フェイスブック(Facebook):ソーシャルメディア市場・株価分析

GAFAの一角であるFacebook。この企業は規模が大きく、かつソーシャルメディアをほぼ独占しており影響力を持つため、この企業がどのようにビジネスを展開するかは他の企業にも大きな影響を及ぼします。特に、Visa/Mastercard、eコマース(Amazonなど)を保有したり、これらの株に興味がある方にとっては理解する価値がある会社です。

今回はFacebookのビジネス・株式の分析を行なっていきます。

この記事を読むとわかること

  • Facebookはソーシャルメディア市場をほぼ独占している
  • ソーシャルメディアサービスはネットワーク効果が働くため、近い将来にFacebookの独占的な地位が奪われるリスクが低い
  • Facebookはいまだに25%の速度で売上が伸びている。新興国を中心に、ユーザー数は約8%で伸びており、全世界的な広告単価も16%で伸びている。広告単価の伸びの方が早い
  • Facebookは広告単価を引き上げるため、スーパーアプリ化を目指して、Facebook、Instagram、Whatsupへ決済とeコマースを取り込むことに注力している。スーパーアプリ化ができるかが今後5年の成長を左右すると同時に、この試みは決済、eコマース、小売にも大きな影響を与える
  • 既存の広告ビジネスについては、営業・マーケティングを追加して、中小企業への浸透を促進させようとしている
  • Facebookの株価は一時的な要因(課徴金、和解金)を除けば、PERは23.6とGAFA + Microsoftの中では割安
  • AR/VRやデジタル通貨のLibraにも注力しており、どちらも将来に成長ビジネスとなる可能性はあるが、現在のFacebookのサイズからすると無視できる程度
  • プライバシー周りの環境変化による広告単価への影響、アメリカ大統領選、が2つのリスク

ソーシャルメディア市場

毎月のアクティブユーザーの数のランキングをみると、Facebookが24億人でトップ。2位はYouTube、5位はWeChatですが、3位にWhatsApp、4位にFacebook Messenger、6位にInstagram、とトップ10にFacebook Familyだけで4サービスも入っています。

出典: Statista Most popular social networks worldwide as of Oct 2019

トップ10のうち、WeChat、QQ、QZone、Douyin/Tik Tok、Sina Weiboは大半が中国のユーザーです。中国ではFacebookが許可されていません。

全世界のスマートフォンユーザー数は、2020年時点で、Statistaによれば35億人です(Statistta)。このうち、同サイトによれば、中国のユーザーは6.9億人と推定されています。

つまり、実質的には中国以外のスマートフォンユーザー28億人のうち、24億人が利用しているサービスということは、Facebookが活動をできている全世界においては、Facebookのサービスがソーシャルメディア市場をほぼ独占していることがわかります。

[st-mybox title=”ポイント” fontawesome=”fa-check-circle” color=”#757575″ bordercolor=”#BDBDBD” bgcolor=”#ffffff” borderwidth=”2″ borderradius=”5″ titleweight=”bold” fontsize=”” myclass=”st-mybox-class” margin=”25px 0 25px 0″]Facebookは中国を除く世界のソーシャルメディア(SNS、メッセージサービス)をほぼ独占している [/st-mybox]

24億人もユーザーがいたら成長余地がなさそうに聞こえますが、実はFacebookのユーザーは増え続けています。2018年末から2019年末にかけて、Facebookのユーザーは23.2億人から25億人まで増加しました。これは7.7%のユーザーの増加にあたります。

地域別に見てみるとアメリカのユーザーの増加はほぼ止まっていますが、アジアとその他地域での伸びが大きいです。これは、Facebookがインターネットユーザーのほぼ必須アプリとなっていることから、新興国でインターネットのユーザーが増えるたびにユーザーが増えていると推察できます。

ソーシャルメディアの世界では、「ネットワーク効果」という言葉があります。これは、ユーザーが増えれば増えるほど、自分も、他のユーザーにとってもそのサービスを使う便益が上がる、という効果です。

誰も使っていないソーシャルメディアを使っていても、誰とも繋がれなく、そのサービスを使うメリットがあまりないですよね。一方、Facebookはほとんどのユーザーがアカウントを持っているために、世界のどこでも人と繋がれ、連絡ができます。ユーザーが多い分、サービスを使うことに得られる便益が大きくなっています。

GoogleがFacebook対抗で始めたGoogle+が過去にいまいち広がりきらなかったのも、SnapchatがInstagramに機能をまねされて伸び悩んだのも、Facebook/Instagramのこの強いネットワーク効果を超えるだけのユニークな価値を提供できなかったためです。Facebook/Instagramはすでに全世界の人が使うインフラになっており、強力なネットワーク効果を持つため、この役割を代替するサービスは当面出てこれないでしょう。

ただし、注意が必要なのは、どのユーザーの価値も等しい訳ではないという点です。Facebookの主な収益源はビジネスによる広告出向であり、どの国のユーザーをターゲットにするかによって、当然広告出向の金額は異なります。

具体的には北米のユーザー一人当たりの価値が$41.4なのに対して、アジア圏のユーザーの価値は$3.57と1/10程度です。

つまり、アジア圏のユーザーが新しく100万人増えても、北米のユーザーが10万人減れば、現在のユーザーあたり単価が変わらなければ、収益としてはマイナスになります。

そのため、Facebookは一人あたりの価値が高い北米・欧州のユーザーを引き止めながら、全体的にユーザー一人あたりから得られる収益を増やそうとしています。

実際に、世界平均のユーザー単価は第4四半期で前年比15.6%で伸びています。Facebookの売上は2019年で26.6%伸びていますが、実はユーザー一人当たりの売上の伸びの方が、ユーザー数の伸びよりも寄与しています。

2019 2018 YoY Growth
Revenue (m$) $ 70,697 $ 55,838 26.6%

Facebookの打ち手

Facebookが今後数年をかけて行おうとしているのは、以下の3点です

  1. スーパーアプリ化(ソーシャルメディアに決済、eコマースの機能をつける)
  2. AR/VRビジネスの立ち上げ
  3. 既存ビジネスの攻めと守り

スーパーアプリ化

Facebookが目指しているのは、中国のWeChatのように、一つのアプリでソーシャルメディア、個人間決済、eコマース、の全てが完結するような、「スーパーアプリ」です(日本ではLINEが同じ路線を目指しています)。

そのための施策として、FacebookはFacebook Marketplaceという個人間で売買ができるサービスを提供し始め、現在はそのサービスの拡大に注力しています(日本では、メルカリやラクマが似たサービスです)。

また、Instagramでも”Instagram Shopping”のサービスを開始してeコマース機能を強化すると共に、Checkoutという決済システムも提供しています。

出典: Instagram Business Blog

WhatsupにもWhatsup Paymentという個人間決済サービスを導入しようとしており、インドで現在ユーザーテストを行なっています。

加えて、FacebookはLibraという新しいデジタル通貨の導入も主導しようとしております(こちらは中央銀行の大反発を受けているため、進捗はかなり遅くなりそうですが)。

なぜFacebookはeコマース、決済機能に注力するのでしょうか? それは、ユーザーを囲い込み、ユーザー一人当たりから得られる収益を増加させるためです。

Facebook/Instagramはすでに中国を除く全世界のインターネットユーザーの大半が参加しているプラットフォームであり、このプラットフォーム上でお金のやりとりができるようになれば、個人がサービスを使う頻度も上がると同時に、今までFacebookを使っていなかった人も使わざるを得なくなります(割り勘の時とか、お金を送金するときなどに他の友人が皆使っていたら、自分も入れざるを得ないですよね)。

加えて、決済を握っていると、お金の流れからユーザーの趣味趣向をより読み取れるようになり、広告を出す精度をあげることができ、それはすなわち広告単価の向上に繋がります。また、広告を出向するビジネス側にとっても、広告出向から販売までをFacebookのプラットフォームでできれば、ユーザーを自社サイトに誘導して販売して、という手間を省くことができ、特に中小企業にとっては望ましいサービスになります。

Facebookはすでにソーシャルメディアで独占的な地位を築いており、その優位性を活かして、決済・eコマースの世界で勝負しようとしている、というのは他の企業のビジネスにも影響するため、決済(Visa, Mastercard)やeコマース(Amazon、eBayなど)の企業の株式を保有している人はFacebookの動きを注視したほうが良さそうです。

AR/VRビジネスの立ち上げ

Facebookは2014年にOculusというVR (Virtual Reality)のデバイスとソフトウェアの会社を買収し、現在はOculus Questというサービスを運営しています。AR/VRの現在の市場はゲーム用途が主であり、SONYがPlaystationのプラットフォームを活かし、マーケットシェアトップです。Oculusは現在、SONYに次ぐ世界シェア第二位だと推定されています。

出典:Statista Estimated VR device shipment share by vendor worldwide in 2018 and 2019

VR/ARはマーク・ザッカーバーグが次世代のコミュニケーションの基盤になり得る、と信じて投資をしている分野です。現在の売上は、Facebook全体の売上の1.5程度の約$1b (1000億円)程度で投資の観点からは無視できる程度ですが、今後VR/AR市場が急拡大した時に、恩恵を受けられるかもしれません。

既存の広告ビジネスの攻めと守り

Facebookは営業・マーケティング、フェイクニュースなどへの対策の人員を急速に増やし、従業員は過去1年で26%増え、約45,000人となりました。

「攻め」は、営業・マーケティングの部分です。Googleもそうですが、広告は大企業への浸透が一巡すると、今度は中小企業を開拓する必要がありますが、ここは大企業よりもテクノロジーへの感度が高くないことが多く、人手を使って電話で営業やカスタマーサポートをする必要が出てくるため、手間がかかります。

営業・マーケティングを大量に増やしているということは、それだけ中小企業を対象にしたFacebook広告の売上拡大を目指しているか、もしくは新しいマーケットプレイスやInstagram Shoppingを広げようとしていると推察されます。

また、「守り」の部分では、2020年は選挙の年であることもあり、フェイクニュースへの対応や選挙関連ニュースの扱いで注目を集めないよう、人手を増やして、人の目での確認を増やしていると推察されます。

これらは売上を増やし、政治リスクを下げる効果を持ちますが、長期的に利益率の低下に繋がる可能性があることがやや懸念材料です。利益率は直近の四半期で42%で、前年比で4%下落しています(内3%は$550mの和解金のため、その影響を除けば実際には45%程度ですが)。

FBは2020年の経費は$54-59bnというガイダンスを出していますが、中間値の$56bであった場合、2019年の$46bから21.7%増加となり、売上よりも早く伸びた場合、営業利益率がさらに低下することになります。

Facebookの株価とPER

Facebookの株価は2017年初めの$120から、3年で70%近く上昇しています。EPSは一時要因を除けば$8.55で、1月31日株価の$202の株価からすれば、PERは23.6となり、GAFAの中では割安になります。

2019 Revised 2018 YoY Growth
Revenue (m$) $ 70,697 $ 55,838 26.6%
Operating Income (m$) $ 30,086 $ 24,913 20.8%
Net Profit (m$) $ 24,585 $ 22,121 11.1%
EPS $ 8.55 $ 7.57 13.0%

[st-mybox title=”GAFA + Microsoftの分析はこちら” fontawesome=”fa-check-circle” color=”#757575″ bordercolor=”#BDBDBD” bgcolor=”#ffffff” borderwidth=”2″ borderradius=”5″ titleweight=”bold” fontsize=”” myclass=”st-mybox-class” margin=”25px 0 25px 0″] GAFA+Microsoftの株価はどこまで落ちたら買い時なのか [/st-mybox]

Facebookは自社株買いの$24b(2兆6400億円)のプログラムに、さらに$10b (約1兆1000億円)を追加することを、2019年の第4四半期の発表で行いました。この追加分は、Facebookの時価総額が現在$575b (6兆2000億円)ですので、これは1.7%にあたります。

キャッシュだけで$54bも保有しているので、使わない資金を株主に返還する姿勢は、株主の方を向いた経営をしているという点で、評価できます。

また、フリーキャッシュフローも2019年は$20.6bと前年比で34.5%で成長しています。

2019 2018 Growth
Net cash provided by operating activities $ 36,314 $ 29,274 24.0%
Purchase of property and equipment etc $ (15,102) $ (13,915) 8.5%
Principle payments on financial leases $ (552)
Free cash flow $ 20,660 $ 15,359 34.5%

FBの発行済株式は28.8億株ですので、一株あたりのフリーキャッシュフローは$7.2、現在の株価ですとフリーキャッシュフローの28倍で取引されています。これはアルファベットの35倍と比べると低いです。

Facebookを取り巻くリスク

Facebookの主な収益源はFacebookでの広告ですが、高い広告単価を広告主に請求するためには、質の高い、つまりよりユーザーの趣味趣向を特定し、その人に合った広告を出せる必要があります。そのために必要なのが個人の特定と情報の入手ですが、近年の個人情報保護の動きから、Facebookがターゲットとする元のデータが手に入りにくくなってきています。

プライバシー周りの環境変化

第一に、政府の規制です。ヨーロッパのGDPR (General Data Protection Regulation)、カリフォルニアのCCPA (California Consumer Privacy Act)のどちらも消費者を特定してターゲットにしにくくする規制です。

第二に、モバイルOSのプラットフォーマー、Android (Google)、とiOS (Apple)のどちらもサービス提供者(Facebookなど)に提供するデバイスのデータをより絞るようになっています(例えば位置情報をアプリを見ていないときには取れないようにする、など)。特に位置情報はよりターゲットされた広告を出しやすくするため、この情報が取りにくくなるのは結構痛いです。

第三に、Facebook自体も政治からの圧力を受け、消費者にプライバシー設定をより厳格にコントロールできる権限を与えざるを得なくなっています。より多くの消費者が自分のデータをFacebookに与えないことを選べば、それだけターゲットした広告をうちにくくなります。

これらの要因から、ターゲットした広告をうちにくくなると、成約率が落ちるため、広告主も広告の頻度や単価を引き下げる、という悪影響がでる可能性があります。

一方で、これらの環境の変化は全てのソーシャルメディアにあてはまるので、広告主からすると結果的に選択肢がなく、広告主も多少高い価格でもFacebookに広告を出さざるを得ないかもしれません。

アメリカ大統領選

今年は大統領選挙イヤーですので、仮にGAFAなど巨大テック企業への税金を大幅にあげると息巻いているエリザベス・ウォーレンのような人が大統領になると、株価が大きく調整する恐れがあります。

また、Facebookを選挙で使う議員から、Facebookが公平でない(どちらかの党に寄った姿勢である)という不平・不満が出て、それが議会で取り上げられる場合、言いがかりから課徴金を課される可能性があるため、こちらも注意が必要です。

