株価の暴落はこのまま続くのか。経済指標のまとめ

本日の日経225は5%下落し、20,000円の大台を割りました。米国株も先物で5%下落しています。

リーマンショック以来の10年に1度の相場の荒れ方ですので、一度、現在の市場、関連する指標をまとめ、今後のポイントについても書いてみます。

こちらの記事で説明した先行指標をみていきます。

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EPS・PER・BPS(日本株)

日経平均PERの推移 投資の森より

2020年3月9日時点での日経平均225のEPS(Earnings per Share: 一株あたり利益)は1,630円。株価は19,700円です。EPSは12.1と過去3年の平均を割り込んでいます。

過去3年の最低PERは2018年末の10.7です。仮に、EPSの悪化を市場が織り込んで、PERがここまで落ち込むとすると

1,630円 x 10.7 = 17,600円

が株価となります。参考までに、日経225のEPSは下落傾向です。

日経平均一株あたり利益 2019年

次に、BPS(Book value per Share: 一株あたり純資産)を見てみます。

日経平均PBR 日経平均比較チャートより

2010年からの20年間をみてみると、BPS は2012年に0.89と最低をつけましたが、ほとんどの期間で1.0を上回っています。

BPS (Book value per share: 1株あたり純資産)は21,000円ですので、19,500円の株価はすでにBPSは93%で、7%下回っています

BPSからみると、日本株は売られ過ぎ、の水準に入ってきていると言えます。

17,600円まで落ちるとすると、BPSから見て、84%と16%下回ることになります。

BPSが過去20年最低の0.89まで落ちると仮定すると、

21,000円 x 0.89 = 18,690円

が株価となります。日経新聞によれば、日銀の平均取得単価は3月6日時点で19,443円とのことですので、中央銀行が含み損を抱える、という事態になります。

EPS・PER(米国株)

S&P500は$3,300から急激に10%下落し、$3,000を切りました。しかし、それでも昨年の10月時点の価格まで下落した程度です。5年前の$2,000からすると+50%であり、いぜんとして年率10%程度の成長と、歴史的な平均の8%よりは高い水準です。

S&P500の価格推移(Googleより)

過去2年の上昇はEPSの上昇ではなく、PERの上昇、つまり将来にわたって成長が続くだろうという楽観によりもたらされました。

元々、コロナを発端とする株価下落が始まる前から、S&P500のPERは18.7と過去20年でみても高すぎの水準でした。

S&P500の予想PERの推移

今回のコロナの1件で、下記のように、EPSの修正が入った後でも、PERはまだ高い水準にあります。EPSが2019年並となり、PERの修正が行われた時の株価は下記となります。

PERがさらにもう一段切り下がり、13.0程度まで下がれば、S&P500は$2,100となり、現状の$3,000から30%下落することになります。仮にリーマンショック並の事態となり、EPSが変わらないままPERが10.0まで落ちることがあれば、$1,760です。

米国金利

株価の急落を受けて、FRBは2020年3月3日に0.5%の利下げを行いました。短期金融市場への資金供給も行なっているため、金融緩和は継続中です。

Federal Reserve Bank Interest Rate (Trading Economics.comより)

10年満期の米国債の金利は急降下し、3月9日現在では0.5%で推移しています。

FRBの現在の金利よりも低いということは、市場はすでに今年利下げが行われて、さらにその低い利率が長期化することを織り込んでいるということです

10 Year Treasury Rate (Macrotrendsより)

さらに異例なのは、30年ものの国債の利率ですら1.56%と低い利率になっています。過去20年間で最低です。

通常、国債は期間が長ければ長いほどリスクが大きくなるため利率が高くなりますし、国債の利率はインフレ率にも影響されます。1.5%というのは、市場は今後30年でほとんどインフレが起こらないと仮定している数字であり、30年満期で1.5%は歴史上初です。

30 Year Treasury Rate(Macrotrendsより)

この債券の利率の低さをみる限り、債券市場はすでにパニックになっており、景気後退を織り込んでいると言っても過言ではないでしょう。

モノの動き

世界のモノの動き(輸出・輸入)を表す指標として、バルチック海運指数を見てみます。

Baltic Dry Index (Bloombergより)

こちらは2/7に$415をつけた後に、$617と上昇してきています。毎年2月から3月にかけては上昇しているのは主に季節性のためです。

現状の数字をみる限り、$617は3月としては過去5年の中で低い水準ですが、劇的に低いわけではありません。つまり、世界の貿易は動いていると考えられます。

原油相場

原油価格は1日で30%近く下落し、$30まで急落しました。

Crude Oil Price (WTI) Marketisnsiderより

$30というのは、2016年につけた$33をも下回り、過去10年で最も安い水準です。

OPECとロシアの間で減産の合意ができず、原油の供給過剰になるリスク、コロナウイルスの欧州、米国への広がりで原油の需要が減少するリスクの両方が意識されたことがきっかけです。

2016年の時にも減産の協調がうまくいかなかったことがきっかけで原油価格が$33まで急落し、その後にロシア・OPECが国債減産に合意して$50まで戻した経緯があります。

$30割れというのは、原油価格を前提に予算を組んでいる産油国(産油国の多くは国営の石油会社を持っており、原油収入をあてにして国家予算を組んでいます)の予算割れの水準となります。

この水準はロシア、OPEC諸国にとっても望ましい水準ではなく、何かしらの対策が早急にうたれると考えられます。

同じコモディティの銅の価格も下落していますが、石油ほどの下落ではありません。銅は電線、住宅、自動車など様々な用途に用いられるため、銅の価格が世界経済のバロメーターになっていると言われます。

Copper Price (Macrotrendsより)

銅の価格をみる限り、市場は生産やインフラ投資が大幅に減速するとは見ていないようです。

米国・住宅関係データ

米国の新規住宅着工件数は12月データ分までは右肩上がりです。今年に入ってからのデータはまだですが、少なくとも2019年12月までの米国経済の状況は好調です

米国住宅着工件数(macrotrendsより)

今後の論点

コロナウイルスを発端とする生産、物流への影響が株価に織り込まれ、過度な将来への楽観が現実的な水準に落ちてきている、というのが僕の相場の見方です。

今後の論点としては、

  • FRBをはじめとする各国の金融政策
  • 米国、日本、欧州の財政政策
  • OPECとロシアが再びの会合を開き、減産で合意できるか
  • コロナウイルスを原因とする消費への影響がどの程度広く、長く続くか
  • レバノンのデフォルトからの次のレバノン探しの影響(低格付け国債価格の下落。低格付け国債を保有している金融機関の損失)
  • 特にコロナ関連の影響の大きい旅行・空運・小売・飲食業界でのクレジットリスクと貸出を行なっている金融機関への影響
  • シェールガス業者などエネルギー関連業者のクレジットリスク(原油安が続くと、倒産します)。そして、倒産が波及するCLO (Collaterized Loan Origination – ローン担保証券)の暴落リスク。
  • 中国のクレジットリスク(すでにHNAグループが実質国有化されましたが、第二のHNAグループが出る可能性があります)

クレジットリスクに重点を置いているのは、世界経済が過去10年、国は国債、企業は社債、家計も住宅購入のための借り入れを増やしており、経済全体が債務に頼って成長を続けてきているためです。

特に財務基盤の弱い企業の社債、家計の住宅ローンは膨らみ続けている爆弾です。

爆弾が爆発した時にはリーマンショック級になる可能性があるため、特に注意をしてみる必要があると考えています。

一方、クレジットリスクが顕在化しない場合、中央銀行のさらなる金融緩和と各国の財政対策により、資産バブルが生じる可能性があります。こちらのシナリオの場合は株価の急反発になると予想されますので、その予兆にも注目です。

米国株のビジネス・株式の分析は下記のボタンから飛べます。

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2020年2月の株式取引まとめと相場の考察

大波乱の相場が続いています。今週1週間で日本株は23,388円から21,142円まで9.7%下落。S&P500は月曜から水曜まで$3,337から$2,978まで10.7%下落しています。

今回は自分が経験する初めての大きな下落のため、自分用のメモとして相場の考察をしていきたいと思います。

日本株

相場の流れ

日経225の価格推移日経225はコロナの報道が出た1月最終週に大きく下落しましたが、2月初旬にはすぐに元に戻りました。

この時点では、相場はコロナの影響は中国の局地的なものに止まると見ており、サプライチェーンや消費に与える影響を軽視していました。

その後、日本では2019年第4四半期の実質GDP速報により、GDP成長率がかなり弱く(年率換算でマイナス6.3%)、消費税増税が個人消費を冷やしたことが明らかになり、株価は一気に下落しました。

2月の最終週にはコロナがサプライチェーンに与える影響がより明らかになったことに加え(アップルの業績下方修正など)、コロナも韓国、日本での感染者が増え、イタリアやブラジルでも感染者が増加していることから、全世界的なパンデミックのリスクが高まりました。

結果とし、全世界の株価は大きく調整しました。日本株は1月につけた24,000円から10%以上下落したことになります。

PER・EPS

21,000円の水準でも日経225のPER(株価収益率)はまだ13.5と、過去3年の平均からさほど離れているわけではありません。むしろ、過去3年の平均程度の水準です。

日経225 PER推移(投資の森より)

日経225の一株あたりの利益は現在、1600円程度と予想されています。

まだ日経225に含まれる各社は明確な2020年の業績予想を出してはいませんが、2020年は増税による国内市場の縮小、コロナによるサプライチェーンやインバウンドへの影響、などを考慮すると一株あたり利益は減少することが予想されます。

仮に景気後退への不安が広がり、PERが2018年後半の12程度まで落ちて(▲15%)、今年の一株あたり利益が10%落ちると仮定したシナリオの場合、理論的な株価は

1,600円/株 X 90% (利益の下落) X 12 (PER)= 17,280 円

となります。現在の水準から、さらに20%落ちて2016年くらいの株価になるイメージです。

現実的にはその水準まで落ちる前に政府が財政、金融政策を総動員して景気を維持しようとする可能性が高いですし、日銀とGPIFが買い支えるのでそこまでは落ちないと思います。

ただし、コロナウイルスがパンデミックとなり、かつアメリカでサンダースが大統領に選ばれて、株式市場が悲観的になった場合には、十分あり得る水準かと思います。

一つの想定として、現状から20%落ちるリスクは念頭に入れると良いかもしれません。

投資判断と学び

GDPの速報が出た後に、今年の日本経済はかなり悪くなりそうだと予想し、日経225、三井住友、ソフトバンクグループを売却して利確しました。コロナ関連でここまで調整が入るのは予想外でしたが、結果的にこの判断は正解で、これらの銘柄については十分な利確ができました。

「船が沈みそうになったら飛び降りる」ことで、結果的にうまく利確ができ、功を奏しました。

一方で、太陽光設備に投資する、インフラファンドであるタカラレーベンインフラ法人を火曜日に少し買い増ししたのは悪手でした。

タカラレーベンインフラ投資法人は、

  • インフラファンドは収益と配当が安定していること
  • 現在の株価での配当水準は約6%と過去と比較しても適正水準であること
  • 4月の指数化で流動性が増すこと
  • 5月が配当が確定する月であり、配当月に向けて上昇する傾向があること
  • 米国・日本の金利が下がれば利回りのスプレッド上昇で株価も上昇する傾向があること
  • ESG(環境・社会・ガバナンス)のトレンドに乗って需要が増える可能性が高いこと

から5月に向けて上げていくだろうと想定して購入しましたが、結果的には購入のタイミングが最悪でした。

120,000円で少量購入しましたが、全体の下げに引っ張られる形で、そこから5%程度下げています。

タカラレーベン インフラ株価推移

「リスク回避での売りが強い相場では、たとえディフェンシブな株でも結局下げからは逃れられない」ということを学べました。個別株を分析して銘柄を選定するのは大事ですが、「全体の相場の地合いがリスク回避になっている時には個別株の事情関係なく下がる」というのは良い学びでした。

