海外MBA受験から留学開始までのまとめ

海外のMBAを受験する場合、準備から留学するまでは長いプロセスになります。

海外のMBA取得に興味を持つ方へ向けて、MBAの受験準備から留学の開始までスムーズに進むよう、流れを解説しています。

MBAを受験するまでの流れ

MBA合格後の出発までの流れ

MBA卒業後の選択について

意思決定単位 (DMU) – 企業向けにモノやサービスをどう売るか

前回の「基礎からのマーケティング-購買行動モデル」では、お客さんが商品・サービスを購入するまでのプロセスを説明しました。小売店で販売されている飲料など、その場ですぐに意思決定がされる場合にはこの購買行動モデルがよく当てはまります。

一方、企業向けの商品・サービスの場合は、複数の人が購買のプロセスに関わってきて、購買のプロセスも長くなります。今回は、複数の人が意思決定に関わってくる場合に重要な意思決定単位という考え方について説明します。

意思決定単位(Decision Making Unit – DMU)

意思決定単位 (Decision Making Unit – DMU)とは意思決定をする人、または意思決定に関わる人たちをひとまとめにした考え方です。DMUは顧客の意思決定がどのように行われるのかを理解し、顧客の意思決定プロセスに効果的にはたらきかけるために使われます。

どうしてこの意思決定単位の考え方が重要かというと、複数の人が購入に影響を及ぼすためです。意思決定単位の中には、下記のような種類の人が存在します。

  • 窓口 (Gatekeeper):外との窓口になる人
  • 購買人 (Buyer): 価格などの条件の交渉相手となる人
  • ユーザー (User): 実際に商品・サービスを利用する人
  • 起案者 (Initiator): 内部で提案を起案する人
  • 影響者 (Influencer):意思決定者の選択に影響を与える人
  • 意思決定者 (Decision Maker):最終的に購入を決定する人

モノやサービスを販売する際に、意思決定単位はの考え方は誰がどのような役割を持っているのかを判断するのに役立ちます。

DMUの具体例:仮想的なケーススタディ

Aさんは外資系パソコンメーカーB社の法人営業部に務める営業です。Aさんの会社は会社用のパソコンを中堅自動車部品会社C社へ売りたいと思っており、C社のお問い合わせ窓口に打ち合わせ依頼の問い合わせを入れました。

Aさんは、C社のカスタマーサポートから、「関係する部署に連絡し、その部署より連絡させていただきます」という返答がきました。カスタマーサポートはAさんからの問い合わせを購買部署に繋ぎました(カスタマーサポート=窓口の役割)。

購買の担当者であるDさんは、ちょうど今年の予算を使ってエンジニア向けのパソコンを買う提案をしようと考えていたため、Aさんからの打ち合わせ依頼をみて、Aさんに打ち合わせを承諾するメールを送りました(購買担当=起案者の役割)

打ち合わせの前に、購買担当は要求される仕様を確かめるため、エンジニアにどの程度のパソコンの性能が要求されるか、何が重要か、などをインタビューしました。複数のエンジニアが、開発に必要なソフトウェアがサクサクと動くことや、外出先でも働きやすいような軽量のノートパソコンが欲しいことを伝えました(エンジニア=ユーザーの役割)

購買担当がIT部門に話を聞いてみると、セキュリティがとても重要で、B社よりもE社のパソコンの方がセキュリティ的にいいのではないかと言っています。それを聞き、購買担当のDさんはE社からも相見積もりを取ることにしました(IT部門=影響者の役割)。

Aさんと購買担当Dさんは打ち合わせを行い、Dさんは予算内におさまるよう、希望する価格についてもAさんに伝えました。Aさんはどうしてもこの案件を取りたかったため、Dさんから聞いた要求仕様、価格を元に提案書を作り、Aさんの上司を説得して、かなり値引きをした提案をDさんへ送りました。

C社では毎月一度、部長クラスの偉い人が集まり、意思決定をする場があります。DさんはAさんからの見積もりとE社からの見積もりの両方を含めたパソコンの購入についてプレゼンテーションし、決裁を求めました。討議の末、事業部長が選んだのはAさんからの提案ではなく、なんとE社の提案でした。理由は、多少の価格差よりもセキュリティがより安心できる方が重要だと事業部長が判断したためです(事業部長=意思決定者の役割)。

提案が通らなかったことをDさんから聞いたAさんはがっかりし、どう上司に説明しようかと途方にくれるのでした。

DMUの使い方

上のケーススタディでは、Aさんは残念ながらC社の意思決定のプロセスや意思決定に影響を与える人を十分に理解できていなかったため、契約を得ることができませんでした。

もしAさんがDMUの考え方を知っていたならば、どうアプローチが変わっていたでしょうか? 

意思決定者は誰なのか、どのようなプロセスで決まるのか、事業部長が何を重視しているのか、意思決定に影響を与える人が何を重視しているのか、などの質問を購買担当者のDさんにすることはできたでしょう。また、より良い提案を行うために、とユーザーやIT部門の人とのミーティングを依頼することもできたかもしれません。

これらを行うことにより、意思決定者が価格よりもセキュリティを重視していることを知ったのであれば、提案書にはセキュリティを強化するパッケージを追加するなど、対応策が取れた可能性があります。

このように、意思決定に関係する人がどんな利害を持っていて、どの人を動かせばどのように意思決定に影響を与えられるのか、を理解することによって、特に企業向けビジネスの世界では勝率を大きくあげることができます。また、家族向けでも車や家は家族ぐるみでの意思決定となることが多いため、DMUの考え方はお客さんの意思決定のプロセスを理解するのに役立ちます。

顧客理解の次のステップ

今回までの3回で、お客さんへの理解を深める考え方を紹介してきました(「お客さんが欲しいと思う5つのこと」、「購買行動モデル(AIDMA/AICEAS)」、「意思決定単位(Decision Making Unit)」)。お客さんを理解したら、次はどのお客さんを狙うか、です。

次回はマーケティングの基本となるセグメンテーションについて説明します。

>>次の記事 セグメンテーション | なぜ必要か、どうやって行うかを具体例付きで解説

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購買行動モデル (AIDMA/AISCEAS) | 人がモノやサービスを買う流れ

前回の「お客さんの5つのニーズをおさえる」では人の5つの欲求について説明しました。人は欲求を感じても、すぐに行動するわけではありません。モノやサービスを買ってもらうためには、お客さんの購入までの流れを理解し、適切な働きかけをする必要があります。

今回は、人がモノやサービスを購入するまでのプロセスを理解する上で役立つ考え方について説明したいと思います。

古典的な購買行動モデル – AIDMA

人がある商品を購入するまでのプロセスについて有名なものとして、AIDMAという購買行動モデルがあります。AIDMAはAttention, Interest, Desire, Memory, Actionの頭文字をとってつくった造語です。

