いちごホテルリートで学ぶ、損しないためのホテル主体型REITの選び方

安定して配当を受け取れることで人気のREIT(不動産投資信託)。その中でも年5%を超える利回りがあり、高配当を好む投資家に人気なのがホテルや旅館などに投資するホテル特化型REITです。

REITは気をつけないと、「見かけの配当」で買った後に、実は思っていたのと違う、となり損をしてしまうことがあります。

今回はいちごホテルリート(3463)を例に、説明していきます。

ホテル主体型REIT(不動産投資信託)とは

REIT(不動産投資信託)は

  • 投資家から資金を集め
  • 資金を元に不動産に投資し
  • オペレーターと呼ばれる事業を行う主体に貸し出て、賃貸収入を得て
  • 得た賃貸収入を投資家に配当という形で還元する(利益の90%以上)

というビジネスモデルになります。どんな事業に貸し出すかにより、オフィス用途、物流用途、ホテル用途、などカテゴリが分かれますが、基本的な仕組みは同じです。

特に宿泊主体型の場合はホテルのオペレーターに物件を貸し出して、そこから賃料を受け取るのが収入源です。

ホテルの賃料の受け取り方には、大きく分けて下記の2種類があります。

  • 変動賃料:ホテルの売上に応じて賃料が変わる
  • 固定賃料:ホテルの売上に関わらず賃料が一定

変動賃料はホテルの調子がよければ受け取れる賃料が大きくなる一方、ホテルの調子が悪くなれば受け取れる賃料が少なくなります。

固定賃料はその名の通り、ホテルの売上に関わらず賃料が一定のため、より安定した賃料が見込めます。

一般的には、旅行の市場が拡大して、ホテル間の競争が激しくないうちは、ホテルの売上が上がりやすいので変動賃料の方が有利で、逆に市場が停滞して、ホテル間の競争が激しい場合は、固定賃料の方が有利です。

ホテル主体型リートの種類

Japan Reit不動産投資ポータルより(2019年11月22日)

現在、上場しているホテル主体型REITは上図の6銘柄(ジャパン・ホテル・リート、インヴィンシブル、星野リゾート、いちごホテル、大江戸温泉、森トラスト・ホテル)です。

規模としてはジャパン・ホテル・リートが圧倒的に大きく約4000億円で最も小さいのが大江戸温泉の230億円。

利回りは4-6%です。

いちごホテルリートのビジネス状況

いちごホテルリート投資法人(3463)は東京証券取引所に上場している宿泊特化型のREIT (不動産投資信託)です。時価総額は340億円程度とREITの中ではかなり小粒です。

いちごホテルリート投資法人2019年7月期決算発表より

いちごホテルリートは2019年11月3日時点で22ホテルを保有しています。全国に幅広く物件を持ち、よく分散されています。

ホテルの売上はシンプルに下記のように分解されます。

売上 = 部屋数 x 稼働率 x 部屋あたり平均単価

つまり、部屋数が変わらなければ、稼働率(部屋にお客さんが宿泊している割合)が高ければ高いほど、部屋あたりの平均単価が高くなれば高いほど、売上が大きくなります。

ホテル系のREITの決算発表の資料ですと、RevPARと書いてあるのを見かけると思いますが、RevPARはRevenue per Roomの略で 、意味は「一部屋あたりの売上」です。

RevPAR = 稼働率 x 部屋あたり平均単価

ですので、この数字を見ればそのホテルがうまくいっているのかどうかがざっくりわかります。

さて、いちごリートですが、そのRevPARが2019年2月から7月までで3%下落しています。

いちごホテルリート投資法人2019年7月

また、この下落基調は8月、9月も続いて、しかも拡大しており、RevPARは前年度と比較して10.6%減です。

いちごホテルリート投資法人 2019年9月度運営状況

深刻な点は、特に「変動賃料」(いちごホテルリートが受け取る賃料がホテルの売上に応じて増減する契約形態)のRevPARの落ち込みが大きいことです。

2つの大きな構造的な要因があります。

1つ目は、訪日外国人の減少です。

JNTO 2019年10月訪日外客統計の集計・発表より

2019年10月の訪日外国人は前年度と比べて5.5%の減少になりました。韓国における日本関連製品へのボイコットの動きが続いており、特に韓国人の観光客の落ち込みが65.5%とかなり激しく落ち込んでいます。

韓国は中国に次いで訪日客を送り出してきている国ですので、韓国からの観光客減少が特にインバウンドに力を入れていたホテルチェーンに影響を与えています。

いちごホテルは一泊1万円以下の市内観光、ビジネス用ホテルが中心で、インバウンドにも力を入れていました。韓国人訪日客の減少が稼働率に影響を与えている可能性が高いです。

2つ目は、ホテル間の競争の激化です。

特にインバウンドを見込んで多くの宿泊業者が宿泊施設を新設して、競争が激しくなっています。例えば、京都市では、過去3年で宿泊施設数が3万施設から4.6万施設まで増加しました(参考:京都市の京都観光総合調査結果)。

京都などは一時期は供給不足でしたが、現在は供給過剰の状態に入りつつあります。

これらの、韓国人旅行者の落ち込み、宿泊施設の供給過剰は短期的には解決が見通せないため、いちごホテルリートのビジネス環境としては厳しいと言えます。

いちごホテルリートの分配金推移

いちごホテルの分配金は3,300円で2017年、2018年と推移しています。

2019年1月にはホテルの売却益を還元したため、5,500円近くの配当がありました。

いちごホテルリート決算資料より

保有しているホテルを売却したため、2020年1月の配当も一時的に4,700円と増加する予定です。

2020年以降の売却益の分配を除いた巡航配当は3,000円程度になる見込みです。

いちごホテルの分配金利回り

J-Reit 不動産投資ポータルより

いちごホテルリートの利回りは2019年11月21日の価格134,000円で5.7%となっていますが、2020年1月期は保有するホテルビスタプレミア京都の売却益を株主還元して、一時的な利回りが高く見えています

2020年1月に予定される配当は4,700円ですが、これは売却益1,700円、保有するホテルからの分配金3,000円に分解できます。

つまり、売却益を除いた保有ホテルからの2020年の利回りは4.5% (6,000円 / 134,000 = 4.48%)であり、物件の追加購入や売却がなければ、2020年の配当以降はこの数字がベースになります。

ホテルの売却益により、一時的な利回りが高く見えていることに注意です。

いちごホテルリートの分配金増加の可能性

いちごホテルリート決算資料より

いちごホテルリートの株価は134,000円ですが、一株あたりの資産は146,580円あります。

これは、所有しているホテルを全て売り払い、投資家に還元すれば、現在の株価以上の価値になる、ということです。

実際、いちごホテルリートはホテルビスタプレミオを購入価格より高く売却しました。得た利益を投資家に還元する予定で、分配金が2020年1月は1,700円程度高くなる予定です。