今回の買うタイミングでは、焦って購入する必要はなかったはずです。反発するだろうから今のうちに賭けよう、という短期的、投機的な姿勢で投資をするのではなく、市場心理を見極めて、ファンダメンタルズを見て、十分に割安なタイミングで購入できるまで待つべきでした。焦って投資をして良いことはない、という失敗例です。

ロシア株も売却しました。こちらは原油相場の行方が怪しくなってきたことと、全体の相場がさらに落ちる可能性の方が高いと考え(特にアメリカでコロナが広まる事による米国企業の業績への悪影響が懸念されるため)利確しました。

こちらも利益は出ていますが、利確が遅すぎ、結局140円で手放すことにしました。160円で売る機会を逃したことが悔しいです。10%落ちたら売却、などと自分なりのルールを決めて、ルールに沿って売買をするべきでした

ロシア株(1324)

米国株

PER・EPS

S&P 500 PER

S&P500の予想PERは先週まで19.0と歴史的にもかなり高い水準にありました。

19.0というのは過去5年平均の16.7、過去10年平均の14.9より大幅に高く、2002年以来の高い水準です。特に 生活必需品、公共インフラ産業のPERが歴史的高値になっており、投資家がディフェンシブになっていることを示していました。

また、2020年の予想EPS(一株あたり利益)も2019年から7%増加する、というかなり楽観的な予想がされていました。

アナリストの一株あたり利益予想の推移

つまり、アメリカのS&P500の急上昇は、一株あたり利益の7%成長という楽観的な見通しと、それに伴う成長期待からのPERの高まりの二つの要素によってもたらされていました。

$3,300 (暴落前のS&P500の)= $176(一株あたり利益) x PER 19倍

ですね。

ゴールドマンサックスが2月27日に出したレポートによると、2020年の米国企業の一株あたり利益成長は0になる可能性がある、とのことです。つまり、一株あたり利益が2019年のS&P500企業のEPSの伸びは実はわずか0.6%ですし、2020年は中国の経済成長の減速、コロナによる消費の冷え込み、の影響を考慮すると十分あり得る数字です。

今週の株価の10%下落は、EPSの下落を反映した、始まりにすぎないかもしれません。

米国企業の株価は高い成長期待によるPERの伸びに支えられているので、もし市場参加者が米国企業の1株あたり利益成長率が鈍り、そのために成長期待(PER)が過去10年平均の15まで落ちるとすると、

$163(1株あたり利益 ) x PER 15倍  = 2,450

つまり、市場心理が悪化すれば、さらに20%、S&P500が落ちて、$2,450まで落ちることも十分ありえます。今週の10%と合わせて30%の下落。実際、2019年の株価は期待の上昇で30%とかなり急激にあげたため、期待が剥がれて、歴史的な株価上昇の軌道に戻る、といっても良いかもしれません。

S&P500 Price

投資判断と学び

米国株は売却はせず、火曜日に下落した後に、良い機会だとFacebookとAlibabaを少し購入しました。こちらも落ちるナイフを掴みにいった結果、見事に刺さって現在は5%くらいずつ含み損が出ています。唯一の救いは少額での試し買いであったため、傷が浅いことです。

FacebookもAlibabaも、コロナウイルスへの不安から人々が自宅にいるようになると、使用頻度が上がり、ビジネスとしては伸びるはずです。特にFacebookはインターネット上だけのサービスであるので、サプライチェーンへの影響も関係ありません。

どちらの株も、PERは市場での競争力と成長性の観点から見ると、適正だと考えています。

それにも関わらずFacebookが落ちた理由は、シンプルに相場の需給で売りが圧倒的に優先であったためでしょう。

日本株と同じ学びですが、「株価は個別の企業の業績よりも、全体の市場心理に影響される」ということです。特に今回のように市場が不確実性を感じてパニックになっている場合は、落ちるナイフを掴むと怪我をする可能性が高いと感じました。

オーストラリア株

オーストラリア株では、もともと持っていたポジションがあまりよくないことに加え(現金比率を減らすため、やや高値と感じながらも株を購入していました)、利確・損切りのタイミングを逸して、損失を広げてしまいました。

「損切りルールを守る」ことは基本だとは思いますが、実践してみてその難しさを感じました。損を確定するのは利確よりも抵抗がありますし、やっぱりやってみないと難しいです。良い経験、学びとなりました。

また、オーストラリア株は景気敏感株が多くを占める市場で、僕の知識が足りていないまま景気敏感株に投資をしていたので、結果的に日米株よりも大きなダメージを受けることになってしまいました。

やはり自分が詳しいと自信の持てない個別株に投資は避けたほうが良い、ということをあらためて学べました。

まとめ

  • 日本株、米国株共に10%落ちた現在もまだ高値圏にあり、市場心理の悪化が続いて成長への期待が剥がれれば、あと20%は落ちる可能性がある
  • 個別株のファンダメンタルズは大事だが、それ以上に市場心理が重要。全体が売り一色であれば、業績と関係なく下がる
  • 急激な値下がりが起きたときに保有株をどうするかの想定ができておらず、タイミングを逃した。何を新しく買うかだけでなく、保有株をどうするか、も考えておき、利確・損きりルールを設定しておくべきだった
  • 個別株へ投資をするときには、まず売り方を覚えること。売りのタイミングがリターンを決める

なぜFacebookなのか、はGAFA+Microsoftの分析をどうぞ。

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ソフトバンクを支える、アリババ(BABA)の事業・株価分析

ソフトバンクグループの価値の半分以上を占めていると言っても過言でない、中国でNo.1のeコマース企業であるアリババの株。けれど、アリババのビジネスについて、どのくらいご存知でしょうか?

今回はアリババの事業、株式について分析してみます。

アリババの事業

アリババ2019年12月期事業別売上、利益

国内eコマース事業

アリババの事業の中核はeコマース(オンラインショッピング)で、タオバオとTモールが主なサービスです。

タオバオは中国版のeBayで、個人が商品を売りに出しており、インフルエンサーがタオバオLiveを行い商品を販売するなど、インターネット上でありながらライブ感のある市場を作り出しています。日本企業の例では、メルカリのような感じです。

Tmallはローカルからインターナショナルのブランドが並ぶサービスです。日本企業で言えば近いモデルは楽天です。

こちらも都市部以外に順調に広がってきています。EBITA (利息、税金、償却前利益)の点では、アリババはオンラインショッピングが稼ぎ頭で、他の成長ビジネスの原資を稼ぎ出しています。

Freshippoは実店舗型のビジネスで、Tier 1、Tier 2都市に197店舗を持ちます。こちらは実店舗からの日用品の配送などの拠点にもなっています。

Kaolaは2019年9月にNetEaseから買収した、輸入商品を主に扱うプラットフォームです。Tmall Globalと競合するプラットフォームでしたが、アリババは買収を行うことでうまく競合を自社に取り込みました。巨大ネット企業が全世界でよくやる手口ですが、競合になりそうなサービスを早めに買収して、独占的な地位を保てるようにしています。

Cainiaoはデリバリーサービスで、アリババが注力している領域です。売上は前年比67%像のRMB7,518m (US$1,080m)とオンラインショッピングの5%を占めています。アマゾン、楽天と同じく、アリババは配送能力を高めることで、出品者、ユーザーの顧客満足度を高めようとしています。

アリババの売上の内訳(2019年12月期)

アリババは今期、Cainiaoへの出資額の引き上げを行い、RMB23.3b (US$3.3b)を投資して、持分を51%から63%へ引き上げました。

2019年のEBITDA(利子、減価償却前利益)はマーケットプレイスが稼ぎ頭で、前年比25%増。海外事業、そのほか事業の赤字は継続しているけれど、マーケットプレイスの稼いだ金額に比べて赤字の伸びが抑えられいるため、アリババ全体のEBITDAは36%増です。

年間の購入者数も右肩上がりで、2018年末の6億3600万人から7億1100万人まで増加(7500万人)しています。

Alibaba annual consumer 2019q4

モバイルの月間利用者数は増加の速度を早めており、前年比で1億2500万人多い、8億2400万人(17.9%増加)

Alibaba MAU 2019Q4

アリババは都市部ではすでに浸透しており、今後の成長は主に発展しているTier 1やTier 2の都市ではなく、Tier 3以下の都市から期待されます。

中国のeコマースのシェアでも、アリババは56%と非常に高いシェアを維持しています。アリババの購入者7億1000万人に対し、2019年6月末時点で、JD.comは3億2000万人、Pinduoduoは4億8000万人。

中国の2019年eコマースシェア

Pinduoduoはグルーポンのような仕組みで、安値を売りにしたサービスです。主にTier 3以下、特に価格に敏感な農村部で人気。アリババが今後ユーザーを増やしていく時に、Pinduoduoと競合することになります。

JD.comは流通に力を入れており、流通ネットワークでは中国のeコマースで最も大きなネットワークを持ちます。2019年の顧客獲得合戦ではアリババに軍配が上がっていますが、JD.comも年率20%で売上を伸ばしており、依然としてアリババにとっては脅威です。

価格競争力のある製品を提示してPinduoduoの顧客層をいかに攻略するか、流通網を整備してJD.comの優位性をいかに潰すか、がアリババにとって鍵になりますし、競争が事業上のリスクになります(ちなみにTencentはJD.comとPinduoduoの両方に投資をしています)。

国際eコマース事業

アリババの国際事業は東南アジア圏で展開しているラザードとAli Expressです。売上高は全体の5%程度。

ラザードは注文量が前年比97%で増えたと開示しています。国内事業の規模と比べれば小さいですが、前年度比27%と順調に伸びています。

クラウドコンピューティング

アリババのクラウドコンピューティングビジネスは売上の7%を占めます。こちらはシェアが50%近い1位であり、前年比62%で成長している、将来が楽しみなビジネスです。

2019年12月期では、RMB$10b (US$1,540b)を一四半期で売り上げました。Canalysの調査によれば、Alibaba CloudはグローバルでもGoogleに次ぐ4位で、シェアを1ポイント伸ばしています。

Cloud Computing 2019Q4 Share

中国のクラウドコンピューティングは、中国の機関の白書によると、2023年にRMB300b ($42.3b)まで拡大すると見込まれおり (中国語ニュースはこちら)、これは5年間で3倍になる速度です。

クラウドコンピューティングは規模が大きくなればなるほど、規模の経済が働いて単価を安くできるビジネスですので、国内シェアが1位であるということは、それだけアリババは有利なポジションにあります。

また、アリババは国内eコマースの基幹システムをアリババのクラウドコンピューティングに移管させていく方針でして、国内No.1のビジネスのクラウドコンピューティングへの移管が可能になれば、他の企業への売り込みもしやすくなると考えられます。

一方、2位のTencent、3位のBaiduもアリババ以上の速度でビジネスを伸ばしており、競争は激化していることは事業上のリスクです。

その他のビジネス

そのほかのビジネスは売上の5%を占めます。代表的なのは動画配信サービスのYouku (中国におけるYouTubeのようなもの)でして、日次のユーザーが対前年比で59%増えています。

しかし、eコマースと比較すると規模として小さく、BAT(Baidu, Alibaba, Tencent)が激しく争う、競争が激しい領域です(百度のiQIYI、騰訊の騰訊ビデオが競合)。

IHS Markit Technology estimates that iQiyi has 99.4 million paying subscribers, Tencent has 94.9 million and Youku has 81.1 million. According to a recent report by Ampere Analysis, China will have 305 million SVoD subscribers by the end of 2019, compared to 158 million in the US (Screen Dailyより)

また、近年の中国政府の規制により外国産のビデオの割合や歴史ドラマの割合を規制されるなど、規制の影響によりユーザーのニーズに応えられなくなっていることも市場の成長を鈍化させています。

市場全体でサブスクリプションの伸びが鈍化しており、アリババも対前年比でわずか14%増と他の分野と比べてあまり伸びているビジネスではないです。アリババを考える上ではさほど重要ではないでしょう。

“Innovation Initiative”の中にもいくつかビジネスが入っていますが、そのうちの一つがAlibaba Mapビジネスです。ただし、こちらも売上はそこまでではないので、アリババを考える上で現状はさほど重要ではありません。