  • Attention(注意):そのモノ・サービスの存在を知る
  • Interest (興味):興味をもつ
  • Desire (欲求):欲しいと思う
  • Memory (記憶):記憶する
  • Action (行動):購入する

AIDMAの具体例

日清の「日清カレーメシ」(お湯を入れて作るカレー味のインスタント食品)を例に、人が商品を買うまでの流れがどのようにAIDMAで整理されるかをみてみましょう。

今は日曜の夜。会社員のAさんがテレビをみていると、CMでカレーメシの広告が流れてきました。CMは一味違って面白く、Aさんはカレーメシという商品があることを知りました(Attention)

Aさんが寝る前にベッドで転がりながら携帯でネットサーフィンをしていると、カレーメシの違う広告が表示されました。Aさんはテレビでも違う広告を見ていたため、カレーメシって何だろう、と興味を持ちました(Interest)。

翌日のお昼、Aさんがお茶を入れに給湯室へ行くと、同僚が給湯室の前でカレーメシを食べていました。お腹が空いていましたし、同僚が食べている姿を見たことで、Aさんも試してみたいと感じました(Desire)。

Aさんが同僚にそれ美味しい?と聞いてみると、美味しいよ、という答えがかえってきました。Aさんは今度試してみようと思い、パッケージを見て覚えました(Memory)。

Aさんが仕事終わりにコンビニに飲み物を買いに行ったとき、カレーメシが目線の高さに陳列されていました。そういえばお昼に試してみようと思ったな、とAさんは商品を手に取り、レジに持っていきました(Action)。

上記のように、人がある商品を購入するまでには、商品の存在を知り、興味を持ち、欲しいと思い、そして行動するというプロセスがあり、AIDMAはそのプロセスを整理するのに役立ちます。

新しい購買行動モデル(AISCEAS)

AIDMAは依然として有用な考え方ですが、テクノロジーの進化と共に人の購買パターンもかわってきました。特に、スマートフォンの普及により、検索(Search)、比較 (Comparison)がしやすくなりました。また、レビューサイトやSNSの普及により、個人が意見を発信しやすくなった上に、他の個人からの影響も大きくなってきています。言い換えれば、共有(Share)の影響が大きくなってきています。

これらの購買動向の変化を反映して、AIDMAを拡張したのがAISCEAS (Attention, Interest, Search, Comparison, Examination, Action, Share)という購買モデルです。

  • Attention (注意):あるモノ・サービスを知る
  • Interest (興味):興味をもつ
  • Search (検索):検索する
  • Comparison (比較):比較する
  • Examination (検討):検討する
  • Action (行動):行動する
  • Share (共有):共有する

特に、電化製品や旅行など大きな買い物の場合、よく調べて、比較して買う人が多いため、AISCEASのフレームワークの方がAIDMAより有用かと思います。

購買行動モデルの限界

購買行動モデルはコミュニケーションの計画をするときに役立ちます。

ただ、このモデルは一人が意思決定をすることを暗黙に想定しているため、複数人の意見が意思決定に影響する場合を考えるためには、違うモデルが必要となります。

企業の意思決定は、ほとんどの場合、複数の関係者の意見が反映されて決定されます。また、家庭においても、例えば夫婦でテレビを買う場合など、一人の意見だけでなく、複数人の意見を擦り合わせて何を買うか決める家庭も多いかと思います。このような場合は、購買行動だけでなく、お客さんの意思決定の仕組みを理解する必要があります。

次回は購買の意思決定に影響を与える、意思決定の仕組み(Decision Making Unit)について説明したいと思います。

>>次の記事 意思決定単位 (DMU) – 企業向けにモノやサービスをどう売るか

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ニーズ | お客さんがあなたの商品を買う5つの理由

ゼロからはじめるマーケティング」第一回目です。僕が仕事を始めた時に知りたかった、マーケティングの考え方と流れについて、書いていきたいと思います。以下のような方に役立つ記事にしたいと思います

  • マーケティングという言葉には興味はあるが、過去にマーケティングについて学んだことのない社会人
  • 商品企画・マーケティング・戦略部門への就職を目指す大学生

この記事は、お客さんが商品を買う5つの理由(ニーズ)について説明します。

マーケティングの第一歩

マーケティング活動で最も大事なことは、お客さんを理解することです。誰かにモノやサービスを購入してもらうためには、それがその人の欲しいと思うものでなければなりません。

では、人はどのような時に「欲しい」と思うのでしょうか。人がモノ・サービスに求めるものは大きく分けて5つです。まずは身近なファッション業界(服)を例にとって、見ていきましょう。

機能的な欲求

人は何かを実現するのに必要な機能を提供してくれるモノ・サービスを欲しいと思います。

ファッションでいえば、主な機能の一つは、「熱を逃さず体を暖かくすること」です。冬になれば寒くなって一枚多く服を着たりしますよね。服の一枚一枚が体を覆い、体温を逃さないようにしてくれるため、服を着れば着るほど暖かくなります。

ただ、重ね着をして何枚も服を着るのは洗濯も大変になりますし、面倒くさいですよね。重ね着の着膨れしている姿が嫌だという人もいるかもしれません。一枚で暖かいというのは、それだけで価値があります。

この「熱を逃さず体を暖かくする」という機能を高めてヒットした例として、UNIQLOのヒートテックがあります。ヒートテックは化学繊維の仕組みを利用して汗を熱に変え、暖かさを保つようになっています。ヒートテックは、「暖かい服が欲しい」という機能的な欲求にうまく応えています。

経済的な欲求

人は、得をすることが好きですし、損することが嫌いです。

「この服を着てみたいけれど、一回しか着ないのに高すぎる」という場合、高いお金を支払って買うのは少し気が引けますよね。羽織袴、七五三の時の衣装などは特定の記念日でしか使われないために、購入すると一度あたりの価格は結構高いものになります。安くすませられるならば、すませたいですよね。

この「得したい、損したくない」という欲求に応えてヒットしているサービスとして、衣装のレンタルのサービスがあります。オンラインのレンタルではアメリカの「Rent the Runway」などが有名です。Rent the Runwayはパーティに着ていくハイブランドの服を中心としたオンラインでのレンタルのサービスで、数回しか着ないような服をレンタルで購入するより安く利用できる、という価値により、得したいという欲求に応えています。

また、単純に「価格に対して品質が高い」という商品もこの欲求に応えています。UNIQLO、しまむらのように企画から販売まで一気通貫で行なっている(SPAと呼ばれる形態の)ブランドがこの欲求に当てはまるかと思います。

経験的な欲求

人は、楽しみたい、心地よくなりたい、楽をしたい、という欲求を持っています。

例えば、服でいえば、ウェディングドレスが「こんな服を着て結婚式をあげたい」という経験を求める欲求に応えていますし、コスプレやハロウィンで仮装して楽しむ用の服というのも経験的な欲求に応えています。