独占禁止法違反のリスク

加えて、FTC(Federal Trade Commission)とDOJ (Department of Justice)が独占禁止法でGAFAを調査しています。こちらも、結果次第では新たに課徴金を課される可能性があり、最悪の場合は事業の一部売却などを命じられる可能性があります。

まとめ

  • Facebookはソーシャルメディア市場をほぼ独占している
  • ソーシャルメディアサービスはネットワーク効果が働くため、近い将来にFacebookの独占的な地位が奪われるリスクが低い
  • Facebookはいまだに25%の速度で売上が伸びている。新興国を中心に、ユーザー数は約8%で伸びており、全世界的な広告単価も16%で伸びている。広告単価の伸びの方が早い
  • Facebookは広告単価を引き上げるため、スーパーアプリ化を目指して、Facebook、Instagram、Whatsupへ決済とeコマースを取り込むことに注力している。スーパーアプリ化ができるかが今後5年の成長を左右すると同時に、この試みは決済、eコマース、小売にも大きな影響を与える
  • 既存の広告ビジネスについては、営業・マーケティングを追加して、中小企業への浸透を促進させようとしている
  • Facebookの株価は一時的な要因(課徴金、和解金)を除けば、PERは23.6とGAFA + Microsoftの中では割安
  • AR/VRやデジタル通貨のLibraにも注力しており、どちらも将来に成長ビジネスとなる可能性はあるが、現在のFacebookのサイズからすると無視できる程度
  • プライバシー周りの環境変化による広告単価への影響、アメリカ大統領選、独占禁止法違反、が3つのリスク

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GAFA+Microsoftの株価はどこまで落ちたら買い時なのか

GAFA(Google, Apple, Facebook, Amazon)とMicrosoftはそれぞれ独占的なプラットフォームを持ち、継続的に世界中でビジネスを成長していることから、株価は上昇を続けています。

今回のコロナウイルス騒動を発端とする株価の調整で、買い時を探っているかたもいらっしゃるのではないでしょうか。今回は、今の株価水準は割安なのか、割高なのか、割高であれば、どこまで落ちたら買い時か、を分析してみます。

Google (GOOGL)

Googleは検索、YouTube、携帯電話のOSで独占的なプラットフォームを築いています。

ビジネスの基盤としては盤石で、インターネットのユーザーが増えれば増えるほど売上が増えるような企業です。

Googleの株価は2016年1月の$760から、4年で2倍近くの$1,430まで上昇しました。2019年の株価は一進一退を繰り返しましたが、これはやや期待外れの決算が続き、PER(一株あたり利益。緑の線)が30倍から22倍まで落ちたためです。

2019年の第3四半期の決算も格別に良いわけではなかったのですが、全体の相場に押し上げられるように下期からPERは上昇を続け、現在は29まで上がってきています。

ZACKS – Google (PERを調べられる外部サイトです)

 Nasdaq – Google Class A Stock(EPSを見れる外部サイトです)

2019 2018 YoY Growth
Revenue (m$) $ 115,782 $ 97,543 18.7%
Operating Income (m$) $ 24,965 $ 19,303 29.3%
Net Profit (m$) $ 23,672 $ 21,788 8.6%
EPS $33.83 $30.95 9.3%

Googleのビジネス自体は売上は前年比18.7%、税引き前利益は29.3%、税引き後利益は8.6%、EPSは9.3%と順調に成長しています (Googleはまだ第4四半期を発表していないため、9月末までの2019年と2018年の比較です)

ビジネスも順調に伸びていますが、9月以降はPERの上昇、つまりGoogleが成長を続けるだろうという期待が膨らんでいることが、直近の株価の上昇に繋がっています。

しかし、直近でコストの伸びが売上成長よりも早い点、PERは29と2018年末に急落した時に近いところまで上がってきている点に注意が必要です。

現状のPERがすでに将来に渡り高い成長率を保つことを織り込んでいるため、仮に四半期の成長率が鈍った場合、急落の恐れがあります。例えば、PERが2018年末のように22倍まで落ちた場合、約30%株価が下落する可能性があります。

Apple(AAPL)

AppleはおなじみのiPhone、iPad、Mac、Apple Watchを設計・販売し、そしてiTunesやApple Storeなどのプラットフォームを運営している会社です。

Appleの株価もGoogleと同様に、2018年末に一度調整が入りましたが、2019年は急激に株価が伸び、現在は$309まで上昇しています。

自社株買いの効果もありますが、この伸びもGoogleと同じく、主に成長期待によるPERの上昇のためです。PERは2018年末に12.5をつけ、2019は急上昇しました。

2020年に入っても上昇を続け、1月末に発表された2019年の第四半期に前年比9%の利益の成長をみせたことにより、現在は26まで上昇しています。

2018 2019 YoY Growth
Revenue (m$) $ 265,595 $ 260,174 -2.04%
Operating Income (m$) $ 70,898 $ 63,930 -9.83%
Net Profit (m$) $ 59,531 $ 55,256 -7.18%
EPS $11.91 $11.89 -0.17%

成長期待の高いAppleですが、実は2019年の数字を見る限り、売上、営業利益共に減少しており、一株あたり利益も減少しています。

もちろん、第四半期の良い流れを引き継いで高い成長率を保てれば株価は維持されるのかもしれませんが、次の四半期で利益成長が少しでも鈍れば、成長への期待が萎み、株価の急落に繋がります。

Appleは2019年の実績に対して、株価に将来の成長期待をやや織り込みすぎている印象です。成長期待がしぼんでPERが2017-2018平均の18倍程度まで落ちた場合、Googleと同じく、現在の株価から30%落ちます。

Appleの価格が落ちると時価総額が大きい分、ダウにもS&P500全体にも波及して、アップル売りが相場全体への売りを招く事態になりかねないので、注意が必要です。

Facebook(FB)

FacebookはFacebook、Instagram、Facebook Messanger、Whatsupを傘下に持ち、月間ユーザー数25億人とSNS市場で独占的な地位を築いています。

一方、個人を特定し、個人の趣味趣向のデータを元に広告を配信していることから、プライバシーの観点から政治的にも圧力を受けやすい企業です。

Facebookも高い成長期待を受けて、2019年は株価が大きく上昇し、現在では$201.9をつけています。2019年のEPS成長がマイナスだったこともあり、直近で株価が大きく落ちた後もPERは32と高い水準です。

実績を見てみると、売上は26.6%と前年比で大きく伸びているのですが、それ以上にコストの伸びが早いです。また、2018年のCambridge Analyticaのがらみのスキャンダルで$5,000mのFTCへの課徴金と$1,100mのAltera Corpに関連する追徴課税のため、利益は前年比でマイナス成長となっています。

2019 2018 YoY Growth
Revenue (m$) $ 70,697 $ 55,838 26.6%
Operating Income (m$) $ 23,986 $ 24,913 -3.7%
Net Profit (m$) $ 18,485 $ 22,121 -16.4%
EPS $ 6.43 $ 7.57 -15.1%

これらの一時的な要因を除けば、下記のようになります。実際のビジネスは決算の数字ほど悪くはありません。

2019 Revised 2018 YoY Growth
Revenue (m$) $ 70,697 $ 55,838 26.6%
Operating Income (m$) $ 30,086 $ 24,913 20.8%
Net Profit (m$) $ 24,585 $ 22,121 11.1%
EPS $ 8.55 $ 7.57 13.0%

ただし、フェイクニュースへの対策の観点から人員増を強いられており、従業員も前年比26%増え、人件費が増加したことでコストが増加しているのはやや懸念材料です。

直近の第4四半期では売上は25%成長していますが、コストの伸びは34%と売上よりも早く伸びました。営業利益率は前年同期比の46%から42%へ減少しています。

一時要因を除いたPERでは23.6と、GAFAMの中では最も割安となります。

ただし、仮にPERが2018年末レベルの18程度まで切り下がった場合は、20%以上の下落となります。2019年でも課徴金や追徴課税で利益が押し下げられましたし、選挙イヤーの今年はFacebookへの規制強化などの政治リスクが顕在化しやすいので注意が必要です。

Amazon(AMZN)

AmazonはAmazonのマーケットビジネス、クラウドビジネス、Prime会員ビジネス、の3つが柱の会社です。どのビジネスも順調に伸びていますし、Amazonは将来的に物流企業としてサービスを展開する可能性もあります。

Amazonの株価は2018年に$1,000から急上昇したのちに一進一退を繰り返し、現在は好調な2019年第四半期の決算を受け、$2,000まで上昇しています。現在のPERは89と、他のGAFAと比べてもかなり高い水準です。

2019 2018 YoY Growth
Revenue (m$) $ 280,522 $ 232,887 20.5%
Operating Income (m$) $ 14,541 $ 12,421 17.1%
Net Profit (m$) $ 11,588 $ 10,073 15.0%
EPS $ 23.01 $ 20.14 14.3%

Amazonは物流や研究開発費など投資を先行させ、短期的な利益にこだわらない企業のため、EPSを用いて評価するのはあまり適切ではないかもしれません。

この企業が割高か割安かは、「いつ利益を出しに行くのか」という将来の経営に依存するため、かなり評価が難しいです。

現在の純利益率4%程度というのは投資を優先させているためであり、例えばプライム会員の会員費をあげたり、マーケットプレイスの手数料を上げたりすれば、潜在的には10%程度の純利益は出そうと思えば出せる状態にあるでしょう(その分、Walmartなどとの競争に負けるリスクは高まりますが)。

2.5倍の利益を出せる潜在能力があると考えると、EPSは35程度となり、利益の成長と今後の成長余地を考慮すればまだ理解できる水準になります。

Facebookと同じく、創業者が舵をとっている会社の一つです。ジェフ・ベゾスのリーダーシップを信じるならば、いつ買っても良いのかもしれません。

Microsoft(MSFT)

Windowsという独占的なプラットフォームを持ち、B2C、B2B、クラウドビジネスとバランス良いビジネスの構成を持ちながら、その全てを順調に成長させているMicrosoftは高いPERの期待に応えているといっても過言ではないのかもしれません。

Microsoftは綺麗な右肩上がりで成長しています。株価は2016年の$40から現在は$170と4倍以上になっています。現在のPERは34と、利益を重視していないAmazonを除けばGAFAMの中で最も成長が期待されている株と言っても良いかもしれません。

2019 2018 YoY Growth
Revenue (m$) $ 125,843 $ 110,360 14.0%
Operating Income (m$) $ 42,959 $ 35,058 22.5%
Net Profit (m$) $ 39,240 $ 16,571 136.8%
EPS $ 5.06 $ 2.13 137.6%

純利益は2018年に一時要因があるために単純比較はできませんが、それでも2019年の前年度比22.5%の営業利益の増加は驚くべき成長です。

GAFA+MSFTの株価、PER、成長率

S&P500の過去のPERの平均は16程度で、直近では18.7です。 GAFAMはその成長期待から、S&P500の平均よりもPERが高く、下記の表のようになります(FBは一時的な要因を除いた数字を記載)

GOOGL AAPL FB AMZN MSFT
株価 (2020/1/31, $) 1,433 310 202 2,009 170
過去12ヶ月 1株あたり利益 ($) 46.6 $11.89 $ 6.43/$8.55 $ 23.01 $ 5.06
PER 30.7 26.0 31.4/23.6 87.3 33.6
2019売上成長率 18.7% -2.04% 26.6% 20.5% 14.0%
2019営業利益成長率 29.3% -9.83% -3.7%/11.1% 17.1% 22.5%
2019 EPS成長率 9.3% -0.17% -15.1%/13% 14.3% 137.6%

GAFAMの2018年からの株価の上昇の大部分は実際の一株あたりの利益の上昇ではなく、PERの上昇、つまり将来への成長期待によってもたらされたものです。

特にAppleは営業利益成長率がやや伸び悩んでいるにも関わらずPERが高くなっているため、決算内容によっては失望売りを呼びやすい状態にあります。

また、Amazonも直近の決算は良かったですが、PERはかなり高く、成長期待と将来の利益成長がかなり織り込まれている株価になっています。

GAFAMはビジネスの基盤がしっかりしており、かつ注目度が高い分、現在はお金がこれらの銘柄に集まっており、PERはどれも高めです。

長期的に見ればGAFAMのどの株も調整を繰り返しながらも伸びていく可能性が高いですが、PERが高止まりしていることを考慮すると、銘柄によっては30%程度の調整が入る可能性も考慮した方が良いかもしれません。

また、GAFAMの中では2019年の実績を見る限り、GoogleとMicrosoftが高い一株あたり利益の成長を続けており、かつPERも30前半のため、下落体制がまだある、とも見れるかもしれません。

購入するタイミングによって利回りが変わってくるため、現在の株価水準が決算と照らし合わせて納得できる水準か、GAFAMの他の銘柄と比較して割高感がないか、をチェックすると、高値づかみを避けられるかと思います。

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赤字のボーイングは投資対象として魅力的か: 決算・株価の分析

主力小型機の737 MAXが2度の墜落事故を起こし、737 MAXの生産中止に追い込まれてから株価が$400越えから$320程度まで下落し、低迷しているボーイング。この株価の下落は投資をする良い機会でしょうか? 

今回はボーイングの決算と製品の観点から、分析してみたいと思います。

前の記事の航空機業界分析はこちら:

ボーイングは投資対象として魅力的か(1): 航空機業界の分析

2019年度決算

今週発表されたボーイングの決算。一言でいうと、ボロボロです。22年ぶりの通期赤字。特に直近の四半期の売上は37%減と、主力の737MAXの生産が止まった影響がもろに出ています。

通期の売上は768億ドル (約8兆4000億円)で、利益は20億ドル(2200億円)の赤字です。

赤字ですと気になるのはキャッシュが回っているかですが、案の定キャッシュも出て行っています。通期で43億ドル (4700億円)のキャッシュが流出しました。

キャッシュを捻出するため、借り入れ額が26億ドル増加し、現金・現金相当の証券も9億ドル減少しています。つまり、財務的には悪化しているということです。

民間航空機部門

民間航空機部門は2019年通期で67億ドルの赤字。直近の四半期だけでも28億ドルの赤字です。

全ての元凶は、売上高の半分以上を占める民間航空機部門の、その中でも半分以上の売上を占める小型機のボーイング737MAXが2度の墜落事故の後にFAA(米国の認証機関)からの許可が出るまで生産中止となり、FAAからの認証を得るのに時間がかかっているためです。

2018年には580機販売した737が2019年には127機まで減少しています。そのため、通年で納入した機体の数も806から380まで減少しています。863機を納入したエアバスからは大きく離されている状況です。

In addition, the suspension of 737 MAX production and a gradual resumption of production at low production rates will result in approximately $4 billion of abnormal production costs that will be expensed as incurred, primarily in 2020.