今後もいちごホテルリートが物件売却を現在の高値で売り続けて、投資家に還元し続ければ、保有するホテルから生み出される4.5%の利回りよりも高い利回りが見込めます。

いちごホテルリートのリスク

保有するホテルからの収益減少リスク

新規ホテルの建設が続き、ホテルの競争が激化していることもあり、全体のRevPARが下落傾向なのが1番のリスクです。

特にいちごホテルリートは変動賃料の割合が高く、稼働率または単価の下落は収益への影響が大きいです。

成長の鈍化、競争に負けるリスク

いちごホテルリートの株価が現在の1株あたり純資産価値よりも低いことは、資金調達をする上での障害となります。

株式市場のいちごホテルリートへの評価が高くないために、低い株価での資金調達をせざるを得なく、それを行うと一株あたりの純資産の減少が起こります。

これは既存の株主にとっては株の価値を下げられることになります。基本的には、1株あたり価値以下での価格の増資は株主に嫌がられる行動です。

つまり、株価が低いと、増資をした時に既存の株主にとってのデメリットが大きくなるため、資金調達がしにくくなり、それゆえにビジネスの拡大がしにくくなります。

そしてビジネス拡大がしにくいと、規模を拡大させることによる固定費削減やブランド価値の向上といった手段が使えなくなるため、同様の手段を使ってくる競争相手に負ける可能性が上がります。

まとめ

  • ホテル特化型REITを見るときにはRevPAR (部屋あたり売上)が増加しているか、減少しているかを見ることがポイント
  • 変動賃料のREITは、より旅行市場が良い、または競争力のある宿泊施設を保有しているときに有利で、固定賃料は市場環境が悪化しているときに有利
  • ホテル特化型REITは、宿泊施設の供給過剰、インバウンドのブレーキ、という2つの市場の流れに直面している。RevPARは下落傾向
  • 保有施設を売却することで一時的な配当を増加させているREITがあることに注意。配当を見る際には、売却益による影響を外して、保有している物件から継続的に生み出される利益を見た方が良い
  • 株価が1株あたり純資産価値よりも低いREITは増資がしにくく、他の規模拡大をしている競争相手に負けるリスクがある

高い配当のREITが気になる方は、こちらもどうぞ。

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インフラファンド(太陽光発電)は債権として優秀な投資先

銀行預金でも国債でも年に1%も増えない中、5%を超える高配当を毎年もらえたらいいと思いませんか? しかも、減配しないかと怯えるような不安定な株ではなく、安定している株が。

そんな安定と高配当を求める人にぴったりの、インフラファンドについて説明します。

インフラファンドとは

インフラファンドとは東京証券取引所に上場している、再生可能エネルギーに投資をしているファンドです。現在は下記の6つのファンドが上場しており、主に太陽光発電に投資をしています。

5%から6%と高い利回りを持っていることが特徴です。

また、比較的新しい投資のカテゴリのため、最も企業価値が大きいカナディアンソーラーでも270億円程度、次点のタカラレーベンで170億円程度とJ-Reitと比べても小粒です。

  タカラレーベン いちごグリーン 日本再生可能エネルギーインフラ カナディアンソーラー 東京エネルギーインフラ エネクス・インフラ
証券コード 9281 9282 9283 9284 9285 9286
株価(円) 125,400 63,500 105,600 120,100 112,000 108,700
2020配当予定(円) 7,005 3,580 6,400 7,300 6,793 5,936
2020配当利回り(税引き前) 5.59% 5.64% 6.06% 6.08% 6.07% 5.46%
時価総額 (百万円) 17,377 6,538 16,516 27,766 5,156 9,981

株価は2019年11月21日時点の情報です。

インフラファンドの特徴

インフラファンドは、国の固定価格買取制度(一定価格で電力を20年間買い取る制度)を利用して、価格が安定している点に特徴があります。

この制度がある理由は、国が再生可能エネルギーの普及を進めたいからです。

具体例をあげます。例えば、カナディアンソーラー・インフラ投資法人(9284)が保有している、宮城県美里町にある太陽光発電所は、買取価格が32円/1キロワット(電気の単位)です。

天然ガスを使った発電のコストは14円/キロワット程度と言われているため、電力会社からしたら、32円で買うのはコスト高です。

しかし、電力会社は他の発電所からより安い価格で電気を変えるとしても、固定価格買取制度のため、この太陽光の発電所からはこの価格で買い取らなければなりません。

また、購入を拒否することも基本的にはできません(電力が溢れてしまい不安定になり、接続制限をせざるを得ない場合を除く)

固定価格買取制度による価格は20年間続く予定です。発電所がどれくらい発電できるかは日照時間により、そして太陽光発電は年によってブレはあるものの、日照時間はそこまでブレません。

 

安定している発電量 x 一定の価格 = 安定した売り上げ

 

これが何を意味するかというと、太陽光発電は国債などの債権に近く、毎年一定の配当が入ってくる可能性の高い商品ということです。

インフラファンドの配当

インフラファンドの配当は主に2つの源泉があります。

タカラレーベン インフラ投資法人ウェブサイトより

1つ目は、発電由来の営業収入です。インフラファンドは発電量に応じた賃貸料を受け取り、そこから費用を引いた利益を分配します(下の表の「利益分配金」です)。

2つ目は、タコ足のように自分の資本から配当を出す方法です(下の表の「利益超過分配金」です)。

利益超過分配金は減価償却費とよばれる、設備の償却で生じる費用から出ます。減価償却は会計上の費用ですが、実際のお金(キャッシュ)のやりとりを含まれないため、実際にはキャッシュが残っており、その余ったキャッシュをファンドが株主に還元しています。

全てのインフラファンドがそこで浮いたキャッシュを配当していますが、その割合は大きくファンドによって異なります。

気をつけた方が良いのは、配当がどちらの源泉から多く来ているか、です。

通常のビジネスでは、設備は使えば使うほど古くなるので、どこかの時点で設備を新しくする必要が出てきます。その際、減価償却費の分を設備の更新に回していけば将来の収入を増やす要因になりますし、減価償却費の分を今の投資家に配分していけば、将来の収入が減る要因になります。

  タカラレーベン いちごグリーン 日本再生可能エネルギーインフラ カナディアンソーラー 東京エネルギーインフラ エネクス・インフラ
2020配当予定(円) 7,005 3,580 6,400 7,300 6,793 5,936
– 内利益分配金(円) 6,326 1,390 3,890 5,632 4,619 2,102
– 内利益超過分配金(円) 679 2,190 2,510 1,658 2,174 3,834
2020利益分配金割合(円) 90.3% 38.8% 60.8% 77.2% 68.0% 35.4%

タカラレーベンは配当に占める利益分配金(発電量に応じて生まれる利益)の割合が90%以上と高いのに対し、いちごグリーンとエネクス・インフラは40%未満と、配当の大部分を減価償却費から生まれるキャッシュから出していることがわかります。