社会的な欲求

人は社会的な生き物ですので、社会に帰属していたい、社会の中で認められたい、という欲求があります。服の例でいえば、「格好良く見せたい」、「可愛い、綺麗だと思ってもらいたい」という欲求です。

いわゆる「ハイブランド」と呼ばれるファッションはこのニーズに応えているものが多いです。ノンブランド品よりもデザインや素材にこだわり、個性を主張し、着ている人がこだわりを持っていることを伝えるような服になっています。

服がどのように人の印象を変えるかについては、「プラダのバッグを着た悪魔」というアン・ハサウェイ主演の映画がいい教材です。この作品のアン・ハサウェイは場面場面によりファッションブランドを切り替えており、ガラリと印象を変えています。

自己実現・自己満足的な欲求

人は「これを成し遂げたい」、「このような自分でありたい」という欲求を持っています。

この欲求に応えるのは、業態やブランドのメッセージであることが多いです。例えば、「大量消費・大量廃棄はもうやめて、モノを大切に扱い地球に優しくあるべきだ」というような考え方をする人は、新品をお店で買うよりもメルカリや古着屋で中古品を購入したり、あるいは地球環境への影響を真剣に考えているブランドから買おうと思うでしょう。

一つの商品が複数の欲求に訴求することはできる

一つの商品が機能的、経済的、経験的、社会的、自己実現・自己満足的の5つの欲求の複数に当てはまることはありますし、優れた商品は複数の欲求に訴求していることが多いです。

例えば、スターバックスでは

  • トレーニングを受けたバリスタが手間をかけて入れてくれる、美味しいコーヒー(機能的価値)
  • 自宅、職場以外にゆったりと安らげる第三の場所(経験的価値)
  • おしゃれな人、できるビジネスパーソンが集まる場所というイメージ(社会的価値)
  • 利益のみならず社会的責任を重視するというブランドの姿勢(フェアトレード、従業員への分配など)(自己満足的)

のように複数の欲求に訴求しています。

あなたの商品は、お客さんのどの欲求に訴えているでしょうか?

次の質問は、人は欲求を感じたらすぐに行動するのでしょうか? です。その質問の回答は、次の記事の購買行動モデルで解説します。

>>次の記事「基礎からのマーケティング-購買行動モデル

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ゼロからはじめるマーケティング講座

マーケティングの入門書は世の中に多く出ていますが、実際に実践しようとするとどうしたら良いのだろう、と迷うことが多いかと思います。「ゼロからはじめるマーケティング講座」は、マーケティングをただ学ぶだけでなく、実践したいと思う方に向けた記事です。

オーストラリア首都、キャンベラ旅行(観光・グルメ)

オーストラリアの首都であるキャンベラへ2泊3日の週末旅行に行ってきました。

キャンベラは国会議事堂、国立美術館、科学技術館、戦争記念館、国立公園、植物園などがあり、オーストラリアについて学ぶには最適な都市です。シドニーから週末旅行で行ける距離のキャンベラへの行き方、観光、グルメについて今回は書きたいと思います。

キャンベラへの行き方

キャンベラはシドニーから車、バス、飛行機で行くことができます。バスは複数の会社が運行しており、$100以下のことが多く、時間も自分で車で運転していく方法と変わらず3時間半くらいですので、オススメの手法です。Murraysなどで予約することができます。

飛行機の場合ですとフライトは1時間ですが、チケットは$200を超えてくることが多いので、予算とのご相談です。

自家用車またはレンタカーで行く場合は高速のM5号線でまず市内を出て、次にM31、M23と進んでいくと、スムーズに行けば約3時間30分で着くことができます。その場合、シドニー市内のM5のトンネルは特に夕方は混むため、金曜の夕方の帰宅ラッシュ時に出発しようとする場合は渋滞を見込んでおいたほうが良く、できればその時間帯は避けると良いです。

キャンベラ観光 – オーストラリア国会議事堂

キャンベラには新旧2つの国会議事堂があり、どちらも無料で入ることができます。特に新しい国会議事堂では毎日無料のツアーが1-2時間おきに定期的に開催されており、時間を調べて参加するのがおすすめです。国会議事堂がどのような理念で作られたか、オーストラリアの国会のシステム、などを学ぶことができます。

嬉しいことに、新旧どちらの国会議事堂も入場料は無料です。

新国会議事堂の上院

上院と下院はシートの色が違っています。上院は州ごとに国会議員が割り振られ、下院は人口に応じて割り振られます。この仕組みは、人口が集中していない州にも発言権が与えられるよう、州ごとに定数を割り振るアメリカの上院を見習ったそう。

新国会議事堂の下院

旧国会議事堂にも上院、下院がありますが、規模は半分以下です。実際に総理大臣が使っていた部屋まで入ることができます。旧国会議事堂のKid’s Roomは広く、おもちゃもたくさんあるので、幼い子供を持つ方が休憩するにはおすすめです。

旧国会議事堂のキッズルーム

オーストラリア国立美術館 (National Gallery of Australia)

国会から歩いて15分くらいの場所に、オーストラリア国立美術館と科学技術館があります。国立美術館のメインの展示はオーストラリアのアーティストが書いた絵画とアボリジニの芸術作品ですが、様々な特設展示を行なっているようです。僕らが訪れた時にはインドネシアの現代芸術の特設展示とモネの特設展示を行なっていました。

オーストラリア国立美術館の展示

オーストラリア戦争記念館 (Australia War Memorial)

オーストラリア戦争記念館はオーストラリアのために命を捧げた兵士への感謝と彼らの功績を忘れないために作られた記念館です。第一次大戦、第二次大戦に関するスペースが大きく、大戦で実際に使われた戦車、潜水艦、航空機の展示がされているなど、展示がかなり充実しています。キャンベラの国会議事堂があるエリアから北東へ行ったエリアにあり、国会から戦争記念館までの道は遮るものが何もないようにデザインされています。

零戦の展示

また、奥には大スクリーンでの、「第一次大戦時の空戦」動画の上映もあり、子供でも楽しめるような内容になっています

映画のようなスクリーン

日本に関する展示も多いです。オーストラリアまで日本の潜水艦が来ていたことを初めて知るとともに、当時の日本軍がいかに戦線を伸ばしていたのかに驚きました。

日本の侵攻

アメリカのニューオーリンズにある第二次世界大戦博物館(ニューオーリンズ週末旅行(ジャズ、グルメ、観光))と比較してみると、視点はかなり中立的だと感じました。

ニューオーリンズの博物館は連合国と枢軸国の対立軸を明確に描き、アメリカが参戦したからこそ悪である枢軸国の広がりを止めることができた、アメリカが世界に正義をもたらした、というトーンなのに対し、こちらのオーストラリアの戦争記念館はあくまでもオーストラリアに焦点を当て、当時の世界情勢の中でオーストラリアが置かれていた状況、オーストラリアが取った選択肢、中でも実際に戦いに赴いた兵士たちの生活について詳しく述べています。

