないかと思います。

その観点で、ダイナムジャパンホールディングスの戦略は、倫理的な観点を除けば、経済的に合理的です。

パチンコ・パチスロ業界への投資で考慮すべき点

政治・規制リスク

パチンコ・パチスロ業界のビジネスは人間の射幸性(儲かるかもしれない、という期待)に訴えるものなので、中毒者を生みやすいモデルです。

厚生労働省もギャンブル中毒に対する対応に乗り出しており、政治の対応いかんによっては、新規店舗出店やビジネスモデルに規制が入る可能性があります。

これまではその規模の大きさから

  • 警察OBを業界団体に取り込んで警察から取り締まられるリスクを減らす
  • 政治献金を通して規制強化の動きが出るリスクを減らす
  • 広告費を通じてマスコミから不利な報道をされるリスクを減らす

ことができていましたが、今後規模が縮小していき、利害関係者にこれまでと同じような利益を提供できなくなったときに、今までのようにリスクヘッジができるかどうかは不透明です。

海外大手カジノ進出による競争激化・規制強化リスク

2019年現在、国会で統合型リゾート整備法案が審議されており、この法案の成立後、日本に海外からカジノ運営者が進出してくる可能性があります。

カジノ進出は2つの点でパチンコ業界にとってリスクとなります。

  • 同じカテゴリでお客のお財布を狙う競合が増える可能性
  • カジノへの規制をきっかけにパチンコ・パチスロ業界にまで同様の規制が飛び火する可能性

海外カジノが進出してくるのはまだ年単位で先の話ですが、法案成立が価格下落を引き起こす可能性があります。

パチンコをやる側に回るか、投資する側に回るか

パチンコ・パチスロをやるかどうかは個人の自由です。

ただし、資産運用の観点からすると、パチンコをするのは筋がよくない投資です。

パチンコをやりたいと言っている友人が知り合いにいれば、下記の2つのケースを提示してみるといいかもしれません。

  • パチンコは平均的に儲からない遊び(業界大手の粗利益が20% = あなたは20%損するモデル)。20万円使ったときに、あなたが受け取る金額の期待値は16万円で、4万円損する。また、年間30回、一回4時間行くと、年120時間使う。
  • そのお金を高配当株の購入に使えば、例えば税引き後の配当が5%ならば、20万円を投資すれば、年間1万円入ってくる。時間は一度に投資をすれば、1時間以下しかかからない。

お金でいえば、年間5万円と約120時間の差が出てきます(時給1000円とすると、12万円の価値)。

まとめ

  • パチンコ・パチスロは20兆円の巨大産業だが、縮小傾向
  • 平均的には、900万人が、隔週以上、毎回7,200円以上を使っている
  • パチンコ・パチスロ業界の利益率は業界2番手でも2%以下とさほど高くないが、安定している
  • 今後、パチンコ・パチスロ業界は再編が起き、次第に寡占化されていくと予想される
  • パチンコ・パチスロ業界は60歳以上の年金で生活しており、貯蓄も一定以上ある高齢者を狙っていくと予想される
  • パチンコをやるか、投資をするかで、年間5万円以上と120時間以上の時間の差が出てくる。資産運用の観点からは、投資をした方が良い

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いちごホテルリートで学ぶ、損しないためのホテル主体型REITの選び方

安定して配当を受け取れることで人気のREIT(不動産投資信託)。その中でも年5%を超える利回りがあり、高配当を好む投資家に人気なのがホテルや旅館などに投資するホテル特化型REITです。

REITは気をつけないと、「見かけの配当」で買った後に、実は思っていたのと違う、となり損をしてしまうことがあります。

今回はいちごホテルリート(3463)を例に、説明していきます。

ホテル主体型REIT(不動産投資信託)とは

REIT(不動産投資信託)は

  • 投資家から資金を集め
  • 資金を元に不動産に投資し
  • オペレーターと呼ばれる事業を行う主体に貸し出て、賃貸収入を得て
  • 得た賃貸収入を投資家に配当という形で還元する(利益の90%以上)