このセグメントで最も重要なのは、Ant financialです。

2019年9月23日に、アリババはAnt Financialの33%の株式を入手しました。Ant FinancialはAli Payを運営している会社で、2019年9月末時点で、全世界で12億人のユーザーがおり、そのうち9億人が中国にいるという、中国人にとっては必須のインフラになっています。

AliPayはWeChat Payと並んで、中国人であれば、ほぼ持たないといけないインフラの決済サービスです。決済の情報は広告の最適化にも役立ち、このインフラを握っているということがAlibabaのeコマースビジネスの強みにも繋がっています。

アリババの利益

オンラインのeコマースのEBITDA(利子、減価償却前利益)の伸びは26%と、売上の伸び38%に比べるとやや鈍化しています。これは、マージンがやや悪化していることを意味します。

ただそれでも、EBITDAのマージンは41%と依然としてかなり高いです。2019年12月期も投資分野の赤字の割合が縮小したことからビジネス全体のEBITDAの伸び率は上昇し、前年比39%増と順調に成長しています。

Alibaba 2019 Q4

アリババの株価分析

アリババの2019年の実績を見ると、売上高は42%、EBITDAは35%で伸びており、これはGAFAと比べてもかなり良い水準です。

利益の伸びが100%を超えているのは、2019年の第3四半期にAnt Financialの33%の株式引き受けを行ったことによる、特別計上があったためです。

(RMB) 2018 2019 2019 Growth
Revenue ¥345,278 ¥488,895 42%
Income from operations ¥57,540 ¥93,064 62%
EBITDA ¥116,231 ¥157,388 35%
Net Income ¥63,496 ¥163,381 157%

2019年の特殊要因を除いて比較すると、2020年2月15年時点での株価$219でのPERは32.7となります。こちらはAmazonよりは低いですが、GoogleやMicrosoftとほぼ同じ水準です。

2018E 2019 2019 Growth
EPS per ADS in RMB ¥26.4 ¥65.0 146%
EPS per ADS in US$ $ 3.8 $ 9.3 146%
Adjusted EPS per ADS in USD $ 3.8 $ 6.7 78%
Alibaba Stock Price 139.09 219.63 58%
PER (Adjusted) 36.8 32.7 -11%

アリババは中国国内のeコマースとクラウドコンピューティングでNo.1の地位を築いていること、中国国内のeコマース、クラウドコンピューティング市場の伸びを考慮すれば、この高いPERは理解できます。

また、アリババは2018年9月に$6bの自社株買いを発表し、2019年に自社株買いを行なっています。余剰のキャッシュを株主へ還元するのは、株主重視の姿勢が見え、株主にとってはプラスです。

まとめ

  • アリババはeコマースで中国国内で56%のシェアを握る、No.1企業であり、依然として高い成長率と高い利益率を誇る
  • アリババはeコマースで稼いだ資金をクラウドコンピューティングやエンターテインメントに投資をしている。特にクラウドコンピューティングはシェア50%近い1位であり、前年比60%以上で成長している
  • アリババのエンターテインメント事業は二桁前半で成長しているが、BATで競い合う厳しい競争環境かつ市場成長速度も鈍化してきており、あまり期待できない
  • アリババの利益率は減少傾向にあるが、依然としてEBITDA(利息、税、償却前利益)で32%と高い水準。
  • アリババの株価のPERは一時要因を除いたベースで32.7とGoogleやMicrosoft並。2019年度の一株あたり利益が78%伸びたことを考慮すれば、納得できる水準

GAFAの記事はこちらになります。

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また、米国株のビジネス・株式の分析は下記のボタンから飛べます。

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ソフトバンクグループ(9984)の株価はどうして20%も上がったのか?

ソフトバンクグループの株価はこの1週間で急騰し、20%以上も上がりました。どうしてでしょうか?

今回の記事は、株価の急上昇の背景と本日発表の決算について説明します。

今回は下記の記事のアップデートになります。ご覧になられていない方は、先に下のリンク先記事を読んでいただくと今回の記事をより面白く読めると思います。 [st-card myclass=”” id=1406 label=”日本株” pc_height=”” name=”” bgcolor=”” color=”” fontawesome=”” readmore=”on”]

エリオット・マネジメントの株式取得

エリオット・マネジメントはアクティビストと呼ばれる、投資会社です。

エリオットは、投資対象の株を一定割合購入し、株主として経営陣に株主価値向上の施策を打つようにせまることで、リターンを得ていく手法を得意としています。

今回も、ソフトバンクグループに対して、自社株買い、社外取締役の受け入れ、ビジョンファンドの透明性の向上、の3つの施策を提案しました。社外取締役の受け入れ、自社株買い・配当の増額、特定事業の売却提案、などはアクティビストファンドがよく行う提案です。

ソフトバンクグループについては「アリババ株の保有益の方がソフトバンクグループの時価総額よりも高く、単純にアリババ株を全て売却させて全て自社株買いをさせれば儲かる状態にある」ために狙われました。

ソフトバンクグループの株はエリオットによる圧力により孫さんが自社株買いなど株主利益になる短期的な施策を打つのではないか、と予想して上昇しました。

また、エリオットの存在が、孫さんがビジョンファンドで暴走しないような楔になるのではないか、という予想が働いたことも影響していると考えられます。

柳井さんがソフトバンクの社外取締役を辞められたことで孫さんに一定の歯止めをかける人が少なくなっていたので、エリオットの存在はバランスを取るという意味で、ソフトバンクグループの株主にとっては利益が大きいかと捉えています。

スプリント・Tモバイルの合併の承認

前回の記事にも書きましたが、スプリント自体はキャッシュを奪っていくお荷物事業であり、ソフトバンクグループにとっては資産というよりも負債でした。

スプリント・Tモバイルの合併は連邦レベルの許可は得ていましたが、州が訴訟を起こしたことにより、ストップがかかっていました。 2年近い争いの後、2020年2月11日に、地裁で合併の承認を得たとの報道がありました。

これにより、合併が成立する可能性が上がり、ソフトバンクグループからお荷物が外れる、ということを好感して、株価はさらに10%近く上昇しました。

しかしながら、この株価上昇はやや勇み足のような気がします。

第一に、まだ州が上訴をする可能性があるため、上訴されればさらに合併の承認までの期間が長くなりますし、また合併が成立しない可能性も出てきます

第二に、合併承認の条件として、3年間の値上げ禁止、農村部でのネットワーク網の整備、通信網の開放、といった様々な条件をつけられています。ソフトバンクグループは合併後は新会社の株式を保有するため、こちらの価値がどうなるのかも?です。

ソフトバンクグループの第3四半期決算について

ソフトバンクグループおなじみ、いつもの株主価値のグラフです。

ソフトバンク2019Q2
ソフトバンク2019Q3決算

9月末から株主価値は5兆円増えた、といっていますが、そのうちの80%の約4兆円がアリババの含み益です。孫さんが情熱の97%を注いでいるというビジョンファンドの価値上昇は0.1兆円で、残りのほとんどは州レベルでの合併承認の報道によるスプリントの株価上昇です。

つまり、ソフトバンクグループの大半はアリババの含み益の会社であり、株主価値はアリババの株価に左右される、ことは何も変わっていません。  

また、ビジョンファンドで累計損益が$3.0bn (3250億円)前四半期と比べて増えた、と言っていますが、ややミスリーディングです。

ソフトバンクのビジョンファンドのスキーム上、10兆円の投資元本のうち、4兆円分には年利7%の固定支払いを行う契約になっています。つまり、年間2,800億円、四半期ごとでは700億円の外部投資家への支払いが必要になります。ソフトバンクグループの視点から見る時には、この支払い分は割り引いて考える必要があります。

また、ソフトバンクグループの出資分は3兆円であり、外部投資家への固定支払いを行なった後、確定した利益を3兆円出した他の外部投資家と折半することになります。

つまり、累計損益が$4.3b (4,600億円)あるといっても、それがソフトバンクグループにそのまま入るわけではないことに注意が必要です。

ビジョンファンド 2019Q3

ソフトバンクグループの株価上昇要因

  • エリオットがゴリゴリに株主還元を迫り、孫さんにアリババ株を売却させ、自社株買いさせることに成功する
  • スプリント・Tモバイルの合併成立(州が上訴しない)
  • アリババ株の上昇

ソフトバンクグループのリスク

ビジョンファンドの次のリスクは、ソフトバンクが$10b (1兆1000億円)の価値がある、と言い$1.5bn (1,600億円)を注ぎ込んだOYO(オヨ、ホテルチェーン)です。

OYOはホテルに、「OYOのチェーンになれば、賃料保証をするよ」と言ってOYOグループに引き込み、フランチャイズ化します。そして、フランチャイズの規模を活かして、宿を探しているお客さんに、OYOのリーズナブルで安心なホテルを提供する、というビジネスモデルです。インド版の東横インやスーパーホテルと言うとわかりやすいかもしれません。

ホテルのフランチャイズ自体は昔からビジネスモデルですが、OYOの場合はテクノロジーを駆使してダイナミックプライシング(価格を空室率などに応じて変動させること)を用いて売上の最大化と空室率の最小化を実現している、ということをウリにしてソフトバンクグループから多額の投資を勝ち取りました。

得た多額の資金を元に、フランチャイズを急拡大させ、同時に赤字も急拡大しています。主な収益源は予約時にフランチャイズの加盟店から受け取る「手数料」です。

この「賃料保証」、「手数料」が結構曲者で、実際にはOYOはなんだかんだ理由をつけて賃料保証を支払っていなかったり、手数料をかなり多めにとっていたりする模様です。実際、インドで訴訟を起こされていたり、中国でもビジネスが行き詰まったりと、インド・中国でリストラを行なっている状態です(Nikkei Asia Reviewなど)。

OYO自体はキャッシュフローが赤字なので、どこかで追加の資金が必要になります。

WeWorkと同じくソフトバンクグループが救済に入るのか、もしくは外部投資家を入れるのか(その場合、いったいいくらの時価総額になり、どれだけ損失が出るのか)はわかりませんが、再びの数千億円レベルの減益に繋がる可能性はあります。

また、ARMのビジネスは今期も前年比で微増程度です。価値ある企業だとは思いますが、2.7兆円の企業価値があるのかは、、、です(詳しくは以前の分析記事をご覧ください)。

アーム第3四半期決算

まとめ

  • ソフトバンクグループの株価上昇の第一の理由は、アクティビストのエリオット・マネジメントが株式を取得したことで、経営陣へのプレッシャーが強まり、より株主還元を行うようになると株主が感じたから
  • 第二の理由は、スプリント・Tモバイルの合併が成立する可能性が高まり、お荷物事業であるスプリントをソフトバンクから切り離せる可能性が上がったから。
  • 大きなリスクの一つ目はスプリント・Tモバイルの地裁判決に対して、州が上訴する可能性が残っている。上訴した場合、合併成立までまた時間がかかり、株価下落要因となる。
  • また、ソフトバンクのビジョンファンドは第二のWeWorkリスクを抱えている。1兆円の時価総額を割り振っているOYOはトラブルが続いている。OYOはキャッシュフロー赤字であることから資金が近いうちに必要となり、現在の企業価値を正当化できなくなった場合、WeWorkと同じく減損となる
  • ARMの企業価値2.7兆円も売上高、利益の成長を見る限り、正当化できるかが疑問であり、割り引いて考える必要がある
  • 良くも悪くも、ソフトバンクグループの株価は、アリババ株の保有益で決まり、アリババ次第

ソフトバンクグループについての詳しい企業価値分析はこちら
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高値づかみを防ぐための、株式投資に役立つ先行指標まとめ

いざ投資を始めようとした時に、「いつ投資をするか」、は迷いますよね。「高値づかみをする可能性を減らしたい」、という場合に、「今の価格が割高なのかどうか」を判断するのに役立つ指標を7つ紹介します。

基本となる指標

1、2. PER・EPS(日本株)

日経平均の価格は、EPS(Earnings per Share: 一株あたり利益) × PER (株価収益率:Price to Earnings Ratio: 株価を一株あたり利益で割った値)で表されます。