Boeing Reports Fourth-Quarter Results

加えてさらっと注意書きに書いていますが、「生産を始められたとしても生産開始のコストとして40億ドルかかるよ」、と書いています。つまり、仮に今年中に737MAXの生産が開始できたとしても、その分だけ2020年の利益は押し下げられます。

受注残は5,400機、3770億ドル相当(41兆円)ありますが、生産遅れが長引けば長引くほど航空会社に支払わなければならない金額が増え、かつ生産開始コストが上がるため、737MAXの認証が取れるまでは安心ができません。

防衛・宇宙・安全保障

防衛・宇宙・安全保障部門の売上、利益共に第4四半期は大きく減少しました。通年では前年度同程度の売上を確保し、利益は26億ドル稼いでいます。民間航空機部門が不調な中、現在の稼ぎ頭です。

ただし、軍事・宇宙・安全保障事業は政府からの受注の割合が大きいため、政府の入札案件が取れるかどうかによって業績のブレが大きいです。

アメリカの財政赤字はかなり拡大しており、民主党が政権をとった場合には軍事支出を削って医療などに財源を回す可能性が高いため、政治リスクに注意が必要です。

サービス部門

サービス部門の売上も民間機の納入数が落ちた影響で下がっています。2019年通期では売上、利益が8%、6%成長しています。ボーイングはサービスを伸ばすことに注力しており、今後利益の稼ぎ頭に今後なっていく可能性はあります。

2020年以降のボーイング製品の見通し

2019年はボーイング多難の年でした。

2020年以降には、絶好調であった2018年の水準に戻ると仮定します。2018年の納入数と受注数は下記のようになります。

ボーイング (18年、機)      
機種 座席数 納入 受注
747 410 6 18
777 317-425 48 51
787 242-330 145 109
767 192-297 27 40
737 126-230 580 675
合計   806 893

ご覧のように、小型機である737の受注数・納入数が最も多く、半分以上を占めます。次の主力が中型機の787。大型機の747、777と中型機の767の受注・納入数はさほど多くありません。

一方、ライバルであるエアバスを見てみますと、こちらも小型機のA320、A220シリーズが最も売れ筋です。次に大型のA350が続きます。

エアバスは超大型機のA380を導入しましたが、ここまで大型の機体を導入して採算を取ろうとする航空会社が限られ、A380は受注に苦戦しています。

エアバス(18年、機)      
機種 座席数 納入 受注
A380 575-853 12 4
A350 325-440 93 40
A330 257-440 49 27
A320 140-244 626 541
A220 116-160 20 135
合計   800 747

つまり、ボーイングにとっては自社の売上台数の半分以上を占め、かつA320対抗である737MAXの生産開始が最も重要で、次に787の受注数を増やすことが重要になります。

また、777の市場である大型機市場がA350に食われているため、A350対抗の後継機が必要となります。

ボーイングの受注残は5,400機 で3770億ドル(41兆円)分。一方エアバスは受注残が7,482機とどんどん離されています。

航空機は一度パイロットがその機体に慣れると、同じメーカーの後継機を購入した方が保守運用やトレーニング費用が抑えられるというメリットがあるため、納入数が多いと買い替えタイミングの際にそのメーカーが有利になります。

つまり今はエアバスからすると格好の攻め時であり、特にA320の生産台数を一気に増やしています。

737 MAX(小型機)

ボーイングの未来は737MAXにかかっている、と言っても過言ではありません。

経営陣は737MAXの認証取得を2020年中頃までと言っていますが、問題が次々と出てきている737MAXですし、加えてパイロットのトレーニングの必要が新たに生じたため、実際に737MAXが納入されて飛ぶのは2020年の中頃以降になる見込みです。

また、納入が遅れれば遅れるほど、航空会社への遅れの損失の対価として値引きを強いられ、利益率が悪化します。

2019年の第四半期には26億ドルの引当金を航空会社への補償として当てましたが、予定よりも認証取得が遅れれば遅れるほど、この額は膨らんでいきます。

787(中型機)

737の生産が止まった現在の主力は中型機の787です。エアバスA330が競合。2019年も380機中の40%以上にあたる158機は787です。価格は$110m-$115m (約120億円-130億円)

しかし、受注が思うように伸びていません。ボーイングは2020年後半から現在の14機/月から12機/月に生産を減らし、2021年には10機/月まで減らす予定です。

年間に直すと、月あたり4機、年48機の納入が減れば、年5,000億円の売上減のインパクトになります。

ボーイングは会計上、かかった研究開発費用を生産予定数で割っているので、生産予定数が減ることは1機体あたりのコストが上がることを意味し、利益率の低下に繋がります。

787はまだ開発コストを回収できていないため、減産しなければならない状況はボーイングにとってかなり予想外だったのではないかと思います。

777X (大型機)

ボーイングの新型の大型機 (384-426)で、777の後継機、エアバスの A350への対抗機になります。

ボーイングの737MAX関連でFAAがボーイングに向ける視線が厳しくなったこと、GEのエンジンのトラブルがあり開発が遅れ、2021年に納入予定です。

特徴はカーボンを用いた翼で、軽量化により競合に比べて10%燃料効率が良いこと。

2020年1月時点での受注残は8航空会社から340機 (ANA, BA, Cathay, Emirates, Etihad, Lufthansa, Qatar, Singapore Airlines)です。受注で言えば年120機体生産前提で、すでに3年分くらいはあります。こちらは、エアバスのA350からシェアをどれだけ奪えるかが勝負になります。

NMA (New Midsize Airplane)

新型の中型機 (220-270人乗り)のプロジェクトが計画されていましたが、737 MAXの問題で社内はそれどころではない、ということで新社長はプロジェクトの先送りを計画しているようです (Reuterより)

しかし、この中型機はエアバスの最大ヒット機体であるA320 neoシリーズ対抗であるため、この機体の開発を遅らせることは、エアバスにさらに小型機市場で地盤固めを許す期間が長くなります。

ボーイングの製品まとめ

  • 主力の737 MAXがいつ生産開始できるかでボーイングの運命が決まる。しかし、仮に生産が開始されても、納入が遅れたことによる航空会社への補償金、生産見込み台数が減少したことによる1台あたりの利益率の減少、があるために利益率が回復するのに時間がかかる見込み
  • 787の減産は5,000億円近くの売上減リスク
  • 777Xには期待が持てるが、737MAXの穴を埋められる存在ではない
  • NMAの開発を遅らせることは、エアバスが有利な期間を長くするために、長期的に見るとマイナス

ボーイング株価

Boeing Stock Price (3月17日)

ボーイングの株価は急落しています。いくつかの要因があります。

最も大きいのはボーイングが潰れるのではないかという不安です。ボーイングが金融機関から$13.8b (1500億円)の融資の枠を全て引き出した上、政府に$60b (約6600億円)の支援を求めたことです(ローン保証など)。

ボーイングはもともと自社株買いでの株主還元に力を注いでおり、余剰の資本を持たない状態で企業運営をしていました(資本がマイナスです)。また、737MAXが販売できていない状態では、常にキャッシュに悩まされる状態にありました。

Boeing Balance Sheet 2019Q4

加えて、ボーイングの資産の大部分は737MAXのいわゆる「在庫」です。認証が得られないと販売できないため、この在庫はキャッシュになりません。

また、保有しているキャッシュも2019年末で$9.5bと短期でサプライヤーなどに返却しなければならない資金よりも少ない状態でした。

Boeing asset 2019Q4

737MAXについては、問題が次々と見つかり、認証が夏頃に出るかどうかが不透明になっています。さらなる認証の遅れはさらなるキャッシュの流出に繋がり、追加の支援が必要な状態にありました。

このキャッシュが継続的に流出していること、余剰のキャッシュがほとんどないこと、737MAXを発売して在庫をキャッシュにかえることできる時期が不透明なこと、を問題視したS&PがボーイングのクレジットレーティングをBBB(投機的水準の一歩手前です)まで落としました。

このダウングレードとボーイングが政府支援を求めていることが、投資家がボーイングは倒産するのではないかという恐怖を呼び、株価の大幅な下落に繋がりました。

また、仮につなぎ融資でしのげて、認証が出ても、現在はCovid-19(コロナウイルス)対策のために顧客である航空会社は多くの路線の運行を減便または停止して、政府支援がなければ破綻寸前の状態にあります。

今後の旅行業界の行方によってはキャンセルが相次ぐ可能性があることもネガティブな要素です。

航空機業界はエアバスとボーイングの2強のため、ボーイングが737MAXの生産を始めることができれば、在庫となっている機体を一気に納入することができ、キャッシュの問題が解決し、大きな売上と利益を計上できる可能性があります。

しかしながら、たとえ737MAXの生産を開始することができたとしても、一度生産を止めてしまったラインを稼働するコスト、補償金のための値引き、のために利益率が悪化していることと、生産台数を増やすまでに時間がかかり、中期的な利益率の押し下げに繋がります。

また、現在積み重ねている借金は将来の利払いを増加させ、将来の利益を押し下げます。

ボーイングが2018年の利益水準を回復するまでの道のりはやや長そうです。

ボーイングは倒産するの?

米国政府がボーイングを倒産・解散させる可能性は非常に低いです。

ボーイングは米国で最大の輸出企業の一つですし、10万人以上を雇用している大企業です。また、軍事技術を持つ企業であり、安全保障にも関わります。加えて、ボーイングを最大顧客とする航空機の部品メーカーは多く、波及効果も甚大なものとなります。

産業、雇用、安全保障の点で、ボーイングを解散させることは明確に国益に反するため、ボーイングが解散される可能性はかなり低いでしょう。

ただし、政府による救済がされる際、株主や債権者が完全に保証されるかは不透明です。政府による支援で繋げて再建できれば良いですが、737MAXの問題が長引いてその道が不可能となり、チャプター11による再建の道が選ばれた場合には、株式価値が大幅に減少することは避けられないでしょう。

ボーイングまとめ

  • 2019年の決算は主力製品の737MAXが規制当局の認証を得られず、納入できなかったことにより、ボロボロ。
  • ボーイングは民間、軍事、サービスの3部門であるが、民間の737MAX納入ができないと赤字解消はできない
  • 737MAXの認証が取れたとしても、パイロットのトレーニング期間が発生する上に、生産開始のコストがかかるため、認証が取れた年の利益率への悪影響は避けられない
  • 小型機737MAXに次ぐ中型機主力の787の受注が鈍く、生産台数を月14台から10台まで減らしていく予定。年48機の納入減は2021年に5,000億円近い売上へのインパクトになる
  • 大型機777Xは777の後継かつエアバスA350への対抗で、こちらの立ち上がりによっては大型機の市場をエアバスから奪える可能性がある
  • エアバスはボーイングより40%多い受注残を抱えており、生産拡大中。航空機は生産台数を急に増やすのが難しいので、エアバスに対して今後数年間不利になる未来はすでに決まっている
  • ボーイングのビジネスは737MAX次第であると同時に、生産開始コストと鈍い787の受注のため、利益率が2018水準になるまでも数年かかる
  • 変動の激しい軍事部門の売上は米国選挙にも影響を受け、リスクがある(民主党になれば軍事費削減される可能性高い)
  • 737MAXの認証、軍事部門、と政府・規制当局にビジネスが依存しているため、リスクが高い状態にある
  • ボーイングは資本が薄く、737MAXなしではキャッシュが不足しやすい状況にあった。そこにCOVID-19をきっかけとする業界への不安が重なり、倒産するのではないかという疑心暗鬼を生んだ。それが株価の急落に繋がった。

エアバスを含めた航空機業界をより詳しく知りたい方は下記をご覧ください。

ボーイングは投資対象として魅力的か(1): 航空機業界の分析

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米国株分析記事の一覧

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オーストラリア株式・株価分析: Webjet(旅行テック)

今回はオーストラリア・ニュージーランドのNo.1旅行テック企業であるWebjetを題材に、オンライン旅行市場を分析してみます。大手に対して中小企業がどう戦うか、についても学べる例です。

この記事を読むとわかること

  • Webjetはオーストラリア・ニュージーランドでNo.1の旅行テック企業で、B2CとB2Bの旅行ビジネスを持つ
  • OTA (Online Travel Agency – オンライン旅行代理店)市場は伸びているが、競争激化により、大手 (Expedia、Priceline)ですら苦しい戦いになっている
  • WebjetのB2Cはオーストラリア・ニュージーランドに集中してブランド価値向上に力を注ぐことで、マーケティング費用を抑えて、売上・利益共に成長させている。ニッチ戦略。
  • WebjetのB2Bは買収を通じて参入し、急速に成長させた。B2Bは市場規模が小さく、競合は多いが規模が大きい企業が少ないため、Webjetも戦ってシェアを伸ばせる余地が十分にある。ニッチ戦略。
  • Webjetのように、巨人が殴りあう競争環境にいる企業でも、ニッチな市場(地域など)を見つけて戦うことで、勝機を見いだせる
  • Webjetは規模が手頃であり、株価も割安な水準にあることに加え、ニッチで優位性を持つため、大手の買収対象となる可能性がある。買収対象となった場合、既存の株主に短期的な利益がもたらされる可能性がある

ビジネス概況

Webjetは旅行テック会社で、主要な事業はB2CのOTA (Online Travel Agency – オンライン旅行代理店)とB2Bのプラットフォームビジネスの2つです。

特にB2Bの方は買収を積極的に行い事業を伸ばしており、EBITDA(税、利子、減価償却前利益)ベースではB2Bが現在では主力となっています。

綺麗な右肩上がりですね。ビジネスについて、順に説明していきます。

OTA (online Travel Agency)ビジネス

OTA (Online Travel Agency)はオンラインで航空券、ホテル、レンタカーなどの予約ができるオンライン旅行代理店サービスです。

日本だと楽天トラベル、じゃらん、一休.com、るるぶトラベル、などがこの業態にあたります。

WebjetはWebjetとOnline Republicという2つのブランドを持っています。

OTA (Online Travel Agency)市場

世界の旅行市場はGDP以上の速度で伸びていることに加え、店舗からオンラインでの予約への流れも進んでいるので、OTAビジネスは成長市場です。

一方、OTAは寡占化が進んでおり、Expediaグループ (Expedia, Trivagoなど)とBookingホールディングス (Priceline、Booking.com, Agoda, Kayakなど)が英語圏・欧州圏では世界の二強になっています。

日本では楽天トラベル、じゃらんといった地場のOTAが、中国ではC-tripなどの地場のOTAが高いシェアを持っているためにExpediaグループとBookingホールディングスの存在感は薄いですが、英語圏であるオーストラリアはやはりExpedia, Pricelineグループがオンライン上では強く、競争が激しいです。