異なった視点で2019年の予想売り上げを見ると、タカラレーベンとカナディアンソーラーは経常利益率が他4つと比べて高いことがわかります。この違いは主に、減価償却費が低いことからきています。

  タカラレーベン いちごグリーン 日本再生可能エネルギーインフラ カナディアンソーラー 東京エネルギーインフラ エネクス・インフラ
売上 (百万円) 2,976 1,118 2,828 4,398 867 1,256
営業利益 (百万円) 1,038 282 828 1,614 306 428
経常利益 (百万円) 897 174 528 1,382 226 312
経常利益 % 30.1% 15.6% 18.7% 31.4% 26.1% 24.8%
減価償却 (百万円) 1,134 638 1,470 1,644 356 660
減価償却% 38.1% 57.1% 52.0% 37.4% 41.1% 52.5%

将来も安定してビジネスが続くか、というのはインフラファンドを選ぶ際の大事な点の一つです。

この点から見ると、タカラレーベン とカナディアンソーラーが優れているように見えます。

逆に、いちごグリーン、日本再生エネルギー、エネクス・インフラは配当の半分以上が利益超課分配金から来ています。将来への投資を先送りしている可能性があるので、要注意です。

インフラファンドの財務状況

  タカラレーベン いちごグリーン 日本再生可能エネルギーインフラ カナディアンソーラー 東京エネルギーインフラ エネクス・インフラ
LTV (借入比率、2019) 52.40% 57.80% 56% 47% 53.20% NA

エネクス・インフラは負債比率を2019年11月時点ではまだ公表しておりません。

借入比率はカナディアンソーラーが47%と低く、いちごグリーンが58%と高めです。

インフラファンドは安定した売上が見込めること、低金利状態が続いているために倒産の可能性は相当に低いですが、財務状況がよければ今後さらに借入を行って規模を大きくしやすいため、借入比率は低いほうが有利です。

インフラファンドについてよくあげられるリスク

天候・自然災害リスク

太陽光発電は天候次第で発電量が変わります。また、台風や地震など自然災害にあった時に太陽光発電施設がダメージを受けることもあります。

天候・災害リスクは防ぐのが難しいリスクです。なるべく発電施設が日本全国に分散していた方が被害が大きくなるリスクが低くなり、望ましいと言えます。

2019年10月のインフラファンドの地域分散

その視点で考えた時、タカラレーベン 、エネクス・インフラは関東に、カナディアンソーラーは九州に東京エネルギーインフラは東北に70%以上の発電施設が集中しており、やや天候・災害リスクは高いと言えます。

一方、いちごグリーンと日本再生エネルギーインフラはよく地域分散されています。

出力制限リスク

九州電力など一部の地域では、必要となる電力需要以上の発電がされている時、発電会社に発電を止める要請を行う、「出力制限」が行われています。

これは発電量の制限に繋がり、収入の減少に繋がります。影響が大きいのはカナディアンソーラー、いちごグリーンです。

カナディアンソーラー決算発表資料2019年6月より

一方、出力制限は行われる頻度は限られることから収益に与えている影響は、現在のところ軽微です。

また、今後は地域を超えた送電の枠を増やすなど九州電力も対策をうっていること、テロ対策施設の建設の遅れから原発が停止して出力制限の頻度が減ること、から今後も出力制限のリスクは軽微だと考えられます。

固定価格買取制度の見直しのリスク

固定価格買取制度による買取価格は、太陽光設備の価格の下落に伴い毎年見直されており、2018年以降は大規模太陽光発電の価格は入札となっています。

経済産業省 固定価格買取制度ページより

一方で、今後の価格改定は、現在すでに稼働している太陽光の買取価格には影響がないため、現状のインフラファンドの経営には影響を与えません。

インフラファンドが今後、新たに太陽光発電事業を購入する際にも、高い価格で契約されている太陽光発電を主に購入すると考えられるため、直近で影響は出ないと考えられます。

インフレーションリスク

インフラファンドは固定価格買取制度により固定の価格となっているため、インフレ(モノの値段が上がること)に弱いという弱みがあります。

ただし、日本はバブル崩壊後、過去30年間の物価上昇は非常に穏やかであり、日本がハイパーインフレーションに陥る可能性が低いと考えるならば、インフレがインフラファンドの価格に与えるリスクもさほど高くないと考えられます。

また、導管性(法人税と配当への課税の二重課税を防ぐ仕組み)が20年しかなく、恒久的でないという課題もありますが、こちらは15年後程度に問題となる話であり、今後政策検討されることになると考えているので、今の時点では大きなリスクではないと考えています。

インフラファンドのリスクについて、参考になるサイト:上場インフラファンドの投資リスク

発電側基本料金

こちらは現在、政策が検討されている段階ですが、送配電網の維持・管理のための費用を発電側にも負担させよう、と言う議論がされています。こちらは導入された場合、再生エネルギー事業者の費用増となるため、事業上のリスクです。

再生エネルギーの事業者が対象になるかどうか、基本料金の設定がどの程度になるか、調整措置が取られるか、などに要注目です。

撤去費用積立

太陽光発電設備の撤去費用を積み立てるべきという議論がこちらも経産省のワーキンググループでされています。こちらも費用の増加に繋がるため、リスクになります。どのような結論になるか、要注目です。

インフラファンドの可能性

東京証券取引所が2020年4月27日より、上場インフラファンド指数を公表する予定です。7銘柄が組み込まれる予定。

指数化されることによって、指数に連動する投資信託ができることが期待され、より株式の流動性が高まることに加えて、インフラファンドへの需要が増えれば株価が上がる可能性もあります。

特に今はESG(環境、社会、ガバナンス)投資がトレンドであるため、太陽光発電に資金が集まる可能性があります。保有者としては楽しみな流れです。

まとめ

  • インフラファンドは利回りが5-6%と高く、配当も安定しており、高配当を求める投資家に適している商品
  • 上場しているインフラファンドは6銘柄あるが、高配当株と同じように、配当余力を確かめる必要がある。資本から配当を出している割合が高い銘柄は要注意
  • 発電収入からの配当が多いのはタカラレーベンとカナディアンソーラー
  • インフラファンドは政策により大きな影響を受けるため、定期的に固定価格買取制度の政策を確認した方が良い

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米国株ブロガーに人気の個別米国株12選/ETF 2選

米国株って最近よく聞くけど、どうやって株を選んだら良いかわからない、と思ったことはありませんか。

上場している株は1000を越えるため、1つ1つの株を見ていくのは大変です。米国株投資の経験者から学ぶため、著名な日本人米国株ブロガー10名の方が保有している銘柄を調べてみました。