日経平均とPERの推移(投資の森より)

日経平均のPER(株価➗一株あたり利益)は現在14.51と、過去5年の平均程度まで上がってきています。直近2年間の安値である2018年12月に19,327円をつけた時のPERは10.8でした。また、2019年8月に20,618円まで落ちた時のPERは11.64でした。

実は、一株あたり利益は2019年は減少傾向です。米中の関税の応酬で、設備投資に関する企業の利益が特に落ちました。

2019年の日経平均一株あたり利益(株式マーケットデータより)

今の日本の株価をPERとEPSの観点から見ると、EPSは下落傾向である一方、全世界的な金融緩和と米中の貿易摩擦が緩和されるという期待から、PERが上昇し、株価の上昇に繋がっています

1. 2. EPS・PER(米国株)

米国株はほぼ一貫して上昇を続け、特に2019年は30%近い上昇をしました。

S&P500の株価の推移(Googleより)

米国株(S&P500)の予想PERの推移です。

S&P500の予想PERの推移(FACTSETより)

米国の予想PERはほぼ一貫して上昇を続け、2018年の冬に一度調整が入りましたが、その後も順調して伸びてきました。、現在は18.7と2017年に急落した水準まで上がってきています。

過去5年間の平均予想PERが16.7で、10年間の平均予想PERは約15.0ですので、現在は過去10年間の平均よりも予想PERが24%程度高いことになります。

米国のS&P500の企業のEPSは2014年から2016年までは停滞し、2017年からは大きく成長しています。2018年にEPSが大きく伸びているのはトランプ大統領が行なった連邦法人税を35%から21%へ減税した影響が大きいです。

S&P500のEPSの推移(FACTSETより)

一方、2019年のEPSは2018年と比較して、微増が予想されています(1%程度)。

つまり、この2つのチャートからは、2019年の株価の上昇の1%は実際のビジネスにもとづくEPSの上昇から、残りの27%以上は将来の成長期待に基づいての株価上昇ということがわかります。

2020年、2021年のEPS成長はアナリストによる予想ですが、過去の実績や現在のコロナウイルスによる中国経済への影響をみる限り、やや楽観的なように見えます。

株価が将来の成長期待を元に上がっている時には、実際のビジネスの成果であるEPSが伸びていない場合、期待が剥げ落ちた時の下落が大きくなる可能性があるため、注意が必要です。

景気の先行指標

3. ラッセル2000

米国の小型株2,000銘柄(米国の時価総額上位3,000銘柄のうち、下位2,000銘柄の時価総額加重平均型指数)です。

ラッセル2000の推移(Googleより)

小型株の方が景気の影響を受けやすいため、大型株の集合であるS&P500よりも先に株価が動きやすい、というのが先行指標としてラッセル2000が注目される理由です。

現状はコロナウイルスの広がりから少し落ちてまだ戻ってはいませんが、高値圏で推移しています

4. バルチック海運指数 (Baltic Dry Index)

バルチック海運指数は世界の不定期船の輸送レートを指数化したものです。不定期船のレートは、ざっくり言えば燃料となる原油価格と、船の輸送の需給によって決まります。

わかりやすく言えば、貿易でモノがどれくらい活発に流れているか、に関連のある指数です。

バルチック海運指数の推移(Trading Economicsより)

バルチック海運指数は昨年末から急落しており、過去5年で最低レベルまで落ち込んでいます。つまり、それだけモノの移動が滞っている=世界経済の状態があまりよくない、ことを示唆します。

5. 石油価格 (WTI Crude Oil Price)

輸送のみならず、様々な製品の原材料にも使われる石油価格も世界の経済状況を反映する先行指標の一つです。

石油価格の推移(WTI)

石油価格はコロナウイルスが中国の生産活動を低下させるという懸念から下落を続け、現在$50近くまで下落しています。

6. 米国新規住宅着工件数

住宅には様々な産業が関わってくるため、米国の新規住宅着工件数も重要な先行指数です。一般的に、景気がよくなればなるほど家を建てたいという人が増えると、住宅着工件数も増えます。

米国新規住宅着工件数の推移 (Trading Economicsより)

直近の2019年12月は年160万戸のペースと予想を大幅に上回る数字でした

7. 米国中古住宅販売

米国では住宅を資産と考え、住宅価格の値上がりは消費の活性化と関連があり(懐が緩くなる)、中古住宅販売の件数・価格も経済の好調さを表す一つの指標です。

米国中古住宅販売推移 (Bloombergより)

直近では中古住宅販売は在庫不足にも関わらず好調で、住宅購入の需要の力強さを表しています

まとめ

  • EPS(一株あたり利益)はビジネスの実態を、PER (株価収益率)は将来への期待を表し、株価を構成する二つの基本となる指標
  • 日本株のPERは歴史的には平均程度、米国株のPERは歴史的には高値の水準にある。
  • 米国の2019年のEPSは微増であり、2019年の株価の値上がりのほとんどはPERの上昇による
  • 株価の先行指標として、米国の小型株指数であるラッセル2000、バルチック海運指数、石油価格、新規住宅着工件数、米国中古住宅販売がある。どれもS&P500など大型株の株価に先行して動く指数だと考えられている。
  • バルチック海運指数、石油価格は歴史的な安値にあり、モノの流れと投資が滞っていることを示唆する
  • ラッセル2000の推移、新規住宅着工件数、米国中古住宅販売は上昇基調にあり、米国経済が依然として好調であることを示唆する

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三菱商事(8058):前年度割れ決算が続く高配当株の株価分析

三菱商事が第3四半期の決算を発表しました。今回の記事では三菱商事の最新の決算を元に、通期の利益目標が達成できそうかを見ていきます。

また、今回は下記の記事のアップデートになります。もしご覧になられていない方は、先に下のリンク先記事を読んでいただくと今回の記事をより面白く読めると思います。
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事業系

一言で言うと、全般的に苦しい決算です。事業系、市況系ともに前年比を割っている事業が多く、12事業部中、9事業部で前年比マイナスです。特に自動車は三菱自動車のビジネスが苦しいことで下がっています。

大幅な増益の産業インフラは前年度に千代田化工建設を救済した際の一過性の損失がなくなった、と言うだけで、事業そのものが劇的によくなったわけではありません。同じく、食品産業も前年度の海外損失が今年はないので見かけは増益に見えていますが、巡行利益はむしろ前年比マイナスになっています。

複合都市のビジネスは順調に成長していますが、利益の水準としては全体の8%と小さいため、全体のマイナスをうち消せるわけではありません。

前回の第二四半期の決済の時に、目標利益を6,000億円から5,200億円へ下方修正しましたが、あと1四半期を残して進捗率は72%。

事業系はほとんど伸びていませんし、市況系ではかなりコモディティの価格が下落しているため、市況系がさらに減益となる可能性が高いです。つまり、通期での目標達成は事業売却をするなどして利益を出しに行かないと厳しい状況です。

市況系

市況系ビジネスの巡行利益(一時的な変動要素を除いた利益)を見ていきます。金属資源、天然ガス、産業インフラ、の3つの事業部が三菱商事を支える資源ビジネスです。

事業部 事業内容 2018年第3四半期
巡行利益
2019年第3四半期
巡行利益
前年同期比
金属資源 石炭、銅 1,568 1,097 ▲471
天然ガス LNG事業 ▲147 ▲12 +135
産業インフラ プラント 158 51 ▲107
合計   1,579 1,136 ▲443

金属資源ビジネス

三菱商事のオーストラリアの原料炭ビジネスは市況系の半分の利益を占めます。そして、原料炭ビジネスは石炭の価格に影響されます。しかし、上図のように、2019年に入り原料炭の価格は下落傾向にあり、これが金属資源ビジネスの減益に繋がっています。

また、金属資源の第二の柱である、銅の価格も1月以降に中国の景気不安から急激に下落しています。

LME銅価格推移

三菱商事はチリ、ペルーに銅の権益を持っているため、銅価格の下落は収益に大きく影響を与えます(特にスポットの取引が多い場合)。

三菱商事 金属資源グループ

全体の利益の約30%を稼ぐ金属資源の見通しが第4四半期は暗いため、目標達成はかなり厳しいと言えます。

天然ガス

石油の価格推移(WTI)

天然ガスのスポット価格は石油価格に一定程度連動します。ご覧の通り、石油価格は1バレル$60から$51.3まで下落しています。固定費は変わらないため、長期にわたって一定価格で買い取る契約になっていない場合、15%売上が落ちると、利益はそれ以上に落ちる可能性があります。

産業インフラ

産業インフラの利益が前年比で改善されたのは千代田化工建設救済の時に生じた損失が2018年にあったためと、千代田化工建設の案件お進捗が予想以上に良く、一過性の利益計上に繋がったからです。

まとめ

  • 三菱商事の第3四半期は結構ボロボロ。事業系は10事業中7事業部が減益。
  • 市況系もオーストラリアの原料炭(石炭)、チリ・ペルーの銅、液体ガス(LNG)の価格下落により、利益が前年度より落ちている
  • 2019年の利益目標5,200億円の進捗率は72%。事業系では巡行利益が伸び悩んでおり、かつ純利益の30%を占める市況系の利益が3月末まではコモディティの価格下落による影響を受けるため、通期達成は難しいと予想される

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アマゾン(Amazon)の株価は決算後どうして上がったか:ビジネス分析

GAFAの一角であるAmazon。Amazonは先週決算を発表し、株価は一気に10%近くまで上がりました。Amazonの決算のどこが好感されたのでしょうか? Amazonの事業は将来性があるのでしょうか? 現在の株価は適正なのでしょうか?

決算内容を元に、説明していきます。

Amazonの決算内容

2018 2019 Growth
Net product sales $ 141,915 $ 160,408 13.0%
Net service sales $ 90,972 $ 120,114 32.0%
Total net sales $ 232,887 $ 280,522 20.5%

Amazonお売上高は2019年に20.5%で成長しました。Net Service Sales (AWS – アマゾンのクラウドサービスやAmazon Prime会員の会員費など)の伸びが32%と、Net product sales (Amazonでの買い物)の13.0%よりも上回っています。

一方、費用の伸びは売上の伸びよりも早い20.6%で伸びている。Fulfillment (配達費など)の伸びが18.2%と売上の伸びよりも早いのは、AmazonがAmazon Fresh (生鮮食品のデリバリー)を$14.99からプライム会員は無料にしたことなどが影響しています。

また、Amazon Prime Video(NetflixやHuluと競合する、Amazon版のオンラインビデオサービス)への注力から、番組制作費が増えており、Technology and contentの費用の伸びも売上の伸びを上回っています。

Operating expenses: 2018 2019 Growth
Cost of sales $ 139,156 $ 165,536 19.0%
Fulfillment $ 34,027 $ 40,232 18.2%
Technology and content $ 28,837 $ 35,931 24.6%
Marketing $ 13,814 $ 18,878 36.7%
General and administrative $ 4,336 $ 5,203 20.0%
Other operating expense (income), net $ 296 $ 201 -32.1%
Total operating expenses $ 220,466 $ 265,981 20.6%

結果として、Operating Income (営業利益)の伸びは17.1%と売上の伸びよりも悪く、営業利益率はわずか5.18%で、GAFAの中ではダントツに低いです。

これは、Amazonが利益を物流や顧客の便益を上げるために使って、顧客満足度を最大化させることに注力しており、利益を出す気がないことによります。

2018 2019 Growth % of sales
Operating income $ 12,421 $ 14,541 17.1% 5.18%
Interest income $ 440 $ 832
Interest expense $ (1,417) $ (1,600)
Other income (expense), net $ (183) $ 203
Total non-operating income (expense) $ (1,160) $ (565)
Income before income taxes $ 11,261 $ 13,976 24.1% 4.98%
Provision for income taxes $ (1,197) $ (2,374) -0.85%
Equity-method investment activity, net of tax $ 9 $ (14)
Net income $ 10,073 $ 11,588 15.0% 4.13%