オーストラリアは日本に攻められた側であり、憎しみを感じる対象としても描けたはずですが、日本を憎しみの対象とているのではなく、むしろ厳しい戦いに臨んだオーストラリア人を讃えるような展示になっています。日本の兵士達にも共感を感じられるような展示をしているところは非常に公平だと感じました。

さらに、現代の展示のコーナーからは、オーストラリアが自分たちの立ち位置と中規模の先進国としてどう強国の中で生き残るかをよく理解していることが伝わってきました。例えば、大戦時以降はイギリスがアジアに兵を十分に割けなかったため、アメリカに頼ることで自国の安全保障を確保しました。一方、大国に頼りきりになるのではなく、その後は軍隊を強化し、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、とオーストラリアは小規模ながら兵を派兵し、国際社会に貢献しています。

オーストラリアは2019年現在でも人口2500万人程度の中規模の国であり、派兵できる兵の数もアメリカ、イギリス、フランスといった人口の多い大国と比べて少ないです。ただし、国際社会で連携すべきと判断した際にはきちんと兵を出すことによって、国際社会の中で一定の存在感を示そうとしているように見えます。これは、日本にとってもヒントになる立ち振る舞いかと感じました。

キャンベラでのグルメ

僕らは、トリップアドバイザーの評価が高かったことから、RAKUという日本食料理屋に初日に行きました。場所はCanberra Centreという市内のショッピングセンターのすぐ隣です。開店とほぼ同時に行ったのですが、運よく一席だけ空いていました。ここでTasting Menuというコースを注文しました。

このレストランは期待を裏切らない美味しさでした。創作日本料理はどれも普通の日本料理と一味異なりながら、驚きを与えてくれました。また、特に魚介類の新鮮さには驚かされました。キャンベラは内陸の都市にも関わらず、日本のような新鮮な魚介類を食べることができます。

Rakuでのお刺身

また、店員の方もフレンドリーで、1歳未満の子供連れにも関わらず、優しく対応してくださいました。

Rakuでのデザート。キャベラ、ンが抜けていますが嬉しいおもてなしです。

一緒に来ていた友人にも翌日訪れることをおすすめしたら、お昼に行ったら予約で一杯だった、ということですので、事前に予約をした方が良いかもしれません。

キャンベラ旅行がオススメなのはこんな人

キャンベラは人口的に作られた政治都市ということもあり、街の作り方が非常に整然としているとともに、シドニーやメルボルンといった大都市に比べて人口密度が低く、広々としています。また、とてもアカデミックな街です。

  • オーストラリアの政治・歴史・文化・美術についてより詳しく知りたい
  • 子供に異国の文化を学べる機会を与えたい
  • シドニー以外の都市も1泊2日程度で訪れてみたい

こんな人には、キャンベラまで足を伸ばしてみるのがおすすめです。

医療マーケティング – 製品開発編

医療業界の商品企画・マーケティングは様々な点で一般的な製品・サービスとは異なり、専門性の高い職種だと言われています。

通常のBtoCやBtoBのマーケティングとの違いを理解できればより効果的なマーケティング活動ができる一方、その違いを理解しないと思わぬ落とし穴にはまってしまい、最悪は販売停止命令や訴状を受け取ることになります。また、製品・サービスが機能的に優れていたとしても、様々な理由で市場に浸透させることができないこともあります。

医療マーケティングの特徴と気をつけるべき点について、今回ははじめて医療機器、製薬企業で戦略、マーケティングを担う方向けに書いていきます。

医療業界の構造の特徴

医療業界と一口で言っても、医療を実際に提供する病院、クリニック、老人ホーム、ホスピス、支払いを行う民間保険会社と国の保険機関、薬を処方する薬局・ドラッグストア、薬・医療機器を提供する製薬・医療機器会社、販売代行を行う代理店、製品の許可や保険承認を管轄する規制当局、など数多くのプレーヤーが存在します。

医療業界のプレーヤー全てに大きな影響を与え、かつ他の業界との違いは規制当局の影響の大きさでしょう。いわゆるマーケティングの4P (Product、Price、Place、Promotion)の全てに規制の影響がかかってきます。製品・サービスを考えるときにも、承認を得るまでのプロセスは最初に考えなければならないことの1つです。

医療機器の製品開発の流れ

医療機関で患者さんの診断・治療・予防に使われる薬や医療機器は規制当局へ販売を申請し、販売しても良いという許可を得る必要があります。

国によっても規制は異なりますが、大抵の先進国において(米国、EU、日本、オーストラリアなど)、新しい製品はその安全性と有効性を示すデータ(「治験」と呼ばれる)を示す必要があります。

僕たちがお医者さんに行って、安全性が証明されていない薬や機器を使われても怖いですよね。また、効果のない治療をされても誰も幸せになれないですよね。

そういった事態を防ぐため、規制当局は製品・サービスを提供する企業にデータの提供を求め、安全性と有効性が確認できたもののみを許可しています。

日本の場合でしたら行政独立法人医薬医療機器総合機構(PMDA)が審査期間となります。求められるデータや審査の期間は、その薬や製品がどのくらい既に承認されて市場にある薬や製品と比べて異なるか、何か不測の事態が起きた時にどの程度患者さんに影響が出るか、などの基準で異なり、最も厳しい基準ですと審査に一年以上かかることもあります。

安全性・有効性を示すデータを集める必要があること、規制当局の審査期間があること、販売許可が得られてからも保険対象としてもらうための新たな申請と審査の期間があるため、医療機器で新しい商品が出る商品サイクルは一般的に他の業界よりも長いです。

例えば医療機器の場合ですと、下記のような流れで開発が進んでいきます。

  1. 研究開発(コンピューター上でのシミュレーション、机上実験、プロトタイプの開発など)
  2. 動物を対象とした安全性・有効性の検証
  3. First in Man (FIM)とよばれる、人を対象とした治療による安全性の初めての検証
  4. 少人数を対象にした安全性・有効性を検証する治験(医療機器の場合、数十人程度)
  5. 大人数を対象にした安全性・有効性を検証する治験(通常は数百人以上)
  6. データ集めと分析
  7. 規制当局への申請と質問の回答
  8. 規制当局からの承認取得
  9. 保険への申請
  10. 販売開始

商品にもよりますが、研究開発で数年、治験でさらに数年、審査と保険承認で数年、と研究開発から販売まで5年以上かかることは普通です。

また、治験の結果で安全性か有効性のどちらかが規制当局の基準に満たない場合、販売承認が下りず、販売できないことになります。

医薬品の製品開発の流れ

薬の場合も基本的な流れは同じです。ただし、治験に要求される人数がより多く治験が大規模になること、フォローアップの期間が長いことから、要する期間は長く、費用の規模はより大きくなります。