米国株ブロガーが選んだ12銘柄

製薬、医療機器、消費者向け商品と幅広くビジネスを展開する、ヘルスケア企業のジョンソンエンドジョンソン (J&J) が1位で、10人中9人が保有していました。

J&Jはビジネスを安定的に成長させていることに加え、配当を継続的に増加させていることが、評価されているポイントかと思います。

銘柄評価はこちら => 【株式分析】J&J (JNJ-ジョンソン・エンド・ジョンソン)配当貴族の有名銘柄

2位以降はVISA、マクドナルド、コカコーラとおなじみの名前が並びます。

5位のAltriaは日本ではあまり馴染みがないですが、アメリカのタバコ会社で、世界で最も大きなタバコ会社の一つです。喫煙者の方にはマルボロの銘柄でおなじみかもしれません。

同じく同率5位のプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)は洗剤のアリエールやシャンプーのパンテーンなどでおなじみですよね。世界中でビジネスを展開する、アメリカの最大手日用品メーカーの一つです。

7位以降は同列です。マイクロソフト、スターバックスもおなじみかと思います。

AbbVieはもともとアボット(Abbott)という医療機器メーカーの一部からスピンオフして作られた製薬会社です。配当による株主還元に積極的で配当の利回りが大きく、高配当株を狙う方に好まれています。

3Mは化学品メーカーです。日用品ですとポストイットなどでおなじみですよね。

AT&Tは通信でいえば日本でいうKDDIのような位置付け(つまり通信大手2番手)で、TV放送も持っているメディア会社です。エクソンモービルは世界大手のエネルギー会社です。

AT&T、エクソンモービルも継続的に成長している上にAbbVieのように配当利回りが高いため、安定して配当をもらいたい人にも人気です。

これらの12銘柄のうち、テクノロジーはマイクロソフトのみであり、米国株ブロガーの方々はより長い間の時の洗礼を受けて成長してきた銘柄を好んで購入している印象です。

12銘柄の過去10年のパフォーマンス

次点で保有率の高かった銘柄

2名、3名の方々が保有していたのは下記の15銘柄でした。

10名中、2名、3名が保有していた銘柄

市場を支配し成長を続けるGAFA (Google, Apple, Facebook, Amazon)のうち、Facebookを除く3銘柄が含まれていますね。

British Tabaco(ブリティッシュタバコ、英国のたばこ会社)、Royal Dutch Shell (欧州のエネルギー企業)、Westpac Banking (オーストラリアの銀行)といった高い配当利回りをもつ株式が含まれています。

1名のみが保有していた銘柄

1名が保有していたのは下記の23銘柄となります。

こちらはユニリーバやネスレなど日用品でもおなじみの銘柄もありますが、主にはアメリカや欧州を中心にビジネスを行なっている企業が並んでいます。

米国株ブロガー10人が選んだETF 2選

米国株ETF(上場投資信託)で保有率が高かったのは下記の2つでした

  • VOO (VanguardのS&P500に価格が連動するETF)
  • SYPD (S&P500のうち、高配当の株に投資するETF)

複数のETFを購入されている方が6人いらっしゃり、平均3銘柄を保有していました。

まとめ

  • 米国株ブロガー10名の保有個別株のうち、12銘柄の保有率が40%を超えていた。特にJ&Jは10人中9人が保有
  • 保有率が高い12銘柄は20年以上にわたって成長し続けている優良企業が多く、テクノロジー企業はマイクロソフトのみ
  • GAFA (Google, Apple, Facebook, Amazon)は次点で人気のグループに入る
  • ETFで人気なのはS&P500に連動したもので、VOOとSYPDが人気

分析を面白いと感じていただいたら、Twitterなどでフィードバックいただけると嬉しいです!

分析方法

ブロガーの選定基準

元となるデータ

順序は2019年11月13日時点のブログ村米国株ランキングに準じています。

30代夫婦の家計簿 – 収入、支出、財産、住宅ローン残高

いわゆる「平均的な」30 代夫婦の家計簿はどのようでしょうか。 何に一番お金を使っているのでしょうか? 将来に向けて着々と貯金をしているのでしょうか? それとも、住宅ローンや家賃を支払うと、ほとんど収入が残らないのでしょうか?

国の統計をもとに、平均的な30代夫婦の家計簿をみていきたいと思います。

30代、世帯の平均収入

出典:厚生労働省 平成30年「国民生活基礎概況」

厚生労働省の2017年世帯データを使います。データによると、2017年の30代の世帯当たり平均所得金額は574万円です(こちらは単身、二人以上世帯の両方を含んでいます)。

社会保険料、所得税、住民税で20%程度引かれると仮定すると、手取りの年収は460万円。月になおすと、30代の世帯の手取りは平均して月38万円となります。

30代、2人以上世帯の支出

家計調査(2018年)によると、二人以上世帯、30代の支出の平均は下記のようになります。毎月、合計月28万円の支出です。

項目金額割合
食費¥68,63024.58%
交通・通信¥47,53616.76%
その他¥43,77615.57%
娯楽¥28,74310.07%
住居費¥23,1219.06%
光熱費・水道¥18,9136.85%
被服¥13,1204.68%
教育¥13,5234.61%
家具・家事用品¥10,9083.97%
保険医療¥10,5933.85%
合計¥278,863100.00%

データによると、世帯主の平均年齢は35歳。持ち家率は63.7%と約3人に2人は持ち家を持っています。30代、2人以上世帯の女性は1人に2人が就業しており、同居している人数の平均は3.7人です。

支出を割合のグラフにすると、どこにどれくらい支出しているのかわかりやすくなります。

出典:家計調査結果 2018(総務省統計局)

食費が約1/4を占め、交通・通信が次に大きな割合を占めています。

これは自動車関連費用(保険、車検など)で毎月平均27,000円かかっていることと、通信費が約15,000円かかっていることによります。

管官房長官が通信費の値下げにこだわる理由がわかるような気がしますね。

住居費は23,000円。大都市の家賃の水準から比較するとかなり低く見えますが、これは、3人に2人は持ち家のために家賃を払っていないことと、住宅ローン返済は上記の消費から除かれているためです。

その他は交際費やお小遣いや美容サービスなどです。

30代、2人以上世帯の貯蓄

出典:家計調査結果 2018(総務省統計局)

総務省の家計調査を用います。家計調査では20代、30代の貯蓄を40歳未満とまとめているため、上のデータは40歳未満のデータです。

貯蓄残高は単純平均で600万円です。定期預金が最も高い割合を占めています。

項目金額(万円)割合予想利回り(年, %)
定期預金27846%0.35%
普通預金14124%0.001%
貯蓄型生命保険11920%0%
有価証券(株・債券など)386%6.15%
その他264%0%
合計600100%0.55%

利回りの前提は定期預金 (5年、オリックス銀行)、普通預金は3大メガバンク。有価証券は日経225の過去5年のトータルリターンインデックスからです。

これはかなり興味深いです。2000年以降、ほとんどの定期預金の利回りが0.5%未満になり、15年以上経つにも関わらず、いまだに平均的な家庭で貯蓄の半分近くが定期預金です。