利益率が非常に低いことから、法人税額も売上と比較すると非常に低いです。利益の17%ではありますが、売上高から計算するとわずか0.85%。

一株あたり利益の成長は14.3%とGAFAの中では中程度ですが、PER (Price to Equity Ratio – 株価を一株あたりの利益で割った指標)は89でGAFAの中でダントツに高いです。

2018 2019 Growth
Basic earnings per share $ 20.7 $ 23.5
Diluted earnings per share $ 20.1 $ 23.0 14.3%
PER 89.0

この高いPERは、市場がAmazonは将来にわたり、一株あたり利益を成長し続けられる、もしくはAmazonが利益に目を向けるようになればすぐに利益率は改善されると期待していることを示しています。

次のAmazonのビジネスの章で説明しますが、株価がポジティブに反応したのは、市場の期待を上回る速度で売上が成長したことと、AWSという利益率が高いサービスの伸びが特に良かったためです。

Amazonのビジネス

Amazon (北米)

北米はAmazonの売上の中でも61%を占める主要な市場です。この括りには、Amazonのマーケットプレイスに加えて、プライムの年会費も含まれます。

AmazonはUSのオンラインショッピングの市場では圧倒的な存在感を持ち、2位のeBayを大きく引き離す47%のシェアを持っています。さらに、20%以上で売上を伸ばしていっています。

2019年の売上は前年比で22%成長で、利益の伸びはマイナス16%です。

利益の伸びがマイナスになったのは、プライム会員の配達料を無料にしており、プライム会員が小口の注文を増やせば増やすほど輸送費がかかる構造に加え、かつ1 dayデリバリーなど配達関連のサービスを充実させていること、プライム会員に付属している無料のAmazon Prime関連サービス(Music, Video)の費用が結構かかっていることが理由と推察されます。

その先行投資のかいもあり、Amazonのプライム会員は北米で1億人を超えていると推定され、実に約3人に1人がプライム会員という、すごい状況です (Statistaより)
流通、サービスに投資をして顧客を囲い込もうとしているのは、ライバルを引き離し、顧客を自らのプラットフォームに留めるためです。

実際、小売No.1のWalmartも赤字を出しながら実店舗を使って、オンラインショッピングの領域でもAmazonを追い上げてきており、コスト競争力に優れるこの強力なライバルとの戦いは、今後さらに熾烈になっていきます。

競争に勝ち、今のAmazonの独占状態を維持するためには、いかに顧客を囲い込んでいくか、が課題になります。そのため、音楽やビデオなどプライム会員が無料で利用できるサービスを増やすことで、一人当たり売上高の高いプライム会員を増やそうとしています。

[st-minihukidashi fontawesome=”” fontsize=”80″ fontweight=”” bgcolor=”#3F51B5″ color=”#fff” margin=”0 0 0 -6px”]ココがポイント[/st-minihukidashi]

[st-cmemo fontawesome=”fa-hand-o-right” iconcolor=”#3F51B5″ bgcolor=”#E8EAF6″ color=”#000000″ iconsize=”200″]

Amazonの北米事業は年率20%以上で成長している市場で、Amazonはシェア47%を持ち、1億人以上のプライム会員を抱えていると推定され、非常に良いポジションにある。売上高は19兆円弱。しかし、競争相手を引き離すためにも流通、サービスに投資をしている段階にあり、利益率は4%未満と低い

[/st-cmemo]

Amazon (北米以外)

Amazonは北米以外でもサービスを提供しています(日本、ヨーロッパ、オーストラリアなど)。売上高は約8兆円と巨大ですが、成長率は北米より低い14%です。北米以外の部門は投資段階にあり、赤字です(国によってはおそらく黒字ですが)。

北米以外の成長率がやや鈍いのは、各国でローカルの競合が存在することが大きな理由として考えられます。例えば、日本であれば楽天が競合やメルカリなどが競合にあたります。楽天はアマゾンに次ぐ2番手ですが、それでも北米と異なり、アマゾンと楽天はユーザー数でいえばあまりかわりはありません。
同様に、ヨーロッパにおいてもローカルの競合が存在します。そのため、アマゾンとしても競争のために先行投資を続けざるを得ず、結果として赤字が続いていると考えられます。

[st-cmemo fontawesome=”fa-hand-o-right” iconcolor=”#3F51B5″ bgcolor=”#E8EAF6″ color=”#000000″ iconsize=”200″]

Amazonの北米以外の事業は年率15%で成長している市場で。ただし、北米以外ではローカルの競合がおり、Amazonが市場を独占しているわけではない。売上高は約8兆円。競争相手を引き離すためにも流通、サービスに投資をしている段階にあり、利益は赤字。

[/st-cmemo]

AWS (Amazon Web Service)

AWS (Amazon Web Service)はクラウドコンピューティングを提供するサービスです。企業はAmazonのAWSを使うことで、自社でサーバーを持つのではなく、Amazonのサーバーを借りて大量のデータを保管したり、クラウド上のコンピューターでデータ処理をしたりすることができます。

以前は自社でサーバーを持ち、データベース管理や分析を内製化する企業が多かったのですが、近年はAmazon、Microsoft、Googleが安価でクラウドサービスを提供していることから、だいぶ参入障壁が下がりました。

クラウドサービスを用いた方が自社でサーバーへの投資を行い、かつ運用・管理する手間が省けることから、今後もクラウドサービスの需要は拡大していくと考えられています。

AmazonはこのクラウドのサービスでNo.1で (Synergy Research Groupより)、約40%のシェアを保有しています。2位のMicrosoftのシェア (20%)の2倍、3位のGoogleのシェア(10%)の4倍です。
クラウドサービスの市場は上位3位が70%のシェアを持つ寡占市場であり、かつ年率30%以上で成長しています。規模が大きければ大きいほど規模の経済が働いてコストを安く提供できるため、シェアNo.1のAmazonはこの市場において非常に良いポジションにいます。

事実、AmazonのAWSの売上高は36.5%成長と、市場を上回る速度で成長しています。

AWS 2018 2019 Growth
Net sales $25,655 $35,026 36.5%
Operating Expenses $18,359 $25,825 40.7%
Operating Income $7,296 $9,201 26.1%

AWSは非常に利益率が高く、2019年の営業利益率は26%になります。Amazonらしく、利益率は前年比で悪化していますが、利益の絶対額は$2b (2,200億円)増加しています。

足元の第4四半期の成長はやや鈍っていますが、それでも十分早い速度です。

[st-minihukidashi fontawesome=”” fontsize=”80″ fontweight=”” bgcolor=”#3F51B5″ color=”#fff” margin=”0 0 0 -6px”]ココがポイント[/st-minihukidashi]

[st-cmemo fontawesome=”fa-hand-o-right” iconcolor=”#3F51B5″ bgcolor=”#E8EAF6″ color=”#000000″ iconsize=”200″]

AmazonのAWS事業は年率30%以上で成長している市場で、シェア40%を持ち、非常に良いポジションにある。売上高は4兆円弱で、営業利益率も26%と非常に高い。

[/st-cmemo]

Amazonが抱えるリスク

Google、Facebookと同じく、独占的なプラットフォームを持つAmazonですので、規制当局の目が年々厳しくなってきています。独禁法違反の商取引や節税スキームなどの理由で刺される可能性があり、その場合は利益の減少理由になります。

また、どの分野でも競争が激しくなってきているのが事業のリスクです。北米のオンラインショッピングではWalmartが、北米以外の市場でもローカルのプレイヤーがアマゾンへ対抗しようと投資を加速させており、こちらもAmazonの売上や利益の伸びを鈍化させる要因になります。

また、Googleがショッピングの比較などをより真剣に始めた場合、AmazonへのSEO経由での流入が減り、売上に悪影響を与える可能性があります。

AWSについても、米国国防省の大型案件をMicrosoftが受注するなど、Microsoftの激しい追い上げにあっています。

これらの競争の激化は事業上のリスクです。

まとめ

  • Amazonの売上高は31兆円。北米事業が19兆円、北米以外が8兆円、AWSが4兆円。
  • 北米事業は1億人のプライム会員をもち、顧客を囲い込んで市場の約半分を支配しているが、Walmartによる猛追を受けており、競争が激しくなってきている。
  • 北米以外の事業は、年率15%以上で伸びてはいるが、ローカルの競合相手の競争と先行投資の影響で過去ずっと赤字。
  • プライム会員を増やし、囲い込むためにコンテンツ(ビデオ、音楽)と物流に利益の大半を使った投資を行なっている
  • AWSの成長は30%を超え、利益率も25%と高く、魅力的な市場で、良いポジションを取れている。

他の企業と比べてどうかという比較の記事はこちらになります。

[st-card myclass=”” id=1960 label=”GAFA” pc_height=”” name=”” bgcolor=”” color=”” fontawesome=”” readmore=”on”]

米国株のビジネス・株式の分析は下記のボタンから飛べます。

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グーグル(Google)の株価はどうして下落したか: 市場と決算の分析

Alhabet(Googleの親会社)が2019年の第4四半期の決算を発表し、1年のビジネスの結果が出ました。新しいCEOのもとでより情報開示がされるようになり、これまで秘密のベールに隠されていたAlphabetのビジネスがかなり明らかになりました。

今回は、決算の情報をもとに、Alphabet(Google)の決算の解説とビジネスの分析をしていきます。なお、AlphabetはGoogleの親会社ですが、99%のビジネスはGoogleですので、以降はGoogleとして記載します。

下記のGAFA+Microsoftの記事の続きになりますので、こちらもどうぞ。

[st-card myclass=”” id=1960 label=”GAFA” pc_height=”” name=”” bgcolor=”” color=”” fontawesome=”” readmore=”on”]

Googleの2019年の売上

Category 2017 2018 2019 2018 Growth 2019 Growth % of revenue
Google Search & Other $ 69,811 $ 85,296 $ 98,115 22% 15% 61%
YouTube ads $ 8,150 $ 11,155 $ 15,140 37% 36% 9%
Google Network Member’s Properties $ 17,616 $ 20,010 $ 21,547 14% 8% 13%
Google Advertising $ 95,577 $ 116,461 $ 134,802 22% 16% 83%
Google Cloud $ 4,056 $ 5,838 $ 8,918 44% 53% 6%
Google Other $ 10,914 $ 14,063 $ 17,014 29% 21% 11%
Google Revenues $ 110,547 $ 136,362 $ 160,734 23% 18% 99%
Others (including Other Bets) $ 308 $ 457 $ 1,114 48% 144% 1%
Alphabet Total $ 110,855 $ 136,819 $ 161,848 23% 18% 100%

検索サービス

Googleは2019年も力強い売上の伸びを見せました。特に、検索・広告の部門の売上は全体の83%を占め、売上は10兆円を軽く超える会社でありながら、2019年も15%で成長しています。

ただし、流石に成長率は鈍化してきており、2018年の22%と比べると検索・広告の部門もやや成長速度が落ちてきています。

クラウドコンピューティング

クラウドコンピューティングのサービスを提供するGoogle Cloudは全体に占める割合は5%程度と小さいものの、2019年は前年度よりも早い53%で成長しています。

検索・広告以外のビジネスも順調に育ってきていることがわかります。Google Cloudだけですでに1兆円近い売上で、それが50%以上の速度で成長している、というのはすごいことです。

ただ、一方でAmazonのAWSビジネスの売上は$35b(約3兆8000億円)とGoogleのクラウドビジネスの4倍近くであり、かつ第4四半期での成長は34%と力強い成長をしています。Amazon、MicrosoftというGoogleよりもクラウドビジネスの規模の大きい2社と本格的な競争になった時にグーグルがどこまで伸びるか、は注目です。

その他Google

また、Google Otherには、Android、Pixel、Google Homeに加え、YouTubeのサブスクリプションサービスも含みます。YouTubeのMusic and Premium Serviceの加入者も2,000万人を突破し、YouTube TVの加入者も200万人を突破。広告以外でもYouTubeは$3b (3,300億円)を稼ぐようになっています。