新薬の場合、研究開発から発売まで10年以上、研究開発に数百億円かかることはざらです。

一方、ジェネリックと呼ばれるすでに安全性・有効性が証明されている薬を特許が切れた後に他社が製造する場合は、状況が異なります。治験が省略されるため、需要の高い薬の特許が切れてから数年以内にジェネリック製造会社が同じ成分の薬を販売し始めます。

医療機器・医薬品の場合、一定以上の規模の治験の情報は公開されていることが多く、誰でもアクセスすることができます(clinicaltrial.govで公開されています)

医療機器・医薬品のバリュープロポジション

医療機器・医薬品は疾病の診断・治療・予防を対象にしているため、その製品のバリュープロポジションが明確なことが多いです。

例えば、大腸癌を対象としている薬の場合、「大腸癌を抱えた患者さんのガンを治療する薬で、これまでの薬よりも有効性が高く、副作用が少ない。1日1回で飲む回数も少なくてすむから患者さんの飲み忘れのリスクが少ない」というのがバリュープロポジションになります。

治験の結果により、安全性・有効性が証明されるため、製品の機能としての価値はデータで裏付けて明確にしやすい一方、データのごまかしは不正や悪い意図がない限りできないため、治験の成果が悪い製品は、すでに市場に同じ用途の優れた製品がある場合、筋が悪いものとなります。

治験の結果が商品の価値に大きな影響を与えるというのは、医療の業界の特徴です。

一方で、安全性・有効性の他にも効率性も重要となってきているため、たとえ治験の安全性・有効性の成果が現在市場にあるものと同程度であっても、効率性で価値を出すこともできます。

医療機器の効率化の例ですと、今まで3時間かかっていた手術を1時間でできて、同程度の安全性と有効性をもつ機器があれば、病院としてはより多くの患者さんを手術することができ、収益の増加につながる、というメリットを打ち出すことができます。

バリュープロポジションで重要なのは、データの裏付けがない価値はメッセージとして出すことに注意が必要、ということです。

例えば、Aという商品はBという商品に比べてこれだけ安全、ということを示すためには、二つの独立した研究成果を並べるだけでは、研究の前提条件が異なるため十分ではありません。

多くの場合、一つの研究の中でランダム化して比較する必要があります。この点を無視すると訴訟リスクが高まりますので、注意が必要です。

「エビデンス」が商品の価値を高めていく

新しい医療機器・医薬品は承認までの治験は企業がスポンサーとなって、医療機関や治験支援サービスを行う企業と提携して行うことが多いですが、商品が発売された後も商品の安全性・有効性についての評価は続きます。

具体的には、医療機関の研究者が実際にそれらの商品を患者さんに用いて、その結果を学会発表や論文という形で公表します。これらの結果は、エビデンス(Clinical Evidence)と呼ばれます。

一般的には、個々の研究のエビデンスが蓄積されると、メタ分析と呼ばれる複数の研究結果を分析した論文が出されます。

メタ分析により安全性・有効性が示された治療法は専門医の学会などが発行されるガイドラインでもエビデンスのレベルが高い、つまり信頼できる治療・診断法として推奨され、より多くの医師に取り入れられる可能性が高くなります。

詳しくはプロモーションのところで書きますが、エビデンスの蓄積を加速させるため、医療機関の研究支援を行うことも医療機器・医薬品メーカーが行なっている活動の一つです。

販売後も研究を行うことで、安全性・有効性の証拠 (Clinical Evidence)を積み重ね、商品の価値を高めることができます

医薬品・医療機器の製品開発競争の特徴

競争の観点ですが、治験の情報が公開されていること、治験の成果が論文や学会発表の形で公開されることから、医療機器・医薬品業界では、他の企業が何年後にどんな製品をどのようなメッセージで出してくるのか、をかなり正確に予測することができます。

競争力の高い企業は、数年後に他社が出してくるであろう新しい治療・診断方法が脅威であっても、エビデンスを積み重ねることで既存の確立している治療・診断方法を確立し、積み重ねのない新しい治療法が浸透しにくくなるような環境を作っています。

これは他の業界ではあまり見られない特徴でして、商品の導入計画を練るときには、この特徴を理解しておく必要があります。

まとめ:医療機器・医薬品のユニークな点

まとめると、医療機器・製薬業界での商品について、他の商品と異なる特徴は以下です。

  • 治験・規制・保険承認のプロセスがあるため、商品開発までの期間が長く、製品のライフサイクルも長い
  • 商品のバリュープロポジションはデータの裏付けで訴求する必要がある
  • 商品が発売された後にも、臨床研究の成果(エビデンス)を蓄積するという方法により、商品の安全性・有用性の評価を高めることができ、参入障壁を築くことができる
  • 競合が何年後に何を出してくるのか、何を訴求してくるのかをかなり正確に予測できる。逆に言えば、こちらの動きは他の競合にも見えている。

これがどうしてユニークなのかは、他の商品と比べるとわかりやすいです。例えば、コカコーラやアサヒをはじめとする飲料の業界では、毎年数十以上の新商品が発売され、多くが一年以内に消えていきます。

新商品開発は革新的な場合は開発に時間がかかることもありますが、トクホなどの医学的な訴求をする商品を除けば、治験や規制当局の承認のプロセスが必要ないことから、一般的には新製品発売までの期間は1-2年と短いです。

また、データの裏付けが必要ないことも多いため、「炭酸の刺激と独特の味わいで、ココロとカラダの両方をリフレッシュ」(コカコーラのブランドメッセージ)のようなメッセージを自由に出せます。

競合が何を出してくるかの予測も困難ですし、こちらの動きも競合からは見えていません。

以上のように、マーケティングの視点からすると、医療機器・製薬業界では一つ一つの製品について、データを元にした機能価値を訴えやすいこと、すでに出ている製品自体の魅力を臨床研究により高めることができること、市場と競合の動きを予想した上でどのように差別化するかを考えやすいこと、という点で他の業界と異なります。

一歩進めて考えれば、どんな価値訴求をしたいのかを明確にした上で治験を組み立て、発売後にどのような臨床研究を医療機関と行なっていくのか、というエビデンス戦略がマーケティングの一部となっているとも言えます。

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ハーバードMBA取得に実際にかかった費用

海外MBAの留学にかかる費用は2年間で20万ドルを越えると言われています。大学がかかる金額を発表していますが、実際には追加で費用がかかります。実際にはいくらかかったのかを紹介いたします。

数字は2020年入学の前提で、1$ = 108円として計算しています (2019年9月の為替より)。

単身夫婦
学費 (2年間)$146,900$146,900
教材費 (2年間)$5,100$5,100
健康保険代(自分、2年間)$9,800$9,800
健康保険代 (家族、2年間)0$15,400
住居費 (21ヶ月)$31,500$46,200
 固定費合計$193,300$223,400
変動費(食費、交通費、家具代、旅行代など)$42,000$48,300
合計 (US$)$235,300$271,700
合計 (円 1$ = 108円)2540万円2930万円