また、貯蓄型の生命保険にも金融資産の20%程度を割いています。

最も利回りが高い有価証券の割合はわずか6%。平均して38万円であることから、NISA(少額投資非課税制度)はこの世代であまり活用されていないことがわかります。

平均的な40歳未満が世帯主の家庭の予想利回りは0.55%です。

これは100万円を10年間預けて、約6万円を受け取る計算になります。

30代、2人以上世帯の負債

出典:家計調査結果 2018(総務省統計局)

20代、30代の負債残高の平均は1,248万円で、9割以上は土地・建物取得のための住宅ローンです。

これは負債のない人も含めた「平均」のため、実際に負債をもっている人(ほぼ住宅ローン)の負債残高平均は2,030万円となります (=1248万円/61.5%)

出典:家計調査結果 2018(総務省統計局)

この負債は2015年から年々増え続けています。要因としては、住宅価格の値上がりにより、住宅購入時に必要な住宅ローンの額が増えたことが考えられます。

住宅価格の値上がりを反映してか、平均的な貯蓄額も600万円前後を過去5年推移しています。

30代、2人以上世帯の収支

2,000万円の住宅ローンを20年で組んでいる場合支払い金利を1%と仮定した場合、約9万円になります。

あくまでも平均の数字ですが、38万円の世帯の手取りの中から、住宅ローンで9万円を支払い、さらに支出として28万円近くを支払う、と手取りとして残る金額はあまりないかもしれません。

これがNISAやiDeCoといった明らかに有利な仕組みの利用率が30代でもなかなか上がらない理由とも考えられます(NISAの30代の年代別比率は2019年6月でも12%)

出典:金融庁 NISA・ジュニアNISA利用状況調査

まとめ

  • 30代の平均世帯年収は574万円
  • 30代の2人以上世帯の支出は平均して月28万円。食費が25%、交通費・通信費の負担が17%と重い
  • 30代の2人以上世帯の貯金額は600万円で、ほとんどが定期預金か普通預金。株式・債権投資はわずか38万円。予想利回りは0.55%。
  • 30代の2人以上世帯の3人に2人は持ち家をもっている
  • 負債をもっている30代世帯の平均負債額(9割以上が住宅ローン)は2,000万円。
  • 住宅ローン、あるいは家賃を支払い、さらに平均支出28万円を行うと、月々の残りは数万円。
  • 30代の働き世代は住宅ローン・または家賃支払いのため、老後への蓄えがしにくい状況にあり、NISAの利用も約12%と普及はまだまだ。

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その他出典

高配当なオーストラリア株をポートフォリオのスパイスに(EWA)

高配当は好きだけれど、米国株は高すぎる気がするし、個別の株を買うと大きく下落しそうで怖い、と思うことはありませんか?

そんな方に、オーストラリア株はぴったりかもしれません。オーストラリア株は配当の利回りが高いことで有名です。

オーストラリア株の利回りと配当の利回り、特徴について書いてみます。

オーストラリア株に投資した時の利回りは?

オーストラリアASX300の推移 (VAS, 10年間)

過去10年のオーストラリアの株式市場は2009年のA$63から、資源バブルが終わり2012年に$52まで落ちましたが、現在はA$85まで上がってきています。

過去10年の成長率は年3.0%です。これだけ聞くと、あまり魅力的ではないように見えますが

その一方、配当が安定しており、利回りは高めです。2010年にA$63で購入していれば、配当で3.8%。2012年に底のA$52で買えていれば、利回りは5%近くなります。

しかも配当はだんだん増えていっており、そのまま保有していれば2019年には 配当の利回りが5.7%まで増加しています。

オーストラリア上場株の配当利回り

過去40年をみても、配当利回りは平均して4.2%となっており、リーマンショック以降はかなり安定しています。

株価の値上がりと合わせて、高配当で年利7.2%が平均的に見込める、というのはなかなか悪くないのではないでしょうか。

現在の価格は割安か

2019年10月30日現在、A$85で買ったとすると、来年の配当が今年と同程度であれば利回りは4.2%になります。これは過去40年平均の4.2%とほぼ同じ水準です。

オーストラリア上場株のPrice to Equity Ratio (株価収益率)の推移

一方、株価収益率でみると、オーストラリア上場株の加重平均の株価収益率は17近くと歴史的な平均である15を超えていて、やや高めの印象です。

ただし、配当水準からみると適正なので、高配当株としては魅力的です。

オーストラリア株への投資方法

米国に上場しているETFで、オーストラリア株のみに投資をしている銘柄はあまり選択肢がないのが残念ですが、取扱高が多いのはiSharesのEWAです。

iShares EWD 10年の価格推移

値動きが先ほどのオーストラリア株と違うのは、オーストラリアドルが弱くなり、米ドルベースでは安くなったためです。

豪ドル to 米ドルの為替の推移

豪ドルの為替が2014年から2015年、2017年から2019年にかけてどんどん弱くなっています。そのため、オーストラリア株自体は上がっていても、為替が弱くなっているために、米ドル建てのEWAでは安くなりました。日本円ベースでも同じような傾向です。

豪ドルが今の安値の水準から高くなっていくと考えるのであれば、さらに為替でもリターンが見込めます(逆もまた然りですが。。)

まとめ

オーストラリア株は株価の伸びは日本株や米国株よりも緩やかですが、一方で高い配当を維持しており、株式でいうと高配当株のような位置付けです。

特に配当は過去10年で維持か増加しており、高配当株を買う際の欲しい条件である「配当が毎年成長していく」、を満たしていると思います。

今の株価の水準は株価収益率の観点からはやや高めですが、配当の利回りは過去平均と同じです。

私はASX300というオーストラリアでいう日経平均のような指標に連動するETFを少額購入しています。もう少し安くなり、買い時になってから一気に書いたいなと思っています。

良い投資を! (投資は自己責任でお願いいたします)

【株式分析】S&P500連動ETF (SPY/IVV/VOO)はいつ買えば良いか

S&P500はアメリカを代表する500の会社の株価を加重平均した指標で、1926年の創設以来、年平均約10%のリターンを出している、長期投資家なら見逃せない投資先の一つです。

S&P500は魅力的な商品ですが、買う時期によっては長い間、損失を抱えてしまうことになります。「いつ買うか」は迷いますよね。

今回は今が買い時かどうかを判断する指標について書いてみます。

S&P500の長期的なパフォーマンス

S&P500の推移

S&P500は過去10年、堅調に推移しています。リーマンショック後の2008年には株価が大きく落ち込みましたが、2009年より株価は上昇し、2013年には2007年の水準を回復しています。

S&P500リターン計算 (DOYDJサイトより)

2019年10月現在は$3,000と5年間で1.5倍以上になり、過去5年間のリターンは、株価だけならば9.1%。配当を再投資していた場合は11.2%と高いリターンになっています。

それでは、今後もS&P500は堅調に推移すると予想されるのでしょうか。何を指標に、S&P500が割高か、割安かを判断すれば良いでしょうか。

一株あたり利益でみて割安か

Shiller PE Ratio S&P500 (multpl.comより)

Shiller PE Ratio (過去10年のデータを元に、ビジネスサイクル、季節変動、インフレーションを考慮して調整したPER)の値をみてみると、現在は29.84と1929年のブラックフライデー並の高値圏にあることがわかります。

また、2007年の金融危機前の水準より現在は高い値になっています。

Shiller PE Ratioからみると現在のS&P500は歴史的な高値圏にあります。長期的に見れば株価収益率は平均へ回帰することを考えると、近い将来に株価の調整が入る可能性が高いと考えられます。

米国GDPと比較して割安か?