特に、GoogleのアンドロイドのアプリストアであるGoogle Playには20億人のアクティブユーザーがおり、Googleにとって安定した収益源となっています。アンドロイドの開発者は合計で$80b (8800億円)以上を稼いでいます。

その他の長期投資

Other Betsには自動運転サービスのWaymoやヘルスケアサービスのVerilyなどが含まれます。

これらのサービスの売上はGoogle全体から見ると小さいですが、特にWaymoは自動運転に関する豊富なデータとコアになる技術を保有しており、車メーカーからは喉から手が出るほど欲しい企業です。CEOのSundar Pichaiは将来のために必要な投資、と言い切っています。

Googleの2019年の営業利益・純利益

2018 2019 YoY Growth
Revenues $ 136,819 $ 161,848 18.3%
Operating income $ 27,524 $ 34,231 24.4%
Operating Margin 20% 21%
Other Income $ 7,389 $ 5,394 -27.0%
Earnings before Tax $ 34,913 $ 39,625 13.5%
Tax $ 4,177 $ 5,282 26.5%
Net Income $ 30,736 $ 34,343 11.7%
Net Income % 22.5% 21.2%

Googleの2019年の営業利益率は21%と、前年比で改善していますが、純利益率は1.3%下落しています。これは、法人税の実効税率が12%から13.3%へ1.3%増加したことが主な要因です。しかし、多少法人税が上がったとしても、法人税の実効税率が13.3%というのはアメリカの法人税21%よりかなり低い数字で、Googleが変わらず節税策に優れていることを示しています(ダブルダッチサンドイッチ+アイルランドの利用、で合法的な範囲で節税を行なっています)

Googleの一株あたり利益は$49.2となりました。これは、前年度比12.5%の成長になります。2月4日時点での株価$1,480から考えると、PERは30倍になります。

2018 2019 YoY Growth
Diluted EPS $ 43.7 $ 49.2 12.5%

GoogleもFacebookなどと同じように、積極的に採用を行い、人を増やしています。従業員は2018年末から2019年まで98,771人から118,899人まで20.4%増えました。

規模が大きくなっても営業利益率が改善していないのは、採用を積極的に行うことで人件費が上がっていることが一つの理由です。

Googleの2019年の財務

資産の部では、現金、有価証券が全体の40%を占めています。これは、「いつでも買収をできるようにしている」、とも考えられます。

現金同等物以外で大きいのはProperty and equipment, net (不動産や設備など)で、主にデータセンターとオフィスです。こちらはGoogleが継続的に投資を行なっており、年々額が増えていっています。

負債を見ても何も問題がありません。キャッシュが毎期ごとに使い切れないほど溜まっていくビジネスの構造をしていること、負債以上の現金同等物を持つことから、会計上は無借金状態です。

また、営業キャッシュフローも順調に伸び、データセンターへ投資をし、余ったキャッシュで自社株買いや買収を行う、と綺麗にキャッシュが回っています。

Googleのビジネスの今後の可能性

Googleは全世界のインターネットの検索で圧倒的なシェアを保有しており、90%以上のシェアを持ちます(例外はGoogleが参入できていない中国とネイバーが強い韓国。日本のヤフーの検索の裏側はGoogleです)

Googleはモバイル端末のOSでも圧倒的なシェアを保有し、世界のスマートフォンの4台に3台はAndroidです。

また、YouTubeは世界で最も見られている動画サイトであり、20億人のユーザーを持ちます。

ブラウザにおいてもChromeが圧倒的なシェアを持ち、全世界の64%のシェアを持ちます。

これらの事実から言えることは、Googleは世界のインターネットユーザーが増えれば増えるほど、収益が増えていく企業だ、ということです。携帯の端末、ブラウザ、検索、Google Play Storeとユーザーがスマートフォンを使う際には、Googleのサービスを使わざるを得ないような環境がすでにできています。

これはユーザーのみならず、広告主にとっても同様です。オンラインで集客をしようと思った場合、Googleの集客力が圧倒的なため、アドワーズ(Googleの広告サービス)を使わざるを得ないような環境になっています。

GoogleとYouTubeについては、この2つのサービスを脅かすような競合が数年で出てくるとは考えにくいです。

そのため、キャッシュを産み出すコアのビジネスである、GoogleやYouTubeは、成長は多少緩やかになるかもしれませんが、順調に伸びていくと予想されます。

加えて、Googleは周辺のサービスへも積極的に入ろうとしています。

具体的には、Google Mapで航空券・ホテル検索のサービスを始めたり、ショッピングサービスを検索画面に出したりと、検索での独占的な地位を活かしてビジネスの領域を拡大しています。

また、豊富な資金を活かして、YouTubeのサブスクリプションサービスやハードウェアビジネス(Google HomeやPixel)、クラウドサービス(Google Cloud)にも注力しており、まだまだビジネスに拡大の余地が大きいです。

加えて、車用のOSも開発しており、車向けのOSも可能性が大きいビジネスです。

これらの成長余地が期待に繋がり、Googleの株価は一株あたり利益の30倍を超える価格で推移していると考えられます。

Googleのビジネスのリスク

法的なリスク

Googleは様々な領域で独占的な地位を築いており、各国の規制当局はその影響力の大きさと独占に懸念を強めています。この点は下記のFacebookと同じです。

[st-card myclass=”” id=1993 label=”GAFA” pc_height=”” name=”” bgcolor=”” color=”” fontawesome=”” readmore=”on”]

これは、マイクロソフトが1990年代にウインドウズで独占的な地位を築いた時に直面した問題と同じです。当時のマイクロソフトは独禁法違反で多額の課徴金を課され、加えて特定の地域でビジネスができなくなる可能性もありました。

Googleの場合はも検索とAndroid OSという圧倒的な地位を使ってビジネスを拡大させているので、すでに欧州委員会に3度刺されて1兆円以上の課徴金を支払っています。

米国民主党の大統領選の候補の一人であるエリザベス・ウォーレンなどはGoogleをはじめとする巨大テック企業への課税や規制に前向きですし、米国の大統領選次第では米国での事業環境が悪化する可能性があります。また他の国からも独禁法違反で訴えられ、課徴金を支払わなければならないリスクがあります。

ユーザーの行動変化のリスク

Googleはユーザーに検索結果を表示する、サイトを見た時に広告を出す、YouTubeへ広告を出す、ことから主な収益を得ています。

しかし、ユーザーが各サービスのアプリをダウンロードし、その中で検索や購入を行う場合には、Googleがユーザーに広告を表示する機会がありません。

例えば、ユーザーがAmazonのアプリを開いて、Amazonの中の商品を検索し、購入しても、そのユーザーの行動からGoogleは利益を得ることができません。

また、ユーザーがFacebook MessengerやFacebookを通じて友人と会話をし、Facebook Marketplaceで商品を購入した場合も、同様にGoogleは利益を得ることができません。

つまり、ユーザーがインターネットのブラウジングから離れて、直接アプリでサービスに行くようになると、Googleとしては売上をあげる機会を失うことになります。

実際に、ユーザーはインターネットのブラウジングよりもアプリを使う時間を増やしており、これはGoogleのビジネスの飯の種である、検索連動広告、バナー広告、にとって脅威になります。

また、同様に、Googleの広告を出さないようにするアドブロックなどのサービスや広告を排除するブラウザの普及の速度が早まった場合、こちらも売上の成長を妨げる要因になります。

Googleの株を購入する場合には、これらのユーザーの行動変化にも注意をした方が良いかもしれません。

まとめ

  • 2019年のGoogleの売上成長は18%、利益成長は11.7%。売上の83%を占める広告ビジネスの伸び率は16%で、特にYouTube向けの広告の伸びが36%と早い。全体の純利益率も20%を超えるという超がつく優良企業
  • Google Cloudは全体の売上の5%程度だが、売上成長率は53%と最も高い
  • Googleの財務は健全であり、買収と自社株買いの余地がかなりある
  • Googleは検索、動画、ブラウザ、OSで独占的な地位を築いており、その地位を短期間で失う可能性は少ない。インターネットのユーザーが増えれば増えるほど利益が上がるほど、ユーザーとの接点が多い
  • 一方、その影響力の大きさから政治から注目を浴びやすく、政治リスクが高い。また、ユーザーの行動が変化し、アプリに直接行くユーザーが増えると、Googleの成長を鈍化させる可能性がある
  • PERは30で、株価に成長期待がある程度反映されている。GAFAM (Google, Apple, Facebook, Amazon, Microsoft)の中では中程度

そのほかの米国株のビジネス・株式の分析は下記のボタンから飛べます。

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フェイスブック(Facebook):ソーシャルメディア市場・株価分析

GAFAの一角であるFacebook。この企業は規模が大きく、かつソーシャルメディアをほぼ独占しており影響力を持つため、この企業がどのようにビジネスを展開するかは他の企業にも大きな影響を及ぼします。特に、Visa/Mastercard、eコマース(Amazonなど)を保有したり、これらの株に興味がある方にとっては理解する価値がある会社です。

今回はFacebookのビジネス・株式の分析を行なっていきます。

この記事を読むとわかること

  • Facebookはソーシャルメディア市場をほぼ独占している
  • ソーシャルメディアサービスはネットワーク効果が働くため、近い将来にFacebookの独占的な地位が奪われるリスクが低い
  • Facebookはいまだに25%の速度で売上が伸びている。新興国を中心に、ユーザー数は約8%で伸びており、全世界的な広告単価も16%で伸びている。広告単価の伸びの方が早い
  • Facebookは広告単価を引き上げるため、スーパーアプリ化を目指して、Facebook、Instagram、Whatsupへ決済とeコマースを取り込むことに注力している。スーパーアプリ化ができるかが今後5年の成長を左右すると同時に、この試みは決済、eコマース、小売にも大きな影響を与える
  • 既存の広告ビジネスについては、営業・マーケティングを追加して、中小企業への浸透を促進させようとしている
  • Facebookの株価は一時的な要因(課徴金、和解金)を除けば、PERは23.6とGAFA + Microsoftの中では割安
  • AR/VRやデジタル通貨のLibraにも注力しており、どちらも将来に成長ビジネスとなる可能性はあるが、現在のFacebookのサイズからすると無視できる程度
  • プライバシー周りの環境変化による広告単価への影響、アメリカ大統領選、が2つのリスク

ソーシャルメディア市場

毎月のアクティブユーザーの数のランキングをみると、Facebookが24億人でトップ。2位はYouTube、5位はWeChatですが、3位にWhatsApp、4位にFacebook Messenger、6位にInstagram、とトップ10にFacebook Familyだけで4サービスも入っています。

出典: Statista Most popular social networks worldwide as of Oct 2019

トップ10のうち、WeChat、QQ、QZone、Douyin/Tik Tok、Sina Weiboは大半が中国のユーザーです。中国ではFacebookが許可されていません。

全世界のスマートフォンユーザー数は、2020年時点で、Statistaによれば35億人です(Statistta)。このうち、同サイトによれば、中国のユーザーは6.9億人と推定されています。

つまり、実質的には中国以外のスマートフォンユーザー28億人のうち、24億人が利用しているサービスということは、Facebookが活動をできている全世界においては、Facebookのサービスがソーシャルメディア市場をほぼ独占していることがわかります。

[st-mybox title=”ポイント” fontawesome=”fa-check-circle” color=”#757575″ bordercolor=”#BDBDBD” bgcolor=”#ffffff” borderwidth=”2″ borderradius=”5″ titleweight=”bold” fontsize=”” myclass=”st-mybox-class” margin=”25px 0 25px 0″]Facebookは中国を除く世界のソーシャルメディア(SNS、メッセージサービス)をほぼ独占している [/st-mybox]

24億人もユーザーがいたら成長余地がなさそうに聞こえますが、実はFacebookのユーザーは増え続けています。2018年末から2019年末にかけて、Facebookのユーザーは23.2億人から25億人まで増加しました。これは7.7%のユーザーの増加にあたります。

地域別に見てみるとアメリカのユーザーの増加はほぼ止まっていますが、アジアとその他地域での伸びが大きいです。これは、Facebookがインターネットユーザーのほぼ必須アプリとなっていることから、新興国でインターネットのユーザーが増えるたびにユーザーが増えていると推察できます。