というビジネスモデルになります。どんな事業に貸し出すかにより、オフィス用途、物流用途、ホテル用途、などカテゴリが分かれますが、基本的な仕組みは同じです。

特に宿泊主体型の場合はホテルのオペレーターに物件を貸し出して、そこから賃料を受け取るのが収入源です。

ホテルの賃料の受け取り方には、大きく分けて下記の2種類があります。

  • 変動賃料:ホテルの売上に応じて賃料が変わる
  • 固定賃料:ホテルの売上に関わらず賃料が一定

変動賃料はホテルの調子がよければ受け取れる賃料が大きくなる一方、ホテルの調子が悪くなれば受け取れる賃料が少なくなります。

固定賃料はその名の通り、ホテルの売上に関わらず賃料が一定のため、より安定した賃料が見込めます。

一般的には、旅行の市場が拡大して、ホテル間の競争が激しくないうちは、ホテルの売上が上がりやすいので変動賃料の方が有利で、逆に市場が停滞して、ホテル間の競争が激しい場合は、固定賃料の方が有利です。

ホテル主体型リートの種類

Japan Reit不動産投資ポータルより(2019年11月22日)

現在、上場しているホテル主体型REITは上図の6銘柄(ジャパン・ホテル・リート、インヴィンシブル、星野リゾート、いちごホテル、大江戸温泉、森トラスト・ホテル)です。

規模としてはジャパン・ホテル・リートが圧倒的に大きく約4000億円で最も小さいのが大江戸温泉の230億円。

利回りは4-6%です。

いちごホテルリートのビジネス状況

いちごホテルリート投資法人(3463)は東京証券取引所に上場している宿泊特化型のREIT (不動産投資信託)です。時価総額は340億円程度とREITの中ではかなり小粒です。

いちごホテルリート投資法人2019年7月期決算発表より

いちごホテルリートは2019年11月3日時点で22ホテルを保有しています。全国に幅広く物件を持ち、よく分散されています。

ホテルの売上はシンプルに下記のように分解されます。

売上 = 部屋数 x 稼働率 x 部屋あたり平均単価

つまり、部屋数が変わらなければ、稼働率(部屋にお客さんが宿泊している割合)が高ければ高いほど、部屋あたりの平均単価が高くなれば高いほど、売上が大きくなります。

ホテル系のREITの決算発表の資料ですと、RevPARと書いてあるのを見かけると思いますが、RevPARはRevenue per Roomの略で 、意味は「一部屋あたりの売上」です。

RevPAR = 稼働率 x 部屋あたり平均単価

ですので、この数字を見ればそのホテルがうまくいっているのかどうかがざっくりわかります。

さて、いちごリートですが、そのRevPARが2019年2月から7月までで3%下落しています。

いちごホテルリート投資法人2019年7月

また、この下落基調は8月、9月も続いて、しかも拡大しており、RevPARは前年度と比較して10.6%減です。

いちごホテルリート投資法人 2019年9月度運営状況

深刻な点は、特に「変動賃料」(いちごホテルリートが受け取る賃料がホテルの売上に応じて増減する契約形態)のRevPARの落ち込みが大きいことです。

2つの大きな構造的な要因があります。

1つ目は、訪日外国人の減少です。

JNTO 2019年10月訪日外客統計の集計・発表より

2019年10月の訪日外国人は前年度と比べて5.5%の減少になりました。韓国における日本関連製品へのボイコットの動きが続いており、特に韓国人の観光客の落ち込みが65.5%とかなり激しく落ち込んでいます。

韓国は中国に次いで訪日客を送り出してきている国ですので、韓国からの観光客減少が特にインバウンドに力を入れていたホテルチェーンに影響を与えています。

いちごホテルは一泊1万円以下の市内観光、ビジネス用ホテルが中心で、インバウンドにも力を入れていました。韓国人訪日客の減少が稼働率に影響を与えている可能性が高いです。