S&P500は数多くのグローバル企業を含んでいますが、多くは売り上げ高の半分以上をアメリカで稼いでいます。

つまり、アメリカの経済が成長していけば、それだけ売り上げが上がる構造になっており、成長の速度とアメリカの経済成長率には一定の相関があると考えられます。

アメリカ上場株式時価総額/US GDPの比率 (Guru Focusより)

上図はアメリカの上場株式の時価総額をアメリカのGDPで割った値です。ドットコムバブル(1999)、金融危機 (2008)時点での比率は100%を超えており、現在はドットコムバブル時の150%近くまで上昇しています。

上場株式時価総額/GDPの値からみても、現在の株式相場は加熱しすぎの範囲に入っていると考えられます。

S&P500に連動するETFはどれを選べば良い?

S&P500連動ETFは数多く出ていますが、日々の取引量が多い代表的なのは下記の3つです。

銘柄名SPYIVVVOO
運営元State Street Global AdvisorBlackrockVanguard
年費用0.0945%0.04%0.04%

米国在住者でしたら税金の取り扱いの関係でSPYを選択するかもしれませんが、日本在住者の方が選択するならばIVYかVOOが年費用が安いために良いのではないかと思います。

まとめ

S&P500に連動するETFは、長期的に年平均10%のリターンを出している、長期投資家としては魅力的な投資先です。

特に個別企業を分析するのが好きでない、そこに時間は割きたくない方にはおすすめの投資先だと思いますし、積み立てていくのに良い商品です。

ただし現在の水準は一株あたり利益が歴史的にみて高すぎの水準となっています。

また、アメリカ市場全体が加熱しており、GDPと比較してもかなり高くなっています。

私はS&P500連動ETF(VOO)を保有してはいますが、上記のような理由から、現在は割合は減らして、より不況耐性がある投資先へ資金を割り振っています。。

良い投資を! (投資は自己責任でお願いします。)

【株式分析】J&J (JNJ-ジョンソン・エンド・ジョンソン)配当貴族の有名銘柄

オピオイドにまつわる訴訟やベビーパウダーのリコールなど、最近話題の、J&J (ジョンソン・エンド・ジョンソン)ですが、継続的に配当を増加させている企業としても有名です。

J&Jは投資先として「今」魅力的なのでしょうか? 株式を、分析してみます。

J&Jのビジネス

ジョンソン・アンド・ジョンソン(J&J)と聞くと、バンドエイドやベビー用品などが思い浮かぶかもしれませんが、実は売り上げの半分は製薬で、35%は医療機器で、残りの15%が消費者向けのビジネスです。

特に製薬事業の伸びが大きく、2018年の成長は主に製薬事業からきています。

2018 (billion $)成長率 vs 2017
消費者向け$13.81.8%
製薬$40.712.4%
医療機器$27.01.5%
全体$81.66.7%

製薬は、単純化していえば、

特許で保護された薬の数 x 価格 x 営業能力(数量)

で決まるビジネスです。

特許で保護されている期間が過ぎると、ジェネリック(分子量の小さい薬の機能同等薬)やバイオシミラー (分子量の大きい薬の機能同等薬)といった競争相手が出てきて価格が落ちるために、特許で保護されている期間でのビジネスが重要となります。

具体的には、2019年は下記の図のように、REMICADE、VALCADEといった売り上げの高い薬の特許が切れるため、製薬ビジネスへは逆風となります。

一方で、J&Jは新薬を継続的に出しており、新薬のパイプラインも充実しているため、これらの薬が治験で成果を出し、認可されれば、さらに売り上げの増加に繋がります。

医療機器のビジネスも同様ですが、違いとしては薬よりもメーカーをスイッチするコスト(スイッチングコスト)が高く、シェアを奪われにくいことがあります。

例えば、医者やナースが研修医の時から使っており、慣れている機器など、一般的に違う機器へ変更することを嫌がります。

また、医療機器会社の営業と医療関係者の付き合いが10年以上に及ぶことも多く、その信頼関係も価値となっています。

そのため、よほど価格か機能に差がないと、機器のスイッチが起きにくくなっています。医療機器の伸びが低いのは製品の競争力もありますが、このスイッチングコストの高さも理由の一つと考えられます。

消費者向けのビジネスは、小売りが寡占化してきていること(アメリカでいえばWalmart、CVS、Walgreenなどの大手に小売が集約されていっています)、小売りがジェネリックな製品を独自ブランドで安値で出してきていることから、競争が厳しい状況です。

J&Jはベイビーブランドに注力することを計画していましたが、最近、ベビーパウダーに滑石(talc)が混入していることがわかり、リコールしました。

このリコールをきっかけに、2019年10月現在では、米国の小売大手がJ&Jのベビーパウダーを取り扱うことを止めるなど影響が出ています。ベビーパウダーのみならず、他のJ&Jのベビーブランドにまで影響が及ぶと、さらに消費者向け事業の成長が遅くなるかもしれません。

一方、製薬、医療機器のビジネスは患者の数によって増えていくので、世界的に安定して成長が見込めるビジネスであり、特許で保護されており、かつプレイヤーも限られているため、市場としての魅力は高いビジネスです。