それに加えて、Googleもホテル・航空券予約仲介のビジネスに参入したり、口コミで圧倒的な集客力を持つTripAdvisorも予約サービスを展開していたり、有力ホテルチェーンや航空会社は自社の予約サービスを強化したり、Airbnbというホテル以外で宿泊を提供する業者が影響力を増すなど、競争環境はどんどん厳しくなっています。

OTAの集客の大部分は検索エンジン経由(つまりGoogle)のため、オンラインでの競争が激しくなることは、集客コストの高まりに繋がり、利益成長を難しくします。

市場全体が伸びているのに、ExpediaやTripAdvisorといった旅行のテック企業の株価が過去数年低迷しているのも、そのためです。

Expediaの5年間の株価推移
TripAdvisorの5年間の株価推移

おなじみのファイブフォーシーズ分析で整理をすると

  • 競争環境:厳しい (BookingとExpediaという巨大グループの2強で、2社ともポイントなどで囲い込みを行っている。他にも多数のオンライン・店舗型の旅行代理店が存在)
  • 新規参入の脅威:低い(参入障壁は低いけれど、そもそもの競争が激しくて参入したい企業が少ない)
  • 代替品の脅威:高い(ホテル・航空会社による自社サイトでの予約、Googleの航空・ホテル比較への参入)
  • 売り手の交渉力:高い(売り手は複数の選択肢を持っており、特に有力ホテルチェーンは自社サイト、大手2社、トリップアドバイザー、などでほぼ自社の部屋在庫をさばけている。)
  • 買い手の交渉力:中程度(顧客は複数の旅行代理店を比較して予約・購入する)

かなり厳しい市場環境です。業界全体の利益率が高くない理由もわかります。

Webjet

Webjetの祖業でもあり、オーストラリア・ニュージーランドでNo.1のシェアを持つオンライン旅行代理店のビジネスです。航空券、ホテル、レンタカー、クルーズなどを予約・購入できます。

競争環境の厳しさを反映して、Webjetの売上・利益の伸びは数パーセントと、穏やかになっています。

しかし、この厳しい環境下で売上だけでなく利益率もあげているあたり、利益率のマネジメントをかなりしっかりやっている印象です。特にEBITDAのマージンが40%を超えているのはかなり高い。

Webjet – OTAビジネス

比較対象としてExpediaの2019年の第三四半期までを見てみると、Expediaの販売額➗売上高は13%なのに対して、Webjetは10.9%とやや低いです。

これは、Expediaの方が予約あたりに取っているマージンが高い(つまりホテルや航空会社から得ている手数料率が高い)ことを示唆します。

利益率が高いホテルの部屋を抑えられている、あるいは規模が大きい分、同じ部屋でもホテル側からより高いコミッションを引き出せている可能性、があります。

一方、ExpediaのEBITDA比率が約10%なのに対して、WebjetのEBITDAは40%とかなり高いです。

Expediaの損益計算表をみると、Selling and Marketingにほぼ売上の半分以上をつぎ込んでいることがわかります。これは、Expediaは見込み客を得るためにマーケティングに相当な費用をかけていることを意味します。

具体例をあげて説明します。

ホテル側がExpediaに一部屋20,000円の部屋の予約を取る手数料として、15%の3,000円を渡したとします(15%は高いように聞こえますが、中小ホテル相手であれば控え目な数字です)。

Expediaはその3,000円のうち1,500円を検索エンジンやトリップアドバイザーなどへのマーケティング費用として使い、自社サイトに予約しようなユーザーを誘導し、予約を獲得します。

残りの1,500円がExpediaの利益として残る分になります。Expediaのポイント、人件費などのそのほかの費用が支払われます。

一方、Webjetは規模を追わず、自社のブランド力を高めることに集中し、マーケティング費用を抑える戦略を取っています。Webjetのアナウンスメントによれば、予約につながるユーザーの流入の経路は

  • 33%はダイレクト流入(アプリやURLの直接打ち込み)
  • 27%はブランドサーチのGoogle広告経由 (Webjetの名前を検索エンジンに打ち込んでくる流入)
  • 18%はノンブランドサーチのGoogle広告経由 (Flight to Bali、など)
  • 14%はブランドサーチのGoogle検索結果経由
  • 残りの8%がノンブランドサーチのGoogle検索結果経由

Googleに広告費用を払って流入している割合は45% (SEM)ですが、27%のブランドサーチは競合が少なく価格が低めなので、おそらくマーケティング費用はそれなりに抑えられています。

また、ダイレクト流入の割合が高いのもマーケティング費用を下げることに寄与しています。

ノンブランドサーチ経由の流入が少ないのは、ノンブランドサーチのキーワードをあえて捨てている、あるいはブランドサーチだけに特化する方針だと考えられます。グローバルで見れば小さなOTAですので、コンテンツマーケティングに多額の費用をかけてExpediaなどの巨人と殴り合う道を選ばないのは賢い選択です。

また、ノンブランドサーチのキーワードの結果がどうなるかはGoogleの意向に左右されやすいので、SEOの割合が低いというのは、それだけGoogleの検索エンジンのアルゴリズムの変更の影響を受けにくくて良いとも言えます。

最後に、オーストラリアではFlight Centre Travelという店舗型の競合もいますが、オンラインの存在感は強くないため、あまり競合にはなっていない点も、Webjetが広告宣伝費を多くかけなくとも済んでいる要因の一つと考えられます。

 

Flight Centre 2019 Annual Report

Flight CentreのマージンはWebjetの半分以下であり、成長もあまりしていません。PERも14.7と成熟企業の数字です。

Webjetのこの戦う市場を絞って(オーストラリア、ニュージーランド)、ブランド力を高めることで勝負する、というのは規模の小さい企業が取れる一つの賢い戦い方です。

Online Republic

WebjetはOnline Republicという車のレンタルとクルーズに特化したニュージーランドの会社をNZ$85mで2016年に買収しています。こちらは買収以降、売上も利益も減少傾向で、おそらくWebjet内でお荷物扱いかと思います。

WebjetのOTAビジネスまとめ

  • WebjetのOTAビジネスは2019年時点でEBITDA(税、利息、減価償却前利益)ベースで半分を占める
  • OTAは成長市場ではあるが、Expedia、Priceline、Ctripなどの大手による寡占状態になっている上に、Google、Airbnb、ホテル・航空会社の自社サイト、などの代替品の影響力が高まってきており競争が厳しい
  • そんな環境下でWebjetはオーストラリア・ニュージーランドという母国に集中して自社ブランドの価値を高めながら、検索エンジンに頼らない流入経路を拡大しており、売上・利益ともに市場成長以上に伸ばしている
  • WebjetのOTAビジネスは大きくは伸びないが、SEOの割合が低く、ブランド目当てのユーザー割合が75%のため、大崩れはしない印象
  • Webjetがとっている戦略はニッチ戦略で、地域を絞って戦っている

B2Bビジネス (WebBed)

Webjetはホテルと旅行代理店を繋ぐプラットフォームとして、WebBedというビジネスを展開しています。今後の成長の柱です。

WebBedは簡単に言えば、ホテルのアグリゲーター(集めて、まとめて、売る、サービス)です。WebBedは様々なホテルと提携、またはデータを繋ぎ、在庫情報を見て在庫を販売できるようにし、そのプラットフォームを旅行代理店に販売しています。

このビジネスモデルは、トリップアドバイザーなどが過去行ってきたモデルと似ています。複数のオンライントラベルエージェントから価格と在庫情報を集めて、まとめて、ユーザーに提示する。

違いはトリップアドバイザーがB2Cでユーザーを対象にしているのに対し、WebBedsは旅行代理店を対象にしている点です。

どちらも共通しているのは、①自社で在庫を持たないために利益率が高いこと、②そのプラットフォームに繋がっている人が多ければ多いほど、利用者全員にとってのプラットフォームの価値が高くなるという点です(これをネットワーク効果と言います)

具体的な数字を見てみましょう。

良い数字ばかりが並んでいますが、これは買収の影響が大きいです。Webjetは2017年にJacTravelという同業種を、2018年にDOTWをたて続けに買収し、B2Bのプラットフォーム事業に参入しています。

規模では現在では世界第二位です。

この分野ではスペインの非公開会社であるHotelsBedが世界シェア1位で、2019年の売上はEBITDA €234m (280億円)と、WebjetのA$67m(50億円)の6倍近くあります。HotelsBedは契約ホテル数が18万件、旅行代理店が6万、と圧倒的ですが、業界二番手以降は小さいプレイヤーが多く、業界は混沌としています。

このB2B分野が魅力的なのは、ニッチであり、かつ業界内で圧倒的なプレイヤーがいない点です。業界1位のEBITDAが280億円程度というのは、グローバルのOTAからすると参入するには市場が小さすぎて、新規で入ってくる可能性が低いです。また、業界は小さい競合が多く、Webjetくらいの規模でも十分に戦っていけます。

WebjetのようなEBITDAが全社でも120億円程度の会社にとっては、比較的戦いやすい業界ですし、かつシェアを伸ばしていくだけで利益を数十パーセントで伸ばしていけるので、Webjetにとってはぴったりの市場だと言えます。

こちらもまた、規模で劣る場合はニッチな市場で戦う、という戦略の鉄則にしたがっています。

また、「ネットワーク効果」が働く市場ですので、規模を拡大することが持続的な優位性に繋がります。そのため、今後もWebjetは積極的に買収を行い、ホテルや旅行代理店との契約を増やしていくと想像できます。

オーストラリアではCorporate Travel Managementが直接ではないですが、企業向けのビジネスという点で間接的に競合でもあり、パートナーでもあります。こちらはWebBedの3倍以上の規模で、株価は$17程度。PERは21.45です。

Corporate Travel management annual report

財務分析

資産$1.5b(約1,100億円)のうち、60%以上の940mが固定資産と突出して大きいです。2018年のJac Travel、2018年に行なったDOTWの買収により、無形資産資産の割合が増えています。

負債と純資産の側では、2018年に行なったDOTWの買収のため、$100mを借り入れたことから、借入金額が$83m増加しています。純資産が増えているのは利益と$160mの増資のためです。

売上債権の伸びよりも、仕入れ債権の伸びの方が大きいのは良い傾向です。B2Bビジネスはプラットフォームのビジネスで在庫は持たないはずなので、こちらが伸びればより売上比の運転資金の割合が減るはずです。

Webjet キャッシュフロー

2018年、2019年と増資と買収を繰り返して貸借対照表が膨れ上がってきていることもあり、ROEが落ちているのは嫌な点ではありますが、プラットフォームの争いは供給側、需要側両方を増やす速度が鍵となるため、買収という時間をお金で買う手段をとったのは納得できます。

配当

配当は2019年に22セントで前年比10%上昇。株価$12の前提で配当性向は47%で配当率は1.8%です。

米国や日本と異なり、オーストラリアは二重課税を防ぐために、法人税支払い後の配当にはその分、所得税を減らす効果があるクレジットがつきます。そのため、実質的な配当率は1.8% x (100% + 30%) = 2.3%になります。

Webjetアニュアルレポートより

成長企業であればキャッシュを事業の成長にまわして欲しいところではありますが、オーストラリアは税制のおかげもあり、配当への関心が高いので配当を出す企業が多いです。

株価の推移

Webjetの過去1年の株価

Webjetの株価はジェットコースターのように乱高下しています。

2019年2月の好決算で一気に$12から$16まで上がり、そこからジリジリと下げ、昨年の9月のイギリスの旅行代理店大手、Thomas Cookの破綻でWebjetの業績に影響が出るのではないかという不安から、10月に一気に下落しました。

そこから相場全体の上昇を受けて上昇を続けます。12月にはGoldman SachsがWebjet買収の案のプレゼンテーションを作っているという報道が出て、株価は急騰しています。

そのまま上がっていましたが、2月には今回の新型コロナウイルスが旅行業界の需要全体を縮小させるのでは、という不安と、モルガン・スタンレーが「Googleが航空券予約仲介に本格参入することの悪影響からWebjetは大きな影響を受ける」というレポートを出し、一気に$14から$12近くまで下げました。

現在の$12の水準はEPSの$0.47ベースでPER25.3倍と、過去3年は30倍程度ですので、現在は過去から比べると低いPER倍率になっています。

買収の可能性

Webjetは、①オーストラリア・ニュージーランドでシェア1位という地域特化のサービスであること、②B2Bのプラットフォームという成長領域で世界2位のポジションであること、からExpediaやBookingホールディングスにとって、買収すると相乗効果が出やすい会社かと思います。

そもそも、OTA業界は買収とスピンオフが盛んな業界ですし(オーストラリアのOTAであるWotifも2014年にExpediaに買収されています)、Webjetの時価総額$1.63b (1,200億円)なんて、ExpediaやPricelineからしたら楽々支払える額です。30%のプレミアムを乗せても、1,600億円程度です。

そのため、Webjetが買収のターゲットになる可能性も十分あります。その場合は買収プレミアムが乗るため、買収時の価格によっては短期的な利益が見込めます。

まとめ:この記事を読むとわかること

  • Webjetはオーストラリア・ニュージーランドでNo.1の旅行テック企業で、B2CとB2Bの旅行ビジネスを持つ
  • OTA (Online Travel Agency – オンライン旅行代理店)市場は伸びているが、競争激化により、大手 (Expedia、Priceline)ですら苦しい戦いになっている
  • WebjetのB2Cはオーストラリア・ニュージーランドに集中してブランド価値向上に力を注ぐことで、マーケティング費用を抑えて、売上・利益共に成長させている。ニッチ戦略。
  • WebjetのB2Bは買収を通じて参入し、急速に成長させた。B2Bは市場規模が小さく、競合は多いが規模が大きい企業が少ないため、Webjetも戦ってシェアを伸ばせる余地が十分にある。ニッチ戦略。
  • Webjetのように、巨人が殴りあう競争環境にいる企業でも、ニッチな市場(地域など)を見つけて戦うことで、勝機を見いだせる
  • Webjetは規模が手頃であり、株価も割安な水準にあることに加え、ニッチで優位性を持つため、大手の買収対象となる可能性がある。買収対象となった場合、既存の株主に短期的な利益がもたらされる可能性がある

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ボーイング・エアバスは投資対象として魅力的か(1): 航空機業界の分析

主力小型機の737 MAXが2度の墜落事故を起こし、737 MAXの生産中止に追い込まれてから株価が$400越えから$320程度まで下落し、低迷しているボーイング。実はボーイングは市場シェア40%を握る、航空機メーカー2強の1社です。