ソーシャルメディアの世界では、「ネットワーク効果」という言葉があります。これは、ユーザーが増えれば増えるほど、自分も、他のユーザーにとってもそのサービスを使う便益が上がる、という効果です。

誰も使っていないソーシャルメディアを使っていても、誰とも繋がれなく、そのサービスを使うメリットがあまりないですよね。一方、Facebookはほとんどのユーザーがアカウントを持っているために、世界のどこでも人と繋がれ、連絡ができます。ユーザーが多い分、サービスを使うことに得られる便益が大きくなっています。

GoogleがFacebook対抗で始めたGoogle+が過去にいまいち広がりきらなかったのも、SnapchatがInstagramに機能をまねされて伸び悩んだのも、Facebook/Instagramのこの強いネットワーク効果を超えるだけのユニークな価値を提供できなかったためです。Facebook/Instagramはすでに全世界の人が使うインフラになっており、強力なネットワーク効果を持つため、この役割を代替するサービスは当面出てこれないでしょう。

ただし、注意が必要なのは、どのユーザーの価値も等しい訳ではないという点です。Facebookの主な収益源はビジネスによる広告出向であり、どの国のユーザーをターゲットにするかによって、当然広告出向の金額は異なります。

具体的には北米のユーザー一人当たりの価値が$41.4なのに対して、アジア圏のユーザーの価値は$3.57と1/10程度です。

つまり、アジア圏のユーザーが新しく100万人増えても、北米のユーザーが10万人減れば、現在のユーザーあたり単価が変わらなければ、収益としてはマイナスになります。

そのため、Facebookは一人あたりの価値が高い北米・欧州のユーザーを引き止めながら、全体的にユーザー一人あたりから得られる収益を増やそうとしています。

実際に、世界平均のユーザー単価は第4四半期で前年比15.6%で伸びています。Facebookの売上は2019年で26.6%伸びていますが、実はユーザー一人当たりの売上の伸びの方が、ユーザー数の伸びよりも寄与しています。

2019 2018 YoY Growth
Revenue (m$) $ 70,697 $ 55,838 26.6%

Facebookの打ち手

Facebookが今後数年をかけて行おうとしているのは、以下の3点です

  1. スーパーアプリ化(ソーシャルメディアに決済、eコマースの機能をつける)
  2. AR/VRビジネスの立ち上げ
  3. 既存ビジネスの攻めと守り

スーパーアプリ化

Facebookが目指しているのは、中国のWeChatのように、一つのアプリでソーシャルメディア、個人間決済、eコマース、の全てが完結するような、「スーパーアプリ」です(日本ではLINEが同じ路線を目指しています)。

そのための施策として、FacebookはFacebook Marketplaceという個人間で売買ができるサービスを提供し始め、現在はそのサービスの拡大に注力しています(日本では、メルカリやラクマが似たサービスです)。

また、Instagramでも”Instagram Shopping”のサービスを開始してeコマース機能を強化すると共に、Checkoutという決済システムも提供しています。

出典: Instagram Business Blog

WhatsupにもWhatsup Paymentという個人間決済サービスを導入しようとしており、インドで現在ユーザーテストを行なっています。

加えて、FacebookはLibraという新しいデジタル通貨の導入も主導しようとしております(こちらは中央銀行の大反発を受けているため、進捗はかなり遅くなりそうですが)。

なぜFacebookはeコマース、決済機能に注力するのでしょうか? それは、ユーザーを囲い込み、ユーザー一人当たりから得られる収益を増加させるためです。

Facebook/Instagramはすでに中国を除く全世界のインターネットユーザーの大半が参加しているプラットフォームであり、このプラットフォーム上でお金のやりとりができるようになれば、個人がサービスを使う頻度も上がると同時に、今までFacebookを使っていなかった人も使わざるを得なくなります(割り勘の時とか、お金を送金するときなどに他の友人が皆使っていたら、自分も入れざるを得ないですよね)。

加えて、決済を握っていると、お金の流れからユーザーの趣味趣向をより読み取れるようになり、広告を出す精度をあげることができ、それはすなわち広告単価の向上に繋がります。また、広告を出向するビジネス側にとっても、広告出向から販売までをFacebookのプラットフォームでできれば、ユーザーを自社サイトに誘導して販売して、という手間を省くことができ、特に中小企業にとっては望ましいサービスになります。

Facebookはすでにソーシャルメディアで独占的な地位を築いており、その優位性を活かして、決済・eコマースの世界で勝負しようとしている、というのは他の企業のビジネスにも影響するため、決済(Visa, Mastercard)やeコマース(Amazon、eBayなど)の企業の株式を保有している人はFacebookの動きを注視したほうが良さそうです。

AR/VRビジネスの立ち上げ

Facebookは2014年にOculusというVR (Virtual Reality)のデバイスとソフトウェアの会社を買収し、現在はOculus Questというサービスを運営しています。AR/VRの現在の市場はゲーム用途が主であり、SONYがPlaystationのプラットフォームを活かし、マーケットシェアトップです。Oculusは現在、SONYに次ぐ世界シェア第二位だと推定されています。

出典:Statista Estimated VR device shipment share by vendor worldwide in 2018 and 2019

VR/ARはマーク・ザッカーバーグが次世代のコミュニケーションの基盤になり得る、と信じて投資をしている分野です。現在の売上は、Facebook全体の売上の1.5程度の約$1b (1000億円)程度で投資の観点からは無視できる程度ですが、今後VR/AR市場が急拡大した時に、恩恵を受けられるかもしれません。

既存の広告ビジネスの攻めと守り

Facebookは営業・マーケティング、フェイクニュースなどへの対策の人員を急速に増やし、従業員は過去1年で26%増え、約45,000人となりました。

「攻め」は、営業・マーケティングの部分です。Googleもそうですが、広告は大企業への浸透が一巡すると、今度は中小企業を開拓する必要がありますが、ここは大企業よりもテクノロジーへの感度が高くないことが多く、人手を使って電話で営業やカスタマーサポートをする必要が出てくるため、手間がかかります。

営業・マーケティングを大量に増やしているということは、それだけ中小企業を対象にしたFacebook広告の売上拡大を目指しているか、もしくは新しいマーケットプレイスやInstagram Shoppingを広げようとしていると推察されます。

また、「守り」の部分では、2020年は選挙の年であることもあり、フェイクニュースへの対応や選挙関連ニュースの扱いで注目を集めないよう、人手を増やして、人の目での確認を増やしていると推察されます。

これらは売上を増やし、政治リスクを下げる効果を持ちますが、長期的に利益率の低下に繋がる可能性があることがやや懸念材料です。利益率は直近の四半期で42%で、前年比で4%下落しています(内3%は$550mの和解金のため、その影響を除けば実際には45%程度ですが)。

FBは2020年の経費は$54-59bnというガイダンスを出していますが、中間値の$56bであった場合、2019年の$46bから21.7%増加となり、売上よりも早く伸びた場合、営業利益率がさらに低下することになります。

Facebookの株価とPER

Facebookの株価は2017年初めの$120から、3年で70%近く上昇しています。EPSは一時要因を除けば$8.55で、1月31日株価の$202の株価からすれば、PERは23.6となり、GAFAの中では割安になります。

2019 Revised 2018 YoY Growth
Revenue (m$) $ 70,697 $ 55,838 26.6%
Operating Income (m$) $ 30,086 $ 24,913 20.8%
Net Profit (m$) $ 24,585 $ 22,121 11.1%
EPS $ 8.55 $ 7.57 13.0%

[st-mybox title=”GAFA + Microsoftの分析はこちら” fontawesome=”fa-check-circle” color=”#757575″ bordercolor=”#BDBDBD” bgcolor=”#ffffff” borderwidth=”2″ borderradius=”5″ titleweight=”bold” fontsize=”” myclass=”st-mybox-class” margin=”25px 0 25px 0″] GAFA+Microsoftの株価はどこまで落ちたら買い時なのか [/st-mybox]

Facebookは自社株買いの$24b(2兆6400億円)のプログラムに、さらに$10b (約1兆1000億円)を追加することを、2019年の第4四半期の発表で行いました。この追加分は、Facebookの時価総額が現在$575b (6兆2000億円)ですので、これは1.7%にあたります。

キャッシュだけで$54bも保有しているので、使わない資金を株主に返還する姿勢は、株主の方を向いた経営をしているという点で、評価できます。

また、フリーキャッシュフローも2019年は$20.6bと前年比で34.5%で成長しています。

2019 2018 Growth
Net cash provided by operating activities $ 36,314 $ 29,274 24.0%
Purchase of property and equipment etc $ (15,102) $ (13,915) 8.5%
Principle payments on financial leases $ (552)
Free cash flow $ 20,660 $ 15,359 34.5%

FBの発行済株式は28.8億株ですので、一株あたりのフリーキャッシュフローは$7.2、現在の株価ですとフリーキャッシュフローの28倍で取引されています。これはアルファベットの35倍と比べると低いです。

Facebookを取り巻くリスク

Facebookの主な収益源はFacebookでの広告ですが、高い広告単価を広告主に請求するためには、質の高い、つまりよりユーザーの趣味趣向を特定し、その人に合った広告を出せる必要があります。そのために必要なのが個人の特定と情報の入手ですが、近年の個人情報保護の動きから、Facebookがターゲットとする元のデータが手に入りにくくなってきています。

プライバシー周りの環境変化

第一に、政府の規制です。ヨーロッパのGDPR (General Data Protection Regulation)、カリフォルニアのCCPA (California Consumer Privacy Act)のどちらも消費者を特定してターゲットにしにくくする規制です。

第二に、モバイルOSのプラットフォーマー、Android (Google)、とiOS (Apple)のどちらもサービス提供者(Facebookなど)に提供するデバイスのデータをより絞るようになっています(例えば位置情報をアプリを見ていないときには取れないようにする、など)。特に位置情報はよりターゲットされた広告を出しやすくするため、この情報が取りにくくなるのは結構痛いです。

第三に、Facebook自体も政治からの圧力を受け、消費者にプライバシー設定をより厳格にコントロールできる権限を与えざるを得なくなっています。より多くの消費者が自分のデータをFacebookに与えないことを選べば、それだけターゲットした広告をうちにくくなります。

これらの要因から、ターゲットした広告をうちにくくなると、成約率が落ちるため、広告主も広告の頻度や単価を引き下げる、という悪影響がでる可能性があります。

一方で、これらの環境の変化は全てのソーシャルメディアにあてはまるので、広告主からすると結果的に選択肢がなく、広告主も多少高い価格でもFacebookに広告を出さざるを得ないかもしれません。

アメリカ大統領選

今年は大統領選挙イヤーですので、仮にGAFAなど巨大テック企業への税金を大幅にあげると息巻いているエリザベス・ウォーレンのような人が大統領になると、株価が大きく調整する恐れがあります。

また、Facebookを選挙で使う議員から、Facebookが公平でない(どちらかの党に寄った姿勢である)という不平・不満が出て、それが議会で取り上げられる場合、言いがかりから課徴金を課される可能性があるため、こちらも注意が必要です。

独占禁止法違反のリスク

加えて、FTC(Federal Trade Commission)とDOJ (Department of Justice)が独占禁止法でGAFAを調査しています。こちらも、結果次第では新たに課徴金を課される可能性があり、最悪の場合は事業の一部売却などを命じられる可能性があります。