2つ目は、ホテル間の競争の激化です。

特にインバウンドを見込んで多くの宿泊業者が宿泊施設を新設して、競争が激しくなっています。例えば、京都市では、過去3年で宿泊施設数が3万施設から4.6万施設まで増加しました(参考:京都市の京都観光総合調査結果)。

京都などは一時期は供給不足でしたが、現在は供給過剰の状態に入りつつあります。

これらの、韓国人旅行者の落ち込み、宿泊施設の供給過剰は短期的には解決が見通せないため、いちごホテルリートのビジネス環境としては厳しいと言えます。

いちごホテルリートの分配金推移

いちごホテルの分配金は3,300円で2017年、2018年と推移しています。

2019年1月にはホテルの売却益を還元したため、5,500円近くの配当がありました。

いちごホテルリート決算資料より

保有しているホテルを売却したため、2020年1月の配当も一時的に4,700円と増加する予定です。

2020年以降の売却益の分配を除いた巡航配当は3,000円程度になる見込みです。

いちごホテルの分配金利回り

J-Reit 不動産投資ポータルより

いちごホテルリートの利回りは2019年11月21日の価格134,000円で5.7%となっていますが、2020年1月期は保有するホテルビスタプレミア京都の売却益を株主還元して、一時的な利回りが高く見えています

2020年1月に予定される配当は4,700円ですが、これは売却益1,700円、保有するホテルからの分配金3,000円に分解できます。

つまり、売却益を除いた保有ホテルからの2020年の利回りは4.5% (6,000円 / 134,000 = 4.48%)であり、物件の追加購入や売却がなければ、2020年の配当以降はこの数字がベースになります。

ホテルの売却益により、一時的な利回りが高く見えていることに注意です。

いちごホテルリートの分配金増加の可能性

いちごホテルリート決算資料より

いちごホテルリートの株価は134,000円ですが、一株あたりの資産は146,580円あります。

これは、所有しているホテルを全て売り払い、投資家に還元すれば、現在の株価以上の価値になる、ということです。

実際、いちごホテルリートはホテルビスタプレミオを購入価格より高く売却しました。得た利益を投資家に還元する予定で、分配金が2020年1月は1,700円程度高くなる予定です。

今後もいちごホテルリートが物件売却を現在の高値で売り続けて、投資家に還元し続ければ、保有するホテルから生み出される4.5%の利回りよりも高い利回りが見込めます。

いちごホテルリートのリスク

保有するホテルからの収益減少リスク

新規ホテルの建設が続き、ホテルの競争が激化していることもあり、全体のRevPARが下落傾向なのが1番のリスクです。

特にいちごホテルリートは変動賃料の割合が高く、稼働率または単価の下落は収益への影響が大きいです。

成長の鈍化、競争に負けるリスク

いちごホテルリートの株価が現在の1株あたり純資産価値よりも低いことは、資金調達をする上での障害となります。

株式市場のいちごホテルリートへの評価が高くないために、低い株価での資金調達をせざるを得なく、それを行うと一株あたりの純資産の減少が起こります。

これは既存の株主にとっては株の価値を下げられることになります。基本的には、1株あたり価値以下での価格の増資は株主に嫌がられる行動です。

つまり、株価が低いと、増資をした時に既存の株主にとってのデメリットが大きくなるため、資金調達がしにくくなり、それゆえにビジネスの拡大がしにくくなります。

そしてビジネス拡大がしにくいと、規模を拡大させることによる固定費削減やブランド価値の向上といった手段が使えなくなるため、同様の手段を使ってくる競争相手に負ける可能性が上がります。