この株価の下落は投資をする良い機会でしょうか? 航空機業界とボーイングの二本立てで、分析してみたいと思います。

今回の記事でわかること

  • 航空機業界は安定的に成長し、今後20年で毎年1,750機のジェット機の新規販売が見込まれる
  • ジェット機はボーイング・エアバスの2社でシェアほぼ90%。
  • ボーイング・エアバスともに受注残が7年分以上あり、新規受注が数年なくともビジネスを継続できる状況
  • 航空機業界は買い手、新規参入、代替品からの圧力が低く魅力的であるが、2社の競争が激しいために利益率が低くなっている
  • 国策となりやすい産業であり、ボーイング・エアバスともに見える形・見えない形でのサポートを得られていることに加え、緊急時にも政府支援が出る可能性が高い

航空機市場概観

2018年末時点で、世界全体では23,904機のジェット旅客機、3,674機のターボプロップ旅客機、1,966機のジェット貨物機が運航されていました(「JADC市場予測2019-2038」より)。

同予測によれば、2038年末までに、ジェット機で今後新規で35,312機の需要が発生すると考えられています。つまり、毎年1,750機の新規需要になります。ターボプロップは短距離が主な用途であり、かつ需要も減少していっているため、基本的にはジェット機が飛べない地域の買い替え需要が主です。

そのため、今後20年ではジェット機が主戦場であり、ジェット機の納入機数ではボーイングとエアバスの2社で市場シェア90%とほぼ独占しています。

2018年の納入台数1,764機のうち、エアバスが800機でボーイングが800機と拮抗。ブラジルのエンブラエルは小型機を毎年100機程度納入しています。

一方、受注数は2011年代からは2,000台を越えて推移。こちらもボーイングとエアバスの2社でほぼ90%のシェアです(エンブラエルの受注に波があり、エンブラエルの受注数が少ない時に90%を超える)。

ボーイングの受注シェアは過去5年で40%前後で推移しています。

20142015201620172018
ボーイング (機)1,4498627779991,008
エアバス(機)1,7571,1859511,205827
その他(機)201343254145350
合計(機)3,4072,3901,9822,3492,185
ボーイング+エアバス受注シェア94%86%87%94%84%
ボーイング受注シェア43%36%39%43%46%

生産し、納入した機体よりも受注の方が大きいということは、業界全体として大きな受注残を抱えていることを意味します。

JADC資料より

実際に、ジェット機の受注残は積み上がり、2018年末時点では15,000機の受注残があります。

2019年の第三四半期終了時点で、ボーイングは5,500機、$4700億ドル(約50兆円)分の受注残を、エアバスも7,000機を超える受注残を抱えています。

仮に今後7年間で受注が0であり、毎年800機しか納入しなかったと仮定しても、両者ともに受注残は7年分以上になります(ボーイングは現在も737MAX停止中のため)。

つまり、航空機市場(その大半を占めるジェット機市場)は

  • 実質2社による寡占市場
  • 世界の旅行・貨物需要の伸びに合わせて飛行機が必要となり、需要が供給を上回っている状況
  • 主要2メーカー(ボーイング、エアバス)は7年分近くの受注残を抱えており、生産ができてる限りビジネスを失う危険性がない

という、2社にとっては望ましい環境にあります。

航空機業界の構造

意外にも、ボーイング、エアバスともに利益率は高くありません。

2017年、2018年こそ営業利益率が10%を超えていますが、それ以前は9%未満の時期が長く続いていきました。エアバスも同様に、営業利益率は10%を切っています。

Macrotrendsより

なぜ、実質二社の寡占であり、7年先まで受注残を抱えるような企業の利益率が低いのでしょうか。定石のファイブフォーシーズの観点で見ていきます。

ファイブフォーシーズ分析についてはこちら→ファイブフォース(5 forces)分析 | 解説と具体例

競争関係

航空機業界は2社(ボーイング、エアバス)の寡占状態ですが、その2社が受注を巡り激しく争っています。

大型機、中型機、小型機の全てで、ボーイングとエアバスはお互いに競合です。

ボーイング座席数エアバス座席数
747410A380575-853
777317-425A350325-440
787242-330A330257-440
767192-297
737126-230A320140-244
A220116-160

利益率が低い最も大きな原因の一つはこの二社の競争です。

本来的には寡占状態であれば、お互いに価格を引き上げても良いのですが、お互いのライバル意識が強く、特に新興国の大型受注を獲るために価格を引き下げているために、結果的に利益率を引き下げています。

大型受注を獲ることが重要なのは、後述するように、航空会社が一方の機体を採用すると、その後からもう一方が違う機体を販売するハードルが上がるためです。程度は違いますが、iPhoneを持っている人にAndroidを売るのは大変、という現状と似ています。

買い手の交渉力

航空機を購入する買い手は、航空会社(デルタ、アメリカン、ユナイテッド、JAL、ANA等)と航空機リース会社です。

航空会社は多数あり、一つ一つの航空会社が突出して大きいわけではありません。また、ボーイング機を利用している航空会社はボーイング機を購入した方がトレーニングコストが削減できることに加え、より整備や運行を効率化でき、有利になります。

そのため、既存のボーイング機を利用している買い手からすると、多少の価格差であれば、ボーイングを購入する動機が生まれます。この点では、ボーイング・エアバスは運行している機体が多い分、有利です。

足元の世界の航空機の運航機数をみると、単通路機ではボーイングの9158機に対し、エアバスは8274機、双通路機ではボーイングが3755機でエアバスは2442機にとどまる。運航機数ベースでは民間航空機分野で歴史の長いボーイングが優勢だ

日経新聞

つまり、売り手のボーイングやエアバスは、既存のお客さんには多少強く出ることができ、交渉上優位です。

売り手の交渉力

ボーイング・エアバスが買い手となるのは、主に部品業社です。航空機は100万点を超える部品で構成されており、関わる企業の裾野が広い産業です。直接ボーイングに納入するサプライヤーだけでも500を超えます。

買い手がボーイング・エアバスしかない売り先のために売り手の交渉力が弱いように思えますが、実は飛行機の部品は求められる安全性から汎用品よりも専用品が多く、数社しか作れない部品が数多く存在します。

また、量産後の部品変更は再度の認可プロセスを踏む必要があるため、基本的には同じ仕様で同じ部品業社からボーイング・エアバスは購入する必要があります(「航空機産業にみられる部品供給構造の特異性」海上泰生より)

つまり、専用品に関しては航空機メーカーと部品メーカーは長期的な関係を結ぶ必要があり、買い手が必ずしも有利な状況ではなく、比較的対等な関係だと考えられます。

新規参入の脅威

航空機、特に中型機以上の大きさは新規参入がしにくい分野です。

航空機は各国で規制されており、商用として販売するためには認可を得る必要があります。特に米国の型式証明・耐式証明が事実上の基準となっており、米国の基準をいつ取得できるかが航空機を販売する大きなポイントになります。

航空機は開発のプロセスが複雑かつ長いこと、認可のプロセスも安全性の重要性からより厳格であるため、新規参入のコストが非常に大きくなります(三菱重工が小型ジェットのMRJで新規参入を試みていますが、その開発の難しさから5度以上も延期し、元々は2013年納入予定でしたが、今は2020年代半ばです)

また、型式証明が取れたとしても、量産をする段階で工場への多額の設備投資が必要になります。さらに、量産が成功して販売できたとしても、販売後のサービス網への投資が必要となり、こちらも大きな投資となります(飛行機は販売後も定期的な整備が必要であり、メーカーはサービスを提供する必要があります)。

ここまで揃えても、現状のボーイングとエアバスの航空機に慣れたお客さんに新規メーカーが実績のない航空機を販売するのは簡単ではありません。特に航空機は信頼性が重要となるため、経済性以外の理由(例えば国策で産業育成するなど)がなければ、ボーイング・エアバスの方がブランド力で優位性を持っています。

以上のように、先進国では航空機市場への新規参入の脅威は経済的合理性から考えると、低いでしょう。唯一の例外は、中国が国策で自国の航空機産業を育成しようとし、自国の航空会社と影響力の及ぶ東南アジア・中央アジアに自国の航空機を購入するように働きかける可能性です。

中国は独自の型式証明を用いており、米国の型式証明がなくとも、国産の航空機を国内線用に販売することができます。また、中国は米国の型式証明の基準と合わせるように自国の基準を変えようとしています。

こちらは10年以上先を見れば、中国の国策航空会社がコスト競争力を武器として、新規参入する可能性は十分あり得るように思います。これはボーイング・エアバスの利益率を下げる要因になります。

代替品の脅威

航空機は移動手段であり、車、鉄道など人やモノを移動させる製品は代替品、すなわち競争相手となります。北陸新幹線が開通した時に、東京と金沢間の移動手段のシェアは航空機と鉄道が逆転したのが、良い例です。

未来の技術であるHyperloopやリニア鉄道などが実現すれば、航空機よりも手軽に乗れ、かつ短時間で着く移動手段として航空機の需要が減るかもしれません。

しかし、鉄道の整備には多額の費用がかかり経済的に合理的な路線は限られる上、航空機には既存の空港設備を利用できるというメリットがあるため、少なくともこの先20年程度に航空機の需要が急減することはないでしょう。

よって、代替品の脅威は低いと言えます。

政府・規制当局

航空機業界を考慮する上では、政府・規制当局の動きも重要となります。理由は、①航空機産業は裾野が広く、雇用を有む産業であり、国策産業になりやすいこと、②軍事技術と密接に関連のある産業であり、安全保障と関連すること、のためです。

ボーイング、エアバス共に国から補助金や軍用機の注文など様々な形での支援が行われています。今後、どちらかの企業が危機に陥ったとしても、政府による何らかの救済が行われると予想されます。

航空機業界まとめ

  • ボーイング・エアバスともに、営業利益率は高くない (2018年時点でも約10%)
  • 営業利益率が高くない主な理由は二社が激しく競争を行なっているため
  • ボーイング・エアバスは買い手の航空会社に対しては強い交渉力を持てるが、売り手の部品業社に対しての交渉力はさほど強くない
  • 中国の国策企業が中長期的に本格参入し、二社のシェア・利益率を下げる可能性がある。しかし、米国の型式証明取得がまだ行われていないことから、中国をのぞく地域では新規参入の影響は大きくない
  • 航空機を代替する技術はまだ発展途上かつ大規模な投資が必要な技術ばかりで、見渡せる将来で代替品が市場に及ぼす影響は少ない
  • 航空機メーカー二社は米国、欧州共に国策として重要な企業のため、政府から継続的な支援を受けられ、何かあった場合でも高い確率で救済される可能性が高い

今回の記事でわかること

  • 航空機業界は安定的に成長し、今後20年で毎年1,750機のジェット機の新規販売が見込まれる
  • ジェット機はボーイング・エアバスの2社でシェアほぼ90%。
  • ボーイング・エアバスともに受注残が7年分以上あり、新規受注が数年なくともビジネスを継続できる状況
  • 航空機業界は買い手、新規参入、代替品からの圧力が低く魅力的であるが、2社の競争が激しいために利益率が低くなっている
  • 国策となりやすい産業であり、ボーイング・エアバスともに見える形・見えない形でのサポートを得られていることに加え、緊急時にも政府支援が出る可能性が高い

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MMT (現代貨幣理論) の広まりが政治、投資家にもたらす影響とは?

民主党下院議員のオカシオ・コルテスが支持したことで話題になったMMT (現代貨幣理論 / Modern Monetary Theory)。コロナウイルスをきっかけに、アメリカはすでにMMTを実践しつつあります。

MMTは「財政赤字は問題なく、失業者がいなくなるまで財政支出を拡大するべき」と、これまで財政赤字を避けようとしてきた政府の経済政策からすると、常識を覆されるような主張をしています。

今回の記事では、(1)これまで国はどんな経済政策をとってきたのか、(2) MMTは何が新しいのか、(3)この考え方が政治家、投資家にもたらす影響、について考えていきます。

今回の記事から学べること

  • 政治家が経済成長を目的として使う手法は、(1)財政政策、(2)金融政策、⑶消費・生産性を上げる政策、の3つ
  • 「特に不況時には、政府が支出を増やすことで経済成長を実現するべき」という考えはこれまでもあったが、恒常的に財政赤字を続けることは副作用が多く、避けるべきと考えられてきた
  • MMTは「自国建通貨で国債発行を行なっている国は、財政赤字はインフレーション(物価の値上がり)を引き起こさない限りいくら続けても問題ない」と、恒常的な財政赤字も認めている点が特徴的
  • MMTは、財政支出を増加させて、有権者の票を買いたい政治家にとっては「使いやすい」理論であり、インフレーション率が長期で低位安定している現在、影響力が高まっていく可能性がある
  • 米国の大統領選で勝利した党がMMTの考え方を取り入れた場合、投資先となる産業は良い投資機会となる

政府が使う経済政策の手法

大きく分けると、経済成長のために政府が使う政策の手法は下記の3つです。

  • 財政政策
  • 金融政策
  • 消費・生産性の向上のための政策

先進国の多くでは、GDP(Gross Domestic Product – 国内総生産)を指標として、経済成長を目指しています。

GDPは、下記の4つの分けられます

  • 家計(消費者)の消費
  • 企業・家計の投資
  • 政府の消費・投資
  • 純輸出(輸出−輸入)

経済政策の目標 = GDPを成長させること

ざっくり言えば、消費者・企業・政府のみんなが前年度よりお金を使ってモノやサービスを購入し、住宅や設備や公共インフラなどに投資を行い、かつ輸出が輸入よりも多くなれば、経済はどんどん成長していきます

「経済が成長すると、雇用が増え、人々の収入も増え、税収の拡大から社会保障に回せる財源も増えるため、基本的にはみんなが幸せになる」、というのが多くの先進国の前提です。

そのため、政治家は財政政策、金融政策、消費・生産性の向上のための政策の3つのレバーを動かしながら、経済を成長させていこうとします。

経済政策の世界では、「何を信じるか」によって推奨される政策が異なるため、「何を信じるか」の部分に注目しながら、順に説明をしていきます。

財政政策

財政政策は、政府の徴税と支出に関わる政策です。

例えば、2019年で言えば、日本は歳出101兆円の予算のうち、税金から62兆円を、その他収入から6兆円を、国債の発行による借金で33兆円を調達する計画です。

日本の歳入 (2019年度予算)

対して、支出の計画は101兆円のうち、78兆円は政策のため、24兆円は国債の利払いや既存の国債の借換に使う予定です (四捨五入)。

日本の歳出 (2019年度予算)

日本の例で言えば、国債を発行することによって、税金で集めたお金よりも多くの支出を行なっています。

毎年毎年、予算がニュースになりますよね。予算編成は、政治家がいくら税金として集めて、いくら使うか、何に使うか、の案です。

政府が税金を上げれば私たちの手元に残るお金は減り、消費を減らす可能性が高くなります。逆に税金を下げれば私たちの手元に残るお金は増え、消費を増やす可能性が高くなります。