学費: $73,440 (1年)

1年間の学費は793万円です。卒業まで2年間あるため、単純計算で学費だけで1,600万円となります。僕が2017年に卒業した時には$72,000でしたので、物価の上昇に合わせて、毎年着実に1%程度ずつ上がっていくと考えた方が良いです。

教材費: $2,550 (1年)

1年間の教材費が約28万円なので、2年間で55万円です。こちらは教科書や印刷して渡される紙のケースなど。こちらも年々1%以上上昇しています。

健康保険代: $4,900 (1年、単身の場合)

健康保険代は単身の場合、53万円、夫婦の場合は136万円となります。健康保険に入らないとアメリカでは医療費が怖すぎることになるので、こちらも必要経費です。単身の場合、2年間で105万円で、夫婦の場合は270万円です。子供がいる場合、一年あたり$4,000(44万円)追加です。

住居費・家賃: 月々$1,500 (寮)/$2,200 (1ベッドルーム)

家賃は寮に住む場合は月々$1,500以下ですみますが(部屋の広さにより家賃が異なる)、OWAやSoldiers Field Parkというハーバードビジネススクール敷地内のアパートで1ベッドルームを借りる場合は月々$2,200はみておいた方が良いです。

2ベッドルームは$3,000近くしますが、シェアすることで家賃を削減することもできますので、2年目に一緒に住む人が見つかればシェアをして、寮と変わらない程度の家賃にすることもできます。

私の場合は一年目は寮の一番小さい部屋でしたので月々$900程度で、二年目は妻が合流したこともありSoldiers Field Parkという敷地内のアパートで1ベッドルームを借りたので、そちらは月々$2,200程度でした。

単身前提でMBA期間中の21ヶ月をキャンパス内の寮で借りたとすると、$1,500 x 21ヶ月で$31,500(約340万円)です。夫婦・子連れの場合はワンベッドルームで$2,200 x 21ヶ月で$46,200 (約500万円)です。

固定費合計

学費、教材費、健康保険、家賃という固定費を合計すると、単身でも固定費だけで$193,300と2,100万円近くになります。夫婦でワンベッドルームを借りる前提ですと、$222,680と2400万円になります。

授業料は奨学金がもらえれば割り引かれる可能性がありますが、なかなか厳しい金額です。

ちなみに保育園(Day Careと呼ばれます)に預ける必要がある子供がいて、保育園に預ける場合、1日あたり$100はかかりますし、ビジネススクール内の保育園はさらに高いので、月々$2,000は追加でかかる可能性があります。

変動費(食費、交際費など)

HBSは単身で月々$1,800 (約20万円)、夫婦で月々$2,176(役23万円)としていますが、実際には+10%程度かかると思っていた方が良いです。

なぜかと言うと、セクションでの旅行や友人との交際費でそれなりの額を使いますし、生活のセットアップのために家具を揃える必要があるためです。

切り詰めれば夫婦でも月々$1,800ですむかもしれませんが、ボストンの物価は日本より体感的には1.5倍くらいですので、レストランに食事に行くとすぐに一人あたり$30-$40くらいはかかるため、近くのTrader Joe’sというスーパーなどをうまく活用する必要があります。

単身だと21ヶ月で460万円、夫婦だと520万円はみておいた方が良いかと思います。

合計で費用はいくらかかるのか

単身の場合ですと、固定費で2,100万円、変動費で450万円の、計2,550万円が21ヶ月のハーバードMBAでの生活でかかる費用となります。

夫婦の場合ですと、固定費で2,400万円、変動費で530万円の計2,930万円が21ヶ月での生活費となります。

私の場合は1年目は単身でしたが2年目は夫婦でしたので、中間程度の、2700万円程度でした。

そのうち、1年目と2年目は3ヶ月のインターンシップで働ける機会があり、この期間にインターンシップ先によっては1ヶ月で80-100万円程度支給されるため、3ヶ月で240万円稼げるとすると、単身の場合は差額の約2,300万円が必要となる金額となります。

どうやって費用を賄うか

社費の場合は会社が授業料や生活費などを出してくれるので問題がないと思いますが、私費の場合は2,300万円を確保するのはかなり大変です。

借り入れを行う方法もありますが、奨学金を取るのがおすすめです。奨学金を得る方法については、下記のページをご覧ください。

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老後資金は2000万円不足するのか?

老後というのは医療への支出が必然的に高くなる時期でもあり、医療業界にとっても関心が高いテーマです。金融庁が公表した「高齢社会における資産形成・管理」の報告書が様々なところでニュースになっているのが興味深いと感じたため、考えることを書いてみます。

金融庁の報告書の要点

報告書の要点としては、以下です。

  1. 人生100年時代となり、現在60歳の人の25%は95歳まで生きると推定される
  2. 現在の「高齢無職夫婦世帯」では毎月の収支が毎月約55,000円の赤字で年間約66万円の赤字になっている
  3. 66歳から高齢無職夫婦世帯となると、95歳末までで66万円 x 30 = 1,980万円 (約2,000万円)不足する
  4. だから若いうちからの資産形成、60歳以降も働き続けること、退職前の収入と支出バランスの見直しと貯蓄が重要
  5. 上の4をサポートするような環境整備が必要(iDeCo、つみたてNISA、金融リテラシーの向上、アドバイザーの充実、高齢者保護)

一言で言うと、「公的年金だけでは不足するので、個々人が貯蓄、投資を行う必要があり、国としてはそれをサポートするような環境を作るべき」、です。この主張自体に驚きはないのですが、驚いたのはこのニュースに対する反応。時事通信社のニュースを引用すると、野党は下記のように年金制度を批判する材料として利用しているようです。

 立憲民主党の福山哲郎幹事長は7日の党参院議員総会で「いつから2000万円ないと老後が迎えられなくなったのか。安倍晋三首相に予算委員会で国民の不安に答えてもらわないといけない」と強調。「逃げたまま衆院解散・総選挙など許されない」と訴え、手始めに首相と全閣僚が出席する10日の参院決算委員会で追及する方針を示した。
首相が自民党幹事長を務めていた04年の年金制度改革は「100年安心」がうたい文句だった。今回の報告書は政府が年金制度の破綻を認めたとも受け取れることから、国民民主党の玉木雄一郎代表は7日の党会合で「100年安心は崩れた」と主張。独自の改革案を提示し、参院選の争点にする考えを表明した。
主要野党が攻勢をかけるのは、参院選に合わせた衆参同日選の臆測も出る中、17年衆院選の際にクローズアップされた学校法人「森友学園」「加計学園」問題など政権を揺さぶるテーマが他に見当たらない事情も背景にある。6日は合同ヒアリングを開き、厚生労働省などの担当者に「公的年金の使命を放棄している」と詰め寄った。