まとめ

  • Facebookはソーシャルメディア市場をほぼ独占している
  • ソーシャルメディアサービスはネットワーク効果が働くため、近い将来にFacebookの独占的な地位が奪われるリスクが低い
  • Facebookはいまだに25%の速度で売上が伸びている。新興国を中心に、ユーザー数は約8%で伸びており、全世界的な広告単価も16%で伸びている。広告単価の伸びの方が早い
  • Facebookは広告単価を引き上げるため、スーパーアプリ化を目指して、Facebook、Instagram、Whatsupへ決済とeコマースを取り込むことに注力している。スーパーアプリ化ができるかが今後5年の成長を左右すると同時に、この試みは決済、eコマース、小売にも大きな影響を与える
  • 既存の広告ビジネスについては、営業・マーケティングを追加して、中小企業への浸透を促進させようとしている
  • Facebookの株価は一時的な要因(課徴金、和解金)を除けば、PERは23.6とGAFA + Microsoftの中では割安
  • AR/VRやデジタル通貨のLibraにも注力しており、どちらも将来に成長ビジネスとなる可能性はあるが、現在のFacebookのサイズからすると無視できる程度
  • プライバシー周りの環境変化による広告単価への影響、アメリカ大統領選、独占禁止法違反、が3つのリスク

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GAFA+Microsoftの株価はどこまで落ちたら買い時なのか

GAFA(Google, Apple, Facebook, Amazon)とMicrosoftはそれぞれ独占的なプラットフォームを持ち、継続的に世界中でビジネスを成長していることから、株価は上昇を続けています。

今回のコロナウイルス騒動を発端とする株価の調整で、買い時を探っているかたもいらっしゃるのではないでしょうか。今回は、今の株価水準は割安なのか、割高なのか、割高であれば、どこまで落ちたら買い時か、を分析してみます。

Google (GOOGL)

Googleは検索、YouTube、携帯電話のOSで独占的なプラットフォームを築いています。

ビジネスの基盤としては盤石で、インターネットのユーザーが増えれば増えるほど売上が増えるような企業です。

Googleの株価は2016年1月の$760から、4年で2倍近くの$1,430まで上昇しました。2019年の株価は一進一退を繰り返しましたが、これはやや期待外れの決算が続き、PER(一株あたり利益。緑の線)が30倍から22倍まで落ちたためです。

2019年の第3四半期の決算も格別に良いわけではなかったのですが、全体の相場に押し上げられるように下期からPERは上昇を続け、現在は29まで上がってきています。

ZACKS – Google (PERを調べられる外部サイトです)

 Nasdaq – Google Class A Stock(EPSを見れる外部サイトです)

2019 2018 YoY Growth
Revenue (m$) $ 115,782 $ 97,543 18.7%
Operating Income (m$) $ 24,965 $ 19,303 29.3%
Net Profit (m$) $ 23,672 $ 21,788 8.6%
EPS $33.83 $30.95 9.3%

Googleのビジネス自体は売上は前年比18.7%、税引き前利益は29.3%、税引き後利益は8.6%、EPSは9.3%と順調に成長しています (Googleはまだ第4四半期を発表していないため、9月末までの2019年と2018年の比較です)

ビジネスも順調に伸びていますが、9月以降はPERの上昇、つまりGoogleが成長を続けるだろうという期待が膨らんでいることが、直近の株価の上昇に繋がっています。

しかし、直近でコストの伸びが売上成長よりも早い点、PERは29と2018年末に急落した時に近いところまで上がってきている点に注意が必要です。

現状のPERがすでに将来に渡り高い成長率を保つことを織り込んでいるため、仮に四半期の成長率が鈍った場合、急落の恐れがあります。例えば、PERが2018年末のように22倍まで落ちた場合、約30%株価が下落する可能性があります。

Apple(AAPL)

AppleはおなじみのiPhone、iPad、Mac、Apple Watchを設計・販売し、そしてiTunesやApple Storeなどのプラットフォームを運営している会社です。

Appleの株価もGoogleと同様に、2018年末に一度調整が入りましたが、2019年は急激に株価が伸び、現在は$309まで上昇しています。

自社株買いの効果もありますが、この伸びもGoogleと同じく、主に成長期待によるPERの上昇のためです。PERは2018年末に12.5をつけ、2019は急上昇しました。

2020年に入っても上昇を続け、1月末に発表された2019年の第四半期に前年比9%の利益の成長をみせたことにより、現在は26まで上昇しています。

2018 2019 YoY Growth
Revenue (m$) $ 265,595 $ 260,174 -2.04%
Operating Income (m$) $ 70,898 $ 63,930 -9.83%
Net Profit (m$) $ 59,531 $ 55,256 -7.18%
EPS $11.91 $11.89 -0.17%

成長期待の高いAppleですが、実は2019年の数字を見る限り、売上、営業利益共に減少しており、一株あたり利益も減少しています。

もちろん、第四半期の良い流れを引き継いで高い成長率を保てれば株価は維持されるのかもしれませんが、次の四半期で利益成長が少しでも鈍れば、成長への期待が萎み、株価の急落に繋がります。

Appleは2019年の実績に対して、株価に将来の成長期待をやや織り込みすぎている印象です。成長期待がしぼんでPERが2017-2018平均の18倍程度まで落ちた場合、Googleと同じく、現在の株価から30%落ちます。

Appleの価格が落ちると時価総額が大きい分、ダウにもS&P500全体にも波及して、アップル売りが相場全体への売りを招く事態になりかねないので、注意が必要です。

Facebook(FB)

FacebookはFacebook、Instagram、Facebook Messanger、Whatsupを傘下に持ち、月間ユーザー数25億人とSNS市場で独占的な地位を築いています。

一方、個人を特定し、個人の趣味趣向のデータを元に広告を配信していることから、プライバシーの観点から政治的にも圧力を受けやすい企業です。

Facebookも高い成長期待を受けて、2019年は株価が大きく上昇し、現在では$201.9をつけています。2019年のEPS成長がマイナスだったこともあり、直近で株価が大きく落ちた後もPERは32と高い水準です。

実績を見てみると、売上は26.6%と前年比で大きく伸びているのですが、それ以上にコストの伸びが早いです。また、2018年のCambridge Analyticaのがらみのスキャンダルで$5,000mのFTCへの課徴金と$1,100mのAltera Corpに関連する追徴課税のため、利益は前年比でマイナス成長となっています。

2019 2018 YoY Growth
Revenue (m$) $ 70,697 $ 55,838 26.6%
Operating Income (m$) $ 23,986 $ 24,913 -3.7%
Net Profit (m$) $ 18,485 $ 22,121 -16.4%
EPS $ 6.43 $ 7.57 -15.1%

これらの一時的な要因を除けば、下記のようになります。実際のビジネスは決算の数字ほど悪くはありません。

2019 Revised 2018 YoY Growth
Revenue (m$) $ 70,697 $ 55,838 26.6%
Operating Income (m$) $ 30,086 $ 24,913 20.8%
Net Profit (m$) $ 24,585 $ 22,121 11.1%
EPS $ 8.55 $ 7.57 13.0%

ただし、フェイクニュースへの対策の観点から人員増を強いられており、従業員も前年比26%増え、人件費が増加したことでコストが増加しているのはやや懸念材料です。

直近の第4四半期では売上は25%成長していますが、コストの伸びは34%と売上よりも早く伸びました。営業利益率は前年同期比の46%から42%へ減少しています。

一時要因を除いたPERでは23.6と、GAFAMの中では最も割安となります。

ただし、仮にPERが2018年末レベルの18程度まで切り下がった場合は、20%以上の下落となります。2019年でも課徴金や追徴課税で利益が押し下げられましたし、選挙イヤーの今年はFacebookへの規制強化などの政治リスクが顕在化しやすいので注意が必要です。

Amazon(AMZN)

AmazonはAmazonのマーケットビジネス、クラウドビジネス、Prime会員ビジネス、の3つが柱の会社です。どのビジネスも順調に伸びていますし、Amazonは将来的に物流企業としてサービスを展開する可能性もあります。

Amazonの株価は2018年に$1,000から急上昇したのちに一進一退を繰り返し、現在は好調な2019年第四半期の決算を受け、$2,000まで上昇しています。現在のPERは89と、他のGAFAと比べてもかなり高い水準です。

2019 2018 YoY Growth
Revenue (m$) $ 280,522 $ 232,887 20.5%
Operating Income (m$) $ 14,541 $ 12,421 17.1%
Net Profit (m$) $ 11,588 $ 10,073 15.0%
EPS $ 23.01 $ 20.14 14.3%

Amazonは物流や研究開発費など投資を先行させ、短期的な利益にこだわらない企業のため、EPSを用いて評価するのはあまり適切ではないかもしれません。

この企業が割高か割安かは、「いつ利益を出しに行くのか」という将来の経営に依存するため、かなり評価が難しいです。

現在の純利益率4%程度というのは投資を優先させているためであり、例えばプライム会員の会員費をあげたり、マーケットプレイスの手数料を上げたりすれば、潜在的には10%程度の純利益は出そうと思えば出せる状態にあるでしょう(その分、Walmartなどとの競争に負けるリスクは高まりますが)。

2.5倍の利益を出せる潜在能力があると考えると、EPSは35程度となり、利益の成長と今後の成長余地を考慮すればまだ理解できる水準になります。

Facebookと同じく、創業者が舵をとっている会社の一つです。ジェフ・ベゾスのリーダーシップを信じるならば、いつ買っても良いのかもしれません。

Microsoft(MSFT)

Windowsという独占的なプラットフォームを持ち、B2C、B2B、クラウドビジネスとバランス良いビジネスの構成を持ちながら、その全てを順調に成長させているMicrosoftは高いPERの期待に応えているといっても過言ではないのかもしれません。

Microsoftは綺麗な右肩上がりで成長しています。株価は2016年の$40から現在は$170と4倍以上になっています。現在のPERは34と、利益を重視していないAmazonを除けばGAFAMの中で最も成長が期待されている株と言っても良いかもしれません。

2019 2018 YoY Growth
Revenue (m$) $ 125,843 $ 110,360 14.0%
Operating Income (m$) $ 42,959 $ 35,058 22.5%
Net Profit (m$) $ 39,240 $ 16,571 136.8%
EPS $ 5.06 $ 2.13 137.6%

純利益は2018年に一時要因があるために単純比較はできませんが、それでも2019年の前年度比22.5%の営業利益の増加は驚くべき成長です。

GAFA+MSFTの株価、PER、成長率

S&P500の過去のPERの平均は16程度で、直近では18.7です。 GAFAMはその成長期待から、S&P500の平均よりもPERが高く、下記の表のようになります(FBは一時的な要因を除いた数字を記載)

GOOGL AAPL FB AMZN MSFT
株価 (2020/1/31, $) 1,433 310 202 2,009 170
過去12ヶ月 1株あたり利益 ($) 46.6 $11.89 $ 6.43/$8.55 $ 23.01 $ 5.06
PER 30.7 26.0 31.4/23.6 87.3 33.6
2019売上成長率 18.7% -2.04% 26.6% 20.5% 14.0%
2019営業利益成長率 29.3% -9.83% -3.7%/11.1% 17.1% 22.5%
2019 EPS成長率 9.3% -0.17% -15.1%/13% 14.3% 137.6%

GAFAMの2018年からの株価の上昇の大部分は実際の一株あたりの利益の上昇ではなく、PERの上昇、つまり将来への成長期待によってもたらされたものです。

特にAppleは営業利益成長率がやや伸び悩んでいるにも関わらずPERが高くなっているため、決算内容によっては失望売りを呼びやすい状態にあります。

また、Amazonも直近の決算は良かったですが、PERはかなり高く、成長期待と将来の利益成長がかなり織り込まれている株価になっています。

GAFAMはビジネスの基盤がしっかりしており、かつ注目度が高い分、現在はお金がこれらの銘柄に集まっており、PERはどれも高めです。

長期的に見ればGAFAMのどの株も調整を繰り返しながらも伸びていく可能性が高いですが、PERが高止まりしていることを考慮すると、銘柄によっては30%程度の調整が入る可能性も考慮した方が良いかもしれません。

また、GAFAMの中では2019年の実績を見る限り、GoogleとMicrosoftが高い一株あたり利益の成長を続けており、かつPERも30前半のため、下落体制がまだある、とも見れるかもしれません。

購入するタイミングによって利回りが変わってくるため、現在の株価水準が決算と照らし合わせて納得できる水準か、GAFAMの他の銘柄と比較して割高感がないか、をチェックすると、高値づかみを避けられるかと思います。

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