また、政府がよりお金を使えば、需要が生まれます。例えば、政府が「新しく道路やダムを作るぞ」、と公共事業の予算を増やせば、建設業の新たな工事に繋がり売上の上昇に繋がりますし、雇用にも良い影響が出てきます。

逆に政府が支出を減らしていけば、他の民間(家計、企業)の需要が十分でなければ、経済活動に悪影響が出やすくなります。

ポイント:政府は経済に余剰があるとき(失業など)に財政支出を増やすことで、需要を増やし、経済活動を活性化させることができる

一時期安倍総理がキャッチフレーズとして使っていた「アベノミクスの3本の矢」、の一つはこの財政政策です。

国債を発行(国が借金をすること)しながら税金をあげずに政府の支出を増やすことで需要を作り出して、経済を成長させていく、ということです。

金融政策

金融政策はお金の流通に関する政策です。最も私たちに馴染みが深く、かつ伝統的な金融政策の手法は「金利」です。

政策金利

金利はお金を借りるときに支払われなければならない利子で、通貨を発行している国であれば、その国の中央銀行(日本では日銀、アメリカではFRBです)がどのくらいの金利にするか、を定期的に決定しています。これは政策金利と呼ばれます。

一般的には、金利の上げ下げは下記のように働くと考えられています。

  • 金利を上げる→お金を借りるときのコストが上がる→お金を借りる人が減り、投資を控える→経済活動が穏やかになる
  • 金利を下げる→お金を借りるときのコストが下がる→お金を借りる人が増え、投資を積極的に行う→経済活動が活発化される

アメリカの例がわかりやすいです。アメリカは2008年のリーマンショック時に、「これはやばい、需要を喚起しなければ」、ということで一気に利下げを行い、低い利率を5年以上保ちました。

2015年12月には、アメリカの景気が回復してきたことを踏まえて金利を上げ、2019年まで徐々に金利を上げていきました。

2019年には米中の貿易戦争により世界経済の行き先が不透明になった、という理由で方針を転換し、利下げを行いました。

Jiji.comより

金利の引き下げは支払う利子が減るために、企業の収益にはプラスで、株価を引き上げる要因になります。また、投資が活発化するという思惑から、設備投資に関係する企業の株価の引き上げ要因になります。

2019年の米国株はS&P500が 30%近く上がりましたが、その一因はFRBが金利を段階的に引き下げたことがあります。

ポイント:政府は経済活動が加熱しているようであれば金利を上げることで少しブレーキを踏み、経済活動が低迷しているようであれば金利を下げて経済成長のアクセルを踏む

日本は投資を促進するため、リーマンショック以降、金利をゼロ金利で推移させています(現在はマイナス0.1%)。

量的緩和

「量的緩和」という言葉もニュースで良く見るかもしれません。量的緩和は低金利に加えた「非伝統的な」金融政策の手法です。

リーマンショック以降、各国の中央銀行(日本、アメリカ、欧州)は伝統的な金融政策、すなわち金利を下げることで経済を回復させようとしました。

しかし、ゼロ近くまで金利を下げてもなかなか経済は上向かず(たとえお金を借りるコストが低くても、将来の見通しが暗ければあまり消費や投資しようとは思わないですよね)、デフレーション(物価が下がっていくこと)基調は変わりませんでした。

物価が下がるデフレーションの世界ですと、物価の下落から企業の収益は下がっていきますし、そうすると従業員の給料も下がっていき、さらに消費が落ち込み、企業の収益がさらに下がる、という悪循環になりやすくなります。

デフレーションを防ぐため、中央銀行は次の一手を探していました。

量的緩和、はその一手です。中央銀行がお金を大量に市場に供給することで、銀行の貸出を促して、投資を活発化させようとしました。

ざっくりと言えば、「市場をお金で満たすことで景気を良くしよう」です。

下記のような考え方が前提になっています

  • 中央銀行がよりお金を市場に供給すれば、市場におけるお金の総量が増え、インフレーション(物の価格が上がること)が起こるという「期待」が上昇する
  • 中央銀行がお金を大量に供給することで、ゼロ金利が続くという「期待」が生じて、長期的な金利が低くなる。金利が低くなることで企業と人々がより投資・消費をするようになる

別の言い方をすれば、金利をゼロまで下げてしまうとこれ以上下げることはできない(マイナスまで金利を下げることはできますが、別の副作用があります)ところまできてしまったので、別の手法が必要。

そこで出てきたのが量的緩和で、人々の「期待」に訴えることで投資を促進させようという手法です。

ポイント:「量的緩和」、は中央銀行主導で市場にお金を大量に供給することで、市場におけるお金の量を増やし、人々の期待に訴えることで投資・消費を増やし、経済成長を促進させようとする金融政策

「アベノミクスの3本の矢」の2本目は、金利と量的緩和を用いた金融政策です。お金を市場で回りやすくすることで、経済成長を促進させようとしました。

消費・生産性向上のための政策

3つ目は必ずしも財政支出を伴わない、消費・生産性を向上させるための政策です。

これは多岐にわたるために、いくつかの例をあげます

  • スキルのある移民を増やす:国内でお金を稼ぐ・使う人が増えるので、経済成長に繋がる 
  • 就業率を上げる:上と同じ理由で、お金を稼ぐ・使う人が増えると経済成長に繋がります

これらは「アベノミクスの3本の矢」の3本目に当たります。

スキルのある移民を増やすための実際の政策としては、高度専門職ビザの発行や技能実習生で移民を増やすことを行おうとしています。

就業率を上げることについては、働き方改革や高齢者の雇用義務化で就業率を上げようとしています。働いて稼ぐ人が増えれば、その分使う人も増え、経済全体のパイが大きくなる、という考えです。

安倍さんが「女性を活用しよう」、「70歳まで働こう」という政策をすすめているのは、働く人を増やすことで経済を成長させたいためです(高齢者については、社会保障費の削減という目的もありますが。。)。

ここまで述べてきたのが、いわゆる伝統的な(1)財政政策、(2)金融政策、(3)消費・生産性向上のための政策、になります。

実をいうと、為替も政策のレバーの一つとなのですが(特に「固定相場制」、という特定の通貨と為替を固定する場合など)、為替は財政政策、金融政策、消費・生産性向上のための政策に影響を大きく受けることと、先進国はほとんど変動相場制のため、今回は省略します。

MMT (Modern Monetary Theory)とは

米民主党の大統領選有力候補のバーニー・サンダースの政策アドバイザーのStephanie Keltonを元に、MMTをざっくりと説明すると、下記のようになります

  • 自国建て通貨での国債発行に制限はない
  • 過小な財政支出は失業を、過大な財政支出はインフレを引き起こす。
  • 長期的投資(インフラ、教育、ヘルスケアなど)に財政支出を用いて投資すべき
  • 財政赤字は問題ではない

自国建て通貨での国債発行に制限はない

MMTは、通貨が通貨として受け入れられるのは、「国家が納税にその国の通貨が必要である」からだ、と主張します。通貨の価値は信頼によって創造され、その信頼は国家がその通貨で徴税を行なっているから、です。

また、政府と中央銀行は一体となっているとみなします。中央銀行は自国のお金であればいくらでも刷ることができるので(日銀であれば円、FRBであればドル)、下記の考え方が導かれます。

政府が借金しても、中央銀行がその分お金を刷れば返せるので、政府はいくら借金をしても返せなくなることはない

中央銀行が国債を引き受ければ、いくらでもお金を生み出せる、ということです。

過小な財政支出は失業を、過大な財政支出はインフレを引きおこなす

自国建通貨での国債発行に制限がないことから、MMTでは雇用を最大化するまでは国債を発行してでも財政支出を拡大することを勧めています。

これは、雇用の最大化が経済成長に繋がることに加え、失業の影響に対処する社会的コストを防ぐための施策としても良いことだと考えるためです。

一方で、MMTでは際限なく財政支出を拡大することを勧めているわけではありません。特に、雇用が最大化されている(=働きたい人がすでに雇われている)状態でさらに財政支出を拡大させることは、賃金の高騰によるインフレーションや民間から雇用を奪うことに繋がってしまうことから、否定的です。

また、MMTは財政支出がインフレーションを引き起こす可能性があることを認識しており、インフレーションをどの程度引き起こす可能性があるかを検討した上で財政政策を決めることを勧めています。

長期的投資(インフラ、教育、ヘルスケアなど)に財政支出を用いて投資すべき

インフラ、教育、ヘルスケアへの投資は将来の生産性を上げ、潜在的な成長率を引き上げます。これらは公的な投資が必要な領域でもあり、MMTは雇用が最大化されていない状態において、政府が積極的にこれらの領域へ投資することを勧めています。

財政赤字は問題ではない

財政政策を用いて需要を拡大することの有効性は従来の経済学(特にケインジアン)でも主張されており、目新しいものはありません。

しかし、MMTは「自国建通貨で国債を発行している場合、財政赤字自体は問題ではない」、と主張します。つまり、日本であれば円建ての国債、アメリカであれば米ドル建の国債ですね。

この点がいわゆる主流の経済学と比較して特徴的です。

主流の経済学では、財政赤字が蓄積すると

  • 通貨への信頼が揺らぎ、為替が通貨安へ触れやすくなる。通貨安になることで輸入価格が上がり、インフレーションが起きやすくなる
  • 国債への信頼が揺らぎ、市場で国債が売却されることで国債価格が下がる(金利が上がる)ことで、高い金利を通じて景気に悪影響を与える
  • 人々が将来、借金を返さなければいけないことを不安になり、貯蓄をするようになる、つまり消費を抑えることで、経済に悪影響を与える

などの悪影響が生じるとしていますが、MMTはこれらの点に対して、「インフレーションは財政政策を通じてコントロールでき、国債は中央銀行がお金を生み出せば解決できる話であり、雇用の最大化によりむしろ経済成長を加速できる」と反論します。

MMTは政治家にとっては福音のように聞こえるかもしれません。

今までは「これ以上借金が増やせないので、予算はありません」と言うしかなかったのに対して、「雇用がまだ最大化されていないから、財政赤字を拡大してでも支出すべき」と支援者・有権者のために新しい財政政策を導入できるからです。

MMTの疑問点

MMTは財政政策に重きをおいた理論であり、為替と金利についてあまり触れていません。

ドルは基軸通貨であるために、ドルへの信頼が揺らぎ、為替安となる可能性はこの先数十年は訪れないのかもしれませんが、継続した財政赤字が国債価格の下落(=金利の上昇)を招いた場合には、金利の上昇を通じて家計・企業の投資を妨げる可能性があります。

また、財政は下方硬直性(既得権益者である有権者が今まで得ていたものがなくなることに抵抗するため)があるため、そこまで迅速に財政支出を減少させる、あるいは増税して対応できるかは疑問です。

MMTが政治、投資家にもたらす影響

政治にもたらす影響

米民主党、特に有力候補者であるバーニー・サンダース (Bernie Sanders) やエリザベス・ウォーレン(Elizabeth Warren)は国民皆保険を主張しており、財源は富裕層への増税や資産課税で賄う、と主張しています。

一方で、MMTのように「財政赤字は拡大するけれど、米国における問題を解決することに加えて、潜在成長率を上げるからやるべき」という論理は、伝統的に政府による市場への関与を重んじる民主党としては、「使いやすい」議論ですし、共和党のトランプからしても、「使いたい」議論です。

また、MMTが心配するインフレーション率についても、先進国では長期でインフレーション率が低く安定しており、むしろデフレーションが心配されるため、MMTの考え方を適用しやすい環境です。

経済学の主流派から強く批判されていること、財政赤字の容認は「将来世代へツケを回している」という批判を受けやすいことから、大統領選でどこまで明確にMMTへのサポートを明確に述べるかはわかりませんが、米民主党が政権をとった場合にはこの考え方を取り入れる土壌は整っているように見えます。

投資家にもたらす影響

MMTが政治家に取り入れられた場合、政府の支出が拡大し、財政赤字がしばらくの間続くことになります。この支出の拡大で恩恵を受ける産業については、投資家にとって魅力的な産業となります。

例えば、民主党が政権をとり、財政支出を急速に拡大する場合、どのような産業が候補となるでしょうか

  • インフラ(高速道路など)
  • ヘルスケア(国民皆保険による薬・医療機器へのアクセス増加。民間保険にとってはおそらくマイナス)
  • 教育

一方、財政赤字の拡大が為替や金利にどのような影響を及ぼすか、についてはやや不明瞭です。もし継続的な財政赤字の拡大が通貨安を引き起こした場合、日本から米国株へ投資をしている人などは、ドル安(円高)の影響から、円ベースでの資産が目減りする可能性があります。

米国株投資には為替リスクがあり、米国の財政政策次第では為替が動くこともある、と認識しておきましょう。

以上のように、MMTという考え方がどのように政治家、投資家に影響を与えるか、も2020年代の注目ポイントの一つです。

まとめ

  • 政治家が経済成長を目的として使えるツールは、(1)財政政策、(2)金融政策、⑶消費・生産性を上げる政策、の3つ
  • 「特に不況時には、政府が支出を増やすことで経済成長を実現するべき」という考えはこれまでもあったが、恒常的な財政赤字は副作用が多く、避けるべきと考えられてきた
  • MMTは「自国建通貨で国債発行を行なっている限り、財政赤字はインフレーション(物価の値上がり)を生まない限りいくら続けても問題ない」と、恒常的な財政赤字も認めている点が特徴的
  • MMTは、財政支出を増加させて、有権者の票を買いたい政治家にとっては「使いやすい」理論であり、インフレーション率が長期で低位安定している現在、影響力が高まっていく可能性がある
  • 大統領選に勝利した米国の政党がMMTの考え方を取り入れた場合、投資先となる産業は良い投資機会となる

今回の記事の参考図書です、「MMT現代貨幣理論入門」 L・ランダ・レイ他

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ゼロから始める株式投資の基本 – 4つの投資戦略

全世界の株式市場が最高値を更新する中、株式市場にどのような戦略で投資をするべきか、を考えている人も多いかと思います。

これから投資を始める、または投資を始めたばかりの人、特に50歳未満の資産形成期の方を対象に、長期の株式投資をする上での4つの戦略について、説明していきます。今回は長いため、まとめからです。