もちろん政治的な意図を持って攻撃するために組み立てているのでしょうが、「2,000万円不足するのは年金制度が破綻しているからだ」というロジックは聞いていて非常に面白いです。いつから年金制度というのはどんな生活をしていても、死ぬまでに必要な金額を全額出してくれるようになったのでしょうか。

老後資金2000万円不足する家庭は限られる

老後に2,000万円という数字が一人歩きしていますが、現実に老後資金不足で困るのは以下が前提とされている状況です。

  1. 「高齢無職世帯」となった時点で十分な貯蓄がない
  2. 収入、支出をコントロールして収入と支出をバランスできない
  3. 年金収入のみが老後資金の源泉である

十分な貯蓄がない

まず一点目の貯蓄についてですが、同じ金融庁のレポートの中で、60-70代の平均的な金融資産は1,830万円とあります。

同レポートによれば90歳まで生きるのが約45%なので、65歳から90歳までに必要な金額は約1,650万円 (66万円 x 25年)。レポート内で用いられている平均的な家庭が平均的な寿命まで平均的な生活をするのであれば、亡くなるときに約180万円を残すことになり、年金制度は老後生活をサポートするのに十分な額を提供していることになります。

つまり、平均的な家庭はお金を使い切る賢いお金の使い方をしていることになります。もちろん平均なので、資産が余る家庭もあれば、足りない家庭もあるでしょうが、平均を見る限り、年金制度が崩壊しているとは言えなさそうです。

収入と支出のコントロール

資産が平均以下の家庭であっても、支出をコントロールすることはできます。

金融庁の報告書の生活費の数字は、厚生労働省の「2018 年度の公的年金額と 2017 年の高齢者世帯の収支」のレポートを元にしているのですが、これを見ると焦点となっている高齢無職夫婦世帯の平均は月21万円で19万円が年金収入。支出を見ると、26.5万円で、その内削れないであろう保険医療と社会保険料は足して4.5万円程度で衣食住が食費で7.7万円、光熱費2.3万円、住居1.8万円、服代1万円。これら以外にも、教養娯楽で2.5万円、交通・通信で4万円、その他で6.8万円の計13.5万円使っており、本当に生活が苦しいのであれば、この衣食住医療以外で削れる余地はあるかと思います。

もしこれらが削れれば、収入と支出のバランスを取ることができ、特に貯蓄が必要でないことになります。

収入の面では、自営業者の家庭で厚生年金に加入しておらずそもそも月19万円も年金がない、という家庭も当然ながらあるでしょう。その場合は年金が月12万円程となり、支出の切り詰めで対応できないことは十分考えられます。金融資産もなく、食事もままならない、と。

それではこういう家庭には打つ手はないのでしょうか。人生100年安心は偽りなのでしょうか。

社会保障からの収入

年金だけでは生活に必要なお金が不足する場合、年金ではなく生活保護がセーフティネットになります。

厚生労働省の生活保護に関する報告書においても、2015年時点でも65際以上の約100万人が生活保護を受給しており、3,500万を超える65歳以上の約3%が生活保護を受給しています。

生活保護制度が続いている限り、日本では健康で文化的な最低限度の生活が保障されています(現実には制度を知らない人がいたり、アクセスがそこまで容易でないという課題がありますが、制度としては存在しており、多くの国民の生活を支えています)。

上記のように、「老後資金2000万円不足するのは本当か?」という質問に対しては、そういう家庭はあるだろうが、現状では限られる、というのが答えでしょう。

年金の役割について

そもそも定義として年金はどんな生活をしていてもその金額を全て保障する制度ではなく、不足は破綻を意味するものではありません。不足についても、家計の貯蓄を考慮しておらず、家計の支出コントロールを無視しているために前提が多くの家庭で成り立っていないため、平均的な家庭で不足するように語るのは誤りです。

また、債務超過となった場合には生活保護を利用するという手段があるため、年金だけで生活が成り立たなければこの世の終わりのように、政治家やマスコミが社会不安を煽るのも望ましくないと思います。

では、年金制度は本当に「安心」できるのか

ただし、これらはあくまでも現在の話であり、年金だけで今後も十分かという問いに対しては、そうでないと答えざるを得ません。

年金制度は破綻しているのか

年金制度が破綻しているとまで突っ込むのであれば、そもそも論を展開してほしいところです。国民年金は国庫負担が半分であり、その額は年間12兆円に達しています。日本の2018年の歳出は98兆円であり、34兆円(約1/3)を借金に頼らないと回らない中で(2018年度予算)、同レベルの国庫負担をいつまで続けることができるでしょうか。

日本はマクロ経済スライドを導入して長期的には給付水準を負担水準と一致するようにしていますが、前提は国家が国民年金の半分を負担し続けられることです。国庫負担を維持できなければ、保険料をあげるか、積立金の取り崩しの速度を早めるか、給付水準を調整するか、年金受け取り年齢を引き上げるか、などの手段を取る必要が出てきます。

ギリシャの例

ギリシャが過去10年間に行ってきたように、日本は将来的にはそのどれも行わざるを得ないでしょう。国民年金は高齢無職世帯の収入のうち約12万円を占めていますから、これが半分の6万円になると、かなり苦しい生活になる人たちが増えてくると思います。

ギリシャの例では、年金の変更で最も被害を受けたのは社会保障が続くという前提で生活を組み立てていた国民でした。今の水準の年金制度が持続可能でない以上、国としてはきちんと現状を伝えて自助努力を促すことは重要ですし、そのための環境整備をすることは国の方針として正しいと思います。

政治家の役割

次の選挙を勝つためには政治家として、現在の麻生財務大臣のように政府は必要な対策をとっており安全ですよ、と伝え続けるのが合理的なのかもしれません。

ただ、それは問題の先送りでしかなく、問題は先に伸ばせば先に伸ばすほど、後になった時の被害が大きくなります。「借金をしてまで現在の高齢者世代に高い年金水準を支払っていますが、持続可能性についてどう考えているのでしょうか。

投票権のない将来世代に負担を先送りするのは政治家として正しい姿でしょうか」、という質問ができるような、将来世代を向いた政治ができる政治家が日本にも出てきてほしいところです。

政府の対応

2019年6月12日追記です。やはりというか、麻生財務大臣が報告書の内容について否定して、年金の信頼性について再度強調しました。

国民はそこまで愚かではないので、政府のこういう答弁は政府への信頼感を落とすと思います。結果的に、国民は自己防衛のために貯蓄にお金を回し、お金が経済に回らず、経済成長を妨げ、賃金が上がらず、貯蓄をするのがより大変になる、という悪い循環にはまっているように見えます。

ニューオーリンズ週末旅行(ジャズ・グルメ・観光)