まとめ

  • ホテル特化型REITを見るときにはRevPAR (部屋あたり売上)が増加しているか、減少しているかを見ることがポイント
  • 変動賃料のREITは、より旅行市場が良い、または競争力のある宿泊施設を保有しているときに有利で、固定賃料は市場環境が悪化しているときに有利
  • ホテル特化型REITは、宿泊施設の供給過剰、インバウンドのブレーキ、という2つの市場の流れに直面している。RevPARは下落傾向
  • 保有施設を売却することで一時的な配当を増加させているREITがあることに注意。配当を見る際には、売却益による影響を外して、保有している物件から継続的に生み出される利益を見た方が良い
  • 株価が1株あたり純資産価値よりも低いREITは増資がしにくく、他の規模拡大をしている競争相手に負けるリスクがある

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インフラファンド(太陽光発電)は債権として優秀な投資先

銀行預金でも国債でも年に1%も増えない中、5%を超える高配当を毎年もらえたらいいと思いませんか? しかも、減配しないかと怯えるような不安定な株ではなく、安定している株が。

そんな安定と高配当を求める人にぴったりの、インフラファンドについて説明します。

インフラファンドとは

インフラファンドとは東京証券取引所に上場している、再生可能エネルギーに投資をしているファンドです。現在は下記の6つのファンドが上場しており、主に太陽光発電に投資をしています。

5%から6%と高い利回りを持っていることが特徴です。

また、比較的新しい投資のカテゴリのため、最も企業価値が大きいカナディアンソーラーでも270億円程度、次点のタカラレーベンで170億円程度とJ-Reitと比べても小粒です。

  タカラレーベン いちごグリーン 日本再生可能エネルギーインフラ カナディアンソーラー 東京エネルギーインフラ エネクス・インフラ
証券コード 9281 9282 9283 9284 9285 9286
株価(円) 125,400 63,500 105,600 120,100 112,000 108,700
2020配当予定(円) 7,005 3,580 6,400 7,300 6,793 5,936
2020配当利回り(税引き前) 5.59% 5.64% 6.06% 6.08% 6.07% 5.46%
時価総額 (百万円) 17,377 6,538 16,516 27,766 5,156 9,981

株価は2019年11月21日時点の情報です。

インフラファンドの特徴

インフラファンドは、国の固定価格買取制度(一定価格で電力を20年間買い取る制度)を利用して、価格が安定している点に特徴があります。

この制度がある理由は、国が再生可能エネルギーの普及を進めたいからです。

具体例をあげます。例えば、カナディアンソーラー・インフラ投資法人(9284)が保有している、宮城県美里町にある太陽光発電所は、買取価格が32円/1キロワット(電気の単位)です。

天然ガスを使った発電のコストは14円/キロワット程度と言われているため、電力会社からしたら、32円で買うのはコスト高です。

しかし、電力会社は他の発電所からより安い価格で電気を変えるとしても、固定価格買取制度のため、この太陽光の発電所からはこの価格で買い取らなければなりません。

また、購入を拒否することも基本的にはできません(電力が溢れてしまい不安定になり、接続制限をせざるを得ない場合を除く)

固定価格買取制度による価格は20年間続く予定です。発電所がどれくらい発電できるかは日照時間により、そして太陽光発電は年によってブレはあるものの、日照時間はそこまでブレません。

 

安定している発電量 x 一定の価格 = 安定した売り上げ

 

これが何を意味するかというと、太陽光発電は国債などの債権に近く、毎年一定の配当が入ってくる可能性の高い商品ということです。

インフラファンドの配当

インフラファンドの配当は主に2つの源泉があります。

タカラレーベン インフラ投資法人ウェブサイトより

1つ目は、発電由来の営業収入です。インフラファンドは発電量に応じた賃貸料を受け取り、そこから費用を引いた利益を分配します(下の表の「利益分配金」です)。

2つ目は、タコ足のように自分の資本から配当を出す方法です(下の表の「利益超過分配金」です)。

利益超過分配金は減価償却費とよばれる、設備の償却で生じる費用から出ます。減価償却は会計上の費用ですが、実際のお金(キャッシュ)のやりとりを含まれないため、実際にはキャッシュが残っており、その余ったキャッシュをファンドが株主に還元しています。