まとめ

  • 株式投資の方法は大きく分けると4種類。
  • 「インデックス投資」は日経平均やS&P500などの市場をまとめた指標に連動する銘柄に継続的に投資を行う投資法。基本的な投資方法であり、ドルコスト平均法を用いて、定期的に定額を長期投資するのが初めての人には良い。特にリタイアまで長い時間のある若い人向け。
  • 「インデックスを用いたオールウェザー投資」はインデックスに債権や商品を組み込んで、リスクを減らし、どんな経済状況でも一定のリターンが確保できるようにする投資法。景気拡大期ではインデックス投資よりもリターンが小さくなるが、景気後退期には株式のみへの投資よりもリターンが高くなる。ETFを用いることで簡単に組むことができ、景気後退の可能性を意識するならば良い方法。また、資産下落リスクが低くなるため、リタイアが近い人にも良い。
  • 「高配当の個別株投資」は株式から得られる配当のリターンを最大化させる投資法。配当が毎年増えていくため、投資へのモチベーションを高めやすいという利点がある。ただし、配当が持続可能か、成長していくか、を分析するスキルが必要。また、高配当株は成熟市場にある企業のことが多く、平均的なリターンは成長企業を含むインデックス投資に比較して劣っていることに注意。
  • 「市場を上回ることを目指す個別株投資」、は個別の銘柄を分析して選択し、市場平均を上回るリターンを目指す投資法。割安株、成長株、マクロ経済に注目、など銘柄の選び方は多数ある。インデックス投資以上の成果を出すのは高い分析スキルか幸運が要求され、実は結構難しい。

投資で資産を増やすために

投資のリターンは下記の2つ、キャピタルゲイン(capital gain)とインカムゲイン(income gain)に分解できます。

投資のリターン = キャピタルゲイン + インカムゲイン

キャピタルゲインは、資産の売買によって生じる収益です。例えば、株を100円で買って、120円で売れば20円儲かります(日本株の売買の場合、税金を考慮すると16円になります)。この差額の利益がキャピタルゲインになります。

インカムゲインは配当や利子などで得られる収益です。例えば、1株100円で、毎年1株につき5円の配当を出す株を保有していれば、毎年5円(税金を考慮すると4円)の収入が得られます。この配当がインカムゲインとなります。

これから説明する4つの手法は

  • インデックス投資 → キャピタルゲイン重視
  • オールウェザー投資 → 2つのバランス型
  • 高配当個別株投資 → インカムゲイン重視
  • 市場以上の利益を追求する個別株投資 → キャピタルゲイン重視

インデックスを積み上げる投資戦略(ドルコスト平均法)

キャピタルゲインに重点を置き、初めて投資を始める方におすすめな手法として、インデックスファンドを定期的に一定額ずつ購入していくドルコスト平均法があります。

インデックスファンドとは

インデックスとは、複数の株式や債権をまとめた指標のことで、インデックスファンドとはこの指標に連動することを目指した金融商品です。ここでは株式を例に説明します。

例えば、ニュースで良く聞く日経平均(日経225)とは、日本を代表する225社の株価の加重平均です(トヨタ、ドコモ、ソニーなどが含まれています)。

インデックスを購入する大きなメリットの一つは、個別企業を分析する必要がなく、経済成長の恩恵を受けやすいことです。

一つの企業の株価は、大きく変動することがあります。

例えば、ソフトバンクグループの2019年の株価は、ジェットコースターのように上がって、下がって、です。1月に3,600円から始まり、6,000円近くまで上がり、現在は4,400円程度で推移しています。最低価格と最高価格の差は50%以上になります。

ソフトバンクグループ2019年株価推移

一方、ソフトバンクグループが含まれている日経平均も株価の変動はしていますが、19,000円から24,000円と最低価格と最高価格の幅は20%程度です。

ソフトバンクグループのように市場に比べて変動率が高い株を「ベータ」が高い、とも表現します。特に投資を始めた時には個別株の分析のハードルが高く、かつベータが高い人気のある株を選びがちなので、まずは市場全体のインデックスから始めるといいと思います。

ドルコスト平均法の例

次に、買うインデックスとタイミングです。米国株の代表的なインデックスであるS&P500の過去30年の価格推移を見てみましょう。

2000年、2008年にショックがありましたが、長期的に見ると綺麗な右肩上がりです。10年前の2009年12月に$1,100であった価格が順調に成長し、現在では3倍近い$3,170まで増加しています。

S&Pの株価も変動しています。例えば、2008年8月には$1,300であった株価は10月には27%減の$950近くまで落ちていますし、2018年9月で$2,900あった株価は12月に$2500近くまで約15%減少しました。

いつ、どこまで株価が上がるかを予想するのは困難ですが、一定額を定期的に購入する、と決めることで、この変動する相場の中で高値づかみする可能性と、相場の上昇を逃す機会損失の可能性を減らすことができます。

言い方をかえれば、買うタイミングを分散させることで、リスクを減らしています。

この手法は、「長期的に価値が増加すると考えられる資産」に投資をしてくのに適しています。

どの資産を選ぶのか

どの資産を選ぶのか、が1点目のポイントです。1926年以降、平均して約10%のリターンを得ている、前述の米国のS&P500に連動する上場投資信託が選択肢の一つです。

S&P500に連動する上場信託についてはこちら→S&P500連動ETF (SPY/IVV/VOO)はいつ買えば良いか

逆に、日本の日経225などは過去のパフォーマンスを見る限り、あまりお勧めできません。2016年以降のパフォーマンスは良いですが、過去20年でのリターンは米国株に長期投資するよりもはるかに劣ります。

今後の成長を見込んで中国株、ベトナム株などの新興国のインデックスを買うことも選択肢としてありますが、これらの市場は米国市場ほど洗練されていない(会計情報が信頼できるか、社会が安定しているか、など)ことに注意が必要です。

不況時にも継続して定期的に追加投資をしていくことによって、投資対象の資産が長期的に高値となり、報われるような戦略です。

注意点

S&P500連動のインデックスを積み立てるのは過去においては効果的な戦略でした。今後も継続して積み立てる前提は、「今後も米国企業が競争力を持ち続けて世界経済成長の恩恵を受け続ける」です。

米国は人口、GDPともに増加しており、特にITの分野で世界でシェアを拡大している企業が多いので、現在を見る限り上の前提は成り立つ可能性が高いと思いますが、前提が成り立っているかは時折見直した方が良いかと思います。

また、もし株式のインデックスのみに投資をする場合、数年の単位では暴落が発生して、資産がマイナスになる可能性があります。

そのため、あと数年で引退で資産を出来るだけ保ちたい、と考えている人にとっては、株式一本打法はややリスクが高いです。

投資へのリスクを減らしたい人は、次の章で説明する、インデックスを利用したオールウェザーポートフォリオの方を好むかもしれません。

「インデックス投資法」を実践している人の例

ブログを書かれている方ですと、「バンガードS&P500ETF(VOO)に投資するりんりのブログ」のりんりさんがこの投資法を実施して、VOOを積み立てていますので、参考になるかもしれません。

インデックスを用いたオールウェザー投資

前の章では株式を例に説明しました。実は株式は証券口座で取引ができる資産の1つで、他にも投資が可能な資産が複数あります、それぞれの資産は、どのような時に高くなるかが異なるため、複数の資産のタイプを組み合わせることで、より資産の価格変動リスクを減らすことができます。

ここではBridgewater のRay Dario(世界的に有名なファンドマネジャーです)がコンセプトの発明に携わった、「オールウェザーポートフォリオ」についてざっくり説明します。

ざっくり説明すると、

株式→企業の1株あたりの利益が高く、市場がこの企業は成長すると期待すればするほど価格が上がる。景気拡大局面に上がり、後退局面に下がる。

債権→各国の中央銀行が定める金利が高ければ高いほど価格が高くなり、金利が低ければ低いほど価格は高くなる。借りての信用度が高ければ高いほど価格は高くなり、低ければ低くなる。

コモディティ(金・小麦などの商品)→インフレが起きれば起きるほど高くなるし、デフレになれば安くなる。

景気は循環します。景気が拡大している時には株式が有利で、景気が後退している時には中央銀行が景気対策のために金利を下げ、債権価格が上がると考えられ、債権が有利です。

インフレーション率が高くなれば(物価が上がれば)、商品の価格が上がるため、コモディティと物価連動国債が有利です。

逆にデフレの状況であれば、同じ額で買えるものが増えるため、国債が有利になります。

From Bridgewater All Weather Strategy White Paper

これらの各資産の特性から、経済がどのような状況であっても一定のリスクを確保する目的で作られたのが下記のポートフォリオになります。

All Weather Portfolio

株式 (VOO)は30%、長期国債 (TLT) が40%、中期国債 (IEI)が15%、金(GLD)が7.5%、商品 (GSG)が7.5%の構成になっています。それぞれ()内の銘柄が米国市場でのそれぞれのETFに対応しています。

不況となっても債権の値上がりで株式の下落がカバーされることから、ポートフォリオ全体の収益は安定しています。一方で、景気が回復・拡大している局面では、株式の割合が低いためにリターンはインデックス投資よりも低くなります。

年間5-10%でリスクを抑えながら着実に増やしていきたい、または数年以内に引退を考えており資産をあまり減らしたくない景気後退局面に備えたい、という人に向いているポートフォリオです。

高配当株を積み立てる投資方法

インカムゲインに重点を置く手法として、株式から得られる配当を最大化する投資方法もあります。

代表的な上場投資信託の銘柄として、SPYD (S&P500のうち、高配当の株を中心に集めた上場投資信託)を見てみます。

SYPD (S&P 500 High Dividend ETF)

現在の配当利回りは3.12%です。これは、つまりSPYDを現在の$39で100株購入すると、$3,900(約43万円)を投資して、$120 (1万3000円)が年間の配当になります。

配当には税金が徴収されるため(米国株の場合、ADRなどの場合をのぞいて原則、米国で10%、日本で20%の計30%課税)、実際の手取りは70%の$84 (約9000円) となります。

個別の銘柄で、アルトリア(アメリカの大手タバコ会社です)をみてみましょう。

こちらは株価$50で、配当利回りが6.7%です。つまり、100株投資($5,000 – 55万円)を投資をすると、$335 (3万7000円)、税引き後は$240 (2万5000円)が配当としてもらえることになります。

高配当株を中心に投資をするメリット

インカムゲインを重視する一つのメリットは、成果が見えやすいことです。下記は、「三菱サラリーマン」さんのブログより引用している、三菱サラリーマンの配当金の推移になります。

三菱サラリーマンが株式投資でセミリタイア目指してみたより

2016年から2019年にかけて、毎年、毎月の配当金が増えているのがわかります。このように目に見える形で収入が毎月入ってきますので、投資をするモチベーションが続きやすく、それが節約志向に繋がるなど、資産形成にプラスの影響をもたらすと考えられます。

また、銘柄の選択によっては、高配当を維持できる銘柄の場合、配当利回りが株価の下支えになってくれ、景気後退時にも株価下落が限定的になる可能性があります。また、株価が下落したとしても、配当が継続的に入ってきて、長期的には株価は戻ると考えるのであれば、気持ちの面でもだいぶ楽でしょう。

高配当株中心に投資をするデメリット

配当に利益の大部分を回している高配当の企業は、「本業に投資をするよりも、株主にお金を返した方が良い」と考えている企業のため、成熟産業の低成長の株が多くなります(金融、エネルギーの大企業など)

実際に、S&P500全体に投資をするVOO (VanguardのS&P 500に連動するETF)とVYM (VanguardのS&P 500の高配当株に主に投資をするETF)を比較すると、VOOの方が1年の利回りを除き、パフォーマンスが良くなっています。

askfinny.comより

また、個別株の投資をするには分析の能力が必要ですが、高配当を目的とする場合には、その企業の配当が持続可能か、今後も伸びていくかどうか、の見極めが特に肝要です。

例えば、エネルギー大手のエクソンモービルなども5%を超える配当率で配当だけでいえば魅力的なのですが、石油価格の低迷とESG投資の流れで、業績と株価が低迷しています。

減配(配当金が減ること)になると当然利回りが減るため、今後も同じ水準の配当を支払い続けることができるか、の見極めが必要になります。この分析にはビジネスモデル、財務、キャッシュフローを分析できるスキルが要求されるため、ややハードルが高いです。

特に、業績がかなり悪化している企業(日産自動車など)は株価が下落し、見かけの配当利回りは高く見えます。配当目当てで株を買ったは良いものの、配当は減らされ、さらに株価も落ちるというダブルパンチ、を食らう可能性もありますので、見かけの配当が高すぎる企業の株には特に注意が必要です。

この投資法を実践している人の例

ブログを書かれている方ですと、上述の三菱サラリーマンさんに加え、「バフェット太郎の秘密のポートフォリオ」のバフェット太郎さん、「ゆーたん@東大卒のセミリタイア物語♪」のゆーたんさんなどこの投資法を実施していますので、参考になるかもしれません。

市場以上の利益を追求する投資法

個別株を分析し、市場平均以上のリターンを狙う投資法です。

こちらは割安株に投資する方法や成長株に投資する方法、マクロ経済に注目する方法など無数に方法があります。

産業・個別企業を分析し、キャピタルゲイン・インカムゲインを市場平均以上に得られそうな企業を見つけ、個別の企業に投資する点は共通しています。

不況時の対策としては、ヘルスケアや食品など、よりディフェンシブ(不況耐性がある)銘柄を選ぶことにより、下落リスクを少なくすることができます。

一例として、僕が行なった分析は以下のようになります。

インフラファンド(太陽光発電)は債権として優秀な投資先

ソフトバンクグループの株価はどうしてこんなに安いのか?

【株式分析】J&J (JNJ-ジョンソン・エンド・ジョンソン)配当貴族の有名銘柄

個別銘柄に投資をするのは楽しいのですが、市場参加者の半数以上はインデックスに負けているのも事実です。チンギスハンさんのブログによれば、15年間でインデックスに勝てたファンドマネジャー(投資を仕事としており、いわば投資のプロ)はわずか10人に1人だったそうです。

そのため、

  • 個別株を分析して投資することが楽しいと思う
  • 市場平均を上回れる銘柄を選ぶことができる、または選べるまで学べるという自信がある
  • 短期・中期のトレードで儲けたい
  • 株主優待が欲しい
  • 特に好き、もしくは応援したい企業がある

などの理由がなければ、インデックス投資またはオールウェザー投資から始めるのが時間との費用対効果を考えると良いかもしれません。

この投資法を実践している人の例

ほとんどの投資家が個別株を購入して市場以上のリターンをあげようとしており、このカテゴリに入ります(意識してかどうかはわかりませんが、個別株をメインで投資する場合は、市場に勝とうとするこのカテゴリです)

米国株でしたら、もみあげさんの「もみあげの米国株投資」、「チンギスハンのブログ」、のチンギスハンさんが個別株分析を多く行なっているので参考になるかもしれません。米国株全般でしたらたばぞうさんのブログもおすすめです。

まとめ(再掲)

  • 株式投資の方法は大きく分けると4種類。
  • 「インデックス投資」は日経平均やS&P500などの市場をまとめた指標に連動する銘柄に継続的に投資を行う投資法。基本的な投資方法であり、ドルコスト平均法を用いて、定期的に定額を長期投資するのが初めての人には良い。特にリタイアまで長い時間のある若い人向け。
  • 「インデックスを用いたオールウェザー投資」はインデックスに債権や商品を組み込んで、リスクを減らし、どんな経済状況でも一定のリターンが確保できるようにする投資法。景気拡大期ではインデックス投資よりもリターンが小さくなるが、景気後退期には株式のみへの投資よりもリターンが高くなる。ETFを用いることで簡単に組むことができ、景気後退の可能性を意識するならば良い方法。また、資産下落リスクが低くなるため、リタイアが近い人にも良い。
  • 「高配当の個別株投資」は株式から得られる配当のリターンを最大化させる投資法。配当が毎年増えていくため、投資へのモチベーションを高めやすいという利点がある。ただし、配当が持続可能か、成長していくか、を分析するスキルが必要。また、高配当株は成熟市場にある企業のことが多く、平均的なリターンは成長企業を含むインデックス投資に比較して劣っていることに注意。
  • 「市場を上回ることを目指す個別株投資」、は個別の銘柄を分析して選択し、市場平均を上回るリターンを目指す投資法。割安株、成長株、マクロ経済に注目、など銘柄の選び方は多数ある。インデックス投資以上の成果を出すのは高い分析スキルか幸運が要求され、実は結構難しい。

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Westpac (WBK)の株価はどうして落ちているの?