J&Jの収益の85%が製薬・医療機器という病院向けのB2Bビジネスのため、J&Jがビジネスを行なっている市場は安定しているといえます。

J&Jの売上高と利益の推移

J&J(JNJ)の売り上げ、利益率推移

J&Jの売り上げは2015年に減少したものの、2018年にかけて順調に増加しています。

粗利益率は2014年の69.4%から比べると2017年に66.8%まで落ちましたが、高い水準を保っています。

税利子前利益率も過去5年で低下してきていますが、24.27%とかなり高い率を保っています。

J&Jのキャッシュフロー

J&J(JNJ)のキャッシュフロー推移

2017年、2018年と$20 billion以上(2.2兆円)の営業キャッシュフローを生み出しています。業績の安定感は抜群。

財務CFがマイナスなのは配当や自社株買いのためで、2017年の投資キャッシュフローが突出して大きいのは買収のためです。

増資などをして株式が希薄化していない点は株主にとってプラスです。

J&Jの一株あたり利益の推移

J&J(JNJ) 一株あたり利益

J&Jの一株あたり利益は2018年から毎四半期$2.1付近で推移しており、上昇トレンドです。

過去5年のJ&J株価の推移

J&J(JNJ)の株価の水位

J&Jの株価は過去5年でみると、2015年10月の$107から2018年には$150近くまで上昇し、そこからは$120から$150の範囲で動いています。

J&Jの過去5年の上がり幅は年3.6%です。

一方で同時期のS&P(VOO)は$180から$275まで上昇しており、過去5年の上がり幅は。年8.8%です。

直近の株価の下落のため、配当を考慮しても、J&Jの株価はS&Pを下回るパフォーマンスです。

S&P500 (VOO)の株価推移

J&Jの配当の推移

JNJの5年間の配当利回り推移

J&Jの配当は毎年増加しており、2013年の$2.59から2018年の実績は$3.54まで増加しています。配当は年平均9.9%で増加しています。

また、2019年は$3,75の配当予定で、5.9%の成長予定です。安定的に配当を増加させていることが、J&Jが「配当貴族」(Dividend Aristocrat)と呼ばれる所以です。

2019年の一株あたり利益予想は$8.6と配当性向は43.6%前後となる予定です。配当余力は十分にあります。

配当の利回りは過去5年、2%-3%で推移しています。

直近の株価での配当利回りは3%に近づいており、配当の利回りで見れば現在の水準は歴史的に見れば割安です。

また、PERは株価$128、一株あたり利益$8.6の前提ですと14.9とS&P500の株式の中では割安です。

なぜ割安になっているのか

いくつかの訴訟がJ&Jの株価を引き下げています。

1つ目はオピオイド(鎮痛剤)の濫用により、米国で死者や中毒者が多数出ている件です。米国では製薬会社、流通会社がオピオイドの危険性を正確に伝えないまま販売を続けたとして集団訴訟が起きています。

J&Jは$4b(日本円で4400億円)を引き当てていますが、その金額ですむかどうか不明です。

また、2つ目としてベビーパウダーのリコールがあります。J&Jのベビーパウダーからアスベストが検出されたということから、J&Jは対象の製造バッチについてリコールを行なって調査をしています。

こちらも訴訟が起きており、引当金がどの程度になるかよめない状況です。

訴訟は米国の製薬・医療機器会社が避けられない問題ですが、特にオピオイド濫用はオピオイド中毒となった患者数が多いため、J&Jにも相当額が請求される可能性があります。

J&Jの評価

僕が投資判断をするときの5つの質問により評価したいと思います

J&Jの市場は魅力的か?

消費者向けビジネスは魅力的ではないが売り上げの15%であり、全体への影響は限られる。

売り上げの85%を占める製薬、医療機器の市場は、営業力が必要で新規参入が難しく、競争も寡占状態で比較的安定、特許で保護されているために代替品や供給業者の脅威も低く、市場も世界の高齢化・人口増加によって拡大している。

市場全体が伸びており、利益率も高く、今後もその状態が続くと想定されるため、魅力的。

J&Jのビジネスは理解できるか?

理解できる。

J&Jは競争力を持っており、それを維持できるか?

製薬、医療機器では築き上げた病院・医師との関係性、特許で保護された製品群がJ&Jの大きな資産であり、そう簡単には競争力を失わない。

毎年1兆円超のR&Dを行い自社での製薬のパイプラインを増やしている他、買収も積極的に行なってパイプラインの拡充につとめており、将来のパイプラインも現段階でも比較的充実しているため、長期的にも競争力の維持が見込める。

J&Jの経営陣は株主の方を向いているか?

向いている。継続的に配当を増加させ、自社株買いを行い余剰資金を株主に還元している。また、過去5年、EPS(一株あたり利益)を着実に増加させていっており、現経営陣にも信頼がおける。

J&Jは割安か?

配当利回り3%、PER14.9はJ&Jの歴史的にみて割安です。

オピオイド、ベビーパウダーなどの訴訟コストが膨らんだ場合、これらのコスト次第では一株あたり利益が大幅に減少する点に注意が必要ですが、これらは一過性のコストであり、本質的なキャッシュフローを生み出す力に変化はないとみなせます。

個人的にはJ&Jの株式はさらに下がったら買い増そうと思っています。

良い投資を!(投資は自己責任でお願いします)

投資についての方針

初心を忘れないよう、投資についての方針を定めたいと思います。

銘柄選択に対する5つの質問

魅力的な市場か?

ビジネスを行なっている市場が魅力的(成長率が高く、利益率も高い)であれば、企業は安定的に成長して利益を出し続けることができます。

理解できるビジネスか?

自分が理解できるビジネスであれば、そのビジネスがうまくいっているのかうまくいっていないのか理解しやすくなります。

ビジネスモデルに競争力があり、持続可能か?

競争力のあるビジネスモデルは競争に勝ち、売り上げの増加や、より高い利益率を獲得するのに役立ちます。最も重要な項目です。

経営陣が有能で、株主重視の姿勢か?

優秀な経営陣は継続的に高い成長をもたらし、かつ株主に利益を還元します。

過去5年程度の実績と今後の成長戦略を元に判断したいと思います。

割安か?

適切な価格よりも安く購入できるよう、PER(株価収益率)、EPS (一株あたり利益)、ROE (一株あたりのリターン)、BPS (一株あたり純資産)をみていきたいと思います。

投資の姿勢に対する6つのポイント

「ノーサイド・ゲーム」池井戸潤が描く組織の変革物語

「ノーサイド・ゲーム」は一言で言うと、組織の変革を描いた物語。

ドラマ化もされた、企業が運営するラグビー部を舞台にした池井戸潤の小説「ノーサイド・ゲーム」のあらすじ、ビジネスの視点から学べることについての記事です。

あらすじ

主人公の君嶋は大手自動車であるトキワ自動車の経営戦略室で働くビジネスマンだが、ある日工場の総務部長に左遷させられ、総務部長の仕事に加え、トキワ自動車が所有するアストロズという企業ラグビーチームのゼネラル・マネジャー引き受けることになる。

アストロズは例年16億円の赤字を出しており業績の重荷になっていることに加え、成績も低迷して前年度は2部落ちをかろうじて免れたチームであり、チームの中と外に問題を抱えている。

加えて、ラグビー協会は変革を望まない重鎮が支配し、ラグビーチームの運営を改革する気すらない。

君嶋はラグビーチームの中と外の問題に対して、どう立ち向かうのか。

ビジネスの観点から学べること

本作品のいわゆる「悪役」としては

  • 自分の利益(金銭や出世)のことしか考えず、他人を貶めたり、蹴落とすことに躊躇がない
  • 人の意見を聞かず、自分の意見が正しいと信じている

いわゆる困った「偉い人」が今回も壁として立ちふさがる。

それに対して主人公の君嶋は

  • 変革をもたらして結果を出す(ビジョンを描き、変革をもたらす仲間を連れてきて、周囲を巻き込んで動かし、成功を示し、変革を定着させる)
  • 困難でも諦めず前に進み続ける