全てのインフラファンドがそこで浮いたキャッシュを配当していますが、その割合は大きくファンドによって異なります。

気をつけた方が良いのは、配当がどちらの源泉から多く来ているか、です。

通常のビジネスでは、設備は使えば使うほど古くなるので、どこかの時点で設備を新しくする必要が出てきます。その際、減価償却費の分を設備の更新に回していけば将来の収入を増やす要因になりますし、減価償却費の分を今の投資家に配分していけば、将来の収入が減る要因になります。

  タカラレーベン いちごグリーン 日本再生可能エネルギーインフラ カナディアンソーラー 東京エネルギーインフラ エネクス・インフラ
2020配当予定(円) 7,005 3,580 6,400 7,300 6,793 5,936
– 内利益分配金(円) 6,326 1,390 3,890 5,632 4,619 2,102
– 内利益超過分配金(円) 679 2,190 2,510 1,658 2,174 3,834
2020利益分配金割合(円) 90.3% 38.8% 60.8% 77.2% 68.0% 35.4%

タカラレーベンは配当に占める利益分配金(発電量に応じて生まれる利益)の割合が90%以上と高いのに対し、いちごグリーンとエネクス・インフラは40%未満と、配当の大部分を減価償却費から生まれるキャッシュから出していることがわかります。

異なった視点で2019年の予想売り上げを見ると、タカラレーベンとカナディアンソーラーは経常利益率が他4つと比べて高いことがわかります。この違いは主に、減価償却費が低いことからきています。

  タカラレーベン いちごグリーン 日本再生可能エネルギーインフラ カナディアンソーラー 東京エネルギーインフラ エネクス・インフラ
売上 (百万円) 2,976 1,118 2,828 4,398 867 1,256
営業利益 (百万円) 1,038 282 828 1,614 306 428
経常利益 (百万円) 897 174 528 1,382 226 312
経常利益 % 30.1% 15.6% 18.7% 31.4% 26.1% 24.8%
減価償却 (百万円) 1,134 638 1,470 1,644 356 660
減価償却% 38.1% 57.1% 52.0% 37.4% 41.1% 52.5%

将来も安定してビジネスが続くか、というのはインフラファンドを選ぶ際の大事な点の一つです。

この点から見ると、タカラレーベン とカナディアンソーラーが優れているように見えます。

逆に、いちごグリーン、日本再生エネルギー、エネクス・インフラは配当の半分以上が利益超課分配金から来ています。将来への投資を先送りしている可能性があるので、要注意です。

インフラファンドの財務状況

  タカラレーベン いちごグリーン 日本再生可能エネルギーインフラ カナディアンソーラー 東京エネルギーインフラ エネクス・インフラ
LTV (借入比率、2019) 52.40% 57.80% 56% 47% 53.20% NA

エネクス・インフラは負債比率を2019年11月時点ではまだ公表しておりません。

借入比率はカナディアンソーラーが47%と低く、いちごグリーンが58%と高めです。

インフラファンドは安定した売上が見込めること、低金利状態が続いているために倒産の可能性は相当に低いですが、財務状況がよければ今後さらに借入を行って規模を大きくしやすいため、借入比率は低いほうが有利です。

インフラファンドについてよくあげられるリスク

天候・自然災害リスク

太陽光発電は天候次第で発電量が変わります。また、台風や地震など自然災害にあった時に太陽光発電施設がダメージを受けることもあります。

天候・災害リスクは防ぐのが難しいリスクです。なるべく発電施設が日本全国に分散していた方が被害が大きくなるリスクが低くなり、望ましいと言えます。

2019年10月のインフラファンドの地域分散

その視点で考えた時、タカラレーベン 、エネクス・インフラは関東に、カナディアンソーラーは九州に東京エネルギーインフラは東北に70%以上の発電施設が集中しており、やや天候・災害リスクは高いと言えます。