高配当株として人気の高い、豪Westpac(WBK)銀行の株ですが、11月に株価が急落しています。

今回は、オーストラリア第2位の銀行に一体何が起きているのかについて説明したいと思います。

Westpac (WBK)の株価

Westpacの株価

Westpacの株価は2018年末に向かって下落し、そして10月まで上がり続け、急激に下落しています。まるでジェットコースターのようなチャートです。

オーストラリア経済の成長鈍化と中央銀行の利下げ

オーストラリアの銀行業界は4大銀行 (Commonwealth、Westpac、Australia and New Zealand Banking Group、National Australia Banking)による寡占状態です。この4社で貸し出し金額の約80%を占めています。

Westpac銀行はCommonwealth銀行に次ぐ第2位の規模を持っています。

Westpacの19年度の投資家向け発表資料より

ビジネスの約50%を消費者向けが占めており、この大半が住宅ローンです。

オーストラリアのGDP

オーストラリアの経済は住宅市場の冷え込みから、2018年の後半に大きく減少し、10月-12月には景気後退すれすれの0.1%成長まで落ち込みました。

Westpac銀行は住宅への貸出が収益の大きな部分を占めているため、貸出の伸びが鈍化するのではないか、また景気が後退したときにローンを払えない人が出て貸し倒れが増えるのではないか、という懸念から、2018年末にかけて株価は下落していきました。

Royal Bank Australia Interest Rates

住宅価格の下落、景気の鈍化に対して、オーストラリアの中央銀行、Reserve Bank of Australia (RBA)は、経済を活性化させるため、2019年に入ってから断続的に利下げを行いました。

RBAは2019年1月に1.5%であった利率を0.75%まで下げています(11月27日現在)。

利下げのおかげによる住宅市場の回復と経済成長率が年率2%程度まで回復しました。それにより、10月までは株価は回復基調にありました。

しかし、11月に入り、RBAトップのPhilip Loweは、来年の前半のさらなる利下げの可能性を示唆し、利率が0.25%まで落ちたら、量的緩和も選択肢に入っている、と発言しました。

利下げが起きると、銀行は貸し出し金利を下げざるを得ず、一般的には利幅の減少=利益率の低下に繋がります。

また、利下げは国債の利回りの利率を落とすので、預金者から借りたお金を国債で運用している銀行の収益にとってもマイナスに働きます。

よって、基本的には、利下げ=銀行の事業利益にとってマイナス、です。

市場は住宅価格の下落による貸し倒れリスクよりも利下げによる収益への影響の方を懸念し始めました。これが、株価の上値を抑えている一つの理由です。

マネーロンダリング疑惑

11月のWestpacの株価の下落の主な理由は、オーストラリア証券投資委員会 (Australian Securities and Investments Commission – ASIC)が、Westpacを児童搾取を含んだ、マネーロンダリングに対して適切に対応していなかった、と調査していることが報道されたことです。

実はこのマネーロンダリング話、Westpacだけでなく、過去にも他の銀行で起きたことがあります。

2017年に、最大手のCommonwealth Bankはマネーロンダリング疑惑のある取引に関わったことを当局へ報告せず、このスキャンダルから2018年にはCEOが交代しています。

今回のWestpacについても、CEOがASICから指摘を受けたときに適切に対応せず批判が殺到し、CEOの辞任まで追い込まれました。

今後の経営にどれだけ影響が出るのか読めなかったことから、投資家がパニックになり売り始めたと考えられます。

当局による制裁金と株主訴訟

Westpacは2つの大きなリスクに直面しています。

1つ目として、ASICによるマネーロンダリング疑惑への捜査は続いており、今後制裁金が課される可能性があります。制裁金については、230万件の疑わしい取引に対して、10億ドルを超えるとみられており、2019年度の純利益が68億ドルであったWestpacにとっては少ない金額ではありません。

2つ目として、法律事務所が集団訴訟を準備しており、こちらもWestpacの利益を減少させる可能性があります。

これらの動きに対し、Westpacは当局の調査に積極的に協力すると同時に、マネーロンダリングの話が出る2週間前の新株購入に応じた株主に対し、払い戻しをすることを検討していると声明を出しています。こちらは当局との議論の後に出てきた、とのことですので当局が指示したのかもしれません。

しかし、この払い戻しは増資に応じた人が対象のため、この対応で集団訴訟が止まるかどうかは不明です。

ブランド価値の毀損

空気を読まないことで定評のあるCEO (Brian Hartzer)は退職金、270万オーストラリアドル(約二億円)を受け取って辞任すると現地の新聞では報道され、批判にあっています。

もともと、オーストラリアの銀行は寡占状態にあることもあり、不透明な経営と談合体質が近年問題にされていたのですが、今回の一件は国民の銀行への信頼をさらに失わせました。

特に、今回のマネーロンダリングは児童搾取(特に東南アジアにおける児童の性的搾取です)につながりのある団体にお金が回っていたということもあり、Westpacへの批判は強まっています。

Westpacはただでさえ米国、欧州、アジア系の銀行からの攻勢を受けて市場が厳しくなっている中でのこの一件なので、短期的には貸出の伸び悩みなど業績への影響が、長期的にもブランド価値の毀損という影響が出ると考えられます。

Westpacの19年度の投資家向け発表資料より

また、2019年は2018年に比べて純利益、一株あたり利益が16%落ちるなどただでさえ利益の成長に懸念があります。また、スキャンダルが起きる前に減配しているのですが、その状態ですら配当性向が70%を超えているため、制裁金の支払いが生じるとさらに減配される可能性が高く、この点も株価の懸念材料です。

Westpacの19年度の投資家向け発表資料より

これらの理由から、株価が落ちていると考えられます。

まとめ

  • Westpacの銀行の株価が落ちた理由は、1. オーストラリア中央銀行の利下げが予想されること、2. マネーロンダリング疑惑に対してCEOが適切に対応せず、辞任まで追い込まれたこと、3. 当局から制裁金を課され、株主からの集団訴訟されるリスクがあること、です。
  • 今回のスキャンダルはブランド価値に傷をつけ、中長期的にもネガティブな影響を与えると考えられます。
  • すでに今年、一度減配をしていますが、現状でも70%以上の配当性向のため、制裁金によっては来年さらなる減配のリスクがあります。
  • 一方、4大銀行がオーストラリアの市場を寡占している状況は今後も変わらず、オーストラリアの住宅市場も回復基調にあるため、さらに価格が落ちていくようでしたら購入の機会かもしれません。

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高配当なオーストラリア株をポートフォリオのスパイスに(EWA)

高配当は好きだけれど、米国株は高すぎる気がするし、個別の株を買うと大きく下落しそうで怖い、と思うことはありませんか?

そんな方に、オーストラリア株はぴったりかもしれません。オーストラリア株は配当の利回りが高いことで有名です。

オーストラリア株の利回りと配当の利回り、特徴について書いてみます。

オーストラリア株に投資した時の利回りは?

オーストラリアASX300の推移 (VAS, 10年間)

過去10年のオーストラリアの株式市場は2009年のA$63から、資源バブルが終わり2012年に$52まで落ちましたが、現在はA$85まで上がってきています。

過去10年の成長率は年3.0%です。これだけ聞くと、あまり魅力的ではないように見えますが

その一方、配当が安定しており、利回りは高めです。2010年にA$63で購入していれば、配当で3.8%。2012年に底のA$52で買えていれば、利回りは5%近くなります。

しかも配当はだんだん増えていっており、そのまま保有していれば2019年には 配当の利回りが5.7%まで増加しています。

オーストラリア上場株の配当利回り

過去40年をみても、配当利回りは平均して4.2%となっており、リーマンショック以降はかなり安定しています。

株価の値上がりと合わせて、高配当で年利7.2%が平均的に見込める、というのはなかなか悪くないのではないでしょうか。

現在の価格は割安か

2019年10月30日現在、A$85で買ったとすると、来年の配当が今年と同程度であれば利回りは4.2%になります。これは過去40年平均の4.2%とほぼ同じ水準です。

オーストラリア上場株のPrice to Equity Ratio (株価収益率)の推移

一方、株価収益率でみると、オーストラリア上場株の加重平均の株価収益率は17近くと歴史的な平均である15を超えていて、やや高めの印象です。

ただし、配当水準からみると適正なので、高配当株としては魅力的です。

オーストラリア株への投資方法

米国に上場しているETFで、オーストラリア株のみに投資をしている銘柄はあまり選択肢がないのが残念ですが、取扱高が多いのはiSharesのEWAです。

iShares EWD 10年の価格推移

値動きが先ほどのオーストラリア株と違うのは、オーストラリアドルが弱くなり、米ドルベースでは安くなったためです。

豪ドル to 米ドルの為替の推移

豪ドルの為替が2014年から2015年、2017年から2019年にかけてどんどん弱くなっています。そのため、オーストラリア株自体は上がっていても、為替が弱くなっているために、米ドル建てのEWAでは安くなりました。日本円ベースでも同じような傾向です。

豪ドルが今の安値の水準から高くなっていくと考えるのであれば、さらに為替でもリターンが見込めます(逆もまた然りですが。。)

まとめ

オーストラリア株は株価の伸びは日本株や米国株よりも緩やかですが、一方で高い配当を維持しており、株式でいうと高配当株のような位置付けです。

特に配当は過去10年で維持か増加しており、高配当株を買う際の欲しい条件である「配当が毎年成長していく」、を満たしていると思います。

今の株価の水準は株価収益率の観点からはやや高めですが、配当の利回りは過去平均と同じです。

私はASX300というオーストラリアでいう日経平均のような指標に連動するETFを少額購入しています。もう少し安くなり、買い時になってから一気に書いたいなと思っています。

良い投資を! (投資は自己責任でお願いいたします)

【株式分析】S&P500連動ETF (SPY/IVV/VOO)はいつ買えば良いか

S&P500はアメリカを代表する500の会社の株価を加重平均した指標で、1926年の創設以来、年平均約10%のリターンを出している、長期投資家なら見逃せない投資先の一つです。

S&P500は魅力的な商品ですが、買う時期によっては長い間、損失を抱えてしまうことになります。「いつ買うか」は迷いますよね。

今回は今が買い時かどうかを判断する指標について書いてみます。

S&P500の長期的なパフォーマンス

S&P500の推移

S&P500は過去10年、堅調に推移しています。リーマンショック後の2008年には株価が大きく落ち込みましたが、2009年より株価は上昇し、2013年には2007年の水準を回復しています。

S&P500リターン計算 (DOYDJサイトより)

2019年10月現在は$3,000と5年間で1.5倍以上になり、過去5年間のリターンは、株価だけならば9.1%。配当を再投資していた場合は11.2%と高いリターンになっています。

それでは、今後もS&P500は堅調に推移すると予想されるのでしょうか。何を指標に、S&P500が割高か、割安かを判断すれば良いでしょうか。

一株あたり利益でみて割安か

Shiller PE Ratio S&P500 (multpl.comより)

Shiller PE Ratio (過去10年のデータを元に、ビジネスサイクル、季節変動、インフレーションを考慮して調整したPER)の値をみてみると、現在は29.84と1929年のブラックフライデー並の高値圏にあることがわかります。

また、2007年の金融危機前の水準より現在は高い値になっています。

Shiller PE Ratioからみると現在のS&P500は歴史的な高値圏にあります。長期的に見れば株価収益率は平均へ回帰することを考えると、近い将来に株価の調整が入る可能性が高いと考えられます。

米国GDPと比較して割安か?

S&P500は数多くのグローバル企業を含んでいますが、多くは売り上げ高の半分以上をアメリカで稼いでいます。

つまり、アメリカの経済が成長していけば、それだけ売り上げが上がる構造になっており、成長の速度とアメリカの経済成長率には一定の相関があると考えられます。

アメリカ上場株式時価総額/US GDPの比率 (Guru Focusより)

上図はアメリカの上場株式の時価総額をアメリカのGDPで割った値です。ドットコムバブル(1999)、金融危機 (2008)時点での比率は100%を超えており、現在はドットコムバブル時の150%近くまで上昇しています。

上場株式時価総額/GDPの値からみても、現在の株式相場は加熱しすぎの範囲に入っていると考えられます。

S&P500に連動するETFはどれを選べば良い?

S&P500連動ETFは数多く出ていますが、日々の取引量が多い代表的なのは下記の3つです。

銘柄名SPYIVVVOO
運営元State Street Global AdvisorBlackrockVanguard
年費用0.0945%0.04%0.04%

米国在住者でしたら税金の取り扱いの関係でSPYを選択するかもしれませんが、日本在住者の方が選択するならばIVYかVOOが年費用が安いために良いのではないかと思います。

まとめ

S&P500に連動するETFは、長期的に年平均10%のリターンを出している、長期投資家としては魅力的な投資先です。

特に個別企業を分析するのが好きでない、そこに時間は割きたくない方にはおすすめの投資先だと思いますし、積み立てていくのに良い商品です。

ただし現在の水準は一株あたり利益が歴史的にみて高すぎの水準となっています。

また、アメリカ市場全体が加熱しており、GDPと比較してもかなり高くなっています。

私はS&P500連動ETF(VOO)を保有してはいますが、上記のような理由から、現在は割合は減らして、より不況耐性がある投資先へ資金を割り振っています。。

良い投資を! (投資は自己責任でお願いします。)