ルイジアナ州にあるニューオーリンズに二泊三日の週末旅行に行ってきました。ニューオーリンズといえば2005年のハリケーンカトリーナで大きな被害を受けたことで日本でも名前が知られるようになった都市かと思いますが、アメリカ国内では洪水前、洪水からの復興後ともに旅行先として人気です。ニューオーリンズ、魅力がたっぷりある街でした。

ジャズ

ニューオーリンズへ来て外せないのはやはりジャズでしょう。ニューオーリンズはジャズの発祥の地と呼ばれるほどジャズの歴史のある都市で、街中に音楽が溢れています。昼にはFrench QuarterにあるJackson Squareの周りでは手相占い、絵描きに加えて音楽を演奏している人がおり、メイン通りであるBourbon Streetでもいつも誰かしらが音楽を演奏しています。また、ニューオーリンズの夜はとても賑やかで、Bourbon Streetを歩くとそこらかしこからライブ音楽が聞こえてきます。

New Orleans Bourbon Street

僕らは初日の夜はMaison Bourbonに行き、二日目の夜はPreservation Hall(ジャズの文化保存を目的とした施設)でライブを聴きました。前者は飲み物一杯(Abita Beer $5)から好きなだけジャズを聴くことができ、バーホッピングをするのにも使いやすいお店です。

Maison Bourbon

後者は、入場料$20で飲み物販売やトイレなどなく、純粋にジャズを聴くためだけの場所で、1時間おきの総入れ替え制。週末ということもあり僕たちは30分前から並んでいましたが、座ることができませんでした。どちらも演奏は良かったのですが、後者ではアドリブで演者同士の掛け合いを見ることができたことと、ドラムのアドリブがとても良かったため、後者がより印象に残りました。

Preservation Hall

Maison Bourbonは深夜まで営業しているため、一泊だけの滞在でも両方訪れることは可能かと思います。

グルメ

アメリカ生活もそろそろ丸3年となり、ピザやハンバーガーも普段の食事となっているのですが、やはり大味な印象が否めないアメリカでの食事。ニューオーリンズではそんなアメリカでの印象を変えてくれるような、美味しい食事に出会えました。

ニューオーリンズ名物といえばスパイシーなケイジャン料理、ややハイソなクレオール料理があります。代表的なのはスープ料理のGumbo、パエリアのようなJambalaya。Gumboにはお米が入っていることも多く、お米が主食の日本人の口にはとても合います。

Gumbo

僕らのお気に入りは630 St Peter St, New Orleans, LA 70116にあるGumbo Shop。ここのGumbo、Jambalayaは滞在中で食べた食事の中でも最も美味しく、二度足を運びました。価格もGumboのカップが$5、ボウルで$10、ジャンバラヤが$15程度と標準的なので、おすすめです。

Gumbo Shop

甘いものが食べたくなった時におすすめなのがCafe Du Mondeのドーナッツ、ベニエ( beignet)。砂糖の粉がドーナッツの上にかかっており、癖になるような甘さ。ここは非常に人気でいつも行列ができているのですが、比較的空いているtake outの列もあるので、時間に余裕がない場合はそちらに行っても良いかもしれません。Cafe Au Laitと一緒にどうぞ。

Cafe Du Monde

高級感のある雰囲気の中で、クレオール料理を楽しみたいのであれば、The Court of Two Sistersで注文した$45の前菜、メイン、デザートのセットも良かったです。メイン一品は$30程度のものが多く、二人で$100を超える可能性が高く、価格帯はやや高め。

第二次世界大戦博物館

今回の旅行の一番の収穫はこの博物館と言っても良いでしょう。ニューオーリンズにある第二次世界大戦博物館はこのためだけにニューオーリンズに来る価値があると言えるほど充実している博物館です。

National WWII Museum

博物館では、アメリカの視点から、第二次世界大戦がどうして起きたか、どう進展していったのか、アメリカがどうして参戦を決めたのか、各戦場で何が起き、連合国がどのように意思決定をして、どのように戦況が変わっていったのか、が詳細に展示されています。この博物館が特に優れていると感じた理由は3つあります。

1つ目は内容の深さと広さです。第二次世界大戦を戦略、戦術レベルで詳細に記述した博物館はおそらく世界で唯一なのではないかと思います。僕自身、東京の靖国神社、広島の原爆ドームや長崎の原爆資料館、韓国の戦争記念館、イスラエルのホロコースト記念館など第二次世界大戦に関わる博物館を訪れてきましたが、どれもその国・民族や被害者に焦点を当てたものが多く、戦争がどのように起きて、どのように進展していったかを世界のレベルで解説したものはなかったように思います。

National WWII Museum Display

この第二次世界大戦博物館はD-Day(ノルマンディー上陸作戦)やMidwayでの海戦がどうして戦争のターニングポイントになったのか、その裏でどのような外交上の駆け引きや準備が行われていたのか、についてかなり詳しく触れられており、マクロのレベルでの情勢を学ぶことができます 。

加えて、ミクロのレベルでも各国の意思決定の様子についても触れており 、例えば山本五十六がアメリカとの戦争は長期戦では生産力の違いから負けると考えていたことや、沖縄が奪われた後も日本の首脳部は九州で巻き返しを図って講和の条件を良くしようと考えていたことなど、意思決定がどのようにされていたかについても学びがあると思います 。

2つ目は展示方法です。多くの博物館が展示物とその説明のボードで構成されているのに対して、この博物館は映像、音声、展示物が豊富で、その組み合わせも優れています。一例をあげると、各ブロックにはほぼ確実に当時の映像や解説映像が流されており、展示物を見ずとも、歩いて映像だけを見るだけでも概要が分かるようになっています。来館者は皆が皆展示物を全てじっくり見る訳ではないので、これは良い工夫。また、音声や映像は人の注目を引くため、子供も含めた来館者の関心を引きやすく、飽きさせないという点でも優れています。

3つ目は併設された映画施設です。現在、この博物館では4Dの映画を二本上映しており、その品質が非常に高い。メガネなし3Dの映像に加え、椅子は振動で震えますし、上映中に飛行機の一部が上から降りてきたり、舞台下から当時使われていた軍事用物資が上がってきたりと臨場感たっぷり。ストーリーもアメリカ人の心を震わせるような、ピンチから一転、愛国心で国民が団結して悪の枢軸をやっつける、というハリウッド映画の王道展開に沿って作られており、なかなか楽しませてくれます。長さも40分と時間の限られた観光客にとってもちょうどいい分量です。

以上のようにコンテンツの量・質ともに高く、魅せ方も革新的で、加えて良い出来の4D映画館までついているというこの博物館。トリップアドバイザーの世界博物館ランキングでも世界第2位に選ばれるのも納得です。

日本からはるばるニューオーリンズ目当てに行く人はあまり多くはないかもしれませんが、魅力溢れる街ですので、おすすめです。