一方、いちごグリーンと日本再生エネルギーインフラはよく地域分散されています。

出力制限リスク

九州電力など一部の地域では、必要となる電力需要以上の発電がされている時、発電会社に発電を止める要請を行う、「出力制限」が行われています。

これは発電量の制限に繋がり、収入の減少に繋がります。影響が大きいのはカナディアンソーラー、いちごグリーンです。

カナディアンソーラー決算発表資料2019年6月より

一方、出力制限は行われる頻度は限られることから収益に与えている影響は、現在のところ軽微です。

また、今後は地域を超えた送電の枠を増やすなど九州電力も対策をうっていること、テロ対策施設の建設の遅れから原発が停止して出力制限の頻度が減ること、から今後も出力制限のリスクは軽微だと考えられます。

固定価格買取制度の見直しのリスク

固定価格買取制度による買取価格は、太陽光設備の価格の下落に伴い毎年見直されており、2018年以降は大規模太陽光発電の価格は入札となっています。

経済産業省 固定価格買取制度ページより

一方で、今後の価格改定は、現在すでに稼働している太陽光の買取価格には影響がないため、現状のインフラファンドの経営には影響を与えません。

インフラファンドが今後、新たに太陽光発電事業を購入する際にも、高い価格で契約されている太陽光発電を主に購入すると考えられるため、直近で影響は出ないと考えられます。

インフレーションリスク

インフラファンドは固定価格買取制度により固定の価格となっているため、インフレ(モノの値段が上がること)に弱いという弱みがあります。

ただし、日本はバブル崩壊後、過去30年間の物価上昇は非常に穏やかであり、日本がハイパーインフレーションに陥る可能性が低いと考えるならば、インフレがインフラファンドの価格に与えるリスクもさほど高くないと考えられます。

また、導管性(法人税と配当への課税の二重課税を防ぐ仕組み)が20年しかなく、恒久的でないという課題もありますが、こちらは15年後程度に問題となる話であり、今後政策検討されることになると考えているので、今の時点では大きなリスクではないと考えています。

インフラファンドのリスクについて、参考になるサイト:上場インフラファンドの投資リスク

発電側基本料金

こちらは現在、政策が検討されている段階ですが、送配電網の維持・管理のための費用を発電側にも負担させよう、と言う議論がされています。こちらは導入された場合、再生エネルギー事業者の費用増となるため、事業上のリスクです。

再生エネルギーの事業者が対象になるかどうか、基本料金の設定がどの程度になるか、調整措置が取られるか、などに要注目です。

撤去費用積立

太陽光発電設備の撤去費用を積み立てるべきという議論がこちらも経産省のワーキンググループでされています。こちらも費用の増加に繋がるため、リスクになります。どのような結論になるか、要注目です。

インフラファンドの可能性

東京証券取引所が2020年4月27日より、上場インフラファンド指数を公表する予定です。7銘柄が組み込まれる予定。

指数化されることによって、指数に連動する投資信託ができることが期待され、より株式の流動性が高まることに加えて、インフラファンドへの需要が増えれば株価が上がる可能性もあります。

特に今はESG(環境、社会、ガバナンス)投資がトレンドであるため、太陽光発電に資金が集まる可能性があります。保有者としては楽しみな流れです。

まとめ

  • インフラファンドは利回りが5-6%と高く、配当も安定しており、高配当を求める投資家に適している商品
  • 上場しているインフラファンドは6銘柄あるが、高配当株と同じように、配当余力を確かめる必要がある。資本から配当を出している割合が高い銘柄は要注意
  • 発電収入からの配当が多いのはタカラレーベンとカナディアンソーラー
  • インフラファンドは政策により大きな影響を受けるため、定期的に固定価格買取制度の政策を確認した方が良い

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