と王道で対抗し、壁を打ち破っていく。

印象的だったのは、新参者であった君嶋と柴門が選手から信頼を勝ち得ていくシーン。

どんな仕事であれ、まず一緒に働く人から信頼を得ることが必要で、そのためには姿勢と結果が重要となる。主人公は、真っ直ぐチームに向かって自分が何ができるか考え、一つ一つを愚直に実行していく。それが下のような評価に繋がる。

「お前は自覚していないかもしれないが、チーム愛みたいなものだ。お前は本気でアストロウズのことを良くしようと思っている。」

「ノーサイド・ゲーム」池井戸潤 p.p. 1520

新たな監督となった柴門は一人一人に手書きで手紙を書いたことで、君嶋は土日の練習全てに共に参加したことで、選手から一員として認められた。ここからは一員となろうという姿勢や一人一人への思いやりが信頼を勝ち取るのにいかに重要かを学ぶことができる。

また、君嶋は観客を集めることで、柴門はチームを勝利に導くことで、選手からこのリーダーたちについていけば自分たちも優勝という目標を達成できる、という期待を抱かせ、信頼を得ることに成功している。こちらも、変化をもたらす時には早い段階で成功を見せることが必要、ということを示している。

相変わらずの池井戸節はエンターテインメント小説としても面白いし、ビジネスの観点からも学ぶことが多く、おすすめ。

芥川賞受賞 コンビニ人間 | 村田 沙耶香|社会から外れたところで生きる人たちが、居場所を探す物語

2016年に芥川賞を受賞した村田沙耶香さんの「コンビニ人間」のあらすじ、キャラクターとテーマのレビュー、いかに本書がビジネスに役立つか、の記事です。

「コンビニ人間」は一言で言うと、社会から外れたところで生きる人たちが、居場所を探す物語。

あらすじ

36歳、女性、独身、職歴はコンビニ店員のアルバイト18年の主人公、古倉はある日、コンビニのアルバイトとして入ってきた男性、白羽と出会う。

白羽はお客さんの女性に付きまといアルバイトをクビになるも、主人公の古倉は生活の変化を求めてそんな白羽に共に住む提案をする。その結末とは。。。

作品のキャラクター

他人への感情への関心に疎く、社会的な価値観や他の人の感情を把握する能力が極端に低い主人公の古倉は、自閉症のような特徴を持ったキャラクターだ。

古倉は周囲から排除されないようにと、周囲の行動を観察し、人がどんな場面でどんな行動をしているのかを学び、蓄積していく。

そして場面に応じて、蓄積したデータベースから取り出した仮面を身につけることで、周囲に馴染もうとする。

古倉は常に一歩引いた視点で他人と自分を観察して、他人の感情がわからない分、言動だけ合わせることに注力している。

あ、私、異物になっている。ぼんやりと私は思った。

店をやめさせられた白羽さんの姿が浮かぶ。次は私の番なのだろうか。

正常な世界はとても強引だから、異物は静かに削除される。まっとうでない人間は処分されていく。

「コンビニ人間」村田 沙耶香 p.790 (Kindle)

古倉にとって落ち着ける場所は、コンビニだ。コンビニのアルバイトが行うことは大部分が定型化されており、古倉はそのルールに沿って働けば良い。

ルールにしたがって動いているだけで、変だと見なされずに居場所が確保されるのは、古倉にとって居心地が良い。

一方の白羽は、精神的な発達が未熟な子供のようなキャラクターだ。

白羽はうまくいかないことを社会のせいにして、自分に原因を向けることがない。

周囲の人が自分を助けるのは当然だとみなして、助けが得られないと相手を責める。人と合わせることをせず、自分のやりたいように行動し、周囲と軋轢を生んでいく。

「僕に言わせれば、ここは機能不全世界なんだ。世界が不完全なせいで、僕は不当な扱いを受けている」

「コンビニ人間」村田 沙耶香 p.829 (Kindle)

白羽は古倉と同じく、周囲から「異物」と見られている点で共通している。

ただし、社会を忌避しながらも、彼の人や自分を判断する基準が一貫して「社会から見てどうか」と言う点は古倉と大きく異なる。

つまり、善か悪か、良いか悪いか、の判断をする際に、白羽は気づいているのか、気づいていないのか、その嫌いな「社会」に頼っている。

その上で、社会から求められる行動を取ることを拒否している。

作品のテーマ

この作品のテーマの一つは、どう生きるかの価値基準をどこに置くのか、だと思う。

古倉の価値の基準はあくまでも自分だ。自分が楽しいと思うからやり、自分が正しいと思うからこそそれを行う。

古倉は最後には居場所を見つけて自由になる。それは、古倉が社会に価値観の基準を置いても彼女は居場所を見つけられず、コンビニこそが自分の居場所だと再発見したからだ。

その対比として描かれる白羽は社会に価値の基準を置いており、社会的に評価されるようなステータスを得ることが善であり、そのための自分の行動は正当化される、と考えている。

白羽自身は自分が社会の基準からして低い位置にいることに気づいており、だからこそそんな社会から逃げたいと思っている。

古倉白羽
排除されないこと人生のゴール成功すること
なし他者への関心あり
自分価値の基準社会
努力社会の同調圧力への対応拒否
コンビニ居場所押し入れ

白羽が居場所としているのは押し入れというのは象徴的で、彼は一人で、社会から目を向けられない場所を求めていることがわかる。社会に価値の基準を置いている彼は、望むステータスを手に入れないことには納得できない。

満足できていない状況を解決するために他者を自分と同じところまで落とそうとしているのは、心理学的な”認知的不協和”の典型例だ。

白羽は、彼の望むようなゴールにたどり着けず、押入れへ帰っていく。

この二人の対比は、異物が社会の中で異物として生きるためには、自分なりの価値観を持つべきだ、というメッセージにも取れる。

ビジネスに得られる洞察

社会には主人公の古倉と同じように他者・社会への関心を持たない、持てない人が少なからずいると思う。

また、白羽のような大人も、特にオンライン上ではたびたび見聞きするため、それなりの数がいるだろう。尖った二人のようなタイプの人を理解するのに、本書は参考になる。

また、物語の鍵となる一つが友人や同僚たちから「同調圧力」だ。特にクチコミで主人公が同僚と似た服やカバンを買う話などは、クチコミやインフルエンサー(影響力のある人)がどれだけマーケティングで重要かを再認識させてくれる。

「異物」と作品の中で称される古倉や白羽のような人も、ビジネスの世界ではお客さんになり得る。そんな一味違った感性と考え方を持つ人を理解したいと思う人には、「コンビニ人間」はおすすめだ。